Written by 独鴉


 


AFアンサラー撃破・・・
 ORCA旅団は事実上壊滅し、残ったのは僅かな通常軍とテルミドール、そして半地下タイプの閉鎖型コロニーで
AMIDAの研究を行っていたアルディーを残すのみとなった。アルディーはコロニーで増やしていたAMIDAの
繁殖場隔壁を開き、地上への通路を開放した。何が起こったのかわからないままAMIDA達は開いた隔壁を見ている。

「さぁ、行くんだ」

 時間が経つにつれ警戒しながらもAMIDAは一匹、また一匹と飼育場から外へと出て行く。AMIDA達を地上に放ち、
自己増殖と自然環境を作らせる。そのためにコジマ粒子に耐えられ、自然環境を自ら作らせる為品種改良まで行ったのだ。
全ての工程が完了し増殖可能な個体数になった今、コロニー内で保護している必要性が無くなり、コジマ粒子に汚染された
地上に放ち地上の浄化が成功することを祈るだけだった。全てのAMIDAが出て行くまでアルディーは見届けた後、
一人アンサラー撃破の為二度と戻らぬコロニーから出撃していった。
 
 
 

旧ピースシティエリア・・・
 旧ピースシティにはORCA旅団の残党が終結しつつあったが、AFアンサラーはそこを目指して一直線に進んでいる。
殲滅し後の憂いをなくすつもりだろう。チャリオットの搭載されている自動操縦のエアキャリアーのハッチが開かれ戦域に降下、
プライマルアーマーを展開しアルディーは戦闘に備えたがプライマルアーマーの変化に即座に気付いた。

「これは……」

 異常といえるほど高濃度のコジマ粒子によってプライマルアーマーが自然減衰していく。何が起こっているのか
理解するためアルディーは周囲を確認、目の前のAFアンサラーから大量にコジマ粒子が放出されているのが分かった。
本来ならば密閉されたアルテリア内部でしか起きない空気中の光を歪め淡い緑色に発光する現象、大気中で起きてしまうほどの
コジマ粒子放出量、悪魔の兵器とまで言われたソルディオス砲以上の汚染レベルだろう。

「この星を……、この星を生物の住めない星にするつもりか!」

 アンサラーが存在している限り世界を汚染し続け、僅かに残った正常な地域さえも汚染してしまうだろう。そうなれば
地上の生物全てが死に絶え、食糧生産さえ不可能となりクレイドルに住まう人間も生きてはいけない。

(一刻も早く破壊しなくては!)

 アルディーは機体の制波装置の設定を書き換える。内部からコジマ粒子を放出し対流させるのではなく、外部のコジマ粒子を
使用して対流させる方式に切り替え再びプライマルアーマーを再展開させる。大した出力は望めないが、コジマ粒子の侵食を
防げるだけよしとしたほうがいいだろう。機体を跳躍させるとアルディーは大型機の欠点である真上に回ろうとするが、
アンサラーは傘でいうならば布のような部位下部が光り、プラズマ粒子が射出されチャリオット装甲が溶解していく。
高速で射出されるプラズマ粒子を回避できるほど機体もアルディーも瞬間反応速度は高くない。上昇中攻撃を受けながらも
WHEELING03 ミサイルの照準を羽に合わせトリガーを引く。MSACインターナショナル製32連続のミサイルは
撃ち出された後ランダムに上下左右に分かれ羽にむかっていくが、傘骨組み部位先端にあった砲台によって次々と迎撃され
ミサイルは到達することなく散っていく。インテリオル製のレーザー迎撃装置。インテリオルはミサイルを開発していたが、
MSAC製のシェア9割は揺らがず、迎撃と攻撃両方に優れたASミサイルではシェアを得ることは出来なかった。
そして今度は迎撃に特化したシステム開発を行い、AF級であるならばすでに搭載可能な段階まで完成し搭載されている。

「自動迎撃装置まで! くそ!」

 チャリオットにとって安定した力を持つミサイルが効かないとなると武装はバズーカしかない。だが弾数が限られる以上
もっとも有効な箇所に撃ち込まなければならず、機動力が無いため相当の損傷を覚悟することになる。

「な…!」

 なんとかプラズマが届かない高度まで上がるが、アンサラー上方から無数のミサイルがチャリオットに襲い掛かっていく。
羽のように展開されている傘の主軸と思われる部分はミサイル砲台、連続したミサイルが上方から襲い掛かりチャリオットは
爆発によって急速に落下。地面が砂地だったのが幸いし、ブースタとの減速もあわせて脚部に損傷がない程度に着地したが、
激しい衝撃で脚部の半分が砂地に埋もれ身動きが取れなくなってしまう。身動きが取れなくなったチャリオットに向け緑色の
結晶体が射出され周囲に打ち込まれる。

「これは……?」

 わざと外したのか、それとも何か意図があるのかアルディーが読みかねていると、次ぎに撃ち出された砲弾が結晶体を破壊、
緑色に光る物体が砕け散り周囲に広がっていく。日光を反射し淡く輝く粒子に何で結晶体が作り上げられていたかアルディーは理解した。

「これは結晶化したコジマ物質か!」

 星の事を考えているならば使用することを躊躇する兵器、結晶化したコジマ物質を砕くだけでどれだけ大気を汚染してしまうことか、
コジマ粒子の除去技術を開発していたアルディーには予想が付く。ましてや結晶化するほどの高濃度、空気中に飛散するだけではなく、
地上に打ち込まれた部分がどれだけ地質や地下水を汚染するか、開発元のコジマ技術者達なら分からない訳がない。
 生物のDNAを書き換え新たな生物を産み出すのも間違いなく科学者のエゴだが、星そのものを生物が住めないようなものを作り出す、
科学者のエゴや欲望を越えて決して作ってはならない禁忌のひとつに他ならない。3大禁忌と言われる大量破壊兵器の
核兵器・細菌兵器・化学兵器、それらにいずれ加えられるだろうコジマ物質兵器、だがこのままアンサラーが使用され続ければ
禁止される前に世界がコジマ物質に汚染され世界が終わってしまう。

「貴様ら!」

 先ほどの砲撃で埋もれていた脚部が半分地上に出ている。脚部補助ブースタと合わせてチャリオットは砂の中から脱出すると
再び上昇を始めるが、プラズマ粒子とミサイルは容赦なくチャリオットに襲い掛かり、装甲はさらに損傷を負っていく。
かまわずチャリオットは上昇しながらガトリングを連射、1門のガトリングから撃ち出される程度の弾幕ではアンサラーから
射出されるミサイルを撃ち落しきれず、プライマルアーマーを突き破ると次々とチャリオットに着弾、装甲はひび割れ砕け散るがある距離を境に攻撃が止む。

「どんな武装を施そうとも接触距離では対応できまい!」

 羽下部のプラズマ砲・羽基部のミサイル砲台・主軸のコジマ結晶砲もまた範囲外であり、羽部と主軸の境は完全に攻撃不能な位置
であった。チャリオットがミサイル攻撃不可能距離まで接近したとき、コジマ粒子濃度が急激に下がり激しい光が目の前の接合部に集まっていく。

「この現象はまさか……アサルトアーマーか!?」

 チャリオットが到着した戦闘エリアはアンサラーのプライマルアーマー圏内、つまり無意味にコジマ粒子を放出していたのではなく、
アームズフォート級の攻撃に耐えられるようサイズアップされた中にいただけ過ぎなかった。広大な領域を持つプライマルアーマーが収縮、
浮遊及び防衛ユニットの上部と攻撃及び重心ユニットの接合部に光が集まり、展開領域が広いため空気を振動させアンサラーそのものが
大きな音を立てる。しかしコジマ粒子の研究を行い、ネクストのプライマルアーマーの構造も理解しているアルディーには構造的欠陥を教えることに繋がった。

「無理な設計で機械を鳴かせるとは! 所詮はエゴで作られたものか!」

 空気が振動しているだけではなく、アンサラー自体が激しく振動し接合部が金属音を鳴らしている。設計段階で十分な検証作業と仮組みで
試験を行えば起こるはずが無い振動現象、未完成段階でORCA旅団戦に駆り出された可能性もあるが、構造設計の段階で無理があったのだろう。
 チャリオットが両腕に持つバズーカは火を吹き、上部ユニットと下部ユニットの接合点、上下の振動に差がある地点に着弾した。
その直後展開されたアサルトアーマーにチャリオットは飲み込まれ、損傷を負った状態では耐え切れず手足をもぎ取られ地面に落下。
各部からコジマ粒子を放出しチャリオットは戦闘不能状態に陥ったことが分かる。各座したチャリオットのカメラアイには接合部を
破損し、自らの起こす振動を抑えきれず根元から圧し折れたアンサラーが地面に落下していく姿が映っていた。
 
数日後……、大破し砂に埋もれたチャリオットの近くで、以前彼が放った無数のAMIDAがコジマ粒子を少しずつ取り込み、
周辺領域の浄化と自らの成育に適した地質改良を進めていった。
 
 
 
 
 
 
インテリオル・ユニオン精神課病室・・・
 本来なら頭部を実弾で撃ち抜かれればほぼ即死してしまうが、セレンが撃ったのはプラスチック弾頭の弱装弾、
頭部への激しい衝撃で気を失ったリンクスに睡眠薬を投与し生きたまま連れ帰っていた。しかしその場所はカラード
ではなくインテリオル・ユニオンのコロニーの治療室、ベッドの上には縛られた状態でリンクスが寝ている。
銃弾を撃ち込まれた箇所は治療が終っているが、強化人間の身体能力を抑えるため拘束帯ではなく鎖や鉄枷まで
使用し厳重に動きを制限されていた。

「それで、どうにかなるのか?」

 ベッドの前には3名の医師とセレンがリンクスを見下ろすように見ている。

「薬物と催眠等を使用して半トランス状態にしますが、本人次第でしょうねぇ」

 医師の回答は曖昧なもので表情もあまりよくない。その間助手と思われる医師達は注射器等治療の準備を進めている。

「洗脳のようなものと仮定してしますが、脳に直接別の神経伝達経路まで作られていた場合どうなるかは事例がありませんので」

 脳の構造は大まかには解明され、おおよそ脳内のシナプスによる神経伝達時の電気信号と言われているが、
人格を形成する詳細な構造までは解明されていない。全て仮説や仮定の話を同じく仮説によって立てられた方法で治療するに過ぎない。

「インテリオルに他の専門家はいない。頼む」
 
 
 

(ここは……)
 リンクスが周囲を見回すとまぎれも無くハイエンドACのコックピットの中だった。画面には何時折照明らしきものが
上へと消えていくことからACはエレベータに乗っていると思える。

「お前は何故現れる。何故、邪魔をする」

 聞き覚えがない音声が流れ、機体のシステムが起動していることが分かる。しかしいまだリンクスの意識は
はっきりしておらず、何が起こっているのか理解できていなかった。

「我々の操縦技術も戦術も、全ては我々が作り上げたもの。荒廃した世界を、人類を再生する。それが我々の使命」

(あれは……なんだ、ぼんやりして思い出せない)

 意識ははっきりとしていないが、何か依頼を遂行する為にここに居る事だけはすぐに分かる。
それ以外戦闘モードのACにコックピットいる理由などない。

「力を持ちすぎたもの 秩序を破壊するもの プログラムには、不要だ」

(力…プログラム…)

 何かが頭をよぎり意識が徐々に覚醒していく。その間にも声は大きくなり、目の前が開けると広大な広さを持った
エリアであることがわかる。エレベータは減速しゆっくりと床に停止した。薄暗いエリアの為に確認しにくいが、
距離700程度の位置に1機のACが佇んでいることは分かる。

「私は守るために生み出された 私の使命を守り、この世界を守る」

 薄暗かったエリアの天上に光が灯り、相対していたACがどんな機体かはっきりと分かった。朱色に染め上げられた軽量AC,
その肩には⑨の文字が刻まれており見た記憶がある。RAVENなら伝説や記録など知る方法はいくらでもあり、
畏怖と憧れの対象となった最強のAC。

(こいつは……)

「消えろ、イレギュラー!」

 曖昧だった意識がはっきりし、操縦桿を握るとブースタペダルを踏み込む。僅かなタイムラグを置いて機体は加速し、
お互い向き合ったまま左方向へと手持ちの火気を連射しながら探りあいをはじめる。
 ナインボールの持つパルスガンに対してWG‐AR1000マシンガンの射程距離はほぼ同じ、ナインボールが背部に
搭載しているグレネードと中量2脚ACが持つWM‐X201マルチミサイルが決め手になる可能性は大きい。
軽量級に属するナインボールと中量級のAC。正面から撃ち合えばナインボールは不利な為ブースタを使用し接近を試みる。
一方接近を許してしまえば旋回速度で劣る中量級は不利になってしまう。タイプと速度が近いAC同士の戦いは読み合い、
どちらが優位性を確保する為に最適距離を維持したまま攻勢を続けるか。つまりどちらが先に優位な状況を作り上げ、
相手の攻勢を抑え込み続けるかによってしまう。
 
 

 病室で事の次第を見守っていたセレンは突然暴れだしたリンクスに驚いた。鎖と鉄環によってベッドに縛り付けられているが、
脳波と心拍が激しく乱れ悪夢やそういった単純なものではないことはすぐに分かった。

「下手に鎮静剤を打って変化が起きてもこまりますし、いまはこのまま見届けましょう」

 医師もある程度分かっているのかあわてている様子はなく、鎖が耐えられるかどうか確認だけしている。
元々処置があって拘束しているわけではない。
 セレンは暴れるリンクスの額に手を置く。

「聞こえるなら……、私の元に戻って来い。まだ教える事は沢山ある」
 
 

 時間が経つにつれ、徐々にナインボールが優位を確保していく。中量2脚ACは旋回性能で劣る点を後方への
ブースタ移動と跳躍時の旋回でなんとか視界に捉えているが、ミサイルの多重ロックはおろか高速で回り込んでくる
ナインボール相手にマシンガンの照準さえもなかなか合わない。
 蛇行による回避ならばまだ照準の合わせようもあるが、確実に劣っている旋回性能を突かれてしまうと中量2脚型には厳しい。
さらに常に右方向に回り込もうとしてくる為ナインボールによる腕部駆動限界範囲外からの攻撃は損傷だけではなく、
主力武装であるマシンガンを使用不能にしようとする意図が明確に見て取れる。

[右腕部損傷増大]

(っ!)

 舌打ちしながらブーストで機体を後退させる。損傷覚悟で跳躍ブースタを止め、地面に脚部を接触させ急速旋回を行い
ナインボールを視界中央に捕らえる。だがリスクを犯すには相手の技量がはるかに上、無謀な行為に過ぎなかった。
ナインボールはパルスガンを下げるとグレネードランチャーを担ぎ跳躍、急速旋回によって動きが止まっている標的に向け
榴弾が撃ち出される。マシンガンの掃射は1秒も満たないうちに爆発の衝撃によって照準がぶれてしまい、
僅かにナインボールの装甲を抉っただけ、さらに榴弾の爆風に当たり減速したところにパルスマシンガンが追い討ちをかけ、
回避しようが無い攻撃に確実に中量2脚ACの損傷は増してしまう。適正距離が同じ武装の上に攻撃タイプも同じ連射型、
技能差がこれほどはっきりしてしまう戦闘も少なくは無い。

〔損傷度60%突破〕

 中量級ACの平均装甲値は40%を下回り、榴弾を後一発でも直撃してしまえば集中して攻撃を受けている右腕部が
欠損する可能性がある。中量2脚型のアセンブルは軽量級に対してマルチミサイルを装備している為確かに有効なのだが、
ミサイルさえも回避することが可能なナインボール相手には不足な武器でしかない。

「誰であろうと私を超える事など不可能だ」

 空中で直撃した榴弾の爆発に機体は弾き飛ばされブースタを利用しバランスを取ろうとするが、右サイドから
直撃したため2個あるブースタの片方を損壊し右側を下にした状態でうつ伏せに機体は倒れてしまう。

(俺じゃ……だめなのか)

 ナインボールを公式記録上倒した者はナインブレイカーと呼ばれた者のみ、少々腕が立つ程度のRAVENが
勝てる相手ではない。訓練と十分な実戦経験を積んでもなお届かない高みの領域、“IRREGULAR”と呼ばれる
一部の者達には意図してなることはできない。自らの可能性に諦め掛けたとき通信機が音声を受信した。

〔聞・え・・ら〕

 ノイズ交じりの通信機から聞こえてくる音声の主が誰だか分からないが、何度も聞いた覚えがある声に戦闘中だというのに意識を傾けてしまう。

〔私の元・戻って・・〕

 “戻る”不明瞭だがその言葉が耳に入ると諦めるという考えは不思議と無くなっていた。声の主にもう一度
会わなくてはならない。その感情がどこから来ているか、理解しては居なかった。
 左腕と残ったブースタを利用して機体を立ち上がらせる。脚部は破損していないものの、コアと脚部の接合部の
破損によって機体の反応はかなり鈍い。その間にも動きが鈍くなった隙を逃さず、ナインボールはレーザーブレードの
間合いに接近しようと向かっていた。彼は自らのタイミングを掴む為ナインボールに向けマシンガンを投げつけると
ブレードを振り被る。通常の反応ならば受け止めるか撃ち落すだろうが、ナインボールは即座に反応し機体を跳躍させ空中から
斬り裂く体制に入った。僅かにナインボールの方が振り始めは遅かったが、軽量腕部の上に重量の軽いLS2001レーザーブレード、
一方は同じ軽量腕部ではあるが重量のあるLS‐99‐MOONLIGHTレーザーブレード、重量がかさむ分溜めが
発生し振り遅れてしまう。上方から振り下ろされるナインボールのレーザーブレードは頭部を切り裂きコアを目掛けて向かっていく。
 互いにレーザーブレードを持つもの同士、一撃で仕留めることができなければカウンターを貰ってしまう。
その為ブレード使用後即座に距離を取れる位置または体制で攻撃を行うのが基本なのだが、
ナインボールはマシンガンを避ける為に跳躍した結果僅かにバランスを崩しており即座に距離を取る行動は取れなかった。
大きく振り被られていた高出力ブレードは一振りでナインボールの脚を抉り取り、ブースタを利用して深く斬りかかっていた
ナインボールは重量バランスを狂わされ地面に叩きつけられ戦闘は終った。

(勝った……のか)

 頭部パーツを失ったため状況を理解するには少々時間を要したが、サブカメラを使用して両足を破壊され動けなくなった
ナインボールのコアにレーザーブレードを向ける。恐怖も何も感じないのか通信機から聞こえている声は冷め切ったものだった。

「これがお前の望みなのか。私は必要だった。だからこそ私は生まれた」

 権力や論理司り男性原理を象徴する管理システム、そして反権力や情動を司り女性権利を象徴するRNシステム、
どちらもレイヤードを設計した人間達によって作り出されたシステムに過ぎず、RNシステムによって見出され育まれた
イレギュラーもまた管理システムの終焉プログラムでしかない。

「秩序と言う枷無くして人は生きて行けん。例えそれが造られたものであってもだ」

 秩序を守るRAVEN、秩序を破壊するRAVEN、どちらも同じものであり全て管理システムによって予定されていた存在に過ぎない。
意図的に発生させ管理された破壊と創造による人類と文化の進歩、管理システムによって人類は生きながらえ秩序と世界を維持してきた。

「生き抜けRAVEN。私とお前、どちらが果たして正しかったのか、お前には知る権利と義務がある」

 中量2脚ACは光に覆われ戦闘エリアから消える。一人戦闘エリアに残されたナインボールのコックピットハッチが開かれる。
パイロットヘルムをかぶったままの青年は大破したナインボールの上によじ登るとヘッドパーツに寄りかかり、
いままで戦闘の行われていたエリアを眺めた。マシンガンの射軸はずれやすく安定しないものだが、
銃跡は綺麗な線を描いており難しい反動制御ができており、ブースタ移動による地面接触痕の後を綺麗に追っていた。

「ハスラーワンの役割は終った。これでシステムは次の段階に移行される」

 自らの終焉プログラムが起動した事を確認し、ハスラーワンは戦闘エリアと共にゆっくりと消えていった。


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