Written by 独鴉
ミッション衛星破壊砲基地襲撃・・・梟の思惑とネリスの願い
ホワイト・グリントの機体を持ってカラードに帰還したリンクスをセレンは驚いたが、事情を聞いたのち整備の完了したサックスに乗るようリンクスに伝えると、
届いているはずの情報を確認するためオペレートルームにセレンは向かった。
カラードに所属するものならば誰もが自由に使える場所だが、セキュリティレベルは高く監視もされていない事を考えれば一番安全な場所といえる。
オペレートルームに入ると個人認証の為セレンはIDカードと手を読み取り機の上に置いた。
個人認証が数秒で行われるとルーム内に光が灯り機器の使用が可能となる。
端末の前に据えられたイスに座ると自分宛に届いているはずのホワイト・グリントの機体情報の確認を始めた。
アブ=マーシュの名前で数ギガバイトを超える情報が届いており、僅かな文面が添えられていた。
【君が自由に空を舞えるよう、願っているよ】
空、その言葉にどれだけの意味が込められているかいまのセレンにはよく分かった。空を覆う自律兵器をどうするかは今後の企業の動きに関わり、
それはカラードに所属し企業の意図で動く者達、つまりリンクス達がどう動くかによって決まってくる。
企業から離れた位置にあるラインアークとて、ORCA旅団に何かしら手を貸していた可能性は否定できず、
全ての企業・勢力にとって信頼できる戦力が不足している今は危険な状態なのだ。
セレンは機体情報をレイン宛に転送すると到着したホワイト・グリント系パーツの登録確認、
これから向かわなければならない衛星破壊砲襲撃ミッションの準備に取り掛かった。企業連からの情報は限られ、
破壊目標である衛星破壊砲の規模と個数、そして戦場となる地域の大まかな地図しかない。
予想される敵戦力についてはほとんどなく、防衛しているネクスト一機についても外見が確認できる程度に留まっている。
「これで目標の破壊をしろというのか!」
元より万全に備えることは難しいが、敵戦力数が分からなければネクストの武装を決めるのは難しい。
高威力のバズーカ系やグレネード系となれば弾数も限られるが単体ネクスト相手なら申し分ない。
しかし相手が複数となれば弾数は足りなくなり、必然的にライフルやミサイルなど弾数と威力のバランスが取れたものとなり易い。
輸送機にサックスが積まれるぎりぎりまでセレンは悩んだ挙句、長期戦闘が可能なように武装を積むようレインに伝えた。
「長期戦闘ねぇ。さすがにそれだけじゃ私も困るわ」
セレンからの要請にさすがのレインも困ったが、元々積載容量が大きいサックスに他の武装を積むのはそれほど難しいことではなかった。
10分足らずで武装の積み替え終えると輸送機内でAMSと武装の微調整を行える段階に仕上げ輸送機に積み込まれた。
高速エアキャリアーが戦闘エリアに到着すると二機のネクストが投下された。赤銅のような塗装と単眼の機体の肩部に直接マウントされた二門のバズーカ砲、
NSSタイプが製造されて旧式化しつつあるSSEモデルだ。搭乗するリンクスの実力によってGAが誇る最強ネクスト フィードバックであり、
その名のとおり戦闘経験を確実に実力に反映し実力を付けてきた熟練兵。その後方には修理の終わったサックスが降下していた。
相変わらずメリーゲートと同様の基本アセンブルにアクアビット製EUPHORIAを積んではいるが、
GAN02-NSS-WRライフル2丁にWHEELING01ミサイルとGAN01‐SS‐GCガトリングを積む長期戦型、
両手に持つ武装もGA製GAN02-NSS-WRライフルで装弾数が600発もあり長期戦に向いている。
セレンの長期戦向きのアセンブルという言葉に出来る限り答え、さらに火力の充実も考えたレインなりの回答だった。
「グローバル・アーマメンツ社 ネクスト、フィードバックだ。君の活躍は知っている。老兵は気にせず、好きにやりたまえ」
老兵、ローディーは自らのことをそう語るが、ホワイトグリントがいなくなった今彼ほど経験と技術が高水準で纏まったリンクスは居ない。
降下地点から2機のネクストが前進をはじめたがすぐに1つ目の衛星破壊砲の防衛設備の射程に入ったらしい。
衛星破壊砲の周囲に建設されている4つの砲台のうち射角内と思われる2つの砲台から照射されたレーザー光が2機に向かっていく。
しかし単なる砲台の攻撃などネクストの移動速度を鈍らせる程度の効果しかない。
オーバードブーストを使用した2機のネクストは左右への蛇行を利用して回避しつつ数秒で接近、
GAライフルの連射を受けた砲座は爆発し、簡単に攻撃不能な衛星破壊砲との接触を許してしまう。
「防衛設備と戦略がずさん過ぎる。君も罠に注意したまえ」
ネクストを防ぐにはネクスト以外不可能であるにもかかわらず、一つ目の衛星破壊砲の防衛には出撃してこなかった。
ダミーだったのかそれとも何かしらのORCA旅団側も想定外の事態が起きているのか、判断するには情報が足りないが一気に攻めるには好都合といえる。
サックスは設置されていた残りの砲台を攻撃の出来ない上部から破壊、
湖を挟んで対岸にある2機の衛星破壊砲に向かおうとした時開放回線に通信が入った。
「メルツェルの小僧めが、きつい仕事を押し付ける。 掃射砲を攻めるとなれば、企業の連中も真剣だろうに」
通信機からはローディーと同じくらいの年齢と思える声が聞こえる。どうやら企業の動きはすでに掴んでおり万全の対策を整えているらしい。
つまり一つ目の衛星破壊砲はダミーまたはこちらの連携や動きを確認する為の捨て駒にしたのだろう。
「まぁ、こいつの実戦テストには丁度いいわ。 森があれば、木の葉も隠し様があろうよ…」
通信が終わると同時に湖畔前の丘を乗り超えた2機を待ち構えていたのはトーラス製ARGYROS。
自ら放出するコジマ粒子から身を守る為に作られた分厚い装甲と機体周囲を対流するコジマ粒子量と制波性能、
総合防御性能に関して全てのネクストを上回り防衛に向く機体だ。
両手に持つGAライフルを構えたサックスが接近しようとした時、ARGYROSのプライマルアーマーが収縮を初めた。
強烈な光とプライマルアーマーの収縮からアサルトアーマーかとリンクスは考えたが、背部に装備していた後輪が機体上部に移動、
その様子を見ていたローディーはアサルトアーマーではないと判断し叫んだ。
「いかん! 回避しろ!」
ローディーの言葉にとっさにリンクスは肩のブースタを点火、機体を横にスライドさせるとネクスト兵装のコジマキャノンの数倍、
エネルギーの濁流とも言えるほどの量のコジマ粒子が先ほどサックスが居た場所を流れていく。
ローディーは冷静に流れていくコジマ粒子の状況を確認し武装を推測、近い特性を持った武装とその類似点から威力の予想を立てていく。
「なるほど、新型のコジマ兵装か。遅いが、被弾すれば致命傷だ。気をつけたまえよ」
同じようにリンクスも状況を見ていたが、ローディーとは違い敵ネクストの状態変化を見逃さなかった。
「…しかし、PAを代償に失ったようです」
ARGYROSの機体表面をコジマ粒子が対流しているなら独特の光を発するのだが、
その光は失われ機体を覆っていたプライマルアーマーが無くなっている事を伝えている。
「ふむ、アサルトアーマーを射出できるようにしたということか。だがあちらは再展開時間に対する対策も出来ているようだ」
肩に装着している球状の物から突起物が突き出すと緑色の粒子を放出、失われていたプライマルアーマーは光を放ち始め再展開が行われていることがわかる。
通常であるならばアサルトアーマーを使用してから十数秒以上の再展開時間を要するが、どうやらその時間を劇的に短縮できるようだ。
「プライマルアーマーが展開していなければいいのならどうにかできます。 そちらは衛星破壊砲をお願いします」
中量級のフィードバックに少し遅れていたサックスはガトリングとミサイルを担ぎARGYROSに向かっていく。
「了解した。 手が必要となればすぐに呼んでくれ」
フィードバックは陸上を進む迂回ルートを進み始めたが、エーレンベルグ周辺に設置されているエネルギー砲の攻撃が集中し、
接触距離に到達するまで時間はかかってしまうだろう。
「フィードバックが相手であればまた余裕があったものを」
ネオニダスは少々苦い顔をしながらサックスに向けCANOPUSを向けた。ガトリングやマシンガンなどを近距離で連射されれば、
強力なプライマルアーマーといえど長く耐えることは出来ない。
16連装のミサイルの爆発が追加で襲い掛かってくる以上プライマルアーマーの減衰は避けられず、
PAと装甲の両面に特化し過ぎた為機動力に難があるARGROSにとって苦手なタイプといえる。
だが火力と実弾装甲を重視しているサックスにとってレーザーやプラズマなどエネルギー兵装で固められている目の前の機体は危険な相手だった。
交戦開始してすぐに直撃するハイレーザーは確実にサックスの装甲を溶解させていくが、
連射が効かない上に元よりエネルギー効率の悪いARGYROS、エネルギー消費量が大きい武装を持つため連続攻撃回数も必然的に減ってしまう。
一方実弾兵装で揃えられているサックスの攻撃は威力こそ低いものの機体負荷はほとんどなく、
連続した攻撃を行える利点があるが一撃の火力は間違いなく劣っており、満足に回避が出来ないサックスが不利なのは間違いなく、
7発のハイレーザーとプラズマ粒子が直撃したサックスの装甲は所々溶解している。
それでもなんの問題もなく動けるのはGAのブロック化された積装型装甲によるものだが、元よりエネルギー系に弱い設計故にそう多くは耐えられない。
「児戯だのう おまえさん。まるでよちよち歩きだ」
重量級でなおかつ燃費の悪いARGYROSを自由に使えるネオニダスからしてみれば、
単射の回避もろくに出来ないリンクスの技術など児戯に等しいものだ。リンクスはブースタを利用した跳躍で機体を跳ばせると肩部ブーストを点火、
肩と背部のブースタを利用して空中で蛇行しながら降下していく。
「なんのまねかはしらんが」
月輪がトリガーを引く寸前サックスの背部スースタを切り右肩のブースタが大きな噴出炎を上げる。
機体が急加速しハイレーザーの光は機体の横を貫き続いて撃ち出されたプラズマ粒子はブーストカットによる自由落下と、
ブースタによる加速によって照準のずれから僅かに右肩をかすめただけだった。サックスは再び通常ブースタを起動させると落下速度を落とし着地、
再び跳躍すると空中で蛇行を繰り返しながらガトリングと16連ミサイルが撃ち出される。
凹凸のある地面を滑るように駆ける月輪の移動先にガトリングの掃射が打ち込まれ地面に無数の小さな穴を開けてしまう。
ブースタで機体を浮かせているとはいえ完全にその影響を受けていないわけではない。
僅かに乱れるバランスは速度を低下させミサイルが月輪のプライマルアーマーに接触、
連続した爆発に覆われ強固なプライマルアーマーは揺らぎ出力が低下していく。
「……なるほど、リンクスだ。テルミドールが気にするわけだな」
さすがにプライマルアーマーを減衰させる攻撃には月輪にもつらく、徐々にダメージが蓄積し損傷はその丸い装甲を歪め攻撃が効果的であることが分かる。
戦闘が始まってから3分程経過した頃にはサックスが一応の優勢を保ちセレンは安心したが、
VOBと思われる反応がオペレートルームのレーダーに映った。
「増援か、データ照合の結果以前交戦したアステリズムだ。 注意しろ」
セレンは以前戦闘したデータからアステリズムの情報を抽出、そしてアステリズム到着予定位置からすぐに対処が不要との指示をサックスに送信。
武装及び戦術から大まかな対処法が記載された情報をリンクスは流し読むとレーダから意識を外した。
ロングレンジ武装を持たないアステリズムの到着予測位置から早急な対処が必要ないとセレンの指示に従った形だ。
「加勢するぞ。ネオニダス」
開放回線に通信が入ると同時に銀色の機体が湖畔の対岸に降り立った。アセンブルを若干変更したのか、
右手に持っていたHLR71‐VEGAがHLR01‐CANOPUSに変更されている。
「ジュリアスか、すまんな。 私も少々老い過ぎたようだ。 フィードバックの方を頼む」
中破に近い状態であるにも関わらず残りのエーレンベルグの防衛を任せ、月輪はサックスとの戦闘を続けるつもりらしい。
エーレンベルグが全て破壊されてしまえばORCA旅団の計画が遅れてしまう可能性があり、無理をしてでも企業戦力であるネクストを撃破する必要があるのだろう。
「わかった。ネオニダスも無理はするな」
「ネオニダスか、聞き覚えのある名だ」
戦場で開放回線を使用して行われている通信をすべて後方のオペレートルームまでリンクスは繋いでいる。
むろんネオニダスやジュリアスと名乗る敵ネクストの通信もむろん傍受していた。
「ほう、覚えていたか。霞スミカよ」
お互い知っているのかセレンはサックスを経由して開放回線に繋げる。
どこか苦々しさを感じるネオニダスの声に、セレンは自らの持つ情報がネオニダスにとって不利なものであることがわかった。
「LINSTANTはお前の技量に合わせて作られたと聞いている。失敗作と聞いているが」
ネオニダスと話しながらもセレンはトーラスから送られてきた情報と戦闘で得られた情報を分析、リンクスに適切な攻撃を行わせるため特性を調べていく。
「確かにプライマルアーマーに頼り過ぎ装甲を疎かにしてしまった。傑作機とは言えんな」
「そして今度は装甲とプライマルアーマーを共に強化か? こりん奴だ」
「私は乗り手を生存させる機体を考案しているだけだ。周りがどうなろうともな」
ARGYROSからのコジマ粒子放出量は多く、地上を汚染する度合いは並みのネクストよりも高いだろう。
だが機体から放出される高濃度のコジマ粒子は高速で対流し、実弾だけではなく光学兵器までもその影響によって威力を落されてしまう。
身を守る為に他全てに起こる影響を無視し追求した結果は確実に表れていた。
「だがそれも無駄だったようだな。お前の機体はもう限界だ」
ガトリングとミサイルの装弾数の半分以上を撃ち込まれた装甲はすでに限界に達しており、
アステリズムの増援が遅れていれば目標と通常部隊の排除が終わったフィードバックとの共同戦によって撃墜されていただろう。
「君のリンクスとて余裕があるわけではあるまい。ハイレーザの威力は決して低くはないのだぞ」
ハイレーザーとプラズマ粒子によってサックスの装甲は部分的に溶解しており、溶解したところに再び撃ち込まれれば内部にまで及ぶ可能性はある。
「私の教え子がそう簡単に狙わせると思うのか。 甘く見るなよ ネオニダス!」
セレンは解析と入力の終わったデータをサックスに送信、サックスとてただ撃たれていたわけではない。
月輪の照準が正確ゆえに装甲の厚い正面に損傷が集中し、間接部など弱い所にはいまのところ当たってはいない。
正面での撃ち合いに重点を置いたNSSの設計は充分にその力を発揮し、光学兵器の攻撃にも耐えている。
その頃フィードバックは二機目の衛星破壊砲の機能を停止させ、残り一機を停止させる為向かおうとした時白銀のネクストが視界に入った。
すでにGAオペレータから連絡が入っていたローディーは機体を旋回させると敵ネクストが向かってくる方向に向きなおした。
「エメリーか、確かジョシュアの再来と呼ばれる天才と聞いているが、まさかORCAにいたとは……」
リンクス戦争が始まる前、粗製とまで言われたローディーと対照的にジュリアス・エメリーは天才と呼ばれ、GAにもその情報が伝わってきたため名を覚えていた。
「粗製と言われた貴方がどれだけ変わったのか……、見せて貰おう」
長時間戦闘を行うことができないローディーにとって避けたい相手だが、振り切る事も説得して戦闘を避けることができる相手ではない。
フィードバックとアステリズムは水上で空中戦を始めた。
時間が経つにつれハイレーザーの発射タイミングを覚え始めたリンクス相手にネオニダスは苦戦し始める。
元より装弾数の少ない武装を積んでいるだけに無駄撃ちは出来ず、必然的に攻撃タイミングが限られる為読まれ易い。
クイックブーストの終了位置、着地制動、機体の切り替えしによる減速と誰でもこの程度は分かることだろう。
だがリンクスはクイックブーストを多用もしなければ、着地寸前のブースタ使用未使用はその度異なり、
RAVENが行う基本的な操縦のフェイントもきっちり行っている。一方サックスの距離を取った場所から撃ち出される32連ミサイル、
プライマルアーマーを削るガトリングの掃射はやっかいなものでありネオニダスにとってやりにくい相手だった。
お互い決め手となるのはサックスが装備している32連ミサイルと月輪のアサルトキャノンのみ、
リスクなしに連続した攻撃が行えるサックスのほうが有利といえるだろう。しかしアステリズムが増援として現れたため、
サックスは武装ライフルに切り替え弾薬の節約と損傷を抑えるため最長距離から近づこうとしなかった。
1分程して各部から激しい火花を上げている月輪を視認、限界に達している事がわかるとGAライフル最適距離である250程度まで接近し仕留める体制に入る。
空中から地上を駆ける月輪に対してサックスが上を取ると、月輪は左腕のプラズマライフルを地面に撃ち込み、
プラズマ粒子がレーダー機能を失わせ、光に覆われた月輪のCANOPUSはサックスの頭部に照準を合わせトリガーを引いた。
さすがに光に覆われさらにレーダーが利かない為、サックスの頭部にハイレーザは直撃し強烈な光が視界そのものを奪い去った。
「これで終いだ!」
エーレンベルグの防衛を任せられたときネオニダスは襲撃してくるだろう人物をピックアップ、
入念に調べ上げ攻撃パターンや傾向から対策を立てていた。そして調べた結果リンクスの決定的欠点は元RAVENで在った為か武装の最適距離を保つ癖を見つけ、
月輪の損傷が酷くなり最後の攻撃を得意とするライフルの適正距離に迫ることは予測済み。
アステリズムが表れてから待ち続けたこのタイミングをネオニダスは見逃すことも逃すこともなかった。
放出されたアサルトキャノンは視界を失ったサックスを覆った。ネオニダスの計算ではGA機のプライマルアーマーでは耐えられず、
さらにハイレーザーやプラズマ粒子によって装甲は部分的に溶解しており確実に致命傷となる。
だが結果は違い全体的に装甲は溶解しているもののサックスがコジマ粒子の光を通り抜けてきた。
「なんだと!?」
機体周囲に展開されている電磁フィールドによって維持されているコジマ粒子の対流領域、
その領域を背部のユニットによって照準方向に誘導路を作り出し爆発したコジマ粒子を流し込む。
それ故にその誘導路に干渉した敵ネクストのプライマルアーマー内部にコジマ粒子が流れ込み、
供給過多のコジマ粒子がフィールド維持限界を超え霧散し機体を溶解させる。
またフィールドを展開していなくとも接触した箇所から誘導路に穴が開きコジマ粒子が噴出し装甲を溶かし尽くす。
だがサックスはアサルトキャノンにぶつかる前に腰部ブースタを点火し急停止、バージしたGAライフルに接触したフィールドは拡散し、
放出されたコジマ粒子はライフルを溶かし尽くした。接触前に放出されたコジマ粒子はサックスのプライマルアーマーを消失させ、
装甲を溶かしたが距離が離れていた為ネオニダスが考えていたほど損傷を与えることはなかった。
「まさか、ここまでとはな。…遂げろよ、メルツェル」
プライマルアーマーを失いハイレーザーとプラズマライフルを使用した月輪には回避するだけのエネルギーは残されておらず、
撃ち出されたミサイルの群れが装甲に接触し爆発煙に飲み込まれた。3秒近く爆発煙に姿を消したあと煙が晴れた中からはコジマ粒子を各部から放出し、
完全に機体機能を停止した月輪が姿を現した。しかし撃破したとはいえサックスも機体機能に障害が発生し継続戦闘を行うのは難しい状態となっている。
[システムエラー発生、制波機能を停止、プライマルアーマー展開不能]
統合制御体からネクストの中核をなす機能の内ひとつが使用不能になった事が伝えられセレンは舌打ちをした。
まだフィードバックが戦っているネクスト アステリズムが残っているが、
装甲自体エネルギー系に弱いGA系がプライマルアーマーを失った状態でエネルギー兵器を持つネクストを相手にするのは自殺に等しい。
「無理と思うなら退け。お前に判断はまかせる」
無理に退かせた所でリンクスが納得しないことはセレンも分かっていた。結局戦場に立っているリンクスが判断し、
戦うというならばリンクスが生きて戻れるよう作戦や情報指示をしてやることが自らに出来ること。
「まだ機体に問題はありません。フィードバックの援護に行きます」
やれやれとセレンはため息をつくとレインを呼び出すべく電話を手に取った。
「分かった。こちらからシステム復旧できないか手を考える。それまで無茶はするな」
「了解です。……よろしくお願いします」
サックスは脚部に格納していたGA01‐SL‐WHハンドガンを掴むと水上で空中戦を行っている2機に向かっていく。
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