Written by ケルクク


彼に恋をしたのはいつからだろう?

****

彼に初めて会った時?

彼は多くいるテスト搭乗者の一人だった。
初めて見た印象は技術者にしては不釣り合いな戦士の身体をしていると思ったくらい。
だから一目惚れではないと思う。

****

では彼が整備員になった時?

国家解体戦争が始まる直前、企業は新製品の開発を一時取止め現有するネクストの整備に全力を注ぐことにした。
その為彼は一時的にテスト搭乗者から私達の整備員になった。
当時はAMS技術は未成熟でしかもAMS適性を持った者は非常に少なく、パーツの動作確認等でAMS接続が必要になるとその都度私達リンクスがAMS接続を行わねばならず私達の負担は相当なものだった。
それを彼等テスト搭乗者が肩代わりしてくれる事で私達の負担は半減した。
でもこの時私は負担が減った事を喜びはしたが彼に対する特別な想いは無かったと思う。

****

では彼を私専属の整備員にした時?

国家解体戦争当初、私の戦績は振るわなかった。
私の愛機は高出力だが扱いの難しいブレードを振るう近距離専門の軽量級だ。その為僅かの違和感、僅かの調整不足が被弾に繋がり死に直結する。
だが整備員達は私の満足いく調整をする事が出来ず、その為私は後一歩踏み込む事が出来なかった。
とはいえ整備員を責めるのは間違いだろう。数値的に言えば整備は完璧だった。他のオリジナルなら何ら違和感を感じなかっただろう。
つまり私の要求は機械が感知できない、誤差レベルの桁での調整だったのだ。さらに私は自分の要求をベルリオーズの様に数値的に伝えられず感覚でしか言えなかった。
しかも求める値は日によって違った。前回の値が今回も同じとは限らないのだ。その日の体調や現地の気候や相手、そういった不確定な要素によって私の要求は出撃の度に変化する。
結果として誰も私の満足のいく調整は出来なかった。
彼を除いて。
彼だけは私の漠然とした要求と、彼の前で一度MOONLIGHTを振って見せるだけで私の理想通りに機体を仕上げてくれた。
だから私は彼を私専属の整備員にする事を強引に通したのだ。
私が三位等という高位にあるのも、『鴉殺し』や『黒騎士』と讃えられるほどの戦果を上げる事が出来たのも彼のお陰だ。
けれど専属となった彼と「改めてよろしく」と握手をした時、確かに私は彼を特別な存在と思ってはいたがそれは恋と呼ぶ感情ではなかったと思う。

****

なら、彼がリンクスになった時?

そうかもしれない。
国家解体戦争が終結して暫くした後、本社はネクスト戦力増強の為に新たにAMS適性がある者を集め、基礎教育が終わった彼等を私達に教育しろと命じた。
面倒だったし自分が人に教えられる器では無いと知っていた私は断ろうとしたが、ベルリオーズに私に割り当てられるのが彼だと聞かされ、受けた。
彼はいい生徒だった。私の拙い言葉だけで言った事だけでなく伝えたかった事まで理解し急速に成長していった。
その成長に私は彼に教える事にのめり込み、ミッション以外の時は文字通り寝食を共にし彼を鍛え上げた。
その甲斐あって彼はベルリオーズの弟子である天才テルミドールより早くリンクスになる事が出来た。

彼がリンクスになった夜、ネクスト名の由来を尋ねると彼は何も言わずに私を外に連れ出した。
人気のない庭園で彼は池の畔に立ち、自室より持ちだした刀を構える。
月明かりの下、水面と空の二つの月の間で刀を構える彼はまるで完成された絵画のように美しく、私は息をするのも忘れて彼に見惚れた。
どれくらい見惚れていただろうか?突如裂帛の気合と共に繰り出される斬撃。リンクスの私ですら何か光ったとしか認識できなかった斬撃は池を割り水面に映る月を二つに斬った。
その離れ業に興奮し歓声を上げ彼の下に駆け寄ろうとした私を彼の出す殺気が包む。
皮膚に絡みつくような殺気に体が凍りつく。そして空気すら凍てつかせる殺気が向かう先は空に浮かぶ月。
ゆっくりと彼が月に向かい構える。
永遠にも等しい一瞬の後、唐突に辺りに充満する殺気が消え失せ、空に浮かぶ月が割れた。
そして遅れて耳に届く風斬り音。
「馬鹿な!?」金縛りから解放された私が慌てて空を見直すと月は割れる事無く空に浮かんでいた。
「斬月」
彼がこちらに向き直り告げる。
「今のが由来か。凄いな。忍術とかいうやつか?」
「児戯」
彼が首を振る。
「児戯という事は無いだろう。現にお前は水面の月も空に浮かぶ月も斬ったじゃないか!!」
「夢幻」
彼が二つの月を指差す。無論、割れてはおらず円いままだ。
「未熟」
「まさか!!本当に斬る気なのか!?」
「斬月」
彼は私の問いに答えずもう一度由来となった言葉を繰り返し、月を見る。
彼は本気だ。彼は本当に月を斬るつもりなんだ。もちろん彼は幾ら足掻いても決して月を斬る事は出来はしない事を理解している。
それでも彼は月を斬る為に努力を続けるんだろう。何時の日かきっと月を斬れると信じて。
私はそんな彼と彼の在り方をただ美しいと感じ、そして彼の瞳に私が映っていない事に気付き涙を流した。
この時私は何を想って泣いたのだろう?今はもうわからない。

****

はっきりと自覚をしたのはこの戦争が始まってからだ。
彼がリンクスとなり整備員でなくなった為に調整が満足のいかない物になり、また国家解体戦争時と違い対ネクストの戦術が確立されていた為私は苦戦する事が多くなっていた。
だが私は諦めていた。整備員は完璧にやっている。だから彼等を責めるのは筋違いだ。彼が特別なのだ。
これからは敵ネクストとの直接対決もありえるので不安が残るがしょうがない。

でもある出撃の際、整備は完璧に出来ていた。私は偶然だと思った。
次の出撃も完璧だった。私は疑問に思い整備員に尋ねたがはぐらかされた。
彼なのだろうか?彼ならば止めさせねばならない。昔はともかく今の彼はリンクスなのだ。自分の事の他に私のネクストの調整までやっては体が持たない。
次の出撃も完璧だった。私は彼に尋ねたが彼は何も答えなかった。私は彼に迷惑なので自分の事だけを考えろと怒鳴りつけた。
彼は眼に隈を作っており顔色も悪かった。どう見ても限界に近い。止めてほしい。私は少しぐらい調子が悪くても戦える。
次の出撃も完璧だった。でもスプリットムーンは右腕を失って帰って来た。私は怒り狂い彼を殴り倒した。彼は無抵抗で何も言わなかった。
彼の眼はあの夜と同じだ。何をしてもきっと止めない。どうしたらいいのだろう?私のせいで彼が死ぬ。
次の出撃の前夜、オルレアの前で張っていた私の前に彼が現れた。彼は銃を持って帰れと脅す私に構わず調整を始め、私は彼を撃てなかった。
銃を捨て泣き崩れる私に背を向け調整を続ける彼。何故だと尋ねる私に「恩義」と答え、調整を終えると同時に意識を失った。

そして医務室で眠る彼の前で頭を掻き毟りたくなる様な焦燥と共に私はようやく気が付いたのだ。
この自責の念は仲間を傷付けてしまった事だけではないと。
私は彼に何時の間にか恋をしていたのだと。

****

彼に恋をしたのはいつからだろう?
彼に初めて会った時?彼が整備員になった時?彼を私専属の整備員にした時?彼がリンクスになった時?
始まりは解らないけど私は彼に確かに恋をした。


「真改聞いているか?むしろ起きているか?」
「応」
「ならばいい。おそらく三十分後にGAのワンダフルボディが取り巻きと共に、次いでインテリオルのヴェーロノークと独立傭兵のストレイドが現れる。
 両者の戦闘後に強襲し可能な限り戦力を削げ。それとテルミドールからの伝言だ。ストレイドには注意しろ、だそうだ」
「承知」
「生き残るのを最優先にしろ。計画が始まる前にお前ほどの駒を失うわけにはいかない。いいな?」
「応」
「頼んだぞ。人類に黄金の時代を」


さて、いきなりで悪いがロイ兄さんの歴史の授業、インテリオル編だ!!

国家解体戦争前のインテリオル――当時はインテリオル・ユニオングループって名前だが面倒なんでインテリオルでいいよな?――はネクスト技術関連で大きく出遅れちまったんだ。
まぁ、オーメルやアクアビットみたくコジマ技術は無い、かといってGAみたくそれをカヴァーできる装甲やイクバールの様な高性能かつ汎用性があるわけでもない。
リンクスの数はいたもののレイレナードと比べると質で劣り、BFFや有沢やMSACやクーガーやついでにハラショーみたく一芸に特化したわけじゃないし、ローゼンみたく認知度があるわけでなし。
つまり全てが一番でなく二番手以下。しかも、一位とは大差をつけてのだ。なにより技術力が無いのが致命的だった。
一応資本力はそれなりにあったんだがあくまでそれなり。このままだと戦争後にズルズルと体力を消耗して他社に吸収合併される事は目に見えていた。
そこで当時の首脳部が起死回生を狙って仕掛けた奇策が女性社員の超優遇だったんだ。
一応どの企業でも男女平等を掲げていたがまだまだ実際は男系社会。優秀でも女性ってだけで中々上にはいけなかった。
そこで、インテリオルは女尊男卑どころか、女性は王様、男は奴隷ぐらいの条件で募集したからもう大変!!
各社の優秀な女性社員はこぞってインテリオルに集まり、その力でインテリオルはEN兵器の分野で一代シェアを築いたんだ。

まぁ、その話は実は俺が話したい事と関係が無い。
重要なのはその奇策のせいで優秀な女性社員は大量に集まったけど、男も大量に辞めてったて事だ。
当然だよな。特殊な趣味の持ち主でなければ女性の奴隷になんかなりたくないし、特殊な趣味の持ち主でも当時はBFFっていうリアルクイーンがいる所があったんだからな。
とにかく結果として、インテリオルの男女比率は13:4992にまでなっちまった。
女の園、あるいはハーレム。いい響きだよな。もう色々想像しちまうだろう?
でも、よーく考えてみろよ?
お前等、同性のみで集まったらどんな話をする?趣味の話?仕事の話?おいおい、格好つけんなよ、異性の目が無い所で話す事つったら猥談っきゃねーだろ?
それに異性の目がないとどうしても無防備つーかだらしなくなるからな。
まぁ、わかんねぇーなら男子校や女子校の寮の三年部屋、あるいは修学旅行の男子部屋に女子部屋、もしくは同性だけの宅飲みを想像しろ。それを十八倍ぐらい酷くしたやつだ。全部経験した事が無い奴は自分の幸運に感謝して死に腐れ。
まっ、簡単に言うとインテリオルの女はどんどん下品にエロくなっていき、最終的には男は最初の三日は天国、それ以上いるなら地獄の職場になっちまったわけだ。

あ?想像出来ねぇ?仕方ねえなぁ~。そうだな。具体的に言うと俺のトラウマが刺激されちまうから数値的に教えてやろう。
企業毎に毎年訴えられたセクハラの被害件数を比較してみるとだな、インテリオルは他企業の半分くらいしかないんだな。
え?だったらそんなに酷くないんじゃないかって?おいおい、最後まで話は聞けよ。被害者の男女比は逆なんだぜ。
つまり他企業の半分とはいえ年数千件でる被害の殆どは女性から男性へのセクハラなんだ。
んで良く考えろよ世の男子諸君。例えばお前等が女性に尻を触られたり、女性上司から下品な話題を振られた程度で訴えられるか?できねぇだろ?
男は女に比べて中々言いだせないんだ。恥とか外聞とかプライドとか色々あるからな。にもかかわらず年数千件以上でるセクハラの被害届。さて何をされたんだろうな?
想像してみろよ。お前等はどこまで許せる?何処から許せない?俺達は確実にそれより酷い目にあってたんだぜ。

あぁ?まだわからねぇ?いいだろう。じゃぁ、取って置きの怖い話をしてやるよ。
ちょっと前、インテリオルから有澤に男性社員二人が亡命したんだよ。まぁ、これ自体は珍しくねぇ。何しろ情報や技術を狙っての引き抜きや誘拐は日常茶飯事だからな。
でもよぉ、二人が亡命した理由はそれとはちょっと違う。女性社員のセクハラに耐えかねてだったんだ。
さて、この男性社員二名、そうだな実名だと不味いから仮に興氏と干氏にしとくか。
んで、当初有澤は大した技術を持っていない二人の為にインテリオルと揉めるのは嫌だったから送り返そうとしたんだよ。
だが、愛し合う二人の涙ながらに語られたセクハラの域を超えた虐待に義の人有澤隆文は激怒。二人の保護を決めインテリオルに対して全面攻撃を行ったんだ。
それを当初は止めようとした親会社のGAだが、亡命した二人と有澤が経営者連中に密室で数時間『誠意ある説得』を行った結果、何故か前言を翻し全面協力したんだ。
そして『衆道の自由』を掲げた攻撃は苛烈を極め、さらにインテリオル内にいた男性社員のサボタージュを受けインテリオルは深刻な被害を受けた。
それに怒り狂ったインテリオルは『リアルBL撲滅※ただしイケメンは除く』の御旗を振りかざしGAグループ全体に容赦ない攻撃を仕掛けた。もはやビジネスとしての戦争の枠を超えた規模のな。
泡を食ったのはオーメルだ。当然だな。ようやく安定したクレイドル体制をそんなくだらない原因で戦争を起こされて崩壊されてはたまらない。
慌てて持ち前の政治力を駆使して何とか両者に仲直りをさせたというわけだ。………余計な事しやがって。
つまりセクハラが原因でクレイドル体制は一度崩壊の危機を迎えたというわけだな。え?途中からセクハラが原因じゃなくなってるって?こまけぇことはいいんだよ!!!

まぁ、だらだら話したが何を言いたいかというと、そんなインテリオルの連中と男所帯のうちで共同任務をするとどうなるかって事を想像して欲しかっただけだ。

古人曰く、男に飢えた女の前に出る事は飢えた虎の前に出る事より恐ろしい。


「やっやめてください!!そこだけはそこだけは勘弁して!!」「うわぁ!お子様だぁ!!!」「やらないか」「ほらほら言ってみなさいよ。なにを止めてほしいの?」「そっそんな事恥ずかしくて言えない!!!」「修正が必要だ」「ほらほら入れちゃうわよぉ~」「いやあぁああ!!お婿に行けなくなっちゃう!!」「大丈夫!!皆で飼ってあげるから!!」「ふぇぇぇええ!もう駄目ですよぉ~」「あら、もうこんなにふにゃふにゃになって可愛いわ~」「せめて電気を消して!!」「駄目よ!!三ヵ月ぶりにあったのよ!!もう我慢できないわ!!」「だったら、ふたりきりで」「見られてる方が興奮するの!!」「小さい存在こそが全てだ!!」「いいなぁ~!!混ぜて混ぜて!!」「だぁめ!!見せてあげるから一人で遊んでなさい!!」「ぶうううう!!!」「見ないで!!見せないで!!!」「お前等!!いい加減にせんか!!」「そんな状態で怒っても説得力無いわよ?おじいちゃん」「ええい!小娘がこれでもくらえ!!ゴールディンフィィンガァァア!!」「きゃああぁぁぁああん!!」「あ~ずるぅ~い!!私も私も!!」「これこれ、並ばんかむひょひょぅ~!」「これが私のドミナントだ!!」「………ダガー?」「笑わせる…偽物は私の方だったか」「ここをこうすると、………ほら!元気になった!!」「やめて!僕は二次元にしか興味が無いんです!!」「そんな事言わないの。あたしが三次元の良さを教えてあげる。お兄ちゃん」「ぁぁああぁぁぁぁあ!!」「いくぅぅぅううううぅうっぅ!!」「とっつくにょ!!」

目の前で天国あるいは地獄が展開されている。充満する男女の悲鳴と嬌声と汗と愛液と精液の匂い。もはやまともに服を着ているのは俺達二人しかいない。
「あぁ、なんで俺はあの中にいないんだろう?」
「何か言ったかロイ?」
「んにゃ、何も」
「ならいい。ええい!!これは私のだ!!触るな!脱がすな!!挑発するな!!」
俺の膝の上で猫のように髪を逆立てて近寄る女を威嚇し撃退し続けるウィンディー。独占欲を発揮してくれるのは嬉しいんだがこの状態で生殺しは涙が出るほど辛い。いっそ殺せ。
せめてウィンディーに悪戯出来た方がいいのだが、両肩は先程ウィンディーの胸を揉んだ時に外され、エーレンベルクはウィンディーの尻に押し付けたら正拳突きで破壊された為、膝の上のウィンディーの尻の柔らかさを楽しむ以外何も出来ない。
「あらあら?ウィンちゃん、自分のだからって独り占めしちゃ駄目ですよ?仲良く平等にやりましょう」
キシャ―と威嚇を続けるウィンディーの前に上半身にはインテリオル軍服を一部の隙も無くきっちり着込み、下半身に何も着ないというアンバランスな格好をしたエイ=プールの姐さんがやってくる。
うぉぉおおぉお!!ウィンディーには無い豊満な胸に、すらりと伸びた旨そうな太腿に、何より裾の先からちらちらと覗く魅惑の空間!!二十代のウィンディーには無い円熟した色気!!若いのもいいけど年上もやっぱり最高だよな!!!
「自分の恋人を独占して何が悪い!!」
「まぁ!先輩に対してなんという口のきき方!酷いわ。あぁ、あんなに純粋だったウィンちゃんもランクが高くなると偉そうになるのですね。毒舌ランク1ならぬ傲慢ランク3というところですか」
「敬って欲しければ先輩らしくしてください!!!そもそも自分の男を寝とろうとする女に先輩も後輩もくそもあるか!!!」
「あら、そこまでは考えていません。ただ、一か月ぶりにロイ君と楽しみたいな~と思っただけです」
「同じじゃないか!!って、一か月ぶり!?ロイィィイイイ!!!って何処を見ている!!」
血相を変えて振り向いたウィンディーが俺に眼潰しを決める。
痛てぇ!!痛てぇがチャンスだ。一か月前の事はこのまま何とかうやむやにしよう。
「目があぁぁぁ!!目がぁああぁあ!!」
「可哀そうに。私が手当てしてあげますね。ペロペロペロ~~」
「あぁあああっぁぁあっぁぁあぁ!!舌が!舌が目に!!目がぬるっと!!粘膜に粘膜が!!あぁぁぁぁぁあ~、何この新感覚、気持ちいい~~!!俺なんか新しい属性に目覚めちゃいそう!!」
エーレンベルク再起動!!!充填開始!!!
「目覚めるな!!!ああもう!!離れろ!!!って!何処に座っている!!!」
「あぁ!もっと!もう少しで新しい世界が見えそうなんです!!!」
「見るな!!この!!!」
「フグ!!!」鳩尾に突き刺さった拳が意識を一瞬刈り取る。だが作戦成功。一か月前のオイタの追及は忘れてくれたようだ。
「どこって、左膝?本当は腰の上がいいのですがウィンちゃんが邪魔です。ちょっと、どいてくれませんか?あ!ウィンちゃんが腰の上に座るなら私が退きますよ。初回は恋人さんが優先です」
「座りませんがどいてください」
「いやです」
「いい加減にしろよ!年増!!!」
「いい加減にするのはアナタよ!!」
「ここで逆切れするのかよ!!」
「いいウィンちゃん!!あなたが恋人を独占したいのは解ります!なら皆みたいにやりなさい!!そうすれば私達も見ていて楽しいし誰もちょっかいをかけてこないのであなた達も楽しいでしょう!!!つまり皆ハッピィーなのです!!
 なのにやらないから皆ロイ君が開いていると思って近づいてくるのよ!!!」
「人前で出来るか!!!」
「何ぶってるのよ。ロイ君がいた頃はシャワー室だろうが仮眠室だろうがエレベーターだろうがトイレだろうが私の部屋だろうが構わずしてたくせに」
「ほんとになぁ~。俺はどっちかの部屋でしようって言ってんのにウィンディーは待てないって。んとに露出狂オゲェ!!」
「ロイは黙ってろ!!別に見られるのが嫌なのではありません!!見世物になるのが嫌なのです!!!」
「俺は見られるのも嫌なグガ!!」
「黙ってろ!!そうだ!!一ヵ月前ってどういう事だ!!」
うげ!!藪蛇。つーか殴られ過ぎてポンポン痛い。
「いや、その、誤解だウインディー!!ただ、作戦終了後にシャワー室で一緒になっただけだ!!」
「本当か?」
「ああ!本当だ!!シャワーを浴びて脱衣室で話をしただけだ」
うん、嘘は吐いてない。嘘は。後は。………姐さんをちらりと見る。姐さんがにこりと笑い頷く。あ、嫌な予感。
「そうね。シャワー室で一緒になったから最近お肌が水を弾かないのって相談したらそんな事無いですって言ってくれただけですよ?」
おお!思ったよりまともだった!!ありがとう姐さん。
ウィンディーの表情が緩む。
「そうか。まぁ、話題に少々引っかかる物を感じるがその程度な「あ!そういえばその後ロイ君がお肌がすべすべになるマッサージを二時間ぐらいしてくれたので、私もお礼に元気になるマッサージを二時間ほどしましたね」
笑顔の姐さんとは対照にウィンディーの表情が消えていく。………さて、遺書の用意をするか。
「それとマッサージが終わったらうちの整備の子達が入ってきたので皆でスキンシップも取りましたね。えーと、大体半日ぐらいでしょうか。お陰で皆元気になりました。アリガトね、ロイ君」
「イエイエ~、ドウカキニセズ。ア!おいのりのじかんなのでぼくはこれで」
ちなみにスティレットの姐さんは一匹狼の為協働なんぞしないし、ウィンディーは整備員を一切連れてこない――嫉妬するなんて可愛いだろ?――のでうちにインテリオルの整備員を連れてくるのはエイ=プールの姐さんだけだ。
そのためうちの男連中に姐さんはやたら受けがいい。まぁ、美人で性格良くてエロくておまけにエロい美女を一個連隊連れてくるんだから当然だよな。
って、悠長に解説してる場合じゃないな。さりげなく立ち上がり逃げ出そうとするが、二人が膝の上に乗っているので逃げられない!!
「ふふふ。成程。確かに、シャワー室と更衣室から一歩も出ていないな」
「だろ?だから許して?」
「許さん、死刑だ。何かいい残す事はあるか?あぁ、先輩も何処に行くんですか?ロイの次は先輩の番なんですからね」
左手で逃げようとした姐さんの首を締め上げ、右手で近くにあった花瓶(水を含めて総重量10キロ)を振り上げてウィンディーが笑う。
「………目玉舐められるの癖になっちゃたから今度やってもらってぎゃぁあああぁぁぁああぁぁああああぁぁぁああああああ!!!」


無理をしすぎた彼は一時的にリンクスから外され私専属の整備員に戻った。
それは非常に喜ばしい事だったのだけど、今度は私が彼に恋をしている事に気付きおかしくなった。
以前は二人きりでも何でもなかったのに、彼と二人きりだと動悸が激しくなり頭に血が昇り上手く喋れなくなった。
そのくせ常に彼と一緒にいたくなり食事を上級将校用の食堂で取るのを止め、彼が利用する整備員用の一般食堂で取るようにした。
また以前は訓練が終われば一緒にシャワーを浴びたし、打ち合わせや調整で遅くなった時は仮眠室や彼の部屋で一緒に寝たのだが、彼に肌や寝顔を見せるのが恥ずかしくなりどんなに疲れても自室に帰りシャワーを浴び寝るようにした。
さらに日頃の感謝を口実に食事に誘うだけで初陣の時以上に緊張し、誘ったら誘ったでどんな服を着ていけばよいのか分からず恥を忍び彼の好みを彼の同期に聞いてみたりもした。
「ふん、奴の好みだと。そうだな、頭にうさ耳を着け上半身は2サイズ小さいレオタード、下半身はミニスカートで下着は穿いていないのが好みだ」
「テルミドール!?」
「と言われたらお前は着るのか屑が。いいか、無理をして自分に合わない格好をしても空気にしかなれん。ならばいつもの自分でいればいい。その方が奴の好みでもあるだろうしな。
 そもそも、奴の好みを奴に聞かずに他人に聞くのか?話にもならんな。そのような手段で」
「テルミドール、いい話の途中に悪いのだが、もうアンジェ様はいないぞ」
「馬鹿な!!いつからだ!!」
「お前の最初のセリフを聞くと礼を言って走り去っていった。あの方角にはスポーツ用品店があるな」
「馬鹿な!!あんな物を買いに行ったというのか!!認めん、認められるか、こんなこと」
「毒舌馬鹿が。死んで償うしかあるまい。真改に黄金の時代を」
だが結局買いはした物の恥ずかしくて着れず何時もの軍服で行こうとしたが、限界を出る寸前に彼がスカートが好きだという言葉を思い出し、悩んだ末一度も袖を通した事の無い一般社員用の制服を着て出かけた。
とはいえ、アンダーを着けていない事はともかく慣れないスカートに私は戸惑い、結局目標にしていた接吻はおろか殆ど彼に触れる事すら出来ないまま食事は終了してしまった。
だがどうしても彼に触れたかった私は食事後に組手を頼み、気絶するまで床に叩きつけられた。

何時も彼と一緒にいたいと思っていたが、一緒になると恥ずかしくて何も出来なかった。
何時も彼に想いを伝えようとしていたが、チャンスがあっても口に出せなかった。
私は生涯初めての恋に満たされ、同時に振り回されていた。
そんな挙動不審な私を彼は心配してくれたが本当の事を言えるわけはなく
「壁に当たっていてな。私一人で超えなければならない事は解っているのだが難しい。だが必ず超えて見せるから心配しないでくれ」
とぼかす事しかできなかった。

そんなもどかしくも幸福な日々はある日突然終わりを告げた。


「真改様、精神集中の最中申し訳ございません。ワンダフルボディが現れました。間もなくインテリオルの部隊も現れると思われます。御準備を」
「承知」


「なぁ、ウィンディー、俺が悪かったよ。許してくれよ」
目隠しをされ逆さ吊りにされたため真っ暗な視界の中、俺は前方にいるであろうウィンディーに声をかける。
「それでは先輩、作戦会議を始めましょう」
「無視かよ!!」
「ねぇ、ウィンちゃん、私はノーマルだから縛られても興奮しないんだけど。もしかしてウィンちゃんは縛ったら興奮するタイ、あ、止めて!!笑顔であたしの頭に銃を突きつけるのは止めて!!」
「では、最初の議題はよりにもよって何故私が半年振りに休みを取れたこの日にロイに緊急ミッションを入れたかについてです」
「作戦と関係ねぇし!!」
「年下のくせに男を作りやがった裏切り者の邪魔をしてやろうと思ったからです」
「死刑」
「冗談よ。いえ、冗談です。申し訳ありません。少しふざけました。だから止めて下さい。いやぁあ!ナイフで私の身体に落書きしないでぇぇぇえ!!」
「不用意な発言は死を招きますよ?」
「なぁ、ウィンディー。俺が死にそうなんだが。頭に血が回ってボーっとするんだ。おーい、無視するなぁー」
「いや、あのね、最初はスミカさんのツバメちゃんの予定だったんですよ?でも、クレイドルがジャックされたとかでたまたま現場に一番近くにいたツバメちゃんが急遽そっちに行く事になっちゃって。
 でも、もうこっちのミッションは始まっちゃてて今更中止には出来ないし。かといってスティレットさんは任務中だし、ウィンちゃんは休暇なのでしょうがなく」
「成程。でも、相手はリンクスとは名ばかりの遥かに格下の粗製。先輩一人で十分なのでは?」
「無理ね。あいつフレア持ってるから」
「むぅ」
ウィンディーが悔しげに黙る。まぁ、先輩が言っている事はすじが通っているからな。
先輩のヴェーロノークはASミサのみの機体だ。ASミサの性能とリンクス戦争時代から戦い抜いてきた先輩が搭乗している事もあり支援機としては最高峰の部類に入る。
支援に徹している事と何より莫大な弾薬費のせいでランクこそ低いがその実力はオリジナルに準ずるだろう。
弱点の一つである連射武器による迎撃も相手の死角に巧みに回り発射する事で回避する腕を持っており、その実力たるや対戦で俺やウィンディーに勝ち越しているほどだ。
とはいえ、そんなヴェーロノークにも弱点――それもとびきりの奴だ――がある。フレアだ。何しろASミサしか武器が無いのでフレアを撒かれるとどうしようもない。
さらにワンダフルボディはミサイルも持っておりこれもフレア程ではないにしろASミサイルとの相性は悪い。
だから、ヴェーロノークがワンダフルボディに当たるなら前衛が必須となる。
つーか、悠長に解説してる場合じゃないだろ俺。頭に血が溜まり過ぎて意識がトびそうだぜ。あ、鼻血。
「むしろ私が聞きたいのですけど。なんで本日休暇のウィンちゃんがここにいるんです?」
「そっそれは、その」
「今日いきなり断ったんで浮気と勘違いして押しかけて来たんですよ。んで、そのままなし崩しに。後、助けて下さい。せめて引っ繰り返して」
「これ一応、クラス4、つまり極秘扱いの任務なんですけど」
「その、仕事の内容を聞いてもインテリオルからとしか言わないし、女と出かけるんだろうって問い詰めても否定しなかったから。
 それに良く考えたらインテリオルのミッションなのに私が知らないわけ無いからてっきり浮気だと。
 まさか、本当に仕事とは思わなかったんだ」
「恋人を信じられないなんてウィンちゃんは酷い女です」
「くっ!!今回の事は私が全面的に悪い。だから詫びの意味も込めて私も出よう。一刻も早く終わらせてロイと情熱的な夜を過ごすためにもな!!」
「どう考えても後半部分が本心ですよね。そもそも出ようってネクストが無いじゃないですか」
「んにゃあるぜ。ウィンディーと協働の時はうちが整備の面倒見てるからパーツは一式揃ってる。んで、ウィンディーがついてくるって言い出した時に多分こうなるだろうと思って一応組み立て済みだ。慣らしも何にもしてねぇけどな。
 それと、気に済んなよウィンディー。俺の日頃が日頃だしな。それにやりたいのは俺も一緒だ!!後、いい加減限界なんです。無視しないで!お願いだから助けて下さい」
「ありがとうロイ」
唇に暖かい感触。この味はウィンディーだ。
「って!?キスだけ!?助けてはくれないの!?そろそろ本気で泣くぞ!!」
「あらあら妬けますね。でもウィンちゃんあまり独占すると男の人は隠れて浮気をするから目の届く範囲で息抜きをさせてあげないといけませんよ?」
「放って置いてください!!大体息抜きって何をするんですか!!」
「整備の子や私を交えての3Pとか?」
「ふざけるな!!」
「何怒っているのですか?ポータブルの3で対戦でもしたらどうかって言おうと思ったんですよ?」
「ななななあなななあなななんななななななななななんんああなあ!!」
「うんうん、恋人が出来て丸くなったけどやっぱりウィンちゃんは私達の仲間ですね。やーい、むっつりスケベー!」
「うがぁぁあぁあぁぁぁああああああ!!!」
「きゃぁあああ~~♪変態が怒ったぁ~~♪犯されるぅう♪な~んてね!インテリオル忍法縄抜け!!」
「馬鹿な!!全身の関節を外す事で縄から抜け出すだと!?って、逃げるな!!まぁてぇぇえええぃいいい!!」
「オーホホホホ!!美容のための毎晩の黒酢一杯とヨガの力よ!!悔しかったら捕まえてごらんなさ~~い」
喘ぎ声と悲鳴に混じって姐さんのからかう声とウィンディーの怒声、そして破壊音が聞こえる。後、死んだ両親がこっちに来ちゃ駄目と必死に呼びかける声も。
「なぁ、遊ぶのもいいけど助けてくれよ。俺そろそろマジで死ぬよ?それに作戦会議はどうすんだよ」
「この三人相手に勝てるのはW・Gぐらいです。油断せず各々が適当にやれば勝てますよ。はい」
優しい声と共に体が一回転し地面に降ろされる。うぷ。頭に上がった血がおりてくのがキボチわりい。
「まぁ、そうなんすけど。助かりましたよ姐さん。後、今そこ触っても流石になんの反応も出来ませんよ?」
「残念です~。それとお礼なんていいですよ。むしろ私がお礼を言いたいぐらいです」
「へ?」
「ロイ君バリアァァァァァァ~~~!!!」
「どけぇぇぇぇぇえええぇぇぇえ!!!!ロォオォォオォオオオオイィイイイッィイイイ!!!」
「ちょっと、俺縛られててて動けなぁぁぁぁぁあああああぁぁああ!!」


GAが私の始末をアナトリアに依頼。次回の出撃時に襲撃があると予想される。

作戦部でその報せを聞いた時、私の心は不思議と落ち着いていた。
あの男が。国家解体戦争時圧倒的に劣るノーマルでありながら私の左腕を持っていった唯一の鴉。その男が今度はネクストを駆り再び私の前に立ち塞がる。
データを見る限りあの男は低い適性を技量で補い私達に匹敵する戦闘力を見せている。
面白い。死闘の予感に愉悦の笑みがこぼれる。
無論、死ぬかもしれないという事は解っている。
あの男と私は五分。どちらが勝ってもおかしくない。だが運に勝敗が左右されるほど私達の領域は甘くない。僅かでも、一センチでも一ミリでも一ミクロンでも技量が高い方が勝つ。
私の全てを出し尽くせる、全力を絞りだせる相手だ。これに心躍らさずばその者は騎士では無い。
だから私の全てを闘争に注ぎ込まなければ。
その為には………。

****

作戦部から出たその足で彼の元へと向かう。何処にいるかは解っている。この時間ならば食堂だ。

食堂に着き彼を探す。程無くメルツェル及びテルミドール、そして珍しくベルリオーズと共に食事をしている彼を見つける。No.1が何で一般食堂に。
彼の元に進みテルミドールが開けてくれた彼の正面に腰を下ろす。
「テルミドール、メルツェル、食事は終わりだ。訓練に行くぞ」
「いや、そのままでいい。直ぐに作戦部に戻らなければいけないしお前に頼みたい事もある、気を使わせてすまないな」
席を立とうとしたベルリオーズを制し頭を下げる。
「そうか、遂に来たか」
「ああ、次の相手はアナトリアの傭兵だ」
「強敵」
「そうだな。私の全てを出し切らねば勝てないだろう」
彼の言葉に頷き彼の顔を見つめる。不思議だ。何時もは彼の顔を見るだけで胸が苦しくなるのに今はこんなにも落ち着いている。
「だから真改。私はお前に言わなければならない事がある」
でも、彼を想う私の気持ちはこんなにも高まっている。
「真改。私はお前が好きだ。女として愛している」
本当に不思議だ。何時もは口に出そうとしても出せなかった言葉がこんなにも簡単に言えるなんて。
彼が僅かに目を見開く。そんな彼から目を離さず、私は気が付くと微笑んでいた。
驚いたな。私もこんなふうに微笑めるんだな。戦いに高揚しての笑みではなくこんな自然に微笑ったのは何時以来だろう?
それに、何ていい気分なんだ。強敵との死闘とは全く違う落ち着いて優しくてふわふわとした感じ。こういうのもいいな。
「………死ぬ気か、アンジェ?」
私の一言で静まり返った食堂でベルリオーズが口を開く。
「違う。私は出撃をする時は必勝を誓う。次の出撃も例外ではない」
「ならば何故、今この時に告白をする?」
「こうしなければ全力で戦えないからだ。その口振りでは気が付いているようだが、最近の私の中には常に彼がいた。頭のどこかで常に彼の事を想っていたのだ。
 無論、外には出さなかったし戦闘にも影響はなかった。むしろ彼の調整に相応しい戦果を上げようと励んできたつもりだ」
「確かにここ最近のお前の戦績は伸びている。だからこそ傍観していたのだが………」
彼は頭を抱えるベルリオーズの横で何時ものように黙って私を見ている。
私は彼から目を話す事無く言葉を続ける。
「だが、次の奴との戦闘はそれでは駄目だ。そんな余計な事を考えていては奴には勝てない。恐らくギリギリの勝負になるはずだ。
 私の全てを闘争に注ぎ込まねば奴に勝てない。だから、過去も現在も未来も、クローズプランも、この戦争の行く末も、身も心も名も命も、何もかも全て捨てて勝つことだけを考えなければならない。
 だからこの想いは、この恋は、この愛は不要だ。
 いや、次だけじゃない。奴を倒しても終わりではない。私達は人類をこの星に縛り付ける呪縛から解き放たなければならない。
 それまで私は個人的な想いに囚われるわけにはいかない。だからこの想いは捨てなければならない」
そうだ。私は剣だ。敵を断ち未来を斬り開く剣なんだ。そして剣は進むべき道を主に委ね、立ち塞がる障害を斬る事だけを考えていればいい。
それ以外は不要だ。それ以外は剣としての機能を、斬れ味を鈍らせる。
だが剣として、リンクスとしての私は覚悟を決める事が出来ても、人間としての私は、女としての私は、
「だが、私はこの想いを捨てられるほど強くはない」
そう強くないんだ。幾ら頭で理解していてもそれだけで捨てられる程人としてのいや、女としての私は強くも器用でもないし、この想いは脆くも軽くも無い。
だから立ち上がり彼に頭を下げる。私が剣として生きる為に、剣としての役割を終えた後女に戻る為に。
「だから真改、全てが終わるまでこの想いを預かっていてもらえないだろうか。そして、それまでは今の言葉は聞かなかった事にして今までと同じように接してくれないか?
 そうすれば私はこれからも闘える。闘い抜ける。
 私などに愛を告げられていても困る事も、あまつさえそれを忘れろ等と虫のいい事を言っている事は解っている。
 でも頼む。この想いを抱えたままでは私は奴に勝てない。それは答えを聞いて同じだ。断られても、ありえないが受けられても私は私ではいられない。かといって捨てる事など出来はしない。
 だから真改、奴を倒し、クローズプランを成し遂げるその時までこの想いを預かってくれ。そして全てを成し遂げたその時、遮る物の無くなった空の下でこの想いを返してはくれないか?」
そして答えを聞かせてほしい。
最後の言葉は告げずにさらに深く頭を下げる。ああ、駄目だ。結局言いたい事の半分も言えなかった。でもいい。伝えなけらばいけない事は言えた。
辺りを耳が痛いくらいの沈黙が包む。だがその沈黙は長くは続かなかった。
「承知」
彼がいつものように頷く。
「本当か真改!!すまない、礼を言う!!この礼は後日必ずする。私に出来る事なら何だって」
「不要」
嬉しさの余り顔を上げて捲し立てる私を彼が制し、右腕を私に差し出す。
「盟友」
私は差し出された手を握る。大丈夫、動揺も頭に血が昇る事も無い。
「そうだな。友の頼みなら不要か。ならせめて次の勝利をお前に捧げよう。だから調整は完璧に頼む。場所のデータは後で送る」
彼の手を離し微笑む。
「承知」
「二人とも暫く訓練は中止だ。お前達は奴のデータをもう一度洗いなおせ。すでに作戦部の連中が洗っているだろうがリンクスが見れば何か新しいものが見えてくるかもしれん。アンジェ、作戦室には私も付き合おう」
「「了解」」
ベルリオーズが立ち上がり二人に指示を出す。
「すまない。迷惑をかける」
三人に頭を下げる。
「気にするな。奴の対処は最重要課題だ。それより頼んだぞアンジェ。お前以外に単騎で奴に勝てるリンクスはいない」
話を続けながら皆で食堂を出る。
「ああ、そうだな。それとベルリオーズ、謝りついでにもう一つ頼みたい。時間がある時で構わないからシュミレーターに付き合ってくれ。閉所での戦闘になると思うので慣れておきたいんだ」
「気が済むまで付き合おう。そうだな。ザンニにオービエも呼んでおくか」
「私は鴉時代と何か共通点があるか調べて見る。テルミドール、お前は映像データを最初から見直してくれ」
「ふん、了解した。では、ベルリオーズ様、アンジェ様、我々はこれで。行くぞメルツェル、真改」
「ああ、ではこれで」「応」
「すまないがよろしく頼む」「頼んだぞ」
作戦室に向かう私達と三人が別れる。

この何でも無い別れが、私が彼を見た最後だった。


「真改様!!お待ちください!!!」
「否」
「インテリオルはストレイドではなくマイブリスに加えレイテルパラッシュまで動員しています!明らかにワンダフルボディに対する戦力ではありません!!これはこちらの作戦が漏れたとしか」
「……」
「真改様!!」
「出撃」


「では作戦を開始します。マイブリスが前衛、レイテルパラッシュが中衛、私を後衛とし、指揮も私が執ります。問題がありますか?」
「マイブリス問題ない。さっさと片付けようや」「レイテルパラッシュ問題ない」
「ホントに問題ないのか、ウィンディー?そいつは組んだばかりで慣らしも終わって無いんだぜ?」
うちの奴等を疑うわけじゃないが万が一って事もあるし、それにAMSには個体ごとに微妙な癖がある。だから通常AMSを新しくした場合はリンクスに慣らすか、リンクスが慣れるかする期間を置く。
だが俺の問いにウィンディーは少々黙った後、
「ああ。少々違和感を感じるがその程度だ。戦闘に支障はない」
「レイテルパラッシュは許可なく前に出ないように。右腕と左背を撃ち切る、あるいは損傷率が五割を超えた場合は後退するように」
「戦闘に支障は無いと言っている。後者はともかく前者の場合は近接戦闘を行う」
「ですが違和感はあるのでしょう?中距離戦はともかく近距離戦はその違和感が致命傷になりかねません。ワンダフルボディはGAらしく動きの悪さを火力と防御力で補うタイプです。
 特に主兵装である拡散バズーカは攻撃範囲と威力を両立した兵器です。レイテルパラッシュでは全弾直撃を受ければお終いです」
「だから戦闘に支障は無いと言っている!!!多少調子が落ちても粗製の弾が当たるものか!!!」
「あなたが近距離戦を行うという事は私達三人でかかったにもかかわらずあなたが弾切れになるまで凌ぎきったという事です。それが出来る相手を粗製とは呼べません」
「くっ!」
ウィンディーが言葉に詰まる。やれやれ。相変わらず戦闘中の姐さんは容赦が無いね。プライベートたぁ大違いだ。
ってこのまま喧嘩になるのはまじぃから何とかしないとな。
「そこまでにしとこうや、ウィンディー。今のお前はインテリオルのトップリンクスのウィン・D・ファンションじゃなくて、あくまでプライベート、独立傭兵ロイ・ザーランドの協力者って立場なんだからな。
 クライアントに従うのは独立傭兵の基本だぜ?じゃないと俺が怒られちまう」
「そうだな。わかった。お前に迷惑をかけるわけにはいかないか。済まない、クライアントのオバサン」
「いえ、私も言葉が過ぎました。露出狂の小娘も気にしないでください」
「「ホホホホホホホホホ」」
「まっまぁ、粗製相手なんだ!!ウィンディーが弾を撃ち切るなんてあり得んさ。さっさと終わらせて飯でも食おうぜ?そろそろレーダーの範囲に捉えられる筈だしな。
 って、言ってるそばから来た来た!捕まえたって、ん?………んだぁ?既に戦闘中?」
「この反応はネクスト?しかもアンノウン!?」
「こいつ速い!!」
「ワンダフルボディの反応消失!!不明ネクスト来ます!!」


オルレアが両断され、数十万度を超えるブレードが掠めたコックピットが一瞬で灼熱し沸騰した耐Gジェルが私を煮る。
辛うじて生き残ったオルレアが全身焼け爛れ茹で上がった私を生かそうと懸命に耐Gジェルの温度を下げ、薬物や酸素を私に送り込むがそれも死神を一時的に遠ざけるだけにすぎない。
ありがとう、オルレア。でもいいんだ。私達は全力を尽くした。最後の一撃は私達の生涯最速で最高の一撃だった。
でも私達の剣より一瞬だけ、でも確実に早く私達に届いた。だから私達より奴の方がほんの少し、だが決定的に強かった。それだけだ。
「誇ってくれ。それが手向けだ」
まだかろうじて動く右腕を動かし奴にMOONLIGHTを差し出す。
敗者がこの剣を持つわけにはいかない。最強の剣は最強の使い手にこそ相応しいのだから。
だから私の剣は私を屠った奴が持つ。
予備の剣は………出来れば彼が継いで欲しい。私の技術全てを受け継いだ彼に、私が愛した彼に、私の夢を、遺志を、剣を託したい。

奴が剣を受け取り立ち去るのと同時にオルレアが力尽きる。
ありがとう、オルレア。私もすぐに逝く。だから少しだけ待っていてくれ。
敵が去り、剣を失い、愛機が力尽きた今、リンクスからただの女に戻った私は死に逝く僅かの間彼を想う。

彼に恋をしたのはいつからだろう?

****

「確かな事は答えのないまま私の想いは潰えるという事か」
残念だが仕方ない。いや、志半ばで力尽きる様な中途半端な女にはこの結末がお似合いか。
自嘲の笑みを浮かべようとするがもはやそれすら果たせず、意識の中自らを嘲笑う。
あるいはこの結末で良かったのかもしれない。彼の答えを聞く前である今ならば、彼が私の告白を受けてくれるという夢想に浸りながら逝く事が出来る。
「真改」
薄れ行く意識の中、死力を振り絞り愛しい彼の名前を呼ぶ。
ああ、彼は私が死んだと聞いてどう思うのだろうか?鬱陶しい女がいなくなり安堵するのだろうか?それとも他の戦友が死んだ時と同じように悼んでくれるのだろうか?あるいは何とも思わず直ぐに私の事など忘れてしまうのかもしれない。
それでもいい。出来ればずっと覚えていて欲しいがそれは我儘だろう。
だが真改、もし私の事を僅かでも思っていてくれたのなら、少しでも愛していてくれたのならば、泣いて欲しい。
今まで誰が死んでも泣かなかったお前に泣いて欲しい。私のためだけに泣いてくれないか。
「お願いだよ。真改」


「あれがネクストの動きだと!?じゃあ俺は何なんだ!」
ドン・カーネルは半ばパニックになりながら目の前のアンノウンに向けてWBSを発射する。
「消えた!?」
くそ!まただ!また消えやがった!!
慌ててレーダーで確認すると左後方にいた。同時にその付近にいた三体のノーマルの反応が消える。
なんだ!なんなんだ!!なんなんだこいつは!!
振り返ると既にその場所にアンノウンはいない。
真後ろから最後のノーマルが爆発する音。
くそぉ!!俺一人かよ!!咄嗟の判断でビルを背負う。これで問題ないはずだ。
ちらりとだが見た限りだが奴はブレードの威力こそ狂っているがそれ以外はマシンガンだけだった。なら撃たれても平気だ!!
そうだ!幾ら動きが速くて捉えられないといってもこの状態ならブレードで斬るには正面から突っ込んでくるしかないんだ!!
ならこいつを正面からブチ込んで吹き飛ばしてやる。そうだ落ち着け。確かに俺はリンクスとしては新米だが場数は踏んでいるんだ。
アンノウンが正面に来る。
牽制のためWRを乱射する。しかし敵はその全てをかわし驚異的な速度でこちらとの距離を詰めてくる。
効果が無いといえマシンガンも撃たないとはふざけやがって!!きやがれ!!こいつでぶっ飛ばしてやる!!
「今だ!!!」
必勝の確信を持って引き金を引く寸前、視界が閃光に焼き尽くされた。


「死ぬ!?死ぬってかこの俺が!」
「終止」
ワンダフルボディをビルごと両断したアンノウンがこちらに向き直る。
おいおい、マジかよ。こっちは三機いるのにやるつもりか?
さて、数も数えられない大馬鹿か、それとも三対一でも勝てると信じてる楽天家か、それとも本当に三対一でも勝つ実力を持っている本物のどれだろうな。
最後以外だと嬉しいがワンダフルボディを殺った手並みを見るとどう考えても本物だろう。くそ!!楽な仕事だと思ったのに。
「あれは、月光!?しかも閃光ロケット!?まさかオルレアなの!アンジェが生きていた?そんなはずは!?」
「エイ=プール!!呆ける暇があるなら指揮を執れ!!」
珍しく動揺している姐さんにウィンディーが檄を飛ばす。
ナイス!ウィンディー。なら俺のやる事は時間稼ぎか。
「おい!そこの未確認機!!こちらはカラードのランク3ウィン・D・ファンションにランク7ロイ・ザーランド及びランク20エイ=プールだ。
 企業連及びカラードは全てのリンクス及びネクストがカラードに所属する事を義務付けている。
 その規則に則って即刻そちらの所属を明らかにする事と、ついでに投降する事を要求する!
 今ならもれなくインテリオルが誇る美人部隊のすんごいサービスが付いてくるけどどうよ?さもないと悪いが三人がかりだぜ?」
「笑止」
おお!時間稼ぎ目的に贈った通信に返事が来た!意外と渋い声だな。俺より年上かぁ?まっ、合成かもしれないけどよ。
アンノウンがこちらに接近を始める。って速!!背中に背負ってんのは大型ブースターかよ!!
「敵対行動とみなします!!マイブリス、敵の主力は超高出力の大型ブレードです。直撃すればマイブリスといえども二発と持ちません。足止めをお願いします!その隙にレイテルパラッシュと私が仕留めます!」
「あいよ!」「了解!!」
稼いだ時間の間に冷静に戻った姐さんに返事をする。
「では戦闘開始!!」
凄まじいスピードで距離を詰めてくるアンノウンの足を止める為にWGPとVERMILLIONをばら撒!?
「マシンガンでこんだけ離れてるミサイルを撃ち抜くだとぉ!?」
至近で爆発したミサイルにPAの半分を剥がされ、機体に幾らかの損傷を受ける。
「ロイ!!」「足止めを!!」
その隙に一気に間合いを詰め俺に止めを刺そうとしたアンノウンに対してウィンディーと姐さんが攻撃を加える。
ACRUXとKAPTEYNをQBで避けた後、追い縋るASミサイルをマシンガンで迎撃しながら再度迫るアンノウン。
「調子に乗るんじゃねぇよ!!」
WGPを乱射しBECRUXを発射する。
って消えた!?違う!!左だ!!QBで右に跳ぶのと左を閃光が通り過ぎたのはほぼ同時だった。
「ガッ!?」掠っただけなのに半分程度残っていたPA全部と左脇腹をごっそり持っていかれる。
だがそんな事より不味いのは、
「すまねぇ!!抜かれた!!」
警告を発し慌ててQTで後ろに振り
「しまった!?くそ!視界が!!」
「下がってください!!レイテルパラッきゃぁぁぁあああああぁあ!!」
「あぁぁああぁぁああ!!」
向いている最中に二人の悲鳴が聞こえる。くそ!何が起こった!!

****

ロイを抜いたアンノウンが一気に私の元に接近する。
「舐めるな!!」
KAPTEYNを発射する。だが今度はQBすら使わず体を僅かに傾けただけでやり過ごされる。
「くそ!」毒吐き、後QBで距離をとりながらACRUXを発射。
だが今度も僅かな移動だけで避けられ、殆どスピードを落とさずこちらに接近してくる。
強い!何より速い。
単純な速さだけならアスピナの蚊トンボの方が上だがこいつは動きに緩急をつけているせいで実際の何倍、何十倍の速さに見える。
もう一度KAPTEYNを発射。同時に先輩が死角からASミサイルでの弾幕。
それもやはり僅かに体を傾ける事でKAPTEYNをかわし、同時に一瞬だけ右後方のASミサイル群を一瞥すると視線を前方に戻し、左手のみ右後方に向けた後マシンガンを斉射しASミサイルを一掃する。
そしてこの見切り。
敵の攻撃を即座に見極める動体視力と、それに即座に最適な対処方法を実行できるだけの判断力と行動力。
こいつ相手にこれ以上逃げるのは無意味か。武器をELTANINとGEMMAに切り替える。
GEMMAを乱射する。
それをアンノウンが最低限の動きでかわしながら予想した進路でこちらに接近する。
かかったな。最効率の動きをするという事はそれだけ動きを読み易いという事だ。
相手の間合いに入った瞬間、後ろQBで下がり間合いを脱する。
並みの、いや殆どのリンクスはこの動きに対応できずブレードを振り、無防備な姿を晒すだろう。
だが相手並みどころか最高クラス。即座に反応しブレードを振るのをギリギリで踏み止まる。
構わない。想像済みだ。どちらにしろ振ろうとしたブレードを急に止めれば隙は出来る。それは逃さ!?
アンノウンが肩武器を発射する。
ロケット!?嫌な感じがする。攻撃を止め咄嗟に体を右に傾ける。大丈夫、このタイミングならギリギリかわせ………ない!?
いつもよりほんの僅かの違和感。ほんの僅かの不調。殆ど誤差といってもいいレベルの異常のせいでギリギリで避けられる攻撃にギリギリで当たってしまう。
視界が白く塗り潰される。
「しまった!?くそ!視界が!!」
「下がってください!!レイテルパラッきゃぁぁぁあああああぁあ!!」
私の撤退を援護しようとした先輩が危険を顧みずASミサイルを乱射し、その全てを撃ち落とされあげく誘爆に巻き込まれ墜落するのを潰れた視界の中音声だけで感じ取る。
そしてそこまでの被害を出して稼げた時間はアンノウンがASミサイルの迎撃に使った一瞬のみ。一瞬後にはアンノウンは私を両断する為にブレードを振るうだろう。
私が自由に使えるのは先輩が自分を犠牲に稼いでくれた一瞬のみ。だが一瞬ではQBを使い逃げるには短すぎる。
ではその一瞬にロイの名でも呼ぶか?それこそ否だ。先輩が命を賭して稼いだ一瞬をそんな無駄な事に使えるわけがない。
だから!!
「あぁぁああぁぁああ!!」
私は見えない相手に向かいELTANINを起動した。


AMSには死者の想いが宿るという。

リンクしたまま息絶えると思考が焼き尽く。
とはいえそれを成すには死ぬ際に強く、それこそ親が子の未来を案じるように、人が神に死後の幸福を祈る様に、恋人に別れを告げるように想わねばならない。
そこまでしても死者の声が聞こえるのは死者とAMS適性が近しい者だけ。
そして聞けても殆どは断末魔の生きたいと願う悲痛な叫びだから生者は望んでは誰も聞きたがらない。
それでも、

AMSには死者の想いが宿る。


彼女が死んでも彼は何も変わらなかった。
腰の部分から両断されたオルレアを見ても、変わり果てた彼女の遺体を見ても彼に変わった様子は見られなかった。
彼は他の知人が死んだ時と同じように略葬に参加し、変わり果てた彼女に無言で花を捧げた。
それ以外は喪章を付けた以外は彼女が死ぬ前と変わらぬ日常を過ごしていた。

****

ある夜、整備所の片隅で使えるパーツを取り終え放置された廃棄をただ待つばかりだったオルレアに灯が点った。
そして、しばらく後オルレアから魂の底から絞り出すような慟哭が発せられた。
それは搭乗者を守れなかったオルレアの悔悟の叫びのように、或いは想い人に答えを永遠に告げる事の出来なくなった男の哀惜の哭びのように、一晩中止む事無く響き続けた。


AMSには死者が想いを託すという。

リンクしたまま息絶える時に想いを刻みこめる。
とはいえそれを成す為には逝く際に強く、それこそ親が子に遺志を託すように、人が神に遺されたものの幸福を祈る様に、遺す恋人に礼を告げるように、或いは想い人を最後に想うように想わねばならない。
そこまでしても死者の声が聞こえるのは死者とAMS適性が近しい者か死者が想いを伝えたい相手だけ。
そして遺せるのは殆ど断末魔の生きたいと願う悲痛な叫びだけど、それでも大切な人に最期に送る想いだから、想い人に願う最後の機会だから、

死者はAMSに想いを託す。


「ウィンディー!!」
レイテルパラッシュの左腕が肩ごと両断されて宙を舞う。
そのままアンノウンと交差した後、崩れ落ちQBの勢いのまま地面を転がるレイテルパラッシュ。
さらに先にはヴェーロノークがこれまた右腕が吹き飛んだ状態で墜落している。
くそ!振り向くたった十秒足らずの間に何があった!?いや、今は考えてる場合じゃねぇ!!
「人の女ぁ、傷物にしてんじゃねぇよ!!」
両背のミサイルにBELTCREEKを併せ発射しWGPを乱射しながら突っ込む。
ウィンディーを斬り捨て姐さんの所に向かおうとしていたアンノウンが煩わしそうにマシンガンでミサイルを迎撃しQBでWGPの弾幕から逃れる。
「逃がすかよ!!」さらにWGPを乱射しながら突っ込む。後一歩で剣の間合い。いいぜ!来いよ!!そのかわりBECRUX叩きこんでやる!!
アンノウンが肩武器を発射する。
あぁ?ロケットか。肩武器なら大した威力は無いだろ!問題ねぇ!無視して相手の動きに集!?なんだ!?閃光?
視界がホワイトアウトする。
「くそぉぉおおぉ!!」潰れた視界の中、後QBを使いながらガトリングを乱射し、BECRUXをカンで正面にぶっ放す。
くそ!当たるわけねぇか!!覚悟を決め、次に来る衝撃に身構えるが、一向に訪れない。………あれ?もしかして痛みを感じる暇なく斬り殺された?
永遠にも等しい数秒後にようやくまともに戻った視界に映ったのは天国では無く、離れた位置で迫りくるASミサイルを迎撃しているアンノウンの姿だった。
「貸し一だなロイ。帰ったら服でも買ってくれ」「私は狐君と狸君を紹介してください。ガードか固くて中々会えないんですよね」
片腕のレイテルパラッシュとヴェーロノークが俺の近くに降り立ちアンノウンと向かい合う。
そっか、二人がフォローしてくれたのか。
「って、お前等大丈夫なのかよ!?片腕吹っ飛ばされたんだぞ!!」
「ああ、もともと攻撃するためで無く交差する為にブレードを振ったからな。斬られる事は覚悟していたから予め接続を切っておいた」
「この程度の損傷はリンクス戦争時に何度も経験していますからね。戦闘続行は可能です」
二人とも強がっているが呼吸は荒い。相当辛いのだろう。
ネクストも切断部分が爆装しPAも六割程度しか展開できていない。さらに片腕しか使えないのでは単純に火力は半分以下だ。
つまりこちらは俺を除いてリンクス・ネクスト共に限界。
対して相手は殆ど無傷。火力もマシンガンもミサイルの迎撃にしか使っておらず、主力はブレードの為問題なしと。
「こりゃ不味いな。姐さん、俺達の目的はワンダフルボディの撃破であいつの相手じゃない。目標は達成しているんだからとっとと逃げようぜ?」
「むざむざ目の前の獲物を逃してくれる様な優しい相手には見えんぞ?何か手はあるのか、ロイ?」
「うぃ。ここは俺が殿を引き受けますので姫君達はどうかその隙に離脱を」
「ふざけるな!!奴より足の遅いお前を置いていくという事はお前を捨て駒にするという事だろう!!そんな事出来るわけ無いだろう!!!!!」
あー、やっぱり怒るよなぁ。姐さんが黙ってるって事は俺が説得すんのかぁ~。
「いや、俺が負ける前提で話すなよ。お前と違って俺は元気だから勝っちゃうかもよ?」
「ついさっき一対一で斬り殺されかけたばかりじゃないか!!そもそも、一対一で勝てるなら私達を帰らせる必要はないだろう!!」
「油断したのと初めての武器だから不意を衝かれただけだって。手品の種は割れてるんだからもう喰らわねぇよ。足手纏いを守ったりする必要がなければ、だけどな」
「私が足手纏いだと!!!見くびるな!!守ってもらう必要などない!!自分の身くらい自分で守れる!!」
「いや俺にそんな事出来るわけ無いだろ?いたら庇っちまうよ。それにさっきやばくなったら帰るって約束したろ?」
「それは、だが!!「解りました。私達は撤退します」先輩!?」
ようやく喋った姐さんにウィンディーが喰ってかかる。
「冷静になってください、ウィン・D・ファンション!!ACRUXごと左腕を失い火力が激減した貴女と残弾の半分が吹き飛んだ私では援護すら満足にこなせません。
 そして、私ならともかくこんな重要度の低い任務でインテリオル最高戦力である貴女を失うわけにはいきません!!」
「だからロイを見捨てろというのか!!!」
「いえ。ホームにはまだネクスト一機分の予備パーツがあります。それを大至急組み立てるように指示を出しました。
 ここからホームまで全力で戻れば十分弱。乗り換えに十分掛かったとしても三十分以内に戻る事が出来ます。現状ではこれが一番生存率が高い作戦です」
姐さんが普段より僅かに硬い声でウィンディーを説得する。たっく、俺が自分から立候補したんだから気にしないでいいのに。
「………くそ!それしかないか!!解りました!ロイ、二十分で戻る!すまないがその間持たせてくれ!!」
「マイブリス、私はどうしますか?先程は撤退するといいましたが予備パーツは一機分しかありませんので残って援護を行っても構いませんが」
苦笑する。それじゃ意味無いじゃねぇか。余計な気ぃ使わないで帰って下さいよ。んま、非常になりきれないのが姐さんらしいっちゃらしいけど。
「気にしないでいいっすよ。姐さんも帰ってください。さっき自分で弾が無いって言ったじゃないっすか。
 ウィンディーが出た後腕を取り替えてゆっくり着て下さいよ。まぁ、一時間はかかるだろうから戻っても全部終わってるでしょうけどね。
 だから姐さん、帰ったらたぁあぁっぷりサービスしてくださいよ?」
「………ありがとうございます。帰れたらインテリオル総出でサービスしてあげます」
言外に解っているから気にしないで下さいと告げ、解りました、私達の為に死んでくださいと返される。
「恋人の前で堂々と浮気の相談をするな!!まったく、まあいい。ロイ、頼んだぞ!!」
「あいよ!これでさっきのはチャラだぜ?んじゃぁ、そろそろいきますか!!」
「ああ!」「はい!!」
アンノウンに向けて俺が両背のミサイルにBELTCREEKを併せ発射するのと同時に姐さんが残弾を気にせずASミサイルをばら撒く。
その弾幕に紛れてウィンディーがKAPTEYNを発射し、俺が回避予想地点にWGPを乱射する。
アンノウンが僅かに後退しながらマシンガンを乱射して次々にミサイルを撃墜し、体を傾けレールガンを回避する。
その隙にさらに俺とウィンディーは前進。ウィンディーのGEMMAと俺のWGPで濃密な弾幕を作り上げる。
幾らアンノウンが見切りの達人といってもかわす場所が無ければ場所を移すしかない。QBを使い左に跳ぶアンノウン。喰らいつくASミサイル。
アンノウンがマシンガンを閃かせASミサイルを撃墜。
その隙に俺はアンノウンに向き直りBECRUXを発射。再度アンノウンはQBで左へ。
「甘い」QB後の僅かな硬直の隙を衝きKAPTEYNが突き刺さる。
QTしOBを起動するウィンディー。被弾の衝撃で硬直するアンノウン。
「「いけぇえ!!」」その隙に姐さんがASミサイルの残弾全てを発射し、俺もBECRUXとDEARBORNにBELTCREEKを付けて発射する。
体勢を立て直し迎撃と回避を行おうとするアンノウン。だが間に合わねよ!
左からはASミサイル、正面からはBECRUX、右からは強化型近接信管と連動ミサイルに囲まれるアンノウン。QTしOBを起動する姐さん。OBで急速に戦場を離脱していくウィンディー。
避けきれないと悟ったアンノウンがASミサイルの中に突っ込み、BECRUXをかわしDEARBORNとBELTCREEKを撃墜していく。ウィンディーに僅かに遅れ戦場を離脱していく姐さん。
次々とASミサイルが突き刺さるアンノウンにWGPとVERMILLIONを発射し、同時に後QBで距離を稼ぐ。
アンノウンが横QBを使い、WGPをかわし、VERMILLIONとASミサイルの残りを撃墜する。ウィンディーと姐さんが戦闘エリアを離脱する。

オーケー♪ミッションコンプリート。後は俺が一対一であいつを倒すだけっと。
何しろウィンディー達が戻ってくるまでには最低でも一時間はかかるからな。何せホームに戻っても替えのネクストなんざないからな。
カラードの格納庫や企業の基地ならともかく、作戦開始地点付近までの移動用の大型トレーラーであるホームには武器や外装などの消耗品はともかく、ジェネレーターやOBなどの内装は積まない。勿論簡単な修理用の部品は積むがそれだけだ。
何故ならコジマの塊というジェネレータやOB等の内装は汚染の心配があるためサイズの割に場所をとるし、何より外装と違い内装が交換が必要になる程破損するのはネクストが撃墜された場合でもない限りありないからだ。
当然その場合はリンクスは重傷でありネクストだけ直しても意味はない。従って内装の予備を持っていく必要はない。
まぁ、今回は例外で一揃えあったからレイテルパラッシュを組めたんだが、それはウィンディーが付いて来た段階で恐らくこうなるだろうと予想してわざわざ持ってきたのだ。
お陰でウィンディーは内装の予備があると勘違いしてくれたんだけどな。
姐さんはそれを見抜いていた。見抜いた上であえて勘違いをしてくれたのだ。このままだと三人、もしくは最低二人は死ぬのを俺一人の犠牲で済ませる為に。
んま、最後に情に負けかけたけどな。たっく甘いんだから。俺が自分で言い出した事なのにね~。
それにまだ俺が死ぬたぁ決まって無い。確かにもげた腕の交換をして出撃となればどんなに急いでも一時間はかかるから援軍は期待できない。
なら俺が単騎でこいつを倒せばいい。作戦もさっき思いついたから余裕余裕。
先程の三人の連携攻撃を最小限の損害で切り抜けたアンノウンを睨みつける。
さて、二人の離脱の時間も稼げたし睨み合いを止めてそろそろ再開するか。もしかしたら気付いたウィンディーが引き返してくるかもしれないしな。
だからぁ、

「いくぜぇ!サムライネクスト!!」


「真改!すぐにその場から離脱しろ!!」
「………」
「聞け!!ワンダフルボディの信号途絶によりGAが、マイブリスの整備員の要請によりインテリオルがそちらに向かっている!!このままでは囲まれて撤退すら出来なくなるぞ!!」
「邪魔」
「真改!!待て!通信を切」


「屑だと思っていたが意外に頑張るじゃないか」
偵察部隊がリアルタイムに送ってきている映像には今も真改相手に善戦を続けるマイブリスの姿がある。
最初は一分と持たずに斬り捨てられると思ったが予想外に奮戦し十分以上真改と闘い続けていた。
「随分と無様な戦い方だが、まっ現状では最善手か」
マイブリスはあえて一点無防備な個所を作り、それ以外の他の個所を厚く守っていた。そして無防備な場所を真改が衝き接近するとミサイルをほぼ零距離で発射し迎撃されたミサイルの誘爆に真改を巻き込む事でダメージを与える。
確かに通常なら反応できない真改の一撃も何処から来るか解っていれば辛うじて相撃ちには持ち込めるが良くもまぁ、半ばどころか完全な自爆を何度もする気になる物だ。
真改も自らがダメージを受ける距離で迎撃などしたくはないだろうが、QBを用いても避けきれないほどの至近、かつ迎撃せねば直撃を受けるとなれば迎撃せざる負えない。
ならばと別の所から攻撃しようにも一点を捨てた事により他の部分は隙が無い。無理をして攻めれば恐らく手痛い反撃を受けるだろう。
「攻撃にマシンガンを絡めればまた違うのだろうが………ありえんな」
真改が賢げにマシンガンを使う姿なぞ想像も出来ない。自分や銀翁と違い自らを偽る事が出来ない愚直な男だ。
それに受けるダメージはミサイルがより近くで爆発するマイブリスの方が大きいのだ。ならば真改が自らの生き方を曲げるとはとても思えない。
無論マイブリスもこのまま続ければ自分が先に倒れる事は解っているだろうし、何か策があるのだろう。恐らく双発ハイレーザーで一撃の所まで削り最後の一撃を当て勝つ、といった所か。
かなり分の悪い賭けだがそれでもまともに闘えば零に等しい勝率をどうにか勝負というレベルにまで引き上げた戦術は賞賛されてしかるべきだろう。
無論、一点以外から真改に攻撃させないだけの隙の無さを作り出せる事、早過ぎては真改に離脱され遅過ぎては両断されるミサイル発射のタイミングを計れる事、そして誘爆後に真改の追撃を防ぎ距離をとる事等を成し遂げる腕も賞賛に値する。
そもそも対ネクストに特化されたスプリットムーン相手に勝敗は別としても十分以上戦い続ける事が出来る者が果たして何人いるか。
ORCAでは私とジュリアス、カラードではアナトリアの傭兵ぐらいか。銀翁やローディは相性の問題で、今の私やオールドキングにウィン・D・ファンションやジェラルド・ジェンドリンでは僅かに役者が足りないだろう。
それをやり遂げるか。マイブリスの評価を上げるべきだろう。
出来れば首輪を外したい所だが………無理だな。奴個人は我々の思想に賛同するかも知れんが、ウィン・D・ファンションやインテリオルの連中を切れまい。
「さて、あまり感心ばかりしてもいられないか」
呟き、戦場の周囲の様子を確認する。
予想外のマイブリスの奮戦により作戦領域に企業の増援が終結しつつあった。作戦領域に到達するのは最寄りの部隊でも三十分以上かかるが、企業に捕捉されずに逃げ切る事が出来るのは後十分が限界だ。
それを超えればマイブリスを斃しても逃げる事が出来なくなる。それでは意味が無い。
さらに先程メルツェルから真改の説得に失敗したと通信が入った。
退き際を見失うとは相当熱くなっているな。マイブリスの狙いを読み切った上であえて誘いに乗っている事といい真改の悪い癖が出ているな。
「私が行くしかないか。尻拭い等趣味じゃないが、まっ仕方ない」
それに僚機を逃す為に自らを捨て石に時間を稼ぎ、絶望的な状況に諦めず一撃に賭ける。
そんな奴の行動に自分の中のロマンティストとしての部分が感動を覚えているのも事実だ。ならば生かしてやるのも悪くない。
Gジェルに満たされたコックピットの中で皮肉に笑い、AMS経由で脳に直接送られてくる映像を消しながらステイシスを戦闘稼働させる。
「ステイシス、出るぞ」
返事を待たずに発進シーケンスを始める。
「お待ちください、オッツダルヴァ様!!まだ出るのは早すぎます!!ここはアンノウンがマイブリスを撃破してから」
「黙れ屑が。貴様の言うとおりに待っていたらレイテルパラッシュを取り逃がしたのぞ!素人が!!
 これ以上チンタラやっていてはGAに獲物を攫われる。役に立たないなら空気にでもなっていろ!!」
「しかし!!」
「私が二機とも倒せば問題無い!!ステイシス出る!!」
「今マイブリスを直接討てばインテリオルとの関係悪化は必至です!オッツダルヴァ様!お待ちを!!!」

****

迫るロケットをWGPで迎撃する。二機の間に局所的な太陽が出来あがりそれを突き破りアンノウンが接近する。
BECRUXの標準をアンノウンの左に、ロケットの迎撃のため乱射していたWGPをアンノウンの右側に向ける。
遮る物が無くなり一直線にこちらとの距離を詰めてくるアンノウンに胃に穴が開く様なプレッシャーを感じながら後QBを使う。
開いた距離を詰める為にアンノウンが前QB。今だ!!急速に接近しブレードを構えるアンノウンに肝を冷やしながらVERMILLIONを発射。
アンノウンがブレードの展開を止めマシンガンを一閃。直後誘爆したミサイルにまず俺が、一瞬後にアンノウンが呑みこまれる。
AMSから送られるPAと装甲を消し飛ばされる不快感に耐えながらアンノウンに向ってWGPを乱射。
俺ほどではないにしろ爆炎に炙られPAと装甲を削られたアンノウンが弾幕を回避する。
それに合わせて逆方向にQB、距離を稼ぐ。
傷ついた二機が距離をとって向かい合う。これで九度目の交差か。
AMSが損傷率85%突破!命が惜しければ離脱しろ!と喚き立てる。煩い黙れ!逃げれるなら逃げてるっちゅーの!!
先程から引っ切り無しに届いているレイテルパラッシュとホームからのプライベート通信も全て無視!!って、ヴェーロノークやカラードの共用チャンネルまで使ってるのかよ。あーもう、全部無視!!こんな事をしたら後が怖いがそれも生き残れたらの話だ。
残弾はWGPがやばいな。あと一回の交差で店仕舞か。
BECRUXを当てる為の牽制にも使いたいからここが勝負時か?
アンノウンの削り具合はどうだ?AMSに計算を指示する。結果は一応BECRUX直撃でいけるか。但し斃すには二発とも当てないと駄目ね。
どうする?あと一度交差をして削れば二発のうちどちらかを当てればいけるようになる。だがそのかわりWGPを撃ち尽くして牽制に使えなくなるし最後の勝負に出る事が丸わかりだ。
今勝負に出れば交差と油断させ当てやすいか?いや、相手はとっくに俺の手を読んで、その上であえて乗ってきてているんだ。ならそんな油断しない。だが二発のうち片方で当てればいいのは魅力的だ。
くそ!どっちが正解だ?勝負?削り?試しにAMSに検討させてみる。結果はエラー。この役立たずが!!ならと俺の生存率を計算させてみると0%だった。どっちを選んでも失敗するから検討できないって事ね。頼もしい計算結果に涙が出てくる。
迷っているうちにアンノウンがゆっくりと接近を開始する。
ああくそ!いいぜ!ダラダラするのは性にあわねぇ!!いいぜ!勝負してやるよ!!
覚悟を決めた所でアンノウンが突然後QBを使い距離をとる。
んだぁ?ってネクスト接近だと!?まさか、ウィンディーが引き返して来た?それとも敵の増援か!?どっちも勘弁してくれ。
「こちらランク1ステイシスだ。マイブリス、撃破されたくなければ退け」
オープンチャンネルから偉そうな声が聞こえてくる。ってステイシス!?なんでこいつがこんな所に!?
まさか情報が漏れててオーメルが漁夫の利に来た?だったら標的は誰だ?姐さんと坊主か?それとも俺か、もしかしてウィンディー?まさかアンノウンが出る事まで知ってたんじゃないだろうな?
って、っちょっと待って!!オープンチャンネルで通信なんかしたらアンノウンにも傍受されるじゃねぇか!!
アンノウンが閃光ロケットを発射し、自ら撃ち抜く。
閃光にアンノウンが包まれる。
「くそ!!」舌打ちし閃光の向こうにWGPを乱射しBECRUXを撃ち込むが当然手応えはない。
そして閃光が収まるとOBを起動し急速に遠ざかっていくアンノウンの姿が見えた。無駄だと解っているが一応両背のミサイルを発射する。おまけにBELTCREEKも付けてやろう。
アンノウンが背後から迫るミサイルに腕だけを後ろに向けてマシンガンを一閃し全て撃墜する。見事なもんだ。でもマシンガンはそうやって使う武器じゃねー!
アンノウンが戦闘領域から離脱する。
「ふぅ、助かったぜ」安堵の息とともに戦闘モードを解除する。
本当に助かった。何せあのまま勝負しても勝てる可能性は精々一割あるかないかだったんだからな。
AMSが敵対企業のネクスト接近!離脱しろ!と喚き立てる。だから煩いつーの。今から逃げても間に合うもんか。
えーと確か降伏ってネクストを通常モードにして武器にセーフティをかけるでいいんだったっか?うろ覚えの手順を実行しカラードの共用チャンネルでステイシスに通信を入れる。
「こちらマイブリス。抵抗する意思はない。降伏する」
ステイシスからの返事はない。無言でOBで接近してくる。おいおい、マジかよ。
「聞こえているか!こちらに抵抗の意思はない!!その身代金とかには出来るだけ前向きに検討するから受けてくれよ」
ステイシスからの返事はない。無言でOBで接近してくる。あ、戦闘領域に入った。
「降伏するって言ってんだろ!!勘弁してくれ。折角生き残ったのにこんな所で死にたかねぇよ!!!」
ステイシスからの返事はない。無言でOBで接近してくる。ステイシスが戦闘稼働に入ったとAMSが警告する。
半泣きになりながら使えるチャンネル全てを使って絶叫する。
「だぁぁあああぁあ!!降参だ!降参!!土下座でも何でもするから助けてくれよ!
 俺にはタキシードを着て水着の美女で一杯のプールでRememberを歌うっていう夢があるんだ!!
 それを叶えるまで死ぬわけにはいかねぇんだ!!だからお願いだ!!助けて~~!!」
「聞き苦しい声で泣き喚くな!屑が!!」
オープンチャンネルで罵声が飛んでくるのと同時にステイシスが目の前で停止する。あ、レーダの反応が白になった。降伏が受け入れられたのか。助かった~。
「降伏を受け入れて貰った事に感謝する。以後そちらの指示に従う。
 にしても人が悪いぜ。聞こえてるんなら脅かさないでとっとと返事をしてくれよ。寿命が半年は縮んだぜ」
「好きでやったと思うか?屑が!貴様が最初にオープンチャンネルでしか反応しなかったからだろうが。
 そのせいで不明ネクストに逃げられたんだぞ!屑が!!全く、レイテルパラッシュの始末だと聞いて来てみれば一日待たされた揚句子供の使いとは、まるでファルスだ!
 この私が空気になるとは。まぁいい、とにかく不明ネクストとの戦闘データを寄越せ」
あー、もしかしてウィンディーからだと思って無視した通信の中にこいつからの物もあったのか?ちゃんと発信元を確認すればよかったな。
「悪い。えーと、戦闘データだよな。転送を開始するぜ。
 ………送り終わった瞬間にドカンは勘弁してくれよ?」
「黙れ。空気にもなれんのか、屑が」
………こいつマジムカつくな。我慢だ、ロイ・ザーランド。
通信機から時々「無様だな」やら「話にならんな」という声が聞こえてくるので恐らく受け取った端からデータを再生しているのだろう。通信は切っとけよ、嫌な奴だな。
データの転送が終わるとステイシスがQTする。
そのままOBを起動するステイシスに慌てて声をかける。
「おいおい、俺はどうしたらいいんだ?お前についていけばいいのか?」
「好きにしろ。私の仕事はお前から戦闘データを回収する事だけだ」
「んじゃ俺はこのまま逃げちまっていいんだな?」
「何度も同じことを言わせるな屑が」
「へいへい、すいませんね。アリガトな。見逃してくれて」
「ふん。まぁ、ありじゃないか貴様」
捨て台詞を残しOBで急速に離脱していくステイシス。
もしかして最後のは褒め言葉か?なんというツンデレ。会ったばかりの頃のウィンディーを思い出すなぁ~。
って、そんな場合じゃないな。これ以上厄介事が起きないうちにとっとと逃げるか。
ホームに向かってOBを起動する。

「さーて、まずはウィンディーへの言い訳を考えないとな」


「以上が先の不明ネクスト襲撃事件の詳細です。
 付け加えますと前戦争時に生産された07-MOONLIGHTは二本です。
 ですが一本はアンジェ様撃破後にアナトリアの傭兵が持ち去り、残りの一本はレイレナードの崩壊の際に行方不明となっております。
 ですので07-MOONLIGHTを所持するラインアーク、もしくは行方不明の一本を手に入れた第三者がコピーを作る事は難しくありません。
 また戦後押収した資料には設計書がありますのでどの企業でも生産は可能ですし、ラインアーク等から設計書が流出した可能性も否定はできません。
 さらに開発者の一部も現在行方不明となっており彼等が新規に作成した可能性もあります」
「つまり07-MOONLIGHT等の装備から追うのは不可能という事か。ありがとう、リリウム・ウオルコット嬢。
 これは私見だしあり得ないとは思うのだが、07-MOONLIGHTといい、上位リンクス三人と互角以上に渡り合った手並みといい、私はどうしてもアンジェを想像してしまう。
 彼女が生きていた可能性はないのか?」
「ふん、三人がかりで一人に後れをとるとはリンクスを名乗るなよ、貴様」
「止めないか!オッツダルヴァ!!不明ネクストの実力は見ただろう。奴の強さは私達に匹敵、いや対ネクストに限れば或いは凌駕していただろう!!
 それに彼女は乗り換えたばかりの機体で慣らしも終えておらず本調子では無かったんだ。
 すまない、ウィン・D・ファンション。君を貶める意図はなかったんだが結果的にそうとれる言い方をしてしまった」
「気にするな、ジェラルド。私達が三人がかりで翻弄されたのは事実だ。
 そして話を戻すが不明ネクストのリンクスはアンジェなのか?実際にアンジェを見た事のある貴方はどう判断した、王大人?」
「そうだな。あれだけの映像では確かな事は言えんが、似ているものは感じるが違うな」
「当然だ。アンジェの死亡は確認されている。死人が蘇る筈が無い。そんな事も解らんとは脳までかびたか?」
「だが、不明ネクストが07-MOONLIGHTを持ち、使いこなしていたのは事実だ。
 そして離脱後にそのまま姿を消して今現在発見されていないことから不明ネクストの後ろに大規模な組織がいる事も確実だ。
 そんな組織が私達に知らずに新規に起こるとは考えづらい。反動家共の後ろにはラインアークかレイレナードの残党が絡んでいると考えるのが自然だろう」
「そうだな。だが現段階ではラインアークの監視を強化する事しかできん。レイレナードの亡霊には今は各自が注意するしかないな」
「ふん、長時間チンタラ話し合った結果がこれか。まるでファルスだな。もう話し合う事はあるまい。私は抜けるぞ」
「そうだな。解散する」
「では私もこれで」
「王大人、私も先に戻らせていただきます。では皆様失礼いたします」
「ウィン・D・ファンション、少しいいだろうか?」
「何だ、ローディー」
「いや、最も長く戦闘した彼の話も聞きたかったのだがこの場にいなかったのでな。そちらにも都合があるだろうがすまないが後日話をさせて貰っていいかね?」
「ああ、それはすまない。ロイも本当は今日参加する予定だったのだが重大な用事が入ってしまったんだ」
「重大な用事?」
「ああ、タキシードを着て全裸の美女で一杯のプールで揉みくちゃにされながらRememberを歌ってるんだ」
「は?」
「だから、タキシードを着て全裸の美女で一杯のプールで揉みくちゃにされながらRememberを歌ってるんだ。
 ふふふ。おかしいだろう?恋人の私が慣れない腹の探り合いで苦労している最中、あいつは他の女と楽しんでいるんだ。
 散々心配させて、あの毒舌家に命乞いまでした私に仕事を押し付けて自分はお楽しみだ。おかしいなぁ。ふふふふふふふ。
 大体要求する方も要求する方だが受ける方も受ける方だ。これだからインテリオルは。今度という今度は許さんぞ。
 ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「………大丈夫か?ウィン・D・ファンション?」
「ふふふふふふふふ。そうだ。王大人。貴方は中国四千年の結晶である拷問に詳しかったな。よければそのなかで相手が一番苦しんで一番長く続く奴を教えてくれないか?」
「いや、私は別にそんな物に詳しくない。そろそろ時間だな。ローディーすまないが後は任」
「教えてくれないか?」
「いやだから」
「教えてくれないか?」
「いや」
「教 え て く れ な い か ?」
「………解った。………今送った。これでどうだ?」
「ふむ。………これは素晴らしい!!貴方には、感謝している。嬉しかったよ。ふふふ、じゃぁ、私は準備があるのでこれで。ふふふふふ」


この後、たった一人のリンクスにより
インテリオルは深刻なトラウマを植え付けられる。
ブラス・メイデンとすら呼ばれた彼女は
史上最も多くの人間を半殺しにした個人でもある。


後書きという名の蛇足。

まずはこのような駄作を見て頂いた事に感謝を。
そして注意!この場所は作者が作品の感想を書いたりコメントに返事をする場所です。
本編とはノリが違うので冗談半分で見て下さい。

某所からの移送です。良ければ読んでくださいね


「久しぶりだな、真改。悪いな、死神の使いが私で。
 ………出会った途端に背を向けられると悲しいんだが?それとも私が誰だか忘れてしまったか?」
「…否」
「良かった。なら顔を見せてくれないか?十年ぶりにお前の顔を見たい」
「否」
「何故だ真改?もしかして私の顔など見たくも無いのか?」
「否」
「ならなぜだ?」
「無念」
「そうか。私達の遺志を果たせなくて合わせる顔が無いか。なら安心していい。私達の夢は最後のORCAが果たしてくれたよ」
「……」
「ふふ、自分が果たさなくちゃ駄目か。変わらないな真改。十年も経ったのにお前はお前のまま。自分に何処までも厳しい私が愛した男のままだ。
 なあ、真改。お前は志半ばで倒れた私や他の仲間達を無様と笑うか?」
「否」
「ならお前も同じだ。お前を笑う者も恨む者もいないよ。少なくとも私はお前やお前達ORCAに対する感謝の念に満ちているよ。私達が果たせなかった悲願を継いで叶えてくれたんだから。
 なあ、真改。私達レイレナードの遺志をお前達ORCAが継ぎ、果たしたんだ。だからお前が恥じ入る必要は無いんだよ。
 だから顔を上げてくれ真改。十年お預けを喰らった私をこれ以上待たせてくれるな」
「……」
「………老けたな。そうだな、あれから十年たって私より年上になったんだもんな。でも、いいな。うん、老けたお前も私は好きだ。
 あれ?涙が。くそ、駄目だ止まらない。すまないな、無様な所を見せて。久しぶりにお前に会うのだから格好付けようと思ったのに。すまん、少し待っていてくれ。向こうで落ち着いてくる」
「不要」
「そうか、そうだな。これからはずっと一緒なんだ。くだらない気負いは無用か。ありがとう真改。
 では、すまないが胸で泣かせて、いやその前に答えを聞かないとな」
「不要」
「駄目だ。言葉に出せ。女は答えが解っていても声に出して聞きたいんだ。十年待たされたんだ、これぐらいの我儘は許せ」
「……」
「ふふ、始めて見たなお前のそんな顔。でも駄目だ。ほら早くしろ。私は早くお前の胸に飛び込みたいんだ。
 それともお前は私に涙でぐしゃぐしゃになった顔をこれ以上晒させるつもりか?女に恥を掻かせるのは酷いぞ真改」
「返却」
「ああ、そうか。うんそうだな。答えるには先に問いが必要だ。そして問いにはまず想いを返してもらわないとな。すまない。確かに十年前お前に預けた想い返して貰った。
 じゃぁ、問うぞ」
「……」
「………その、何だ。改めて言うとなると緊張するな。駄目だ。私はお前の口から答えを聞きたいんだ。
 よし!大丈夫だ!言うぞ」

かくして
彼女は恥らいながら十年前の問いを発し、
彼は十年の時を超え彼女に答えを告げる。

「ありがとう。これからはずっと一緒だ、真改」


now:22
today:2
yesterday:0
total:1193


コメント



それにしてもお前、2文字以上喋れたんだな。
+  移送元の記録