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[[小説/長編]] #setlinebreak Written by えむ ---- それは、たまに見る一つの夢だった。 その人は肉親ではなかった。けれども、幼かった自分がその人に懐いていたのは確かだ。 その人は忙しかった。だから、ほとんど会えたことすらない。稀に、鉢合わせする程度。でも、その時はやさしくしてくれたのを覚えている。 一度だけ、その人の方から自分の元へと来てくれた。何を話したかは、よく覚えていない。少しだけ、本を読んでくれて。そして、その人は出て行った。 パイロットスーツを来た背中が遠ざかっていく。 その人は強かったらしい。とても。 でも―――それでも、帰っては来なかった。それっきり。 □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ガシャン。 そんな物の壊れた音で、イリアは目を覚ました。寝ぼけ眼で音のした方を見ると、買ったばかりの目覚まし時計が壁に叩きつけられて大破していた。 「……う…ん…?」 ここだけの話。イリアは寝起きが悪かった。なんと言うか、朝に弱いのである。 それでも起きなければいけないので、目覚ましを毎朝仕掛けているのだが―――事あるたびに目覚まし時計を壊しているのだ。うるさくて。 普段は電池を抜き取った上でゴミ箱に放り込まれている程度だが、運が悪ければ叩き壊したり、投げつけて壊したりと、目指し時計の犠牲者数は日に日に増している。 そして今回でトーラスに来て通算30個目の目指し時計が犠牲となった。 「……やっちゃった…」 ノロノロとベッドから這い出し、大破した残骸をゴミ箱に捨てる。そして、予備の目覚まし時計を棚から取り出す。リンクスの給料は基本的に高い。さらにネクストでのミッションがあった場合には、プラスαでボーナスが必ず出る。その資金をもってすれば、常に予備の目覚まし時計を用意しておくことなど、造作もないことである。 とりあえず着替えて、身支度を済ませ、鏡の前で自分の姿をチェックする。全て問題なし。髪が一本ほどピョコンと立っているが、それも問題なし。だって、どうやっても直らないのだから。今ではこれは仕方なくトレードマークと言う事にして割り切っている現状だ。 ちなみにオウガと初めてあったとき、「アホ毛!? それは、噂に名高いアホ毛なのか!?」と彼は衝撃を受けていた。なんか腹が立ったので、ついボディブローをかましてしまったのだが、それも今となっては良い思い出だ。 ともかく、身支度をバッチリと済ませる。コンディション・オールグリーン。 「うん。今日もがんばるっ」 鏡の前、両手でガッツポーズを小さく取る。気合も充填完了。さぁ行こう。 そして、イリアの一日が今日も始まった。 まずいつものように半分カオスな食堂での朝食を済ませ、それから自分の職場でもあるガレージへと向かう。 そしてオウガと今日一日の予定を話し合う。 「今日の予定はなし。だけどイリア君には、オーダーマッチの誘いが来ている」 「オーダーマッチの?」 「そうそう。と言っても、あくまでインテリオルグループ内での非公式な奴だけど。ぶっちゃけると、お偉いさん立会いの元でやる模擬戦だ」 「ふぅん…」 人によっては変に意識してしまって緊張でもしそうだが、イリアは全く気に留めた様子もなく相槌だけを返す。 「それで、どうだろう? あとはイリア君が受けるかどうか…だけど」 「もちろんやるよ。やっぱりリンクスである以上、ネクスト戦も充分にありうるわけだし。何事も経験重ねることは大事って、お母さんも言ってたし」 「うむ。それに一言でリンクスとネクストと言っても、色々なタイプがいるからね。紙装甲高機動機であるフラジールを駆るアスピナのCUBE。重装甲ガチタンの雷電を駆る有沢隆文。エイ君のヴェーロノークみたいなミサオン機とか」 「選択対象が偏ってる気がするのは気のせいじゃないよね、絶対…」 オウガの専門はネクスト機そのもの研究で、テーマは「既存パーツでの可能性」。現存するパーツで、どんな可能性を秘めた機体が設計できるのか。それはどれだけの物なのか。そういったことを日ごろから研究していたりする。そのため、よその企業の機体だろうと彼には関係なく、特に一点特化型の機体には興味を引かれる傾向にあるのだ。 「ともかく、何はともあれ経験積むことは無駄じゃないからさ」 「そうだよね。それで相手は誰なの?」 「相手は―――」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「アルブレヒト・ドライス所属のヤンだ。今日は、よろしく頼む」 「………」 朝のブリーフィングから3時間後。インテリオルのシミュレータールームの一角。そこでヤンと出会ったイリアは、その相手の姿に圧倒されていた。 身長はざっと190ちょっとはあるだろうか。肩幅もがっしりしており、すごくおっきな人、と言うのがイリアの第一印象だった。頭はスポーツ刈り、片目に眼帯。服装も軍隊がきていたようなロングコート。立ってるだけで圧倒されそうな存在感の持ち主であり、その威圧感は何とも言えないものがあった。 「…む?」 「あれ?」 なんかいつまでも反応しないイリアに気が付き、ヤンが不思議そうな顔を浮かべる。それに気がついたオウガもまた、イリアのほうを振り返ると、彼女はポカンとしたまま見上げててた。 「もしもし?イリア君、起きてる?」 「はっ?!」 ひらひらとオウガがイリアの目の前で手を振り、そこで我に返る。どうやら、相手の存在感に圧倒されてしまっていたようだ。 「あ、えっと。その…っ」 我には返ったものの、圧倒されて呆気にとられてしまったのもあって、次の言葉が出てこない。そんなイリアを見て、ヤンは苦笑を浮かべ、片手を差し出した。そして、改めて自己紹介から始める。 「アルブレヒト・ドライス所属のヤンだ。今日は、よろしく頼む」 「トーラスのイリアです。こ、こちらこそよろしくお願いしますっ」 いまだ緊張こそしているが、今度はちゃんと自己紹介。そして差し出されたヤンの手と握手を交わす。がっしりとした大きな手。だがそんな見た目とは裏腹に、その手の握り方は優しいものだった。 「シミュレーターでの戦闘とは言え、戦いに変わりはない。敵を落とすつもりで本気で来るといい。俺も叩き落すつもりで全力で行く」 「…は、はいっ」 「良い返事だ。それじゃあ、さっそく始めるとしよう」 そう告げて、ヤンは一足先にシミュレーターのほうへと入ってく。それをその場で見送ってから、イリアも慌ててシミュレーターへと駆け込んでいく。 ネクストと、ほぼ同じデザインのコクピット型のシミュレーター。専用のシートに座り、すぐに戦闘のための準備を始める。 機体と内装・武装を選択。さらにFRSメモリによるチューン強化を行っていく。主にブースターまわりとジェネレーター関連。機動力重視の定番セッティングだ。 それを終えれば、あとはAMS接続し、仮想戦闘システムを起動する。元々、AMS適性が並外れて高いイリアは何の苦もなく、すんなりと接続を済ませる。 「よし、準備オッケーだよ」 『さきほどの緊張もどこ吹く風って感じだねぇ』 観戦用のモニタールームで見ているオウガからの通信が入る。コクピットに入ったイリアは完全に落ち着きを取り戻しているのが声だけで伝わったらしい。 「戦闘中は戦闘に対する緊張だけで充分だもの」 『それもそうか。さて、対戦相手のブラインドボルトだけど。相手はアルドラのゼルドナーをベースとした重二脚型だ。武装は全て単発型の高火力兵器ってところだね』 「ってことは、一発の被弾がやばそうだね…」 『ランスタンは安定性とかも高くないからねぇ。PAはあるとは言え』 「リンクスのヤンさんは、どんな人なの?」 『元国軍兵士で、国家解体戦争やリンクス戦争も生き延びてる。ネクストに限らず、戦闘全般に対して経験豊からしい』 「…スティレットさんや、エイ・プールさんとは全然違うタイプな予感がする」 『うむ。技量はイリア君が遥かに上だろうけどねぇ。テレジア君とも、また違った強さを持ってるリンクスだよ。勝っても負けてもイリア君にとってプラスにはなると思う』 「わかった。ともかくがんばる」 とりあえず自分の持てる力全てをぶつける。それが相手に対する敬意表明だ。それが例えシミュレーションとしても。いや、シミュレーションだからこそかもしれない 『こちらも準備が出来た』 シミュレーターが起動し、目の前に戦場が現れる。何もない砂漠、それが今回の舞台だった。 そして遥か前方に、今回の目標であるブラインドボルトが立っている。 アルドラの重二脚型、SOLDNER-G8セルドナー・ゲーハアト。量産機として開発された低コスト機ではあるが、防御面ではPA・EN・実弾と隙のない防御力を持っている機体だ。 そして相手の武装は単発高火力兵装のみ。アルドラ製のグレネードとバズーカ。そしてインテリオル製のハイレーザーキャノン。 ランスタンはEN防御に長けているので、一番もらって痛くないのはハイレーザーキャノンだろう。警戒すべきは、バズーカとグレネード。片方もらえば、確実に追撃でもう一発もらうことになる。耐久力のないランスタンでは、その一撃は大きすぎるだろう。 火力と防御力は相手が上。対して、こちらで勝っているのは機動力だけ。 ならば機動力を生かし、相手にひたすら張り付いて削り続ける。距離が近い以上、相手からの攻撃をもらう可能性も高いが、対策はある。最も、実戦経験の高さでは天と地ほどの差もある相手にどこまで通用するかはわからないが…。 『これより戦闘を開始する』 「行きますっ!!」 ブラインドボルトがブーストによる前進を開始。それに対し、イリアのアクアビットマンが大地を蹴り、クイックブーストも併用して空を駆ける。 イリアにとっては初めてのネクスト相手の「実戦」が、今始まろうとしていた。 ~つづく~ ---- now:&online; today:&counter(today); yesterday:&counter(yesterday); total:&counter(total); ---- **移設元コメント [#a88906b3] -イリアの初ネクスト戦か、楽しみだ -- 2010-12-03 (金) 14:43:53 -とりあえず、「ケ゛ー’’ハアト’’」じゃなくて「ケ゛ー’’アハト’’」 -- 2011-01-31 (月) 03:35:38 ---- ☆作者の一言コーナー☆ 書き始めると、違う構想が浮かぶ、えむです(ぇ とりあえずで対ネクスト戦。相手はあまり他所では見ないヤンさん。 彼はイリア相手にどう立ち回るのか。 次回はネクスト戦本番。さぁ、どうなることやら。 ―――お楽しみにっ。 ---- **コメント [#u2f2c14c] #comment ---- RIGHT:[[小説へ戻る>小説/長編]]
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[[小説/長編]] #setlinebreak Written by えむ ---- それは、たまに見る一つの夢だった。 その人は肉親ではなかった。けれども、幼かった自分がその人に懐いていたのは確かだ。 その人は忙しかった。だから、ほとんど会えたことすらない。稀に、鉢合わせする程度。でも、その時はやさしくしてくれたのを覚えている。 一度だけ、その人の方から自分の元へと来てくれた。何を話したかは、よく覚えていない。少しだけ、本を読んでくれて。そして、その人は出て行った。 パイロットスーツを来た背中が遠ざかっていく。 その人は強かったらしい。とても。 でも―――それでも、帰っては来なかった。それっきり。 □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ガシャン。 そんな物の壊れた音で、イリアは目を覚ました。寝ぼけ眼で音のした方を見ると、買ったばかりの目覚まし時計が壁に叩きつけられて大破していた。 「……う…ん…?」 ここだけの話。イリアは寝起きが悪かった。なんと言うか、朝に弱いのである。 それでも起きなければいけないので、目覚ましを毎朝仕掛けているのだが―――事あるたびに目覚まし時計を壊しているのだ。うるさくて。 普段は電池を抜き取った上でゴミ箱に放り込まれている程度だが、運が悪ければ叩き壊したり、投げつけて壊したりと、目指し時計の犠牲者数は日に日に増している。 そして今回でトーラスに来て通算30個目の目指し時計が犠牲となった。 「……やっちゃった…」 ノロノロとベッドから這い出し、大破した残骸をゴミ箱に捨てる。そして、予備の目覚まし時計を棚から取り出す。リンクスの給料は基本的に高い。さらにネクストでのミッションがあった場合には、プラスαでボーナスが必ず出る。その資金をもってすれば、常に予備の目覚まし時計を用意しておくことなど、造作もないことである。 とりあえず着替えて、身支度を済ませ、鏡の前で自分の姿をチェックする。全て問題なし。髪が一本ほどピョコンと立っているが、それも問題なし。だって、どうやっても直らないのだから。今ではこれは仕方なくトレードマークと言う事にして割り切っている現状だ。 ちなみにオウガと初めてあったとき、「アホ毛!? それは、噂に名高いアホ毛なのか!?」と彼は衝撃を受けていた。なんか腹が立ったので、ついボディブローをかましてしまったのだが、それも今となっては良い思い出だ。 ともかく、身支度をバッチリと済ませる。コンディション・オールグリーン。 「うん。今日もがんばるっ」 鏡の前、両手でガッツポーズを小さく取る。気合も充填完了。さぁ行こう。 そして、イリアの一日が今日も始まった。 まずいつものように半分カオスな食堂での朝食を済ませ、それから自分の職場でもあるガレージへと向かう。 そしてオウガと今日一日の予定を話し合う。 「今日の予定はなし。だけどイリア君には、オーダーマッチの誘いが来ている」 「オーダーマッチの?」 「そうそう。と言っても、あくまでインテリオルグループ内での非公式な奴だけど。ぶっちゃけると、お偉いさん立会いの元でやる模擬戦だ」 「ふぅん…」 人によっては変に意識してしまって緊張でもしそうだが、イリアは全く気に留めた様子もなく相槌だけを返す。 「それで、どうだろう? あとはイリア君が受けるかどうか…だけど」 「もちろんやるよ。やっぱりリンクスである以上、ネクスト戦も充分にありうるわけだし。何事も経験重ねることは大事って、お母さんも言ってたし」 「うむ。それに一言でリンクスとネクストと言っても、色々なタイプがいるからね。紙装甲高機動機であるフラジールを駆るアスピナのCUBE。重装甲ガチタンの雷電を駆る有沢隆文。エイ君のヴェーロノークみたいなミサオン機とか」 「選択対象が偏ってる気がするのは気のせいじゃないよね、絶対…」 オウガの専門はネクスト機そのもの研究で、テーマは「既存パーツでの可能性」。現存するパーツで、どんな可能性を秘めた機体が設計できるのか。それはどれだけの物なのか。そういったことを日ごろから研究していたりする。そのため、よその企業の機体だろうと彼には関係なく、特に一点特化型の機体には興味を引かれる傾向にあるのだ。 「ともかく、何はともあれ経験積むことは無駄じゃないからさ」 「そうだよね。それで相手は誰なの?」 「相手は―――」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「アルブレヒト・ドライス所属のヤンだ。今日は、よろしく頼む」 「………」 朝のブリーフィングから3時間後。インテリオルのシミュレータールームの一角。そこでヤンと出会ったイリアは、その相手の姿に圧倒されていた。 身長はざっと190ちょっとはあるだろうか。肩幅もがっしりしており、すごくおっきな人、と言うのがイリアの第一印象だった。頭はスポーツ刈り、片目に眼帯。服装も軍隊がきていたようなロングコート。立ってるだけで圧倒されそうな存在感の持ち主であり、その威圧感は何とも言えないものがあった。 「…む?」 「あれ?」 なんかいつまでも反応しないイリアに気が付き、ヤンが不思議そうな顔を浮かべる。それに気がついたオウガもまた、イリアのほうを振り返ると、彼女はポカンとしたまま見上げててた。 「もしもし?イリア君、起きてる?」 「はっ?!」 ひらひらとオウガがイリアの目の前で手を振り、そこで我に返る。どうやら、相手の存在感に圧倒されてしまっていたようだ。 「あ、えっと。その…っ」 我には返ったものの、圧倒されて呆気にとられてしまったのもあって、次の言葉が出てこない。そんなイリアを見て、ヤンは苦笑を浮かべ、片手を差し出した。そして、改めて自己紹介から始める。 「アルブレヒト・ドライス所属のヤンだ。今日は、よろしく頼む」 「トーラスのイリアです。こ、こちらこそよろしくお願いしますっ」 いまだ緊張こそしているが、今度はちゃんと自己紹介。そして差し出されたヤンの手と握手を交わす。がっしりとした大きな手。だがそんな見た目とは裏腹に、その手の握り方は優しいものだった。 「シミュレーターでの戦闘とは言え、戦いに変わりはない。敵を落とすつもりで本気で来るといい。俺も叩き落すつもりで全力で行く」 「…は、はいっ」 「良い返事だ。それじゃあ、さっそく始めるとしよう」 そう告げて、ヤンは一足先にシミュレーターのほうへと入ってく。それをその場で見送ってから、イリアも慌ててシミュレーターへと駆け込んでいく。 ネクストと、ほぼ同じデザインのコクピット型のシミュレーター。専用のシートに座り、すぐに戦闘のための準備を始める。 機体と内装・武装を選択。さらにFRSメモリによるチューン強化を行っていく。主にブースターまわりとジェネレーター関連。機動力重視の定番セッティングだ。 それを終えれば、あとはAMS接続し、仮想戦闘システムを起動する。元々、AMS適性が並外れて高いイリアは何の苦もなく、すんなりと接続を済ませる。 「よし、準備オッケーだよ」 『さきほどの緊張もどこ吹く風って感じだねぇ』 観戦用のモニタールームで見ているオウガからの通信が入る。コクピットに入ったイリアは完全に落ち着きを取り戻しているのが声だけで伝わったらしい。 「戦闘中は戦闘に対する緊張だけで充分だもの」 『それもそうか。さて、対戦相手のブラインドボルトだけど。相手はアルドラのゼルドナーをベースとした重二脚型だ。武装は全て単発型の高火力兵器ってところだね』 「ってことは、一発の被弾がやばそうだね…」 『ランスタンは安定性とかも高くないからねぇ。PAはあるとは言え』 「リンクスのヤンさんは、どんな人なの?」 『元国軍兵士で、国家解体戦争やリンクス戦争も生き延びてる。ネクストに限らず、戦闘全般に対して経験豊からしい』 「…スティレットさんや、エイ・プールさんとは全然違うタイプな予感がする」 『うむ。技量はイリア君が遥かに上だろうけどねぇ。テレジア君とも、また違った強さを持ってるリンクスだよ。勝っても負けてもイリア君にとってプラスにはなると思う』 「わかった。ともかくがんばる」 とりあえず自分の持てる力全てをぶつける。それが相手に対する敬意表明だ。それが例えシミュレーションとしても。いや、シミュレーションだからこそかもしれない 『こちらも準備が出来た』 シミュレーターが起動し、目の前に戦場が現れる。何もない砂漠、それが今回の舞台だった。 そして遥か前方に、今回の目標であるブラインドボルトが立っている。 アルドラの重二脚型、SOLDNER-G8セルドナー・ゲーハアト。量産機として開発された低コスト機ではあるが、防御面ではPA・EN・実弾と隙のない防御力を持っている機体だ。 そして相手の武装は単発高火力兵装のみ。アルドラ製のグレネードとバズーカ。そしてインテリオル製のハイレーザーキャノン。 ランスタンはEN防御に長けているので、一番もらって痛くないのはハイレーザーキャノンだろう。警戒すべきは、バズーカとグレネード。片方もらえば、確実に追撃でもう一発もらうことになる。耐久力のないランスタンでは、その一撃は大きすぎるだろう。 火力と防御力は相手が上。対して、こちらで勝っているのは機動力だけ。 ならば機動力を生かし、相手にひたすら張り付いて削り続ける。距離が近い以上、相手からの攻撃をもらう可能性も高いが、対策はある。最も、実戦経験の高さでは天と地ほどの差もある相手にどこまで通用するかはわからないが…。 『これより戦闘を開始する』 「行きますっ!!」 ブラインドボルトがブーストによる前進を開始。それに対し、イリアのアクアビットマンが大地を蹴り、クイックブーストも併用して空を駆ける。 イリアにとっては初めてのネクスト相手の「実戦」が、今始まろうとしていた。 ~つづく~ ---- now:&online; today:&counter(today); yesterday:&counter(yesterday); total:&counter(total); ---- **移設元コメント [#a88906b3] -イリアの初ネクスト戦か、楽しみだ -- 2010-12-03 (金) 14:43:53 -とりあえず、「ケ゛ー’’ハアト’’」じゃなくて「ケ゛ー’’アハト’’」 -- 2011-01-31 (月) 03:35:38 ---- ☆作者の一言コーナー☆ 書き始めると、違う構想が浮かぶ、えむです(ぇ とりあえずで対ネクスト戦。相手はあまり他所では見ないヤンさん。 彼はイリア相手にどう立ち回るのか。 次回はネクスト戦本番。さぁ、どうなることやら。 ―――お楽しみにっ。 ---- **コメント [#u2f2c14c] #comment ---- RIGHT:[[小説へ戻る>小説/長編]]
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