《ウォーニング!!》
この作品は異性間に於ける性交を主軸とした小説です。
Written by 仕事人
【ケモノのスミカ レギュ10 《友は笑う》】
窓から見える光景は暗い。
大気汚染が進んだ空に浮かぶ星々の瞬き月の輝きは儚く、外に広がる建物は窓の光でやっと浮かび上がっている。
つまり――現在は夜である。
時計の長針は12を越えているので深夜と言っていい。寧ろ言い換えた方が正確だ。
なので其の窓から見下ろす形になっている一般社員用の宿舎の殆どの窓は明日も待ち受けている業務に備える為に灯が点っていない。
見下ろす、と云っている訳だから此処は社員の宿舎よりも高い位置にある。
それだけではない、部屋の中身も――此処に住んでいる主は社員達用の部屋に入った事が無いので恐らく、だが――相当に違う。
間取りの広さに、部屋の数や、部屋に付随する全て。例えば風呂場に備えられているバスタブの広さや、彼らの多くが身体を預けているベッドの大きさなどだ。
バスタブならば”彼女”の長い脚をぐんと伸ばしてもやっと向こう側の壁に付くぐらいであるし、一般のほうが只の直方体に対して縁が椅子の肘掛に似たカーブを描いていたりと見た目も小洒落ている。
ベッドで云えば、社員宿舎はそもそも寝室も手狭なので壁にぴったりとくっ付けて寝返りを打てば壁と向かい合うか、ぶつかるかする、また逆方向に転がれば床を寝床にしないといけない所を、”彼女”は部屋の真ん中に置いてあっても尚、両側と壁の間は充分に空いている。
そして”彼女”は少々寝相が悪いので落ちる事もままあれど、多少右往左往しても問題なくマットレスとシーツの間に居られる。
だからこそ”彼女”は其処で七転八倒の有様を見せているのだろう――妖しい声を漏らしながら。
「――ふぅ、ふぅンっ! ああ……」
肥えていると云うのではなく、扇情的な意味、男好きのすると云う意味で、たっぷりと肉の乗った太腿の脚はベッドの外へ向かって左右に広げられていて、シャワーを浴びて浴槽に浸かった跡の白い肢体はほんのりと赤く染まっている。薄明かりの照明の中で温水の残滓か、温まった身体が逃がそうとしているのか、それとも内から滾る熱によるものなのか、汗腺から滲む汗が内腿を輝かせる。
口許まで引っ張ったシーツを噛んでいる口許がくぐもった嬌声が漏れる度に足の指が伸び、また曲がる。
”彼女”の就寝用のスタイルなのだろう。衣空調が室内の温度を一定に保っているのもあって、身に着けている衣類は一つだけだ。
しかし、それも脚の付け根の更に内側では夜着用の、申し訳程度に恥部を隠している狭い面積の布は左へとずらされていて、脚とは対照的にベッドの内へと伸ばされている細い右腕の指先が自身で暴いた場所を弄っている。
向かい風を受ける帆の如く張り詰めた肌の上にある淵の濡れたクレバスを二本の指が出入りを繰り返す度に、くちゅり、くちゅりと耳に残る音が立ち、肌と同じように彼女の脚が張る。
また左腕も空いている訳ではなく、右腕と同様にベッドの内へと向けられていて、ベッドの上で仰向けになっている彼女の胸部から零れ落ちてしまいそうな珠、というよりは玉――どころか球のような乳房を触っている。
仰向けではなくて立っているだけでも掌だけではなく身体の線からもはみ出る大きさの乳房は持ち主にとっても負担である程の重量であるが、しかし形は崩れておらず、桃色に広がる円と尖りを帯びる先端を中心に、確り前へと向いている。
利き手の右手の指が蜜に溢れる胎内に侵入するのと一緒に、左手の指は乳房を揉みしだき、摘んだ乳頭を引っ張る。
重力と自身の指先の力の二つの間で乳輪が柔らかな線の三角錐を作る。肉が張っている光景は痛々しい程だが、”彼女”の中では小さな苦痛も快感に呑まれて、寧ろ相乗させている。器用に二の腕を使って心臓へと乳球を寄せて、二つを引っ張れば心地良さを補強する痛みも大本の快感も二倍だ。其の分、細い親指と人差し指の腹だけでは重過ぎるので、拳を握って折り曲げられた五本の指と爪辺りと掌に挟むようにしなければならない。
大物の魚を疲れさせるように乳房が左右へと円を描いて振り回し、盛り上がる土手まで涎を垂れ流す淫唇を上下に擦りながら開く。
喘ぎと共に更に溢れた蜜が会陰を通って窄まりに触れて、鳴れぬ性感に背筋に悪寒が奔る。
己が手で蹂躙している身体を潤んだ瞳で眺める”彼女”は唾液をたっぷりと含んだシーツの端を口から離して――濡れた先端がまるで舌のように柔らかい頬をなぞっていく――浮ついた様子で呟いた。
「ねえ、おねがい……指だけじゃ、物足りないよぉ……」
誰かにお強請りをした風であるが、”彼女は”立派な自立した一個の人間で、男を知っている身体でもあるので居ても別段不思議な事では無いが――今は室内には独りだけである。
リビングルームへの扉を抜けても同じだ。
”彼女”が話しかけたのは空想の中で彼女を玩んでいる誰かである。
眼に見えぬ――仮にモデルが居たとしても――頭の中だけでしか存在しない人物、ある意味で幽霊の類と云うことになるが此れも人間の他の生物とは違う一つの能力である。人間は誰でも頭の中に、若しくは心の中に幽霊を飼えるのだ。
場合によっては主従すら逆転する――例えば神と云う存在が心の中に居れば。
しかし今、”彼女”の身体に触れているのは”彼女”にとって都合の良い幻影、自慰の雰囲気を盛り上げる演出道具程度のものでしかない。
「はぁうぅっ……もぉ、焦らさ、ないでぇ……」
顔を赤らめながら言葉を紡いだと云うのに途端に”誰か”は挿れている指を小刻みに抽迭した。
二本の指を咥えている膣口の口許だけを擦るだけで、自ずからは壁に触れようとしてくれていないのに、それでも立派に音だけは厭らしく高鳴るのだから恨めしげな眼で股間の方を見る。
すると”男”は聞き入れてくれたのか、”彼女”の手に棒状のモノを握らせた。
「うん……これ。これが欲しいの……ン……ンン」
掌に伝わってくる、ごつごつとした感触と、輪の入り口に引っ掛かる段差の先が膨れ上がって、先端に切れ目が入っている、本能的にそそられる淫靡な形状に”彼女”は、ほうと甘い溜息を漏らす。”男”ごと肉棒を引き寄せて、穂先の切れ込みの小さな穴にそっと口付けを落としてから亀頭を唇で食み、唾液を塗すように頭を左右に捻った。
そうしてから頭を押し込むと容易にペニスは口腔へと進んできた。
(アソコにもこんな風にすんなり挿いっちゃうんだろうな……)
”彼女”はそんな事を考えながら征服されている感覚を与えながら口蓋や粘膜を圧迫してくるモノに先程のお返しと言わんばかりに頭を前後させて舌を絡ませると”男”はか細い呻き声を上げた。
苦悶の声と表情に何とも言えないいじらしさを感じつつも、可哀想かな、と思って、それに自分も我慢の限界なので口から離す。吸い立てながら引き抜いたので、強く唇の裏に雁首が引っ掛かって抜けた際には、ちゅぽんと音が上がった。
唾液に塗れて、てらてらと光る男根を股座に導く。しかし同じように粘液に塗れている牝唇が物欲しそうに口を開けているのだが、何故か躊躇いがちで入ってきてくれない。
「そのままでいいから……早くきて……」
”彼”が躊躇していたのは避妊具が無かったからなのだろう、しかし淫猥な微笑みを浮かべて”彼女”は性器同士を擦り合わせて誘うと、
「あ、あ、ああっ……きて、る……ンンぅっ」
ずぶずぶと反り返った肉棒が花弁を、膣口を潜りながら胎内へと押し入る。
悦びで秘肉が打ち震えながら侵入者を迎え入れ、やがて根元までをすっぽりと収めると、”彼女”は背筋を伸ばして喉元を曝した。股を開いている両脚は殊更に高く掲げられ、手が二人の結合部を隠している。豊満に過ぎる乳房は下腹部に伸ばされている腕に両側から挟まれて強調されている。
全身の筋を全て伸ばしている”彼女”だが、直後には更にそれを強くした。
「はぁ、あっ! ああぅ……あンっ!」
ぬっちゅっ、にちゅ、と淫音を響かせながらペニスが反復を始めたのだ。
咥え込んでいるラビアごとつれていきながら蜜壷の奥を広げる。空けられた空間が筋肉の収縮で緩々と狭まっていくのを尻目に膣肉を肉傘で抉りながら後退していき入り口を引っ掛けると、入り易くなった空間へ強く侵入していく。
胎内を棒が往き来していく感覚に酔い痴れる”彼女”は乳房の側面を自分で二の腕で擦って更に快感を得ようとする。
蜜壷を広げる抽迭の度に腕に挟まれている乳房が眼の前で上下に揺れて、額から流れた汗が強く瞑られた熱い目蓋の上を滑り、長い睫に割られながら上気する頬を伝う。
上から突き上げるように、下へと抉るように幾度も突かれていた”彼女”だったが喘ぎながら肉棒が根元まで埋まった瞬間、陰茎に添わせて手を更に伸ばした。
そうなると、”彼女”の暗闇の視界にはぼんやりと覆い被さる人影が映っているが本来なら誰も居ないので手は根元から続く下腹部を擦る事なく、両手の掌はプラスチックの底部を覆うだけだ。
だから掌中に広がるのは筋肉の硬さではなく、人工物の堅さであって幻影を維持するには多少都合が悪い。
しかし、”彼女”が更に得んとしている快感に比べれば演出道具のチープさは軽い代償であった。
良く手入れされているのだろう、肌理細かい肌の指先が底部の側面に抉られている二本の長方形の溝に触れて上へとなぞって行くと、それに減り込んでいる矢張り二つの四角形の突起がある。”彼女は”それを摘んで――
「――あぁぁあンっ!」
二つをレーンの終点まで一機に下げた瞬間、機械的な震動が膣内で響いて”彼女”がベッドのスプリングを軋ませる程に身体を跳ねさせて高らかに喘いだ。
モーターのスイッチを入れられた野太いシリコンの性具はぶるぶると震えるだけではなく、鎌首をもたげて周囲に威嚇する蛇に似た動きで中程から円を描くようにうねり、肉壁を掻き回す。
「あぁぁっ、はぁンっ! はぁぁぁっ!」
ディルドは勝手に動いて性感を与えてくれるのだが”彼女”は奥へと自ずから押し込む。男が捩じ込んでくるかのように早く抽迭させ、根元まで押し込んだまま膣口を広げるようにぐるぐると回す。垂れ流される愛液が攪拌されて子泡が混じり、震動が膣内の至る所を肉襞の溝の一つ一つまでを震わせる。
「はぅぅっ! あふっ! イ……ふぅンっ!」
惚けて弛緩した虚ろな表情に似合わない、元々高めの声が更にトーンの高くなった熱の篭った声が締まらない口許から唾液と共に溢れ出る。何かを幻影と自身に伝えようとしている気配はあったが、性感に踏み潰されて言葉にはならなかった。
何時の間にか脚と共に直ぐ下からの震動に晒されている腹筋が軋みながら腰が上がっている。バイヴレーターを最奥に突き立てている手も右手だけになり、左手は揉み解すように掬い上げている乳房を捏ね繰り回している。
――人には何かに付けてもパターンが存在する。
手を変え、品を変えても最後の最後にはそれが良く顕れる。
例えば”彼女”の自慰の行ない方には、性具を用いたり、指だけの場合もある。また性具を使う時でも最初は震動を小さくしておいて徐々に強さを上げる事もあれば、今のように少しだけ性感を与えておいていきなり最大の強さの震動を身体に叩き込む場合もある。
しかし、それでも終着に至ろうとする場合は無意識に、半ば意識的に近い動きを取ろうとしている――今のように。
上げられた腰は突き立てているだけでは飽き足らず、自ずから、くいくいと空腰を遣い始め、左手で乳房を顔に引き寄せて突起を中心に齧り付き、もう片方の肉球を玩ぶ。勿論、其の最中に右手は小泡が混じっただけではなく濁りを増した愛液に塗れるバイヴレーターを粘つく水音を立てて抜き挿ししている。
てきぱきと手際良くこなされる動きは最早洗練されていると云っていい。
「ふぅっ! ひぅっ、ふうぅぅぅ……っ!」
己の乳首を吸い立てている口吻から喘ぎが漏れる。くぐもっているが切羽詰っている事は容易に分かる。
無意識的に、そして意識的に最後を求めて淫らに艶めく全身を眺める”彼女”は性感に蕩けて脱力しそうな身体と意識に鞭を打って力を振り絞る。
悦楽を劣情のままに求める所作が激しさを増していき――パターンの最後が行なわれた。
「ぅぅぅぅっ……ふぁああーーっ! ……はぁ、あっ、ああっ……ぁぁン……」
瞑られた目蓋によって視界が暗闇に覆われた瞬間、吸い立てられて真っ赤になっていた尖りが八重歯で齧られながらも尚強く口吻に吸引される。
しかし局部を嬲っていた両手はベッドの上に投げ出された――組み伏せられるように。
支えられていた乳房はたぷんと波打ちながら崩れ、寸前に最奥を擦り付けていた性具が好き勝手にうねる。
ぶるぶると震えながら足の甲まで伸びきる両脚の中心では噴出される薄い愛液が嵌っている震動であちこちに飛沫を飛散させて、シーツの上に失禁したような大きな黒い円と、其の周りに衛星の如く小さな染みを広げる。
ぶしゅっ、ぶしゅっと液が噴出する度に痙攣する全身と遅れて震える乳房が揺れる中で、殆どぼやけていた幻影の輪郭が強くなる。
決して広くない肩幅、緩やかな胴の稜線の幻影が絶頂で疲弊したのか凭れ掛かるように、あちらこちらに刎ねる白い髪が頬を掠めさせながら、シーツの上で炎のように広がる自分の木賊色の長髪に飛び込んで来たのを見て――メイ・グリンフィールドはほうと溜息を漏らし、”彼”が自ずから引き抜いたように、膣からずるんとバイヴレーターが抜け落ちた。
射精の脈動を打つように、震動を続けている――。
(――やっぱり、なんか倒錯的よね)
余韻の小波に浸かりながらの荒々しい呼吸も、バイヴレーターの駆動音もスイッチを切られて収まって、自慰の音がすっかり消えた深夜の静かな寝室の中でメイが心中でそう呟きながら、はぁと嘆息を漏らした。
快楽後のお決まりの虚無感の為に億劫なので、己が噴出したもので汚れたシーツは横で包まっていて、マットレスの上に直接履き直したショーツだけの裸体を横たわらせながら。
それで何が倒錯的かと云うと――少し恥ずかしいが――自慰の最後を思い返すと、明らかに自分からではなく誰かからの行為によって導かれる絶頂を得ようとしていたのだ。しかもベッドに自分から腕を繋ぎ止めるようにしていたのだから、かなり強制的である。
おまけに今日はこれで二回目なのである。
一回目は湯に浸かっていたら水面で揺れる乳房を見て何故か催してしまって――誰かに玩ばれている風に見えたからだろうか――そのまま指だけを使って湯の中で果ててしまった。
そして風呂場から出た後、通り過ぎる男の、おまけに同性の誰もが一度は振り返るサイズの胸を寝ている時まで締め付ける窮屈さを味わいたくないのでショーツだけの普段の夜着でベッドに飛び込んで暫くして気付いたら――自分の身体を弄っていた。
まるで性感を知ったばかりの頃のようだとメイは行為の仕方よりも回数だとか入り方に呆れている――それでいて嘆息の原因は呆れだけではなく、不完全燃焼とでも云うべき物足りなさにもある。
そして己を抱いている幻影はある特定の男性で、ちゃんと現実に存在するから本人に悪いような気がしている。
何時頃からか――と云う疑問はメイの中では既に幾度も繰り返された物であるので即座に自答出来る。
この広くて快適な自室の原因である、企業支配体制化に於ける最小単位では最強の兵器であるネクストを操る数少ない、謂わば選ばれた人間の総称であるリンクスの一人で、三大グループの一つGA社に所属するメイは、同業の、しかし彼女と違って何処にも専属せずに独立して傭兵稼業を営んでいる――とはいえ現在では全てのリンクスは一応、リンクス統制機構であるカラード傘下の傭兵となっている。勿論、建前でしかないが――新星、大型ルーキーと見られている新人のリンクスと懇意の間柄であった。
とはいえそれも多少、一方的であった。
というのもリンクスどころか人間としても新人の彼は、生意気な所の無い素直な性格の上に、中性的な顔立ちの美少年であって――事実、メイは最初性別を判断するのに多少迷った――母性本能を擽られた。
もしかしたら気にしているのかもしれないので本人には悪いと思うのだが、彼はリンクスとネクストを機械的、そして生理的に繋ぐAMS技術を研究しているアスピナ機関の実験体であり、何故そうなったか過程はさっぱり分からないが尻尾が生えていて、しかも長毛の犬のようで非常に可愛らしいのだ。
口数の少ない、と云うか最初出会った時、つまり同業者として組んで共闘した際は本当に喋れなかったのが、更に動物のような印象を強めていたのもあって、更に母性本能を煽られて、以降は少し歳の離れた弟のように扱っていた――しかし、彼には本当に動物の部分があったのだ。
ある日の事。
メイはカラードの本部にて少年と会って、それまでと同様に出会い頭に抱き締めた。
真正面からだろうと背後からだろうと抱かれれば、其の大きな胸を意識せざるを得ないのを分かっての事で、年下の男の子への些細な悪戯のつもりであった。
だが其の日の少年は普段とは様子が違っていた。抱き締められたまま、射精してしまったのだ。
慌てたメイはトイレへと連れて行って彼の下着やズボンを洗わせ、そして自分も其れら越しとはいえ衣服に付着した精液を洗っていたら個室へと引き摺り込まれて――レイプされてしまった。
行為としては胸に男性器を尽く擦られて幾度も上半身に射精されただけで性器を挿入される事は無かった。
とはいえ性器挿入の事実の有無によって強姦が軽度か重度であるかは決められるものでもない。
そして何故、少年が唐突にそんな事を行ったかと云うと――動物に対して人間は常に発情期の中に居るといわれるが、彼は人間の恒常的なものに加えて更に動物の極端な一過性なものが交じった発情期を迎えていたのだ。
小柄であるし、前述の通り中性的であるから意識していなかったが、彼は精通もとっくに終えている男、牡だったのだ。
知らなかったとはいえ発情期の牡に牝が擦り寄ったのだから交尾を迫られるのはある意味で当然の成り行きである。もしかしたら、性器も挿入されていたかもしれなかった。
だが少年をリンクスとしてマネージメントし、実際の戦闘中にはオペレーターとして補佐し、そして私生活では恋人であるセレンと云う女性にメイは助けられた。
そして其の日、自室に帰ったメイは帰宅した其の場、玄関で少年の荒々しい獣性を、自分の乳房を蹂躙したペニスを、いや少年自身を想い出して自慰に耽った。
そして自分の身を心配して電話を掛けてきたセレンが直後に電話の向こうで少年に襲われて、男女の交わりの一部始終を実況で聞かされて昂って、また己を慰めた。
それからである。メイがはっきりと自分が欲求不満であると自覚したのは、いや、と云うよりも、自覚させられたのは。
あの日に行なったのも、今しがた行なった行為も、絶頂こそ迎えるが物足りないのだ。
だからあの日メイは疲労と抱きながら就寝する直前に恋人を作ろうと思った。
しかし、年齢相応の凛とした美貌に少女らしさも漂わせていて、高くて甘やかな美声と、女性としての魅力は胸だけではない彼女であるから言い寄るような男、つまり恋人候補は多いと思われるが――現実はそうはならなかった。最大の障害がリンクスとしての肩書きだった。
ネクストに乗っていればと云う条件があるとはいえ何せ個人としては最強なのである。
アーマード・コア(AC)と呼ばれる兵器群の中で現在では最上位のネクスト相手の場合、下位に当たる現在では絶滅種のハイエンド・ノーマルや大小問わず、あらゆる武装勢力の主戦力であるノーマルでは全く歯が立たない。
それはつまり、GAの一般社員には当然、ノーマル乗りやACの更に下位の兵器であるMT乗りも含まれる訳で、所属が同じなのでありえないが、もし戦場で相対すれば彼らは一瞬の内にメイの足元に転がされる事を示す。
これは男女平等が根付いた世の中とはいえ未だに両性の心の中にそれなりに持たれている、男は女よりも強くあって欲しいと云う希望のレベルの話ではない。ノーマルなどの通常戦力を操る者達にとってはネクストは戦略兵器であり、一応一人の人間であるリンクスにも其の印象は抱かれている。
常に畏怖と恐怖が織り交ざった感情で以ってリンクスは、メイ・グリンフィールドは見られているのだ。
だから一般人には一個人として彼女を扱う事は中々に難しい。
リンクスには件の少年やメイの例の通り、容姿の整った者が多く、女性としての男性としての彼らを賞賛する趣でのファンクラブのようなものも存在するが、其れも矢張りリンクスである要素を多分に含んだ崇拝めいたものだ。
恐らくファンクラブ会員達の崇拝の度合はクレイドルで流行しているアイドルの物とは比べ物にならないだろう。向こうの方は接触出来る機会が極僅かだが在る訳で、もしかしたらお近付きになれると云う身の丈に余った欲望をふんだんに一般の極小の器に湛えているのが多いだろうが、リンクスは仮にも戦力そのものだ。
以前の戦争によって企業そのものからは多少嫌われているが曲りなりにも支配者達の後ろ盾があるから、機嫌を損ねれば殺される可能性だってある。そしてこれは冗談ではすまない。
常に何機もの通常戦力、つまり人間を殺めている彼らに人を殺す躊躇は一般人に比べれば極僅かだ。人懐っこく、多少羽目を外し易いきらいがあるとはいえ其れも年齢相応であろう性格のメイですら、誰かを本当に排除したいと思ったなら簡単に実行出来ると本人もぼんやりと思っている。
寧ろ、ぼんやりと思っているからこそ可能の証左なのかもしれない。
そんな風に他勢力からは恐れられ、仲間からは心強く思われながらも畏怖され、更に崇拝される。印象だとか感情と云う点では明らかに個人の器には入りきらない量のものを一身に受け、人並みを遥かに超える美貌を持つメイに尻込みする男は決して少なくないだろう。
であるから彼女だってそれなりに自分の魅力には自信があっても特定の相手が出来ない。
もし先のクレイドルに移住出来て彼女をリンクスと知らない一般社員よりも更に一般の人間と知り合えたら話は別だ。だが企業上層部の方針で偶に休暇でクレイドルに行けても、地上に住まう事を余儀なくされている、つまりリンクスだと知っている集団の中に居続けるしかない訳であるから其れも儚い夢である――。
「あ~あ。考えれば考える程、なんだか嫌気が差してくるわね……ん」
天井を仰ぎながらメイがなまじっか男を知っている成熟した身体を持て余すのはもう少し続きそうだと云う殆ど絶望感に苛まれながら放っていた腕を額に持っていこうとしたら、手の先に固い感触が触れて其方を見遣る。
使用したまま放置していたバイヴだった。付着したままの愛液が指に絡み付いている。
自身の云う所の倒錯的な妄想を肴にして一人で性感を得ようとしていた道具であり、また果てた事を表わす何よりの証拠であるので終わった後では、自己嫌悪感めいたものの所為で出来れば少しの間は存在を意識したかったが、そうもいかない。
今は見たくないが、今度何時か――恐らく明日の、既に今日の深夜に――使う為には付着した液を拭き取っておかないといけない。愛液が付いたままだと雑菌の温床になりかねず、其の状態で使えば他人から移されるのではなく、自分だけの責任で性病に掛ると云う毎日性的な妄想に耽るより更に惨めな結果を招くだろう。
「はあ……」
心底面倒だと思いつつもメイは其れを拾い上げた。自分の体液に触れないようにしても盛大に潮を噴いた所為で濡れていない所のほうが少なかった。
しょうがないので最も被害が少ない底部を摘みながら宙ぶらりんにして持ち上げて、
(最近じゃコレにも凝りだしちゃったしなぁ。とほほ)
と、また嘆息を漏らす。
あの日までは一つしかなかった性具であるが、気付いたら一つ、また一つと段々増えてしまっているのだ。
――やれ他に比べて震動が強いのや、やれ他に比べて太いのや、やれ震動機能が無いのでバイヴレーターではなくディルドで、肉感がいやに再現度が高くて陰嚢を模した底部は平面なら何処にでも張り付けられるのだとか、やれ何処でも何時でも使える小さな卵型のローターだとか。
様々なタイプのものが秘密を保持するベッド脇のサイドテーブルの一番下の引き出しの中に収められている。
使用後に使う洗浄用のアルコールなんかもあるぐらいだ。
摘んでいるモノをくるくると回転させて眺めながらメイは呟いた。
「……やっぱり本物には叶わないわよね」
確かに形は模してあるし、人並みより大きいのかもしれないが、宙でぶらぶらと揺れている玩具は底部のプラスチック部分以外は陰茎に突起が幾つも生えていて、そして亀頭部までもが透き通ったピンク色だ。
もしコレと同じ色を持つのが本当に居るのなら病気どころの騒ぎではなくて、地球外の生命体のモノになってしまうだろう。
行為中は興奮していたのもあって気にならなかったが咥えても口腔に広がるのは牡の体臭や性臭ではなく、どうにも言えないプラスチックの苦味だ。
先程例に挙がったディルドの方にしても色や質感は手にしているのはよりは似ているが味はやっぱりプラスチック。
ちなみにメイが買い付けているのはGAグループ内の企業である有澤重工に連なる会社からである。
企業によって全国家が転覆した国家解体戦争以前のGAと有澤の立身国は元から其の部門には軒並み突出していた為に伝統もあるのだが、どうにもメイにはこのケレン味が性に合わない。
しかし他にアダルト部門を扱う企業が少ないし、そもそもGA所属である為に他企業から物を買うのは如何にも気が引ける。特に他企業品の購入に制約がある訳ではなくて、あくまで何となくである。
「……トーラスの買ってみたいなぁ」
有澤以外にアダルトグッズに力を入れているのは他にトーラスぐらいである。
トーラスの前身は元GAグループ傘下であった旧GAEと云うGA伝統に加えて、新興であったアクアビットもあって有澤と違って斬新な商品が多い。
通販サイトを覗きながらメイを画面に釘付けにした商品は数多かった。
「トーラス、か」
トーラスの曲線の白いロゴに想起されて、思考が進んでいく。
リンクスである彼女がトーラスと考えれば自然に其処に所属するリンクスへと繋がる。しかも一人しか専属は居ないので殆ど自動的にリンクス、ミセス・テレジアの名、年齢の割には妙に若い外観、身体には似つかわしくないが年齢に相応しい言動を。
そしてメイはテレジアに関連して更に何ヶ月か前の事を思い出した。
ちなみにトーラスはインテリオルグループ傘下であるがカラード管轄下のリンクスの間とグループ同士の嫌悪は大体関連性が無いと言って良い。
そんな訳でメイとテレジアも顔見知りである。
それどころか向こうは同性にしてはいやに淫らな手付きで豊満な胸にセクハラしてくるぐらいだ。ふざけているだけだとメイは思うようにしている。
そしてミセス、と云うぐらいだからテレジアは既婚者でもある。其の旦那ともメイは顔見知りだ。
初めて会った時と思い出そうとしている出来事はちょうど同じ時である。
其の日、メイがカラード本部の廊下を歩いていると、一目で見惚れてしまうような男性とテレジアが一緒に歩いていた。テレジアは眼鏡を掛けている割にはなのか、眼鏡を掛けているからなのか直ぐにメイに気付いて声を掛けたが、隣の男性の、表現することすら叶わない類稀なる美貌に魅入られていたメイは近寄ってくるまで気付かない。
「――あっ? テレジアさん?」
「こう言っちゃなんだけどさっきからずっとあなたの前に居たわよ。しかも声も掛けてたし。まぁ、理由は分かるけどね。あなたが食い入るように見詰めていたこの人は私のダァー・リ・ン」
語尾にハートマークが付くような甘ったるい言い方で隣の偉丈夫の脇腹をねっとりとした手付きで撫でながらテレジアに紹介されてメイも名乗る。
「あ、テレジアさんの旦那さんなんですか。始めまして、メイ・グリンフィールドです」
「やあ、こんにちは。君がメイちゃんか。噂はかねがね聞いていたが――噂以上だね」
そういうとミスターは(ミセスの妻なので以降このように表記する)長身を屈ませるようにしてメイにぐいと顔を寄せた。メイが「噂?」ときょとんとしていると、ミスターは何か確かめるようにうんうんと頷いて、
「きゃあっ?! ちょっと! なにを……!」
初対面だというのに突然に乳房を揉みしだいてきたのだ。
妻に倣うかのようなセクハラを受けてメイは其の手を振り払おうとするが、
「はンっ! あっ、あンっ……だめっ……やぁあ……」
ミスターの大きな手に巧にGAの制服と上着とシャツ、そしてブラジャーと三枚もの布に阻まれながらも乳頭を探り出されて、こりこりと捏ね繰り回されてしまい、其の頃も少年に煽られた劣情を持て余していたメイの身体は性感をあっさりと受け容れてしまった。
振り上げようとした腕は硬直してしまって、宙でぶるぶると身体ごと震えていると、木賊色の長髪を整った鼻梁で掻き分けられながら頬と耳元に人肌の温かさが近寄ってきた。
「おっぱいが大きいから鈍感とは限らないけど君は相当敏感だね。服の上からなのに乳首が固くなってるのが分かるよ。それに実に揉み応えがある。是非、直接触りたいな」
「はぁ、ぅンっ……え? だ、だめっ、やめて、やめて下さい……ひあっ?!」
乳房を玩ばれている上に囁くような甘い声色に耳穴を、鼓膜を愛撫されてメイが人差し指を噛んで声を噛み殺そうとしていると、片方の胸から離れていった指に上着のボタンをあっと云う間に外されてしまった。
乳房のサイズが大きすぎる為にボタンが留めきれないので谷間がどうしても覗けてしまっているシャツが露になると其の隙間に無遠慮に手を突っ込まれた。
「いやぁ……おねがい、やめっ、うぅンっ! あっ、そこ弱いからだめ……ああンっ!」
固くなった乳頭のせいでブラジャーは押し上げられていたから其の中に大きく滑らかな肌の手が侵入してくるのは容易だった。直に柔肉を揉まれ、尖りを親指で押し潰し、弾かれてメイは胸どころか身体も掌中に収められてしまったように意思とは裏腹に抵抗が出来ずにいた。
徐々に高くなりだしている喘ぎ声を潜り抜けるように低い声が耳朶に吹きかけられる。
「感じてる声も顔も可愛いね。ここ? ここが弱い?」
「そんな事言わな……ふあっ!」
「やっぱり敏感だ――ねえメイちゃん。僕と”お友達”にならないかい?」
耳に弱いキスをされながらの提案に身体をもぞもぞと捩りながらメイは「お友達……?」と聞き返した。
「そう、”お友達”。遊ぶ場所はトイレの個室とか、人通りの少ない廊下とか。それで遊ぶ時はお互い裸になる。どうだい? 楽しそうでしょう」
耳から伝わってきて背筋をぞわぞわとなぞってくる性感にメイが喉元を曝しながら、彼の云う所の意味を噛み締めていると今度はシャツのボタンすらも外されていく。
「もう少しで大きなおっぱいに、可愛く尖った乳首も見えちゃうね。それでどうする? ”お友達”、なる? そうならこれから直ぐにでも君と遊びたいなぁ」
「あっ、あっ……だめ、だめっ……だめぇ……」
本人自身もどう答えるか分からないまま、突然に身体を弄り始めた男に視線を合わせようと勝手に落ちてしまっていた目蓋を開くと、廊下の壁とテレジアの姿が眼に入った。
其の瞬間にメイはまどろみ始めていた意識を覚醒させた――こんな場所で裸にされそうになっている事、そして相手の妻の前で感じている事に気付いて。
「やぁっ! ……ンン!」
メイはミスターの大柄の身体を押し退ける。
指に摘まれたままだった乳首が強く引っ張られて、ぴんと弾かれて小さな痛みが交じる心地良い快感が芯が入り直りそうだった意識を再び蕩けさせようとしそうだったが慌てて自分の状態を確かめる事で誘惑を撥ね退ける。
今、一際強い性感が奔った右の胸の方はブラジャーのカップが摺り下げられていて全てが露になっていた――室内とはいえ”外”だというのに。
「――っ!」
片方の乳房だけを露出させている厭らしい己の姿に羞恥で顔を真っ赤にするメイはブラジャーを上げ、肌蹴たシャツと上着の前を押さえると夫妻に目もくれずに其の場から走り去った。
今の様や、突然に身体を嬲られて感じてしまっていた先程の自分や、テレジアにどう思われているかを感じてメイは恐怖に近い感情にドクドクと高鳴る鼓動と早い足音が耳朶を打つ。
しかしミセスとミスターはと云うと、
「イケると思ったんだけど」
「あの子は素質があるように見えたが、少し性急すぎだったかな」
二人して同じベクトルに向かって口惜しそうに漏らしながら同時に指を鳴らしていた。
「はぁっ……はぁっ……はっ」
急いでトイレの個室に駆け込んだメイは鍵を掛けた扉に背を預けながら全速力での走った息苦しさに喘ぐ。
尚も吐息を吐きながら自分の状態を再確認すると走りの所為でブラジャーがずれていて、またの最中に乳が揺れて乳頭が布に擦れていた為に勃起はそのままどころか寧ろ強くなっていた。更に
(やだ……濡れちゃってる)
じっとりと湿ったショーツの股布が股座に不快感を与えている。
セクハラの一線も越えていた行為に秘所を濡らす程感じてしまった自分に改めて呆れつつ、メイはトイレを見ていた。疲れた身体には椅子としての役割を与えてくれるだろう。荒々しい呼吸を落ち着かせてくれるだろうと。
だが寧ろ時間を経る毎に彼女は息遣いが荒くなっていくようだった。
違う熱が吐息に込められている。
胸乳を露にした状態で個室の中に自分は居る。
考えた瞬間に、殊更にショーツが蜜を吸い込んだ。
「あっ……はぁっ、はンっ……ああっ!」
恐る恐る指がブラジャー越しの突起に触れ、ショーツの上から染みの中心に触れて、直後にはトイレに座ったメイは特に乳首を強く虐めながら股布をずらして膣に指を入れると云う風にあっという間に局部を弄り出していた。
そして最後にはペニスの穂先を自身に突きつけている、あの少年の姿を思い浮かべ、背中を背後のタンクに預けて絶頂を迎えたのだった――。
「――急に胸触ってくるなんて、どうかしてる」
そう言いながらも性感を感じていた上に、其れを肴に愉しんでしまった自分もどうかしている人間と同類だとメイは思った。
それに正直な所を言えばもう少しでミスターの手によって、胸だけで果てしまいそうでもあったのだ。
あの滑らかな手を振り払ったのは其れが一番怖かったのだろう。
そして思い出せばカラードに勤めている友人から彼の噂は聞いていた、あけっぴろげな素行に――身体的な特徴も。
メイはふと手に取っているシリコンの棒をちらりと見た。
(これより大きいのかな)
そう思うや否や、もう少しで自分を絶頂せしめる所であった美男の見知らぬ裸体を――そして何故か見た事のある少年の裸体、と云うよりは股間を思い描いてしまって、
「……あー、もうっ」
恥ずかしさを掻き消すように口を突いた言葉を吐き捨てながら、ポイとバイヴレーターも放り捨てて、布団を頭まで被ったのだった。
メイはそれから少ししてから起き上がると、少年を組み伏せる妄想を抱きながら性具の上に跨り、二回程全身を痙攣させてからアルコールで除菌した――。
さて、ベッドの中でメイが文字通り悶々としていた夜が明けての昼時。
(痛かったなぁ)
冬だと云うのにシャツの袖をまくっている少年が、露になっている二の腕に張られている絆創膏を眺めながらカラード本部のエントランスを歩いていた。
そこらかしこに立ててある手製の看板に書かれているのだが、本日はインフルエンザの予防接種週間の三日目である。本来はカラード職員の為に設けられた物だがリンクスでも独立傭兵組の殆ども利用している。
病弱と云う訳でもないが病気に掛ると長引く彼であるから予防接種は重要で、スミカも体調管理も仕事の一つだと常々言っているが其の意味する所に寝不足を避けるようにと云うのも含まれている。しかし、そちらの方は言われている方も言っている方も守れない日が一週間の中だとやや多い。
ちなみに今日は外出時なら殆ど一緒に居るスミカは居ないので少年一人だけである。
次の依頼で必要だとみているネクスト兵装が何処かで不手際があったのか、既に届いてなければいけない筈なのにまだ届いておらず、文句を付けなければいけない仕事があったのでどうしても来れなかったのだ。
彼女も予防接種はここで受ける予定だったのだが。
そして出発する前いやにスミカは一人である事を心配していた。幾ら少年が文字通り少年だとはいえ過保護だと思えるが――其の危惧は当たっていた。
直撃である。
例えば注射をする女性の看護士は消毒用のエタノールを塗る際などの手付きが妙に艶かしかったり、また注射をしたのは別の看護士だったのだが、やけに顔が近くて吐息が耳に当たっていり、絆創膏を張った看護師は妙に彼の腕を引き寄せたものだから胸にすこし当たる事もあった。
彼女等は出来心の悪戯心でそれらの行為を行なったのだろう。しかし悪戯をする以上は反応を求めるのは必然であるが、残念ながら思った以上のものは少年からは得られなかった。
何せ彼女等の行為のどれもが普段からスミカにやられている事なのだ――しかも悪戯のような些細なレベルではない。
それに胸に腕が当てられたのもあったが、スミカの方がサイズが大きいのも痛かった。
かくして看護士等の、いたいけな美少年が性的な悪戯に顔を茹で上げたように真っ赤に染めて、もじもじと恥ずかしそうな仕草を見せるのを愉しもうと云う企みは、現実には少年の反応は迷惑そうとまでは云わないが、はっきり言えば殆ど無関心で終わっていた――それなりに恥ずかしかった事も事実だが、何せ想像上との落差が著しく激しかったのである。
と多少の反応も無いわけではなく――全部、悪戯の執行者ではなくやがてスミカに向かうのだが――少年は早く帰りたいなどと思う訳だが、今日はそうもいかない。
カラードのあこぎな商売である、予約するだけで金が掛かるリンクス用のネクスト・シミュレーターのレンタルの予約があるのだ。
つい先日にも予約を入れたのが、ちょっとした事で予約料金どころか、其の日一日を潰してしまった事があるので今日こそ確り使わないとスミカに怒られてしまう。
其れまで時間があるのでカフェなどで時間でも潰そうかと考えながら少年は通路を歩いていく――通りすがる女性職員達の二度見、三度見、果ては四度見まで達する視線を肌にひしひしと感じ、数人連れ立っているのが通りすぎてから「かわいいー」と云うような黄色い声を耳にしながら。
普段よりそれらが多く、強い気がするのは矢張りスミカが居ないからなのか。
通り過ぎるだけの人間に容姿を褒められて嬉しくない訳は無いのだが、年頃である為にどうせならカッコイイだとか呼ばれたいと思ってしまって、でもやっぱり嬉しいと云う風に何度もむずむずするような心持に同期するように頬が痙攣するのを少年が自覚していると――、
「――尻尾くぅーーん!」
語尾にイクスクラメーションマークを二つ付けたが本当はハートマークの方が圧倒的に相応しい、イントネーションが尻上がりの嬌声染みた声が背後からした。
久しく聞いていなかったが聞き覚えのある声に振り返ると少年の視界が真っ暗になった。
一瞬、殴られでもして視界がブラックアウトしたのかと思いかけたが、顔全体を覆う感触と声の主を思えば理由は全然違った物で、
「――っぷあ……あの、お久しぶりです。メイさん」
本気で息苦しいので包んでいる物から少年が顔を抜け出させながら見てくれは異常な様だが至極全うな挨拶をすると今度は木賊色の長髪と其の隙間から覗ける白い肌が触れてきた。
「ホンット、久しぶりだね~」
抱き締めながら白い髪に顔を摺り寄せてくる。此処まで来ると完全に扱いは犬猫だ。
そんなのは慣れているからいいとしても流石に少年でも彼女の、スミカよりも更に大きい胸に顔を圧迫されては心拍数が上がっていくのを自覚している――異性の胸が密着しているのだから大きさなど関係ないが。
それに周りの視線も痛い。
男性のは殆ど全てが少年への羨望と嫉妬の眼差しだが、女性のはメイを破廉恥だと思うか、微笑ましいと思っているか――矢張りメイを羨ましいと思っているかに分かれている。
初めて会ってからと云う物の通例儀式のようになったこの熱烈な抱擁であるが、少年は今更ながらに思い出した。
以前に此の状態を発端に彼女に、生理的な症状があったとはいえ――酷い行為を行なった事を。
だから疑問でならなかった。
普通なら最早眼も合わせたくないどころか、視界にすら入れたくないと思うだろうが――メイは以前に可愛がってくれている。
疑問を頭の片隅に忍ばせながらも「かわいいなぁ~もう~」と猫撫で声の彼女は楽しそうであるから蒸し返すのも何か居心地が悪くなりそうだと思い、前までなら抜け出そうとするのを謝罪も含めて、そのままでいると、
「――ねえ、尻尾君」
「は、はいっ」
それまでの高い声だったのが途端に小さな、しかし鼓膜を震わせるには充分な低い声で囁かれて少年はぞくりとした。また抱き竦められている腕の力が強くなった気がするのと、何か嗅ぎ覚えのある甘い香りが立ち込め始めた気がして、何時何処で嗅いだかを思い出そうとする。
そして思いだした瞬間に、見掛けは小動物を可愛がる仕草のままで頭に頬を擦り寄せているメイが更に小さくした声で少年の白い頭髪を顔で掻き分けて耳元に唇を触れさせながら言った。
「――セックスしない?」
「え?」
耳朶を撫で、頬を擽る吐息に含められた香りが鼻腔を擽る――牝の芳香である。
至近距離で鼈甲色の瞳が劣情の炎を秘めて少年を見据える。
更にメイは頬を摺り寄せているだけではなく、微細だが身体そのものを擦り付けてもいる。丁度、発情した牝がフェロモンを撒き散らしながら牡に身体を摺り寄せているのに似て。
「――ね、分かる? 私、もう乳首固くなってる」
ぐっと押し付けられた乳房の先に衣服越しとはいえ確かな尖りを感じられて、少年は生唾を呑み込んだ――女のシンボルで以って昂奮している事を教えてきた事に、真正面から劣情をぶつけられる事に。
しかし直情的な欲求はスミカで少しは慣れているとはいえ、メイは恋人ではないし、衆人に見られているし、唐突に過ぎるので少年が躊躇を表わす風に「あの、えっと」と口篭っていると直後、見えなかったが気配で分かった。確かにメイが笑ったと。
「するの? しないの? 早く答えないとここで服、脱がせちゃうよ? 皆に見られながらするのも気持ちイイかもね」
声こそ甘みがあったが脅しの言葉を突き付けられて、更に膝で股間を突かれた。
それは彼を煽るよりは股座にあるモノの具合を確かめる為だったらしい、「あはっ、やっぱりおっきいね」とメイはまた笑った。
少年は焦っていた。
これから長い時間を生きたとしてもそうそうお目に掛れないサイズの乳房に顔を埋められながら股間を刺激されてしまったのだから、当然のように性器は生理反応を始めていたし、メイの動きが徐々に妖しさが増していて周囲に怪しまれるのも時間の問題となっている。
それに彼女は本当に服を脱がしに掛っているのだ。抱き締めていた腕は頭を撫でると見せ掛けておいて、徐々に身体の隙間に忍び込ませてシャツのボタンを外そうとしているのが分かる。
困惑しながらも一先ず場所を変える為に少年は一言、「……はい」と言った――言ってしまったと云った方がいいかもしれない。
するとメイは身体を離して――それでも乳房の先が当たっていて、身体を小刻みに左右に捩って先端を擦らせている――その内にベルトまで外そうとしていたのではないかと思えた手で彼の肩を掴んで、
「うん。じゃあ、行こっか」
顔に満面の笑みを湛えながら、底抜けに明るい声でそう言った。
軍服の上着の左腕に貼られている、”スマイリー”と云う綽名の由来でもある《メリーゲート》の、エンブレムと同じワッペンよりも明るい笑顔だった。
そして周囲の視線を風と流しながら少年の手を掴んで引っ張っていく。
まるで弟を連れ立って歩く姉のようである。
急いでいるメイの足取りは広く、そして早い為に少年は踏鞴を踏みながら何とか追い縋る。何処に行くのかは定かではなく、只、ぐいぐいと力強く引っ張られるままに。
「わっ」
すると突然にメイが立ち止まったので少年が其の背中にぶつかった。
振り返った彼女が衝突の弾みで床に尻餅を突きながら鼻を押さえている少年と同じ視線になるように屈みながら困ったように言った。
「尻尾君。そういえば今お昼時だからトイレ使ってる人、多いのよね。どうしようか?」
「あいたた……そう言われても……」
先程の妖艶な振る舞いは何処に行ったのか、屈んだまま――座っている少年にはスカートの中の白いショーツが見えているが、気付いていないのか、気にしていないのか――顎に指を遣る少女めいた仕草で考えている。
しかし見掛けこそ可愛らしさがあるが、考えている内容は性交をする場所についてと云う、とんでもないギャップがある。
先程から驚かされているばかりで何と声を掛けたら良いか分からずに居る少年は、スカートの暗がりをちらちらと盗み見しながら様子を見守っていると、メイは何か思い付いたらしく、ポンと握った拳の底で掌を叩いた。
「そうだ! 今日シミュレーター予約してる?」
「え? は、はい」
「じゃあ決まり。いこっ――っと其の前に」
まるでテーマパークで次に乗るアトラクションを決めたぐらいの感の声を上げたメイは少年を立たせると、また手を引っ張っていき、其の少し先にあった職員用の売店でウェットティッシュを購入してから、エレベーターの前に立った。
到着を告げるチャイムが鳴ってドアが開く、降りる職員達を待ってからエレベーターの中に乗り込む。
他にも数人の職員が居たとはいえ、手を握っているだけでメイは何も少年に話しかけなかった。
そわそわとした様子で階数表示のパネルを見詰めている。降りる階までに扉が開く度、じれったいのか握っている手の力が強くなった。
そして目的の階に着いた途端、開き切っていない扉目掛けて駆け込んだ。誰かが待っていれば真正面からぶつかるような勢いであったが、幸いにも誰もいなかったので事なきを得た。
だが引き摺られている少年は腕と脚が大分離れて危うく転げそうになった。
ずんずんと誰も居ない廊下を歩きながら「部屋、どこ?」と聞かれて少年は予約している部屋の番号を答える。言った直後に其の部屋の扉があった。
メイに扉の前に立たせられた少年は急いでポケットからリンクス一人一人に配られているIDカードを取り出してスリットに走らせると、ガチャリと開錠の音が鳴って、ドアがひとりでに横にスライドして壁の中に埋もれた。
「ほら、入って」
部屋を前にしているのは少年の方であるから背後のメイに背中を押されて少年は矢張り踏鞴を踏みながら室内に飛び込むように入ると直ぐに後ろで扉の閉まる音がした。
仮想空間上のネクストのフレームや武装、仮想的の種類や、地形の設定をする為の電算室の似たのが今居る部屋で、もう一つ先に座席とAMS装置が一体化したシミュレーターがある。
ネクストがカメラで捉える光景がリンクスの視角となるので、飛行機などの訓練に用いられる物とは違ってモニターは無い。
多量のデータが必要なので背後に物々しい機械や其処から多数のケーブルが繋げられているが、並のより大きくて厳ついマッサージチェアーと云った外観である。
またリンクス同士が仮想空間上で交戦するオーダーマッチの為に間隔を開けて其れは横に二つ並んでいる。
そしてシミュレーターを起動させるには勿論、今の部屋のコンピューターを弄らなければならないのだが、バランスを取り直そうとする少年の傍らをメイはそれらキーボードやディスプレイには目もくれずに通り過ぎていった。
「ちょ、ちょっと待って……」
此処に来て事態の異常さを呑み込めた少年が疲れたのか、あっちへこっちへと引き摺り回された足腰が悲鳴を上げていて、よろよろとあちこちに手を付きながら覚束無い足取りで既に隣室に入った彼女を追っていくと――
「わあっ! メイさんっ! 何を……」
「ン、何って? セックスするんだから脱いでるの。当たり前でしょ。それとも尻尾君は着たままするのが好き?」
隣室のシミュレーターが設置されている暗い部屋では軍服の上着やシャツを既に足元に落としていたメイはブラジャーのホックに手を掛けていた。
驚く少年の眼の前で金具が外れたと同時にブラジャーから手が離されてカップの支えを失って、ぷるんと揺れながら大きな肉球が全貌を露にする。
前に襲って上半身を暴いた時の光景が朧げながらも浮かび上がり――其の時と現在の差異に気付いた。
「分かるかな? 私、また胸が大きくなっちゃったんだ。もう重くて大変」
少年の考えを読んだようにメイはそう言った。
また、と云うからには身体は成熟しているのにも関わらず、其処だけ大きくなったのは前にもあったか、それとも成長期を終えて止まっていたのにまた成長したと云う意味なのか。
メイはホックを外し、ファスナーを下げて短いスカートを床に落として「こんな事ならもっと可愛いの着てくればよかったな~」と下着を眺めてぼやいた。
瓜の如く大きな、それでいて形の崩れていない女性のシンボルを見せ付けられて少年は喉筋を波打たせながら生唾を嚥下する。
そんな風な、自身の裸体を見た彼が劣情と緊張の様子を見せた事に――男として自分の女を賞賛された事に――気を良くしたらしく、メイはポージングをとって更に己の女を主張する。
微笑みだったり、ちょっとおどけた風だったり、物憂げな艶かしい表情だったりと、ころころと表情を変える。同時に腰を突き出したり、掌で乳房を下から掬い上げたり、両腕で挟んで強調してみたりと、まるで撮影のようだ。
見せられている、誘われている少年はと云うと、股間を膨らましながら一身に其の様子を見詰めている。
「――どう? そそる?」
右腕で乳房を抱えるようにしながら谷間に腕を下から挿し入れて、両側から双丘を押さえ付けて歪ませて、谷間の間から生えたような指先をちろりと舐め上げると云った風に、男性器を乳房で挟んで愛撫する、所謂パイズリの真似をしながらメイは揶揄うように言った。
嘗て少年にトイレの個室の中で無理矢理にさせられた行為を思い出させるように。
上気した様子で荒い息遣いの呼吸をしている少年は無言で朱に染まった顔を頷かせた。心なしか前屈みになって。
彼の様子に擽ったくなる小さな微笑をしたメイは自分の指をぱくりと咥えて、頭を前後させる。今度はパイズリに加えてフェラチオの真似だ。
頭を沈み込ませる度に細い指の上に其処まで深くしている訳でも無いから苦しい筈もないのだが、まるで太いモノが口腔を進んでいくように「ンっ、ンっ、ンっ」と妖しい声を喉から鳴らしている。
そのまま尻を床にぺたりと落とした。まるで立っている男の前に跪いて奉仕しているかのようだ。
そして征服感を煽るように濡れた瞳で媚びるような上目遣いで少年を時折見遣る。
メイの淫靡な真似に辛抱堪らなくなったのか、少年は股間に痛い程の脈動を感じながら押込められている肉欲を解放させようと――また我慢し切れないのか、盛り上がりをズボンの上から擦りながら――ズボンのファスナーに手を掛けようとすると、
「あ、私がしてあげる」
人差し指と口吻の間に唾液の糸を紡ぎ、束縛していた釣鐘を揺らして解き放つと、四つん這いの格好でにじり寄るメイが彼の下半身に取り付いた。
金属音がカチャカチャと鳴ってバックルからベルトの帯がするりと抜いて、布地を寄せてホックを外し、ファスナーを下げてから「えいっ」と一息でズボンを下ろしに掛った。
手付きの加減でトランクスの背面で少年の尻尾が通っている穴を抑えるマジックテープも綺麗に外されていて、勢い良く下腹部の衣類が外れると――
「きゃっ?! ……わぁ」
黒い影が躍り掛かったかと思うや、ぺちんと音と共に頬を打たれてメイが驚く声を上げて、叩かれた側の片目を瞑ったが直ぐに感嘆の声を上げた。
眼を爛々と輝かせながら見上げる彼女の前に鉄の棒のように硬さを見せている少年の肉棒が熱り立っていた。
「あの時から結構おっきかったけど――すごぉい、こんなになっちゃったの?」
驚いた声でそう言いながらメイは、眼前のモノを中心に首を回して左右からじっくりと鑑賞している。
じろじろと見られている上に女性に男のシンボルを褒められているからか、少年は無意識にペニスを跳ねさせた。
「――あっ。ビクンってなった。こんなにおっきいとちょっと動いただけで揺れ幅も結構あるのね。それに、あン……すごい臭い、はぁあ……嗅いでるだけで濡れちゃいそう」
牡臭が鼻腔を掠めたのだろう、メイは眼を瞑ってから肉傘の段差に顔を寄せて思い切ったように鼻孔から空気を取り込んだ。直後、蕩けたような甘く、熱い溜息を肉棒に拭き掛けて、身体をぶるりと震わした。
「ねね、どうしてこんなにおっきくなったの?」
「あの……分からないです」
「あ、分かったぁ。おっぱいも揉まれると大きくなるっていうし――尻尾君、セレンさんといっぱいセックスしたんでしょ? それもしまくった、ってぐらい……えぇ~~、これは不自然よね」
そう言ったメイの言葉に少年が鸚鵡返しで「不自然?」と尋ねる。
「だってさぁ、尻尾君みたいな可愛い男の子のおち○ち○っていったら小さくて、皮も被ってて、それで凄く敏感ですぐ出ちゃうってのが相場――っていうかそうあるべきよ。その方がお姉さン、虐め甲斐があるもの」
「はぁ」
「なのにコレでしょ、おっきすぎて怖いぐらい」
それまで見入っていたのだが触るとなると其の存在感の為か、メイは手を伸ばしたと思ったら直ぐに引っ込めたりと少し躊躇する様子を見せていたが、おずおずと右手で肉棒の根元を握り締めると少年の顔を見上げて尋ねた。
「私も胸が大きいからよく言われるから余り言いたくないけど――こんなに太くて硬くて、ちゃんと感じるの?」
「え? はぁ、まぁ、特に問題は無いと……ぁ、ンっ」
「ホントだ、しっかり気持ち良くなってる」
右手で緩やかに扱かれながら左手の人差し指の先で亀頭を突かれて、ぴくン、ぴくんと身体を跳ねさせる度に甘い嬌声を漏らす少年の様にメイは口角を上げる。
「おち○ち○はこんなに男らしいのに、声も、感じてる顔もまるで女の子みたいで可愛い。――あはっ、やっぱりこっちもおっきいんだ。沢山入ってそう。溜まってるの?」
「あっ、それ……だめ……」
メイが左手の狙いを代え、充血した穂先から掌握されている根元の下で揺れている筋の入った袋の重量を確かめる手付きで、そっと下から掬い上げて揉みしだく。
急所を握られて力が入らないのもあるが、中身に入っている量については正確には分からないとはいえ、つい先日スミカと身体を重ねたばかりであるので大量ではないだろう、しかしそう答えるのも恥ずかしい事もあって少年は彼女の問いに答えることは出来ずに身体を捩るばかりである。
握った手を根元から雁首まで上がらせてから段差を境に掌を開いて、先端の滑らかな表面に滑らせるように包みながらくるくると撫で回して、また握って根元まで下ろしていくと云った緩やかな扱きに加えて、陰嚢の皮越しに玉を転がしているメイは途端に困った顔になった。
「どうしようかな」
「な、何が、ンっ! ……ですか?」
「もっと尻尾君を虐めてみたいのもあるけど――乱暴されたいの。前みたいに」
メイがそう言うと今度は少年が困った風に、と云うよりは上気していた顔を曇らせた。以前に彼女を襲った事には大きな罪悪感を抱いている。
しかし暴力に近い性欲を向けられた被害者である当の本人は柔らかな寛容の微笑を浮かべた。
「ん? あの事ならもう気にしてないよ。尻尾君だって大変だったんでしょ?」
「でも……」
「本当にいいってば――それにね」
優しそうな笑みから一転して、彼女の表情に淫靡な雰囲気を纏った。先程ポージングで見せた物憂げな、悩ましい表情である。見下ろしている少年の背中にぞくりと悪寒が走る。
「私、あれからずっと尻尾君の事を考えて、一人エッチしてたのよ?」
「僕で……ですか?」
メイはこくりと頷いた。
「最初は怖かった。尻尾君、協働の時だって率先して前に出てくれたりして優しかったし、素直ないい子だなって思ってたのに突然あんな事されちゃって、男の人のをあんなに身体や顔に掛けられたのも初めてだったし。なのに、想い出すと――」
男根を扱いている握りを緩めたメイは陰茎にそっと手を這わせると、愛おしいかのように熱い嘆息を吹きかけた。
温もりのある吐息に擽られて少年が下半身を跳ねさせる。
触れているモノを擦りながらメイは昂りを表わすように抑揚の無い口調で言った。
「止まらなくなっちゃうの。また尻尾君に犯されたい、また精液掛けられたい、また乱暴に、まるで玩具みたいにされたい――そんな風にどんどんエッチな気分になる」
自分の淫猥さを明らかにしているメイは自身で自身を昂らせていて更に吐息の熱が上がっていく。
そこだけまるで気候が変わったかのようにペニスが熱に包まれている。
「あの日だってそうだった。帰ってから想い出して玄関でしちゃったり、おまけに尻尾君ったら電話でセレンさんとしてるの聞かせるんだもん。電話が切れてからもずっと――最近だと一日に一回以上してるしなぁ」
自分の貪欲さに呆れた風にメイは溜息を吐いた。
一人の女性の赤裸々な性生活を聞かされて――しかも劣情の対象は自分――少年は彼女の眼前にあるモノを少し膨らませてしまっていた。
「ねえ、私どうしちゃったのかな? さっき尻尾君を見付けた時も、見付けただけだよ? なのに――自分でも分かるぐらい濡れちゃったの。ほら、触ってみて。分かるでしょ?」
吐息に含まれる水分で湿り気を帯び始めているペニスから手を離さずにメイは立ち上がると、少年の手を自身の股間を覆い隠しているショーツのクロッチに導いた。
隣室から差し込むだけの儚い光量、それに背に光を負っているのは彼の方だから殆ど見えなかったが、確かに其処にあるのだろう、布に広がる小さな染みに触れて水気が指先に感じられた。反射的、また本能的に指が曲がり、淵の濡れたクレバスに指が食い込んで、
「あっ……」
メイは嬌声を上げながら、ぴくりと身体を震わせた。
ショーツに減り込んでいる指と布の隙間から蜜が溢れて、より滑り気が強くなった。眼の前で女が自分の手で感じている事に気が大きくなったのか、それともどんな反応を見せるのかと云う好奇心によってか、少年は指の関節を小刻みに動かす。
陰唇の口吻を布が摩擦する度にメイは小さく喉を鳴らし、自ずからも快感を得る為に腰を上下させている。
現実が妄想に近付きつつある事に恍惚とした表情を浮かべていて、身体を支える膝が笑ってしまっているので、しなって晒している喉元を見せている少年の肩に両腕を乗せている。
座っている自分に跨らせて腰を降らせたらこんな格好になるのだろうと想像した為に少年の下腹部で先程まで熱烈な視線を浴びせられていた肉棒が跳ね上がってメイの腹を引っ掻いた。
傷跡の代わりに腺液の跡を遺して。
切望していたモノの存在を思い出したのか、メイが身体を止めると少年も指の動きを止める。彼女は性感の疲労に喘ぎながら、
「――尻尾君って、エッチなんだね。いきなり指でしてくるなんて。それに何か手付きが慣れてない?」
数日に一回のペースでスミカと行なっているのだから、ある程度は女性の身体を性的に触れる事への慣れも生まれているだろう。
それにネクストの操縦についてだが、スミカ曰く、身体で覚える事に付いては覚えがいいと云うのも関係しているかもしれない。但し言われた本人は気恥ずかしいのか、口篭っている。
そんな彼の心境はお構い無しにメイは妖しげな笑みを浮かべる。
「直接触られたらどうなっちゃうんだろうな、楽しみ。でも先にアレ、して?」
「アレ?」
「もうっ、尻尾君ったらぁ~! 女の子の口から言わせる気なのぉ、ホントにエッチ」
本当に見当が付かないのできょとんとしている少年の身体を、メイはきゃっきゃっと黄色い声ではしゃぎながら掌で何度か弱く叩いた。そして、紅潮した顔で横目に見てから彼の耳元に顔を寄せた。
木賊色の長髪が頬を掠めながらリンスの香りを漂わせる。
「――パイズリ。前みたいに好きにしていいよ。今度こそ尻尾君の気の済むまで好きなだけ、ね」
そう言って耳元から顔を話して向かい合ったメイの妖艶な笑みに少年はたじろいだが、男根は応えるように跳ねた。
其の反応にメイは嬉しそうに「いこっ」と言うと、乳房と尻を左右に揺らしながら少年をシミュレーターの方へと引っ張っていった。
「よいしょ――あはは、こんな気分でコレに座るなんて初めて。なんだかドキドキしちゃう」
気分一つで景色は違った風に見える事はあるが、正にメイはそんな風だ。
普通なら座ったら直ぐに意識だけは仮想空間に至るというのもあるが、今までも何度も使ってきた使用者にとっては機械仕掛けの椅子程度の存在でしかないシミュレーターに座って見る風景が記憶とは違ったように、新鮮に感じられているらしい。椅子に背中を預けてから辺りを見渡している。
座ったと同時に人を感知して電源が点く。
座席の周りを縁取る点々と連なる電灯が灯されて、メイの裸体が仄かな明かりに照らされた。
また少年は眼の前に準備万端の女が居るとはいえ、如何したらよいものかと判断しかねて戸惑っている様子でメイを見守っていると、
「どうしよっか? 挟む? それとも私が抑えてるから下から無理矢理挿れる? 尻尾君の好きなので――あ、ちょっと待っててね」
言う度に双丘を掴んで間にスペースを作ったり、逆に抑えてたりしていたメイだが何か思い出した風に声を上げると顔を下に向けて開いた口から涎を垂らした。突き出された舌先から垂れる粘液の塊は乳房の間に落ちると横に広がる。粘液の為にゆっくりと滑らかな乳房の上を伝う。
やがてメイの手で胸は小麦粉の塊の如く捏ね繰り回され、唾液が伸び広がっていく。
間に挟まれるペニスの滑りを良くする為の潤滑剤である。
しかしたわわに過ぎる乳房には中々上手く広がってくれず、メイが困った風に下唇を突き出す。しかし名案が思い付いたように自分の胸部から少年の顔へと視線を転ずる。豊満な肉が玩ばれる光景に見入っていたので彼は驚いた。
「尻尾君がして」
「へ? あ、なるほど。僕が舐めるって事……でも」
「何、戸惑ってるの。さっき何も言わないで私のアソコをクチュクチュしたのはだれ?」
上半身と下半身で感じる羞恥の度合には個人差があるだろうが、平均的には下の方がそれは強いだろうから、メイの弁は全くの正論である。勿論、男なら誰もが飛び付きたくなるような傑物を前にして嫌な訳はないとはいえ、少年は言い負かされた体で、誘うように寄せられていてひしめき合っている谷間に顔を寄せて舌先で擽る。
「ひゃっ……ン、気持ちいいよ。もっと、して」
両頬の傍に柔肉の存在の気配を感じながら少年は無言で頷くと、口腔を窄めて搾り出した唾液を舌に絡み付かせてから、先端だけではなく中腹から根元までを、更に首までを使うように壁面を辿る。
口腔一杯に広がった汗と体臭の混じった酸味のある甘い芳香と、滑らかな舌触りで咽頭に性感が走る。
「きゃンっ! こらぁ、舐めるだけでいいのぉ」
堪らずに少年は所在なさげにしていた手で突き立っている尖りの真正面から吊鐘を鷲掴みにした。掌の中心に凝りを擦らせながら五指で肉房を揉みしだく手付きは隙間を作って唾液を塗そうというだけではないのは明白だ。
最初こそ照れ隠しではしゃいでいて、身体を左右にむずがゆい風に捩っていたメイだが、次第が甘くなっていく。
「あンっ! だめっ、だめだってばぁ……はぅっ……あっ……そこっ、だめなの……」
手と舌の愛撫によって陶然の表情で喘ぎ声を漏らすメイの口の下では、少年が肉房の間に顔を埋めるように左右へと頭を振って、右の肉壁へと、左の肉壁に潤滑を塗り込む。手はさわさわと小波のように蠢いている時もあれば、時に急激に先端を摘み上げる。
「あ、あ、あン、あっ! だめ、だめっ、だめ、だめぇ……っ!」
少年が顔中を、耳から側髪まで二人の唾液で濡らした頃。
時に弱く、時に強く緩急を付けられ、且つ合間を紡ぐように滑りのある触感に責められ続けていたメイは切迫した嬌声で鳴きじゃくると、所在無く身体の傍で固めていた腕で少年を確りと抱き寄せる。
彼女の其の仕草に応えるように少年は反射的に二つの桃色の尖りをどちらも摘み上げて果実に吸い付いた。瞬間、抱き竦めてくる力が一際強くなると同時に、鼻先の身体が迫ってきて――
「はあああうぅぅぅ……っ」
彼を抱いたまま、背筋をしならせるメイは高らかな牝声を上げながら果てた。
押し寄せる波が通り過ぎるのを耐える身体はその度に活き良く跳ね上がった。
汗と唾液の香りが少年の備考を擽る。
湧き出た愛液でショーツの染みが殊更に広がっていく。
「胸だけでイっちゃったの初めて……気持ちが盛り上がってたのもあるんだろうけど、尻尾君上手なんだね」
谷間に顔を埋めている少年の滑りの良い髪を撫でながらメイは惚けた声で言った。
「いえ……メイさんのおっぱいが敏感だったから」
「嬉しい――でも何かやらしいなぁ」
苦笑した後、メイは上気している顔を少年の頬に寄せて甘い音が立つ口付けを落とした。
「次は尻尾君が気持ち良くなってね。早くしないと乾いちゃうし」
そう言ってメイは少年の身体を起すと背中を預けていた椅子から上体を起こした。下腹部に触れていた熱棒に眼を遣ってから、口角を少しだけ上げると、座ったまま前に倒れこむようにして、存在を主張しているモノに頭からしゃぶりついた。
「うっ……」
亀頭を暖かい穴に包まれた感触と野太い性器官を咥え込む苦しさに二人が小さく呻く。
自分から更に深くまで迎えいえれようとしていたメイであったが、少年が反射的に腰を引いた為に雁首に唇を引っ掛けられるようにして、より前のめりになりそうになったが、彼の腰に腕を回して引き寄せる。
其の拍子に舌を圧迫されて唾液が溢れる。咽頭近くまで迎え入れていたのを少し外に出して、先端に纏わり付く唾液に触れて陰茎に伸ばす。
手が上下すると共に滑り気に覆われる感触に少年が弱く眼を瞑って半開きの口から溜息を漏らしたのを見てメイは上目遣いの瞳に喜悦を滲ませながらペニスから口を離して言った。
尚も手は潤滑剤を広げている。
「こんな大きいの咥えたの初めてだからちょっと苦しいね。セレンさんも大変でしょ?」
「あ、はい……ふぁ」
「やっぱりさせてるんだぁ~。尻尾君って見掛けに寄らず、征服欲強いのね」
「そ、そんな事……はンっ!」
幹を擦れられる感触に喘いでいる少年を煽るようにメイは包皮と肉茸の繋ぎ目を素早く舐め上げると、持て余している風の腕が彼女の頭の宙で硬直した。
メイは先端の切れ込みに舌を減り込ませるようにしながら視界の端で見切れている両手に見渡す。
「ンン~? なぁに、この手は? 私の頭抑え付けて無茶苦茶に突っ込みたいの?」
「えっ? そんなつもりじゃ……あうっ」
「別に怒ってないよ、ンっ、尻尾君がしたいなら別にされてもいいかな、って思ってるし――あ、でもやっぱり苦しいのかな。ね、セレンさんにやった事あるの? 苦しそうだった?」
はち切れそうに血が充填されている砲弾の表面を舌の裏で撫で回しながらメイがそう尋ねると少年は、他人に夜の営みを話す事に躊躇いがあって口篭っていた。だが「教えて?」と媚びた上目遣いながらも虐めるように舌先で突くだけのこそばゆさに負けてしまって、羞恥で紅潮した顔を頷かせた。
その肯定の返事を受けた彼女に「尻尾君ってば、結構鬼畜~」と揶揄われて、彼は更に顔を赤らめるのだった。
「お口を犯されるのもいいけど――」
鈴口でぷくりと膨らむ雫を吸引しながらメイはそう言うと淫棒から口を離して、挑発の視線を少年に投げ掛けた。手は唾液を塗すようにくるくると全体を回っている。
其の手も離すと尻の位置をずらして椅子に浅く座ると脱力した裸体を男の眼前に投げ出す。そして乳房の間に上から両手を差し込んで谷間を広げてから言った。
塗り込められた唾液が糸を引く光景は喰らい付こうと口が開かれたようであった。
「こっちに、ね?」
いたいけな子供を誘う、余裕が感じられる笑みを浮かべながらも、上気した頬と蕩けた眼は寧ろ自ずから形振り構わずに悦楽を貪りたいと云う欲望をも窺わせている。
其の様を視るだけで淫液の涎を垂らした少年は引き寄せられるように扉の隙間に穂先をゆっくり忍ばせていく。
待ち焦がれていた物への渇望にメイは肉欲に狂う、獣性を露にした瞳で灼熱の視線と熱風の吐息を浴びせる。
そして、どくン、どくんと脈打つ肉棒が乳房に触れた瞬間、
「はあぁぁ……」
法悦と喜悦の極まった快感そのもののような溜息が肺腑の奥からメイの口角の上がっている口許へと漏れ出した。獣臭が辺りを包む。
触れた方もたわわな果実越しの早打つ心臓の鼓動音と歓喜に震える女体の肌のざわめきに撫でられた。
まるで乳房に触れただけで果ててしまったように背筋を反らせているメイは愛しい男を抱くようにペニスの背に手を回して引き寄せていて存在そのものが放つ気配を堪能していて、男に組み伏せられて首筋を唇で撫でられている格好に似ていた。
やがて汗が光る喉元に影を作りながら、ゆっくりと突き出た顎を下ろして、胸に抱いているモノを真正面から見据えた――その瞬間、少年はソコを通して彼女の強い鼓動と再び吐き掛けられた吐息で彼女の体温を感じた。
「やっぱりこうして見ると、おっきいね……はぁ、堪んない」
男が豊満な乳房に多大な欲情を醸すのと同じに、いやそれ以上にメイは胸を占有しながらも自身に穂先を向けている牡の銃口に夢心地のような浮ついた風の声で語りかけた。その一々が男の鼓膜の性感帯を撫でて。
「先っぽ太くて、カリもすごい張ってる……反り返ってて、いやらしい……こんなのいれられたら、私どうなっちゃうんだろ……」
吊鐘上の柔肉の先端の尖りの少し下辺りから――といっても殆ど真下から、と云っていい――狭間を通るように、その上にある顔へと貫いて顎下にまで迫っている淫茎に優しい口付けを幾度も落とし、頬を摺り寄せている。
生え出ている肉樹の感触を全身で確かめるように大きな肉球ごと揉みしだいてメイは「それに、硬くて、熱い……」と感想を漏らしつつ、胸を棒に擦られる性感に小さく喘ぐ。
その度に唾液が掻き混ぜられて、ぬちゃぬちゃと淫音が立つ。
双丘に玩ばれ、舌に舐められる度に身悶えして腺液を溢れさせるペニスそのものの反応と、少年の甘い嬌声に問うしていたメイだが、はっと気付いたように顔を上げると、「いけない、いけない。尻尾君の声が可愛いからつい自分からしちゃった」と間違えたと云う風に声を上げた。
「ほら、こうして――はい、どうぞ。私の事なんて考えなくていいから」
少年の手を取って自分の乳房を両側から支えさせて、まるで召し上がれと言わんばかりである。また縛り上げられたように両腕を頭の上に持ち上げて無抵抗である事を、服従の意を強調している。
その格好は捧げられた生贄のようでもある。
少年にすれば、具えられている供物は極上であり、どうしようもなく食したい黒い衝動に駆られていた。
そして獲物を食し易いように一歩身体を前に出して――
「きゃあっ! これっ、これがして欲しかったのぉ!」
乞われた通り、以前自分が欲動に駆られたように果実を押し潰すようにしながら、勢い良く突き出された肉棒がメイの頬を擦る。直後には胸乳の中に埋まるほどに引っ込んで、また突き出されると云った風に滅茶苦茶に腰を前後させる。
ペースなど度外視した動きで雁首が乳房を引っ掛け、亀頭が顎や喉を無遠慮に小突き、腺液を付着させて精子の臭いをこびり付ける。
凌辱そのものと云った風情だがメイは妄想が現実になっている事に喜びの声を上げて善がっている。
ねっとりと塗り込められていた唾液が飛び散り、潤滑剤が熱棒で攪拌されて淫音を立てるのは、蜜に満ちた秘所に掻き回されるのに酷似していた。
「はぁっ、はぁっ、はああっ」
「あぁっ、あン……我慢しないで、いいからね」
肌に蚯蚓腫れが出来てしまうのでは無いかと思う程の激しい抽迭の最中、声を上げるのも勿体無いと云う風に腰遣いと性感を甘受するのに意識を集中させていた少年の呼吸に甘い響きが込められたのをメイは感じ取った。そして自分の心臓の脈に割り込んで狂わせてきそうな――事実、感情は淫靡な肉欲に狂わせられている――脈動から彼の顔へと視線を移して、そう言ったが、寧ろ自分が望んでいる事は自覚している。
「ふぅっ! ふっ、ふっ、ふぅぅ……っ!」
その直後、噛み締めた歯から苦悶の声を漏らし始めた少年はがっしりと抑え込んで殊更に豊かな肉を己のモノで嬲り、メイの期待を秘めた視線を浴びながら――、
「うぅああぁぁ……ああっ、あぁぁ……っ!」
最後にずるんと音を立てるようにして滑らせたペニスの先端から、乱れた木賊色の長髪に彩られたメイの白い顔に向かって、白く濁った粘液の塊がびちゃびちゃと音が聞こえてきそうな程の勢いで叩きつける。
精を放つ為に筋肉が脈打つ度に細い身体も痙攣して白い髪が揺れる。
顎から頬、目蓋、額、そして髪と穿たれた白い弾痕から放つ精臭に包まれて、メイは恍惚の笑みを浮かべるのだった――。
「はぅ……いっぱい、出したね……ふぅン、ンっ」
若いと云うだけでは片付かない程の少年の射精量に感嘆の声を漏らすメイは、顔にこびり付いたジェル状の液体に触れて指に纏わせると口に運んで、指先をしゃぶった。
願望通りの男の――眼の前の少年の――シャワーを浴びせられた事に陶酔しているようで、うっとりと惚けた眼は精を放ちながらも衰えを知らないと云う風に熱り立って反り返ったままの熱棒と、視界の端の所々に浮き出ていて、そして指先で濁った白に向けられていて、犬のようにひくつかせている鼻はつんと鼻腔を突くような青臭い芳香を堪能している。
絶頂の疲労で肩を揺らして呼吸している少年に上目遣いで眼を向けて尋ねた。
「あの時と同じぐらい出るの?」
「はっ、はぁっ……いえ、ちょっと無理だと思います……」
「そっか、発情期だったんだのよね。だからすごく濃かったんだ――ま、いっか。まだまだ沢山、掛けてね」
付着した精液が垂れ下がっている長髪を流しながら挑発、と云うよりは挑戦的な態度でメイは少年の顔を下から覗き込んだ。
獲物を狙う愉悦を滲ませる瞳は恐ろしいほどに妖艶で、少年は後ずさりたいのと、一歩進みたい衝動の板挟みになりそうであったが――我知らず、前に進んでいた。
乳房の間で横たわったままのペニスがその拍子に滑って行ってメイの濡れた下唇に触れる。
それをちらりと見遣った彼女は舌なめずりをするように精液の残滓の線が引かれている亀頭を舐めて、口吻を鈴口を合わせて尿道の中に残ったのを啜り上げた。
「ふぁ、はぁっ」
「ン……ンン……」
上着や首のチョーカーはそのままに下半身だけ裸体の少年が、殆ど組み伏せている格好のメイの、両側から押さえ込んで柔乳に向かって、腰を前に出して下腹部でそそり立っているモノを突き立てている。
赤く充血した肉の火照りが傷口のように覗けている胸乳の谷間を熱棒が抉っている事は先程と殆ど変わり無い。
だが赤黒い先端を意識的に双丘の中に埋めさせている。
そして右が上へ中心をずらすと左が下に、左が上へ行くと右が下に、と云う風に挟んでいる肉をうねらせて重点的に責め立てている様は膣肉の蠕動を想起させるようである。
交互に擦れ違って男根を摩擦する度に塗り込められた唾液、だらだらと今も垂れ流されている腺液、そして放出されてこびり付いた精液が混じり合った潤滑液が音を立てる。
腕を上へと投げ出して少年の成すがままであり、彼に細まった扇情的な視線を向けているメイの乳房は、柔らかな菓子のように掛る力のままに形を変えながらも、頑なまでに一定の形を保ち続けていて、人体の肉と肌の持つ柔軟さに裏打ちされた力強さを改めて実感させる。
それと同時に女体の持つ男を満足させる狡猾的なしなやかさも思わせられるようだった。
男にいいようにされている様――彼女等は何をしなくてもいい、少しだけ弱々しく怯えるような態度の中に悦んでいる態度を見せればいい、それだけで男は自ずから勝手に熱り立つ。
女体のシンボルに触れさせてやって、甘くか細い声で甲高く啼く――鼓膜と性器が繋がっているのは性別問わずに共通だが、鳴き声を出させていると云う事により優越感を感じるのは男の方だ。声帯を少しだけ震わせればいいだけの事である。
牝が牡を動かすそれらに体力など、これっぽちも必要無い。
牝としての本能を行なうだけならば牡を勝手に、更に向こうからしても望んでいる風に動かしてやればいいのだ。
実に合理的である。
「あっ、くうっ! で、出る……出る、出る、でるぅっ!」
「うんっ、来て……出していいよ」
少年ではあるが男としては充分な彼も、横たわっているだけの牝に昂らせた劣情が爆発する予感に、胸乳の中に肉茸を埋めたまま、苦悶の表情を掲げて忙しなく腰を遣い出す。
そしてメイは少し放った言葉だけで爆発の信管に容易に火を付けて見せた――ただ、彼女は牡にそうさせているだけではなく、寧ろ彼女こそが望んでいる。
だから少年が身体を丸めるようにして乳房を押し込めた瞬間、膨れ上がった陰茎の脈動を感じて、子宮を疼かせていた。
「うぁぁっ――ああっ……あっ、うぁっ……ああ……っ」
「あンンっ! あはっ、出たぁ……あ、まだ……まだ、出てるぅ……」
密着感が肉壷のにも似た、柔く深い谷間の中で脈動が木霊する。
ペニスが吐精する度に、びくんびくン、と痛みから逃れたい風にのた打ち回るが、乳房の中に抑えられてしまっていて暴れ回る事は出来ずに少し震えるだけだ。肉筒の壁に向かって強く撃ち出されて跳ね返った白濁を浴びて、先端が自らを包んでいる物と一緒に白く汚れる。
心臓に、生命の鼓動そのものに存在を叩き付けて来る衝撃にメイはうっとりと声を漏らしていると、
「きゃっ! すごぉい」
閉じた肉房の隙間から突然、精液が飛び出してきて頬を打った事に驚いて片目を瞑ったが、開かれている方の眼も口許にも、この上ない喜悦を含まれていた。
少し吊り上がった口端から伸びた肉の器官が牡汁を舐め取る。
射精し切った淫棒が、にちゃり、と音を上げながら引き抜かれて胸乳同士で、そしてシンボルの間で、汚らわしい白い鎖を何本も紡いだ――。
「やン……こんなの……変態みたいだよぉ……」
「メイさんの……顔、気持ちいいです……はあぁ……っ」
それからも少年は二度もメイの身体を用いて精を放ったのにも関わらず――彼女自身の強請りもあるが――大きな吊鐘に己のモノを挟ませた。
根元の方を包ませたまま、彼女の後頭部に手を回して下を向かせると、焼きごての拷問の如く、灼けた砲弾を頬に押し当てて熱を柔らかな頬に刻ませる。
端整な造りの美貌に火傷は出来ないが纏っていた白濁が付着して穢れていき――元々、多量を浴びていたが――そして嫌がる声を上げながらも拒否をせず、寧ろ自ずから擦り寄ってくる柔い衝突の性感に、背筋をぶるぶると震わせると、亀頭の形に窪んでいる頬だけではなく、形の良い耳を少しだけ覗かせている木賊色の髪を更に白く穢した。
「ンむっ、ふぅンっ……んぐっ?! んっ、ンー……! ンっ、ンン……」
「くうぅぅっ! ……あ、あン……」
「ふあっ……ふうっ……あっ、きゃンっ!」
陰茎を乳房で扱き、捏ね繰り回すような乳淫こそメイ本人にさせていたが、少年は精液でべとつく頬を両手で固定して唇を肉傘に引っ掛からせて口内粘膜を占有すると云った風に、受動的にも能動的にも性感を甘受していた。
すると咽喉の直近で不意に性神経のヒューズが飛んでしまって、断り無しにメイの底抜けに明るい声を発せさせる喉に淫汁を注いだ。
唐突に喉を、どろりと粘着く液体が通っていく喉越しにメイは最初驚いていたが直ぐに恍惚とした表情で自ずから嚥下していた。
収まったと思って筋の浮いている銃身を口腔から引き抜いたのだが、残弾に顔を真正面から二三度程打ち抜かれて、整った鼻梁を中心に精液が顔中に広がった。
そしてキツい精臭を放っている顔を顰めさせて、
「もー、出す時はちゃんと言ってよぉ」
と拗ねたのだった。
「ン……はぁ……ホント、この臭い、堪んない……」
上半身、特に胸から上を尽くねっとりとした白濁の塊と、てらてらとした粘液の滑りに包まれているメイは桃色の乳暈の上を伝っていこうとしているそれらを掌で両乳房全体へと塗りたくりながら天を仰いでいる。
ぬめりが身体を蝕んでいく感触、牡臭を嗅いでいるだけで性感を得ているかのように――事実、そうであるのかもしれない。
顔を上げたと拍子に鼻先と目蓋に引っ掛かっていた塊がずるりと頬の上を滑り、。また木賊色の髪の毛の一本一本を白く染めていく。
そして仄かな光を受けて吊鐘上の肉房が淫靡に輝く。その先端では突起が隆々と聳え立っている。
己の吐き出したモノを身体全体の肌で、其れ以上に細胞で以って甘受している彼女の様子に少年は、既に五回は射精していて萎びれかけていていたペニスの剛直を取り戻させた。
メイが牡汁塗れの掌で顔に触れる。付着しているのを拭っているのか、更に顔に擦り付けているのか分からない。
時折、指先をしゃぶると「ヘンな味なんだけどな――何でおいしいんだろ……」と自分でも理解出来ないと云う風に不思議そうに感想を漏らしながらも更に咥え込んで頬を蠢かせている。
まるでお菓子でも作っていて指先にシロップか何かが付いたのを舐め取るかのように――但し、その顔は料理の際には絶対にそうはならないであろう、妖艶さを滲ませていて――左手の五指を順に舐めしゃぶっていると、
「ンンあっ!」
メイは唐突に右手をショーツの中に突っ込んだ。勿論、精液は付着したままである。
それに加えて既に薄布の下は淫汁が溢れているのだろう、下半身と手を覆う布地が――特に染みの強い周辺が――もぞもぞと隆起を繰り返す度に、ぐちゅぐちゅと淫らな攪拌音が大きく開いた股の中心から鳴り響く。
精汁を舐め取りながらも口中に突っ込んでいる指は声を抑えてもいるが、くぐもりがちな喘ぎは官能的で少年の視線を更に釘付けにするのは当然の事であった。
魅入られたように視線を自分に穢された事を肴に自慰に耽るメイに向けながら、何故か割り込む気にはなれずに下腹部でそそり立っているモノを彼女に倣って自分で扱く。しかし気を引くように左右に広がる両脚の間に一歩近付き、太腿に先端を擦り付ける。
今も尚溢れている腺液と纏っている精液によって肌理細かい肌の上を、にゅるりと滑っていく。
自ら引き出している性感に顔を横に傾けて耐える風に目蓋をぎゅっと瞑らせ、銜えている指で嬌声を噛み殺しているメイだったが、弄っている場所の近くに熱を感じて、流し目で少年を見遣ると、
「ちょっと待って、ね……多分、すぐイクから……」
合間に小さな呻き声を挟ませながら申し訳なさそうに、それでいて性感を止めたくないのだろう、尚も手を蠢かせながらそう言った。
その予測は、最近は毎日のように行なっている経験によるものでも、手の動きを激しくしているから生まれたものではない。これまで記憶を頼りにしていて時間が経って薄まりつつあっても尚、満足させていた肴が、眼の前にあるどころか、全身を包んでいるからだ。
「はぁっ、あ、あ、あぁっ……あぁンっ」
そして予測は正しく、はぁはぁと喘ぎが次第に荒々しさを増していき、膣に突っ込んでいる二本の指先に纏われていた精液を洗い流す程に愛液が分泌されている。腰に電流が奔って神経が刺激されている。
メイは今にも目蓋がすとんと落ちてしまいそうな脱力感を抱きながら、熱い視線を投げ掛けている少年を見る。
食い入るように見詰めてきている表情は、自分のエロティックな様に感嘆しているのが良く分かり、他人に見られたくは無い行為を隠す余地も無く見られている事に羞恥を感じながらも、かといって止められない事にも羞恥を感じていて、昇りつめる感覚の中で
「私が精液好きになっちゃったの、ンっ、尻尾君のせい、なんだから……あ、あああ……」
そんないやらしいとでも言いたげな眼で見ないでくれと、また人の前で見られながら果てるのは自分の責任では無いと云う風に自己弁護をする。
そしてきょとんとしながらも、その淫らな言葉に少年が反応するかしないかの刹那の時間の間に――、
「はぁぁぁンン……っ」
手が突き込まれて隆起が収まった代わりに、ショーツの布地がぶるぶると震動する。
股布から愛液が溢れ出し、べっとりと張り付いている手や指、それだけでなく曲げられている指の付け根で盛り上がっている骨の形まで浮き上がっている。
指を咥えている口許から余韻の喘ぎを漏らすのと、内腿に張られる筋が収縮して現われる、消えるを繰り返すのは同時であった――。
背筋を丸めながらも脚を開いていると云う風に上半身と下半身で絶頂の性動に違いのあるメイの様に少年が犬のように喘ぎながら、性感を感じる以上は張り詰めるしか出来ない己の性器をしゅっしゅっと扱いている。
薄く開けた目蓋でそれを見ていたり、時折襲い来る漣に視界を暗くするメイが濡れた唇と指先の間に銀色の糸を結んで、
「――尻尾君」
「はぁっ、はぁっ、あ、あ……なんですか?」
「私のここ……尻尾君の欲しがって、堪らなくなってるの」
今にも射精してしまいそうな少年にそう言いながら、ショーツの中に突っ込んでいた右手を引き抜いて、また手を下げる。今度はその上を通らせて。
そしてしとどに濡れている薄布の、左脚の通り口の端に指を引っ掛けて、反対方向に持っていく。糸のように細まったショーツが尻肉に引っ掛かり、細毛を被る淫裂が露になった。
恥部が暴かれれば当然、視線は其処に向かい、少年は尚も忙しなく手を上下しながら少し前屈みになった。
「もっと近くで……見ても、いいよ」
許されたままに少年は彼女の股間に頭を近付かせて、二本の指で開かれた淫唇と、その奥で牡を求めて戦慄く媚肉を眺める。やがて両膝を床に落として秘所を崇めるかのように跪いた。牝の饐えた強い芳香が鼻腔を突いて、慰めている男根が跳ね上がって腺液を垂らす。
「もぉ……見ていいって、言ったけどぉ……そんなに、じっと見ないで……」
流石に自身の恥部を他人にまじまじと観察されるのは恥ずかしいのだろう、メイは股座の少年から顔を背けながらそう言った。しかし許可されたばかりなのに拒否された事に困惑する顔を少年が上げるのを察すると、かぶりを振って、
「ううン、見て、欲しい――ああっ、でも……! 恥ずかしい、よぉ……」
本人も困ったような声を上げる。
見られたい衝動と見られたくない羞恥がぶつかり合い、鬩ぎ合っているのを表わすかのようにメイは左右に首を振る。
それは身体に現われていて目前の彼に近づくように腰が突き出されたと思ったら、逃げるように引いていく。
少年はその葛藤の様子を見守っていてメイが自らに出す答えを待っていると、頭を座席に預けている横顔の流し目と視線が合った。
にちゃと小さく音を立てて開かれた唇の向こうで赤い舌が艶かしく蠢いて言葉を紡ぐ。
「……私のおまん○、見て」
吐き出された精を身体に塗りたくり、眼前で自慰すらしてみたメイだが、恥部を見られる事は、と云うよりは自ずから懇願するのは矢張り多大な羞恥を感じるようだ。
少年の視線から逃れたい風に、ぎゅっと目蓋を瞑っていて、身体の傍できつく腕を締めて、拳を握っている様は乙女の如くいじらしく、淫猥な台詞を放った本人とは思えない。
だが嘆願通りに脚が、時計の針が2時と10時を指すかのように大きく開かれている格好は娼婦のそれでもある。
矢張り上半身と下半身で違う振る舞いであるが、少年は下半身の方に同調する。
メイが乞うた通りに濡れそぼっている秘所に顔をぐっと近付ける。
熱い吐息がヘアーをなびかせ、充血したラビアを擽る。蜜壷から直で花の香りが漂ってくる。
そして少年は無遠慮にも内股に手を遣って、更にメイの脚をより広く開いた。
時計の針が10時30分と1時30分を示すと、周りの肉に引っ張られて、更に開かれた。その瞬間、膣から液がとろりと流れ出た。
愛液が引いた線を辿れば其の先では薄闇の中で、真っ赤な朱肉が物欲しそうに蠕動しているのを少年は繁々と眺めながら、
「メイさんのここ、綺麗で……ひくひくしてます」
「……もぉ、恥ずかしいから言わないで」
「あ、また溢れてきました」
熱心な視線を浴びるのが心地良いと云う風に、花弁の狭間から覗ける肉襞が愛液を多量に分泌されていく。
少年が顔を埋めるようにして自身の股座を覗き込んでいる光景を視界に捉えているメイは嫌々とかぶりを振りながらも、腰を突き出したい衝動に駆られつつも、
(見られてる……見られちゃってるよぉ……)
と白濁の的になった事で充分に昂らせていた被虐感を殊更に強く煽るのだった。
獣臭が漂う吐息に秘肉を撫でられて性感の証が新たに垂れ流される。また溢れていた液が風を受けて揮発して僅かに熱が奪われる、小さな感触が更に快感を生み出す。
「はあっ、はっ――も、もう我慢出来ない……」
だらだらと泉のように歯止め無く溢れる愛液が座面や、其の先の脚面の傾斜の面を粘液がゆっくりと伝っていき、シミュレーターの座席をも穢す頃、メイは外陰唇に添えてラビアを開いていた人差し指と中指を離すと、直ぐ前にある少年の白い肌の頬をやんわりと包んだ。
指先に沁み込んだ淫汁の香りが鼻腔に漂っていく。
今度は顔を背ける事も、出来るだけ視線を外そうと云う事も無く、メイは惚けきった顔で彼と真正面から眼を強く合わせて言った。
「欲しい……尻尾君の……お、おち○ち○……欲しいのぉっ」
懇願の対象であるモノが指名を受けて、返事をするかのように勢い良く跳ね上がる。眼前の牝はぶち撒けた液に塗れるだけではなく、貫かれる事を所望しているのだから当然の反応であろう。少年は顔に触れている手がそうであるように昂奮と期待で脚を震えさせながら立ち上がる。
「……来て」
前屈みのメイは中性的な美麗な顔から、厚みは無いがそれでも引き締まっている胸板や腹筋、毛の薄い体質なのか脚の付け根のV字のラインが現われたのに一本も毛が無い下腹部、そして其れまで繊細さすら窺わせる純白から一転して、褐色の肉棒、赤黒い亀頭と、次々と男らしさを存分に知らしめてくるシンボルが視界の下端から迫り出して来る。
そうして顎の下から突き上げているかのように聳え立っている淫茎に沿うように顔を上げていくと通過したもの全てが収まった。背中を、身体の全てを座席に預けると、腰の辺りで見え隠れを繰り返している尻尾も見えて、次の瞬間には彼を構成するそれらが覆い被さってきて、ふわりと漂っている体臭の甘い残り香を嗅いでいると耳朶を柔らかでありながら熱い風が撫でた。
「挿れて、いいですか」
「うん――頂戴」
直後、ちゅ、と接吻に近い音が鳴って、口開いている淫唇が更に押し開かれる。
丸まった円錐が進んできて、其の斜辺の間が徐々に厚みを増してラビアが熱を食んでいる感触、牡が侵入してくる感触にメイはああ、と陶酔の声を漏らす。
既に滑りが良くなっていたとはいえ、単に滑らせるだけでは立ち行かなくなるぐらいに淫茎が太さを主張し始める。
少年が腰を突き出して、ぬかるみに怒張を減り込ませようとしている所作がメイの下腹部に響く。
「あ――ううっ」
ずぐぐ、と鈍い音を立てるようにして亀頭が収まった瞬間、鉤がちょっとやそっとじゃ抜けないように膣口を確りと引っ掛けた。受容れた事の無いサイズに膣を拡げられる感触にメイは処女の時を思い出す程の辛そうに声を上げる。しかしぽっかりと奥で口を開いている空間が埋められる事への期待が高まっている。
彼女の苦悶の声に少年は気を遣って、一旦、侵入を其処で留めているが、愛液を染み出している壁にさわさわと撫でられている肉棒も、拡げられながらも男根を締め付けている膣も、早く、と言わんばかりに痙攣して持ち主に性感を送っている。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
耳に直接喘ぎを聞かされながらメイは少年の背中に腕を回して確りと抱き付いている。
彼女に息苦しさと仄かな快感を与えているペニスは太いだけではなく長さも人一倍あるので、ひしと身体を合わせながらも根元まで挿入しないようにする為には尻を高く掲げる必要があるが、間に挟まれている乳房が腰の負担を和らげるかのように働いている。
少年は柔らかな肉のクッションに胸板の上で屹立している乳頭が包まれていて、メイは硬い胸板に乳房と突起が擦れていて、そして二人共浅い結合部からの感触に身悶えすると、淫液に塗れている乳房がぬるぬると滑る。
「あぁっ、ああっ!」
「――ひああっ?! きてる! きて、るぅっ!」
天然のローションが齎す性感に辛抱が出来なくなったのか、少年は体重を前に押し出し始める――それでは身体で挟んでいるメイの胸乳を押し潰すだけなので、正確には腰を下から上へと抉るようにして。
劣情で満ち満ちていた蜜壷の空洞が徐々に埋まっていく快感にメイは少年の肩に埋めていた顔を上げる。鼻先が純白の頭髪を覆い、漂う洗髪剤の清涼な香り、そして汗の芳香に包まれて、肺腑にまで彼の香りを目一杯吸い込む。
そうしている内にも野太い淫茎は最奥に向かって進み続けていて、腺液で道を洗いつつある。
二人の下腹部が一歩、また一歩と接近していって――
「はあああ……っ」
奥底と先端が触れ合った瞬間、精臭のする木賊色の髪を目前に、そして牡の香りが漂う真っ白の髪を前にしている唇から殆ど同時に心地良さそうな深い嘆息が吐き出された。
「こ、こんなおっきいの……は、初めてぇ! いいっ、すごい気持ち、いいっ! 二回目なのにっ、前と違うぅっ……前より、おっきいよぉ! 気持ちいいよおっ!」
「メイさんのおまん○も……前よりも! ……ぎゅってしてきますっ!」
ずぼずぼと火壷野入り口を拡げながら反復運動する逸物の出っ張りに内壁を削られる快感に自ずからも腰を突き出しているメイが高らかに喘ぐ。
矢継ぎ早に抽迭を繰り出して彼女を喘がせている少年も、長く力強く締め付けていると思ったら、息をつくように緩み、また締め付けてくると云う風な、膣圧の締まりに性感の声を上げる。
粘度の高い淫液の為に泡立つ結合部から肉茎が現われ、沈んでいく度に痛々しい程に反り立つ乳首同士が擦れ合う。
空気の入っただけで風船のようでいて、それでいて跳ね返してくる乳房の感触に少年は抱き付いてくるメイの抱擁を引き剥がすと、
「やあンっ! だめっ、それ、だめぇっ!」
乳淫の下準備の時と同じように裸体が揺さ振られる度に一歩遅れて前後する肉鞠を真正面から力強く鷲掴みにする。掌を広げても到底掴み切れない大きな胸乳を出来るだけ堪能したいと云う風に、まるでドアノブを捻るかのように、右へ左へと手首を中心に両手を回転させるのと同時に掌の中心を突き上げてくる凝りを捩り潰す。
手が埋まりそうでありながらも跳ね返してくる感触だけではなく、やや乾き始めているが所々では汗で潤いを保っている粘液を纏っている為に滑りの良さが、手から伝わってきて身体が悦びの声を上げ、男根に収縮の強い膣をより愉しませる為に腰の動きが加速する。
足元の覚束無い浮遊感に襲われているが全身で縋り付けない為に心許なさを感じながらも、神経が集う場所を同時に責め立てられる悦楽にメイは強く善がる。
恥部を弄んでいる少年の両腕を掴んで更に押し付ける。卑猥に前後している腰に脚を絡ませて、突き出される度に引き寄せて抽迭を手伝う。
自らに、そして少年が与える快感に溺れそうになりながらもメイは何とか声を紡ぐ。
「はあぅっ、はンっ、あンっ――も、もう、イクっ! 私、イクっ、イッちゃう!」
頬を紅潮させている顔を見下ろしている少年も限界が近いから腰を小刻みに打ちつけ始めたのか、それともあくまで自分が向かえるのを手伝おうとしているのか、判断する余裕は最早彼女には無かった。
しかし、果てさせられる、と云う事実だけは彼に何度も伝えるメイは痕が出来る程に腕を握り締めている手の力を、腰に絡ませている脚の力を強く、そして少年の動きの一切を無視して思い切り引っ張り――、
「イクっ、イク、イク、イクっ! イクっ! イ、クぅ……うぅぅ……っ!」
焦がれ続けた端整な顔立ちを熱い視線で穴が空く程に、それだけではなく焦がす程に見詰め続けながら淫猥な言葉を淫靡な声音で叫んで秘所を埋めているモノを捩じ切らんばかりに締上げた。
最初はぎゅう――、と力強く。次にきゅっ、きゅっと小刻みに何度も。
そして何とか根元まで――但し殆どギリギリ――胎内に収められているペニスが射精に焦がれて脈打つのを嗜めるように肉襞が緩やかに撫で上げる――。
「――ごめ……ふうっ……ごめんね。先にイッちゃった。えへへ」
少年と下腹部で繋がったままで座席に投げ出している身体全身で息をしていたメイは落ち着くと、少し前の自分の絶頂の様を思い出されて気恥ずかしそうに上気して虚ろになっていた顔面を少し崩して、むず痒そうに笑った。
少年は其の様子を可愛らしいと感じ、微笑を浮かべて「僕なら、平気です」と返すとメイは揶揄いの色を眼に浮かべた。
「慣れてるんだ?」
「何が、ですか?」
「女の子を先にイカせちゃうから自分はイケないまま――ってことぉ。これだけ大きいから当然かしら?」
流し目で見据えながらの言葉に「そ、そんな事ありませン……」と顔を赤らめた。
今度はメイが彼の様子を心底いじらしいと思って、擽ったくなるような小さな笑い声を上げたのだった。
「うふふ、尻尾君ってホントに可愛い」
少年は嬉しいやら恥ずかしいやらで、どう答えたらいいか分からないと云う風に、もじもじとする。
「尻尾君もイキたいよね? だからさっきみたいに――おっぱいでしたみたいに、していいよ」
瞳に滲む色を悪戯心のある年上らしい揶揄かうものから男を引き寄せる誘惑へと一瞬で変えたメイが艶かしい声音で少年の耳朶を擽り、脳髄を震わす。
ずっと座ったままのメイと違って性感の疲労で膝が震えていて床に座り込みたいと思っていた程だったが、結合を深くしないように気を付けながら彼女の両肩の上、側頭部の横辺りに手を突いて覆い被さる格好になった。
逃れられないように組み伏せられているメイからは彼の顔が座席の明かりに照らされ、顔の角度や光の加減の所為か、それとも支配されているからか、知っているよりも男らしいと、雄々しいと想えた。
これもまた普段見ているものが気持ち一つで変わる例であろう。
最早少年が自分よりも同世代かそれ以上すら見えてしまっている程だ。
そう感じているメイは、まるで乙女が初めての性交の際に年上の男に圧し掛かられて緊張しているかのように胸をときめかせている。丁度、自分の初体験もこのようなシーンだったと唐突に思い出す。
初めて、と云う点では彼ほど年下の男に抱かれるのも初の経験であった。
「あ――ちょ、ちょっと待って」
思春期の頃だから成せる業か、”男”へ突然に変化しつつも、”男子”の面影を残すと云う風に境界を
少年は口を突き出してきたのにも関わらず、止められた事に怪訝そうな眼をする。
性格の良さなのか、怒っていたり、不満に思っていたりと感じさせられて心象を高めながら、メイは言葉を澱ませつつ言った。
「私さ、ほら、今は尻尾君ので――」
先程から触れてしまっているとはいえ今のメイは少年が恥部から吐き出した汁に塗れている。
肌に触れてしまうのはまだいいであろう、恋人が居る為に性欲の発散はそれなりに容易な彼でも自慰の経験はあるので――今でも偶に恋人が居るのにも関わらず、隠れてする事も――その際に何かの拍子で身体に付着してしまう事はある。
だが彼女に対して精液が吐き出されたのは身体だけではない。少年が自らの触れさせようとした口にも、だ。
だからメイは、自分は構わないどころか寧ろ好みになってしまったからいいが、排泄したものを彼自身が口にしてしまうのは嫌だと考えて気を遣ったのである――彼とキスをしたいと想っていたのだが。
言外に伏せた意図に気付いたのだろう、少年が納得する顔を浮かべて二三度反芻するように頷いていると、
「――ンむっ?!」
躊躇など露ほども感じさせない勢いによってメイは唇を奪われてしまった。
眼の前には眼を瞑る彼の顔があるのに対し、驚愕で思い切り眼が見開かれたが、直ぐに力なく、すとんと目蓋が落ちて惚けた表情になって、緩やかに彼の背中に腕を回す。
メイは驚いていたが少年は仮に彼女の口内が精液で一杯になっていたとしても気にする事は無かっただろう。キスの妨げになる程のものでは無いと考えているからだ。
それは少年が持つ性的な嗜好に、先程メイに、そしてこれまでスミカに幾度も行なってきた、また行なわせてきた乳淫、他にも太腿や腹など、女の身体に自身のモノを擦り付けると云う行為があるのだが、其れ以外にも平均の度合は不明だが他の男と比べて人並み以上にキスを好みだからだろう。
またスミカとの性交の際、彼女の秘所を手で弄べば愛液が付着するが、それを彼女自身に舐めさせて指を綺麗にさせる事がある。
しかし其れは汚らわしいと思って、拭わせているのではなく、あくまで嗜虐感を高め、同時にスミカの被虐感を高めるのが目的である。そもそも少年は自分が汚いなどと思う物をスミカに与える事などは絶対にしない。
そして彼女は躊躇無く、時に今のメイ以上に熱心に精液を舐め取ってくれるのだから、何時からか少年の中では特に忌避すべき物であると云う印象は無くなった、口淫をしてもらった後にキスをする事などざらである――それでも”自分”のではあるが、矢張り根源を辿れば”男”のである訳で、同性愛を想起されてしまいそうだから、下や唇で触れてしまったり、唾液に混じったのを呑んでしまうのはしょうがないとしても、それ単体で口にするのは当然忌避するだろう。
「はむ……っ、ン、ンン、ンぁン……」
始めて味わうメイの柔らかで、ふっくらと肉付きの良い唇と、味蕾でざらついていて、しなやかな舌の感触と味に、もう慣れてしまった己の精液の味もあった。彼女の口腔や唇に放出してから時間が経っているせいなのか、”直後”よりも強い苦味が。
しかし其れも執拗なまでに注ぎ込む唾液によって段々と薄まっていく。それでも残滓は確実に残ってたが。
唇を食み合い、舌先を絡め、唾液を交換し合う二人の口吻の接合部から水気の多い淫猥な音が鳴り、時折隙間から唾液が垂れてメイの口許を濡らす。小泡が混じった涎は顎を伝って首筋を撫でて行く。
「――ふぁンっ!」
すると昂ったのか、繋がっているだけの性器がどちらも反応を見せたのを感じて少年が腰を突き出した。
洞穴の奥の方は既に狭まっていたのだが強い一突きで再び彼のペニスの形に拡げられてメイが密着した唇の間から淫声を漏らしながら顎を上げると二人の八重歯同士がカチリとぶつかり合った。
奥までみっちりと埋め尽くしているのも束の間で、雁首が肉壁を抉りながら引き抜かれ、また奥底まで進んでいく。
だらりと身体の力を抜いて性感もキスも陶酔の心持の中で甘受しているメイであったが
「あふっ、ン、あっ! ……はふ……し、尻尾君」
「うっ、ふうっ! は、はい」
触れ合わせていた唇を、回していた腕を離して少年の腕を掴みながら言った。
「私が上になっても――いいかな」
好きにしてと言った手前であるが、膣が拡げられる事で脚や腹筋の筋肉まで疲労していく感覚を抱いて、このままではやがて腰が抜けてしまうと予測して、妄想の一つであった少年に跨る騎乗位でのセックスをしておきたいと思ったのだ。
懇願の理由までは分からなかったが受容れた少年が「はい、分かりました――よいしょ」とメイの腰に手を回して持ち上げる。彼としてはメイを持ち上げて、そのまま身体を振り返らして自分が座席に座るだけのつもりだったのだが、
「きゃっ?! ――あっ、はあぁぁンっ!」
其の拍子に彼女身体が少しだけ滑り、一気に押し入った肉杭が子宮口を突き挿してしまった。
抱きかかえられた瞬間は少年の意外な力に驚いた声を上げた同時に男らしさに安心感のような物を感じていたメイであったが、直後に急激に訪れた苦痛に近い程の刺激に叫び声を上げた。
しかし最奥を穿られ、肉壁を削られて性感を感じたのは事実だった。
数瞬の間、思考が飛んだ彼女には判断出来なかったが、うねる蜜壷に淫茎を締上げられている少年は達したのだと理解した。
仰け反って四肢を張らせたメイは彼の腕の中でその格好のままで硬直して暫く全身を痙攣させていたが、やがて頬を白い頭髪に掠らせながら肩にがっくりと項垂れるように頭を預けた。
矢継ぎ早の熱風に耳元を擽られて、少年が背筋に悪寒を奔らせていると、ふわりと木賊色の風が頬を撫でて、
「……も、もぅ、いきなり、なんてダメよ……イっちゃったじゃない」
涙を浮かべていて恨めしげで、そして惚けている眼でメイに見詰められた。
この時間だけであろうが今は確実に己の掌中に収めている支配感と、それと謝罪の念を少しだけ秘めて少年は弛緩している彼女に甘い音を立てるようにしてキスをすると、ン、と小さく喉を鳴らされた。
「こ、今度はゆっくりしてね」
一気に突き上げられるのが嫌ならば結合を解けばいいのだが、どうしても繋がったままで居たいのか、メイは下腹部を隙間無く密着させて少年に子猿の確りと抱き付いている状態である。
彼は尻の下にある座席の眼を遣って位置を確認して、ゆっくりと腰を下ろしていくが――此れが意外と難儀なのである。
丁度眼の前に胸が来ると云う風にメイは彼よりも頭一つから一つ半ほど高い。
とはいえ正確な数値までは分からないまでも見た目よりは軽いのだが――但しスミカよりも重いのは矢張り胸部に重石を二つもぶら下げているからだろう――それでも人一人の重さを抱いたまま膝を曲げるのは中々辛い。
よくアジトではトレーニングと称して、恥ずかしがるスミカを無理矢理横抱きして重り代わりにしてスクワットをする事はある。それは深く膝を曲げて、膝を伸ばすと云う動きを繰り返すもので、今は膝を曲げるだけであるが、何せ出来るだけゆっくりと曲げ続けねばならないのだ。更に既に疲労が溜まっているのも拍車を掛ける。
二人分の体重を支える膝がぶるぶると震えて関節を軋ませながらも少年は何とか座席に最小限の衝撃だけで済まして腰を下ろして「ふう……っ」と溜息を吐いた。
着席の瞬間、僅かとはいえ衝撃が根元まで侵入しているペニスを伝播してきて子宮を振るわせられたメイは「あンっ」と嬌声を上げたが、彼女の方もそれだけで済んだようで、肺腑に酸素を送り込んでいる少年の頭を撫でながら「力持ちなんだね。かっこいい」と褒めたのだった。
メイはどっかりと座席に背中を預けている少年が投げ出している太腿の上で身体を捩って座り心地を良くして、真正面に向かい合うようにして「疲れたでしょ? 休んでていいからね」と声を掛けてから彼の腹筋に両手を突くと、
「今度は私が動いてあげるから――はあっ!」
「くあぁっ!」
身体を前後させて自ずから抽迭を行い出した。
また一つ妄想が具現化した悦びに喘ぎ声を上げるメイの口角は僅かに上がっていて、瞳には明らかな愉悦を含む劣情が燃え上がっている。
肉棒が抜き差しされる動きの中で僅かに腰の角度を変えて、天井の局所に雁首を抉らせるようにしていて、また精神的なものもあって止め処なく溢れる粘度の高い愛液が抽迭で攪拌され、元々のが更に濁りを増した淫液をペニスに塗り込めて行く。
先程メイが己の身体に精液を塗ったくったように。
シミュレーターの座席が揺れて軋む音を上げる程の上下運動、そして膣壁を引っ掻き回させる腰を右へ左へ半回転、または一周させる回転運動、膣の天井か床に密着させる前後運動で暴風に曝されているかのように尖りのある大きな芽と、其れと同じ色を先端にした団栗のに似た蓋を持つ、たわわな吊鐘状の白い双実が少年の眼前で右往左往し、上下に跳ね回る。
乳房は横に振られてお互いにぶつかり合う度に、そして上下に動く度に、ぱちんぱちんと肌を叩く快活な音を上げる。
「あンっ! あンっ! ああっ、はあンっ!」
自惚れを一切無しにした少年の眼でも、傍から見てもメイの様は心底堪らないと云った風である。
両手を突いていた少年の身体から離した手を、所在なさげに彼方此方にやっている。手は握られたり、開かれたりしているが何処でも共通しているのは肘がきつく曲げられている、脇が隙間なく締められている事である。
上下に身体が揺れるのに加えて、遅れて重量のある胸乳が身体を叩くのもあって、口端から唾が飛び、糸を引く涎が垂れ、全身の汗腺からじっとりと滲んでいる汗が真下の少年の身体へと――顔に、胸に、腹筋の溝に、臍に、下腹部に、太腿に――小雨のように落ちていく。
そして淫茎を伝う愛液が根元までを覆い、坂を下って陰嚢を濡らした頃、矢張り腕を曲げたまま右手を頬に擦り付けているようにして、左腕を乳房に添えて掌で上から押さえているような格好のメイが少年を熱烈な視線で見下ろしながら言った。
「あンっ! やっぱり……し、尻尾君とは、相性いいっ、みたいっ!」
それは以前にも言われた事のある言葉だが、但し意図は全く違う。
何せ言われたのは戦場で、協働任務を終えた直後に通信でメイのメリーゲートが後衛機なのに対し、少年の愛機ストレイドが前衛志向である事から何気無くそう言ったのだ。
少年は其の時の彼女の声を想い出していた。
疲労を滲ませる溜息の直後、美貌を誇る女性でありながらもそれなりに場数を踏んでいる彼女の声は酷く落ち着いていて清涼感のある声だった。其の声で先の言葉を言ったのだ。
それがで、あの時は恐らく少しだけ口角を上げた程度だったろうが、今の彼女の口許はしまりのなく、更に元々高い声であるが、男への媚を前面に押し出している為に更にトーンの高い牝声なのだ。
「あ……うあっ、あっ、ああっ!」
其の落差に少年はぞくぞくと性感が立ち込める感覚に襲われて、眼の前で痴態を曝す彼女を眺めていて惚けたように開かれて呼吸をするだけだった口から高らかな嬌声を上げ始めた。
そして眼前で揺れる乳房を掌握したい衝動に駆られたが、直ぐに淫らに揺れる様を視姦していたい衝動の方が打ち勝った。
だらしなく油断し切った牝の顔で善がり、全身を汗で輝かせて、双丘をぶるんぶるんと揺らして宙に桃色の線を刻み、視界の下端では高波のように快感を送り込まれながら肉棒が蹂躙されている淫猥な光景を眺めていると、噴火の直前のようにぐつぐつと煮え滾る射精感が腰の辺りを奔り始め、
「はぅっ、はあっ! くっ……イ、キそう……っ!」
目蓋をぎゅっと瞑って逼迫した声で跨っている牝に一杯一杯と云った風に伝える。
それを聞いたメイは爆発してしまいそうな程の期待の喜悦で眼を爛々と輝かせ、
「うんっ! きて……あンっ、いいよっ! 思いっ切り、して! 出して! 出してぇっ! 私も……イク、イクっ! イク、からぁっ!」
喘ぎの混じる声で嬉しそうに叫ぶ。
一貫して少年は動いていないが、其の直後からメイの独力の抽迭の動きはより一層に激しさを増す。
身体に纏わり突かせていた腕を再び少年の身体に、膝を彼の太腿の横に突かせて、掲げた、乳房程ではないが肉の乗っている美尻を上下に反復させて亀頭が真っ赤になっている男根をズボズボと咥え込む。
「あっ、あンっ、あンっ、あっ、あぁ、あぁーっ……イク、おまん○イク、イク、イク……」
そして此れ以上無いほど心地良さそうに蕩けた法悦の顔から嬌声が垂れ流される後ろで、ジュプジュプと抽迭の淫音が響く中――、
「うっ、くううううぅぅぅーーっ!」
「ひっ……! ぁぁああっああっ、はぁぁぁ……あぁぁっ……ああ……っ」
先に果てたのは少年の方だった。
それまでメイのなすがまま、と云うよりはさせていただけが、熱が尿道を昇ろうとしてくる感覚を覚えた直後、彼女の腰辺りに腕を伸ばして指跡が付くほどに思い切り掴んで一気に自分へと引き寄せていた。
身体を支えていた手も膝も崩れてメイの身体が凭れ掛って来た事で、ペニスが暴力的なまでに膣道を駆け巡り、最奥に到達して突き当たったと同時に、どくン、どくんと一回一回が強く、そして高い鼓動を打ちながら、多量の白濁の塊をぶち撒けた。
急激な抽迭と降りていた子宮口に密着した鈴口から直接殴られるように射精によって少年に一息遅れてメイも絶頂を迎えた。見開かれた眼は視界を埋めている白い頭髪の中に白い稲妻が炸裂するのを見ながら。
強烈な快感による痙攣は全身を活きの良い魚の如く跳ねさせるも、抱き寄せられている為に殆ど身動ぎ出来ず――胸に先端をすっぽりと包まれたまま肉棒が射精した時と似ている――ざわめき立つ膣壁は吐精の脈動も、其の熱も、全てを一身に浴びせられて、淫唇の口吻の隙間から少年の下腹部や陰嚢に突き刺すような勢いで潮を噴き付ける。
絶頂の快感が過ぎるのをひしと抱き寄せ合いながら待つ二人は夢現であった。
メイは何ヶ月にも亘って望んで夢にまで見た少年との行為、しかも膣内への射精が達成された事に、そして少年は柔らかな肉のクッションに顔を包まれる心地良さに――。
少年は少しばかり困惑していた。
というのも予防接種の所為なのか、普段よりも早く体力の限界が訪れ、またメイももう少し何かしたい風な顔を死ながらも同様に疲れて果てたらしく、一人だけではゆったりとスペースがあるが二人ともなると手狭のシミュレーターの座席の上で、結合を解いた二人は裸のままで添い寝をしている。
少年は困惑していると前述したばかりだが、実際には、其の原因は疲労だけではない。
「ンっ、うふふ」
メイはスミカ以上に性交後の甘えるのが強いらしい。乳房の間に埋めるように抱き着きながら、髪や頬を撫でたり、頬に、そして口に、キスをしたりしている。
少年は跳ね除ける事も出来ず、するつもりもないが、可愛がられるままにしているとメイが「ねえ、尻尾君」と声を掛けてきたので「はい」と返しながら包んできている肉房から逃れるように顔を左右にずらしながら彼女の顔を見上げる。
それまで恐らく喜悦だった筈の表情は何処と無く気恥ずかしさを醸し出していた。
「――”お友達”にならない?」
「え? 僕達、友達じゃなかったんですか――あ、でもそう云うのだったような、違ったような」
「ええ。私達は友達よ。でもね、もっと――なんていうのかな――変わった遊び方をする友達になるの。遊ぶ場所はトイレの個室とか、人通りの少ない廊下とか。それで遊ぶ時はお互い裸になるの。楽しそうでしょう?」
「それって――」
メイは怪訝そうに口を開いた少年の口に人差し指を当てながら制して、首を横に振った。
「ううん。恋人になるって事じゃないの――でも、はっきり言うとね、尻尾君の事、好きよ。大好き。勿論異性として、ね。
でも尻尾君にはセレンさんがいるし、すごく大好きなのも知ってるから、二人の関係を壊すつもりはないわ。だから――はっきり言っちゃうわね、こういうの性に合わないもの――セックスフレンドにならない?」
少年がぽかんと口を開ける。
「私、今までで尻尾君としたのが一番気持ち良かった。まだまだ一杯して欲しい事もしてみたい事もあるし、これっきりなのは寂しいの。結構、相性だってよかったし。ま、セレンさんとの相性のがいいかもしれない、いえ多分そうなんだろうけど――でも私の方が胸は大きいわ。だから私だけがどうってわけじゃなくて、このおっぱい好きに出来るんだから尻尾君にとっても悪い話じゃないと思うの。どう?」
どう、と問われても少年は当惑の極みである。
恋人が居ると云うのに――とはいえ既にメイと身体を重ねた後である。また世の中にはそう云うのも許されるカップルもあるだろう。例としてテレジア夫妻が挙げられる――唐突にセックスフレンドになろうと言われてしまったのだから。
彼女を含めて少年は何かの間違いや弾みでスミカ以外との女性と性交をした事はあるとはいえ、バレなければいい、などと考えるタイプの人間ではない――以前に黙って隠し通そうとした事はあった。それも結局は露見したが。
となれば答えは一つの訳で、彼ははっきり否定しようと口を開こうとするとメイに先んじられた。
「私が尻尾君としたいって思ったのは君の所為だからね。あの時、犯されなかったら、こんな風にいやらしい女にならなくて済んだと思うの――責任、取って欲しい」
唐突に突き付けられた手札は少年が尚も彼女に抱き続けている罪悪感であった。口調はそれまでの明るいものではなくて、執念すら感じられる程の薄暗いものであった。
痛い所を突かれた風にぐっと言葉を呑み込んでしまっていると「あ、でも私に彼氏が出来るまででいいかな」と条件を緩められて、彼はほんの僅かだが心の片隅で、それぐらいならいいかなと、思ってしまった。
この遣り口は最初に高額な値段を吹っ掛けておいて次に安い金額を呈示して買い得だと思わせる方法である。勿論この場合、売り手側の呈示額は絶対に適正価格を下回る事は無い、と云う前提付きである。
少年は見事に術中に嵌ったワケだがメイは心理だけではなく更に本能を揺さ振りに掛る。
「だから、それまではセックスしたいの。おっきなおち○ち○で突いて欲しい。それに、顔とかおっぱいにも掛けたり、呑ませて欲しいな。それに、お腹の中……おま○この中にも、出していいよ。尻尾君の凄く濃い――精液」
艶やかな声音で淫らな言葉を用いて言われてはしまって、もうする気は無いが少年の下腹部のモノが少しだけ力を取り戻していた。
ソレが僅かに僅かに鎌首をもたげたのと少年が一言を小さな声で言ったのは殆ど同時だった。
言った、と云うよりも、訂正するなら、正確に云えば、言ってしまったのは――、
「……はい」
その一言だった――。
少年と契約を交わした後、身体に纏っていた精液を買っておいたウェットティッシュで拭き取ったメイは彼より先にシミュレータールームを出て帰宅する為に一階のエントランスを歩いていると、
「やあ、メイちゃん。こんにちは」
と後ろから声を掛けられて振り返ると其処に居たのは、テレジアの夫であった。
偶然にも出くわしてしまったワケで、ミスターは彼女につかつかと近寄ると挨拶もそこそこに、「”お友達”の件、考えてくれたかな?」と、尋ねてきた。
メイは其れを受けると、困ったように微笑んで、
「ごめんなさい。私――”お友達”。出来ちゃったんです」
ミスターは最初驚いた様子だったが、直ぐに、しょうがないと云う風に顔を和らげた。
流石、手慣れていると云う以上の熟練もあって、引き際が肝心と考えているのだろう。
「うーむ、そうか~、残念だなぁ。ま、いいか。其の子と仲良くね。じゃあ」
それだけ言ってミスターは去って行った。
ナンパに慣れている上に妻も居る以上、一人に固執しないのが彼のスタイルなのだろう。
微笑んでいたメイであったが、実はミスターの反応が気になっていたので、呆気なさに肩透かしを喰らったような気分で長身の背中を脱力した風に見送っている。すると数m進んだ辺りで彼は振り返って、
「――何時か気が向いたら僕とも”お友達”になろうね~」
ひらひらと手を振りながら言い残すと帰っていった。
「……考えておきまーすっ」
メイは苦笑しながら其の背中に言葉を投げ掛けたのであった。
同時に”お友達”を作ると云うのはミスターによって出来たものであるから礼も述べたかったような気分になったが何となく黙っていた。
其の事は自分と”お友達”だけの秘密にしておきたかったのだ。
浮ついた足取りのメイはこれからの遊びに想いを馳せて、自然と笑みが零れるのだった――。
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