Written by 独鴉



未確認AF撃破・・・
 半年以上サックスを使い続けていたが、カラードに申請していたアーリヤ系パーツの購入許可が下り、整備士総出で機体の調整が行われていた。
新しく納品されたアーリヤは初期状態のままの為、各パーツ・ジェネレータ・ブースタ系の調整、そしてAMSの設定等が必要だった。
まだ整備が未完了のまま依頼があると呼び出されたリンクスはカラードのミーティングルームに居た。GAからの依頼らしいが
どうもおかしなものだった。GAのランドクラブを改修したAFらしいが詳細な情報は何もなく、テスト中と思われるAFの確認と
破壊が依頼内容だった。

「情報がそれだけなのか?報酬が高いとは言え、これでは我々も依頼を断らせてもらうぞ」

 ミーティングルームではGAから提示された情報が余りにも足りないため、本来ならば競合する依頼もなくGAからの依頼なら
大抵依頼を受けてしまうのだが、情報の少なさからセレンは依頼を受けるのを躊躇していた。

「まぁ情報が少ない故の高報酬だがリスクを差し引いても悪くは無いと思うぜ?」

 GA仲介人の言うとおり確かにAFランドクラブの改造型とはいえ、AF破壊報酬の平均から考えれば2倍以上の価格はリスクを
見込んでも良い依頼と言えるだろう。結局10分ほど交渉が行われた後衛星画像や望遠光学カメラなどサポートを追加させGAの
緊急依頼を受諾、ミーティングルームから格納庫へと向かう間に僚機にメリーゲートを選択した。以前共闘した事があるため戦術の
組立てが容易であり、何よりも高速設定のアーリヤ故に中距離以上の火力が乏しいストレイドには苦手距離を補える最良なパートナーだった。
 格納庫前ではメイ・グリンフィールドが僚機依頼を受諾しリンクスを待っていた。数ヶ月ぶりに会えたのが嬉しかったのか
メイはスマイリーの愛称に劣る事のない笑みを浮かべるようだったが、顔の輪郭しかおぼろげに見えないリンクスには判別できなかった。

「後方支援は任せてね♪それと依頼が無事終わったらお話でもしましょうね♪」

 メイはリンクスにそう伝えると、鬼の形相を浮かべているセレン・ヘイズから逃れるようにメリーゲートの待つ格納庫へと向かった。
目がほとんど見えてないリンクスも背後から感じる殺気からセレンの機嫌が悪いことは直ぐに解ったが、何か話しかければ余計機嫌が
悪くなるため黙ったままストレイドの置かれている格納庫へと向かった。

旧ピースシティ・・・
 砂漠と化した旧都市エリアは点在する廃ビルがその面影をかろうじて残していた。目標とするAFまで4000地点に
ストレイドとメリーゲートは降下。長距離レーダーを持つメリーゲートが周囲の安全を確認すると移動を開始した。

「メリーゲートよ、こちらもはじめるわ。それにしても怪しい依頼を受けるものね。あなたも」

 彼女とて依頼内容に疑問があったわけではない。後方に聞こえないようリンクスとの直通回線での通信で自らも任務内容に疑問を
持っていることを伝えた。1分ほどして吹き荒れる砂塵を抜け有視界距離に接近するとその正体がわかった。

「球体の…あれはソルディオス砲か」

 ソルディオス砲、元GAEが開発した最悪のコジ兵器であり、ネクストを遥かに超えるコジマ汚染を巻き起こす故に悪夢の
兵器とまで言われていた。しかしGAEの解体と同時にソルディオス砲は消え、トーラスからもそういった情報は無い。

「気を付けろ。いくらネクストでも何発も絶えられる代物ではないぞ」

「大丈夫よ。メリーゲートの射程と火力、そしてあなたの機体ならソルディオスキャノンが発射される前にAFの死角に入り込めるわ」

 ランドクラブ型AFの欠点はAFギガベースよりも射程が短く、上部砲門の下方限界距離を割ると何も出来なくなることだ。
その事はリンクスもメイどころか全てのリンクスが周知していることだ。セレンは直ぐに攻撃戦術を組立て二人に送信、情報を
確認するとそれに従って2方向に別れ改造AFに向かった。
 改造AFまで距離1500を割ったとき、AF頭頂部に設置されていた球体のソルディオス砲が空中に舞い上がり飛行行動を開始した。
さすがに自律飛行は予想の範疇を遥かに超えており、一時的にネクスト2機の動きが止まった。

「分離飛行だと!気をつけろ!敵ソルディオス砲自律しているぞ!あんなもの浮かばせて喜ぶか!変態どもめ!」

「何コレ…ふざけてるの」

 自律飛行を始めたソルディオス砲は動きの止まっていたメリーゲート目掛けコジマキャノンを発射。一時的に止まっていたとは
いえ一射目を回避、しかし6機もの自律飛行するソルディオス砲の連続したコジマキャノンを回避するのは不可能だった。
3射目と6射目の直撃を受け装甲がコジマ粒子による侵食作用を受け溶解していく。
 しかしGAの誇る装甲板技術とその重厚な見た目は伊達ではない。メリーゲートの装甲はコジマキャノンによって
若干溶解してはいるものの、内部構造への損傷はなく中破にさえいたっていない。

「GAから命令が着ている。メリーゲートは撤退しろ」

 GAにとってメイ・グリンフィールドはローディに次ぐGAの主力リンクス、危険度が余りにも高い任務なら撤退させ、
改造ランドクラブの射程外からAFギガベースで破壊する手もあるのだ。

「ごめんなさい。メリゲート戦域外まで退くわ」

 メリーゲートは確かに重装甲ではあるがソルディオスが相手となれば話は違った。ソルディオス砲は高密度圧縮された
コジマキャノン、ネクスト級が持つ物よりも遥かに密度が高く、PAを持つネクストでさえ2発から6発程度で大破してしまう。
装甲よりも回避に長けた機体ではなければ相対するのは危険だった。
 リンクスの駆るストレイドも廃ビルの間を抜け、ソルディオス・オービットキャノンから逃れていた。

「これを使うしかないか」

 廃ビルの間を抜けながら左背の武器を担いだ。アクアビット製INSOLENCE、GAのネクスト研究所でデータ収集用に
保管されていたものを無理を言って購入したものだ。レイレナード社のパーツとアクアビット社のパーツは互換性が高く相性が良い。
簡単な依頼なら実射してみようと装備していたのだが、こんな依頼になるのであればMSAC製のミサイルでも搭載しとけば
よかったとリンクスは後悔していた。トリガーを引くとコジマ粒子のチャージが開始され緑色の光が集まっていく。それと同時に
PAが徐々に低下していき、ジェネレーターからPAに供給されているコジマ粒子を消費してチャージしていることがわかる。
 ストレイドはMQBでその場から離脱するとソルディオス砲のコジマキャノンが廃ビルを撃ち砕き緑色の粒子が舞い上がる。
自律飛行するソルディオス・オービットはAIによって制御されているのか正確だが先を読んで撃つという動作はなく
ロックをしたのちトリガーを引く。機械的な攻勢だが数と一発の破壊力は気を抜ける代物ではない。
 フルチャージまで約15秒、その間PA形成のために送られるはずのコジマ粒子は に消費され、さらにソルディオス・オービットの
放つコジマキャノンの着弾により放出されるコジマ粒子の干渉作用によってPAはどんどんその輝きを失っていく。

「くそ!」

 普段口に出さない悪態を吐きながらMARVEを撃ちながら廃ビルの間をすり抜けコジマキャノンを回避、精密射撃が
不可能なMARVEで回避しながらの射撃では充分なダメージを負っている様子は無い。回避しながら改造AFとの距離が
3000ほどになるとソルディオス砲は追撃をやめAFへと戻っていってしまった。
リンクスは離れた場所で
ソルディオスの状況を確認、ソルディオス・オービットは約2分毎にランドクラブへと戻り接続している。時折起こる突風に
よって砂塵が巻き上がり視認しにくいが、恐らく浮遊の為のエネルギーとコジマ粒子の補充を行っているのだろう。その接続時が
隙なのだがAFの責任者も馬鹿ではない。時間差を置いて3機ずつの接続によって絶えず残り3機のオービットが改造AF周辺を
警戒している。その時強風によって砂塵が巻き上がり視界が断たれる。

「砂塵か…」

 程度があると言っても砂塵は一時的に視界情報を著しく低下させ、混じっているだろうコジマ粒子が光の反射さえも
遮り僅かな間だけ暗闇が覆ってしまう。出撃前に得たエリア情報では風速30Mクラスの突風が時折吹くとあった。だが
実際には竜巻のような強烈な突風が吹きあれ、視界を遮った上レーダーにノイズが走る事から重粒子も含んでいるのだろう。

「やる価値はあるか」

 風向きは幸い改造AFに向かっており砂塵もそちらへと流れていた。リンクスはPAを切ると巻き上がる砂塵竜巻の
中に突入した。激しい砂塵はマッドブラックに染め上げられた機体塗装を剥がすが、視界はまったくなくレーダーも
ノイズに覆われていた。
 数秒後砂塵竜巻から飛び出すとフルチャージされたアクアビット製コジマキャノンを射出。砂塵竜巻に紛れ近距離から
放たれたコジマ粒子はソルディオス・オービットに直撃、圧縮されたコジマ粒子は装甲を侵食し内部に蓄えられたコジマ粒子を
放出しながらソルディオス・オービットは爆発した。
 しかしチャージされていたコジマ粒子を放出し再チャージしなければ射出不可能状態になってしまう。威力は絶大だが
戦闘中では危険すぎる15秒ものチャージ時間とPA減衰させてしまうコジマ粒子消費量は連続運用には不向きだった。
 PAを再起動させ廃ビルの間を抜けながら襲い掛かってくるソルディオス砲から逃れ、再び距離を取るがAFは
リンクスの居る方向へと進路を変えた。距離を取ることで の再チャージ時間を与えたくないのだろう。
リンクスは廃ビルの陰に隠れながら機体状態を調べていたが、まともにやりあっては対処しきれない苛立ちを覚えていた。
火力と重装甲をもつソルディオス・オービットからは恐怖を感じない。目の前の物体はただ遠隔操作されるだけの
思考しない巨大な破壊兵器に過ぎないのだ。

「…気に入らない」

 人の手の直接介しない兵器を見ていると感情が乱れ、怒りによって冷静さを失い始めていることをリンクスは自覚していた。
怒りによって冷静な判断力を損なえば反射速度は上がっても動きは単調になり、恐怖を噛み締めれば初期動作が鈍り、
機を見失えば反撃の時を失う。それ故にリンクスは冷静であるよう心身のトレーニングを積み重ね、過度のAMS負荷を
受けるか余程の異常事態に遭遇しなければ精神的乱れも少なくなってきている。しかし、理解していても抑えきれないほど
怒りの感情に覆われ始めていた。
まだ距離が充分ある事を確認するとリンクスは一旦AMSを解除しセレンから渡されていた薬を注射、そして戦闘後に服用する
痛み止めを服用した。本来時間を置いて服用するものだが、通常ならば耐え切れないだろう激痛に負けるわけには行かなかった。
即効性の劇物ゆえにすぐに効果が表れ、AMS接続から痛みが和らぎ乱れていた感情も落ち着いていく。

「ターゲットの排除ヲ開始」

 戦闘に不要な痛覚を切り捨ててリンクスは機体を走らせる。距離300圏内に敵2、距離500圏内に敵3、
距離1280にAF敵1、PA再展開及びOB使用不能、MARVE残弾79、EN容量73%機体状態は良い方だろう。
ストレイド右後方のソルディオス砲はコジマキャノン発射体勢に入り、前方のソルディオス砲はコジマキャノン充填開始している。
AMSによって直接頭に叩き込まれる多量の情報が現在置かれている状況を全て教え、リンクスは感情を介入させず
情報を高速処理していった。情報が流れ込んでくる速度と量を増せばそれだけ痛みが増すのだが、注射液に混ぜられている
痛み止めにさらに戦闘後に服用する痛みさえ麻痺する劇薬、その為リンクスは痛みも感じず感覚そのものが失われていった。
僅かな異音を感じると同時に右へSQBでストレイドを移動させ、そのまま180度QTからBQBと連続、正面に捕らえた
ソルディオス砲の開口部目掛け撃ち出されたMARVEの弾丸は正確に目標に叩き込まれ地面へと落下し動きを止めた。

【残り4】

 リンクスは再チャージの終えた左SQBでもう一度機体を横に走らせると先ほどまで居た場所をコジマキャノンが抉り取とっていく。
ストレイドのセンサーはチャージ音から射出音まで情報全てをリンクスに流し込み、その情報からストレイド後方に回り込んだ
ソルディオス砲がコジマ粒子を射出した事を感知していた。
地面を削りながらQTと同時に右背のプラズマランチャーを担ぎ、コジマキャノンを撃ち終え背後で砲口を開いていた
ソルディオス砲にプラズマ粒子を射出。だがFCSの想定距離を超えた射撃のために僅かだが照準がずれ砲口内部へとは
直撃しなかった。しかし砲口部へのダメージを嫌ったソルディオス砲は閉塞後距離を取る。
 ストレイドはプラズマランチャーを折りたたみながら前傾に機体を傾けると高速状態に入る。僅かな間でも高速移動を
やめればソルディオスキャノンとAFからのミサイルが襲い掛かり、ストレイドは完膚なきまで破壊されてしまうからだ。

「OBブースタ起動」

 PAの再展開が完了した直後OBユニットが開かれチャージ開始、MQBで急加速しながら左腕のDRAGONSLYERを
構えた。チャージが完了したOBの発動時高進力でチャージ完了まで後僅かのソルディオス・オービットに急接近、
レーザーブレード用に余力が残っているブースターを再点火すれば十分に切りかかれる距離まで接近したが、チャージの
終わったコジマキャノンが射出された。PAをいとも簡単に突き破りストレイドの装甲を溶解させるが、構わず突き出された
DRAGONSLYERはソルディオス砲の砲口部に突き刺ささる。コジマキャノン発射中のためにAAの展開が遅れた
ソルディオス砲は爆発し落下を始めるが、AAのチャージを終え淡い光を放ち始めていた。
 DRAGONSLYERを引き抜きながら左SQBの最大出力で離脱、コジマ粒子の爆発がストレイドの装甲を抉り取ろうとするが、
レイレナード製高出力ブースターは並ではない。リンクスとネクストに多大な負荷を与える事さえ考えなければ推進力は凄まじく、
再展開されたPAを奪い去るに留まった。

【残り3】

 その頃戦闘エリア外ではメリーゲートが最大望遠でストレイドの様子を見守っていた。
「嫌な動き…」
そうメイが呟いたとき、空中に舞っていたソルディオス・オービットに黒い影が飛び掛り、そして離れた直後に
ソルディオス・オービットが爆発し降下していくのが目に映った。

「何…いまの黒い影がまさかストレイド?」

 いままで見たことのないストレイドの高速機動、個人的に気になるストレイドの戦闘情報や戦闘映像をメイは
かなりみてきたが、あんな高機動状態での戦闘はいままで見たことが無かった。

 戦況を確認しながらセレン・ヘイズは恐怖に近いものを感じていた。機動と反射速度の異常性、それは普段のリンクスからは
到底考えられないものだからだ。
 ソルディオス砲の構造概念など知るはずもないのに的確に弱点である砲口を狙う行動、恐らく数分間逃げ回っている
間に直感的に砲口部が弱点だと判断したのだろう。結果として敵戦力残りソルディオス砲3、改造ランドクラブ1、
ノーマル複数、こちらはMARVE残り1マガジン、DRAGONSLYER、プラズマランチャー5発、コジマキャノン5発、
AP(平均装甲値)半減、リンクスの状態、統合制御体から送られてくる情報がなくても状態が悪いことは簡単にわかる。
だが何度も撤退しろとリンクスに命令しても返答がなかった。

「撤退しろ!GAから雷電・セレブリティ・アッシュが出撃した!これ以上は不要だ!」

 セレンが何度通信機に向かって叫んだか解らなくなった時、かすかな声だが返答らしきものが聞こえた。

「大き過ぎる…力…修正が必要」

 そう応えが返ってくるとストレイドの機体情報から右背の武装をパージしたことが伝えられ回収用ビーコンが働き始める。

「…なんだと?」

 戦闘中に危険状態に陥っても薬物投与で抑え込んでいたが、薬物投与を確認している今明確な意思を持って行動している。
これは想定していた中でももっとも危険な異常事態。セレンは小型通信機を手に取るとレインを呼び出した。

 普段は推力をリミッターで一定量絞ることでフレームやリンクスにかかる負担を抑えていたが、今回は出撃までの時間が
短かった為微調整が必要で時間のかかるリミッターをかけてはいなかった。この状態で最大出力のQBを使用すれば最新型姉妹機の
ライールにもそれほど劣りはしない。だが、ストレイドのアーリヤは純正旧式であり対G性能がライールより劣る為ただでは
済まないだろう。移動を開始したストレイドを長距離から観測していた複数の情報をデジタル処理した映像のフレーム落ちが
始まる。ライールフレームでも同じかそれ以上の現象を聞いているが、同様の現象を旧系列のフレームで引き起こしたのは過去に
四名。英雄ベルリオーズ 鴉殺しアンジュ 白き閃光ジョシュア・O・ブライエン そしてアナトリアの傭兵だけだった。

【リンクスの人体に損傷確認】

 統合制御体が肋骨にひびが入った事を知らせている。最大出力の連続ブーストの衝撃に耐え切れなかったのだろう。
今のところ生命の危険はないが、これ以上無茶を続ければ死ぬ危険性もある。セレンはメリーゲートに通信を繋げると声を荒げた。

「メリーゲート戦闘エリアに戻れ!ストレイドを援護しろ!」

 リンクスの異常に薄々気がついていたメリゲートはAMSとの再接続を完了させており、すでに戦闘エリアに
向かって移動を開始していた。

「こちらメリーゲート、戦闘エリアに戻るわ。状況を教えて」

 メリーゲートはOBを起動し戦闘エリア内へと急いだ。NSSのカメラアイにはいまだ空中をQBで動き回る
ソルディオス・オービットと改造ランドクラブの姿が映っていた。

 ソルディオス・オービットの残骸群は内部に蓄えていたコジマ粒子を周囲にばら撒き、激しいコジマ粒子の汚染と
PAへの干渉濃度を高めていった。例え制波性能に優れたアクアビット製のランスタンと言えどPAを維持できないほどの
高濃度下、もはや戦闘空域はネクストも裸同然の危険なエリアとなっていた。
そんな中リンクスの駆る
ストレイドはPAを失った状態での戦闘を余儀なくされ、僅かな攻撃も回避しなければアーリヤフレームでは致命傷に
陥りかねない状況だった。
 ソルディオスキャノンを左右の連続QBで回避するが、改造ランドクラブから放たれたミサイルはアーリヤの高速移動で
ロックがはずれ、放射状に広がりストレイドに襲い掛かっていく。ブースタの強烈な噴射炎と共に急加速するストレイドは
ミサイルの9割以上を回避するが、放射状に広がる故に一発のミサイルがストレイドの右胸部に直撃。PAがない現状故に
装甲板が弾け跳んだ事で内部構造が露出し、高濃度コジマ粒子下による侵食影響が内部へと及んでいく。だが、それでも
レイレナード純正の機体はリンクスの反応に充分過ぎるほど追従し、乗り手の体を壊しながら高速機動を続けていたが、
さすがに肉体へのダメージが大きくなり過ぎたのか動きが鈍ってきたストレイドに通信が入る。

「後は我々に任せて貴官は休むがいい」

 レーダーに高速飛翔物体の光点が映り、VOBを装着した雷電とセレブリティ・アッシュが到着したことを知らせていた。
上空からVOBが排除された二つの機影が戦闘エリアへと降下していく。
雷電は特徴的なタンク型脚部の底面に
固定されているブースタを調整しながら降下、超重量を支える高出力ブースタによって砂塵は巻き上がり雷電の姿が隠れて
しまう。着地すると徐々に舞い上がっていた砂塵が落ちていき、3門の巨砲を装備した重装甲ネクストACが姿を現した。
 さすがに有澤重工の巨砲相手に警戒しているのか一旦AFにソルディオス砲は戻り、再接続によってエネルギーと
コジマ粒子の補給を行っているようだった。

「っとと、まぁ後は俺らに任せてくれよ」

 一方セレブリティ・アッシュはストレイドの前に着地、まだ戦おうとするストレイドを止めるように右腕で
ストレイドの前を遮った。

「おいおい、一応先にリンクス登録された先輩も立ててくれよ。なっ?いいだろ?」

 明るく誰とでも親しく成る事が出来き、少なからずリンクスとも話したことがあるダン・モロは戦い続けようとする
リンクスを止めるには適任だった。その為セレンは移動中のダン・モロにリンクスを止める様に頼み、ダン・モロも快く
引き受けリンクスを上手く戦場から後退させるようと声をかけたのだ。ダン・モロの言葉にストレイドの動きは止まり、
何かを考えていたのか数秒経った後AFとの距離3000まで後退していく。
ストレイドが後退したのを
見届けるとセレブリティ・アッシュも雷電に続いて改造AFに向かっていった。

「ソルディオスの自律飛行とは面妖な、変態技術者共め」

 雷電は到着したメリーゲートと連携をとり、メリーゲートの放ったミサイルを回避した直後のソルディオス・オービットに
雷電のグレネードが直撃する。
メリーゲートのミサイル密度は回避させるには充分な火力を持っており、AIならば危険と判断してかならず回避する。
しかし ミサイルはソルディオスが回避するにはどうしても連続QBを使わなければならず、その動きはどうしても
平面的なものとなってしまう。その先を読み取りグレネードを撃ち込むなど有澤隆文 いや雷電にとって簡単なこと
だった。その間ランドクラブのミサイルを悲鳴交じりの絶叫を上げながらセレブリティ・アッシュは回避し続けた。
 2分と経たず残った二つのソルディオス・オービットと改造AFは爆発四散し、RAIDEN―RWのグレネードと
メリーゲートのミサイルに20秒と持たなかった。

「これで終いか 当然の結果だ。撃ち負けはせんよ。当たるのであれば」

「ふう、作戦完了。社長のお陰ですね、ありがとうございます」

 さすがに疲労の色が隠せないのかメイは大きく息をついた。強固な装甲を持つメリーゲートといえど、ソルディオス砲
相手に気を緩めることはできず普段にもまして疲れていた。

「もう終わったのか…。やっぱり無理なのかな…俺には。あんたどう思う?」

 ソルディオスキャノンとAFから放たれるミサイルを必死で回避していたダン・モロは何一つ攻撃する事無く終わって
しまった。しかし彼自身気付いていないが、敵の攻撃を回避する事に関しては20ランク以上の実力を彼は発揮する。
それ故に彼は長くリンクスとして居られるのだから。ダン・モロが嘆きに近い言葉を吐いていたとき、3000ほど
離れた位置で待機していたストレイドの近くに落下し停止していたはずのソルディオス・オービットの砲口が緑に光り、
コジマキャノンをストレイドへと放った。すでに限界を超えていたストレイドは動くことができず、コジマ粒子に飲み
込まれ機体が侵食崩壊を起していく。

「まだ動くのが残っていたのか!」

 雷電から撃ち出されたグレネードがソルディオス・オービットを破壊したが、ストレイドはその場に崩れ
落ちるように倒れると動かなくなった。

「スマイリー ストレイドを急いで回収しろ!セレブリティも手伝え!」

 ソルディオス・キャノンをストレイドが直撃した時はまだ後方で統合制御体から送られてくる情報をセレンは
見ていたが、リンクスの状態情報が全てレッド表示にかわり人体に重大な損傷を負った事が解ると通信室を飛び出していた。

「今やってるわよ!」

 セレンに言われる前にメイの駆るメリーゲートはストレイドに向かっており、メリゲートの手によって
輸送機に運び込まれるとストレイドは現状を維持したままカラードに運ばれた。


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コメント返し

>- 不明ネクストが4でアンノウンだったナンバー29だったとは意表を突かれました。 刷り込まれた人格って…まさかリンクスと同じウェンズデイ機関で施術されたのかな? -- サイキライカ? 2011-12-26 (月) 11:33:12
さて さすがに内容に関わる範囲は答えかねますが、期待してていいはずですよ。


移植元

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