夢を見た。なんて事のない夢だ。
何時とも知れない時、何時とも知れない場所で、クラインやレミルやジナやボイルやジノやAMIDAやアグやフライトナーズやジャックやエヴァンジェやアモー、生きてる奴も死んだ奴も関係なく集まって馬鹿をやる夢だ。
それは夢らしく時系列も場所も内容も無茶苦茶だったけど、凄く楽しい夢だった。

Written by ケルクク


<最後の鴉>最終羽 『鴉とクライン』 【止まり木】

楽しい夢を見たためかで寝る前の憂鬱な気が晴れスッキリした気分で起きると、「はぁはぁ、鴉」息を荒くした大男が鼻息がかかるくらい近くにいた。
「あたぁ!」夢の残滓を消し飛ばす悪夢のような存在に、冷静に渾身の力と溢れる殺意を籠めた拳を振るう。
「あべし!」五メートルほど吹き飛んだ後、地面をバウンドしながら十メートルぐらい滑る大男。
「何しやがる!!ジャック!!」
「いや、整備が終わったので声をかけたのだが起きないので目覚めのキスをしようと」
「何でそれをお前がやるんだよ!シーラにしろ!シーラに!!」
痙攣しているが意外に元気なジャックを怒鳴ると「33000Cになるわよ?」と笑いながらシーラが入ってきた。
「赤ライと同じ値段かよ!高すぎるだろ!!」
「やはり愛を金で換算する女はいかんな。鴉、いい加減真実の愛に目覚めるんだ。私とや ら な い か?」
「やるわけねぇだろ!!あぁもう!アナイアレイターの整備は終わってるんだな!」
擦り寄ってくるジャックを蹴り飛ばしながらシーラに訪ねる。
「ええ。機体は万全以上の状態にしたわ。ただファシネイター戦で破壊された武器はやっぱり調達できなかったわ。力不足でごめんなさい」
「だからお前の言うとおりに私の予備兵装であるCR-WB78GL、オラクルから回収できたWL-MOONLIGHT、そしてジナイーダから託されたYWH16HR-PYTHONを装備したが、いいのか?」
「あぁ。慣れない武器だが使いこなして見せるさ。それに三人の遺志を背負ってけると考えれば悪くない」
「三人?」「…そうだな。誰よりも早くインターネサインの危険性に気付いていたあの男も喜ぶだろう」
怪訝な表情をするシーラの隣でジャックが複雑な顔をする。
「んで、クラインの場所は?」
「中枢に今までとは比べ物にならないエネルギー反応があるわ。それと沈黙したインターネサインが少しずつだけど機能を回復して来てる」
「誘ってやがるな、クライン。いいぜ、俺もいい加減ケリをつけたい所だったんだ」
立ち上がりアナイアレイターの元に歩き出したところでジャックに肩を掴まれた。
「待て、私も連れて行け」
「足手纏いはいらねぇよ。これは俺とクラインの問題だ」
「老いた鴉とはいえ弾除けぐらいになるだろう。それに私は責任を取らねばならないのだ。頼む」
ジャックが頭を下げる。それを無視し手を振り払おうとしたが思いのほか強く握られているため外せなかった。
「弾除けなんざあの化け物相手に役にたたねぇよ。それに責任を取るんならここで死ぬよりもやらなきゃいけねぇことがあるだろ?
 アンタにしてみれば『レイヴンによる秩序の創出』はインターネサインを倒せるレイヴンを探すための餌に過ぎなかったんだろうが、それを信じて集まった奴が大勢いるんだぜ?俺も結構期待してたんだ。
 そしてアンタの掲げた餌のせいで敵も味方も大勢死んだ。ならアンタにはそいつらに報いる責任がある。だから作れよジャック、『レイヴンによる秩序の創出』、レイヴンの国をな。アンタにはその義務がある」
「相変わらず厳しい男だな。私に鴉として死なずに政治家として生きろというか。いや皆を騙して死に追いやった大罪人には相応しい末路かも知れんな」
ジャックが自嘲して俺の肩から手を離す。そんなジャックの胸を軽く叩き笑いかける。
「戦う場所が変わるだけさ。お前なら上手くやれるよ。さて、そうと決まったら何が起こるかわからないからお前はシーラ連れてここから脱出してくれよ?シーラも今までサンキュな」
そして今度こそアナイアレイターに向かって歩き始めたところで「レイヴン!」とシーラに呼び止められた。
「んだよってん~~!?」そのまま体ごとぶつかってきたシーラに唇を奪われる。
「ん、ん」バランスを崩し倒れないように苦労する俺の口内に侵入してきたシーラの舌が暴れ回る。それは技巧もなにもないただ俺の口内を舌で攪拌するだけのものだった。
そしてようやく体勢を立て直し反撃にでようという絶妙なタイミングで唇が離される。瞳と顔を真っ赤にしたシーラが、それでも何時もの笑顔と口調で言葉を紡ぐ。
「キスとオプションの舌で一千万Cよ」
「自分から仕掛けといて請求とか悪徳すぎんだろ。それに高過ぎだ」
「高いのは初物だからよ。それに安心して無事に帰ってくれたら食事を奢ってくれたらチャラにしてあげる。そのかわり帰ってこなかったら例え地獄だろうと集金に行って回収するからね?」
「そりゃ恐すぎる。何が何でも帰らんとな。…ところで初物ってマジ?」
気になったので聞いてみる。流石にこの年齢ではないと思うがでもさっきのキスを考えるとあながち間違いじゃないかもしれん。
「さぁ?食事の後に確かめてみたら?別料金になるけどね」
「それはそれは楽しみだな」今度は俺がシーラの唇を奪う。
「ん、これで二千万。踏み倒したら許さないから」と潤んだ瞳で微笑むシーラに「了解」と頷ずき、アナイアレイターの元に向かおうとしたところで「鴉!」とジャックに呼び止められた。
「んだよ!」返答と同時に後ろから飛び掛ってきたジャックに廻し蹴りを叩き込む。
「がはぁ!何故シーラはよくて私は駄目なんだ~!!」
「俺がノンケだからだ!!」吹き飛ぶジャックに怒鳴りアナイアレイターの元に歩く。
「生きて帰って来い。国を作るには象徴、『最強の傭兵』という偶像が必要だからな。そして今度こそ私のレイヴンになってくれ」
「最後は全力で断る!!!それ以外は受けてやるさ。お前にばかり苦労をさせる気はないんでね」
後ろから投げられた声に、こちらも振り向かず怒鳴り返す。
そしてようやく辿り着いた愛機に語りかける。

「さぁ、いこうぜアナイアレイター。クラインを斃しにさ」

 <最後の鴉>最終羽 『鴉とクライン』 【七度の再開】に続く!!

 




 

とある絶望1 終わりの始まり

「あの子達は死んだよ。護衛していた第三師団がWGに壊滅されたところに武装した暴徒が襲いかかったみたいだ」
血走った目とは対照的に死人のような青い顔をした夫の紡いだ言葉にテレジアは崩れ落ちた。
「…生存の可能性は?」夫の表情を見れば答えは解ったがそれでも聞かずにはいられなかった。
「ない。…無人偵察機からの映像であの子とクラリッサとテリーの死体を確認できた。…辱められた様子が無かったのだけが唯一の救いだね」
枯れ果てた夫の声に止めを刺されたテレジアは嗚咽する。
おぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおぉおおっぉおおおおぉぉっぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお
悲痛に満ちた嗚咽は徐々に憤怒が混じって行き、最後は憎悪の慟哭へと変わった。
許さぬ!許さぬぞ!アナトリアの傭兵!!おんしはあちきから友や仲間や居場所を奪うだけでなく、家族まで、息子夫婦と孫まで奪った!!絶対に許さぬ!許さぬぞ!殺す!殺してやる!!否、ただ殺すだけではない!おんしにもあちきと同じ絶望を!大事な者を奪われる悲しみを味あわせてくれる!!見ておれよ!アナトリアの傭兵!!!フィフに、社長に連絡を!地球緑化計画に協力をしてやると、緑の太陽のコアになってやると伝えい!!
怨嗟の叫びを上げるテレジアを夫は優しく抱きとめた。
「落ち着くんだ。地球緑化計画が発動したら地球は死の星になってしまう。それに第三師団が壊滅したのは元はといえば彼らがラインアークの輸送部隊を略奪したからだ。それにあの子達を殺したのはアナトリアの傭兵でなくて暴徒「だが!アナトリアの傭兵が原因の一端である事に変わりは無い!!それに知らぬ。もう知らぬ。あの子の仇さえ討てるなら地球環境がどうなろうと構わぬ!あの子のいないこの星がどうなろうと知った事ではない!そうじゃ!他の者がどうなろうと知らぬ!否!他の者が全て死ぬならどこかにいるあの子の敵も討てるではないか!そうじゃ!報いを!全てに報いを!あの子を奪った世界に報いを!」
「緑の太陽のコアになれば君は死ぬ。僕の大事な者は君だけなのに、君は君まで僕から奪おうというのかい?」
「……すまぬ。だがあちきはもはや止まれぬのじゃ!あちきがあの子にしてやれるのはもはや、仇を討つしかないのじゃ!だから!だから!」
言葉にならない激情に身を震わせる妻を優しく撫でる夫。
「わかったよ、テレジア。ただし、僕も付き合うよ。大事な者を全て失っても生きていけるほど僕は強くないからね」
「すまぬ。すまぬ。…ごめんなさい、あなた」「いいんだよ。その代わり僕達の命で必ずやあの男を倒そう」

この瞬間、一組の老夫婦と一つの時代の死が決定した。
その事に気付きながらも老人は、胸の中で子供のように泣きじゃくる妻の頭をいつまでもいつまでも撫で続けていた。
 




 

ダリオ奮闘記

ローゼンタールの兵士を簡潔に表すとしたら、古き良き貴族主義と高潔な騎士道精神溢れる騎士である。
その気風は前線の兵士のみであったが、リンクス戦争の怪我でリンクスを引退したレオハルトが経営陣に加わると徐々に経営陣にも広がっていき、経済戦争の後期、ORCA事変の頃にはきっちり企業全体に蔓延していた。
その結果、他社ならば損失として処理する他社に捕虜になった自社の社員を身代金を払って買い戻したり、他社ならば兵達のレクリエーション代わりに虐待の後に殺される捕虜にした他社の社員を保護したりするといった非効率的な行為が当然のように行われている。
盟主たるオーメルからは再三にわたってこのような非効率的な事は止める様に勧告や通達があったが『捕らわれた仲間を見捨てるような醜い事はできない』『戦場ではともかく、降った無抵抗の相手を手にかけるなど美しくない』といった理由で強硬に拒否し、オーメルも拗れてグループから離反されるよりはと、黙認していた。

これは、そんな時代錯誤のなんちゃって騎士様達の中で成りあがろうと奮闘する一人の男の物語である!

****

「なんだこのふざけた数字は!当初予算の3倍近く超過だと!?どういうことだ!これでは功績どころか予算超過の罪を問われかねないではないか!」
報告した秘書兼オペレーターに報告書を叩きつけると、ダリオは頭を抱えた。
不味い。このままではまずい。折角、インテリオルの基地占拠の功績を独占しようと単機で出撃して占拠したのが無駄になってしまう。
上手い具合に腕をアピールするためにコジマ汚染の被害を最小限にするという名目でPAを切ったのが功を奏し、相手に発見される事なく奇襲できたおかげてトラゼントも基地もほぼ無傷だったというのに。
「そもそも、こちらの損害はトラゼントの弾薬費程度だし、基地もほぼ無傷で手に入ったのだから補修費は殆どなかったはず。なのに一体何故、どうしてこれほどの費用が掛かったというのだ」
「理由は捕虜です。基地を無傷で手に入れた副産物として基地の人員を殆ど捕虜とする事ができました。この為、捕虜の数が想定の5倍近くに膨れ上がったのです。つまり、ダリオ様のせいですね」
「冗談は胸のサイズだけにしろ、小娘。いくら五倍の人数だとしても増えるのは精々食費程度だろう。これはそういうレベルではないだろう」
「内訳を見れば理由がわかるかと。ご覧下さい」口調こそ丁寧だが先程のお返しとばかりにこちらの顔を目掛けて書類を叩きつけてくる小娘。
く、ふざけやがって、このオーメル印の冷血貧弱体型小娘が!いや、落ち着け。ここでこの胸がナルな小娘を懲らしめるのは簡単だがこいつはレオハルト様の養女。迂闊な事はできん。むしろ、おだてるべきだ。だが待てよ。下手に優しくしてこのブログ中毒に惚れられたらどうする。レオハルト様との繋がりが出来る事は好ましいがだからといってこのペタン小娘は俺の好みとは最果てだ。いくら成り上がるためとはいえ「ご安心を。あなたに惚れるくらいなら期限切れのポイントカードと結婚したほうがマシです」「馬鹿な!?俺の思考を読むとは貴様妖怪悟りか!やはりな、確かに体型が小五ロリだと思っ「ダリオ様が思った事をベラベラと喋っていただけです。忠告しますが悪口は頭の中か対象がいない場所でやったほうが良いと思います」「…どこから俺は喋っていた?」「オーメル印の冷血貧弱体型小娘からですね。それと黙っていましたが私はレオハルト様よりダリオ様の評価係も任命されております。今度のダリオ様の評価はダリオ様が驚くものになると思うのでお楽しみに」「…お手柔らかに頼む。ところで、内訳だったな」これ以上傷口が広がらないようにダリオは話を強引に打ち切ると、内心でこいつのプログを今夜にでも荒らしてやろうと決意しつつ叩きつけられた内訳を広げ読み始める。
「………な、なんだこの内訳は!服飾費と光熱費は桁が七つぐらい多いんじゃないのか!?捕虜なんぞまとめて素っ裸にして縛って倉庫にでも放り込んでおけばいいだろう!」
「最初はそうしていたのですが、兵士の皆様が『これはレディに対する扱いではない』と捕虜の戒めを解き、捕虜にオーダーメイドのドレスを贈り、捕虜を居住区に移してしまったのです」
「ではこの雑貨は」「はい。兵士の方が『虜囚とはいえレディには出来る限りの便宜を働かせていただく』と」
「ファミニストどもめがぁ!BFFの時は何も言わなかったではないか!」「BFFは私達と同じ様に前線勤務は男性のみですから」
「くうっぅうう!ならこのウェディング費用とはなんだ!!」「捕虜の方と仲良くなってそのままゴールインした方が30組ほど。囚われの姫と騎士というのは王道ですから仕方ありませんね」「ふざけるな!!そんな個人的な費用をなぜ負担せねばならん!」「兵士の冠婚葬祭は援助する内規がありますから」「うがぁああ!!!」
力尽きて突っ伏すダリオを見て小娘は『ざまぁw』とすっとしたが、流石に少しだけ哀れになったのと、なによりこのままだと自棄になって『捕虜を皆殺しにしろ~!!』と叫びだしかねないので助け舟を送る事にした。
「ウィン・D・ファンションに捕虜の買取を持ちかけてはどうでしょうか?便宜上カラードに所属するウィン・D・ファンション個人が買い取るという形式ならばインテリオルをそれほど刺激しないと思います。それに彼女の性格ならばBFFの女王と同じ様に捕虜を助けるためならば多少の泥なら被るでしょう。予算超過分程度は補填できるかと」
「それだ!上手く吹っかけてやれば赤字どころか黒字になるし、あの雌猫に一泡吹かせることも出来そうだ!クハハハハハハ!
 よくやった小娘!褒美に俺が世界を征服しても変わらず秘書として使えることを許してやろう!ゲハハハハ!
 ククク、見ていろよ、雌猫よ!ハ~~~ハハハハッハハ!」
一転して上機嫌に笑うダリオを見て小娘は『男って単純』と内心で思いながら溜息を吐くのだった。
 




 

とある絶望2 英雄の第一歩

こちらに気付いてもいない難民達にWHEELINGを発射する。
着弾点にいた者は灰となり、その周囲にいた者は爆風と熱と破片で即死し、さらにその外側にいた者達は死ぬ迄の間苦しみぬいて死んでいく。
炭化した腹から零れた瑞々しい内臓を元に戻そうと半ば炭と化した両手で必死に押さえる男、炎に包まれ悲鳴をあげ両親の名を呼びながら地面を転げまわる子供を上半身が無くなった両親の死体が見守り、高熱の破片に腹から両断された女が傷口を焼かれたため死ぬ事ができず『助けて、殺して』と訴えながら這いずり回る
第一射の結果半数以下に減った難民へ更にWRとWBを撃ち込んで行く。中心にいた者は消し飛び、付近にいた者は衝撃波でミンチになっていく。
これでさらに半数を殺したが残る難民は逃げ惑った結果、広く薄くなってしまったので私も動かねばならない。
レーダーを確認しながら逃げ惑う難民達を残らず殺していく。遠くにいる者はライフルで、近ければ付近を通ってやればPAに巻き込まれるかコジマ汚染で死ぬ。
家族の死体を前に呆然と座り込む男をWRで家族もろとも血と肉の混合物に変え、妹の手を必死に引きながら走る兄の近くを通るとPAに後ろ半分を削られた妹が脳漿と血と内臓をぶちまけながら倒れ、急に手の重さが半分になった事をいぶかしんだ兄が振り返り妹の名を呼ぼうと息を吸い込んだせいで喉と肺をコジマに犯され口から血の泡を吐きながら妹の上に倒れる
そんな自分が作り出した地獄に私は悲鳴を上げ泣き叫びながら、それでも一人残らず殺し続ける。

墜落したクレイドルの住人達は難民と化し汚染の少ない居住可能地域を目指した。だが居住可能地域はクレイドルの住人全てを受け入れるには狭過ぎ受け入れを拒否した。
だがこのまま汚染の厳しい場所にいては死ぬだけなので難民達は拒否されても構わず居住可能地域を目指す。その結果何が起きるかというと、難民達への攻撃だ。
最初は追い散らす事が目的の威嚇は、直に本格的な攻撃に変わり、最終的には殲滅が目的の掃討となった。
私の家族は私がリンクスだった事もあってカラードの本部地域に迎え入れる事ができた。
だから私は家族を守る為に、家族の生活する場所を守る為に、やってくる難民を、もしかしたら知り合いだった人達を殺さなければいけなくない。
だからしょうがない。場所も水も空気も食料も全員に行き渡る量はない。だから自分達が生きるために他者を蹴落とさねばならない。殺さなくちゃいけない!
だから仕方ないの!私にはどうする事はできない!私は助けてあげられない!私は生きていたいの!だからしかたないの!だからしょうがないの!だから許してよ!勘弁してよ!!私をそんな目で見ないでよ!!!!

****

自分の叫びで目が覚めた。寝不足でクラクラするのにちっとも眠くない事に舌打ちして目を開ける。
まず飛び込んできたのは煌々と輝く灯り。暗闇には誰かが潜んでいる気がして消す気にはなれないせいで家中の灯りは点けっぱなしだった。
ボーっとしていると不意に独りでいる事が寂しく声を上げて泣きたい気持ちになったので慌てて、常備している精神安定剤を三回分飲む。
本当は服用後三時間はあけなくてはいけないのに30分前に飲んだばかりの上に規定の3倍もの量を一気にとるので副作用が心配だが、飲まないと自殺したくなるし、一杯飲まないと効かないのだから仕方が無い。

薬が効き始めて落ち着くと、自分が汗びっしょりなのと咽喉が乾いていた事に気づいた。ビールでも飲んだ後シャワーを浴びようと汗で体に纏わりつく不快な寝巻きを脱ぎ捨て裸になるとキッチンを目指す。
だがリビングに入った瞬間、食器棚と壁の10CM程度の隙間に暗闇を見つけた。
不味いと思ったときにはもう遅かった。あの隙間から、あの暗闇から誰かに見られている!強力な確信が恐怖と共に身を竦ませる。呼吸が荒くなる。汗と涙で前が見えなくなる。錯覚だ。10CMの隙間に人が隠れられるわけが無い。そう言い聞かせているのに体はピクリとも動かない。逃げたいのに逃げられない。「あぁあああぁああ!!!」恐怖に駆られた私は隙間に手を突っ込み渾身の力で食器棚を引き倒す。強烈な破壊音。砕け散る食器。散乱するガラスと食器の破片。当然、隙間には誰もいなかった。
当たり前だ。隙間に人が入るわけが無い。隙間に、隙間?
はっとして周りを見ると殆どの家具と壁の間には隙間があった。隙間が隙間が隙間があった。いる!誰かいる!この部屋の隙間から暗闇から暗闇から私をじっと見てる!観察してる。「あ、あ、あ」歯がガチガチと音を立てる。体が細かく震える。助けて、誰か助けて。必死に助けを求めようとするがここには誰もいない。殺される。私はここにいる誰かに殺される。暗闇からにいる誰かに殺される。嫌だ!嫌だ嫌だ!逃げ出そうとすると足がもつれ転んだ。慌てて顔を上げるとベットと床の隙間の暗闇に潜む誰かと目が合った。「ああぁああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」その瞬間、頭の中が真っ白になった。

****

気がつくと疲れ果てて壁に背を預けて座っていた。
部屋は爆弾でも落とされたかのように荒れ果てグチャグチャになっている。家具は全て倒されているしベットやソファーまでもひっくり返っていた。我ながらどうやったんだか。
だがそのかいあって、隙間も暗闇も家から無くなっていた。だから当然、暗闇に潜むアイツももうこの家にはいない。
安堵の溜息を出した瞬間、猛烈に咽喉が乾いていた事に気付きキッチンに向かおうと立ち上がろうとしたら立てなかった。
あれ?と足を確認するとガラスの破片やら何かの破片だがが足に突き刺さり大変な事になっていた。
あ~、こりゃ立てないわね、納得、でもなんでぜんぜん痛くないんだろ~、まぁ痛いよりはいいかぁ~、ってこのあとどうするのよ~、う~ん這っていくのも無理そうだしのどかわいたなぁ~、あ、やばい、うごけないとわかったらトイレにいきたくなった、でもうごけないし~、ん~、もういいや、ここでしちゃお~っと。
体の力を抜くと直に黄金色の迸りが出た。排泄の快感に体を震わせていると、尿意に刺激されたか大もしたくなったのでかまわずしてしまう。う~、くさい~。
ふと、視線を上げると窓に自分の姿が映っていた。「あはははははははは!なに私、お漏らしなんてして赤ちゃんみたい!あははははははははは!!!!」窓に映る自分の姿があまりに滑稽で笑っていると、「お~い、メ~イさ~ん、いますか~?話があるんだけど~って、なんだこの荒れようは!?爆弾でも落ちたか!?」ダンがやってきた。
「メイ、無事かって血塗れ!?」慌てて部屋に飛び込んできたダンに「ビ~ルとって~、あと、シャワ~浴びさせて~」と命令すると、「そんな事より怪我の治療が先だろ~~!!」と怒られた。
え~、じゃぁ~ソレが終わったら、ビ~ル持ってきてよね~。

****

ダンの治療はヘタレの分際で適切で迅速だった。
テーブルの上に外したカーテンを敷きその上に私を寝かせると手馴れた手つきで足の治療を終えて、嫌がる私に強引に水を飲ませた後に躊躇なく私の喉に手を突っ込み薬を吐かせる事を繰り返した。
そして薬を吐かせ終えるとインスタントな料理を作り、私が料理を食べている間にお湯で濡らした布で体を拭いて綺麗にしてくれた後に、どこからか発掘してきた私の着替えを着せてくれた。
結果として30分後、私はテーブルの上に胡坐をかいてカップ麺を啜りながらダンと向かい合っていた。
「う~、体調が戻ったら足の痛みが。ね、ねぇ、ダン、痛み止めに薬を飲ん「駄目。痛いのは体調が戻った証拠なんだから。さっきまでみたいに痛みを感じないほうがよっぽど危険なんだぞ!」「う~、痛み止めぐらいいいじゃない!」「あのなぁ、メイじゃなかったメイさんは自分がさっきまでどんな状態かわかってるのか?この精神安定剤、一般家庭じゃ麻薬とか覚醒剤に分類されかねない劇物なんだぞ!それをおま、…メイさんは一日三回飲むのがメンドクサイからって一気に三日分飲むって子供か!まったく、暴れて家をぶっ壊すぐらいですんだのはラッキーだよ。下手したら目からハイライトが消えちゃうとこだったんだぞ!」私の嘘を信じて怒るダンを見ると胸が痛んだので、話題を変える。
「あ~もう、解ったわよ!我慢します~。あ~、それにしても家がこんなになって理由をママ達になんて言い訳しよ~」「小五の時と同じくケーキを作ろうとしたら粉塵爆発しちゃいましたでいいんじゃね?」「う~、それしかないか。あ、ダン暫くあんたの家に住まわせてもらっていい?」何時ものように軽く言いながらさりげなくダンの腕を軽く掴み、視線を料理したダンが灯りを消したため暗闇になったキッチンへ向ける。一瞬沸き起こった恐怖はダンの腕の温かさを感じた瞬間消えた。
「痛い!痛い!痛いです!メイさん!手に力を入れないで下さい!!!いてててて!!つーか口調はお願いだけどこれ完全に命令だよね!あたたたたた!千切れる!力入れないで!千切れる!はい!冗談です!嘘です!心から歓迎します!いえこちらからお願いします!メイさんうちに是非きてください!!」その理由は多分見当がつくが認めるのも癪なので、泣き喚くダンの無様を笑い、きっと恐くなる前にバカらしくなるからねと違う理由で自らを納得させ、「よろしい」と頷きダンの腕を解放する。
「あ~、死ぬかと思った。まぁ空き家にするよりは誰かが住んだほうがいいか」と腕にくっきりと付いた私の手形をさすりながらダンが聞き捨てならない事を口にした。
「なに、家賃が払えなくなったから夜逃げでもするの?」嫌な予感に胸が締め付けられるのを何とか堪えて何時もの調子を装ってダンに尋ねる。
「あ~、似たようなもんかな。なんかそれどころじゃなかったから言えなかったけど、俺カラードを抜ける事にしたんだ。だから今日はさよならを言いに来たんだよ」「んな!?カラードを抜けるってどういうことよ!説明しなさい!!」嫌な予感が当たった事に泣きそうになるのを何とか堪えて、何時もの調子で柄にも無く格好をつけているダンを締め上げる。暴れた拍子に食べていたカップ麺がぶちまけられる。
「ぎゃぁあ~~!言います!言いますから、首から手を離して!ギブギブ!極まってるから!これ完全に極まってるから!このままだと死ぬ!死んじゃうから!」何時ものように泣きながらジタバタするダンを見て少し冷静になったので、「ふん」ダンを解放する。
「あ~、死ぬかと思った。え~とさ、メイは無抵抗の難民をネクストで殺すのってどう思ってる?」ダンが咳き込みながら、私の瞳を真っ直ぐ見て問いかける。
「………そ、それは、し、しかたないのよ!難民を受け入れてたら私達は飢え死にしちゃうのよ!だからしかたないのよ!私だって殺したくて殺してるわけじゃない!でもしかたないの!しょうがないのよ!!家族を守るためにはしょうがないの!私はまだ死にたくないの!だからしょうがないじゃない!!」私は呼び捨てにされた事を咎めるのも忘れて、ダンから視線を外し首を振る。
「そうだな。俺もそれだけだったら諦められてたと思う。でもさ、ラインアークに力をつけさしたくないからラインアークに向かう難民を殺すのは駄目だ。諦めきれないんだよ。見捨てられないんだ」ダンが人差し指で私の涙を拭いながら微笑む。

突如地上に降りなくてはならなかった企業に対し元から地上にいたラインアークは、海上とはいえ広大な汚染の少ない居住可能地域と、WGとの偽装撃墜の寸前に結んだ企業との停戦条約で手に入れた豊富な物資に、クラニアム以外の発電施設であるメガリス等の潤沢な生産施設を持ち、武装勢力や亡命者を受け入れて勢力を拡大した経緯から難民受け入れのノウハウがあったため、難民の無制限受け入れを表明していた。
だから受け入れを拒否された難民達やコルセールの発表を信じてアライアンスを見限った人達はこぞってラインアークへ向かった。
それを面白く思わなかったのはアライアンスだった。このままラインアークの人口が増え続けると人材の流出や人口増による生産力の強化などでアライアンスとラインアークの勢力比が逆転しかねないので、それを防ぐため、何よりラインアークが保有するメガリスや物資や居住可能地域を奪取するために、派兵されたラインアーク占領軍は撃墜された筈のWGに壊滅させられた。
アナトリアの傭兵が生きている事を知ったアライアンスはWGの報復を恐れラインアークへの直接攻撃を中止し、これ以上ラインアークが力をつけないようにラインアークへ向かう難民へと攻撃目標を切り替えた。
多分、今日私が皆殺しにした難民もそうだったんだろう。

「俺が小さい頃ヒーローになりたかったのは知ってるだろ?
 でもヒーローになりたかった子供な俺は大人になるにつれて、ヒーローになるのは無理だってわかった。この世には明確な悪なんていやしないし、俺は世界を変える力なんて持ってないちっぽけな存在だ。
 でもさ、ちっぽけな俺でも助けられる命があるんだ。セレブリティ・アッシュならラインアークへ向かう難民を助けられる。だったら助けないと。
 へへへ、いくら俺が弱くても対人装備のノーマルなら流石に勝てるだろうしさ」
「馬鹿!!ノーマルなのは最初の数回よ!アンタがラインアークについて難民の護衛をやり始めたって知ったらアライアンスはネクストを派遣する!そうなったらアンタみたいなへなちょこ終わりよ!」
「ローディさんにも社長にも同じ事言われたよ。でもさ、逆に言えば最初の数回とネクストが着た一回は確実に助けられるわけだろ?
 つまり、俺の命で数千人の命が助かるんだ。なら、いいかなって。なら、死んでもいいかなって思うんだ」
「そんな安っぽいヒロイズムで死ぬつもり!!顔を知らない他人を守る為に死ぬなんて馬鹿な事は止めなさい!」
「自分でも馬鹿な事をしてるって解ってるよ。でも決めたんだ。
 多分、俺、ヒーローになる事は無理だってわかっただけで、ヒーローになる事を諦めたわけじゃなかったんだな。
 ほら、みんなを助けるために死ぬって、ヒーローっぽいだろ?」
「いい加減にしなさい!私の言う事が聞けないっていうの!!」ダンの胸倉を掴み上げ拳を振り上げる。
だがいつもなら泣きながら謝るダンは、真っ直ぐ私を見つめ「ゴメン」とだけ謝った。

暫く睨みあった後、先に視線を外したのは私の方だった。
「………ホームの人はどうするの?アンタの自殺につき合わせるつもり?」悪足掻きと解っていても質問をする。ダンがもう意見を翻すつもりがない事は解ってる。でも話す事をやめたらダンは別れを告げて出て行くだろう。それは嫌だった。
「社長が引き取ってくれるって。たださ、死ぬって言ってるのについてくって言ってくれる人が多くてさ、説得したんだけど結局押し切られちゃったよ。
 流石に家族持ちは残ってもらう事にしたけど、俺と同じ天涯孤独な人は俺と一緒にラインアークに亡命する事になった」
「そう」何か話したくても言葉がなくなった私はダンの顔を見ることが辛くなって視線を落とす。
「じゃぁ、そろそ「待って!!」胸倉を掴んだ私の手を優しく剥がすダンの手を反射的に掴む。
「な、なんだよ」「え、えとその、しょ、しょうがないわね。アンタみたいなヘタレでも死なれると目覚めが悪いから私も付いていってあげるわ」
何か言わなくちゃ言わなくちゃと焦った自分の口から出た言葉は口に出した私にも予想外な言葉だった。え?え?何言っちゃてんの、私?
…でもいい案かも。ダンが私と一緒にいてくれないなら、私がダンと一緒に行くしかない。うん、そうだよ。そうしよう!
「そうと決まればダン、荷造りを手伝いなさ「嬉しいけどそれは駄目だよ、メイ」立ち上がろうとした私をダンが押し留める。
「お前が裏切ったらオバサン達が酷い目にあう。だからお前はアライアンスに残らないと駄目だ」「あ」そうだった。確かに私が逃げたらママ達がどんな目にあうかわからない。じゃぁ、つれて逃げた…無理よ!私はともかく、ママたちに監視がついてないはずが無いわ。それにそもそもどうやって説得するのよ。駄目だ。私はアライアンスから逃げられない。どうしよう。どうしたらいいの!
「心配するなよ!俺の逃げ足に速さは知ってるだろ?だから安心してお前はオバサン達を守ってやれよ。お前がオバサン達を守ってくれるから、俺も安心してラインアークへ亡命できるんだぜ!」
ダンが俯いた私を元気付けるように肩を叩く。
「それじゃ、俺そろそろ行くわ。元気でな、メイ。それと色々ありがとう。あ、戦場で会ったら少しぐらい手加減してくれよな」
ダンが立ち上がって私に背を向ける。
え?ちょっと待って!これで終わり?これでお別れ?嘘でしょ?ダンなんだよ?物心ついた時からずっと一緒にいたんだよ?一緒にいるのが普通だったんだよ?なのにいなくなるの?冗談でしょ?何かの間違いだよね?嫌だよ。嫌だよ、離れるのは。嫌!絶対に嫌!
「行かないで、ダン!アナタが好きなの!だから私と一緒にいてよ!」遠ざかるダンの背中を無我夢中で抱きしめる。
「うお!?ちょっとメイ!?」「お願い私と一緒にいて。愛してるのよ、ダン。今までのことは全部謝るから!私を好きにしていいから!何でも言う事聞くから!だから!だからずっと私の傍にいてよ!私を一人にしないで!!」一度想いを言葉にして口に出してしまうともう止まらなかった。ダンを二度と放さないように全力で抱きしめる。
「ちょ!?メイ、ギブギブ!締まってる!締まってるから!離して!死ぬ!死んじゃう!」「嫌だ!!」ダンが悲鳴をあげるが無視してさらに両腕に力を入れ、顔をダンの背中に押しつける。
「解った!行かない!どこにも行かないから、離して!このままじゃジャガる!このままじゃ、ジャガっちゃう!!」駄目だ。もし離して逃げられたら足を怪我してる私じゃ追いつけない。だから離しちゃ駄目だ。
ダンは首を横に振る私を見て更に悲鳴をあげる。
「じゃぁ、腕、腕を握ってくれ!これなら逃げられないだろ!!とにかく離してくれ!このままじゃ、オーガーにジャガられたムエタイチャンプみたいに死んじゃうから!!」「解ったわよ」
必死に訴えかけるダンの腕を掴みダンの戒めを解く。その後、向き合って話したいとダンが言ったので何回か手を離したりまた掴んだりして私達は向き合った。
「…え~と、爪先踏むのやめてくれない?」「嫌、逃げないんならいいでしょ?」「あの、単純に痛いんだけど」「我慢しなさい」「…はい」
交渉が不調に終わったダンが改めて口を開く。

「えーとさ、メイ、気持ちは嬉しいけどそれは錯覚だって。メイはいつも一緒にいた子分がいなくなるのから寂しいのを勘違「違う!!私はダンが好き!愛してるの!!…もしかしてダンは私の事、嫌い?」
「嫌いなもんか、好きだよ」「なら、私と一緒にい「でもさ、俺みたいなリンクズじゃお前にはつりあわないよ。お前はちょとがさつなところはあるけどそれ以上に可愛いところもあるし、実は女らしいし、リンクスとしての腕もいいし、面倒見もいいし、しっかりしてるし、度胸もあるし、いい体してるし、とにかく、俺が知る中じゃ三次元で一番いい女なんだからさ。俺なんかじゃなくてもっとお前に相応しい男が見つかるって」「そんなの関係ない!私はダンがいいの!ダンじゃなきゃ駄目なの!お願い、私を一人にしないでよ。私の傍にいてよ」「大丈夫。メイは強いからさ。俺なんていなくても一人でやっていけるよ。いや、むしろ俺みたいなお荷物がないほうがよっぽど身軽に動けるさ」
ダンの言葉に涙がこみ上げる。わかってない。コイツ全然私の事を解ってない!
「私は強くなんてない!!無理なの!一人じゃマトモに生活する事すらできないのよ!!もう何日もマトモに寝てないの!寝たら難民を殺す夢を見るから!!それに一人でいると奴等が来るのよ!暗闇に潜んで私を見てる奴等がいるの!解ってる。そんなの幻覚だって!でも駄目なの!前までは薬を飲んでれば大丈夫だったの。でも最近は駄目なの。薬を飲んでもあいつらがいなくならないのよ!ホントはね、この部屋薬でおかしくなったから壊したんじゃないんだよ?ちゃんと薬を飲んだのにあいつらが消えなかったから、暗闇に潜むあいつらと目が合っちゃったからおかしくなったの。ねぇ、解る?おかしいのは私なんだよ!もう私は壊れかけて、ううん、壊れてるんだよ。でもね、でもね、ダン、アナタと一緒にいると大丈夫なの。暗闇を見ても平気なの。ちゃんと寝れるの。アナタと一緒だと安心するの。だからお願い、私と一緒にいて。私を助けて。私の傍にいてくれるんなら何だって言う事聞くから!
 だから私を棄てないでダン!」
そのままダンの胸に飛び込み、「お願い」と繰り返しながら泣きじゃくる。
ダンは子供のように泣く私の頭を優しく撫でた後、そっと肩に手をかけ私を自分の胸から遠ざけ、私の目を見て
「…ゴメン、メイ。でも決めたんだ。出来る限り多くの人の命を救おうって。だからお前一人の為に難民全てを見捨てられないよ」
はきりと拒絶の言葉を口にした。
…コイツは何を言ってるんだろう?コイツはなんでこんな事を言うんだろう。私は限界なのに。私はダンがいないと壊れちゃうって言ってるのに!
「なんでよ!どうしてよ!!顔も知らない他人のほうが私より大事だって言うの!!!」
「ゴメン」「謝るな!!私の聞きたいのはそんな言葉じゃない!!……いかせない!!アンタをラインアークなんて絶対にいかせないんだから!!」
壁に備え付けてある通信機の元に向かう。こうなったらアライアンスにダンが亡命しようとしている事を伝!?「ゴメン」首筋にチクリと痛みを感じた瞬間、強烈な眠気に襲われ私は崩れ落ちた。
「ダン、アンタ」「本当にゴメン。副作用は無いから。2時間ぐらいで目が覚めるはずだから」ダンが謝罪の言葉を口にする。
眠い。駄目だ、寝るわけには行かない。眠い。眠い。唇を噛み切って意識を覚醒させる。眠い。急速に薄れていく意識の中でダンの元に這い進む。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。行かせちゃ駄目。眠い。捕まえないと。眠い。眠い。ダンがいなくなっちゃう。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。もう殆ど何も見えない。体の感覚が無い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。それでも私はダンの脚を掴み、眠い。眠い。眠い。眠い。顔を上げて、眠い。眠い。眠い。眠い。お願いする。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。「おねがい。いっしょにいてよだん。いっちゃやだ。たすけて。わたしをひとりにしないで。すてないで」眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。眠い。
だが意識が闇に堕ちる寸前、私が聞いたのはダンの「ゴメン」という謝罪の言葉だった。

私は絶望の中、眠りについた。

****

「………そっか、誰かを守るって事は守らない誰かを切り捨てるってことなんだな。
 ハハハハハ、俺そんな事も知らずにヒーローになろうとしてたんだ、馬鹿だな。
 …でも決めたんだ。ヒーローになるって。だから、ゴメンな、メイ。俺いくよ。
 ………バイバイ。俺もお前の事、好きだったよ。これを愛と呼んでいいのかは解らないけど」
  


後書き
某所からの移送です。良かったら見てください
最後の鴉の時事ネタを削除したら内容がほぼなくなってしまったので、
とある絶望と連結して一つにしました



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