Written by へっぽこ


なぜ俺を誘ったのか。

思えばずっとそのことが気がかりだった。
思いきって聞いてみた。
もう、二度と聞ける機会もないだろうと思って聞いてみた。
それはカーパルスでのこと。
「お前がオレに似ていると思ったからだ」
と。
男は俺に言った。
とてもシンプルな理由。
同族愛好。一寸すれば嫌悪に傾く、脆くて薄い慈しみ。
自分がかつて犯した過ちを、もしもなかったことにできたなら、とか。
この男は夢を見ている。
俺に感情移入しながら、夢を見ているのだ。

――嗚呼、かわいそうに。
なんと哀れな王さまは、自分の古びた王冠を、それでも捨てることができぬのだ。

でもね王さま。
残念だけれど。
僕とあなたは違うのです。

あ!
ほら見て王さま。お迎えが来たよ。
一列に並んで、城壁へと迫る鉄の軍勢が、ひい、ふう、みい、―――って、あれは、……シリエジオ?
 
 
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決断してからは早かった。
レイテルパラッシュはブースターを吹かし、両の肘を伸ばす。
銃口はまっすぐ前を向き、機体を覆う光球はパリパリ、と。
どうあれウィン・Dは戦う道を選んだようで。
思えば、もとよりそれしかできない娘であったように思う。
だが、それは決して悲しいことではない。

さて。
このままウィン・Dが進めばニ対一のネクスト戦が始まる。
いくら彼女が特Aクラスであろうとも、少なからず傷を作るだろう。
どころか撃墜されてしまうかもしれない。
そしてそれは絶対に防がなくてはならないことなのである。
たとえこの戦闘で勝てなくとも、戦闘そのものを逃避してでも、彼女の撃墜は防がなければならない。
彼女の失墜は、同時に“我々”の敗北でもあるのだ。

それはなぜか? 
むろん答えは、彼女がアイツにとって憧れの一人であるからに他ならない。
セレン・ヘイズとはまた別の憧れ。
あれがラヴなら。こっちはさしずめヒーローだろうか。
カテゴリ的にはダンと等しく、しかし尊敬の念は人一倍。
おそらく。
この世界で誰より、彼女の敗北を見たくない、と、そう思っているのが首輪付きなのだ。

だからこそ彼女の敗北は諦観を生む。
事ここに至っては、“だめかも”の一考が命取りになる。扉を強固にしてしまう。
せっかく私が動けるほどに回復した精神だ。
このまま繋ぎ止めて、叩き起こさねばならない。
尻をひっぱたいてでも、送り出さねばならない。
それがあいつのためであり、私の願いでもあるのだ。
故に、ウィン・Dを落とすわけにはいかず。
そも何よりウィン・Dは戦力としてもこれ以上ない切り札だ。

そういうわけであるから、このまま放ってはおけない。助けねばならない。
その分、エイ・プールへの補佐は遅れてしまうが、まあ、向こうは向こうでうまくやるだろう。
あの子は電話を取り、そして依頼を受けたのだ。気力は十二分にあるはずで。
少なくとも、ただでやられるほど馬鹿な娘ではない。
彼女は一人ではないのだ。

そして、どうしたって越えなければならない障壁、最大の敵であるホワイトグリントを倒すには、やはりレイテルパラッシュが必要だ。
あいつにとっての。敵として最強、味方として最強。二つのイメージはほぼ等価である。
後は我々の補佐次第。それで白い鴉は水没する。番人は消え、鍵が開く。
開けば届く。引き上げられる。告げらられる。
断頭台は程遠い、と。誰かが声をかければよいのだ。

レイテルパラッシュは駆けていく。
私の体を透過して、細い小道を駆け抜けていく。
ゆっくりと。
毎時数百キロを超す超高速で、ゆっくりと。
時間が圧縮されていく感覚と空間が、ことさらのっぺりと塗りたくられ。
ねじれる歴史の中で、私は自身のセカンドを呼び寄せる。
輝かしくブースターを光らせるレイテルパラッシュ。
ああ、懐かしい。
その影を今、私のネクストが踏むのだ。

「やあ、待たせた」
彼女の背に語りかける。
ラインは繋がっている。この声は彼女の頭に届いているはずだ。
「不足だろうが、私が代役を務めよう」
記憶の片隅にあるレイテルパラッシュの背中が想起される。
彼女はふっとブースターを切った。ざざーっと火花を散らして滑るレイテルパラッシュ。のち、止まった機体から通信が入って。
≪それはとても助かる。御覧の通り、ここはいつかのクラニアムだ。あいつの代役というのなら、この先にいる二機のうち一機を引きつけてほしい。倒さなくてよい。逃げ回っていてよい。できるだけ長い時間、戦ってくれればそれでいい≫
そう、ウィン・Dはさらさらと答えた。

「……驚いた。私が誰かを聞かないのだな」
≪背後にいながら撃つこともせず、あなたは“代役”と口にした。何のと問うのは無粋だろう。
 ――もう、ちゃんと理解できている。ここは夢の中なんだろう?
 そしてあなたは“こちら側”の人間だ。それにね、私はそれと良く似た構成の機体を知っているよ≫
私がレイテルパラッシュの背中を想起したように、彼女もまた、我がネクストに面影を見ている。
「そうか」
なんと恐ろしい娘だこと。そして彼女は私に対して的になれと言ったのだ。
それは私ではアレらに勝てないだろうと判断してのこと。
無論、その判断は正しい。
何せフレームからして旧世代の代物で、性能差は歴然であるのだから。
私に片方を引き付けさせて、そのうちにまず一機、その後に残りを。
一対一を二連戦しようというのがウィン・Dの算段だ。

よい判断だ。
自身の置かれた状況と、自分のすべきことと、それを達するには自己の力をどう使えばいいのか、この娘はよく分かっている。
レイテルパラッシュは高機動型のネクスト。ゆえに決して高くない防御力。
万が一をなくすには、意識の割り振りが肝心だ。何にどれだけ集中すべきか。ある程度まで相手を絞ることが大事なのである。
さてそんなウィン・Dの僚機を務める私は、この場合どうするべきだろうか。
彼女が敵機をまず一機砕くまで、もう一方の敵と戦いながら、逃げながら、つぶさに待つか。
大変よろしい。
サシの勝負であれば、ウィン・Dは負けないだろう。そういう実績がちゃんとある。
だから私は、ウィン・Dが勝つまで、文字通り“的”として、注意を引きつつ戦い逃げればいい。
それが最も損害低くすむ方法で、効率がよい。
と、確かに思いはする、の、だが。

右手にライフル。
左手に剣、――を模したアサルトライフル。
さあ、私は私で、できることをしよう。
私はこれでも戦士なんだ。あんまりなめてくれるなよ小娘。

「始めよう」と、一声。
レイテルパラッシュは再びブースターを吹かす。
鉄幕が上がる。
その舞台は、いつか世界を分けた大戦の、極々小さな陣取り合戦の再演である。
天井は高く。長い小道を抜け、開けたステージは殊更大きく。
クラニアムの中枢空間へと踏み込んだ私たちは遠方に敵機をとらえた。
影二つ。段のついた施設中央部。
ロックするには未だ射程外だが、とらえた二点の機影に向けて私は肩のグレネードを撃つ。
いや放(ほう)ったと言った方が正しいかもしれない。
発射の瞬間にクイックブーストを重ねて、初速を上乗せ、放たれた弾丸は弓なりの軌跡でもって一秒後に着弾する。
無論、いくら初速に挙動でアシストをかけても、この距離、もとより弾速の遅いそれが当たるとは思っていない。

グレネード(それ)はただの牽制。
案の定、敵二機はこともなげに回避する。
だが、その二つの回避行動は重ならない。
アンサングは宙へ飛び、スピリットムーンはクイックブーストによる地上ドリフト。
すなわち敵は二手に分かれた。
ならうように、先行するレイテルパラッシュは空へ。
その彼女の眼球は、かつて屠った敵機を見ている。
結構である。
接敵は彼女が先だ。
グレネードの着弾からおよそ三秒。アンサングとレイテルパラッシュが空中にて戦闘を開始する。
次は私だ。

時間を稼げと彼女は言った。
ああ、良いとも。
無限の時間をあなたに贈ろう。
そうして私は、施設中央まっすぐ伸びる大廊を残る一点、スピリットムーン目掛け地を駆けた。
ヘッドオン。接敵、一次ロック圏内。
それで十分。二次ロックを待たずに両ライフルの引き金を引く。
それをスピリットムーンはかわさない。愚直に前進を続けるのみである。
そしてそれは私も同じだ。
このままスピリットムーンともども前進を続ければ、一秒足らずで衝突するであろう距離とベクトル。
投げ捨てられたマシンガン。唯一の飛び道具を捨て、正面からでも火が見えるほど、背のブースターを全開にぶん回し、スピリットムーンは突貫する。

そして。
そして瞬間、私の視界は焼きついた。
真っ白く。ぶちまけられたホワイトカラー。
何も見えなくなった視界はどこか静謐さをたたえ、しかしその向こう側では悪鬼のごとく、スピリットムーン(それ)は紫電を振るおうと片手を振りかぶる、――いや、きっと、ふりかぶっているのだろう。
展開された光の巨刀を脇にしたためて、フルスロットルで駆ける鬼。
さて、ここでたとえば肩上のグレネード、や、たとえば両手のライフル、あるいはその両方を放つとする。
正面きっての攻防戦、ロックできずとも当たる可能性は高い。が、はたしてスピリットムーンはそれらをかわすだろうか。
溜めた自身の攻撃をやめて、回避行動をとるだろうか。
否。どれを放っても、鬼は避けなどしないだろう。攻撃を続けるはずだ。
そして、私の放つどの弾丸が仮に当たろうとも、鬼の前進は決して止まりはしないだろう。

一直線に最短距離を最速で駆け、圧倒的な一刀で持って相手を屠る。
その後を一切考えない、今この瞬間こそを全とする特別攻撃。それがアレの戦い方だ。
すなわち、事ここに至っては鬼が止まることはありえなく、もはや私は一刀のもとに叩き伏せられるだけの雑兵だ。

―――と。
思うだろう?

だが違う。
迷わず駆ける鬼は、なにより私の装備を甘く見た。
ライフルなどでは足止めにもならぬと、グレネードごときでは一閃を防げぬと、数秒とかからぬうちに貴様を両断すると、正面切って看破し、手にしたマシンガンすら捨てて刀を握りしめた。
肉を切られても骨を断つ。断つ気でいる。断てる気でいやがる。
それが鬼の解答。今となっては唯一無二、神速の紫電である。

甘い。
鬼(おまえ)は私の瞬間火力を甘く見た。
そしてなにより。
なにより私は知っているんだ。
お前が首輪付きのはらわたをガリガリ削ったその瞬間を。
そう、本日この場は“あのクラニアム”のリバイバルであり。

初見殺しは初見であるがゆえに意味を成す。
私はもう知っているのだ。

ゆえに焼きつく視界は意味がない。
駆ける鬼。当然その姿は見えないが、私は機体を走らせる。
真正面。踏み込む。瞬間吹かすオーバードブースト。
鉄の巨体と鉄の巨体が肉薄する。
未だ白い視界。まるで深い霧の中だ。
そして。
そして私は突きたてるのだ。
深い深い霧の中で、向こう側、想像の鬼へ向けて、突き立てるのだ。
記憶の中の、姿見えずとも確かにそこにいるであろう幽鬼にめがけ、突き立てるのだ。

それは一振りの剣。

剣――のような形をしたアサルトライフルである。
ゴシャリ、とひしゃげる何かの手ごたえ。
そして霧は晴れる。
今まさに刀を振りぬこうと体正面にたたんでいた鬼の腕もろとも。
私は鬼の体に愛用のアサルトライフル(マーヴ)を突き立てた。

視界が戻る。
ひしゃげた鬼の腕はだらしなく、漏れ出る紫の光がうねっている。
その暴発する光の向こう、胸部が歪につぶれていて――。
私は間髪入れず、肩越しのグレネードで鬼の頭を吹き飛ばした。
バックブースト点火。
火花を散らす標的から私は離脱する。
離れ際にライフルの照射と、再びのグレネードのダメ押しであっけなく。
鉄の鬼は崩れ落ちた。

私の損害は前面の装甲一部と突き刺したアサルトライフル、そして肘。
もはや使い物にならなくなった片腕をライフルごとパージする。
少しだけ身軽になった体で、宙を見れば、我々とは対照的に、複雑で、めまぐるしく、ぐるぐると立体的に戦闘をこなすアンサングとレイテルパラッシュ。
正直、このタイマンに水を差すのはいささか憚られるところではあるのだが。
私はライフルを掲げ、アンサングをロックする。
そして気ままに横やりを。
ドンドンドン、と適当にライフルを照射する。今度は二次ロックをしっかり待ってから、撃つ。
回避される。全弾、かすりもせず、背後の機械群に弾痕を残すだけであった。
そしてアンサングの敗北は決定した。

私はライフルを撃った。
アンサングはそれを回避した。
弾丸は全部外れた。
だがアンサングの敗北は決定した。
なぜなら、ウィン・Dとの戦闘においてはその回避行動が何の意味も持たないからだ。
むしろ限定される次の行動。
遅れるウィン・Dへの対処。
それは一手。ただ一手、アンサングは私のライフルをかわしたがために遅れたのだった。

それが命取りとなった。
レイテルパラッシュの背負う、弾速早いハイレーザーの青い軌跡をそれでもギリギリかわすアンサングだが、瞬間迫ったウィン・Dのブレードをかわしきれず切り裂かれた。
無論鬼の紫電とは比べるべくもない、軽快な一撃。一刀両断なんてものでは全然なく。
腰からコアにかけてを、光の剣が舐め削る。
しかしそれでも、天秤は大きく傾くのだ。
戦闘挙動に少しでも悪影響が出てしまう損害は、ウィン・D相手には致命傷にほかならない。

勝負はその十秒後に決した。
運動機能を減退させたアンサングに勝ち目などなく。
ずるずるとダメージを蓄積するアンサング。
対照的に、優雅に回避しては、精確無比に打ち抜いていくレイテルパラッシュ。
大した盛り上がりもなく、アンサングは膝をつき、目の光は消え、やがて動かなくなった。
地味な終幕。
だが、ネクスト戦などおおよそこんなものである。
大した盛り上がりなどはなく、より弱い方がじりじりと削られていくのだ。
現実にドラマなどほとんどない。
砂山を波が何度も何度も押し寄せては少しずつ裾野の砂を奪っていくように。
より弱い方がただただ負ける。それが常である。

かくして閉幕。
アルテリアクラニアムは終わりである。
まるで当然だとでもいうように、崩れたアンサングには目もくれず。
≪まさかあなたが先に倒してしまうとは思わなかった、が、大丈夫なのか?≫
ウィン・Dは言う。
それは私の切り落とした片腕についての言及であろう。
「よい。気にするな」
攻撃力は半分以下に下がるが、しかし移動する分には影響はない。
それだけで十分である。なぜなら。
「私はお前を正しい舞台へ案内するためにここへ来た」
そのためだけにここへ来た。
イレギュラーな出来事で、クレバスへ落ち込みオペレーターとすらはぐれてしまった彼女を繋ぎなおす必要がある。
ここから、私の真の役割がスタートするのだ。
「ついてきなさい。皆と合流しなくては!」

告げる。
そしてフィールドラインを繋ぐのだ。
行き先は門(ゲート)。現在進行形で戦争中のラインアークへ。
舞台の改変が始まる。
ノイズが走る。
膝をついて黒煙を上げるアンサングはモザイクに解体され、スプリットムーンは幾何学的に撹拌、蒸発する。
パタパタと壁面が、床面が、天面が、リバーシブルのパネルのようにくるくるとひっくり返り、紺色のクラニアムはみるみる世界を変えていく。
天の機械群は溶け、ひっくり返った天井はすがすがしい空色を呈し、雲が浮かぶ。
と、瞬間そこは確かな空と化し太陽が輝きだす。
壁が取り払われ、床面段差は引っ込み、溝はならされ、一本の長いハイウェイへ。
そしてうっすらと聞こえだす。それは波の音。
「どこへ?」
ウィン・Dが問う。
「ああ、行先はライン―――」

ガチン。
ラインアークと言いかけて、瞬間、世界が凍った。灰色にかたまった。
色があるのはレイテルパラッシュのみで。その他一切が凍りついた。
――私を含めて。
口が動かなくなった。まばたきもできない、どころか、心臓すら止まっている。
突如世界を凍らせたノイズは“私ごと”全てを覆った。

強引に、握りつぶされる。
強引に、塗りつぶされる。
描きかけのラインアークを。
今や宙ぶらりんのここはクラニアムでもなければラインアークでもない、狭間の虚空間。
ゆがんだ空に支配された灰色ノイズの狂世界。
息苦しく狭苦しく、ぎちぎちと身を押し潰すような圧力だ。
インターセプト。
幕間の隙に舞台を繋ぐ線を切られた。

やられた。
いたのだ。敵が。
確固とした、私たちにとっての悪意を持った敵が。
“さめる”ことをよしとしない、煮えたぎった偽りの存在。
本来ならばありえないことである。
なぜなら“こいつ”は現実の首輪付きと、大勢多数の中の一敵である以上になんら関係がないからだ。
私と正反対を行く、俗悪の怪物。
たとえるならそう。
悪夢。
それは―――――。

     ◇

黒煙を上げたクレイドルが、落ちてきた。

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黒煙を上げたクレイドルが、落ちてきた。

落ちてきて、光を失った私の僚機を押しつぶした。
なおもクレイドルが落ちてくる。
二機、三機―――。
落ちて、クラニアム中央路から塗り替わりかけのハイウェイをことごとく砕く。
もうもうと黒煙が上がり、砕け散ったコンクリが浮かぶ中で、足場を失った私は宙へ飛ぶ。
≪よう。ブラスメイデン≫
飛び上がった私のさらなる頭上、灰空の中から現れたそれは隻腕のネクストである。
レイテルパラッシュに打ち抜かれ失った腕をそのままに、破損部から覗くハーネスが血管のようにのたくっている。
リザ。
この夢において半人半機械の、かの男が操る機体。

オールドキング。

分かっている。
この男は真実ではない。あくまで、彼の想像による産物だ。
現実ではオールドキングを敵として倒し、クレイドルを救った首輪付き。
だが。
それでも脳裏をよぎってしまう。ぬぐい難い悪夢。
それは例えば。
例えば、首輪付きがオルカ旅団に入団した、とか。
そこで出会ったオールドキングと一緒になって、クレイドルを襲う、とか。

そう03のあの事件だ。
あれに“悪”側として首輪付きが加わっていたらどうだろう?
一億人の人死人。
はたして、そんな世界(ルート)がなかったと言えるだろうか?
私の依頼を、他に受けるべき依頼もなかったから、という理由だけで受けた男だ。
それがマジなら、ひょっとすると首輪付きという存在はとんでもなく、危うい、の、では。と、ふと思う。

私は測りかねている。
別に知ったかぶるつもりはないんだ。セレンのように。
相棒ぶるつもりもないよ。ダンのように。
同僚ぶるつもりもなく、また友人ぶるつもりもない。エイやメイのように。
私と、彼との関係性など分からない。

その実、私は彼が分からない。
本当に、首輪付きのことは良く分からないのだ、私。
ぜんぜん何も、彼のことは分からない。
彼が、私のことをどう思っているのかも、無論知らない。
とか。そんなことを思う中で、関係性が見えてくるわけもなく―――。
それでも考えてしまうのは、とある仮定の物語。

もし、彼が私のあの依頼を受けなければ。
どころか。
もし、彼がORCA旅団に加わっていたら。
私はどうなっていたのだろうか。
もし、あのクラニアムで、向こう側に彼が現れていたら。
私は。
…もし。
……もしも。
―――殺、されて。

「違う!」
私はぶんぶん首を振る。
らしくない。
こんなの、らしくないぞウィン・D。
わかっている。
“もしもこうなっていたら”?
は、知ったことか!
私が知っているのは、私の依頼をちゃんと受けてこなしてくれた首輪付き(ヒーロー)だ。
それ以外の首輪付きなど知らない。

そうだ。
だからオールドキングは敵なんだ。悪であり敵なんだ。私の。
そして、“彼”にとっても、オールドキングは敵なんだ。
私が言うんだから間違いない。
だから戦う。
私のために。私のヒロイズムのために。
“いふ”に繋がれた弱い自分を蹴り飛ばす。
私は戦う!

システム、戦闘モード起動。
ハイレーザーキャノン、セット。
矛先を向ける。リザへ。
セレンは取り返せなかったが今度こそ、逃がしはしない。
きっちり、この場で、アレには退場していただく。
砕けろ!

―――と。
決意固めたその時だった。

≪降参だ!≫

出鼻をくじく白旗。
≪降参する! 待った! 撃つなよ? ごらんのとーり、リザは今通常モードだ。つまり、非戦闘モードだ。もう一度言う。撃つな?≫
銃を握るリザの隻腕は垂れている。肩のミサイルポッドも非展開だ。
「お前、なんの―――」
≪待てよ。待て待て。銃口こっちに向けたまま熱くなるなよ。
 怖いなあ。
 オレは別にあんたと戦いに来たんじゃあないんだよ≫
「だったら、さっきのクレイドルはなんのつもりだ。私の僚機を潰したクレイドルはなんなんだ!」
ひと所にホバリングを続けるリザと、同高度を保ちつつ私は敵をロックし続ける。

≪いいや? 狙ってないぜ。本当に。狙ってやったわけじゃないんだ。
 すまないが、なぜかオレの周りに時折降ってくるのさ。
 理由は、まあ、首輪付きに聞いてくれ?
 だが“かわせるだろ”。あれぐらい。ネクストなら。現にあんたは潰れていないじゃないか≫
「あれが事故だとでも」
≪ああ。事故だね。………まあだが、迷惑をかけたなら謝るよ。すまない。許してくれ。僚機は残念だったな≫
だとしても。
「いいや。許せないね」
≪そー言うなよ。つれないねえ≫
オールドキングはそう答えて、から。
≪本当に敵意はないのさ≫
言いながら自身の武装の、その一切をパージした。

そして―――。
コアが開いた。
とても暴力的に、鉄板が押し開きコアが開いた。
さながらつぼみが開くように。通常の挙動ではない。
コア正面の装甲がパキパキと音をあげ、ひび割れ、ギギギと悲鳴をあげながら歪にねじ開く。
それは銃弾が貫通した鉄板の裏側を思わせる、ゆがんだ鉄花弁たたえた花のごとく。
開かれたコアの中。
リザは自身の脈打つ心臓、繋がれた鉄人をあらわにする。
それすなわちオールドキングである。
生き物めいたドクドク脈打つ無数のコードで、十字架に張り付けられた聖人よろしくがんじがらめで吊り下げられた機械人間。

滴るオイルとクーラント。噴き出す蒸気と排気ガスのその只中。
オールドキングはゆっくりと顔を上げ、目を見開く。
「お前がオレを、今ここで、どうしても撃つというのなら撃てばいい。だがその前に話を聞いてくれないか」
それはどこかすがるような、切実さを滲ませた懇願だった。
指は引き金。ロックしたまま私は問うた。

「まず答えろ。貴様、セレンをどうした?」
「ああ彼女なら無論届けたさ。アレの、――首輪付きの指示なんでね」
作戦行動しょっぱなのイレギュラーを気軽く片づけるオールドキング。それも理由は“彼”が指示だという。
そうか。と答える。すなわち、セレンはすでに最果て。
この夢の最深。中心。根幹に、彼女はいるのだ。
さあどうする?

そうしてしばしの沈黙。
口を閉じ、瞬きすらせず、むき出しの眼球の暴力的なまでのオールドキングの視線。
一向に引き金を引かない私に対して。何も言わない私に対して。
その沈黙を是と取ったのか、オールドキングは語り出す。
「なあ。あんた、知っているのか?」
それは、三つの世界のその一遍。
顛末を迎えた後の、未来(これから)の話だ。

     ◇

「なあ。知っているのか? 繋がって。ちゃんと理解したのか? ――何を?って、首輪付きを、だ。」
ここはあいつの脳の中。
「ここはあいつの心の中だ。
 分かっているのだろう? 流れてくるだろう?
 今も、絶えまなく、流れてきているはずだ。
 そしてあんたは気付いたんじゃないか?
 首輪付きが、どれほど怖い存在なのかということにだ」

「それは――― 「首輪付きはウルナを破壊した」
オールドキングが私を遮る。

「アルテリア・ウルナを、破壊して晴れてORCAに入団を果たしたあいつは、オレとともに03を落とし、一億人を殺した。
 それからローディーを殺し、リリウムを殺し、オッツダルヴァを殺し。
 ―――ウィン・D・ファンションを殺した。」

「でもあいつは――― 「そしてセレン・ヘイズも殺した」
オールドキングが私を遮る。

「そうして、更に殺して、もっと殺して、さながら人類種の天敵がごとく、自身がこと切れるまで殺しまくった。
 さあどうだ?
 どう思う?
 おい。聞いてんのか?
 首輪付き(あいつ)はこんなことを簡単にやってのけられるほど、“すげぇ”やつなんだぜ?」

今、こいつは何回殺したと言った? ふとそんなことを考えた。
胸の中に確かに広がる黒い影。
この男の話は聞くべきではないのかもしれない。
でも―――。引き金が。

「な?
 だから思うだろ?
 “世界のため”にも、こいつはここにいるべきだ。
 な?
 せっかく築いたあんたの平和な世界を、首輪付きに壊させないためにも、こいつを“目覚め”させてはいけないよ。
 目覚めなければ、世界は平和のままさ。
 力の均衡が崩れるリスクは減るし、思いつきのような大殺戮なんて起きるわけがない。
 
 でも、首輪付きが目覚めたらどうなる?
 誰か“わるいやつ”にそそのかされて、その気になったらどうする?
 大虐殺が起きないと言い切れるものか。
 だって、そういう道があったと、首輪付き本人が夢想しているんだから。
 ならば目覚めないべきだろ。
 危険は冒さないべきだろ。
 そう思うだろ?
 
 ―――心配はしなくていい。
 別に目覚めなくったって、不幸じゃない。
 それにオレがちゃんと面倒見るさ。
 オレは“ここ”が好きだし、あいつのことも好きだから
 あいつがここで“正しく”やっていけるように。ちゃんと面倒見るさ。

 けれどセレンはいただくよ?
 首輪付きがそう願った。
 それは無意識かもしれないが。
 “本物のセレンが欲しい”と、首輪付きは願った。
 だから、セレンには人柱になってもらう。
 なに、人類種の天敵を抑え込むんだ、たかだか眠り姫を一人作ったって、いまさらどーってことないさ。

 ロマンチックじゃないか。
 伝説のコンビ。リンクスとそのオペレータ。二人揃って永遠に眠るのさ。
 素敵だろ。
 この楽園で。
 素晴らしいことさ。
 それは幸せだよ。
 最高で極上の幸せだよ。
 なんの不都合もない。
 なんの不安もない。
 痛みも苦しみもない。
 自由に気ままに好き勝手に、生きる。
 生きていける。
 夢さ!
 とびきりハッピーな夢を見るのさ。

 ―――ああ、そうだ。
 お前もこっちに残るといいよ。
 見守ろう?
 参加しよう?
 おい、あんたは知ってるか?
 なぁ? 
 あいつが、お前をどう思っているのか。」

「……それは――「教えてやるよ」
オールドキングが私を遮る。

「オレが教えてやる。
 好きなんだぜ、あいつは。
 あんたのことがな。
 明確に愛情をもっている。
 惹かれているなんて生易しくなんかない。
 あいつはあんたに惚れているのさ。
 その上、尊敬もしている。
 どころか“あの時”なんぞはあんたの色香にメロメロだったさ。

 どうだ?
 なんなら。
 なんだったら、あんたもこっちであいつと一緒に暮らさないか。
 楽しいぜ?
 辛いことはなぁんにもない。
 苦しいこともまぁったくない。
 
 そして君はネクストを降りるのさ。
 ウィン・D・ファンションはただ一介の人として、幸せに暮らすのさ。

 戦う必要なんてもうない。
 敵なんていない。
 みんな仲間さ。
 仲良く楽しくやっていこう。
 大丈夫さ!
 ここでの会話なんてすぐに忘れて。
 血濡れの過去なんて無かったことにして。
 気に病むことなんて全部消して。
 手を洗って。
 顔を洗って。
 歯磨きしてさ。
 白く白く。
 生きていこうや。
 夢をみよう。
 パーフェクトな世界さ。
 一緒に、
 あいつと、
 完全な世界を見よう。」

私の世界が揺らいでいく。
ぐらりぐらり。
胸にはびこる影は一層色濃く。
嘘が私を弱くする。
偽りの、夢のような幸せな世界夢。
なんて甘美な――。
涙がでるよ。

私は、コアの右首元のハッチを開いた。
システム、待機モード移行――。
背中のコード類をパチンと引き剥がし、リンクを断った。
これでブースターは切れたはずだが、なぜか機体は落ちなかった。
灰空を漂うレイテルパラッシュはまるで重力から解放されたように、浮かび続ける。
その、レイテルパラッシュの首元、コアの上に私は降り立った。
どろりとした空気が一瞬。けれど、一呼吸のうちに、毒される私の感性は、すでに諸々の違和感などなくし。
ただ正面の機械男を見下げるばかりだ。

カタカタと歯がなった。
体がガタガタ震えている。
“私を殺した”あいつの心に浸っているのだ、怖くないわけがない。
その空虚な冷たさに、心までひりつく。
魂が怖い怖いとないている。
一方で、夢のような世界への旅立ちに心底嬉しがっている。
飛び込めば今感じている恐怖は一転して全てがバラ色に変わるだろう。

わかる。わかるよ。
オールドキングの誘いは素晴らしい。
素晴らしく、合理的だ。

確かに私は首輪付きを連れ戻しにやってきた。
だけど。
諦めるのも。
逃げるのも。
どうして断罪できようか。
オールドキングの語るそれが間違いだと、どーして言えよう。
私には今のオールドキングを説き伏せられるだけの、確固たる証拠など持ち合わせていない。
正義の敵は、別の正義で―――。
今こそ勇気を振り絞る。
私は答えた。

「確かに、それは幸せかもしれない。
 本当に、当人にとって、完璧な幸せかもしれない。」
―――それでも。
震える体を、凍える心を、おびえる私を、ぎゅっと抑えて、吐きだした。
私はとってもエゴイスト。
そんな私のなけなしの勇気。
それはこんな言葉。

「それでも、私は“現実”を生きたい。みんなで」

真実が、私を確かに強くする。
「そうか。残念だよ。ウィン。ならばもう君に用は無いな。残念だが首輪付きは渡せない。あいつもそれを望んでいない。悪いが、消えてくれ」
「いいや。消えるのはあなたの方だ」
「ネクストを降りたあんたに何ができる!」
オールドキングは声を張る。
私は震える声で答えた。
「なんでもできるさ」
だってここは、夢の中なんだ。それも幕間の虚空間。
そもそも何の考えもなく、ネクストを降りるわけがないじゃないか。
それじゃあ三流もいいところだよ、王さま。
教えてあげよう。
私には、守護天使様が付いている。
あるいは夢の道先案内人。

「次は私の夢を語る番だ」

瞬間、リザの背面。虚空を割いて片手のネクストが現れた。
それはクレイドルに押し潰されたはずの私の僚機。ボロボロではあるが。
残った腕武装を投げ捨て、リザの腕を掴むと、その付け根にグレネードを叩き込む。
引きちぎられるリザの腕。
その背になお叩き込むグレネード。ブースターはACにとって急所である。
「くそ! てめえは無抵抗の相手も殺すのか!」
両手をなくしたリザの、その頭部を握りつぶすように抑え込む私の僚機。
「違う! いや、違わない!」
「頭おかしいのか、てめえ」
ブチブチとコードが千切れ、機体から投げ出されたオールドキングは言う。

確かに、おかしいのかもしれない。
この時私にはただ見えていた。ゴールが。
取り戻すべきものと、倒すべき、否、殺すべき人間が、見えていた。
これは正義と悪の戦いではない。
正義と正義の戦いで、やはりエゴとエゴの戦いなんだ。
無数の夢の潰し合いで、食い合い。
私の求める“あいつ”は一人頭の中で、むざむざ自己嫌悪と憎悪を抱いて平行世界を夢見る自分と共食いしているにすぎない。
そんなあいつのエゴを、私は私のエゴで喰らおうと思う。

だから。
だからさ。
ああ、私の私の首輪付き。
今こそ想い出してくれ。
全てが終わった後の、たあいない日常の記憶。
ともに歩いたまるで平和な街の記憶。
私と見た、あの夕陽を、空を、世界を。

―――美しかっただろう?

「なあ。そうだろ首輪付き」
そして私はレイテルパラッシュから飛び降りた。
リザから切り離されたオールドキングを追うように。ふっと、コアから飛び降りた。
万雷の夢を背負う、人と家と道と丘と森と川と山と海と雪と雨と風と月と太陽と笑顔。
羽ばたく翼は無いけれど、私は空を舞うように、緩やかに漂う。
そして静かに、私は“大地に降り立った”。
オールドキングも等しく大地に転がり、土と草にまみれた。
ふかふかの大地。土と花と木々の大地だ。
燦々輝く太陽が、私と機械男を照らす。ともにやわらかく。
それは庭園。七色の花の咲き誇る美しき花園。

パイロットスーツはドレスに。
コンバットブーツはガラスの靴に。
頭にはティアラ。
胸元をきらきらとネックレスが彩る。
自然赤らむ私の頬は、きっといつか見た夕陽のようであるのだろう。
柄じゃないにもほどがあるが、夢見るだけならタダである。
どこに出てもこっぱずかしいシンデレラ。
私は胸に手を当てて感謝する。
ありがとう、首輪付き。
想い出してくれて。
そうして私は“いつも護身用に持っている45口径を腰のホルスターから抜いて”、大地に這い蹲る機械男へ銃口を向けた。

オールドキングはそんな私を見、激昂する。
「は!そんななりをしておいて、なお銃は手放せないか愚か者!
 いいぞ! 呪われるがいい! 
 見せてもらったぞ、狂人め! 貴様には安らぎなどない!
 こんなものは偽りだ。一生辿り着けない幻だ。
 この先、世界がどんなに平和になろうとも!
 たとえネクストを降りようとも!
 貴様は永遠に苦しむだろう!
 その時になって後悔するがいい!
 殺戮者め!」
「あーあ、うるさいなあ。ごちゃごちゃと。泣くなよ王さま。私は、私の世界を守りたいだけ。守るだけ。私の。邪魔をするな」
立ち上がろうとした機械男の膝が弾けた。
鉄の肉体はいたるところで錆が膨らみ腐食が進み、みるみる崩れていく。
もはや立つことも、伸ばす腕すら失って、それでも目の血のように赤い輝きだけは失わずに。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――」
耳をつんざく機械男の慟哭。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

そして、私は引き金を引いた。
銃声が響く。
「」
前のめりに崩れる機械男。その哀れな姿に、私はなんの感慨もない。
“殺戮者”。
もとより覚悟の上である。

     /*→???

ただ一介の小娘の、魂の叫びに触れた気がする。
青臭い。とてもちっぽけで、エゴたらしく、胸が痛んだ。
どこかそれはかつて自身が持っていたものに似ている気がして。心臓(ハート)が傷んだ。

とうに失って、やるせなく。八つ当たりを繰り返す。
スパルタな教授のおかげか、どんなに酒を煽っても、薬を飲んでみても、思考はクリアで、演算は常に正しい。
そうして、マイナスはマイナスのままに。守りたかった世界はなくなった。
ではどうするか。
どうすればいいのか。
革命とは、なんだよ。と、哲学するうちに人は今日も死んでいくぞ。

そして。
そこにオレの人はいないわけで。
失敗してしまった。オレは負けたのだ。
落ちていく落ちていく。
四千メートルの空、ゆりかごから零れ落ちて、堕ちていく。
どこまでも夢想家。没頭する夢の中。馬鹿みたいに。
形の無いとらえ損ねた夢を俺は見ていた。

勝敗は決した。
俺の正義はウィン・Dの正義の前に砕け散り、すなわちオレは今この瞬間世界から見放された。
つまりは悪ということだ。
体が崩れていく。無敵の鉄の体が、なんともろく。
それでも止まらない。
止まれないんだ。
目の前の、生命の輝きに満ち満ちた黄金色の乙女を殺せと、血管を流れるトルエンが爆発する。
無理やりにでも五肢を動かす、永久に止まることなきギアハート。
電気が走り、歯車がガタガタと廻り、機械が俺を動かそうとする。
止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止ま、止ま、止、止、止、止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止止
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――」
錆が膨らみ腐食が進み、崩れていく。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
オレは慟哭する。力いっぱい、慟哭する。
これは憤怒か、あるいは悲哀?
それとも、また―――。

銃声。
「あんたみたいな殺戮者にこそ、俺はなりたかったんだ」

―――――機能停止。


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