小説/長編

Written by えむ


 ネクストによるメガリスへの強襲を阻止してから、数日が過ぎた。
 あの一件以降、オーメルもその他の企業もラインアークに対して大きな動きは見せることはなく、レックスも今までどおり独立傭兵として企業からの依頼を待ちつつ、カラードのシミュレーターで訓練を続ける日々を過ごしていた。
 その日、レックスはたまたま出会ったダン・モロを誘っての対戦をしていた。数回の戦闘を経て、結果は2勝2敗1引き分け。勝てても僅差と言った感じである。ちなみに、その時の装備は毎度おなじみNUKABIRA2門に、散布ミサイルとレールガンと言った構成であった。
 一先ず休憩を兼ねてシミュレーターを終え、レックスとダン・モロが出てくる。

「いや、悪いね。付き合ってもらっちゃって」
「気にするなよ。どうせ、俺も暇だったし」
「ま、とりあえずお礼を兼ねて、何か奢ろうか」
「お、いいのか?じゃあ、遠慮なく奢ってもらおうぜ?」

 そんな会話を交わしながら、休憩室へと移動する。そして自販機で、コーヒーとオレンジジュースを購入し、コーヒーの方をダン・モロへと手渡す。

「しかし、あれだなぁ。レックスって、いまいち強いのか弱いのかわかんねぇんな。自分で言うのもなんだけど、俺相手に勝ったり負けたりするのって、お前くらいだぜ? たぶん…」
「んー。純粋な操縦技術だけでの勝利にこだわらなければ、確実に勝てる自信はあるんだけどな。でも、やっぱり自分自身のレベルを上げようと思ったら、奇策に頼っちゃいけないし」

 そう答えて、オレンジジュースのプルタブを開く。
 自分の強さが、状況判断力や経験。奇策があっての物だと言う事は自覚している。だが評価や成し遂げた事の大きさに隠れがちになっているが、純粋な操縦レベルだけで見れば、実はダン・モロより少し上か同じ程度だったりするのだ。
 もちろん、それに満足していないので訓練を毎日欠かさずやっているのだが。

「がんばり屋だな、お前。何気に、暇さえあればシミュレーターで訓練してるだろ?」
「ん? …なぜ、それを…」
「申請書見れば一目瞭然だって。ほとんど毎日名前載ってるんだぞ?」
「それもそうか。まぁ、目標があるからさ。そこに届くためには、がんばるしかないわけさ」
「なるほどなー。よし、レックス。もう一勝負いこうぜ!!今度は、『全力』で来いよ。俺の特訓にもなるしな!!」
「…ふむ。そういうことなら、確実に勝つつもりでいくぞ? 戦う場所とか、全部決めてもいいよな?」
「どんと来い!!どんな条件、装備だろうと逃げはしないぜ!!」
「わかった。じゃあ、手段は選ばないでいくよ」

 そして、今度はレックスの持てる全てを使っての模擬戦が始まった。ダン・モロ本人も、最初から勝てる気はなかったが、負けるにしても一矢むくいてやるぜ!!と珍しく前向きな気分で挑んだのである。
 だが手段を選ばず勝ちに行ったレックスは鬼だった。
 まずステージは、ファクトリーを選択。フォートネクストの武装は、両手コジマライフル、背中にはOGOTO。肩にはBFFのECM…051ANEM。
 そんでもって取った戦法は、ECMを重ね置きし、息を潜め、こちらを探して各部屋を繋ぐ狭い出入り口を通ってきたところを物陰からコジマライフルx2で吹き飛ばすと言う、ものだった。
 戦闘時間、約1分。接敵して、5秒の出来事だった。
 その後、半泣きで抗議するダン・モロに謝罪をし、レックスが自宅代わりの部屋へと戻ると、セレンが開口一番に、企業から依頼が来たことを伝えてきた。

「依頼?」
「あぁ、そうだ。GAから未確認AFの撃破依頼が来ている」
「未確認……」
「仲介人によると、ランドクラブの改造型らしいが詳しいことは不明だ。あと、今回も協働の提案が出ているが…、雷電のリンクスである有澤隆文から僚機の立候補があったそうだ」

 その一言に、レックスの表情がパッと明るくなった。

「……じゃあ、アセンも決まりだ。すぐに行こう」

 そうしてレックスが選んだのは、トーラス製特殊FCSとOIGAMI&NUKABIRAx2と言うグレオン装備であった。






 そして旧ピースシティエリア。
 そこに二機のネクストの姿があった。言うまでもなくフォートネクストと雷電である。

『またこうして協働できる機会が出来て何よりだ。OIGAMIの方はどうだね?』
「大事にさせてもらってます。ほんと、ありがとうございました」

 ちなみにOIGAMIは本当に大事にしてあったりする。状況に応じて使い分ける手前、毎回ミッションに持っていくまではしないが、時には自分が主体となって整備・清掃・ワックス掛けをしていることもあるほどだ。

『それは何よりだ。では……行くとしよう』

 二機のタンク機が並走し、未確認AFのいる方へと移動を開始する。別に狙ったわけではないが、両機共にOGAMIの展開タイミングが揃ったのは、ここだけの話である。
 前進すること十数秒。セレンからの情報が入る。

『敵AFを確認。ランドクラブの改造型だ。砲塔部がソルディオス砲に置き換えられている』
『やはりソルディオスか』

 並走する雷電から、有澤社長の呟きが通信機を通して入ってきた。

「やはり…?」

 何気ない一言だったのかもしれないが、レックスは思わず聞き返していた。まるで見当が付いていたかのような言い方だったからだ。

『トーラスが何やら妙な物を作っているとの情報があったのだ。そしてトーラスは、元はGAE…。ソルディオス砲を作ったところでもある。―――面妖な、変態技術者どもめ』
「なるほど…。あ、でもさすがにソルディオス砲作ったからと言って、変態と決まったわけじゃ―――」

 有澤社長がどう思っているかは知らないが、少なくともレックスはそこまでトーラスのことを嫌いではない。そんなわけで、とりあえずささやかながらも弁護をしようと口を挟みかけるが、さらに接近したところで、それは突然に起きた。
 
『……ぬ?』
「…は?」

 一瞬目の前で起きている出来事が信じられず、思わずフォートネクストと雷電の足が止まってしまう。だが続くセレンの言葉で、すぐさま現実へと引き戻された。

『分離飛行だと』

 目の前では、今…ソルディオス砲が空を飛んでいた。

『気をつけろ!敵ソルディオス砲、自律しているぞ!! あんな物を浮かべて喜ぶか。あの変態どもが!!』

 さらに続く警告と、その場の誰もが思ったことをセレンが口に出して叫び、レックスはレックスで弁解しようとしていたのをやめる。訂正、間違いなくトーラスは変態だ。
 そして、それと同時にソルディオス砲の砲口が一斉にこちらへと向けられた。

「……っ。来る!!」

 大出力のコジマ粒子が砲弾と化して襲い掛かる。フォートネクストも雷電も、すぐさまその場からクイックブーストで回避行動を取るが、至近弾によってPAが一気に消し飛ばされる。

『ぬっ。コジマは…まずい』
「いくら防御が高くても、あんなの食らったら一たまりもないぞ…!?」

 実弾やレーザーとは比べ物にならないレベルで、コジマ兵器の威力が高いのは、レックス自身よくわかっている。だがソルディオス砲のは、それに輪をかけてトンでもないものだ。有澤社長が珍しく引き気味なのもわからなくはない。
 もちろん、レックスも引き気味ではあったが、同時になぜか妙な対抗心が心の中に生まれていた。と同時に勝つための方法を模索。
 火力は申し分ないほどに充分だ。雷電のOIGAMIに加え、フォートネクストは今回トーラスから以前もらった特殊FCS――ノーロックモード時のみ全武器一斉発射可能になる特殊FCSを積んでいる。そのためOIGAMIとNUKABIRA2門…合計3門からの一斉発射が可能となっている。それらの一斉射撃を叩き込めば、高濃度のPAを誇るソルディオス砲とは言え、ひとたまりもないだろう。
 ただガチタンとはいえ、ソルディオスのコジマキャノンには何発も耐えられない。せいぜい数発がいいところだろう。だが、OIGAMIもNUKABIRAも連射が利かない以上、撃たれる前に全てを撃破するのは不可能。被弾は避けられない。
 ―――考える。耐え切ることが出来れば、まず勝てる。足りないのは耐久力だけなのだ。
 雷電では耐え切れない。フォートネクストでも耐え切れない。だが雷電とフォートネクストを足せば、全て撃破するまでは耐え切れる可能性もある。
 …閃いた。ソルディオスの攻撃間隔がそこそこ開いていることと、攻撃してくるタイミングがわかるからこそ可能な手が。

 一端、状態を立て直すため、レックスと有澤社長は、ソルディオス砲改めソルディオス・オービットから距離を離すことにした。そして、そこですぐさまレックスが雷電へと通信を繋ぐ。

「…社長。これって、ある意味チャンスじゃないですか?」
『チャンス…?』
「あれって、いわゆるコジマ技術の粋を集めた傑作…ですよね」

 そう告げて、ランドクラブ周辺を飛び回るソルディオス・オービットへと視線を向ける。一応変態的ではあるが、コジマ技術の粋を集めて作り上げられた傑作には違いない。

「で、こっちには有澤重工の歴史と技術の粋を集めて作り上げた傑作OIGAMIやグレネードキャノンと、重装甲が売りのタンク」
『…つまり、どういうことだ?』
「だからチャンスなんです。普通に考えて勝ち目は薄いかもしれない。でも、もしこれで撃破することが出来たら。周りのタンクを見る目が、きっと変わりますよ」

 そう告げるレックスの口元には笑みが浮かんでいた。
 声の調子から、有澤社長も何か感じ取ったのだろう。落ち着いた声で尋ねる。

『……何か策があると言うのか?』
「あります。1機だったら勝てないけど、有澤社長の雷電と、僕のフォートネクストの2機で協力すれば」
『……聞こう』

 そう言われて、レックスは有澤社長に、自分の作戦を説明した。一言で言えば、至極単純だ。ひたすら耐えて、確実に一機ずつ潰す。それだけだ。ただ、その耐え方にちょっと工夫があるのだが。

「どうです? どちらも4~5発は耐えられるはず。敵の数は4機。いけると思うんですが」
『悪くない手だ。いいだろう、43代にかけて培われた有澤重工の技術と、どちらが上かはっきりさせてやろうではないか。付いて来い。―――いくぞ』
「了解っ」

 雷電とフォートネクストは、再びソルディオス・オービットの方へと前進を始めた。そして、射程に捉えたソルディオス・オービットの一つを、雷電のOIGAMIとフォートネクストのOIGAMI&NUKABIRAの合計4門が同時に火を吹く。轟く砲声と共に、巨大な爆発が空中で巻き起こり、一つ目のソルディオス・オービットが破壊される。
 砲身の冷却が始まり、撃ち終わった大型榴弾の薬莢が排出させる。そこにソルディオス・オービットからコジマキャノンが放たれた。

「僕から行きます」

 フォートネクストが雷電の前へと出て、正面からコジマキャノンを受ける。直撃してPAが一気に剥がれ、機体が大きな衝撃に揺れる。

『AP30%低下…!!』
「よし、一撃目は耐えた…!!」

  ようやく次弾の装填が終了。再び雷電とフォートネクストがタイミングを合わせて、砲撃を行う。だがその攻撃は、ソルディオス・オービットのクイックブーストによって回避される。

『……クイックブーストか』
「あんなのまで積んでるなんで詐欺だ…」
『だが問題はないな。君のNUKABIRAを1門使ってクイックブーストを誘発させ、その直後を狙えばいいだけのことだ』
「なるほど…」

 確かにネクストのようにクイックブーストを吹かしまくっているわけではない。有澤社長の言うとおり、時間差で攻撃を仕掛ければ、まず当てることは難しくないだろう。それに、NUKABIRA1発分の威力が減ったところで、大きな問題は恐らくない。
 再びソルディオス・オービットの一つがコジマキャノンを放つ。今度は雷電がフォートネクストの前へと出て、同じように正面から受け止める。

『私のほうは、3発まで耐えられるようだ』
「つまり、今一撃もらったから…後3発。こっちが後2発だから、合計3回は耐えられるわけか。…これならいける」

 ここで完全に勝利が見えてきた。
 レックスが有澤社長に提案した策。それはフォートネクストと雷電が交互にコジマキャノンを受け止めると言う単純なものだった。そうすることによって、耐久力は2機分となり、それなりの時間を稼ぐ事ができる。装填する時間さえ稼げれば、こちらの勝ちだ。

『ならば、このまま撃ち勝たせてもらう』

 次の榴弾が装填され、発射可能となった。レックスがNUKABIRAを撃つ。それに反応して、ソルディオス・オービットが回避行動に移るが、回避し終わった瞬間を狙って追撃のOIGAMI2発とNUKABIRA 1発が仕留める。
 
『残り2機だ』

 セレンが伝える残りの数を聞きながら、今度はフォートネクストがコジマキャノンを受け止め、ソルディオス・オービットを撃破。途中、ノーマルが数機横槍を入れてきたものの、フォートネクストがNUKABIRAで粉砕し、そこを狙って放たれたコジマキャノンを雷電が受け止める。
 そして最後のソルディオス・オービットが一斉砲撃によって撃ち落された。

『ソルディオス全ての撃破を確認。残るはランドクラブだけだ』
『当然の結果だ。撃ち負けはせんよ、当たるのであれば』

 最大の脅威は消えた。残るはランドクラブのみ。
 ランドクラブは最後の抵抗とばかりにミサイルを撃ってくるが、実弾には特に強い2機。それを物ともせず、OIGAMIで砲撃を叩き込み、問答無用でランドクラブを沈黙させる。
 これで完全にミッション完了である。

『ミッション完了。よくやった』
「……AP70%低下…。あと一撃もらったらやばかったな…」

 機体のコンディションを見れば、状態はほぼ真っ赤だった。ほぼ確実に勝てる算段ではあったが、やはり落ちるか落ちないかの瀬戸際と言うのは気持ちのいいものではない。
 と、そこで有澤社長が一言告げてきた。

『例えAPがゼロになってネクストが破壊されたとしても、リンクスの命は守ってみせよう。有澤重工の装甲は、そのためにある』
「………社長」
『ミッションは完了だ。撤収する。それと――レックス。君には感謝させてもらおう。チャンスを物にさせてくれたのだからな』

 そう言って、有澤社長の駆る雷電は移動を開始。それを見てレックスのフォートネクストも後に続くのだった。
 ちなみにこの戦闘の結果が各企業やカラードへと報告された後、有澤重工の売り上げが少なからずアップしたのはただの偶然ではない。

~おまけ~

『時に…一つ尋ねたいことがあるのだが』
「…?なんでしょう?」
『君の機体は両腕部と背部の兵装を同時に使っていたが、あれは一体何だ?』
「あー、あれはですね。ちょっと言いにくいことなんですが――――」
『……トーラス製だと…。だが……ふむ…』
「…?」
『一つ、君に頼みたいことがある』






―――数日後。トーラス第3開発部にて。

「主任。以前、うちのFCSを使ってくれたリンクスから、同じ物をもう一つもらえないかと。なんでも、そのリンクスの知り合いがほしがってるらしいです」
「なんだと…? 一斉発射のロマンをわかってくる者が他にもいたのか!! よし、了承したと返答しておけ!!すぐに製作に取り掛かるぞ!!」
「わかりましたっ」

To Be Countinue……


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移設元コメント


☆作者の一言コーナー☆
 えむです。
 対ソルディオス・オービット戦の巻。もしHARDにしてたら生きては帰れなかった…。
 
 では、今回は手っ取り早くコメント返信をば…。

>良くなっているじゃないか・・・。指摘された点をほぼクリアしている・・・と思う。これは良いVOB戦。だが一つ誤字報告だ。シャミアの名前が「シャミア・ラヴィヴィ」になっている。ちゃんとラヴィラヴィ☆って呼んであげないとフォートネクストを穴だらけにされてしまうぞ!
 完全にラヴィヴィだと思い込んでいました…。ラヴィラヴィ☆って呼ぶんですね。覚えておきますっ。

>前回読んだときに気になった点はほぼ修正されてます、お見事。
>気になっていた点も見事になっていました。
 ありがとうございます。再トライした甲斐がありました。

>しかし、ダリオが退場したということは、お茶会に出るオーメル代表は、やっぱりジェラルド?それともリザイアが来るのかな?
 ………そこを考えてなかった…(マテ

>この後、どう話が動くか…面白くなってきました!
 こうご期待。でも、期待しすぎちゃ駄目ですよ…?

>ダリオは退場してゲイヴンの世界に
>↑尻を拭う毎日「悪くない…」アッー! しかしあっさりイったな奴さん
>↑続き。きっと次回の茶会で包帯グルグル巻き姿で登場して皆からプッwダセェwwwって白い眼で見られるハズさ! --
>↑そこで「貴様ら全員尻を出せ!俺が拭ってやるうぅぅあああ!」となって、いやいやwww
 最初なんでこんな流れになるのかわからず首をひねったあたり、まだまだのようです。
 しかし、とっつきで決めただけで、こんな流れになるとは…恐るべし。

>待てトラセンドは上下に真っ二つになっただけだぜ。とっ突きがダリオ自身に当たったとは書かれていないじゃないかw
 ナイス突っ込み。

>誤字報告
 ありがとうございました。毎度お世話になります…。

 以上、コメント返信でした。
 また指摘突っ込みその他、よろしくお願いします。

 なおここに来て明らかにしますが、この小説の7割は勢いとその場のノリで書かれています。今後の参考までにどうぞ(ぇ。

 さて次回は、アルゼブラのネクストチームとの戦闘の予定。ただし実戦じゃなくシミュレーターで…ですが。
 
 では、ここまでお付き合いただきありがとうございました。(=▽=)ノシ


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