我々の拠点が、
サンドリヨンのフラン様に個人授業(性的な意味で)されている。
こちらの精力では、これ以上の授業(性的な意味で)に
持ちこたえられそうもない。
大至急、応援を頼む。
目標となるフラン様の授業内容(性的な意味で)は、
すべて奉仕系で、火力(性的な意味で)も非常に高い。
期待して万全の状態(全裸待機)で臨んでほしい。
もちろん、フラン様の豊満な肉体は、
すべてお前のものだ。
ぜひとも力を貸してくれ。
Written by ケルクク
負けた時にまず思ったのは、力が及ばなかった事に対する慙愧でも、殺された事に関する怨嗟でも、これから死ぬ事に対する恐れでもなくこれでよかったという安堵だった。
笑ってしまう。私は勝つ為に全てを捨てたのに、私は黒い鳥になりたかったのに、私は負けてよかったと思っている。満足している。
だから、最後の力を振り絞って素直に言葉に出した。
あなたはコックピットハッチを開けて、身を乗り出しながら何かを叫ぶ。
ファットマンから通信が入る。
ごめんなさい。私はあなたとファットマンに答える事が出来ない。
ごめんなさい。私にはあなたとファットマンが何を言っているか解らない。
知りたいけれど、集音端末は全て壊れてしまった。答えたいけれど、もう私に通信する力はない。
まだ生きているレーダーが大量の友軍機が出現した事を知らせる。
多分、財団の差し金だろう。馬鹿な奴。手負いなら勝てるとでも思ったのだろうか。
あなた忌々しげに顔を歪め、悔しげに何かを吐き捨てた後、私に大きく頭を下げ、コックピットハッチを閉めて迎撃に向かう。
あぁ、やっぱりあなたは黒い鳥。
どんなに傷ついていようと関係ない。あなたは全てを焼き尽くす黒い鳥。
そんなあなたと短いとはいえ組んだ事を嬉しく思う。
そんなあなたに一瞬とはいえ並べた事を誇りに思う。
壊れ行く私の全ての機能をカメラに回し、全てを焼き尽くす黒い鳥であるあなたを追う。
これでいい。後は、私が終わるその時まで、今のあなたを見ながら、宝石のようなあなたの思い出に浸ろう。
メモリー1024
泥のような眠りを貪っていると女性器を怪しく優しく舐める舌触りと胸を弄られる感触で目を覚ました。
半目で状況を確認すると、見慣れた男が私の下半身に顔を埋めていた。
このまま睡魔に逆らわずにもう一度寝るか、侵入者というか犯罪者を撃退するか脳内で検討する。
答えは一瞬ででた。
勢いよく右足を跳ね上げ男の顎に強烈なひざ蹴りを見舞う。
「げぺ!?」舌を噛んだのかおかしな悲鳴をあげる男がひざ蹴りの衝撃で上半身を浮かしたので、「げぺぇ~!?」全力で男の胸を左足で蹴り付けベットから蹴り落とす。
体を起こしながらサイドテーブルに置いてあるハンドガンをとり、床に悶絶する男に向けて銃口を向け「ちょ、ま、待て!!タイム!スターップ!」悲鳴を上げる男に向けて引き金を引いた。
「躊躇なく引き金を引いた!?」転がりながら銃弾をかわす男に向けてさらに引き金を引き続ける。
「死ぬ!死ぬ!!ちょ、本当に危ないから!!銃は人に向けちゃいけないって教わらなかったのか!!」悲鳴を上げながらアクロバティックな動きで紙一重でかわし続ける男。
カチリと音がする。む、弾切れか。「助かった~」男が安堵の溜息を吐きつつ立ち上がる。私はサイドテーブルの引き出しを開けて予備のマガジンを「ちょ、勘弁!!すいません、調子に乗りました!許してください!!」
男が土下座をする。仕方ない。今回は許してやるか。土下座する男の頭を踏みつける。
「何のつもり?」「起こしに来たんだよ!昨日、10時に起こすようにいったじゃねぇか!」「そうか。しかし、私はあなたに起こしてくれと頼んだだけで襲ってくれって言った覚えはないんだけど?」
「それはほら、軽い挨拶、じゃなくて、暇だったから、でもなくて、ええと、マギーさん、答えが気に入らないからって足に体重をかけるのはやめて、イテテ、無駄ですか。解りました。クソ、じゃぁ、目の前にいい女が寝てたからムラムラした、く、これもだめか!」
男の頭の上にバランスを取って立ちながら考える。困ったな。これ以上体重の掛けようがない。ジャンプでもしようかしら?
「じゃ、じゃぁ、あれだ。アレ!姫はじめ!」「ヒメハジメ?」「極東の島国の新年の風習だ。姫、つまり女王様と年の初めにファックすると家内安全・交通安全・学業成就・子宝成就等々、色んな特典が」
「誰が女王様だ!」サイドテーブルに手をかける。
「ちょ、待て!マギー!!!いや、マギーさん、止めてください、マギー様!!」「断る」気合いを入れてサイドテーブルを持ち上げる。
「がぁあああ~~!!」あ、落ちた。
****
「うぅ。ひでぇ目にあった」「自業自得だな」
ぼやく男に軽く返事をしつつ男の用意したサンドイッチを口に運ぶ。
カリッとした表面の後に柔らかく僅かに甘いパンの生地の味。そしてその後に口の中に広がる少しだけ塩が効いた卵。
「ふぅ」余りの美味しさに溜息が洩れる。相変わらず無駄に美味しい。
次にベーコンを挟んだものを口に入れる。これもうまい。塩と胡椒のバランスが絶妙だ。というか、なんで噛んだら肉汁が溢れるのにパンに一切染みないの。私やファットマンがやったら肉汁でパンがびちゃびちゃになるのに。
サラダも美味しい。ここには塩と胡椒ぐらいしかないのにこのドレッシングはどうやって作ったんだろう。一瞬、聞こうかと思ったが作り方を長々と解説されても理解できないのであきらめる。
「ん?どうした?」僅かな迷いを感じ取られたのか、男が聞いてくる。相変わらず無意味に気を配る奴だな。
「別に。男の癖に料理が上手いなと思っただけ」「そりゃ今時古いぜ。というか、マギーとファットマンが無頓着なんだよ。一手間増やすだけで格段に美味くなるんだぜ?何ならおれが、手とり足とり腰つき教えてやろうか?」
「いらない。食事なんて栄養が補給できれば十分」「もったいねぇ~な~。どうせ食べなきゃいけないんだから美味い方がいいじゃん。それにマギー可愛いんだからさ~、手料理とか作ってくれたら男は悩殺もんよ?特に俺とか、俺とか。後、俺とか」
「私が可愛いとは中々愉快な冗談だな」オレンジジュースに映った自分の姿を、右腕が肩から千切れ、顔の右上が火傷と怪我でケロイド状になった化け物を見て嗤う。
「だから綺麗とはいってねーじゃん。可愛いっていってんだよ。ちなみに、そうやって自分を無意味に卑下して自嘲するのは可愛くないぜ?いや、すねてだからやっぱり可愛いな。うん、だから、マギー一発やろうぜ?」
「意味が解らん。特にだからが一切繋がってない」「あれ、わかんねーかな?つまり…」
****
「んでだ、マギー。今日暇だろ?依頼もねーし、ファットマンも昔のパートナーと飲みに行っちまったし?」
「あぁ。だがあなたとスるほど暇じゃないの。それに、私は今忙しい」
忙しい理由は、デザートのヨーグルトアイスと食べているからだが。投げ売りされていた賞味ぎりぎりの安物と砂糖と牛乳でなんでこんなに甘くてふわふわして美味しいモノが。舌に載せたら溶けるし。コーヒーも粉のはずなのに香ばしくて美味しいし。
「いや、それはとりあえず一時保留にしとく。だから、デートしようぜ?」
「デートって、あなた、いい年した私達が。そもそも、あなたと私はそんな間柄じゃ」
「確かに、恋人でもなんでもねーけどさ。俺ら一応組んでるわけじゃん。パートナーってわけですよ?なら、パートナーとしてもう少し互いを理解しあったほうが任務の効率上がると思わねー?」
調子はいつもと変わらなく軽いが、声がいつもより少しだけ重かったので少しだけ真剣に考える。
確かに効率的な依頼の遂行の為にはオペレーターと戦闘者の間の信頼関係や相互理解は深い方がいい。
なにせ、オペレーターは戦闘者に時に死んでこいというような指示を出さなければいけないのだ。その時に戦闘者がオペレーターを信用していないと最悪拒否されて依頼失敗だ。
だからオペレーターは戦闘者にどんな死地でも指示に従えば死なない、或いはオペレーターの指示なら死んでもいいと思わせるような信頼関係を築かないといけない。
オペレーターも同じ。戦闘者の敗北は高確率でオペレーターの死を意味する。つまり、戦闘者に命を預けるんだ。命を預ける相手を信頼出来ないでどうする?
対して、私達はどうだろう?男は今は私に従ってくれているが、極限ではどうだかわからない。男は死地で私達を守る為に命をかけて戦ってくれるだろうか?
私は男が敗れ死にかけた時に、命をかけて助けに行けるだろうか?
いや、私が疑っている時点で私達の間に本当の意味での信頼関係はない。
少なくともかつての私とファットマンのような命を互いに預けあう、ううん、命を共有した関係にはない。
それに多分男は私に実力を隠している。まぁ、私も実力というか、過去、傭兵であった過去を隠しているんだからお互い様だけど。
互いに隠し事がある関係。隠し事があるのよくはないがしょうがない。でも、なら尚の事仲良くなっておいた方が、ううん、仲よくして隠し事を気にならない程度の信頼関係は築いた方がいい。
しかし、こんな提案をしてくるなんて驚いたな。かなり、いや少し侮った。もっと馬鹿かと思った。それを知れただけでも今日は収穫があったな。
「そうだな。確かに私達はもう少し互いを理解するべきね」
「よっしゃぁ~~!!」男がガッツポーズをする。
「いや~、助かったぜ。恥ずかしい話、この前のマギーとファットマンが協力して報酬を釣り上げてくのをみて羨ましくなってさ~。なに?阿吽の呼吸ってやつ?それに俺も混ざりたいなって。へへ、これで俺も3ピ、じゃなかった仲間に入れるぜ!」
…は、はやまったかも。
****
「騙して悪いがただの買い物なんでな。だが安心しろ!直ぐに荷物を持たせてやるよ!あ、水10リットルください」「まいど!」
「まだ買うのかよ!というか、どこがデートだ!ただの荷物持ちじゃねーか!」「男手があると助かるな。今日は買いだめしよう。おじさん!食塩・砂糖・胡椒をそれぞれ1キロ!」
「まさかのキロ単位!!というか、もっと調味料買おうぜ!!!」「じゃぁ、カレー粉3キロ」
「カレーは調味料じゃねーよ!あぁ!くそ!折角の正月デートなんだから振袖とは言わないが、少しはおめかししろよ!化粧しろよ!!」
「化粧用品なんてもってない。あぁ、でもおめかしはしているぞ。ほら眼帯がフリルで可愛い花模様だぞ?」
「選んでくれたんなら嬉しいけど、それただテーブルの上に放置されたのとっただけですよね!ああくそ!せめて小物を見つけて『きゃーこれ可愛い』とか!水着や下着を見つけて『これ私に似合うかな』とかそんな萌えイベントを!」
「煩い奴。…お!見てみて!あれ!やだ、凄いコンパクトでいい。あ、でもちょっと高い。どうしよう」「萌えイベントきたー!!!なんだ!何を見つけたんだ!」
「これ、これ!どう!コンパクトで綺麗でしょ!」「どれどれ~、って、ハンドガンじゃねーか!いい加減にしろよテメー!こんなもん弾が出りゃどうでもいいじゃねーか!」
「な!あなた本気で言ってるの!これはあのパ・ヴェットの最高モデルとして名高いNS-24の後期モデルだぞ!!ほら見ろ!この小ささ、この重さで驚きの装弾数13発!
しかも、シンプルな構造で整備性も良好で頑丈!なんと寿命まで平均3500発も撃てるんだぞ!しかも、銃身を可能な限り長くとり、職人の技で磨き上げた事により有効射程も長く、命中精度も高い!
全く銃を撃った事がない素人が5メートル先のウサギに当てたという話もある!これなら私でも簡単に10メートルの壁を破れるだろう!」
「いや、マギーが拳銃持って射撃戦してる時点でどうしようもなくね?つか、射程が欲しいならもうちょい大型の奴をもてば」
「持ち運びに不便だし、なにより可愛くないだろ!!みろ、このグリップの丸み。可愛いだろ!思わず、ヨシヨシと撫でたくなるだろ!!!あ~もうだめ!!可愛い!!可愛い!!スリスリしちゃう!
決めた!私、この子を買う。この子と私がここで会ったのは運命なのよ!おじちゃん、いくら?」
「300」「さ、さんびゃくぅうう~~!?ちょ、ただのハンドガンにその値段はねーだろ!それだけあれば軽なら新車が買えるし、最高級のおねーちゃん3人と朝まできゃっきゃうふふできるじゃねーか!」
「300か。確かにお買い得だが…」「何がお買い得だよ!!あ~もう、これだからマニアは嫌なんだよ!!300で射程10メートルのハンドガン買うなら、その金でアサルトとスナイパーとハンドガンとナイフでも買えばいーじゃねーか!そっちのがよっぽど全距離対応できるぞ!」
「く、今は手持ちに130しかない!おじちゃん、ツケは」「無理じゃ。しっとるだろう?うちはいつもニコニコ現金払いじゃ。とはいえ、嬢ちゃんは馴染だからのう。仕方ない、前金で150払うなら取っておいてやるぞい」
「150か。なら生活費を崩せば!!!」「ガチで一文無しになって明日からどうやって生活していく気だ!!拳銃抱えて餓死する気かよ!!あ~もう!!くそ!!ジジイ!250にまけろ!!」
「それじゃ、ワシのもうけがでんわい。295じゃな」「ざっけんな!260!!!」「じゃから、それじゃ利益がでんわい。290。これ以上は他の店に行け」「そうだぞ!290なんてお店の一方的な損だぞ!」
「お前はどっちの味方だ!!あ~、くそ!じゃぁ、290でいいから弾とホルスターとついでにそこにかかってるナイフをおまけに寄こせ!」「ナイフは業物じゃから無理じゃな。他はいいぞい」
「よし!商談成立っと。おい、マギー!100寄こせ!190は無利子で貸してやる!」「い、いいのか!」「こっちもオペレーターに栄養失調で倒れられたら商売あがったりなんだよ!!!」
「ありがとう!!アンタいい人だったのね!大好き!!」「ひょっひょっひょ。仲がいいのぉ~」「抱きつかれても嬉しくね~!いいか、これは貸しだからな!ちゃんと返せよ!!」
「大丈夫だ!任せろ!!」「ほれ、嬢ちゃん。これでこいつはお前のじゃ」「ありがとう!!きゃ~!!まさかこの子の親になれるなんて!!私は帰ってこの子と遊んでくるから、残りの買い物よろしく!!」
「え?ちょ、待てよ!マギー!!って、本当にいっちまいやがった!!あの、クソアマ!」「のう、坊主。いくらいい女とはいえ浪費癖があるカミサンをもつと苦労するぞい?ソースはわしじゃ!」
****
「はやまった」シャワーを浴びながら頭を抱える。
あの子を身受けしてから全力疾走で家に帰ってきて、思う存分あの子を堪能(おまけに付けてもらった弾全部と家にあった予備の弾の半分がなくなった)したところで冷静になった。
今アイツに求められたら断れないんじゃないんだろうか?
なにせ私はアイツに190借りてる。190、19ならまだしも190だ。一般家庭の年収に匹敵する金額だ。しかも無利子・無期限。
これで拒んだらバチが当たるというか、感謝の印として自分から申し出なくてはいけないレベルだ。
なので、慌てていつ求められてもいいようにシャワールームに駆け込み、2日分の汗を流したり、脇だの何だの無駄毛を処理したりとしているわけだが、正直これでいいのか自信ない。
「あぁ!こんな事なら買わなければ、いや、ない。ないよ。買ってよかった。うん、あの子と私が会うのは運命だった」
でも、でも、自身がない。別に処女じゃないし、人波の経験もあるし、大人だから好きじゃない(別に嫌いでもないが)男に抱かれるのは構わないけど、火傷と怪我の後遺症で傷ものな自分に魅力はあるのだろうか?
いや、そこはおいておこう。あいつは嘘か本当かわからないが、私を可愛いと言っているんだし。おっけー、私は魅力ある。
でも、だとしても、上手くできるだろうか?なにせあの事故以来、ご無沙汰だ。つまり数年ぶり。しかも前の経験も両手・両胸が無事な時だから役にたつかどうか?
プライド的にアイツ任せは嫌だ。舐められるし、アイツにも気持ちよくなって欲しいし。
いや、この気持ちよくは私が御礼をする立場だからであって、別にアイツの事をどうこう思っているわけでは、
「だぁあ~~!!くそ!!!重かった~~!!おい!マギー!テメ~!!いや、待て、落ちつけ俺。急いで冷蔵庫に入れないと味が落ちる。怒るのはその後だ」
か、帰ってきた!!!ど、どうしよう!!これでいつここに入ってこられるか解ったもんじゃない!!
落ち着け、私!!深呼吸だ!ひっひっふ~、ひっ「ゴホゴホ」シャワーを浴びながら息を吸い込んだため思い切りお湯が気道に入りむせる。
何をしてるんだ、私は!!と、とにかく、もう一度チェックだ!!無駄毛の処理残しはないか!!
****
結局、アイツが帰ってきてから30分経っても男はシャワールームに帰ってこず、それどころか食欲をそそる匂いが漂ってきたので空腹のおかげで少しだけ冷静になった私は最後にもう一度全身をチェックした後、風呂から出た。
人が折角覚悟を完了したのに間が悪い奴。
しょうがない、お腹が減ったし着替えて私も食堂に行くか。
ん?着替えて?着替えるってその何に?というか、どんな格好で行けばいいんだ?
裸?いや、それは流石に恥ずかしい。痴女みたいだし。
バスタオル?まだ恥ずかしい。でも、これぐらいが無難なのか?それとも攻めすぎ?でも、こっちが求める立場な、いや違う、こっちはあくまでOKする側。求めるのは相手。うん。
下着?でも、下はともかく上にその、エロイのなんてあったかな?少なくとも事故以来買ってない。事故以前のが果たして入るのか。
普段着?でもこれじゃ、拒んでるみたいじゃないか。せ、折角覚悟を決めたのに。
じゃ、じゃぁ、普段着でも下着を付けないのはどうだろう?いや、駄目だ!!これじゃ待ってたみたいじゃないか!これはあくまでお礼で私が求めた事じゃないし。
ああもう!なにをドキドキしてるんだ私は!!ティーンじゃあるまいし!!これはただのお礼だろう!落ち着け、マグノリア・カーチス!
よ、よし!こうなったら裸で、いや、それは流石に恥ずかしい。痴女みたいだし。
じゃぁ、下着?でも、下はともかく上にその、エロイのなんてあったかな?少なくとも事故以来買ってない。事故以前のが果たして入るのか。
****
裸で30分近くモンモンと悩んだ結果、結局普段着+昔買った気合いの入った下着という無難な結果に落ち着いた。
入る前に深呼吸をしてリビングのドアを開ける。
「今日は長風呂だったな?なに、風呂でオナってたのかよ?」「あぁ」駄目だ!緊張が取れない!!男の言葉が頭に入らないので適当な返事を男に返す。
「してたのかよ!?」「あぁ」機械的に返事を返しながらテーブルに向かう。うぅ、駄目だ恥ずかしくて男の顔が見れない。
「右手と右足が同時に出てるぞ?ロボットかよ。新しい芸風か?」「あぁ」「いや、マジでどうしたって、あぁ、そういうことか。ケケケ、やっぱマギーは可愛いな。聞いてないだろうが飯できてるぜ?」「あぁ」
体が硬いのが解るがどうしようもない。
料理を口に運ぶが緊張で味が解らない!うぅ、きっと美味しいだろうにもったいない。
料理を食べるふりをしながらチラリと男の顔を見る。
私を見ながらニヤニヤと笑っていた。
目が合う。
慌てて目を逸らす。
やばい、頬が熱い。鼓動が速い。駄目だ、このままじゃ、緊張で死ぬ!死んじゃう!!
こうなったら守ったら負けだ!攻めるんだ!
よし!10数えたら私から言うぞ!内容は、さっき考えた「190のお礼に抱かせてやる。感謝しろ」でいこう。
よし!いくぞ!いっちゃうぞ!!
1,2,3,4,5,6,7,8,9
10!!!!!!
…11,12,13,14
って、何をやってるんだ私は!!!こ、この、
「ひょ、ひょい!!」「ひょい?」「りゃ、りゃんでもない!」「なんだよ、酔ってんのか?」
男がニヤニヤ笑う。駄目だ、止まるな!!ここで止まったら一生いえない!!
「うるしゃい!!いいか、私の事を抱いてください!」よし!言った!言ったぞ!!頑張った、私!
「え?なに、愛の告白?」「わぁあああ!!!ち、違う!!お礼だ!お礼!!190の!」ニヤニヤ笑う男の言葉に慌てて首を振る。
「なーんだ。じゃ、もったいないけど、いーや」「ふぇ?」あっさりと告げた男の言葉に呆気にとられる。
「ただの趣味だよ。借金のかたに股を開かせるのは好みじゃないってだけ。ヤるなら対等の関係がいいんだよね~。商売女に金を払うなら客と売り手で対等って納得できるんだけど、借金のかたってのはな~。
まぁ、マギーがこの手のを引きづらないならお相手願うんだけど、思いっきり引きづりそうだからな。イヤー残念残念。にしても、マギーは可愛いな~」
「だ、誰が引きずるか!!ぜ、全然平気だし!なんなら、今からでもいいんだぞ!!」ニヤニヤ笑う男の言い方が癇に障って立ち上がる。
「じゃぁ、脱いでって、いや、やっぱいいや。わーりーわりー。そうだな、言い直す。
俺とお前はパートナーだ。だから対等な関係でいたい。だから、上下関係を作るような事は遠慮したい。
つまり、俺の都合だな。つーわけで、頼むぜマギーちゃん」
男が机の上に手を突いて頭を下げる。
「ふん、なら仕方ないな。そういう事なら許してやる!私は全然平気だったんだからな!」
「あ~、はいはい。それじゃ、改めてこれからもよろしくな、マギー。言っとくが借金は返せよ?あと、デートの続きもよろしくな」男が立ち上がり私に手を差し出す。
「こちらこそよろしく。借金は返すけど、デートはしない。ただ、買い物ぐらいならそのいいぞ。あ、勘違いするなよ!買い物といっても今日みたいな生活必需品じゃなくて、その服とかだ!
あ!でも、勘違いするなよ。あくまでパートナーとして相互理解を深めるためにあなたの趣味を知って私の趣味を教えるだけだから!」男の手を握り返す。
「十分だ。期待しておく。さ、それじゃ飯を食おうぜ!冷めたら味が落ちる。あ、そうだ、借金がある間は無駄遣いを控えろよ?無駄遣いしやがったら下着抜きで生活させるからな?」
男が手を離し、座りながらからかうように告げる。
男に「絶対にしない!!」と吐き捨てて席に座り、男の料理を口に運ぶ。
今度は味がした。む、相変わらずうまいな。
ニヤニヤと笑いながらこちらを見る男が気にならないくらい夢中になって食を進める。
暇があったら料理を教えてもらうのもいいかもしれない。
フランちゃんのイケナイ個人授業一日目 せいじ
「なぁ、本当に俺参加しないと駄目?」
「ダメです。アナタもこの群れの指導者なんだから最低限の知識を身につけてもらいます。私達が死んだらアナタがこの群れを率いるんですからね!」
「ど~考えても、俺のが先に死ぬだろ。ほら、俺様戦闘職だし、そうでなくても耐用年数的にあと数年で限界だし」
「いいえ。アタナは死にません」「いや、そんな事言ったって寿命みたいなもんだし」「そんなの関係ありません。アナタは私と一緒におばあちゃんになってもらいます」
「アハハハハ!ほら、リーダーがそういってんだから諦めなよ。それにテロとかで私とフランが先におっちぬ事だってあるんだからね。備えておくのは悪くないわよ」
「そうです。それに歴史は最良の教科書であり反面教師だってレオンが言ってました。だからちゃんと学んでください。はい、では、復習です。中世初期の王や皇帝の支配する専制政治はどうして滅びたんですか?」
「え、えーと、王さまが頭の自覚をなくして政治とかに興味を示さなくなって遊び呆けてたら、その下の貴族連中も王様がやってるからいーやって事で一緒に遊んで、それでみんな遊び呆けて滅んだ…気がする」
「…合格ではないですけど、赤点でもないですね。
正確には、まず王が腐敗し最上位者としての自覚をなくし、快楽に溺れ統治者としての義務を果たさなかった結果、その下で実際に国政を行う貴族達も自身を掣肘する王の監視がなくなり腐敗しました。
上位の腐敗はやがて最下層の政治端末である役人・兵士にまで伝播し、権力機構そのものが国の土台である民衆を苛みました。つまり、民衆の敵となったのです。
そして、少数の権力機構が多数の民衆の敵となった結果、当然のように少数である権力機構、すなわち王を頂点とする専制政治は終焉を迎えました。
この事が示す教訓は二つ。一つは腐敗は上から起こる事。下から腐敗する事はありません。
役人・兵士が腐敗すれば、その上位である貴族が腐敗を是正する。特定の貴族が腐敗しても王が監視者として機能すれば発見次第是正されますから貴族全体の腐敗にはなりませんからね。
でも、王の腐敗をただす監視者はいません。そして、王が腐敗し監視者としての機能を果たさなくなればその下も腐敗する。つまり、国政の監視装置である王が腐敗した瞬間にその国の終焉は約束されます。
だから王が腐敗せぬように国家は知識と精神を教育するのですが、100%ではありえません。それが王という個人に国の監視をさせる専制政治の弱点です」
「逆に腐敗した頭がすげ変われば、一瞬で国が再生するっていいところもあるんだけどね~。5~6代に1人の割合で名君がでれば、残りはボンクラでも王朝は続くし。ま、逆に暴君がでたら1代で滅んだりするんだけどさ」
「そうですね。良くも悪くも、王個人に寄るのが専制・独裁政治です。ただ、善人と悪人では悪人のほうが多い、人は堕落する生き物である事から考えると個人に寄る専制政治は欠陥品であるとしか言えません。
さて、腐敗した王と貴族を倒し被支配者から支配者の立場になった平民達は、大きく民主主義と共産主義という政治形態を生みだしましたが、ではロザリーさん。共産主義とはどういう政治形態でしたっけ?」
「はいはい。お姉さんが教えてあげるわ。簡単にいっちゃうと皆で稼いだ物は皆で平等に分配するって幼稚園の理屈を大真面目に実行しようとした馬鹿が作った政治形態よね。
は!それができるんならとくに人類全員が悟りを開いて賢者にでもなってるつーの!誰だって人より楽したいし、人よりいい生活がしたいのよ。
だから最初は良かったんだけど、頭がいい奴から、努力しても対して報われないどころか自分が努力しなくても分け前が貰えるって気づいて働かなってった。
んで、結局皆がそれに気づいて機能不全を起こして滅びちゃったのよね?」
「その通りです。流石ですね、ロザリーさん。付け加えるなら、利益の分配役が王と変わらなくなってしまった事でぐらいでしょうか。
さて、専制主義から生まれた双子のうち片方の共産主義は人間の善性に寄りかかっていたために、人の悪性によって短期間で消えてしまいました。ですが、もう一つの民主主義は長い間、それこそ専制主義に匹敵するほどの長時間生き残りました。
理由としましては、まず何かを行う事に常に時間と手間がかかる構造であった事があげられます。
君主の意一つであらゆる過程を飛ばして物事が実行される専制政治のアンチとして生まれた民主主義は、専制政治とは逆にありとあらゆる事に複雑な手順と支配者である国民の承認が必要でした。
これにより例えば武力をもったものが反乱を企てようとも準備や戦力を用意する時間と手間がかかり発覚のチャンスが増えました。
それにそもそもそんな危険と手間をかける位なら、仲間を集め選挙で政権を奪った方が楽ですしね。
加えてお題目だとしても支配者が多数の国民であったという事も大きいです。
さっきも言いましたけど、専制政治が滅びたのは監視者である王が腐敗したからです。絶対者であり監視者の腐敗は専制政治について回った問題でした。
国民は貴族に、貴族は王に監視される事で腐敗は防止されますが、王を監視する者は誰もいません。従って王はただ自分で自分を律しなければいけません。
これは非常に難しい事です。誰もが自分に傅く中で80年近い生涯をただひたすらに律さなくてはいけないんですから。相当の自制心が必要とされます。
だからこそ、それが出来た王は賢君、名君として称えられたのです。そして、歴史に王は数あれど名君、賢君の数は少ない事からいかにそれが貴重であるかも解るでしょう。
若いうちは名君だけど年をとったら暴君になるなんて例も珍しくないですしね」
「だったら、頭の数を増やしゃ、って、揉めるだけか」
「はい。その通りです。王を二人以上に増やせば派閥が発生し、派閥は対立を生み、対立は内乱を生みますから。だから王は唯一絶対であり、一人でなければいけない。これは専制政治が発生と同時に確立された真理です。
ですが、民主主義はその真理を否定しました。
国政を絶対の王という個人でなく、多数の民衆によって選出され選挙によって容易く変わる不定の議員という存在に委ねる事で民意を常に反映し、民衆に自分達が政治を行っているという満足感と義務感を与え、また議会という派閥と対立の場を用意する事で息抜きと監視を行って内乱を防ぎました。
民主主義の巧妙な、ある意味狡猾な所は、権力の執行者である議員を民衆に奉仕させる事を制度として定めた事です。
民衆の意に沿わない議員、民衆の意に逆らった議員は民衆の支持を得る事が出来ずに選挙で淘汰される。議員に常に自身の任命権を持つ民衆によって監視されている事を自覚させる事で腐敗を防ぐ。
最上位者である民衆も多数であるが故に相互に監視しあう事で腐敗を防ぎ、また仮に腐敗した者がいたとしても民衆の代表者である議員による多数決をとる事によって少数の腐敗した民衆の代表である腐敗した議員の意見が通る事はない。
構造的な弱点である、何をするにも時間がかかる事以外は、完璧な政治形態である民主主義は一時代を築き、あらゆる技術は進歩し、生活水準は向上し、人類に空前の繁栄を齎しました」
「ま、前提として民衆全員にそれなりに高い教育が必要になるんだけど、その辺は産業革命やらなんやらで民衆に余裕が出来たのがでかいわねー。
技術の進歩で生きる為に割かなくちゃいけない時間が減った事で出来た時間を教育にあてたのよ。
一番の原因は、資本主義とがっぷりよっつで組んだ事だと思うけど。
あ、ちなみに資本主義ってのはあとで、フランが解説してくれると思うけど、簡単に言うとマネー イズ ゴット!
社会主義とはまた別の平等、つまり、努力したら努力しただけ報われる社会の事。お金という神様が支配する、実力と幸運を兼ね備えた者が勝つ競争社会。強者に厳しく弱者にはもっと厳しい、くっそったれなくらい平等で素敵な今よ」
「優しさはないわけ?」
「あるわけないじゃん。負け犬、敗者は死ね、勝者は敗者の屍の上で酒池肉林を楽しむのが正しい資本主義だもん。原始の生存競争となんら変わらないわ。違うのは武器が、素手や石器から情報とお金に変わっただけよ。
だから栄えた。どう取り繕うと人間は群れる生物だからね。人よりいっぱい食べたいし、人より楽したいし、人より上に見られたいもの。楽しい事、気持ちいい事が嫌いな人間はいないわ。
だから人の欲望に沿った、フランのさっきの言い方を借りると、善人よりも悪人が多い人間の本能である悪性を肯定した資本主義は世界を席巻し、今もまだ私達の中で生きている」
「へぇ~。あれ?だったら俺達のやってる事って無駄じゃね?弱い奴を餌にするのが資本主義的に見て正しいんだろ?
あ、でも民主主義は多数決だから弱い奴でも数がいた方がいいのか!つまり、俺達は民主主義を目指してるんだな!」
「いいえ。私達は民主主義を目指していません。何故なら民主主義も不完全だからです。
先ほど、私は民主主義を完璧な政治形態といいましたね。すいません。実はそれは嘘、というか前提条件があるんです。
そう、腐敗した者より、腐敗していない者の方が多いという大前提が。
民主主義は多数決です。故に、腐敗した者が多数になれば、専制政治で王が腐敗した場合と同じ現象が、つまり、議員や役人の腐敗が起こります」
「そりゃそうだろうけど、そりゃありえないだろ?それって、1人しかいない王様だったら解るけど、民衆って全員だろ?集団の半分が腐るとか、少人数の盗賊とかならともかく、万単位、へたすりゃ億を超える国で起こるはずねーじゃん!」
「そうですね。民主主義の創設者達もきっとそう思っていたでしょうね。でも、実際に腐敗は起きてしまったんです」
「共産主義が潰れたのと根っこは同じよ。
政治に参加する為には、時間をかけて1人1人議員の主張を理解しなくちゃいけないし、面倒くさい選挙に参加しなくちゃいけない。
でもさ、そんな面倒くさい事をする必要がある?皆が決めてくれるんだから自分1人参加しなくても大丈夫だろう。もっと頭のいい人が決めてくれる。自分は忙しい。てなもんよ。
政治に参加するってのは権利だからね。権利は使わなくていい。
アンタもそうでしょ?今回はアタシ達が引きずってきたけど、これが自由参加だったらどうした?変わらず参加した?これはアタシ達のこれからを決める為に不可欠な知識を得るための大事な講義っていってたわよね?」
「いや、それは、あう、ごめんなさい」
「謝らなくてもいいわよ。誰だってそうだもの。政治なんて面倒くさいわ。できれば参加したくないもの。
んで、まぁ、誰もがアンタみたいになった結果、民主主義は終わったわけよ」
「濁り水が大地に浸透するように初めは初雪のように清廉だった民主主義は少しずつ、少しずつ、腐っていきました。
手間を惜しんで政治にかかわらない人が、未来ではなく今だけがいい人が時代を追うごとに少しずつ、でも確実に増えていった。
それは最初は無視できる数だった。でも、気がつくと無視できない数に膨れ上がり、最後には半数を超えた。
一度そうなればもう、どうしようもありません。賢者の声は多数の愚者に押しつぶさされ、駆逐されるべき政治屋は実現不可能な甘言で愚者を誑かし自らを多数の代表者としての正義となり、隠れて、或いは堂々と不正を犯し自己の利益を貪る。
そして、政治の監視の無くなった役人は腐る。政治家と役人の腐敗のつけは民衆にまわりますが、腐敗した民衆は責任を自らでなく他者に押し付け、具体的な行動を起こす事もなく、ただ不平と不満を喚くだけ」
「いっそ、専制主義なら、賢しこい王がでればなんとかなったんだけどねー。民主主義じゃ仮に賢者が出たとしても、既得権益を守ろうとする政治屋と愚者に押しつぶされるのよね~。
まぁ、民主主義の弱点ね。民主主義は一度機能不全に陥ると後は、腐って崩れるのを止める事は出来ないのよ」
「民主主義が自らの腐敗で機能不全に陥ったのちに台頭してきたのが、資本主義です。
民主主義が民意という不確かなものに支配される事に対して、資本主義は自己の利益を優先するという徹底的に明確なルールが存在しました。
そして、資本主義は民主主義とともに発展していましたが、民主主義が機能不全に陥ると資本主義の権化たる企業は、これ以上民主主義に政治を任せるのは不経済であると民主主義を打倒しました。
そうして始まったのが、資本主義の権化である企業による経済統治、すなわち、パックス・エコノミカです。
企業は、資本主義を腐らせた愚者及び弱者を徹底的に排除、虐殺し、人類を再生させます。
そして適正な数に人類を整えると経済利益を第一に動いた結果、人類は再び繁栄の時代を迎えます」
「すっごいわよ~。私達が使ってる技術は全てこの時代に作られたんだから。なんでも、最盛期では火星まで開拓したらしいし。
生活水準も今とは比べ物にならなかったみたいね。タワーみたいなのがばかすか立ってて、地上どころか、宇宙や月や火星にまで人が住んでいた時代。
誰もが貪欲に得る事だけを考えていた時代、チャンスがどこにでも転がっていて誰もが勝利者になれた時代。ちょっとワクワクするわよね。軽い神話よ。
反面、乗り遅れた者、負けた者にはきつい時代だったみたいだけどね。
ま、そりゃそうよね。非効率的な存在、あたし達でいうと、難民どころか、爺さん婆さんや怪我した奴までみ~んな、捨てるんだもん。
稼ぎは変わらないのに分ける人数が減るんだからいい暮らしができるわよね」
「シティみたいなもんか?」
「いいえ。それよりも酷いです。シティは地下に住む者達に生きるに最低限の食事は与えていましたから。シティが真に合理的であったら私はあなたに会う前に処分されて合成肉か化学肥料になっていましたね。
だから、私達はパックス・エコノミカの正しさを認めても選ぶわけにはいけません。人は生まれながらに人として生きる権利があるが私達の大前提ですから。
それに、合理を突きつめても無限に成長できるわけがないんです。技術の進歩や生活圏の拡大の結果、技術や社会が円熟期に入り成長が緩やかになると、外側の成長で利益を出す事が不可能になります。
でも企業は成長を止めません、いえ、止める事ができませんでした。企業は利益を出し続けないと自らを維持できなかったからです。だから企業は内向きの消費で利益を出すことにしたんです。内向きの消費、すなわち戦争です。
企業は今までと変わらぬ利益を、消費を生みだす為に、戦争を始めました。
勝つ為の戦争ではなく、利益を出す為の戦争は利益を求める企業が倒れるまで続きました。
そう、企業は、パックスエコノミカは自滅しました。生きる為に自らを喰らい始めた大蛸は遂に自らを食べ尽くしたんです。
後に残ったのは、長期間の戦争で荒れ果てた土地と人でした。
そして、絶滅寸前にまで追い詰められた人類が選択した新たなる政治形態が管理者主義です。
これは、簡単に言ってしまうと人類の行く末を上位者、すなわち超高性能なマシンに委ねるというものです」
「おいおい、まじかよ。自分の運命を他人、いや、人ですらねぇのか。とにかく機械なんかに任せるのかよ。故障したらどうすんだ」
「長い長い戦争と、その後の戦争中とは比較にならない悲惨で陰惨な戦後を経験した人類は、それほどまでに自らを信じられなかったのでしょうね。
もちろん、考え得る限りの安全策を施し理論上の故障確率はほぼ0といえるまでに下がったらしいですけど。
そして、管理者という人造神に管理された人類は長い穏やかな、平和な時代を迎えます。
成長がない代わりに争いもない、管理者という母親の庇護のもとで揺り籠で眠る赤子のような、進歩のないけれども大きな争いもない平穏で停滞した時代を」
「う~。確かに、いいかもしれねーけど、俺はやだなぁ。なんつーか、飼育っていうか、それ、生きてねーじゃん。飼育っていうか、いや、うまくいえないけどさ」
「あたしもそう思うけどまぁ、そこまで追い詰められてたんでしょ。なにせ、管理者主義が台頭してくるのって戦争やらなんやらで人類が1割ぐらいになってからだし。
生きる為に周囲の人間を殺しつくした奴が人間不信になって機械を崇めるなんて極端に走るのは仕方ないのかもね。
まぁ、そんな極端に走るような悲惨な歴史も咽元過ぎればなんとやら、こんな退屈な箱庭なんていられるか!俺は外に出るぞ!!って暴れる奴がでてくるのよね」
「無論、管理者は反乱者が出現する事を予想し対処します。ですが、やがて予測不可能なイレギュラーに管理者は打倒されます」
「人間が作る物だからね~。どれだけ完全完璧に作ったつもりでも穴はあるのよね。
管理者も自己拡張を繰り返すけど、悲しいかな、どんなに性能を上げても99%が99.9%になるように9を重ねるだけで、100%に到達する事はないのよね~。
なんというか、撃った弾が永遠に的に届かないとか、フラジールが亀に追いつけないみたいで変な気もするけど、事実だからね」
「どんなに小さくても穴がある以上、長い時間、多くの人間に攻められれば数の暴力でいつか破られてしまう。
管理者主義は始まると同時に確実な終わりが約束された、ある意味もっとも不完全な政治形態なんです」
「にゃる~。死なない人間がいないように壊れない機械もないってことか。当然だな。んで、次は?」
「ないよ」「え?」「ないの。存在しない。人類が生んだ政治形態は管理者主義で最後よ」
「はい。管理者が破壊された後は乱世になり、最終的に力をもった集団が人類を統治します。
その集団が個人に率いられたものであるなら王による専制政治になります。
その集団がミグラントのような商人達に率いられていたならパックス・エコノミカになります。
その後は、統一、平和、腐敗、革命、戦争を繰り返しながら人類は数を減らし続けていき、絶滅寸前まで減ったところで管理主義が台頭し人類は管理者の元でその数を増やし、一定数まで増えたところで例外に管理者が討たれ再び乱世が訪れる。
人類はそんな血塗られた歴史をずっと繰り返してきました。そしてこれからも繰り返していくのかもしれません。それが人間の本性あるいは、限界なのかもしれません。
でも、私は嫌です」
「は?」「だから嫌です」
「あはははっははは!!!いいわね!!ねぇ聞いた?ここまで散々理詰めで話しておいて、嫌だって!!!あははははは!やばい、ツボにはいった!死ぬ!笑い死ぬ!あはっはははははははははは!!」
「わ、笑いすぎです!ロザリーさん!!いいじゃないですか!!!私は私の子供や皆の子孫が戦い続けるなんて嫌です。というか、私も戦い続けるのは嫌です。今すぐとは言いませんが、せめて老後は平和に暮らしたいです。
だ、だからですね、私は争いを出来たら後十年ぐらいで、むりならせめて私達の代で終わらせたいんです。
それに、一応力不足とはいえ私は指導者に選ばれたわけでして、なら皆さんをよりよい未来に導くという義務が」
「あははは!あ~、ごめんごめん。うんうん、そうよね。やっぱりあたし達のリーダーは最高よね!その、欲張りっぷりは好きよ!愛してる!ぷ、あははははははは!!!ひひひひ、うん、頑張りましょう。く、くくくく」
「ま~、フランの魅力は大人しく見えて実は無茶苦茶欲張りな所だからな。さしずめ羊の皮をかぶったティラノザウルス??」
「あ~!酷いです!」
「いや、だって、要は人類が今まで駄目だった事を嫌だからって理由でなんとかしようってんだろ?それを欲張りって言わずになんていうんだよ?」
「それはそうかもしれませんけど、」
「いいじゃんいいじゃん。夢やら目標はでかい方が目指しがいがあるってもんさ!俺も協力するから頑張ろうぜ!」「ぷくくくく、あ、あたしも協力するわよ!にゃはははははは!」
「二人ともありがとうございます!!それじゃ、今日はもうやめようと思ってましたけど、そこまでいってくれるなら講義を続けましょう!」
「うげ、ちょ、それは!」「…協力するって言ってくれましたよね?嘘だったんですか?」「い、いや、違います」
「ですよね!よかった!それじゃ、どんどん学んでいきましょう!誰にも出来なかった事をするんです!知識はいくらあってもたりませんよ!
大丈夫!どんな不可能も私達三人ならできますよ!!」
●後書き
随分と調子よさそうだねぇ
…だまされたとも知らずに。
だまして悪いが誤字(×性事 ○政治)なんでな!
当然、エロなんてありませんよ!!!
うん、政治と性事をかけた一発ネタなんだ。すまないね。
そうそう、これは某所からの移送だよ。
もし2度引っかかった人がいたら、ご愁傷様なんだぜ!
メモリー1024の再生を終了します。
結局、料理教えてって言えなかったし、借金も返せなかったね。
ごめんね。少しもったいなかったな。
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