Written by 独鴉


バッカニア&ストレイド対スカーレットフォックス&エメラルドラクーン


カラードチームマッチ・・・オリジナル

今回は僚機として依頼を受けインテリオルのネクスト整備場で待機している。事の始まりはダン・モロからの通信だった。

「わりぃ、ちょっと怪我しちまって代理頼めないか?」

最近売り出し中のイェーイ・ウィスの2名をインテリオルは専属として雇う案が出ており、
テストの一環としてバッカニアとセレブリティ・アッシュの2名が対戦相手として選ばれた。
だが、今から4日前、セレブリティ・アッシュは依頼遂行中に所属不明ネクストの襲撃を受け、
機体を中破させながらなんとか逃げ帰ってきたということだ。

「まぁ、そう言うわけで明日のマッチは代役頼むわ」

事情を説明し終えたダン・モロは包帯で巻かれた腕で器用にコミックを開く。
肋骨五本と右手と左足の骨折を負ったのだから確かにAMSとの接続は控えるべきだが、
むしろその状態でも平然とコミックを読んでいられる根性が凄い。
常人は激痛と折れた箇所の発熱で車椅子に座っているだけでも辛いはずだが、
普通に立って歩いてコミック読みながら笑っているのだから。

「それだけでは不足だ。その不明ネクストのデータももらおうか」

報酬金よりもセレンさんにとってはそっちのほうが重要らしい。一瞬ダン・モロの表情が強張ったあと口を開いた。

「すまねぇが、それをやっちまうとあんたらも巻き込んじまうんでね。無理なら他を当たらせてもらうが」

後ろを呼びさすとカラードの制服を来た恐持ての男達が立っている。どうやら所属不明機と交戦を行ったダン・モロは監視状態に置かれているようだ。

「面倒は嫌いなんで、報酬の2割り増しと今後の僚機報酬を一割カットで手を打ちますよ」
「OK、契約成立だな。契約書とフランソワとの話はこっちで付けておくから頼むぜ。あと俺のお勧めアニメとコミックを礼代わりに幾つか送るから絶対見てくれ」

それからセレンさんは用があると言い、インテリオル・ユニオンのブースへと出かけていった。

「今回はこの機体で戦ってもらう」

ストレイドの調整が9割方終わったところでセレンさんは戻ってきたが、突然資料を投げ渡しそう告げた。
意味が分からず渡された資料を開くとアルドラ製ゼルドナー・ゲーアハト(SOLDNER‐G8)の詳細なスペックが書かれている。

「ゼルドナー・ゲーアハトですか」
「アルドラの新製品の広告を兼ねて使用することになった。報酬はヒルベルト・ゲーズィーベン シリーズのパーツ購入権だ。
まぁ不慣れな機体できついとは思うが頑張ることだな。所詮こちらは僚機だ。文句が出ない程度にやれば良い」
「ヒルベルトですか。確かに優秀と聞いていますが、自分は一応軽量に近い中量高速型なのでタイプが合いません」
「重量級がいつ必要になるかわからん。優秀なパーツをいつでも手に入る状態にしておくべきなのはわかるだろう」
「・・・確かにそのとおりです。しかしヒルベルトは高額ですので余り意味はないかと」
「修理費と弾薬費を削れば良いだけのことだ。当分の間レイレナード社純正製パーツの使用を禁止する」
「・・・は?」
「どうせ機体に振り回されているのだ、これを機会に別のネクストで十分に実戦経験を積むことだな」

口は災いの元、僅かな口答えで自機の使用を禁止されてしまった。当分の間は予備パーツのサンシャシン型でなんとかするしかない。
それから一時間ほどしてアルドラからネクストゼルドナーゲーアハトが運ばれてきた。

「随分と無骨な機体ですね。脚部にいたっては構造そのままじゃないですか。スペック表の内容はともかく、信頼性は大丈夫なんですか?」
「私が設計仕様を練り、実機テストを行ったのだ。問題などない」

不安感を口に出していたとき輸送機から一度聞いたことのある声が聞こえ、操縦席から見覚えのある軍服の男が降りた。

「私のブラインド・ボルドがその証拠だ」

アルドラのリンクス ヤン、彼が直接ネクストを持ってくるとはどういった意図があるのだろうか。
ゆっくりとこちらに歩いてくるヤンさんの顔には何箇所が新しい打撲の痕があるのが気になる。

「・・・その傷はどうしたのですか?」
「あぁ、これは・・・」

何かを言おうとしたが途中で凍りついたように固まる。

「・・いや、訓練中の事故で話すほどの事じゃない。それよりも機体の説明をしなくていいのか?」

何か嫌な汗をかいているようだが大まかに予想はつく。アルドラ系の機体を知らない自分への講義をヤンさんに報酬金と暴力を持って頼んだのだろう。
そうでもなければリンクス戦争を生き延びたアルドラ専属リンクスがこの程度の事でくるわけがない。

「ゼルドナーの体感的なスペックと操作感覚をお願いします」

それから1時間ほど講義を聞いた後、ヤンさんは次の依頼が入っているとの事で急いで自分の整備場へと走っていった。

「AMSはどうだ?」

統合制御体とAMSの調整が終わり、機体とアクセスしたところ戦闘開始まで2分を切っていた。

「良い感じです。違和感はあまり感じません」
「GA製ならこうはいかないな」

そう言ったもののGA製はGA製なりに良いところもある。頑丈な上にメンテナンスが他の企業製のネクストよりも簡単で安価に済むというところだ。
それだけと言ってしまえばそのとおりだが。

「準備が出来たなら早くアクセスしろ。それと作戦内容は覚えているな」
「覚えています。では、出撃します!」

カメラアイがブラックアウトし視界が真っ暗に変わり、カラードにある統合システムと接続し擬似映像が送られてくる。

[戦闘開始]
合成音声が戦闘開始を告げると同時にウィスとイェーイが合流すると予測を立てた地点に向かうためOBを起動。
背部のOBユニットが起動し、多連装の小型ブースターが重量型の機体を加速させる。
重量2脚型に分類されるゲーアハトはゆっくりと速度を上げ、10秒近くかけて最高速度の930に到達。
だが、視界に入ったのは合流するどころかお互いに距離を取っていく2機の姿だった。
スカーレットフォックスは空中に舞うとEKLAKH‐ARMSマシンガンを掃射、狙いは明らかにこちらだが正確ではないためゲーアハトの周囲に着弾している。

「当初のプランどおりスカーレットフォックスの相手をします」

空中に跳んだスカーレットフォックスを追うために跳躍の体制に入る。
大型のシリンダーが装飾なく無骨にまとめられた脚部は太い唸り声を上げながら重量型の機体を空中に跳び立たせた。
空中でBZ‐BROCKENバズーカとGRA‐TRAVERSグレネードキャノンの照準を合わせ単射撃、
反動で機体が後方に流れるが、重量過多に陥っているのにもかかわらずゲーアハトはすぐに安定を取り戻す。

「実戦仕上げと言うのは伊達じゃないってことか」

情報制御体の自動制御はAMS負荷を低下させるためのものだが、アーリヤやライールのようなタイプとなると
、逆にAMSによる精密な機体制御の阻害になる要因になるため存在しなかったり意図的にカットしてあったりする。
良い意味でゲーアハトの自動制御はリンクスをサポートしている。
掃射されるマシンガンの小口径弾がPAを激しく瞬かせ、いくつかの弾丸が揺らめいているPAを貫いて装甲に叩きつけられているが、
最適な距離からかなり離れているため威力のほとんどを発揮し切れていない。

「そっちにミサイルがいったよ!」

バッカニアから通信が入りレーダーに意識を向けるとミサイルの光点がすぐそこまで迫っているのが分かった。
避けきれないと分かり歯を食いしばると襲いくるだろうAMS負荷に備える。そして連続した中型ミサイルの爆発、
ゲーアハトのPAは揺らめき不安定な状態に陥る。爆発が収まり煙の中からゲーアハトが姿を現す。
PAは霧散寸前までダメージを受けていたが、機体そのものには大したダメージを受けてはいない。

「相手は一機じゃないんだよ!何を油断しているんだい!目の前にいるよ!」

聞き慣れた怒鳴り声とは違う声、その声のとおり煙の消えた目の前にはスカーレットフォックスが待っていた。
スカーレットフォックスがEKLAKH‐ARMSマシンガンを発砲、距離190、回避不能距離、
マシンガンの掃射によりPA霧散、GRB‐TRAVERSグレネードキャノンを狙う動作を確認。

「くっ!」

右SQBを使用、なんとか回避しようとするが重量過多の状態で素早い機動が出来る訳がない。
PAが霧散した状態でグレネードが直撃、装甲板が幾つも剥離し飛び散る。

「チーム戦で俺らに勝てると思っているのか?お笑い種だな」

「あぁ」

グレネードの直撃を受けたゲーアハトは衝撃によって急激に落下していく。スカーレットフォックスはゲーアハトの落下したすぐ真上に位置し、
GRB‐TRAVERSグレネードの弾丸を全てパージ、ゲーアハトに大量のグレネード弾が降り注いだ。

「それじゃあばよ」

マシンガンの掃射が立ち上がろうとしているゲーアハト周辺に落ちたグレネード弾を撃ち抜いた。
無差別に爆裂するグレネード弾の爆発がゲーアハトの姿を爆炎の中へと消す。
いくらアルドラのゼルドナー・ゲー・アハトとはいえ、PAの失った状態での連続した爆炎と衝撃波は堪えた。
装甲を何度も叩きつける衝撃に独特の三連胸部装甲にひびが入りひしゃげていく。これだけの爆発となるとリンクスも頭の中を乱される激痛だけではなく、
連続した爆発の衝撃がかなりの負担となり、その分の負荷がAMSに情報として追加され意識を押し潰していく。

「格下だと思ってなめてるからだ」

ウィスは吐き捨てるように言い放ち、スカーレットフォックスをQBTでバッカニアと戦っているエメラルドラクーンの方へと向けた。

「イェーイ、こっちは片付い・・ぐ!」

二連続の爆発がスカーレットフォックスを揺さぶった。
爆発の炎と煙が納まった中には、各部から火花を上げながらGRB‐TRAVERSグレネードキャノンを向けたゲーアハトが立っている。

「頑丈なやろうだ!」

スカーレットフォックスは空になったグレネードキャノンをパージ、身軽になると右斜め下に居るゲーアハトに向かってMP‐0200散布ミサイルを射出、
小型ミサイルの群れは面となって後方からゲーアハトへと向かっていく。

ゲーアハトはMQBで加速すると同時に右へSQBし180度QT,迫ってくるミサイルの中央に向かってGRB‐TRAVERSグレネードキャノンを撃ち込んだ。
グレネードの爆発によって3分の2ほどのミサイルが消えたが、残りはゲーアハトに喰らいつく。
PAに接触したミサイルは爆発し、PAを激しく揺さぶるがその程度でダメージとなるほどゲーアハトのPAも装甲も薄くはない。

「ぐっ・・」

歯を食いしばり激痛に耐えながら両背のGRB‐TRAVERSグレネードキャノンをパージ、
BZ‐BROCKENバズーカとGRA‐TRAVERSグレネードキャノンを構えスカーレットフォックスに向けてトリガーを引いた。

一方、バッカニアとエメラルドラクーンの戦いは距離700での射撃戦になっていた。

「何故だ。何故外される?」

イェーイにとって最適の距離で戦えているが、それでも047ANSRと050ANSRスナイパーライフルの弾丸は確実に回避され、
反撃のMP‐0203散布型ミサイルはエメラルドラクーンに襲い掛かる。

「早くイェーイを援護しなくては」

ロックせずにはなったミサイルに反射的に反応したバッカニアをそのままにスナイパーライフルをゲーアハトへと向けたが、
2条のレーザーがPAを貫きコアに食らいつき、立て続けにPC01‐GEMMAパルスキャノンが直撃、
エメラルドラクーンのPAが急激に減衰していく。
これ以上のPAの減衰を嫌ったエメラルドラクーンは回避行動を取るためさらにスカーレットフォックスの援護を行えない状態に持ち込まれてしまう。

ミサイルの群れがウィスの機体に襲い掛かり、突如受けた衝撃にウィスは混乱、SQBで右へと逃れようとする。
しかしミサイルはさきほどロックせずに射出したエメラルドラクーンの流れ弾に当っただけで狙ったものではなかった。
その様子をバッカニアのフランソワ=ネリスは飽きれ果て口を開いた。

「基本も出来てないのね。坊や?」

焦って回避をしようとしたスカーレットフォックスのPAを貫き2条の蒼い光線がコアに大きな穴を穿つ。
その瞬間イェーイの機体色が灰色に変わり、シミュレーターとの接続を解除、戦闘エリア内から表示が消えた。

「ウィス!」

口数の少ないイェーイもさすがに相棒がやられたとわかり反射的に叫んでいた。

「でも、教えてあげられないわ」

「貴様ぁ!」

エメラルドラクーンはミサイルを全て展開、800ほど離れているバッカニアに向けてMUSSELSHELLミサイルを射出、
中型ミサイルの群れがバッカニアに迫る。

「ただ数撃てば良いと思ってるの?何も分かってな・・・・」

急にバッカニアからの通信が途切れ、繊細だった動きが急に緩慢なものに変わった。迫っていたミサイルを回避しきれず直撃、
連続した爆発がバッカニアのPAをどんどん減衰させていき完全に消滅、その隙をイェーイは狙っていた。
047ANSRと050ANSRスナイパーライフルがPAの霧散したバッカニアに向けられる。
だが、突如胸部を襲った激痛がフランソワ=ネリスの思考を遮り機体が思い通りに動かない。

「こ・・んなとき・・に発作・・なん・・て」

激痛で痛む胸を押さえながら手探りで発作止めを手に取り飲み込んだが、痛みの収まらない内に二つの銃口がこちらに向いているのが見えた。
回避しきれない、そう思ったとき爆発にエメラルドラクーンは飲まれ、衝撃でぶれた銃口から放たれた弾丸は機体を掠めた。

「援護する。今のうちに体制を整えて下さい」

激しく火花を散らしながらゲーアハトはエメラルドラクーンに両手の武器を乱射しているが、
損傷を負った状態では武器の反動に耐え切れず、正確という言葉には程遠いものだ。
初弾以外はエメルドラクーン当る様子はなく、左右のSQBで回避された上にMUSSELSHELLミサイルが容赦なくゲーアハトに襲い掛かっていく。
いくら重量型のゲーアハトといっても、すでに火花が散るほどの損傷を負っている状態で耐え切れるはずがない。

「左GRA‐TRAVERSパージ」

左腕武装をパージしたことで左半身が若干軽くなり、右側に傾いた機体を自動補正しようとする情報制御体を無視、
左SQBを吹かすことで一気にMUSSELSHELLミサイルの追尾を引き剥がす。
無茶な機動で機体のバランスが崩れ、右肩を地面に叩きつけられながら機体は停止した。
次弾は回避できないが、僅かでもこちらに気を向けさせれば十分だ。

「私から意識を外すなんて正気かい!?」

集約された2条の蒼い光がエメラルドラクーンのコアに直撃、衝撃はないはずだが直撃した精神的動揺で機体の細かい制動が乱れていた。
その間にゲーアハトは地面転がったままの状態でBZ‐BROCKENバズーカの狙いを定める。

「その程度でぶれるんじゃないよ!それでも実戦経験者か!」

フランソワ=ネリスの挑発に癇に障ったのかエメラルドラクーンはQBTでバッカニアに向き直り、
MUSSELSHELLミサイルを発射、中型ミサイルの群れが向かっていく。
バッカニアは左肩のPC01‐GEMMAパルスキャノンを連射、パルス弾を受けたミサイルは次々と爆発し届く前に消失していく。

「真正面からのミサイルが効くかい!このド素人が!」

ゲーアハトに意識を向けさせないため再度の挑発、この時イェーイは完全にゲーアハトの事を忘れていた。
怒りに任せてミサイルを乱射している中、ゆっくりとBZ‐BROCKENバズーカの照準はエメラルドラクーンに合わせられた。

「俺を忘れるな」

BZ‐BROCKENバズーカの砲口から撃ち出された砲弾はエメラルドラクーンのPAを突き破り、左背部のMUSSELSHELLに喰らいつく。
瞬時にMUSSELSHELLがパージされ爆発した。飛び散った破片でPAは一気に減衰し霧散する。

「AUTOPURGEか、自分の力だけで戦う気もないのか」

無理な体勢で撃ったためにさらにAPは減少したがすでに勝負は付いている。バッカニアのA12‐OPSの砲身は正確にエメラルドラクーン追いかけていた。

戦闘終了後、セレンさんと共にフランソワ=ネリスに呼ばれた。場所はカラードの整備場ではなく、
カラードから10分ほど車で移動した場所に独立傭兵部隊コルセールの駐屯地まで向かった。
コルセールの駐屯地が見えてくるとセレンさんが驚きの声を上げる。

「まさか戦艦まであるとは、これは驚きだな」

旧式だが国家解体戦争やリンクス戦争で使用された通常兵器が大量に置かれ、旧式だが旧国軍の戦艦や戦闘機、
現行型のノーマルが多数配備されている。そんな中を多くの兵士が機体の整備と陣営移動の準備に取り掛かっている。

「あれだな」

セレンさんの声に視線を向けた。

「・・すごいですね」

視線の先には大型移動艦が待っていた。
国家解体戦争中に建造されたジャステイス級大型戦艦アルカディア、GA社のAFランドクラブやAFギガベースよりかは幾分小型だが、
それでも2~300人は船員が必要と思われるほど巨大だ。到着するとすぐに案内された。
艦内はかなり改造されているのか通路の所々が封鎖されている箇所をバッカニア専用整備場へと向かう間に見かける。
何重かロックされた扉を開くとバッカニアが整備されている姿が目に映った

「ネリス様でしたらあちらです」

案内された先には長い前髪で顔の半分を隠す女性がイスに座っていた。

「あなたがフランソワ=ネリスですか」
「あぁ、あんたがストレイドのリンクスとオペレーターのセレン・・ね!?」

セレンさんの顔を見た途端女性の表情が驚きの顔に変わった。

「!?」

フランソワ=ネリスと思われる女性の顔を見た途端セレンさんの表情が同じように驚きのものに変わる。

「おい・・、お前はヤンの所に言ってゲーアハトの使い方を聞いて来るんだ」
「はっ?」
「命令だ。すぐに行け」
「わかりました」

突然の命令に理由が分からず混乱しているが、命令と言われれば従うしかない。

「ヤンさんの所でゲーアハトについて聞いています」

足早に離れていく男の姿見えなくなり、邪魔者が居なくなった所で二人は口を開いた。

「ふん。フランソワ=ネリスか。BFFのクィーン メアリーシェリーが何の真似だ」
「それはこっちの台詞よ。レオーネ・メカニカのオリジナル 霞スミカ」

お互いに戦闘スタイルが似ていることもあり、国家解体戦争以降何度か話したことがあったが、
リンクス戦争でプロメシュースがアナトリアの傭兵に撃破はされてから当然のようにあってはいない。

「死んだと思っていたが、生きていたとはな。だがBFFに戻らないとはどういうことだ?」
「この体で前のように戦えると思えて?オリジナルの力を失った私にBFFの居場所なんてなかったわよ」

イスにつかまりながら立ち上がると右半分の顔を隠している長い前髪を掻き揚げた。隠されていた右半分の顔に酷い傷痕があり右目が潰れている。
そして右肩から先の服が垂れ下がり、右膝から下が義足になっている。

「それだけ失っても死に損なうとは不運だな」
「余計なお世話よ。それよりあんたがオペレーターをやっているなんてどういう風の吹き回し?そろそろ老け込んだのかしら?」
「なっ!?同い年の貴様に言われる覚えはないぞ!」
「男日照りが続き過ぎてもう枯れちゃったんでしょ?」
「根も葉もないでたらめをいうな!」
「冗談にきまってるでしょ。気持ちが老け込んだって意味よ」
「・・・・それで何のようだ」

セレンは怒りを抑えると本題に入った。

「このとおり私はもう役に立たない。優秀なリンクスが必要なのよ」
「・・・奴はリンクスではない。お前とは会わんさ」
「言っている意味が良く分からないんだけど?」
「まぁ、奴はお前のパートナーにはならんさ」
「そうかしら?男が欲しがるものなんて三種類しかないのよ?」

左手でシャツのボタンを外し、胸元を大きく開いてみせる。治療の痕がいくつか残ってはいるが、その辺の女性に比べれば彼女はいまだ充分すぎるほど魅力的だろう。

「その顔と体で色仕掛けか?無理はしないことだな」
「あら?未経験のあなたよりは男の扱いは慣れてるつもりよ?」
「それならやってみることだな。なんなら専用回線のアドレスも教えようか?」

余ほど自信があるのか通信機を取り出すとディスプレイにアドレスを表示させた。

「・・・まさか同性愛者って言うんじゃないでしょうね」
「さぁな。奴から女の話も男の話も聞いたことはない」

少し考えた後メアリーはアドレスを自分の通信機に移したが、それでも霞の表情には余裕が伺える。やはり何かあるとメアリーは思ったが、問い詰めたところで話す女ではない。

「まぁいいわ。邪魔さえしないでくれれば」
「邪魔などしないさ。せいぜい頑張ってみることだな。あぁ、それと次からは直接依頼して来い。昔馴染だ、少し位は安くしてやる」
「少し・・・ね」
「それじゃ失礼する。待たせているんでな」

霞・・、セレン・ヘイズは整備場の外に通じる扉の砲へと歩き出した。

「えぇ、そのうち私のものにするけどね」

セレン・ヘイズは背を向けたまま軽く手を振ると整備場から出て行った。

ダン・モロの戦い・・・・(オリジナル依頼)
視聴から16時間を越えたところで映像がアニメからセレブリティ・アッシュのカメラ映像へと変わった。

「ダン・モロめ、面倒な渡し方をしてくれる」

送られたコミックの裏表紙に戦闘映像をアニメの中に入れておいたと書かれていた。

「奴らしい隠し方だが、48時間もののアニメに入れる事はないだろうに」

セレンはため息をつくと記録装置のスイッチを入れた。

周囲は山に囲まれた渓谷地帯のようだが、そこら中に設置された砲台と多数のノーマルが添加されているのが映し出される。
夕暮れ時なだけ若干視界が悪いが、ネクストにとっては問題はない程度だろう。戦闘が開始されるとノーマルを次々と撃破し、
砲台からのミサイルやエネルギー砲を回避している。

「ふん、予想していたよりもまともに動けているじゃないか」

二分ほどしてノーマルや砲台が片付いたのかセレブリティ・アッシュの動きが止まった。

[ネクストの増援?もう片がつきかけてるのにいまさら?]

ダン・モロの呟きが聞こえ、それから数秒して不明ネクストが姿を現した。
アーリヤヘッド・コアはイクバール時代のソーラ・腕はユディト・脚部はオーギル、そこまで夕暮れでもすぐに判断できた。

[よう、初めて見る機体だが新人かい?ここの排除ならすでに]
[ランク28 セレブリティ・アッシュ確認、戦闘開始]
[は?何を言って・・・]

最後の言葉を言う暇もなく向けられた二挺のMARVEが咆哮を上げた。
回避が遅れたために数発の弾丸が機体に浴びせられているが、右SQBで弾丸の掃射から逃れる。

[俺が狙いかよ!?心当たりなんてまったくないぞ!]

回避行動と同時にライフルの照準を合わせようとした時、二つの光が敵ネクストから放たれ視界が遮られる。水平フレアを目くらまし代わりに使ったのだろう。
だが、その程度でネクストのFCSが誤作動を起こす訳がない。視界が光に覆われている中撃ち出された弾丸は敵ネクストに当っているはずだ。

[おいおい、ほとんど動いてないが奇襲しか出来ないのか?]

映像には移ってないが、レーダーにはほどんと敵ネクストが動いてないのが見えているのだろう。
光が収まったあとには両背のグレネードを担ぎ、ほぼ無傷で立っているネクストの姿が映った。

[単発とはいえほとんど動かずにかわしたのかよ・・・。冗談じゃねぇ]

爆炎が画面を覆いつくし、セレブリティ・アッシュの装甲片などが飛び散る映像が映る。

[くそ!ちょっとは手加減しやがれ!]

爆発の衝撃で機体の動きが止まっていたが、機体が急加速し爆煙と炎の中を突っ切ると右腕のブレード光が一瞬映った。
敵ネクストはグレネードを折りたたみMARVEを構えようとしていることから、一気に間合いに入り込んで切り倒すつもりだろう。
ブレードを振り払う途中、セレブリティ・アッシュの右腕をMARVEの銃身で受け止めた。
だが、セレブリティ・アッシュの左腕のライフルは敵ネクストのコアに突きつけられている。だが、敵ネクストも突撃ライフルをBFFコアに突きつけていた。
お互い同時に放たれた弾丸はコアの装甲板を容赦なく抉り取っていく。
連射力に長けるMARVEの弾丸は連続した咆哮を上げBFFコアの装甲を削っていくが、先に距離を取ったのは敵ネクストだった。
セレブリティ・アッシュのコアには無数の銃痕ができているが、敵ネクストのコアには深い銃痕がいくつも穿たれている。

「BFF製のコアは思ったより丈夫だな。今後購入を考えてみるか」

[想定以上ノ損傷ヲ確認、戦闘中断、撤退開始]

敵ネクストはきびすを返すとOBで離れていく。

[は・・はは、冗談じゃねぇぜ・・・。こんなの]

映っていた画面が暗く変わりまた元のアニメへと戻った。

「黒い旧式ネクストか・・・、まさかな」

いくつかセレンには心当たりがあったが、それよりも気になることは別にあった。

「・・・しかしあの声はどこかで聞いた覚えが」

しかし、いくら考えても思い出すことは出来なかった


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