小説/長編

Written by えむ


 フォートネクストの背後から、射突ブレードであるKIKUを構えたランク19 ド・スの駆るスタルカがクイックブーストを使って一気に肉薄した。
 戦闘開始から10秒。これがフォートネクストの置かれた状況であった。
 もちろん、こうなった経緯はある。何を考えたか、レックスは開始と同時にオーバードブーストを展開し、正面からスタルカめがけて突撃を敢行。オーバードブーストからのグレネード加速撃ちを繰り出すも、スタルカはそれを飛び越す形で回避。スタルカは、すぐさまクイックターンからクイックブーストへと繋げ、目の前でオーバードブーストをカットして減速したフォートネクストの背後を見事に取り、今に至っていた。

「今の状況で減速たぁ、愚かだねぇ」
 
 距離は近距離。少し踏み込めば、必殺の武器とも言えるKIKUの射程範囲。さらに、相手はタンク。このタイミングならば回避は困難なはずだ。
 あのままオーバードブーストで突っ切れば良かったものの、わざわざ立ち止まると言う失策を相手はやってしまった結果だ。これは愚かとしか言いようがない。

「予告通りえぐらせてもらうで」

 正面のフォートネクストがクイックターンで振り返る。このタイミングで、さらにクイックターン。せめて回避行動に移せば、避けれる可能性もあったかもしれないのに。
 だがチャンスは逃さない。踏み込み、KIKUのブレード部分が叩き込まれる。ほぼゼロ距離。直撃。
 綺麗に入った。―――取った。そう勝ちを確信した瞬間、レックスの一言が通信を通して入ってくる。

『…勝った』
「っ!?」

 次の瞬間、フォートネクストが、いつの間にか格納から取り出していたMUDANが叩き込まれ、スタルカが大きな衝撃と共に後方へと吹き飛んでいた。もちろん、スタルカの装甲で耐え切れるはずもなく、APは一瞬にしてゼロ。機能も全て停止し―――シミュレーターは、そこで終了となる。
 これが、今行われたランクマッチでの一部始終であった。
 そして、その一部始終を見ていた、一人のリンクスが笑みを浮かべていた。自分と組んでいる相方がランクマッチを行うとの事で、興味本位で見に来てみたのだが、その結果は非常に面白いものだった。少なくとも彼女にとっては。
 
「あーあー、まんまと相手に乗せられて」

 スタルカの射突ブレードを受け、なおかつカウンターで叩き込んでの撃破。装甲の厚いタンク機だからこそ出来た芸当による勝利。だが、そのリンクスはその前に仕掛けられていた布石を、しっかりと見抜いていた。
 最初のオーバードブーストによる突撃。そして相手の間合いの中で行った急減速。これらは全てスタルカに「最初に」KIKUを使わせるためだったのだ。
 恐らく相手は、一撃はKIKUに耐えられると最初からわかっていたのだろう。だが耐えられたとしてもKIKUの破壊力は絶大。タンクとは言えAPがMAXの状態でも一撃が限度。だから、わざと飛び込んだ。スタルカの射撃によってAPを削られる前に、ベストの状態で受けるために。
 そして一撃耐えられる状況でわざと受け、スタルカに生じた隙を付いてカウンターを叩き込んだわけだ。
 パッと見では運で勝ったようにも見えるが、実際には全て計算ずくの動きであった事を、そのリンクスは完全に見抜いていた。フォートネクストの一連の動きに、焦りなどが一切なかったのだからだ。
 自分が勝てる状況へと引き込み、こちらのペースで戦いを運び――仕留める。フォートネクストのあれは非常に狡猾な戦い方だ。わかる者には、わかる者にはわかる。

「……ふぅん…」

 そして、同時に思う。同じような戦い方をする身として、戦ってみたいと。そして、逆に自分が嵌められたとわかった時に、どんな反応をするのかと。ああいうタイプは、万が一にも自分のペースが崩されると意外にも脆い。―――一体どんな風になるか、興味もある。
 
「…ふふっ。面白いことになりそうだわ」

 少し想像してみて、口元に笑みが浮かぶ。そして、そのリンクスは何事もなかったように、その場から歩いていった。レックスと戦闘するチャンスをどうやって作るか考えつつ。

□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □

「オーダーマッチの依頼?」

 それから数日後、レックスの元へと一つの依頼が届いた。ちょうど未確認AFとの戦闘を終え、フォートネクストの修理が完了した次の日のことである。

「そうだ。相手はランク15 シャミア・ラヴィラヴィ。アルゼブラのリンクスだ」
「シャミア・ラヴィラヴィ…。カラードで少し噂に聞いたことがあるな。確か―――状況戦を好むとか」
「そのシャミアが、お前を実戦形式でのオーダーマッチの相手に指名してきた」
「実戦形式のオーダーマッチ…。そんなのがあるのか?」

 基本的に、オーダーマッチはシミュレーターにて行われる。だが今回は実戦形式。つまりのところ、現実での本格的な戦闘と大差はないということになる。

「一応…だがな。最近はシミュレーターの性能が上がっているのもあって、今ではそれをやるリンクスはいないと思ったのだが。
 ルールは、AP10%を切った時点で撃墜扱いとなる特殊ルールで、専用の制御プログラムを組み込むことになっている。どちらかのAPが危険域に達したところで、両者の機体を自動的に停止させるものだ」
「つまり完全撃破しようとしても、自動的にブレーキがかかるわけか」

 だが、それでもシミュレーターとの戦闘と違って、危険は少なくない。最も―――実戦形式だからこその物もあるのだが。
 レックスが受けるか受けないかを考えあぐねていると、セレンがさらに言葉を続ける。

「ちなみにだ。挑発のつもりなのか。メッセージが一緒に来ている。――『私の庭で勝てる自信はおあり?』――だそうだ」
「確かに挑発だね。自分の得意のエリアで戦おうって魂胆なんだろう。…あぁ、なるほど。そういうことか。」

 ほとんど面識がないのに、どうして対戦相手に選んでくるのだろうとひそかに不思議に思っていたのだが。そのメッセージで、レックスは全てを悟った。
 つまり同じ状況戦を好むタイプとして戦ってみたいと言う事なのだろう。確かに、カラードのリンクスでそういうタイプは多くはないし、その気持ちはわからなくもない。ちなみに言うまでもないが、シャミアには別の思惑もあるのだが、それはレックスの知る由もないことである。

「まぁ、そういうことなら受けてみるか。ちなみに対戦エリアは?」
「PA-N51だ。以前、バーラット部隊と戦闘をしたエリアだ」
「あの霧の濃いところか…。確かレーダーもあまり利かなかったな…」

 そう呟きながら、レックスは端末を使ってカラードのデータベースへとアクセス。シャミアのレッドラムの情報を引き出す。軽四脚機で、武装はスラッグガンにショットガン。あとはアサルトライフルに、レーダー。
 それらの装備を確認し、レックスは思わず苦笑を浮かべる。

「……駄目だな。なってない」

 ほんの少しデータベースを見ただけで、そんな感想を漏らし、レックスは画面を閉じる。

「何が駄目なんだ?」
「状況戦を得意とするって話だったから、少し期待してたんだけど。大したことなさそうだから…さ」

 なおも苦笑を浮かべるレックスに、セレンは幾らか目を丸くする。

「なかなか強気だな、珍しく」
「そりゃあね。普通の戦闘じゃなくて、状況戦だから。それじゃあ準備とかかるか―――」

 そう言って、レックスはガレージのほうへと歩いていく。
 それから、しばしの打ち合わせを経て。レックスが選んだ装備を聞いた、整備員の面々は思わず目を丸くした。レックスの要求が今までになく、とんでもないものだったのだ。
 持っていく予定の装備は両腕にNUKABIRA。左背にBFFのスナイパーキャノン061ANSC。ここまではいい。だが次が問題だった。
 右背にMSACのVTFミサイルDEARBORN02。ただし追加注文付。そして、その内容は以下のようなものだった。

「DEARBORN02の燃料を減らしてほしいんだけど」

 ミサイル燃料を減らす。一応作業は少し面倒になるが出来ない話ではない。だが、そうすることのメリットは何もない。なぜならミサイルが飛ばなくなってしまうのだから。そして、さらにレックスは告げる。とりあえず発射機から出たところで失速して落っこちるくらいでいいと。
 時折、突拍子もない装備を選ぶことはあったが。今回は、それにも増して、驚かずに入られない整備班の面々。だが、そこにささやかなながら追い討ちがかかる。
 それを聞いた整備員の一人は思わずレックスに尋ねていた。

「正気ですか?!戦闘エリアはECMが展開されてるんですよ!?」
「いいんだよ。自分が有利になるんだから」

 そんな整備員の言葉に、レックスは、ただ呑気に笑いながら答えるのであった。
 
 そして、レッドラムとの実戦形式でのオーダーマッチの日。
 濃霧の中での戦闘ということもあってか、以前と同様にフォートネクストのカラーリングは白一色へと塗り替えられている。

「…チェック完了。後は、時間待ちかな」

 戦闘予定エリアへと到達し、機体の状態をチェック。戦闘開始の合図を待つ。
 しばらく待っていると、対戦相手であるシャミア・ラヴィラヴィからの通信が入った。

『まさか本当に、私の庭に来てもらえるとは思わなかったわ。てっきり、自分に不利な場所での戦いは避けるかと思ったのだけど』
「それも考えたんだけど。落ち着いて考えてみれば、そう不利でもないと思ってね」

 軽い挑発。それを気にすることもなく、レックスはのほほんと答える。

『あら、もしかしてECM対策はばっちりなの?』
「いやECMの対策はしてないけど、レッドラム対策ならばっちりだな」
『ふぅん。大した自信ね』
「仮にも状況戦だし。あぁ…せっかくだから、一つ言わせてもらおうか」
『あら、なにかしら?』
「本当の状況戦ってのを、見せてやるよ」
『それは楽しみね。それじゃあ、始めましょう』

 戦闘開始時刻となった。
 シャミアはすぐさまレッドラムを前へと走らせ始めた。レーダーを頼りにフォートネクストのいる方向へと向かう。得意な距離は、近~中距離。まずは近づかなくては始まらない。
 だが移動を開始して間もなく、一つの異常に気がついた。
 
「レーダーが……」

 フォートネクストに近づいたところで、レーダーにノイズが走り始めた。通常なら、自機に搭載しているレーダーによって、この場所のECMの影響は受けないはずなのだが。
 その理由を考え、答えはすぐにわかった。
 
「……ECMの中でECMを使ってくるなんてね…」。

 シャミアにとって、これは想定外だった。
 そもそもECMが展開されている場所で、わざわざ自分の目を潰すことになりかねないECMを持ってきたりはしない。だからこそ、ECMをつかわれることは考えていなかったのだが…。 
 やむなくレッドラムを進ませる。こうなれば、直接相手を見つけるしかない。レーダーが使えないのは痛いが、速さは圧倒的にこちらが上だ。仮に先に攻撃を受けたとしても、それで相手の大体の位置は掴むことができる。

「……っ!?」

 突然。目の前のPAが光った。そして、被弾。
 すぐさまその場から左サイドへとクイックブーストを吹かし、すぐそばのビル群の中へとレッドラムを滑り込ませる。

「そういえば、相手の頭部は047AN2だったわね。と言う事は、今の一撃はスナイパーキャノンってところかしらね。…開けた場所を行くと、向こうが有利か…」

 フォートネクストのパーツ構成を思い出し、受けた攻撃から状況を判断する。ECMを使って、こちらのレーダーを潰し、後はカメラ性能の高さを生かしての長距離攻撃。こちらが中~近距離戦型であることを考えれば、なかなか良い手だ。
 だが、それはあくまで開けた場所ならのこと。
 それならばとビル群の中を、先ほどの攻撃を頼りに見当をつけた方向へとレッドラムを進める。
 相変わらずECMをばらまいているらしく、レーダーはいまだノイズの中だ。

「……っ」

 突然、すぐそばで爆発が起こった。爆発の規模などからして、恐らくはミサイル。すぐさまクイックブーストを吹かし、その場から離れつつ周辺を警戒する。
 再び爆発が起こる。今度は少し後ろ。……さらにレッドラムを移動させ、ビルの影へと移動させたところで、三度目の爆発が足元で起こった。

「……っ?!」

 PAが減衰し、APが低下。だが持ち前の機動力を持って、その場から離れダメージは最小限で抑える。

「今のは何…?」

 足元での爆発。だがどこからか撃ち込まれたものではない。ただ、そんな中で一つはっきりしたことがあった。それはレーダーを封じられた中、自分は確実に何かの罠に嵌められ始めていると言う事だ。
 何かがある。
 警戒しながら、地面へとカメラを向けつつレッドラムを移動させる。やがて、シャミアは地面の上に一発のミサイルが転がっていることに気がついた。
 不発のミサイルなのだろうか、と思いつつも前進しようとするも、ふと身の危険を感じ、とっさに後方へとクイックブーストを吹かせる。その直後、ミサイルが爆発した。

「…味な真似をしてくれるわね」

 直撃せずとも近づくだけで反応・起爆する。ネクスト用の装備に、そんなミサイルがあるのを思い出し、小さく舌打ちをするシャミア。VTFミサイルを飛ばさず、わざと地面に落して、トラップにしていたのだ。通常のミサイルならともかく、近接信管式のVTFミサイルなら、こういう使い方も出来なくはない。
 しかし、それはともかく。こんなことをしているのであれば、まだ他にも仕掛けられている可能性がある。
 シャミアはあえて足を止めた。下手に動き回ってはまずい、そう判断して作戦を変える。レーダーが見えない以上、相手がどう動いているかはわからないが、それは向こうも同じ。それならば 待ち伏せだ。
 仮に熱源ロックで捕捉されたとしても、今いる場所はビル群に囲まれているため、長距離からの攻撃はされにくい。

「……さぁ、どう来るかしら?」

 多少追い詰められている気はするが、まだ慌てるほどではなかった。まずは息を潜め、シャミアは静かに獲物が近づくのを待つ。
 そして、その頃。レックスはレックスで、相手の出方を伺っていた。

「…爆音がしなくなった。と言う事は、動きを止めたか…」

 スナイパーキャノンと長距離FCSである061AN05を使って、索敵する。すると案の定、ビル群の真ん中にレッドラムの反応があった。少しばかり上昇して、ビルの配置をチェックしてみる。

「……さすが状況戦が得意ってだけあるな。攻めにくくて守りやすい場所をしっかり押さえてるし。けど完全に足を止めてくれてるのなら、手はあるか」

 FCSを完全にマニュアルモードへ切り替え、両腕のNUKABIRAの砲口を斜め上方向へと向ける。

「方角と距離、グレネードの弾速からして…この辺か。――しかし、ネクスト戦闘でやる機会があるとは思わなかった」

 苦笑を浮かべながら、手動で微調整を行い、そして撃ち出す。
 撃ち出された2発のグレネード弾は空高く、上へ上へと飛んでいった。だが推進機構のあるミサイルやロケットとは違うため、やがて重力によって上昇しなくなり、今度は大きな放物線を描いて落下を始める。
 そして落下していく先に、レッドラムの姿があった。
 曲射と呼ばれる撃ち方がある。放物線軌道を描くように撃つことによって飛距離を増大させ、さらに障害物の向こうへも攻撃できる特殊な撃ち方である。着弾までの時間が遅いため、動く的にはまず当てれられないのが欠点の一つでもあるが、レッドラムは…今まさに完全に足を止めているところだった。
  
『……上からっ?!』

 突然頭上から降ってきた2発のグレネード弾を受け、大きなダメージを受けるレッドラム。それでもAP10%には届かない。内心、冷や汗を浮かべつつも、シャミアはすぐさまその場から離れる。
 案の定、追い討ちとばかりに2セット目のグレネード弾が上空から地面へと突き刺さる。

『…こうも一方的だなんて、気に入らないわ…』

 相変わらず攻撃している方向がよくわからない。グレネード弾は上か落ちてきたが、見上げてみても相手の姿はそこにない。
 上から降ってくるグレネード弾の命中精度は徹底して良くないため、動き回っていれば当たることはなさそうだった。だが、動き回ると今度は、ところどころにぽつんと落ちているVTFミサイルに引っかかってしまい、少しずつだがAPが確実に削られていく。
 せめて居場所がわかれば、逆転も可能なのだが。

『……!!』

 ちょうど、その時だった。
 ECMの濃度が低下し、レッドラムのレーダーが復旧する。そして、そのレーダーに映ったのは、ところどころにある動かないミサイルの反応と、ネクストの反応だった。

『…やっと見つけた』

 すぐさま、そちらの方へとレッドラムを走らせる。ビルが密集した場所ではあるが、その隙間を巧みにくぐり、高速で抜けていく。仮にも、ここは自分のフィールド。その程度はわけもない。
 レーダーを頼りに距離を詰め、ビルとビルの隙間から一瞬見えたフォートネクストの向きを確認。さらに持ち前の高速性をフルに使って回り込み、背後から強襲する。

『今までのお礼をさせてもらうわ』
「…っ」

 フォートネクストがクイックターンで旋回する。だが、その旋回劣らぬ速さで、レッドラムはフォートネクストの背後へと回り込みつつ、ショットガンとアサルトライフルの弾丸を浴びせていく。

『無駄に硬いわね。別にいいけど』

 さすがに実弾に強いGA系列のフレーム。しかもタンク。PAもスラッグガンによって剥がれているはずなのだが、それでもなかなか落ちる様子がない。
 そうこうしているうちに、フォートネクストが後退を始める。

『逃がさないわよ』

 なおも攻撃を続けつつ逃げるフォートネクストを追撃する。そこで不意にフォートネクストの姿が消える。単にクイックブーストでビルの陰へと隠れたようだったが、レーダーが機能している現状で見失うことはない。
 ドリフトターンを使い、ビルの陰へと飛び込む。正面にフォートネクスト。両腕のNUKABIRAを展開し、こちらへと向けていた。
 重みのある砲声と共にグレネード弾が放たれる。だがクイックブーストを使うまでもない。レッドラムの速さなら通常ブーストで充分と回避行動に移る。
 だが。

『――――っ!?』

 そのまま通り過ぎていくと思われたグレネード弾が、レッドラムのすぐ真横で爆発した。PAが削れ、APが低下する。
 それでも足を止めず、ビルを避けつつ高機動で動き回り、レッドラムは攻撃を続ける。だがフォートネクストは、それに耐えつつ確実にグレネードの爆風を当ててくる。

『なぜ、こうも当てれるの…?』

 機動力は完全にこちらが上。さらに地の利もこちらにある。ましてビルに引っかかるといったミスをしたわけでもない。持ち前の機動性を殺さず、確実にビルを避けているのだから。
 撃ち合いはさらに続く。
 だが勝負はすでに見えていた。グレネードと言う高威力の武器を確実に当てられては、APと装甲で劣るレッドラムでは一たまりもないのだから。
 何度目かの爆発が起きた。
 そこで両機のFCSにロックがかかり、攻撃が不可能となる。勝負あり……だ。

『…負けたわ。まさか、こうも主導権を取られるなんて…』

 ECMを隠れ蓑にしたVTFミサイルによるトラップ戦術。そしてそれを警戒して、足を止めたところへの上からの砲撃。そして、レーダーが復旧したあとの攻防もそうだ。結局、最後まで相手の手の内だった。

『あなた、最後の方でわざとECM切ったでしょ。私を誘い込むために』
「………」
『あなたが陣取ってたのは、このエリアでも特にビルが密集しているところ。こちらの動きも少なからず制限されるもの。それを狙ったのでしょう?』
「……参ったな。気づかれたのか。…でも、それならどうして飛び込んできたんだ?」
『私のレッドラムなら、あなたの攻撃には当たらないと思ったから』

 だが実際は違った。フォートネクストはグレネードを確実に当ててきたのである。

『良い腕してるわね。噂だと、粗製だって聞いたのだけど』
「……あー。それは…だな」

 レックスがレッドラムに攻撃を当てれた理由。それは地形とレックスの奥の手にあった。乱立するビル群という環境の中では、当然動きは制限される。つまり、それだけ相手の動きが読みやすくなるわけだ。ましてレッドラムは地上戦主体。上下の動きは考えなくて良い。
 そして動きが読めるのなら、予測射撃で攻撃を当てる事が可能だ。相手の通るルートを先読みして、そのルート上にグレネードの爆発を起こしてやれば良い。マニュアル制御で射線を交差させ、わざとグレネード弾同士をぶつけて任意に起爆させると言う奥の手を使えば、充分に実現可能だ。

『あなた、本当に粗製?』
「粗製だとも。AMSの数値は、かなり低いし。AMS制御が下手だから、腕部制御はマニュアルだし。実を言えば、今回の戦闘。状況戦じゃなくて普通の戦闘だったら、確実に負けてたよ」
『…なにそれ』
「そのまんまだ。僕のネクストを操る腕は、その程度ってことだよ」

 それなら今度、状況戦ではなく普通にオーダーマッチをやってみようと思うシャミア。とりあえず今回負けたことへの腹いせをぶつけるつもりで。

「あぁ…あと、あまり人のアセンには口を出さないようにしているんだけどさ。一つアドバイスでも送ろうか。…レーダーには頼らないことだね。それだけ、かなりかわるはずだよ」
『………』

 レックスの指摘に、そのまま黙り込むシャミア。だが間違ってはいない。レックスは、レーダーを逆手にとって、流れを操ってみせたのだから。
 
『いいの?次は敵になるかもしれない相手に、そんなアドバイスして』
「構わないさ。その時はその時で、別の手を考えるだけだし。こと状況戦でなら、そうそう負ける気はないんでね」
『言ってくれるじゃない。でも、あなたみたいなタイプは結構、好きよ』
「…は?」
『……ふふふふっ』

 シャミアの言葉に、キョトンした表情を浮かべるレックス。そんなレックスの反応に、ただシャミアは意味深な笑みを返すだけであった。
 その後の余談となるが。この一戦の後、シャミアはFCSやヘッドパーツを見直し、レッドラムのアセンを一部変更。それによって戦果をさらに上げることとなるのだが、それはまた別の話である。

To Be Countinue……


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移設元コメント


☆作者の一言コーナー☆
 予定は未定を地で行く、えむです。というわけでVSレッドラム戦
 対ネクスト戦において、おそらくレックスが一番余裕もって勝てた戦闘になるはず。
 特殊な条件があればあるほど強い。それがレックス・クオリティ。
 だけどこんな状況戦なんて、そうそうないので。きっと今後は、また苦戦しつつの日々となることでしょう。

 そして、おまけ程度の出番に終わったド・ス&スタルカ。
 …言い訳になりますが、当初は2対2の戦闘の予定でした。
 でも、でもね?私は声を大にして言いたい。ド・スさん、なんであんた広島弁なんだよ!!orz
 結局まともにしゃべらせることが出来ないと判断し、この扱い。というか、それがネックで更新が遅くなったのは、ここだけの話。でも仕方ない。後悔もしない。やりたいことはやったので。

 では、ここで毎度恒例のコメントレスをば。 

>糠平と老神の4発同時発射とは惹かれるな 有澤もロマンに引かれる男だったか 
 同時発射3発ですよー(汗 4発同時しようとしたら、老神も2門つまないと。…うん?老神2門……ふむ…。

>機体は滅んでもパイロットは護る……素晴らしいな有澤。
 グレートウォールで雷電撃破しても生きているのは、きっとこれだと個人的に考えていたり。

>ダリオは企業連ルートの場合→長期入院中で出番無し、病院のベッドでレックスとウインディーの活躍を聞き歯噛みして枕を涙で濡らす。 旅団ルートの場合→現場復帰して雪辱を晴らそうとするも今度こそ本退場。どっちにしても凄くオイシイなw
 ダリオ本人としては、たまったものじゃないでしょうがw でも書く側や読む側としては、確かに美味しいw

>社長・・・なんて素敵なんだ
>さすが社長だ……ほれてしまうよ。
 社長は、私にとっても尊敬すべき人物です。

>ついでに、俺にも一斉掃射のFCSを送ってくれ。フルテクノ(ロケオン)の意地を魅せよう。
 ロケオンで一斉掃射、凄く強そうだ…。

>しかし雷電にあのFCSを載せるとなると、かなり恐ろしいことなりそうだ…
 瞬間火力がそれはもうすごいことになるに違いない。正面に立ったら、きっと焼き尽くされる・・・。

>ソルディオスがアサルトアーマーを使わない・・・だと・・・!?ところで重装甲が売りと入っても正面から受け止める必要ないんじゃ?受け止めるくらいなら回避→反撃で・・・うわなにをするやめ・・・!
 NORMAL準拠なのでAAはありません。
 重装甲だからこそ正面から受け止めるのです。タンクは耐えてこその(ry

 以上、コメント返信でした。
 また指摘突っ込みその他、よろしくお願いします。

 さて次回は―――
 いよいよ分岐点。レックスの将来を左右する選択の時となります。お楽しみにっ
 あと今回、何かフラグがたった気もしますが。シャミアルートはありません、あしからず。


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