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[[小説/長編]] [[小説/長編]] #setlinebreak Written by えむ ---- フランソワ・ネリスを加えての対ネクスト特訓が始まった。 とりあえず攻撃を当てること。それを最優先にして、試行錯誤を繰り返しつつ、シミュレーターを使っての訓練を重ねる。訓練の内容もさまざまだ。実際にネリス相手に模擬戦を行ってみたり、動き回る高速機を相手に正面に捉え続ける練習をしたり。 しかし、なかなか成果は実らないまま時間だけが過ぎていた。 「なかなか思うようにいかんな…」 「うーん、なんでだろう?」 休憩時間。セレンとネリスは二人して、首を傾げていた。見る限り訓練そのものは無駄にはなっていないのは確かだ。攻撃を当てるという一点を除いて、それ以外のレベルは確実に上がっている。 「まぁ、武装の問題もあるとは思うけどね。グレネードキャノンは弾速は鈍いし…」 「それは確かに言えるな…。だが、必ずもっていく装備だからな。なんとしても当てれるようになる必要がある。…む、そうだ」 そこまで告げたところで、セレンはふとあることが気になり、ネリスに尋ねてみることにした。 元レイヴンであるレックスだが、ノーマルのタンクを使っていた時がどうだったのか…と言う点である。もし、その時から今の調子だったのなら―――正直リンクスには向かないと結論づけるしかないが…。 だが、ネリスの答えは、予想を斜め上に裏切る物だった。 「レックスの、ノーマルの腕? レイヴンとしては、かなり技量高いんじゃないかな? タンクでも普通に、逆関節機とかに当ててたし。防衛任務の時は、後方支援だったけど、動き回るネクストに当てたこともあったっけ」 「……待て。だったら、なぜ今は当てれないんだ?」 「ボクも、それが不思議なんだよねぇ。AMS適正低いとは言え、動きが見えてるんだし、充分やれそうなんだけど」 謎は深まるばかり。ただ、とりあえず全く希望がないというわけではないようだ。 「何かあるんじゃないかな。ノーマルとネクストの違いによる、何かが。レックスも気づいていないんだろうけど」 「……ノーマルとネクストの違い…か」 元レイヴン。ノーマル乗りであったこと自体が、何かの枷になっている。その発想はなかったが、言われてみれば筋も通っている。ノーマルとネクストでは、メインシステムから操作方法まで大きく異なっている。ある程度動かせているので、全く気にも留めなかったが…。 だが、突破口は見えた。そんな気のするセレン。あとは、それが何かを突き止めることだが――― □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ その頃。レックスはレックスで、これまでの映像記録を見返しながら考え込んでいた。 特訓の甲斐もあって、回避と攻撃の両立は擬似的にだが出来るようになった。避けながら撃つ事はできないが、避けて…それから撃つ。その切り替えを早くすれば、なんとか実戦には通用することがわかったのだ。あとは、意識の問題。いかに早く頭を切り替えるかに関わってくる。 問題はやはり攻撃の命中…である。最もネクスト相手に100%当てるのは不可能だろうが、それでもほとんど全く当たらないのでは話にもならない。だが、回避力のないタンク機を使う以上、火力の高さで押し切る以外に方法がない。そのためにも攻撃を当てることは必須だ。 当てれなくはないはず。その自覚は、レックスにもあった。最初はネクストのスピードそのものについていけなかったので仕方ないと思っていたが、今は相手の動きを追える。それなら当てれるはずなのだが、実際は違う。 ノーマルに乗っていた時と同じ感覚で狙っても、ほとんど当てれないのだ。 「よぉ、あのマザーウィルを落とした傭兵って、あんたでいいのか?」 不意に割り込んできた声に、思考が中断される。振り返ってみると、そこには一人の若い男がこちらを向いて立っていた。手にはコーヒーの入った紙コップが一つ。 「…えっと、どちらさま?」 「俺か? 俺はカニスってんだ。あんたと同じ独立傭兵って奴だよ。まぁ、よろしく頼むわ」 ご機嫌な様子で笑いながら、ばんばんレックスの背中を叩くカニス。 「にしても元気ないな? あのマザーウィル落としたんだろ? もっと、どんと胸張れよ。誰でも出来ることじゃねぇんだぞ?」 「あぁ…まぁ、それはそうなんだけどな…」 「なんだ?何かあったのか? よし、ここは独立傭兵の先輩とも言える俺が特別に聞いてやろう。ほら言ってみな」 「え…。いや、急にそう言われても」 「気にすんなって。悩みなんてぶちまけた方が気が楽だぜ? おらおら、とっとと吐いちまいな」 「えーっと……」 初対面の相手にいきなり話せるようなことではない…と思うのだが。そんなレックスの意思は関係なしとばかりに、先を促すカニス。結局、根負けしてしまい、レックスは一部始終を話した。 「ネクスト相手に攻撃が当てれねぇのかぁ。ん?でも、ノーマルの時は早い相手にもそれなりに当てれたんだっけ。あぁ、だったら簡単じゃねぇか」 あっはっは、と軽快に笑いながら答えたカニスの言葉に、レックスの表情が変わる。 「ど、どうするんだ?」 「ノーマルに乗っちまえばいいんだよ」 「いやいやいや、それじゃあ意味ないからっ」 すぐさま突っ込みを入れるレックス。カニスの言うことは間違っちゃいないが、それでは何の解決にもならない。 「あ、そっか。それじゃあリンクスじゃねぇもんな。そうだな、だったら――この手があったぜ!!」 少し考えるようなそぶりを見せ、カニスはぽんを何か閃いたかのよう手を叩いた。 「ネクストをノーマルにしちまえばいいんだよ!!」 「さっきと何が違うんだ、それーっ!!」 「そりゃあお前。乗り換えずに済むじゃねぇか」 「いや…そりゃあそうだけど。でもネクストをノーマルにしてどうす…る………。……ん?」 再び突っ込みを入れようとするレックスであったが、ふと言葉に止まった。そして数秒の間を経て、その場にて勢いおよく立ち上がる。 「そ、それだっ!! カニス、ありがとう。君のおかげでなんとかなりそうだ!!」 向き直ってカニスの両手を握って感謝するレックスに、笑いながらカニスも頷く。 「お?そうか? なんかよくわかんねぇけど、そりゃあ良かったな」 「あぁ!!さっそく試してくる!!」 打開策が見えた。レックスはカニスと別れてすぐ、セレンとネリスの元へと急いだ。そして、第一声で二人に告げる。 「セレン、ネリス。もしかしたらいけるかもしれない!!ネクストをノーマルにすればいいんだよ!!」 「「…は?」」 言うまでもないが、二人の反応はこんな物だった。あたりまえである。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「……こうも変わるとはな」 それから十数分後。フォートネクストとバッカニアの模擬戦の様子を眺めつつ、セレンは半分呆れつつも、同時に驚いていた。 フォートネクストのグレネードキャノンが時間差で火を吹き、そのうちの一発がバッカニアに直撃する。一発目を囮にした誘導射撃。相手の動きを読んだ上での予測射撃を併用した攻撃だ。 レックスの提案によって思い切った設定の変更をしてみたところ、グレネードキャノンの命中率は格段に上がっていた。具体的には0.5%から30%程度に。 たかが3割。だがフォートネクストの火力の高さを考えれば、充分。それだけ当たるようになれば充分戦えるレベルだ。 AMSをカットする。レックスがいきなりそう言い出したときには何事かと思ったが、詳しい話を聞いてみると、少し違っていた。 正確にはAMSの一部だけをカットし、腕部をマニュアルのみで動かすと言うのである。 ネクストとノーマルの違いはいくつか上げられるが、操縦面に関して一番大きいのはAMSだ。ネクスト特有のシステムと言えるこれは、脳と機械の制御装置を接続し、操作を思考によって行うという物だ。これにより反応速度や精密さは大幅に上昇する一方で、リンクスのAMS適正の高さによって、ネクストの動きは左右されることになる。 レックスの場合、そのAMS適正こそが一つの壁となっていた。感覚でしっかりと捉えていても、適正が低いために、一定のレベル以上の反応に対して、機体に対して完全に伝わらず、命中率の低下へと繋がっていたのだ。 それならいっそ、AMS切ってノーマルと同じように動かそうと、そういう結論に至ったらしい。それが、カニスの何気ない一言から、レックスが見つけた打開策だった。 元レイヴンであったレックスにとっては、マニュアル操作は慣れたも当然のものだ。当然、AMSを経由しない以上、反応速度や動きの精密度は低下することとなるが、それでも結果としてレックスのイメージ通りに腕を動かすことは可能となる。そしてイメージ通りに確実に動くなら、あとはこちらのものだ。動きは目で追えるし、マニュアル操作によるラグその他も、これまで培った経験と技術で充分に補える。 もっともも少しでも腕部の動きを上げるため、腕部はアルドラのHILBERT-G7Aへと換装したりもしてあるが。 「もらった…!!」 「うわっ!?」 シミュレーターの向こうでは、フォートネクストがバッカニアを撃破したところだった。残りAP30%。ギリギリではあるが、レーザー主体のバッカニア相手なら、よくやったと言えるだろう。 「うぅ、負けた~。…でも、一つだけ言わせてもらうよ。レックスのそれ、タンクの戦い方じゃないっ」 「そうかもしれないけど。グレネードキャノン縛りで戦うとなると、こうでもしないと勝てそうにないし…」 今回レックスが取った戦法はこうだ。まずオーバードブーストで突撃。その後、近~中距離に張り付き、あとはグレネードで攻撃。横への動きはクイックターンのみで対応。距離を空けようと離れたら、オーバードブーストで追撃する。 いくら狙いが正確になったとは言え、弾速の差は埋めれられない。撃ってから避けられることも多い。だったら距離を詰めてみよう。そう考えての密着戦法であった。 ちなみに使ったFCSはトーラスのINBLUE。徹底の程がよくわかる。 「て言うか、なんでグレネードキャノン?」 「タンクと言ったら、大口径の実弾砲じゃないかっ!!」 「だったらバズーカでもいいんじゃないの?」 「駄目だ。バズーカじゃ浪漫が足りない。…主に排莢と爆発な意味で」 「…なんで、そこだけこだわるかなぁ…」 「わかってないな、ネリス。そもそもタンクに置いて大切なのは―――」 レックスとネリスのやりとりを聞きながら、セレンはまた始まりそうだなぁとヘッドセットを静かに外した。そして、先ほどの戦闘記録をもう一度見返し始める。 …やはり悪くない。これなら他のネクストとも何とか戦える。 「一時はどうなるかと思ったが…なんとかなったか。全く、手間をかけさせる奴だ…」 そう言いつつも、セレンの表情には笑みが浮かんでいた。 To be countine…… ---- now:&online; today:&counter(today); yesterday:&counter(yesterday); total:&counter(total); ---- **移設元コメント [#j848d105] -これはこれでアリじゃないかなw腕部だけでなく、火器管制自体にマニュアル分増やした…と勝手に受け止めておくよ。プレイヤー視点だと、4系にサイト枠が表示されるような感じかな。 -- 2010-04-14 (水) 16:06:38 -ネクストにマニュアル操作を組み込むことにするとはw この発想はなかった わずかな反応速度と動きを犠牲にして命中率を上げることは、タンクACだからこその戦術といえるかもしれないな -- 2010-04-14 (水) 16:19:10 -縛りって言うな縛りってw 元レイヴンだからこその戦い方ですね -- 2010-04-14 (水) 16:50:32 -縛りって言っちゃだめだろww浪漫求めすぎだしww -- 2010-04-14 (水) 16:55:52 -ロマンで戦争するなよ。死ぬぞ? -- 2010-04-14 (水) 18:51:34 -電撃の外伝で咄嗟の判断力を要する武装変更やQBのみAMSを使う半ネクストみたいなのが居たから有りだと思います。しかしココでもカニス大活躍、段々とお馬鹿だが頼れる兄貴キャラに変貌しつつ有りますな… -- 2010-04-14 (水) 19:35:35 -ロマンで戦争するなよ。死ぬぞ? -- 2010-04-14 (水) 20:37:54 -まさかのマニュアル操作…なるほど、元レイヴンだ! しかしアレだな、レックス君いずれ社長砲受け継ぎそうだなw -- 2010-04-14 (水) 20:44:56 -戦場でロマンを語らずしてどこで語れと言うんだ。良いぞもっとやれww そしてカニスが善良な馬鹿。良い感じ。 -- 2010-04-15 (木) 00:29:01 -この首輪つき、完全に(´神`)の化身じゃないかww -- 2010-04-15 (木) 17:18:21 -12話引っ張り続けた「タンク型で対AC戦に大きなアドバンテージを負う」という涎垂の素材を自ら殺してしまった感が。これで互角になれるのなら、ただ乗ってる機体がタンクであるというだけの凡SSでは。そしてタンクや装備にこだわる理由もギャグの域を出てないし、そのギャグの部分と苦戦しているという大まかな部分のシリアスさが噛み合ってなく、今回は特にチグハグな印象が目立った。次回に作品の新しい魅力を提示してもらうなりの展開がなければ、ちょっとな、と思う事を正直に感想として書き残させてもらう。 -- 2010-04-15 (木) 18:22:50 ---- ☆作者の一言コーナー☆ リンクスとして一皮向けた気分のえむです。 レックス君、ついにレベルアップ。これでようやく互角の勝負が出来る…はず。 まぁ解決策としては突っ込みどころ満載な気もしますが…。 ちなみにこれに至った経緯は、ノーロックモードの存在。あれは完全に手動狙いですが。だったら、FCS残して手動操作…ってのもありじゃないかと。 ローディ先生は武器腕で対策。レックスは通常腕を使うためにAMSカットのマニュアル操作…と言う感じです。前代未聞にも程がある。 さて、次回からチャプター2へ突入。最初のミッションをどれにするかは未定のままですが…。 何はともあれ、今回もお付き合いいただきありがとうございました。 …あ、カラードお茶会やってない(汗 ---- **コメント [#s691a12c] #comment ---- RIGHT:[[小説へ戻る>小説/長編]]
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[[小説/長編]] [[小説/長編]] #setlinebreak Written by えむ ---- フランソワ・ネリスを加えての対ネクスト特訓が始まった。 とりあえず攻撃を当てること。それを最優先にして、試行錯誤を繰り返しつつ、シミュレーターを使っての訓練を重ねる。訓練の内容もさまざまだ。実際にネリス相手に模擬戦を行ってみたり、動き回る高速機を相手に正面に捉え続ける練習をしたり。 しかし、なかなか成果は実らないまま時間だけが過ぎていた。 「なかなか思うようにいかんな…」 「うーん、なんでだろう?」 休憩時間。セレンとネリスは二人して、首を傾げていた。見る限り訓練そのものは無駄にはなっていないのは確かだ。攻撃を当てるという一点を除いて、それ以外のレベルは確実に上がっている。 「まぁ、武装の問題もあるとは思うけどね。グレネードキャノンは弾速は鈍いし…」 「それは確かに言えるな…。だが、必ずもっていく装備だからな。なんとしても当てれるようになる必要がある。…む、そうだ」 そこまで告げたところで、セレンはふとあることが気になり、ネリスに尋ねてみることにした。 元レイヴンであるレックスだが、ノーマルのタンクを使っていた時がどうだったのか…と言う点である。もし、その時から今の調子だったのなら―――正直リンクスには向かないと結論づけるしかないが…。 だが、ネリスの答えは、予想を斜め上に裏切る物だった。 「レックスの、ノーマルの腕? レイヴンとしては、かなり技量高いんじゃないかな? タンクでも普通に、逆関節機とかに当ててたし。防衛任務の時は、後方支援だったけど、動き回るネクストに当てたこともあったっけ」 「……待て。だったら、なぜ今は当てれないんだ?」 「ボクも、それが不思議なんだよねぇ。AMS適正低いとは言え、動きが見えてるんだし、充分やれそうなんだけど」 謎は深まるばかり。ただ、とりあえず全く希望がないというわけではないようだ。 「何かあるんじゃないかな。ノーマルとネクストの違いによる、何かが。レックスも気づいていないんだろうけど」 「……ノーマルとネクストの違い…か」 元レイヴン。ノーマル乗りであったこと自体が、何かの枷になっている。その発想はなかったが、言われてみれば筋も通っている。ノーマルとネクストでは、メインシステムから操作方法まで大きく異なっている。ある程度動かせているので、全く気にも留めなかったが…。 だが、突破口は見えた。そんな気のするセレン。あとは、それが何かを突き止めることだが――― □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ その頃。レックスはレックスで、これまでの映像記録を見返しながら考え込んでいた。 特訓の甲斐もあって、回避と攻撃の両立は擬似的にだが出来るようになった。避けながら撃つ事はできないが、避けて…それから撃つ。その切り替えを早くすれば、なんとか実戦には通用することがわかったのだ。あとは、意識の問題。いかに早く頭を切り替えるかに関わってくる。 問題はやはり攻撃の命中…である。最もネクスト相手に100%当てるのは不可能だろうが、それでもほとんど全く当たらないのでは話にもならない。だが、回避力のないタンク機を使う以上、火力の高さで押し切る以外に方法がない。そのためにも攻撃を当てることは必須だ。 当てれなくはないはず。その自覚は、レックスにもあった。最初はネクストのスピードそのものについていけなかったので仕方ないと思っていたが、今は相手の動きを追える。それなら当てれるはずなのだが、実際は違う。 ノーマルに乗っていた時と同じ感覚で狙っても、ほとんど当てれないのだ。 「よぉ、あのマザーウィルを落とした傭兵って、あんたでいいのか?」 不意に割り込んできた声に、思考が中断される。振り返ってみると、そこには一人の若い男がこちらを向いて立っていた。手にはコーヒーの入った紙コップが一つ。 「…えっと、どちらさま?」 「俺か? 俺はカニスってんだ。あんたと同じ独立傭兵って奴だよ。まぁ、よろしく頼むわ」 ご機嫌な様子で笑いながら、ばんばんレックスの背中を叩くカニス。 「にしても元気ないな? あのマザーウィル落としたんだろ? もっと、どんと胸張れよ。誰でも出来ることじゃねぇんだぞ?」 「あぁ…まぁ、それはそうなんだけどな…」 「なんだ?何かあったのか? よし、ここは独立傭兵の先輩とも言える俺が特別に聞いてやろう。ほら言ってみな」 「え…。いや、急にそう言われても」 「気にすんなって。悩みなんてぶちまけた方が気が楽だぜ? おらおら、とっとと吐いちまいな」 「えーっと……」 初対面の相手にいきなり話せるようなことではない…と思うのだが。そんなレックスの意思は関係なしとばかりに、先を促すカニス。結局、根負けしてしまい、レックスは一部始終を話した。 「ネクスト相手に攻撃が当てれねぇのかぁ。ん?でも、ノーマルの時は早い相手にもそれなりに当てれたんだっけ。あぁ、だったら簡単じゃねぇか」 あっはっは、と軽快に笑いながら答えたカニスの言葉に、レックスの表情が変わる。 「ど、どうするんだ?」 「ノーマルに乗っちまえばいいんだよ」 「いやいやいや、それじゃあ意味ないからっ」 すぐさま突っ込みを入れるレックス。カニスの言うことは間違っちゃいないが、それでは何の解決にもならない。 「あ、そっか。それじゃあリンクスじゃねぇもんな。そうだな、だったら――この手があったぜ!!」 少し考えるようなそぶりを見せ、カニスはぽんを何か閃いたかのよう手を叩いた。 「ネクストをノーマルにしちまえばいいんだよ!!」 「さっきと何が違うんだ、それーっ!!」 「そりゃあお前。乗り換えずに済むじゃねぇか」 「いや…そりゃあそうだけど。でもネクストをノーマルにしてどうす…る………。……ん?」 再び突っ込みを入れようとするレックスであったが、ふと言葉に止まった。そして数秒の間を経て、その場にて勢いおよく立ち上がる。 「そ、それだっ!! カニス、ありがとう。君のおかげでなんとかなりそうだ!!」 向き直ってカニスの両手を握って感謝するレックスに、笑いながらカニスも頷く。 「お?そうか? なんかよくわかんねぇけど、そりゃあ良かったな」 「あぁ!!さっそく試してくる!!」 打開策が見えた。レックスはカニスと別れてすぐ、セレンとネリスの元へと急いだ。そして、第一声で二人に告げる。 「セレン、ネリス。もしかしたらいけるかもしれない!!ネクストをノーマルにすればいいんだよ!!」 「「…は?」」 言うまでもないが、二人の反応はこんな物だった。あたりまえである。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「……こうも変わるとはな」 それから十数分後。フォートネクストとバッカニアの模擬戦の様子を眺めつつ、セレンは半分呆れつつも、同時に驚いていた。 フォートネクストのグレネードキャノンが時間差で火を吹き、そのうちの一発がバッカニアに直撃する。一発目を囮にした誘導射撃。相手の動きを読んだ上での予測射撃を併用した攻撃だ。 レックスの提案によって思い切った設定の変更をしてみたところ、グレネードキャノンの命中率は格段に上がっていた。具体的には0.5%から30%程度に。 たかが3割。だがフォートネクストの火力の高さを考えれば、充分。それだけ当たるようになれば充分戦えるレベルだ。 AMSをカットする。レックスがいきなりそう言い出したときには何事かと思ったが、詳しい話を聞いてみると、少し違っていた。 正確にはAMSの一部だけをカットし、腕部をマニュアルのみで動かすと言うのである。 ネクストとノーマルの違いはいくつか上げられるが、操縦面に関して一番大きいのはAMSだ。ネクスト特有のシステムと言えるこれは、脳と機械の制御装置を接続し、操作を思考によって行うという物だ。これにより反応速度や精密さは大幅に上昇する一方で、リンクスのAMS適正の高さによって、ネクストの動きは左右されることになる。 レックスの場合、そのAMS適正こそが一つの壁となっていた。感覚でしっかりと捉えていても、適正が低いために、一定のレベル以上の反応に対して、機体に対して完全に伝わらず、命中率の低下へと繋がっていたのだ。 それならいっそ、AMS切ってノーマルと同じように動かそうと、そういう結論に至ったらしい。それが、カニスの何気ない一言から、レックスが見つけた打開策だった。 元レイヴンであったレックスにとっては、マニュアル操作は慣れたも当然のものだ。当然、AMSを経由しない以上、反応速度や動きの精密度は低下することとなるが、それでも結果としてレックスのイメージ通りに腕を動かすことは可能となる。そしてイメージ通りに確実に動くなら、あとはこちらのものだ。動きは目で追えるし、マニュアル操作によるラグその他も、これまで培った経験と技術で充分に補える。 もっともも少しでも腕部の動きを上げるため、腕部はアルドラのHILBERT-G7Aへと換装したりもしてあるが。 「もらった…!!」 「うわっ!?」 シミュレーターの向こうでは、フォートネクストがバッカニアを撃破したところだった。残りAP30%。ギリギリではあるが、レーザー主体のバッカニア相手なら、よくやったと言えるだろう。 「うぅ、負けた~。…でも、一つだけ言わせてもらうよ。レックスのそれ、タンクの戦い方じゃないっ」 「そうかもしれないけど。グレネードキャノン縛りで戦うとなると、こうでもしないと勝てそうにないし…」 今回レックスが取った戦法はこうだ。まずオーバードブーストで突撃。その後、近~中距離に張り付き、あとはグレネードで攻撃。横への動きはクイックターンのみで対応。距離を空けようと離れたら、オーバードブーストで追撃する。 いくら狙いが正確になったとは言え、弾速の差は埋めれられない。撃ってから避けられることも多い。だったら距離を詰めてみよう。そう考えての密着戦法であった。 ちなみに使ったFCSはトーラスのINBLUE。徹底の程がよくわかる。 「て言うか、なんでグレネードキャノン?」 「タンクと言ったら、大口径の実弾砲じゃないかっ!!」 「だったらバズーカでもいいんじゃないの?」 「駄目だ。バズーカじゃ浪漫が足りない。…主に排莢と爆発な意味で」 「…なんで、そこだけこだわるかなぁ…」 「わかってないな、ネリス。そもそもタンクに置いて大切なのは―――」 レックスとネリスのやりとりを聞きながら、セレンはまた始まりそうだなぁとヘッドセットを静かに外した。そして、先ほどの戦闘記録をもう一度見返し始める。 …やはり悪くない。これなら他のネクストとも何とか戦える。 「一時はどうなるかと思ったが…なんとかなったか。全く、手間をかけさせる奴だ…」 そう言いつつも、セレンの表情には笑みが浮かんでいた。 To be countine…… ---- now:&online; today:&counter(today); yesterday:&counter(yesterday); total:&counter(total); ---- **移設元コメント [#j848d105] -これはこれでアリじゃないかなw腕部だけでなく、火器管制自体にマニュアル分増やした…と勝手に受け止めておくよ。プレイヤー視点だと、4系にサイト枠が表示されるような感じかな。 -- 2010-04-14 (水) 16:06:38 -ネクストにマニュアル操作を組み込むことにするとはw この発想はなかった わずかな反応速度と動きを犠牲にして命中率を上げることは、タンクACだからこその戦術といえるかもしれないな -- 2010-04-14 (水) 16:19:10 -縛りって言うな縛りってw 元レイヴンだからこその戦い方ですね -- 2010-04-14 (水) 16:50:32 -縛りって言っちゃだめだろww浪漫求めすぎだしww -- 2010-04-14 (水) 16:55:52 -ロマンで戦争するなよ。死ぬぞ? -- 2010-04-14 (水) 18:51:34 -電撃の外伝で咄嗟の判断力を要する武装変更やQBのみAMSを使う半ネクストみたいなのが居たから有りだと思います。しかしココでもカニス大活躍、段々とお馬鹿だが頼れる兄貴キャラに変貌しつつ有りますな… -- 2010-04-14 (水) 19:35:35 -ロマンで戦争するなよ。死ぬぞ? -- 2010-04-14 (水) 20:37:54 -まさかのマニュアル操作…なるほど、元レイヴンだ! しかしアレだな、レックス君いずれ社長砲受け継ぎそうだなw -- 2010-04-14 (水) 20:44:56 -戦場でロマンを語らずしてどこで語れと言うんだ。良いぞもっとやれww そしてカニスが善良な馬鹿。良い感じ。 -- 2010-04-15 (木) 00:29:01 -この首輪つき、完全に(´神`)の化身じゃないかww -- 2010-04-15 (木) 17:18:21 -12話引っ張り続けた「タンク型で対AC戦に大きなアドバンテージを負う」という涎垂の素材を自ら殺してしまった感が。これで互角になれるのなら、ただ乗ってる機体がタンクであるというだけの凡SSでは。そしてタンクや装備にこだわる理由もギャグの域を出てないし、そのギャグの部分と苦戦しているという大まかな部分のシリアスさが噛み合ってなく、今回は特にチグハグな印象が目立った。次回に作品の新しい魅力を提示してもらうなりの展開がなければ、ちょっとな、と思う事を正直に感想として書き残させてもらう。 -- 2010-04-15 (木) 18:22:50 ---- ☆作者の一言コーナー☆ リンクスとして一皮向けた気分のえむです。 レックス君、ついにレベルアップ。これでようやく互角の勝負が出来る…はず。 まぁ解決策としては突っ込みどころ満載な気もしますが…。 ちなみにこれに至った経緯は、ノーロックモードの存在。あれは完全に手動狙いですが。だったら、FCS残して手動操作…ってのもありじゃないかと。 ローディ先生は武器腕で対策。レックスは通常腕を使うためにAMSカットのマニュアル操作…と言う感じです。前代未聞にも程がある。 さて、次回からチャプター2へ突入。最初のミッションをどれにするかは未定のままですが…。 何はともあれ、今回もお付き合いいただきありがとうございました。 …あ、カラードお茶会やってない(汗 ---- **コメント [#s691a12c] #comment ---- RIGHT:[[小説へ戻る>小説/長編]]
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