小説/長編

Written by えむ


 リンクスに宛がわれているカラードの専用ガレージ。そこに静かにたたずむ一機のネクストを前に、レックス一人感慨深げに見上げていた
 試行錯誤を繰り返し、ようやく仕上がったタンク型ネクスト。それが今、目の前にある。見るかに鈍重なGAフレームのタンク足。両手に装備された有澤製グレネード。背部武装は今は装備されていないが、こちらは状況に応じて付け替えていく予定だ。ちなみに格納も状況によって入れ替える予定だが、こちらも現在は装備していない。
 ちなみに機体が大きく変わったので、機体名もストレイドからフォートネクストへと変更し、カラードへと登録しなおした。
 青を基調としたカラーリングのタンク型ネクスト。これからはこれが自分のネクストとなる。そう考えると、感慨深い思いを抱かずにはいられないレックスなのであった…。
 

 フォートネクストが仕上がって数日が過ぎた頃。レックスとセレンの元へ、一つの依頼が入ってきた。依頼主は、オーメル。内容は、トーラスの最深度採掘施設B7の防衛部隊の排除とのことだった。

「もちろん受けるのだろう?」
「断る理由もないしな」
「装備はどうする。まさかコジマミサイルを持っていくとか言わないだろうな」
「垂直発射のZINC? いやいや、それはないそれは」
「わかっているならいい。で、どうするんだ?」
「そうだな――――」

 少し考えて、積んでいく装備を告げる。それを聞いたセレンの表情は、正気か?とでも言いたそうであった。





 最深度採掘施設B7に敵襲を知らせる警報が鳴り響き、防衛部隊はすぐさま配置へとついた。
 監視システムの映像によれば、敵はネクストであり、入り口に近い地点にいた防衛部隊はその姿を視認すると同時に、グレネードを食らって吹き飛ばされたとのことだった。
 だが、防衛部隊には勝機があった。まず進行ルートの隔壁のすぐ後ろに、重量型ノーマル部隊を前衛、後衛にパイルバンカー装備のノーマルと言った風に配置する。
 すでに隔壁は閉じているが、当然相手はそれを破壊するだろう。確かに閉所でのグレネードの爆発は脅威だ。しかし連射は利かない。さらに言えば、ノーマルでも重量型なら一撃は耐えられる。つまり次の一発を耐え切れれば、勝機はある。
 そこで破壊と同時に突撃。一撃は耐えられる重量型を盾にパイルバンカーを装備したノーマルで強襲を仕掛けるのだ。いくらネクストとはいえ、パイルバンカーをまともに受ければ無事ではすまないはず。
 
「…全機、いつでもブーストを吹かせるようにしておけ」
「了解」

 静かに待つ。その時間は短いようで、長いようでもあった。やがて、レーダーに目標がうつる。

「各機、突撃用意。来るぞ…!!」

 次の瞬間。隔壁が爆音と共に吹き飛んだ。すかさずブーストを吹かし、爆風の向こうにいるであろう敵ネクストへと突っ込む。飛んでくるであろうグレネードに覚悟しつつ、爆風を抜けていくノーマル部隊。そんな彼らの前に飛んできたのは―――

「ミサイルだと!?しかも―――」

 直後、通路全体を埋め尽くす爆発が巻き起こった。

「さすがMSACの大型ミサイル。すごい威力だな」
「屋内戦で、それを持ち込むのはお前くらいだぞ。たぶんな…。ともあく目標撃破、約半数だ」
「わかった。よし、行くか」
 
 巨大な爆発による爆煙が晴れたところで、レックスはフォートネクストを再び前へと進めていき、順調にグレネードと大型ミサイルで撃破していく。はっきり言って、オーバーキルもいいところである。
 当然この後の展開については言うまでもない。増援のノーマル部隊も、しっかり待ち伏せていたフォートネクストの大型ミサイルによって吹き飛ばされ、B7の防衛部隊は軽いトラウマと共に全滅させられてしまったのである。
 ちなみに、使用弾数的に一つで充分足りた大型ミサイルだったが…。片方だけじゃ格好悪いとのそれだけの理由で二つ積んでいったのは、ここだけの話である。そして、これで黒字だったのだから、嘘みたいな話である。

 話は、もう少し続く。
 それからさらに数日後。今度GAからの依頼が届いた。内容はミミル軍港の襲撃と言うもので、与えた損害に応じて報酬も多くなるとのことだった。

「報酬は歩合制なのか」
「そうらしいな。だが、ミミル軍港から、そう遠くない位置に別のインテリオルの基地がある。そのため時間をかけすぎると、ネクストが救援に駆けつける可能性が高いらしい。つまり制限時間付きということだ」
「制限時間か……。ちなみにどのくらい時間があるんだ?」
「5分。それ以上過ぎると、増援部隊の到着前に撤退は難しいらしい」

 示された情報に、レックスは難しい表情を浮かべる。タンク型のネクストである、フォートネクストの機動性はかなり悪い。通常移動だと時速30km前後。ブースト使って時速300km弱。オーバードブーストを使っても時速1000km出るかでないかと言ったレベルである。
 はっきり言って、時間との勝負な任務には向いていない。

「やれなくはないけど、あまり大きな成果は得られないだろうな」

 そう結論づけたレックスに、セレンも納得したようにうなづく。

「あの機体だしな…。どうする? 無理に受けることもないぞ。依頼を選べるのは、独立傭兵の特権みたいなものだからな」
「そうだな…今回はパスするか」

 任務内容と、機体の相性が悪すぎる。そう判断して諦めることにするレックス……だったが。次のセレンの言葉が彼の決定をひっくり返すこととなる

「あぁちなみに言い忘れていたが、弾薬費は全て向こう持ちらしい」
「なんだって、弾薬費が……向こう持ち…?」
「あぁ、そうだ。最も受けないのなら関係はない―――」
「セレン、その任務受けよう」
「何? だが、お前は今―――」
「気が変わった。頼む、やらせてくれ」

 真っ直ぐに真剣な表情を向けるレックスに、ふとセレンが視線をそらし答える。

「お…お前が良ければ、私は構わんさ。じゃあ、受けると言うことでいいんだな」
「あぁ、問題ない。ちょっとでも良い成果が出せるようにがんばるさ」

 そう告げてから、持って行く装備を選ぶよ、と端末へと向かうレックス。だが、この時すでに何を持っていくのか。レックスの心は決まっていたのである。

 数日後。ミミル軍港は、一機のネクストによって、5分も待たず完全に壊滅させられた。
 その姿を目撃した関係者の話によると、そのネクストは両手と両背にグレネードを積んでいて、次々と艦船や守備部隊を撃破していったとのことだった。
 さらに別の目撃者の話によれば、両手のグレネードの弾が切れたかと思えば、格納から別のグレネードを出して攻撃を続行していたらしい。
 そして、ミッション終了後。
 『6本分のグレネードを全て撃ち切って』戻ってきたレックスの表情は、この上なく輝いていたのはここだけの話である。

TO BE COUNTINUE…..

☆作者の一言コーナー☆

 3話目にして、ようやくミッション。
 基本的に作中のアセンで実際に挑戦して、それをネタにしてたりします。いずれ小説補正によるクリア不可能な装備も登場するとは思いますが(汗
 B7での大型ミサイルは本当に強かった…。ミミル軍港のミッションは、レックスにとってはきっと一生の思い出に残ることでしょう。
 さて次回はいよいよ―――


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