小説/長編

Written by えむ


「ミッションを連絡します。クレイドル03が、ORCA旅団の攻撃目標となっています。03には、合わせて数千万の無辜の市民が暮らしています。
 それを攻撃するORCAは、単なる殺人者にすぎません。
 あなたには、特例として、クレイドル空域に入ることを許可します。03の護衛をお願いします。
 03の被害が軽微であれば、それだけ報酬を上乗せします。正義のため、あなたの力を貸してください」

 クレイドル03の防衛ミッション依頼。それはレックスの元へと送られてきていた。

「…タンク機で対ネクスト相手に防衛戦をやれと……。しかも空中戦で」

 カラードの仲介人の説明に、レックスは唖然とした表情を浮かべていた。彼の今の心境を簡単に書き表せれば、「それなんて無茶振り?」と言ったところである。
 だがわざわざ不向きな機体を使う自分の下へ依頼が来るほどだ。恐らく他のネクストなどは対ORCAのために出払っており、企業側も余裕がないのだろう。適任者なんて、カラードにはいくらでもいるのだから。
 そもそもカーパルスの一件以降。対ORCAの依頼は一つも来ていない。恐らく、これは自分がラインアーク所属と言うのも関係しているのだろう。協力するとは伝えたものの、あまり借りは作りたくないのが企業の本音だろうから。
 だがそうも言ってられない状況になった。だからこそ、こうして依頼が来たわけだ。

「…まぁ、なんとかするよ。その依頼、受けさせてもらう」

 もちろんレックスとして断る理由はない。一言突っ込みは入れたものの、そのミッションをすぐに承諾。時間もあまりないことから、すぐにフォートネクストの出撃準備に掛かる。
 選ぶ武装は両背にグレネードキャノンOGOTO。両手にインテリオルのレールガンRG03-KAPTEYN。右格納に今回の「切り札」。と言った編成だ。
 そして出撃前。レックスは整備班に一つの頼みごとをしていた。それを聞いた整備班は、いつものように目を丸くする。

「た、たしかに出来なくはないですが…。 でもKP出力そっちに割かれるし、PAも薄くなっちまいますよ?!」
「大丈夫。PAなんてタンクにとってはおまけだ」
「……いや…それはどうかと…」
「と言うか時間がないんだからやってくれ。別に落ちても恨まないからさ」
「……それも困るんですが、わかりました。おい、脚部格納予定の武器に―――」

 引き下がる気はないと気づいたらしく、結局ため息をついて作業にとりかかる整備員。その様子をその場で見守っていると、セレンが近づいてくる。

「今回は空中戦か。お前の機体では相性最悪だが―――。まぁ、なんとかするのだろう?」
「それが売りだからね。そのために一つ仕込みも頼んだし」

 そう言ってレックスが視線を向けた先で行われている「改造」。それを見たセレンは、レックスの思惑にすぐ気がついた。

「……卑怯すぎないか。あれは…」
「要は勝てばいいんだ。それに手段を選ぶほどの余裕は今回は特にないし」

 卑怯?なにそれ?とでも言いたげな表情で、レックスは笑いながら答え、それからふと真面目な表情へと変わる。

「……にしても、妙なんだよな。今回のミッション」
「…妙だと?」
「あぁ。クレイドルを直接攻撃するなんてORCAらしくない」

 そう告げて、換装と改造作業の進むフォートネクストを見上げる。

「そもそもORCAの目的は、クレイドルを地上に降ろすことだったはずだ。少しクレイドルについて調べてみたんだけど、クレイドルはエネルギー供給が途絶えた際に備えて、地上へ不時着することも想定して設計されてる。だからこそ、ORCAはアルテリアを襲撃している。それが現状の僕の考えだ」
「つまり……ORCAは市民の命を奪うのが目的ではないと言うわけか」
「最も今の地上の状況を考えれば、降ろされるだけでもそうとうの問題ではあるだろうけど。ともかく、そう考えるならクレイドルを直接攻撃するのはおかしい。そのつもりなら、最初から落としにかかってるはずだし」
「…確かに、これまでのORCAはクレイドルを直接落とそうとはしていなかったな…。だが、そうだとしたら今回の件はどう説明するつもりだ?」
「そこまではわからない。ORCAの誰かが暴走でもしたか。それとも別の――例えば陽動的な何かがあるのか。事情はともかく、クレイドルを落とさせるわけにはいかない以上、行くけどね。ただ……それとは別に一つ思ったこともある」
「む?」
「ORCAと企業の間には、繋がりがあるのかもしれないって」
「なんだと?」

 レックスの言葉に、セレンが驚きの声を上げる。

「その根拠は何だ?」
「先に、あくまで推測と言っておくけど。――少し前にあった大規模なアルテリア襲撃。あの時、アルテリアのほとんどは被害を受けただろう? それは言うまでもなく、ORCAの動きが掴めてなかったからだ。どこが攻められるかがわかっていれば、いくらでも手の打ちようはあるわけだからね。 カーパルスが良い例かな。あそこの被害は、最小限に抑えらたわけだし」

 そこで言葉を一端区切り、レックスはセレンのほうへと振り向く。

「そう考えるとだ。今回のミッションは、すごく情報がはっきりしているんだよ。カーパルスの時でさえ、仲介人は「詳細は確認されておらず、信ぴょう性にも疑問が残る」って言ってたのに。それなのに今回は、ORCAがクレイドル03を攻撃するとわかってる。しかも仲介人の声も確信にあふれたものだった。それだけ、この襲撃情報の信憑性が高いと言うことだ」
「…だがそうだとしても企業と繋がりがあるという考えに、どうして導かれる? 内通者の可能性もあるだろう」
「それはないよ。ORCAの宣戦布告から、そんなに時間は過ぎてないし。今から仕込んでも重要な情報を掴めるくらいまで潜れるはずがない。正確な情報を掴むには、それなりの立場でないと無理だからね」

 確かにそのとおりだ。
 アルテリアの同時襲撃。そしてORCAの宣戦布告。これらがあるまで、誰もORCAの存在には気づいていなった。仮に気づいてから、内通者を仕込むとしても―――レックスが言うとおり、正確な情報をつかめるレベルに至るには時間が足りない。

「ただし例外はある」

 ここまで話せば、大体わかるだろう?とレックスが意味深な笑みを受けると、セレンは難しい表情のままに頷いた。

「ORCAが動き出す前から、企業はORCAの存在を知っていた…か」
「そのとおり。その企業はORCAの存在を知っていて、これまで敢えて黙認していたことになる。アルテリア襲撃が、その企業の思惑と外れていたとしても。それは関係ないことだ。それが可能になるまでは放っておいたわけだからね。何か特別な繋がりでもない限り、普通は見過ごすはずがない。
 もちろん企業連全部がグルかどうかはわからないけどね。GAか、インテリオルか。はたまたオーメルか。もしかすると傘下企業のどこかかもしれない。さすがに、それがどこかはわからないけどさ。あと、これらは僕の勝手な推測だから。冗談半分で聞き流しておいてくれ」

 そうは言うが、レックスの推測は冗談半分で聞き流せるようなものでもなかった。だが、それ以上に驚くのは、これまでの状況だけでそこまで考えるレックスの思考パターンである。
 確かに筋はある意味通っているが、そもそもどうしてそんな風に考えが行くのかがセレンには謎だった。まぁ、ネクストの運用一つ見ても、普通とは違う何かを持っている男であるのは間違いないのだが。

「レックスさん。作業が終わりました!!」
「わかった。すぐに行く!!」

 セレンが少し物思いに耽っていると、整備員の一人が声を上げ、レックスがそれに答える。そのやりとりで我に返る。

「慣れない状況の戦闘だからといって、落ちたりしたらどうなるかわかっているだろうな?」

 フォートネクストの方へと歩き出すレックスに後ろから声をかける。その声に、レックスは振り返って答える。

「大丈夫。なんとかなるさ。なんなら―――賭けてもいい」

 そう言って、不敵な笑みを浮かべてみせる。そして愛機であるフォートネクストの方へと歩いてくのだった。






「…!!」

 クレイドル03空域。そこに辿りついたレックスが見たものは、エンジンの一部が火を吹くクレイドルの姿だった。

『…すでに始まっているぞ!! 急げ!!』
「了解っ」

 すぐにオーバードブーストを吹かし、クレイドルの上部へと向かう。エネルギーがなくなって飛べなくなってもクレイドルの上に落ちる位置取りだ。

「セレン、敵は?」
『ネクストが一機。それと自律型ネクストが3機だ』
「…思ったより少ないな。やっぱり単独犯か」

 ORCAがバックにいるのなら戦力は、もっと多いはず。対峙する相手の規模から、やはりORCAは関係ないと確信するレックス。

『自律型のブレードには気をつけろ。あれの威力は、とんでもないものだ』
「わかった」

 AMSの設定を変更。FCSと腕部制御をマニュアル。ブースト周りをAMS制御へと切り替える。
 そして真っ先に目に付いた自律型ネクスト一機目掛け、レールガンにて狙撃。攻撃を受けた自律型ネクストが目標をこちらに切り替えて向かってくる。
 次。一機目はそのままに、二機目、三機目とレールガンで狙撃し、全ての注意を向ける。やがて3機がそれぞれにフォートネクストへと襲い掛かってきた。
 レーザーブレードを抜いて正面から襲ってくる自律型ネクストを両方展開したOGOTOで吹き飛ばす。そして背後から時間差で迫ってきた自律型のレーザーブレードを、ブーストカットによる落下で回避。バックへのクイックブーストで距離を稼ぎ、射角の中に自律型ネクストを誘導。再びOGOTOをぶっ放す――命中。
 そのまま落下して、クレイドル上に着地。再び両手のレールガンへと切り替え、最後の一機を連射(と言うには遅すぎる間隔ではあるが)による対空攻撃にて沈める。

『残るは敵ネクスト一機だ』
「本番か…」

 レーダーを確認する。残る相手は―――ネクスト機のみ。こちらをすぐに攻撃してこなかったということは、恐らくクレイドルを攻撃しているに違いない。そう考え、相手の位置を探そうとするも、その必要はないと、すぐに気づかされた。
 フォートネクストの背後。クレイドルの上部ウイングの上に、そのネクストはいた。しかも、手を叩きながら。

『よぉ、首輪付き。そんなので自律型を落とした手並み、大したものじゃねぇか』

 通信が入る。レックスは両手のレールガンを、相手ネクストへと向けながら答える。

「そりゃあどうも。で、あんたがクレイドルの襲撃犯か」
『あぁそうだとも。クレイドルとはよくできた体制だな。まとめてやるには最適だ』
「………だろうな」

 一機落とせば2000万。まとめてやるのに、これほど向いているものはないだろう。

『話がわかるじゃないか。どうだ、一緒にやらないか?』

 次の瞬間。フォートネクストのレールガンが火を吹いていた。だが攻撃されることを予測していたのか、相手のネクストはわずかに横へと動き、射線から逃れる。

「断る。お前みたいな奴が一番嫌いだ」
『そりゃあ残念だ。じゃあ、殺しあうか』

 相手のネクスト――リザがその場から逆関節特有の上昇力を持って、空へと舞う。それを追って、レックスもフォートネクストを空へと上昇させる。
 そして撃ち合いが始まる。だが、それは一方的に近い撃ち合いでもあった。
 空中での機動力がほとんどないフォートネクストに対し、リザは上下左右に動き回り、アサルトライフルとショットガン。チェインガンにハイアクトミサイルを浴びせ掛けていく。
 フォートネクストもクイックターンやクイックブーストを駆使して、なんとかリザの動きを追うが、リザの3次元機動を追いきれず、PAもAPも確実に削られていく。
 唯一の救いは、フォートネクストが頑丈かつPA防御にも重きを向いたチューンを施してあること。防御力が高いため、攻撃を浴びせられつつも今だAPは50%以上を確保している。

『つまんねぇな。もうちょい楽しめるかと思ったんだが』

 クイックブーストの連続使用でエネルギーがなくなり、一度クレイドル上へと降りるフォートネクストを眺め、リザのリンクスであるオールドキングは興醒めした様子で呟いた。
 一方的ななぶり殺しと言うのも嫌いではない。だが抵抗できる相手が大した抵抗をしてこないとなると話は別だ。

「……まぁいい。後に取っておくつもりだった楽しみを先に回すか」

 クレイドルを落とす。そのためにフォートネクストを無視して、クレイドルのエンジンへと向かおうとするオールドキング。しかし、そこで被弾を受け、再びリザは足を止めた。
 見下ろしてみれば、レールガンを構えるフォートネクストがいた。なぜか追い討ちはしてこない。

『悪いな。そもそもタンクってのは空を飛ぶものじゃないんだよ』

 そんな言葉と共に、左背のOGOTOが展開。榴弾が放たれる。馬鹿正直な正面からの砲撃。それを横へと余裕を持って通常ブーストで回避――しようとして、空中で榴弾が炸裂した。
 レールガンによる榴弾狙撃による起爆。
 爆風をまともに受け、リザの機体バランスが一時的に崩れる。

「なんだ……やるじゃねぇか」
『地に足をつけてるタンクの底力。見せてやるよ』

 二発目のOGOTOが放たれる。それをクイックブーストで回避すれば、先ほどと同じように空中で爆発した。
 ―――面白い。
 口元を歪め、オールドキングはリザをフォートネクストへと向かわせた。ハイアクトをばらまき、まずは得意距離の中~近距離へと詰めにかかる。
 それに対し、フォートネクストはその場から通常ブーストで浮きながら後退。レールガンを撃ちながら下部ウイングと補助翼の間――上からは狙いにくい、そんな位置へと滑り込む。それを追って、敢えてそこにリザを突っ込ませるオールドキング。
 案の定、左背のOGOTOが放たれるが、横方向へのクイックブーストでそれを回避する。続けてくるのは右手のレールガン。それを回避すれば、連射の利かない相手は再装填まで攻撃の手段を失う。
 距離を詰める。フォートネクストがレールガンを構え―――パージした。そして格納から、トーラスのコジマライフルARSENICを取り出し向ける。

「……なるほど。そうきたか、だが――――」

 大火力とも言えるコジマライフル。この距離なら、確かに回避は難しい。だがそれはチャージしていた場合のこと。今からならチャージより先に、こちらが――――。
 撃てる。そう思った次の瞬間、オールドキングは気づいた。すでにフォートネクストが持つコジマライフルが、まばゆいまでの光を湛えていることに。
 次の瞬間、コジマライフルがリザめがけて放たれた。

「……ちっ。くそが…っ」

 通常なら回避できないタイミング。だが、オールドキングはそれを回避した。コジマライフルがすでにチャージ済みと気づいた瞬間ブーストをカットし、クレイドルへと足をつく。そして発射と同時に「跳躍」したのである。
 ブースターとは比較にならない速さを持つ逆関節のジャンプ。それでもって強引に回避したのである。
 最も上下間隔もそれほどないスペース。掠った大出力のコジマ粒子によってAPもPAも削られるが、直撃することと比べれば、何倍もマシというものだ。

「かわされたっ?!」

 一方、レックスはレックスで必殺のはずだった一撃を回避したリザの動きに、驚愕していた。
 脚部のPAに回すKPを直接コジマライフルにバイパスし、格納に隠したままチャージしておく。そして格納から出した直後ではコジマライフルは使えないと言う一般常識(?)を逆手に取った不意をついての攻撃。それで仕留めきるはずだった。
 だが当たらなかった。向こうもまた、レックスの予想外の起動を持って回避したのである。

「……っ」

 すぐにARSENICをパージする。相手も二度目は絶対に撃たせてくれないだろう。となれば、持っていてもただの重りにしかならない。
 後ろに足場はないため、仕方なく通常ブーストを使って空へと逃げる。だが言うまでもなく、リザは距離をあけようとするフォートネクストに肉薄する。

『今のは、ちょっと焦ったぜ。なかなか姑息で卑怯な手を使うじゃねぇか』

 通信越しに聞こえる声は、どこか楽しげな様子だった。

『だったら俺は、正当で卑怯な手を使わせてもらおうぜ』

 そんな言葉と共に、リザの猛攻が再開された。リザがフォートネクストの真上へと回り込み、撃ち降ろすようにして攻撃を浴びせ始める。
 レックスは何とか、それから逃げようとするが機動力の差もあって振り切れない。オーバードブーストで距離をあけることも考えたが、チェインガンにPAを削られて起動もできない。

『どうした。撃ってこないのか?』

 攻撃を浴びせながら、相手が語りかけてくる。
 だが頭上に反撃できる手段がない現状、撃つことが出来ない。フォートネクストに残されている攻撃手段は両背のOGOTOのみ。だが射角の関係上、背中兵装のキャノンでは真上を撃つことは出来ない。
 タンクにとっての死角からの一方的な攻撃。卑怯ではあるが、なるほど確かに正当法だ。

「……どうする…」

 どんな機動をとっても、リザはフォートネクストの真上に張り付いて離れない。このままでは削りきられて終わる。
 ただ勝機は、まだある。相手も先ほどの不意打ちで、それなりのダメージは受けているはずだから当てるができれば。そしてタンクの死角と言える真上方向へと反撃できたら。まだ逆転は可能だ。逆転可能なだけの火力は残っている。
 ―――考える。
 真上を撃つ。どうやって? 方法は一つ。機体そのものを傾ける。
 ではどうやって機体を傾ける? ブースターのほとんどは脚部に集中している。ブースターをマニュアル制御にして、前半分のブースターのみで機体を傾ける? いや無理だ。出力を脚部の前半分に絞ったとしても、それではパワーが足りない。傾けるのに時間をかけたら、避けられるのがオチだ。
 前半分を持ち上げる。ネクスト抜きで考える。普通ならどうするか。誰かに持ち上げもらう? リザに頼む――アホだ。段差を利用する。これが一番無難。最適な段差はどこにある?そもそも真上という普通なら反撃不可能な位置へ反撃することに意味がある。悠長に移動する時間はない。
 短時間で段差か何か、高低差を利用して脚部前半分を持ち上げて真上を狙う。そんな方法があるのだろうか。
 今いる場所は空。そんなものあるはずがない。この広い空にあるのはリザから逃げようと上昇し、今は下に見えるクレイドルくらいのものだ。

 ―――クレイドル。―――空。―――あった。
 
 APは40%を下回っていた。すでにレッドゲージへと到達しており、警告音がコクピット内に響いている。
 
「……よし…」

 プランは決まった。例によって、ギリギリの危険な賭けだが―――いつものことだ。
 ブースターを完全にカット。浮力のなくなったフォートネクストは言うまでもなく落下を始める。上方を確認、リザはしっかりと追撃してきている。
 次に下方を確認。クレイドルが近づいてくる。ブースターを使って、落下の軌道を微妙に修正する。落ちる先はクレイドルの上部ウイング、その端っこも端だ。 
 ウイングの端が近づく。そして着地を―――せずに「足を踏み外した」。ちょうど階段に足をかけるも、踏み込む位置が悪くズルっ!!と踏み外すかのように。
 だが、この場合はタンクなので少し状況は変わる。ウイングの端にタンクの前半分のさらに一部が僅かに引っかかる。それで落下の勢いが止まるはずはない。そのままさらにフォートネクストは落下、前半分が持ち上がり、そして滑り落ちる。
 機体そのものが大きく傾いた。FCSがフォートネクストを追って降下してくるリザを捕捉。OGOTOの砲身が機体の傾きを助けに真上を向く。
 オーバードブーストを起動と同時に、引き金を引いた。






「……なんて野郎だ」

 火花を散らすコクピットの中で、オールドキングは呟いた。タンク機が真上に背部兵装をぶっ放す。予想もつかない攻撃だった。
 結果として、二発の榴弾をまともに受け、リザはすでに機能を停止。今は地上までの道のりを進んでいるだけだ。

「…早すぎるが、まあ仕方ない。殺しているんだ。殺されもするさ」」

 覚悟は出来ていた。本当なら、もう少し生きるつもりだったのだが。こうなってしまったのだから仕方ない。自分の番が来た。…それだけのことだった。
 





「……こういう場所での戦闘だけは。二度とごめんだ…っ」

 リザをOGOTOで撃破した後。体勢を改めて立て直し、クレイドルの上へとフォートネクストを降ろしたレックスの第一声は、そんなものだった。
 
『全目標の排除を確認。ミッション完了だ…。よくやった。彼らは、お前が守ったんだ』
「……そっか…」

 セレンの言葉に、レックスは笑みを浮かべる。―――守れた。その一言が何よりもレックスにとっては嬉しかった。

「……にしても、空って広いもんだな」

 同じはずなのに地上とは違うように見える。さすがに外に出て、直接見るわけにはいかないのでフォートネクストのヘッドパーツ。そのカメラを通して見るしかない。
 何の気なしに、カメラを最大ズームしてみる。この高度からなら、今の時間でも星とか見えるんじゃないだろうか。その程度の考えからのものだった。
 だが――――

「………?」

 そこには星とは違うものが映っていた。
 見間違いか。そう考えもしたが―――それを星と考えるには、それはあまりにも整然とした並びをしていた……。

 
To Be Countinue……


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移設元コメント


☆作者の一言コーナー☆
 一流とまではいかなくても二流リンクスくらいを目指しACFA特訓中の、えむです。
 レックス君、ついにアレを目撃。何気に03って21よりも高度があるので、047のカメラ性能なら上に行かなくても見えるだろうと…。
 
 そして対オールドキング戦。悔いはない戦いが書けました。突っ込みもあるだろうけど後悔しません。毎度のごとく。
 格納内でコジマチャージ。デメリットもありますが、タンクにはあまりデメリットではない気もしたのは、ここだけの話。何気にレックスの奇策が失敗したのは初めてかもしれません。でも、そこから挽回するのが主人公である、まる。
 

 それではここで恒例のコメントレスをば。

>「彼」が再び戦場に・・・。楽しみであると同時に心配です。果たして、いかなる手段で負荷を軽減するのだろう?ともあれ、レックス君、防衛頑張って!
>彼がどういった方法を思いついたのか、そしてオールドキング戦はどうなるのか…楽しみだな
 伏線はすでに張ってあったり。防衛…がんばりました。いつもより。

>コルセールの動向が気になりますね。次も楽しみにしてます。
>コルセールの動きはやはり、レックス君の策によるものかな?
>コルセールの伏線がすごく気になる・・・
 先展開をお楽しみにってことで。まぁ、大体の想像はつくと思いますが(汗

>しかし、オールドキングか~最初のクレイドルで殲滅できなくては勝ち目はないかな…
 苦戦はしましたが、最初で片はつきました。

>タンクでリザを相手にするのは厳しそうですがとくに相手の間合いに入ったら致命的
 事前にFAで挑んだら、泣きたくなりました。空中戦なんて嫌いっ(涙

>古王とレックスが戦ったらどうなるんだろう。火力の差的に考えてやられはしないだろうけど・・・レックスがんばれ!
 こうなりました。つ『今回の話』

 以上、コメントレスでした。
 指摘突っ込み感想その他、今後ともよろしくお願いします。

 さて次回は、衛星軌道掃射砲を巡る色々となります。
 原作展開無視のオリジナル展開…になるはず。とりあえず引っ掻き回します、たぶん。
 では今回はここまで。お付き合いいただきありがとうございました~(・▽・)ノシ


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