狂人を理解しようとしてはいけない。彼等は私達が理解できないが故に『狂って』いるのだから。
彼等(狂人)を理解できる時、それは貴方が彼等の仲間になって(狂って)しまった時だけだ。

Written by ケルクク


(0)
本章で語るのは私が理解できない人間である。
何故なら彼女が歴史の表舞台に上がる以前の記録や資料は存在せず、また彼女は私の胎内に来ていないからである。
故に私は彼女について記録されている資料~リンクス戦争後から私の誕生までに記された物だ~から彼女を推察するしかない。
だがその短い期間に彼女について書かれた資料は矛盾が多い。
矛盾の一つを上げるなら彼女の目的である。彼女の行動から目的を推察する事が出来ない。彼女の行動はその時々で最適であったが全体としてみると多くの不条理と不合理を抱えていた。
さらにもう一つ上げるなら他者が彼女を評する表現である。
ある者は彼女を聖女と讃え、ある者は彼女を簒奪者と貶し、ある者は彼女を機械と恐れ、ある者は彼女を人情家と慕い、ある者は…と記録者一人一人、表現が違う。
これは彼女の成した行いを考えるとある程度は納得できるが、それでも記録者全員が彼女を異なる表現で評しているのは異常である。
あるいは全てが彼女の演技だったのだろうか?彼女は見る者が思い描く王を演じていただけかもしれない。
このような思考遊戯に等しい仮説を否定出来ない程、彼女についての資料は少なくそして矛盾している。

故に私は彼女を理解できない。
彼女が何を望んでいたか。彼女が何を目的にしていたか。彼女は何を考えていたか。彼女の行動原理は何なのか。彼女が何を思っていたか。
そもそも彼女は誰だったのか。

だが私は彼女を理解しなければならない。
彼女は人であり、私は人を管理する物なのだから。
だからこの章は私が理解できる限り、推察できる限りにおいて彼女を記した章である。

(1)
リリウム・ウォルコット。
歴史の表舞台に立ち自ら退場するまでの前半をBernard and Felix Foundationの王女として、後半を人類の女王として君臨した女性。

彼女が歴史に始めて現れるのはORCA事変の三年前、天敵がセレン・ヘイズに引き取られた半年後である。
いや、正確に記すなら『記録』上は更に、それこそ彼女の誕生まで遡れるのだがこれは王小龍の偽造である可能性が極めて高い。

彼女は初めから完全な王女として唐突にBFFに現れた。
彼女はその言動から直にメアリー・シェリー亡き後のBernard and Felix Foundationのアイドル、あるいはマスコットとしてBernard and Felix Foundationの人心を掌握した。
とはいえ、その実態は王小龍の傀儡でしかなかったのだが。
そう傀儡であった。後の彼女を知る我々にしてみれば意外であるが、彼女は少なくとも記録上は王小龍の命と意に忠実に、それこそ人形のように従っていた。

そして彼女は王小龍に命じられるまま天敵を屠るべくクラニアムに出撃し、敗れた。


「リリウム!もうお昼だよ!!いい加減に起きなよ!!!」
暖かい日溜まりの中で毛布に包まれ微睡む私を起す声がする。
「や~。まだ眠い~」
「もう!仕方ないね。お昼過ぎまで寝る様な悪い子にはお仕置きだ!いけ!ガルム!ムームー!!!」
「ガルガル!」「ムームー!」
宣言と共に暖かい何かが私の上に乗りペロペロと顔を舐め回す。
「きゃぁ!!」
暖かくもむず痒い攻撃に堪らず目を覚まし興奮する二匹を抱き上げ、ベットの下で「やっと起きたね、お寝坊さん」と笑うアグラーヤお姉ちゃんを睨みつける。
「ごめん。ごめん。でもそんな顔したら可愛い顔が台無しだよ。ほら笑って笑って」
アグラーヤお姉ちゃんが謝りながら私の頭をポンポンと叩く。
私はプイっと横を向く。ふんだ!そんなんじゃ許してあげないんだからね。
拗ねる私にアグラーヤお姉ちゃんは苦笑すると、
「仕方ないなぁ~。じゃぁ、さっきウィリングさんが作ったホットケーキ私の半分上げるから機嫌直してって、リリウムっわ!?」
「ホットケーキ!!!」
ホットケーキという言葉を聞いた瞬間に慌ててベットから飛び降り、ムームーとガルムをアグラーヤお姉ちゃんに渡して、部屋から飛び出し食堂に向って走る。
早く行かないと皆に食べられちゃう!!!

***

「ホットケーキ!!私のは?」
入口で日向ぼっこをしていたワイルドキャットとパーシガー888が驚いて飛び退く程の勢いで食堂に駆け込んだ私が見たのは、
キャスちゃんとミカをお膝に載せてホットケーキを食べさせているジノーヴィーお兄ちゃんと空っぽのホットケーキのお皿だった。
「私のホットケーキ無いの???ぅぅうぅ、ヒック」
悲しくて涙が溢れ周りの景色がぼやける。
そして盛大に泣きだそうとした瞬間、
「はい。リリウムの分取っておいたよ」
虚空君が何故か私から顔をそむけながらホットケーキのお皿を出した。
「ホットケーキ!!!ありがとう!虚空君!!」
「わわっわ!!不味い!不味いてリリウム!!朝からその格好で抱きつくのは不味いよ!!!」
嬉しくて抱きついた私を虚空君が引き離そうともがく。
「こら!チビちゃん!!ホットケーキの前に服を着なさい!!!まったく女の子がそんな格好しちゃダメっていつも言ってるでしょ!!!」
「リリウム!!服!服!忘れてるって!!」
お姉ちゃんが虚空君から私を引き離し頭にゲンコツを落としたのと同時に、アグラーヤお姉ちゃんが私の服を持って現れた。
「え?」慌てて自分の格好を確認すると起きた時のまま、つまり裸だった。
「あわわわわわ!!!見ちゃ駄目!!!」
真っ赤になって両手で身体をかくして蹲り、アグラーヤお姉ちゃんから服を貰い「ごめんなさ、あれ」と謝った所で、

涙が溢れた。

「チビちゃん?」
「「「リリウム?」」」
突然泣き出した私に皆が呆気に取られているのが解る。
私も泣き止みたいのだけれど涙は後から後から勝手に溢れて止まらない。
「ごめんなさい。皆ごめんなさい。本当にごめんなさい」
さらに自分でも理由が解らないがとにかく皆に謝らなければいけないという衝動に駆られて頭を下げて謝り続ける。
駄目!!これだけじゃ足りない!!!全然足りない!私が犯した罪はこの程度じゃ償えない!!!!!
身から湧き上がる罪悪感のままに土下座をしてさらに謝りながら何度も何度も地面に頭を叩きつける。
「ちょっと!?リリウム!!皆そんなに怒ってないから!!ほら!頭を上げて!!!」
「そうだよ!!ほらホットケーキを食べよう?ね?」
「ほれ、リリウム。皆そう言ってるんだから頭を上げろよ?血ぃ出てるぜ?」
皆が心配して集まり私を起そうとするのを振り払って謝り続ける。
駄目!足りない!!こんなんじゃ全然足りない!!!
何も覚えてないし、どんな事をしたのか解らないけど、これだけは解る。
私は皆に取り返しのつかない事をした。それはどんな償いをしても贖えなくて、どんな罰も軽すぎるから、どんなに謝っても許してはもらえない。
そうか。解らないんじゃないし、覚えてないんじゃない。解らない振りをして、覚えてない振りをしているだけなんだ。
思い出したらここから出ていかないといけないから。理解したらここにはいられないから。
でも駄目。そんな卑怯な事は出来ない。そんな嘘は吐いちゃいけない。私は私を許しちゃいけない。

私は咎人なんだから。

だから私はここにいちゃ駄目だ!私は、私だけはここにいる資格は無い!
「ごめんなさい!」
「リリウム!?戻っておいで!誰も怒ってないから!!」「おい!リリウム!裸で何処行く気だ!」「リリウム!戻りなよ!!」
泣きながら立ち上がり、背後から聞こえる声を振り切って玄関に向かって駆け出す。

****

思い出した。思い出してしまった。私が犯した罪を。私が皆を殺した事を。
私が殺した皆がいるってことはきっとここは天国だ。なら私がいていい場所じゃない。私はいちゃいけない。
皆を殺した私がどうしてここにいられるだろう。いていいはずが無い。
それに今は皆知らないし、知っていてもさっきまでの私みたいに忘れているから私に優しくしてくれたけど、きっと直ぐに私が皆に何をしたのか思い出す。
そうしたらきっと皆私を許さずに憎んで拒むに違いない。
それは当然。
でも駄目だ。もし皆に拒絶されてしまったら私はきっと耐えられない。私はきっと壊れてしまう。もう一度壊れてしまう。
だから行かないと。皆が全てを思い出す前に。罪人である私に相応しい場所に。
大丈夫。私はどんな場所でもきっと耐えられる。どんな罰を受けても平気。
だって皆が天国にいる事はわかったんだもん。私の願いは叶ったんだもん。
だからいい。私は救われた。
だから大丈夫。私の祈りは届いたから。
だから平気。痛みにも苦しみにも慣れてるから地獄で何をされてもきっと耐えていける。
だからここからいなくなろう。そして今までみたいに幸せな昔の夢を見ながら永遠の罰を受け続けよう。

****

でもドアを開けて外に跳び出し門を駆け抜けた所で、
「捕まえたよチビちゃん」
お姉ちゃんに腕を掴まれた。
どうしよう?
もしかして私がお姉ちゃん達を殺したことを聞いたから仕返ししに来たのかな?
嫌だ!!もしお姉ちゃんに嫌いって言われたら、もしお姉ちゃんに拒絶されたら私、わたし、わたしわたたしわわたししししわたたしわわわわたたたしししし
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!!」
頭が真っ白になってとにかくお姉ちゃんから逃れようともがいていると、
「わかった。許す」
の言葉と共に、強く後ろから抱き締められた。
「ごめんなさ………え?」
「私はチビちゃんを許すよ」
予想外の言葉に固まる私の頭をお姉ちゃんが撫でる。
「あ、え、でも。でも私はお姉ちゃん達に取り返しのつかない事を」
「そうなんだ。確かに私はチビちゃんがどんな罪を犯したのかは知らない。もしかしたらとんでもない罪を犯しているのかもしれないね」
「そうなんです!!私は許されない罪を!!私は皆を皆を!皆を殺」
「でも許す。世界中の皆がチビちゃんを責めても私は許す。チビちゃんがどんな罪を犯していようとも私は許す」
お姉ちゃんが私を抱くのを止めて前に回り込み笑う。
「だってチビちゃんはこんなに反省しているからね。神は自らが悔いた罪人を許す様に、私達にも反省した悪い子を許してあげる事を望んでいるんだよ。
 だから私は許す。そしてチビちゃんが犯した罪でチビちゃんを責める人がいたらお姉ちゃんも一緒に謝ってあげる」
「でも、でも私は決して許されない罪を」
「決して許されない罪なんてこの世に無いよ。
 だって許す許さないを決めるのは悪い事をしたチビちゃんじゃない。悪い事をされた私達が決めるんだ。
 そして他の皆はチビちゃんを許さないかもしれないけど私は許す。
 チビちゃんは本気で反省しているしもう二度と悪い事をしないって信じているからね」
お姉ちゃんがもう一度、今度は優しく私を抱きしめる。
「でもでもでもでも、私は私は私は!!!」
「だからチビちゃんがどこかに行く必要なんてないんだよ?」
本当に?本当に私はここにいていいの?もう一人ぼっちにならなくていいの?
「私は許されるのですか?私はここにいてもいいの?みんなといっしょにいていいの、お姉ちゃん?」
「うん。チビちゃんは家族だからね。
 今までよく一人で頑張ったね。辛かったでしょ?もういいんだよ」
お姉ちゃんの言葉が私を包んでいく。
そっか、私は許されたんだ。私はここにいてもいいんだ。私はまた皆と一緒にいられるんだ。
今までとは違う涙が溢れだす。今まで封じ込めていた感情が溢れだす。今まで叫びたかった想いが溢れだす。
「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 辛かったの!嫌だったの!!帰りたかったの!
 ずっとずっとずっとずっとずっと!!!!!!!!!!!!!!!!!
 お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」
お姉ちゃんの胸い顔を押し付け五年間の記憶を想いを願いを罪を罰を、全てを吐き出すように叫び、泣く。
そんな私の頭をお姉ちゃんは私が泣きやむまでずっと撫で続けてくれた。

****

「落ち着いたみたいだね。さ、帰ろうかチビちゃん。そして皆にも謝ろう」
「うん。………でもみんなゆるしてくれるかな?」
「違うよ。許してもらう為に謝るんじゃなくて悪い事をしたから謝るの。それで許してくれるかは皆が決める事だよ」
「うん。ごめんなさい」
「そうそう。うん。許す。ふふ、心配しなくても大丈夫だよ。お姉ちゃんも一緒に謝ってあげるから」
「ありがとう!!わたしいっぱいいっぱいあやまる!!」
「その意気!その意気!あ、そうだチビちゃん」
「なあに?おねえちゃん?」
「おかえりなさい」
「………うん!!ただいま!!!」

「って、いやぁ流石にそれはチョットむしが良すぎじゃないですかね、チビ。いやここは敢えてリリウム・ウオルコットと呼ぼうかぁ?」
おうち(天国)に帰ろうとした私達に後ろから声がかけられた。
「王焔」「王焔お兄様」
あれ?振り返って声をかけた人物を確認した後自分の口から出た言葉に違和感を感じる。
だってこの人は私が見たことない大人の人。私が知っている王焔お兄様とは全然違う。
でも私は何故かこの人が王焔お兄様だと解った。なんでだろう?
考えていたら「チビちゃん」とお姉ちゃんが私の背中を軽く押す。そうだ!そんな事より私は皆に謝らないといけないんだ!!
「ごめんなさい!王焔お兄様!」
「これは無い。こいつは甘過ぎっすよ、ボス。そりゃぁ、俺も事情はわかってる。だから同情はしますよ。こいつが好きでやったわけじゃないことも十分解ってる。でもこれはねぇ。あんまりだ」
頭を下げる私を見ずに王焔お兄様は空を見上げて大げさに首を振る。
言っていることはわからないけどやっぱり許してくれないのかな。
ううん、違う!!許して貰おうなんて考えちゃいけないんだ!!私は悪い事をしたんだからいっぱいいっぱいごめんなさいって言わないと!
「ごめんなさい!ごめんなさい!王焔お兄様が怒るのは当然です!!全部私が悪いんです!謝ってすむ問題じゃないけど私には謝る事しか出来ません!本当にごめんなさい!」
「私からも謝るわ、王焔。ごめんなさいね」
地に頭をつけて謝る私の横に来たお姉ちゃんが私お同じように謝ってくれる。ありがとう、お姉ちゃん。
「…流石ボス、完璧だ。こうも完全に我等が神を再現するたぁ、人間とは思えねぇ。
 えぇ、いいですよ。他の奴らが言うのならふざけるなと、犯した後嬲り殺すところですがアンタは別だ。例えアンタが再現されたデータに過ぎなくとも俺達の中でアンタに頭を下げられて許さない人間なんていやしない。
 だから許しましょう。許してやりましょうとも」
やった!許してくれた!!何を言ってるのか良くわからない所もあるけどとにかく許して貰えた!!!やっぱり心を込めて一生懸命謝れば許してもらえるんだ!!!
「ありがとう、王焔。良かったね、チビちゃん!!」
お姉ちゃんが私を立ち上がらせて頭をクシャクシャに撫でてくれる。えへへ、嬉しいな。
やっぱりここはおうち(天国)だ。みんな、みんな、私を許してくれる。私に優しくしてくれる。私を想ってくれる。
「YES!そのとおり!ここは天国()だ。だから俺は許しましょう。他の奴等も許すだろう。
 だがなぁ、おチビちゃん。お前は自分を許せるのかい?俺達の殆どを死に追いやって、生き残った奴等もぶっ壊した自分自身(リリウム・ウオルコット)を許せるのかい?
 許されない罪を犯したくせに謝るだけで償いもせず、ちょっとの罰を受けた後はおっちんで天国に行く自分自身(リリウム・ウオルコット)を許していいのかよ?
 なぁ、お前(チビ)お前(リリウム・ウオルコット)を許す事ができるのか?」
許す?(チビ)(リリウム・ウオルコット)を許す事ができるの?
「王焔、許されない罪は無いよ。許す許さないは被害者である私達が決めるんだ。そして私はチビちゃんがどんな罪を犯していようと許す。ううん、もう許したの」
「それは違う、違うぜ神様。それだけじゃ、被害者の許しだけじゃ足りないんですよ。罪が真に許されるには被害者全てに許された後、加害者が自分に自分に許しを与えて始めて終わるんだ。
 だから許されない罪はあるんですよ。自分が自分を何時までも許さなければどんな些細な罪でも許される事は無いんですよ」
許せない。許せるはずが無い。皆を殺しておいて、お姉ちゃんを殺しておいて、お兄ちゃんを壊しておいて許せるはずが無い。
この罪に比べれば(チビ)が王から受けた苦痛なんて全然足りない。ましてその不足を謝る事で埋められるわけが無い。
でもどうしたら埋められるだろう?ううん、埋まるはずが無い。償えるはずが無い。(リリウム・ウオルコット)の罪はどんな罰でも埋められない。どんな事をしても償えない。
だけど何とかして償わないと、永遠に(チビ)(リリウム・ウオルコット)を許せない。
そして許しを得ない、つまり咎人である私は天国にいる資格はない。
つまり自分(リリウム・ウオルコット)を許せない(チビ)は永遠におうちにかえれない。(天国にいけない)
やっぱり地獄に堕ちた方がいいのかな?地獄でいっぱい、いっぱい、罰を受け続ければいつか許せる気がする。
うん、きっといつかうんと遠い未来、犯した(無限の)罪に等しい(無限の)罰を受けたときに(チビ)(リリウム・ウオルコット)を許す事ができるだろう。
でも、私はおうち(天国)にくれば皆が私を許して迎え入れてくれる事を知ってしまった。お姉ちゃんの暖かさを思い出してしまった。
だから私は一秒でも早くおうちにかえりたい。(天国にいきたい)だからずっとずっと地獄で罰を受け続けたくない。だからといって罪を償わなければ(チビ)(リリウム・ウオルコット)を許せない。
どうしたらいいんだろう?どうしたら(チビ)(リリウム・ウオルコット)を直に許せるだろう?
………あ!そうか!そうだ!いい事思いついた!私頭いい!!これなら(チビ)(リリウム・ウオルコット)を直に許す事ができる!!
名案を思いついた私はお姉ちゃんに頭を下げる。
「ごめんなさい、お姉ちゃん。私まだおうちには帰れない」
「チビちゃん。チビちゃんはここにいてもいいのよ?チビちゃんは家族なんだから。それにもう、一杯一杯苦しんで罰を受けたでしょう?もう十分罪に相応しい罰は受けてるわ」
「確かにこいつは十分に罰を受けてますよ。だからこいつがおっちんでるんならおりゃぁな~んも言いませんよ。でもねぇ、こいつはまだ生きてるんですよ。生きているなら罪を償う事ができる。だったら罪を償うべきなんですよ、ボス。
 そりゃぁこいつの犯した罪が償える量じゃないことは解ってる。罪にくらべりゃぁこいつが償える量はたかがしれてる。海の水をスプーンで汲み上げるようなもんだ。死ぬまで償ったってくみ出せる量はしれてるし、罪も殆ど減らねえでしょう。
 だがなぁ、それでも償えるなら償わなきゃいけねぇ。俺やボスのように救いはいらねぇってんならともかく、救いを求めるなら償うべきなんだ。 
 救いが欲しいならまずは全部捨ててまっさらになれ。対価も何も払わずに物を恵んでもらおうとするなんて醜い事をお前までもするんじゃねぇよ!」
最後はいつもヘラヘラ嗤っておどけている王焔お兄様らしくなく吐き捨てる。ちょっと、意外だ。王焔お兄様でも真剣に怒る事ってあるんだ。
でも、王焔お兄様は何を言っているんだろう?まぁいいや。
「ごめんね、お姉ちゃん。今の私じゃおうちにいる資格がないの。でも大丈夫だよ!直に帰ってくるから!」
「そう、わかったわ。でも辛くなったら直に戻ってきていいからね!チビちゃんは私達の家族なんだし、罪に相応しい罰も受けてるんだからね!」
「はい!それじゃぁ、いってきます!お姉ちゃん!」
「いってらっしゃい、チビちゃん!」
そして、私は手を振るお姉ちゃんにお辞儀をした後におうち(天国)に背を向けて歩き出す。
大丈夫。二度と帰って来れなくなるわけじゃない。全ての罪を許した後、(チビ)(リリウム・ウオルコット)を許せばまた帰ってこれる。
だから、行こう。

そして、私は人形に戻る


幸せな夢から覚めた私は目を瞑ったまま体調を確認する。
…問題ない。アンビエント撃墜の際に負った怪我も雑だが適切な手当てがされており、活動に支障は無い。

引き続き目を瞑ったまま外部の様子を確認する。

まずは自分の全身を這い回る舌と手。胸や性器を重点的に行っていることから手当てでなく性的な目的で行っていると推測。
リリウム・ウオルコットを演じるならば跳ね起きるべきだがもはやその必要は無い。性行為が目的なら即時の命の危険は無く、夢中になっていてくれればそのぶん注意が散漫になるので一時的に放置する事にする。

次に何かが自分の体の所々に絡みつき、刺さっている事。特に首の後ろのAMSコネクタに刺さっている何かはリンクが成立しているため迂闊に外すと脳に悪影響を及ぼす可能性がある。

後は、男の荒い息の他には微かに機械の駆動音が聞こえる程度。どうやら私の周囲にいるのは自分に性行為を試みている男一人だけのようだ。

これ以上は目を瞑っていてはわからない。

…しばらく待つと私に覆い被さる誰かが性器を舐め始めたのでうっすらと目を開けて周囲の様子を確認する。

まず絡みつき刺さっていたのは自分の体調を確認する為の機器と、治療のための点滴だった。これならAMSケーブル以外は引き抜いていて大丈夫だ。
そして自分に性行為をしているのは王焔お兄様だった。
性行為に没入しているし知らない仲ではないので声をかけても危険は少ないだろう。
自分よりもチビとして話した方が敵意が少ないと推察できるのでチビを演じる事にする。
「満足してからでいいからAMSケーブルを抜いてもらっていい、王焔お兄様?」
「か~、何だこの肌。手に吸い付くじゃねぇか。それに陰毛まできっちり整えられてまぁ。こいつぁ、最高級の娼婦すらめじゃねぇなぁ~。う~ん、退屈しのぎのはずが本気になってきちゃったぜ。
 って、目が覚めたみたいだなぁ、チビ。それともリリウム・ウオルコットとお呼びすればよろしいですかぁ?
 まぁ、いいや。チョットまってな」
悪びれもせず、また執着もせずあっさりと自分の性器から離れた王焔お兄様が、一旦視界から消える。
「にしても俺より先にアウトしたくせに中々起きねぇんだもんなぁ~。退屈したからつい悪戯しちまったぜぇ。随分、お上品なアウトのしかたじゃねぇか。さっすがBFFのクイーンってとこかぁ?」
そしてケラケラ嗤いながら現れた王焔お兄様が「ほい、終了」と言ったのでAMSコネクタからAMSケーブルを外す。
「よっと」現れた王焔お兄様はそのまま自分を引き寄せ腕の中に入れるとまた自分の全身を弄び始める。
「ありがとう。それとここは何処?私はどうなるのかな?」
拒否する理由も積極的に受け入れる理由も無いので抵抗も協力もせずにそのまま身を任せつつ、王焔お兄様に質問をする。
「ん?ここはリリアナの拠点の一つだよ。ボスに撃破されたお前を治療してついでに天国に、ボスの世界に招待してた場所さ。
 どうなるかはそうだな。とりあえずこのまま抵抗しなけりゃ俺に犯されるんじゃないか?その後のことはボスに聞いてくれ。そのうち血相を変えて飛んでくるっしょ」
先程までの行為で出来上がっていたのか、すぐに体が火照り、息が荒くなり、乳首が立ち、性器が濡れ始める。
「解った。じゃぁ、お兄ちゃんが来るのを待ってるね」
体の力を抜き王焔お兄様に身を弄ばれる。自分がはっきりと興奮しているのがわかる。
だがそれがどうしたというんだろう?私がどんな苦痛や快楽を受けようとも自分には届かない。死体を幾ら傷つけようと犯そうと死体は何も感じない。
これから成すべき事には首から上が無事なら他は何をされようと問題ない。
「そうだよ、そうやって僅かずつでも罪を償うべきなんだ。俺は止めないぜ。お前の為にも仲間の為にも俺の為にもお前を傷つけてやる」
「王焔、お前何してやがる?」
「お疲れさまっす!ボス。お早いお着きで」
突如後ろからかけられた声に、王焔お兄様が自分を弄ぶのを止めないまま振り向いて軽く頭を下げる。
「もう一度言うぜ、王焔。お前何してやがる?」
「リリアナの掌握は終了しました。もとより狂人の集まりでしたからね、説得は楽でした」
「王焔」
「ボス、そんな恐い顔しないでくださいよ。何してるって見てわかんないっすか?」
王焔お兄様が自分の性器を掻き回していた右手を引き抜いてお兄ちゃんに見えるように性器を広げる。
遮るものの無くなった膣液が溢れ、滴り落ちてベットの染みを大きくする。
「そいつはチビなんだぞ!」
「ええ、俺達の家をぶっ壊したリリウム・ウオルコットですよ?」
王焔お兄様の声にお兄ちゃんが舌打ちする。
そのまま黙り込むお兄ちゃんを挑発するように王焔お兄様が自分の体を弄ぶ。
そして王焔お兄様が男性器を露出したところでお兄ちゃんが口を開いた。
「やったのはチビじゃない。王の野郎だ。恨みを晴らしたいなら今から王を捕まえてくるからチビは放して、いや殺してやれ」
お兄ちゃんが自分をチラリと見た後直に視線を外す。
「殺すなら何でわざわざ助けてしかも手当てまでさせたんっすか?殺したいならあの場に放置するか、あるいは止めを刺せばよかったんじゃないっすか?」
この流れは不味い。殺されてしまうとチビの最後の願いを叶える事が出来なくなる。
「どうせ死ぬなら幸せな夢を見せてやりたかったんだ。俺もチビも死んだら地獄行きだ。ならその前に少しでもいい目にあわせてやりたかたんだよ。
 いずれ救われるにしてもそれまで苦しめられっぱなしってんじゃ可哀想だろ?」
「だったら夢なんか見させずに、起こしていい目にあわしてやれば良いじゃないっすか」
「チビは死ななきゃ救われねぇよ。チビの救いは死だけだ。
 それに幾らここでいい目を見させてやってもあいつがいる天国には敵わないんだ。だったらとっとと殺してやったほうが親切だろうが。
 解ったら離れろ王焔。チビ、起こして悪かった。もう起こしたりしないから先に逝って待っててくれ」
お兄ちゃんがゆっくりと近寄ってくる。それはまるでチビと初めて出会った時のようで私は少しだけ懐かしかった。
懐かしい?自分は必要以上に、内面までチビを演じている?いや、違う。天国を垣間見た事で、お兄ちゃんに会えた事で自分の中のチビの残骸が反応している。
外面を演じるだけでいいチビが自分を侵食していく。だが自分はそれに逆らわない。自分はチビの願いを叶える存在なのだから繰り主が望むなら自分は私になってもいい。
だから自分は自分としてではなく私としてお兄ちゃんに向かい合おう。私はチビの残骸だけどそれでもお兄ちゃんに対する思いだけは残っているんだから。
そして私はまだ死ぬわけにはいかない。天国に少しでも早く行くために(おうちに少しでも早く帰るために)私は罪を償わないといけないんだから。
「ボス、ボスの考えは解りま「待って、お兄ちゃん。私はまだ死にたくない」
王焔お兄様の声を遮って近くまでやってきたお兄ちゃんにお願いする。
「…チビ、もう王の人形を演じる必要は無いんだ」
お兄ちゃんが溜息を吐いて私の頭を撫でる。えへへ、久しぶりだから嬉しいな。あ!でも嬉しがってる場合じゃないや。
「演じてないよ。あのねお兄ちゃん、私は天国に行きたいの」
「行けるさ。いい子は直に、悪い子も地獄で罰を受けたらいける」
「いやだ。私は地獄に行きたくないの。直に天国に行きたいの」
首を振る私に困ったようにお兄ちゃんが溜息をつく。
「それは無理だよ。お前がやりたくてやったわけじゃないことは解ってるけどそれでも罪を犯したことは事実なんだ。なら罰を受けないといけない」
「でもお兄ちゃん、私は悪い事をいっぱいいっぱいしたから罰もいっぱいいっぱい受けなきゃいけないの。
 でも罰をいっぱいいっぱい受けたら天国に行くのは遅くなっちゃうよね。そんなのいや。私は直に天国に行きたいの」
後ろから聞こえる王焔お兄様の「おいおい、何を言ってんだこいつは?」という呟きを無視してお兄ちゃんに問いかける。
「でね、私考えたの。悪い事をいっぱいした子がどうしたら早く天国にいけるか。
 それでね、わかったの!あのね、悪い事をいっぱいしたら同じだけいい事をすればいいんだよ!」
「確かにそりゃあそうだけどでも具体的にはどうすんだよ?」
お兄ちゃんが困ったように私に問いかける。
きっと私が犯した罪に匹敵するいい事なんて在るわけが無いって思ってるんだ!
えへへ、一個だけあるんだよ!答えを教えてあげても良いけどヒントにしよう!クイズだ!
「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはクレイドルを落としてコロニーを破壊して回ってるよね!お兄ちゃんは人間をみ~んな殺すつもりなんだよね?」
「あぁ、ドイツもコイツも皆殺しにしてやるつもりだぜ」
お兄ちゃんが怪訝な顔をして私の問いに答える。
う~ん、このヒントじゃ解らなかったか。しょうがない。答えを教えてあげよう。
「じゃぁお兄ちゃんを止めたら人間全てを助けた事になるよね。これはすっごい、いいことだよね!ねぇ、お兄ちゃん人を殺すの止めてくれる?」
理解したお兄ちゃんが笑みを浮かべて私の頭をクシャクシャに撫でる。
「あ~、成る程成る程。その手があったか。だが、悪いチビ、それは無理だ。
 自殺したら天国にいけねぇし、そもそも『生きて』があいつの願いだから俺は死ぬわけにはいかねぇ。
 そして生きている以上、俺の家族がああも苦しんで死んだのにのうのうと生きてる奴等を許しておく気はねぇ。
 だってそうだろう?確かに最後はどいつもこいつも天国に行くから平等だ。でも生きてる今は違う。苦しみながら生きていく奴等もいれば、楽しみながら生きている奴等もいる。
 不公平だろう?何で俺達だけが苦しまなきゃなんねぇ!死後神様が皆を平等に救うなら、生きてる間は俺が平等に苦しめてやる。どいつもこいつもあいつが苦しんだみたいに苦しませて殺してやる」
お兄ちゃんが最後は笑いを嗤いに変えて宣言する。
あ~、やっぱり断られちゃったか~。まぁいいや。お兄ちゃん頑固で一度言い出したことはきかないから多分断られるって思ってたもん。
「ごめんねお兄ちゃん。お兄ちゃんの言う事はわかるけどそれでも私は天国に行きたいの。だからごめんなさい、お兄ちゃん。
 私はお兄ちゃんを殺します。お兄ちゃんを殺して私は天国に行きます」
お兄ちゃんの目を見て私も宣言する。
う~~、お兄ちゃん怒るかな。もしかしたら頭に拳骨落とされちゃうかも。
「くっくっくっく、ひゃ~はははははははははは!!!」
突然お兄ちゃんが大笑いを始める。
「…そっかぁ~。そうかぁ。あ~あ、ちったぁまともだと思ってたんだがやっぱりお前も完全に狂ってたかぁ~」
後ろで王焔お兄様の嘆息が聞こえる。
「わかったよ、チビ。所詮、俺の人類皆殺しツアーはただの激情だからな。ならお前に止められても文句はいわねぇさ。
 それでどうする?今ここで止めてみるか?」
「ううん。殺されちゃうもん。だからお兄ちゃん、私をBFFの基地まで送ってもらって良い?」
「あぁいいぜ。だがそれまでだぜ?次にあったら殺すぞ?」
お兄ちゃんが右手を握って私の前に出す。
「いいよ!お兄ちゃんには負けないからね!」
目の前の拳に思いっきりパンチする。
「いい度胸だ。楽しみにしてるよ。。王焔、悪いけどチビを送ってやってくれねぇか?」
お兄ちゃんが私の後ろで項垂れている王焔お兄様に声をかける。
「え~、い~っすよ。はぁ、まったく折角仲間をめっけたと思ったら狂ってんだもなぁ~。
 あ、ボス、一応ここの場所がわれないように眠らせますけどいいっすよね?」
「かまわねぇぜ」「ウィ、それじゃぁチクッと」
王焔お兄様が私にプスっと注射器を刺す。
そして急速にやってきた眠気に耐え切れずベットに横たわり瞳を閉じようと…
あ!そうだ!
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。お休みのチュ~して!」
「んだよ、もうガキじゃないんだからいらねぇだろ」
お兄ちゃんが照れたように首を振る。
「や~、チュ~してチュ~!だって、今しないと次に出来るの天国になっちゃうんだよ!」
子供のように手足をバタつかせて駄々をこねる私に「しょ~がねぇなぁ~」とお兄ちゃんは溜息を吐いてオデコにチュとしてくれた。
「オデコやあ~!お口に!恋人のチュ~がいい!」
調子にのってちょっと我侭を言うと「ヘイヘイ」とお兄ちゃんは唇に触れるような軽いチュ~をしてくれた。
「舌も!恋人同士だと「調子に乗るな!」キャン!!」デコピンを喰らう。むぅ~、ここまでかぁ~。ホントはもっとして欲しいけど眠いからしょうがないかぁ~。
「たく、おやすみチビ。次は天国でな」
「うん!お休みお兄ちゃん!」
お兄ちゃんにお別れの挨拶を返した瞬間、私はもう一度幸せな夢の世界に戻り、私は自分に戻った。

そして自分が眠りに落ちる寸前、誰かが神を呪う言葉を聞いた。
「はぁ、恨みますよ神様。アンタは確かに俺達を救った。人間以下の畜生だった俺達に人並み以上に幸せと人間性を教えてくれた。
 でもねぇもしアンタが俺達に幸せを教えなければ、見捨てられてごみの様に死んでも人生なんてこんなもんて諦めながら死ねたんだ。救いを夢見ずあっさり死ねたんだ。獣みたいに野垂れ死ねたんだ。
 だがアンタは俺達に救いを与えちまった。俺達に幸せを与えちまった。俺達に希望を与えちまった。
 だから俺達は救いなんて無いのに助かるわけなのにきっと誰かが助けてくれるはずと惨めに卑しく生にしがみついて苦しみながら死ぬはめになっちまった。
 いや、死ねた奴はまだいい。解放されたんだからな。悲惨なのは生き残った俺達だ。生き残れてしまった俺達はアンタを信じて生きていくしかない。でもね、まともじゃアンタは信じ続ける事はできない。だから俺達は狂うしかないんだ。
 でもね、ボスやチビはともかく俺やエマみたいな狂い切れない半端もんは正直辛いんですよ」


(2)
天敵の元から脱出しBernard and Felix Foundationに復帰したリリウム・ウオルコットは以前と変わらず王小龍の傀儡として従順に王女として過ごしていった。
それは本拠たるクレイドル03が墜ちた事で首脳陣が消えたGlobal Armamentsの暫定CEOに王小龍がつき、彼女がBernard and Felix FoundationのCEO兼Global ArmamentsのCOOに就任しても変わらなかった。
だが天敵にオーメル・サイエンス・テクノロジーの本拠たるクレイドル01とインテリオル・ユニオンの本拠たるクレイドル02が墜とされ政治的空白となった両社の隙を王小龍が突き掌握し、
企業統治連合の下にGlobal Armaments、オーメル・サイエンス・テクノロジー、インテリオル・ユニオンの三社を統合した時、突如彼女は王小龍に牙を剥いた。
彼女は企業統治連合の最高統治者に就任した王小龍の就任式典で王小龍の罪を告発し殺害し、二代目の最高統治者に就任する事を宣言した。

最高統治者に就任した彼女は周囲が状況の激変に戸惑っている間に速やかに他の権力者を謀殺し権力を集約し掌握した。
権力を得た彼女は企業統治連合をアライアンスに、最高統治者をリトル・クイーン(チビ)と名を変えると、全クレイドルを地上に降ろすことを宣言する。
そしてクレイドルを降ろした事で浮いたエネルギーの全てを軍事に注ぎ込みアライアンスは急速に軍備を整えていく。
さらに彼女はORCA旅団副長のメルツェルからの提案を受けアライアンスをORCAと合流させている。

このような彼女の強引な手法に反発が無かったわけではない。
だが彼女は表では自らの全財産を処分しクレイドルを降りた民衆の補償に当て、さらに空き時間は最低限の休息以外全てボランティアや民衆との対話に当てて民意を確保し、
裏では反対者を脅迫・懐柔・謀殺等の手段を講じてその全てを排除する事で人類の王として君臨し続けた。

だがこの強引な手法は幾つかの致命的な失敗を生んでしまう。
まずは人材の欠如。
彼女が謀殺した人数は多くまたその殆どは企業の支配階級であり重要なポストについていたためアライアンスの行政・軍事効率は大幅に悪化する事となる。
これにより以前なら配下に任せられた事の多くを彼女自らが直接裁断せねばならなくなり彼女に掛かる負担は異常な量になった。
後にORCA旅団のメルツェルが合流した事によりある程度改善されるが、彼女に合流したメルツェルが漏らした一言は「これは面倒な事になった」であった。
常人なら発狂しかねない量の工作をレイレナード崩壊から平然と続けて時代を操ってきたメルツェルをして弱音を吐かせた事から彼女に掛かっていた負担がいかに異常な量であったかは想像に難くない。

次の失敗はラインアークの懐柔に失敗した事である。
彼女はラインアークに今後の恒久的な自治権と援助を条件に彼の参戦を要請したが、ラインアークはそれを断った。
それはラインアークだけの事を考えるのなら当然である。
何故なら現在企業は墜ちたクレイドルに住む住民全ての生活を保障せねばならず、ラインアークに援助する余裕は無い事。
さらに天敵との決戦を控えた今ラインアークに侵攻する余裕は無く、決戦もどちらが勝つにしろ勝者は致命的な損害を受けるのは確実であり傷ついた勝者に対してラインアークは優位に立てる事。
これらの理由によりラインアークが自らの利益を考えるのであれば要請を断るのは当然であった。
それでも彼女自らが交渉に赴けばまた結果は違ったかもしれないが、運悪く首脳会談の交渉中に彼女は反対派のテロに遭い負傷してしまい首脳会談は立ち消えになってしまう。
こうしてアライアンスは彼という最大の鬼札を欠いたまま天敵との決戦を迎える事を余儀なくされてしまう。
しかし交渉失敗の責を彼女に負わせるのは間違いである。
確かに彼女の見通しと自らの安全に対する配慮は甘かったが、それ以上にラインアークに先見の明が無かったのだから。
クレイドルが降ろされた後、無差別に各地の施設を襲っていた天敵によって世界と人類は致命的な損害を受けており、このままでは人類はコジマに汚染され尽くし死の星と化した地球で滅びる未来しかなかった。
既に人類が種の保存を図るにはありとあらゆる集団が主義主張を捨てて協力し合い人類の総力を結集し、可能な限り早く天敵を討ち汚染を食い止め、人類生存の方法を模索しなければならなかった。
だからこそORCAは悲願であったアサルトセルの排除という目的を捨て去ってアライアンスに合流したのである。
そして彼女とメルツェルはラインアークにもその理を説き理解を期待したが、残念な事に彼はそこまでの見識を持ち得なかった。
彼はラインアークにとっての最善の行動を計算できる程度には賢しかったが、人類全体を考えて行動出来るほど賢しくはなかったのである。

そして最悪の失敗は天敵にローゼンタールが極秘に開発していた人型アームズフォート『セラフ』を奪取された事である。
セラフはアームズフォート分野で他企業に大きく水を開けられていたローゼンタールがそれを埋めるべく開発していたアームズフォートであった。
とはいえその設計思考は少数精鋭・貴族趣味を旨とするローゼンタールらしく他企業とは大きく異なり、いや正しく表現するならセラフはアームズフォートではなかった。
何故ならセラフの操縦者は選ばれた単一の個人だからだ。
セラフはカーパルスで墜ちたノブリス・オブリージュに替わる新たなるローゼンタールの象徴として設計された。
その設計思考はローゼンタールの精神を体現する選ばれた騎士の駆る最硬の鎧であり最高の剣であった。
故にその設計思考は『代替可能な多数の凡人によって制御される』アームズフォートではなく、『代替不能な個人に委ねる』ネクストのそれであった。
そして真の騎士が駆るに相応しい性能を求められたセラフは結果として自らを駆るに相応しい力を騎士に求めた。
内臓火器を含める豊富な火器、そして変形機構に代表される多様かつ複雑なギミック。それらを全て制御には莫大なAllegory Manipulate System負荷が必要だった。
またネクストを遥かに超える機動性と変形時の高速移動は耐Gジェルを持ってしても殺しきれず多大なGを産んだ。
セラフを駆る騎士はこの二つを耐える事が要求され、試作されたセラフは人が操縦できるものではなかった。
そして操縦する者がいないまま保管されていたセラフは、天敵によるクレイドル05襲撃によりローゼンタール本社が消滅した事と、その後の彼女の粛清による混乱で放置されていたところを天敵に奪取された。
かくして人では制御ができない異形のアームズフォート『セラフ』は天敵という異形を操者とする事で遂に完成し、
天敵により純白から赤と黒に塗り替えられたセラフは『人類の守護者』ではなく『人類種の天敵』としてその性能を遺憾なく発揮し多くの人命を奪う事になった。
もし天敵の乗機がセラフでなく、00-ARETHAかストレイドであったらもっと早期に天敵は討たれていたはずであり、それならば人類は地上を捨てなくても良かったかもしれない。
故にこの失敗は人類にとって文字通り致命的である。
だが私が知る限り彼女は天敵がセラフを狙っていたという情報が届いていた筈である。
にも拘らず彼女はその情報を敢えて無視した。その理由はわからない。
天敵にもセラフが動かせないと判断しての事だったのか、それとも天敵の自滅を狙ってのか、あるいは他の狙いがあったのか。
しかし彼女ほど聡明な人物が天敵がセラフを乗りこなす危険を考慮しなかったとは考えづらい。
この疑問に対する答えを出す資料を私は持ちえていない。
だが如何なる理由があったにしろこの判断は結果的に最悪の事態を生む事となった。

****

以上のように彼女はこのような致命的な失敗を幾つかしたが、それでも当時の状況を考えると彼女以外に人類を纏め上げるのは不可能であった。
彼女でなければ天敵に対抗できるだけの戦力を天敵がクラニアム以外のアルテリアを全て破壊するまでに結集する事は不可能であった。
彼女だからこそクラニアム以外の守備を全て放棄できたのだ。この決断のお陰で人類は戦力の損害を最小限に防ぐ事が出来た。

そしてアライアンスは全戦力をクラニアムに結集させ天敵に最後の決戦を挑んだ。
アライアンスの戦力動員は徹底していた。
ハードは墜落したクレイドルの守備戦力は勿論、作業MTはおろか乗用車までも戦力に転用可能なものは全て転用し、
ソフト、人も退役や予備役にいたものは当然、さらに作業MTの操縦資格を持つ者に加え治安を維持すべき警官までも根こそぎ動員し、さらに志願兵を半強制的に集った。
そしてクラニアムに全ての戦力を結集した彼女はクラニアム以外の全ての場所に対する非防備宣言を出す。
すると奇妙な事にクラニアム以外のアルテリアを破壊後は、無差別に手近な施設を襲撃していた天敵が襲撃を止め一路クラニアムを目指し始めた。
これに関しては非常事態宣言が功を奏したとも、天敵が人類に止めをさす気になった等様々な仮説がある。
だが今まで如何なる対話も命乞いも拒み全てを皆殺しにしてきた天敵が非防備宣言のみ受け付けるのは矛盾しているし、人類の息の根を止めるのであるならアライアンスが軍備を整えるのを待つまでもなくクラニアムを襲撃すればよい。
或いは昨今のフィクション小説に記されるように『人類の最後にして最大の戦力を破る事で人類全てを絶望させる』という事が正解なのかもしれない。あるいはただの気紛れなのかもしれない。
いずれの理由にしろ天敵がクラニアムを目指した事で人類の生存をかけた闘争が起こる事は確定した。

そしてリリウム・ウオルコットの宣言から三日後、最も狭義な意味での絶滅戦争、通称クラニアムの戦いが開始されたのである。

(3)
クラニアムの戦いで動員されたアライアンスの兵力は経済戦争やORCA事変、天敵による襲撃で磨耗していても尚膨大であり、
その陣容はスピリット・オブ・マザーウィルを旗艦に、ランドクラブ23機(GRAN-GRANCHIO含む)、ギガベース17機、イクリプス3機、ジェット8機、GAEM-QUASAR32機、FF130-FERMI16機、ノーマル2346機、航空機1013機、MT4116機、ネクスト28機を数え、さらに民間からの転用である改造MTに至っては正確な数はわからないが万を超えることは確実であった。
動員兵力は1億3763万8019人であり、これはこの時点で生き残った人類の21%(ラインアーク及び武装組織などの不正規住民は除く)を超えていた。
対する天敵率いるリリアナはセラフを除けばジェット3機、ノーマル12機、MT28機、自立ネクスト6機、プロトタイプネクスト1機のみであり、人数も1千人に満ちなかった。
リリアナは戦力比でも人数比でもアライアンスの一万分の一であり、天敵と相対した事のない殆どの者は勝利を確信していた。
そして数少ない天敵と相対した者もまた確信していた。

この戦力でも勝率は五割以下であり、例え勝てても自分達の殆どは死ぬ事になるだろうと。

****

クラニアムの戦いにおいてアライアンスは志願兵と練度の低い兵士が搭乗した改造MT部隊と軽量級以外のネクストを第一陣に、
イクリプスを除くアームズ・フォートとFF130-FERMIを除く大型兵器、ノーマル・MTを第二陣に、
そして軽量級のネクスト及びイクリプスとFF130-FERMと航空機を二陣と少々離した場所に別働隊として配置した。
この陣容は極めて異例な配置である。
何故ならネクストと一般戦力は同時に運用しないのが軍事的常識だからある。
これは超高速で動き回るネクストに対する誤射を防ぐ為であり、同時に味方ネクストからの流れ弾から通常戦力を守るためでもある。
さらにネクストによるコジマ汚染のリスクも看過することはできない。特に民間からの転用である改造MTはコジマ対策が不十分であるのでなおさらである。
だがアライアンスは敢えて軍事的常識を無視した。

何故ならアライアンスの戦略での第一陣の役目は時間稼ぎと天敵の弾を減らす為の捨石であったからである。
天敵が第一陣を蹂躙している間に高速の別働隊が後方のリリアナを急襲・撃破し、天敵の補給能力を奪う。
しかる後に天敵を包囲後に波状攻撃を仕掛け弾切れを誘い、逃亡の隙を与えずに討つというのがアライアンスの戦略であった。
故に第一陣に控えた軽量機以外のネクストも最初は参戦せず、参戦するのは天敵が第一陣の奥深くまで侵攻し、別働隊が動き出した後となっていた。
そして作戦が完全に成功した場合でも第一陣の改造MT部隊の損耗率は99%を超えると予想された為にアライアンスは第一陣に対する人道的配慮を全て斬り捨てたのであった。

しかしアライアンス側の戦略は戦闘開始前に崩壊する。
天敵はリリアナをアライアンスの予想より遥かに後方に留めて向ってきたのである。
その距離は平均的ネクストのOBの航続距離の二倍以上であり、アライアンス側のネクストはどれも一度のOBでは到達できなかった。
そしてここまで距離が離れてしまうとリリアナがアライアンスの動きを察知した時点で逃亡されると24時間以内の捕捉は不可能であり、そしてリリアナが逃亡すれば天敵もまた逃亡を図る事は確実であり、逃亡に徹する天敵を24時間留めておくのは不可能であると予想された。

この事態を受けてアライアンスは直ちに戦略を副案に変更する。
副案では敢えて天敵に補給を許しその間にリリアナとの距離を縮め、主案が実行可能な距離になり次第主案を実行するというものであった。
だがこの案では天敵に幾度も補給を許すため主案が実行可能になるまで第一陣の損耗は激しく、主案が実行可能になる時には第一陣に天敵を留める戦力は無い事が予想され、リリアナの防衛に天敵を戻らせてしまう事がほぼ確実であった。
従って最終的にはリリアナの周囲で苛烈な乱戦及び消耗戦になることが予想され、必然的に多数のそれこそ1千万単位での損害が出る事が予想された。
しかし、アライアンスにはもはやこの愚策しか天敵を排除する方法がなかったのである。

こうして始まる前から過酷な消耗戦が行われる事が決定したクラニアムの戦いは、第一陣に変形状態のままのセラフが突入した事により開始された。

****

絶滅戦争は『戦争』と呼称されているが正確には戦争では無い。
絶滅戦争はリリアナという一集団が行ったテロ行為であり、クラニアムの戦いはその武装集団を鎮圧する為の治安行為かあるいは天敵による虐殺である。
そうクラニアムの戦いはまさしく虐殺であった。アライアンスは天敵に一方的に蹂躙され、凌辱され、殺されていった。
そして犠牲者たちの命と引き換えに進めた距離は微々たるものであった。
何故なら天敵は補給に時間のかかる内蔵火器を殆ど使わず補給の容易な携行武装で戦い、補給を修理など一切行わず弾切れになった武装を予め用意されていた補給済みの武装に持ち替えるだけと極めて短時間に行ったからである。
天敵が最初の補給を終えた時点でアライアンス側はこの事に気付き戦略が破綻した事を悟ったが、アライアンスは作戦を続行した。
何故ならアライアンス側に退却という選択肢が無かったからである。
この場で退いて戦力を温存したとしてもクラニアムを失えばもはや戦力を維持できるだけの電力を確保する事は出来ない。
否、人類が生き残る為にはクラニアムという発電施設を失うわけにはいかなかった。
それゆえ今回の戦に退却という選択肢は無く、全滅(この全滅とは戦力の50%の喪失という軍事的な表現でなく文字通り最後の一兵まで殺し尽される事である)してでも天敵を討ちクラニアムを守らねばならなかった。
故に指揮官から兵士まで死兵と化して天敵に向かい、僅かな距離を得る為に死んでいったのである。
この状況をクラニアムの戦いの数少ない生き残りであるスピリット・オブ・マザーウィルの艦長はこう述懐している。
『私達は1ガロンの血と1CMの距離を引き換えにしていた』

そしてこの余りにも分の悪いレートでの取引を続けた結果、アライアンスは遂にリリアナに攻撃を開始する事に成功する。
アライアンスが勝つには天敵が戻ってくるまでにどれだけリリアナにダメージを与えられるかが重要であったが、リリアナの防衛に00-ARETHAが出現した事により殆どダメージを与えられずに天敵の帰還を許してしまう。
だが天敵の帰還に僅かに遅れアライアンスも全戦力をリリアナへの攻撃に投入する事に成功する。
こうしてクラニアムの戦いは最終局面を迎えたのである。

そして最終局面を制したのは天敵であった。アライアンスは最後の一歩を詰めきる事が出来なかったのである。
アライアンスは00-ARETHAを破りリリアナを壊滅させたが、そこで戦力が中破したスピリット・オブ・マザーウィル一機を残して尽きてしまったのである。
逆に天敵は、撃破される事を悟ったリリアナが最後の戦力で時間稼ぎを行い、その間にセラフの修理・補給が行われた為万全に近い状態であった。
だが彼女がスピリット・オブ・マザーウィルに特攻・自爆を指示し、同時に最後の予備戦力であるアンビエントとオープニングで自爆までの時間稼ぎを行おうとした時、白い閃光と共に通信が入る。

「ホワイト・グリント、オペレーター。フィオナ・イェルネフェルトです。これよりホワイト・グリントはアライアンスの救援を行います」

(4)
アライアンスへの合流に最も否定的であった彼が何故意見を翻したのかは解っていない。
記録では突然彼がブロック・セラノの前に現れてアライアンスの救援を目的とした出撃の許可を求め、ブロック・セラノがそれを了承したと記されているのみである。
意見を翻した理由を記した資料はおろか、当日の彼に対する資料すら私の元にはない。
故に私が知り得るのは彼が救援に現れたという結果のみである。

そして天敵と彼の人類の生存をかけた戦いが始まった。
その戦いの結末は先の第17章で述べたように、緒戦は天敵が圧倒し彼を撃墜するが、直後彼は再起動し激戦の末に天敵を撃破している。

そしてその戦場にいた全ての者が彼と天敵との戦闘を見入っている間に彼女はいつの間にか姿を消した。


再起動したWGはお兄ちゃんと互角以上の戦いを繰り広げていた。
これならどちらが勝つにしろ、敗者は致命傷を受け、また勝者も致命傷には及ばないまでも戦闘を続ける事は不可能な傷を受けるだろう。
ならば自分がこの戦場ですべき事はもはや無くなった。
残るは私の願いだけだ。
だから成すべき事を成した自分は私に替わる。

そして私は祈りながらWGとおにいちゃんの戦いを見入る皆にばれないようにそっとアンビエントを駆ってSOMから抜け出すのだった。

****

「ただいま」
おうちを壊さないように離れた場所でアンビエントから降りた私は目的の場所である半分崩れた門をただいまの挨拶をしてくぐる。
やっぱりボロボロだな。でもあっち(天国)ではピカピカなのにこっちだとボロボロなのはなんか変な感じ。
ホントは綺麗にしたいけど今日はあんまり時間が無いから後にしよう。
だからおうちの中には入らずに中庭を通って裏にある皆のお墓に行く。
ボロボロの皆のお墓一つずつごめんなさいと頭を下げていく。
天国に行ったらお墓じゃなくて皆に会って謝れるから無駄かもしれないけど、こういうのは気持ちの問題だからごめんなさいの気持ちがあるなら機会があるなら何度でも謝るべきなのだ。
よし!謝り終わったら少しは時間があるだろうからそれまで皆のお墓のお掃除をしよう!!

****

折れたり倒れてしまった十字架を直して、周りのゴミを掃除して、持って来たお花を供えていると遠くからボロボロになったセラフが飛んできた。
あ!お兄ちゃん!やっぱりここに来たんだ!そうだよね。勝ったにしろ負けたにしろ致命傷を受けたお兄ちゃんが最期の場所に選ぶのはここしかないよね!えへへ!大正解!!
セラフはここに来るまでにゆっくりとスピードを落とし、最後はふわりと着地した。
お兄ちゃんをお出迎えするために、お花を置いて門に向かって走り出す。
「お帰りなさい!お兄ちゃん!!」「ん、あぁただいま」
血塗れのお兄ちゃんはチョットびっくりしたようだったけど、直に昔みたいに挨拶を返してくれた。
本当は昔みたいにお兄ちゃんの胸に飛び込みたい。
でも、今のお兄ちゃんは血塗れでフラフラだし、そうでなくとも別れてからもう五年も経ったのに全然大きくなっていない、ううん、それどころかちっちゃくなってしまったので我慢する。
十歳から十五歳になった私は、十五歳から十歳になったお兄ちゃんよりお姉さんなのだ!だからふらつくお兄ちゃんを支えてあげる。
「ありがとな。でも一人で歩けるから大丈夫だ。
 にしても俺の負けか。まぁいいか。皆殺しには出来なかったが生き残った奴等も俺達みたいに苦しみながら生きていくんだ。なら悪くない。
 いや、よく考えれば俺達も皆殺しにされたわけじゃないんだ。レーヴェやエマやラディウスみたく生き残ってる奴等もまだいる。ならこれぐらいが収めどころだ」
右目が潰れ、左腕が千切れかけ、他にも色々ボロボロなお兄ちゃんは、それでも私を振り払い血を撒き散らしながら一歩一歩遅いが確実に歩いていく。
痛くないわけないのに凄いなお兄ちゃんは。私なんてあんまりにも痛くて壊れちゃったのに。
「まけおしみ~」「うるせーよ」
それが少し悔しくてからかった私にお兄ちゃんが振り返って昔のようにポカリと私の頭に拳骨を落とした。でも昔と違い私のほうが背が高くなってしまったのでお兄ちゃんはジャンプしなくちゃいけなかった。
そのせいでお兄ちゃんの全身から吹き出した血が私の防護服を赤く染める。それを一切気にせずにお兄ちゃんは歩みを進める。
それにしても凄いな、お兄ちゃん。こんなコジマ汚染の中を防護服なしに歩くなんて。普通の人間なら出血もあって一分と持たずに死んじゃうはずなのに。
そしてお兄ちゃんは五分ほどかけて私が綺麗にしたお墓の前までやってきた。
そのまま黙祷するお兄ちゃん。私も続いて黙祷する。
一分くらい黙祷しただろうか?お兄ちゃんは黙祷をやめて私の頭を撫でてくれた。えへへ。
「掃除してくれたのか。偉かったな。それと待たせて悪かった。もう良いぜ。チビが天国に行くために殺れよ」
「うん。ありがとうお兄ちゃん」
お兄ちゃんにお礼を言って銃を構える。えーと、なるべく苦しまないほうが良いから頭を撃った方が良いよね。
「と、ちょっと待ってくれ。言い忘れてたけど俺はあいつと一緒の墓には入れないでくれ。頼まれたとはいえ、あいつを殺した俺はあいつと一緒の墓に入る資格はないからな。
 それさえ守ってくれればその辺に放置してくれても構わない」
「大丈夫だよ!ちゃんとお兄ちゃんのお墓も作ってあげるから!」
「そっか。ありがとな。ならついでにこいつも一緒に入れてくれ」
お兄ちゃんが懐から袋を取り出して私に渡す。
なんだろう?疑問に思ったので「見ていい?」ときいたら頷いてくれたので中を覗いてみると砂が入っていた。なんだろう?これ?
「あぁ、母さんのつってもわかんねぇか。ババァじゃなかったセレン・ヘイズの骨だよ。最初はきちんとしてたんだが持ってるうちにGで崩れて砂になっちまった。
 だから軽いだろう?生きてる時はあんなにでかくて重かったのにな。
 俺は馬鹿だから、皆死ぬ前から軽かったから死んでも軽いと思ってたんだが違ったんだな。生きてる時重かろうが軽かろうが死ねば皆軽くなるんだな」
「骨になったら軽くなるのは当たり前だよ。お肉が全部なくなっちゃうんだから」
寂しそうなお兄ちゃんを元気付けようと教えてあげる。するとお兄ちゃんは笑って私の頭を撫でてくれた。エヘヘ。
「そっか、そういわれればそうだな。俺は馬鹿だから解らなかったよ。チビは物知りだな。
 じゃぁそんな軽い骨が段々と重く感じるようになっていったんだがその理由もわかるか?」
「う~んと、お兄ちゃんが死にそうだからじゃないかな?元気がなくなるといつも簡単にもてる物が重く感じるでしょ!」
「そっか、そうだよな。骨が重くなるわけないよな。重いと感じるのは俺の方に原因があるからに決まってるよな。
 …なぁ、チビ。お前の生きる目的は何だ?お前は何のために生きている?」
「天国に行くためだよ!」
「そうか。迷いなく答えられるなんてチビは強いな。俺は馬鹿だから最後まで解らなかったよ。
 一度は見つけたと思ったんだけどな。見つけた答えは間違ってたんだ。ほんと、俺は馬鹿だよなぁ~」
お兄ちゃんが疲れきった顔で溜息をつく。
「そうだ、間違ってたんだ。だから目的を果たせても嬉しくねぇ。
 でもなぁババァ。俺には答えが解らないんだ。俺は一体何の為に生きて、何の為に殺して、何の為にリンクスになって、何の為に死ぬんだ。
 生きてっていうあいつの願いを叶える為に生き続けた事は間違ってねぇ。人間は神の前では平等なんだから俺達が苦しんで死んだ分、他の奴等を苦しめて殺してやった事も間違ってねぇ。
 俺は間違ってないんだから、俺の邪魔をしたババァやウィン姉やロイ兄は間違ってたんだ。だから殺したのは間違ってねぇ。
 それにどうせ死んだら皆神の所で幸せに暮らすんだ。なら殺して早く神の所に送ってやった方がいいに決まってる。
 そしてチビが天国に行くために殺されてやるのも間違えてねぇ。
 だから俺は間違ってねぇ。でも違う。俺は馬鹿だけどこれだけは解る。俺は間違えちまった。俺は馬鹿だから何処を間違えたのかは解らないけどな。
 なぁ、チビ。チビは俺が何処を間違えたか解るか?正しい答えは何か解るか?俺はどうすりゃ良かったんだ?」
お兄ちゃんの問いに考える。うーん、たしかにお兄ちゃんは間違ってない。だからお兄ちゃんは正しいんじゃないだろうか?でもお兄ちゃんは自分が間違ってるという。
「わかんない。お兄ちゃんの勘違いじゃないかな?」
「いや、間違いじゃない」
「うーん、私には解らないよ。天国に行ったときにセレンさんやお姉ちゃんに聞いてみるとかってあ~!!!そうだ!神様に聞けばいいんだよ!神様は全知全能だからきっと正解を教えてくれるよ!!
「…そうだな。そうするか。馬鹿な俺が考えても解るわけ無いからな。だったら、ババァかあいつか神とかいう奴に聞くしかないか。
 本当にチビは頭がいいな。それじゃぁ、手間取らせて悪かったな。もういいぜ」
お兄ちゃんが私の頭を撫でながら微笑んでくれる。えへへ。
本当はずっと撫でてて欲しかったけどそろそろ戻らないと怪しまれちゃうので、お兄ちゃんの頭に銃口を押し付ける。
「うん。それじゃあ、またね、お兄ちゃん!今度は天国で会おうね!」
「あぁ、またな。チビ」

そして私は引き金を引いた。

額を打ち抜かれ、後頭部から血と脳漿を吹き出したお兄ちゃんが笑ったままゆっくりと倒れていく。
「答えがわかんなかったって事は俺は最期まで迷子(ストレイド)のままか」
そして地面に倒れたお兄ちゃんは三回小さく痙攣した後、
「そういやぁ、結局神ってのは誰だったんだ?」
一回大きく痙攣し動かなくなった。

あれ?何で私泣いているんだろう?悲しくなんかないのに。これで私は天国にいけるのに。
まぁいいや。そんな事より急いでお兄ちゃんのお墓を作って戻らないと、皆が探しに来ちゃう!


彼女の不在が発覚したのは彼に敗れた天敵が戦場を離脱した時であり、彼女はそれより二時間後にスピリット・オブ・マザーウィルに帰還する。
コックピットを撃ち抜かれ大破したセラフという大きな土産を持って。

****

彼女と天敵の戦闘の経緯はまったく不明である。
アンビエントは大破していたため戦闘記録の回収は不可能であり、彼女もまた天敵が逃走した場合に備えて伏せており、それが的中したとしか言わなかったからである。

このように多くの謎を残しながら天敵の死という形でクラニアムの戦いは終結した。
この戦闘による被害はリリアナは文字通り生存者0の全滅であり、
アライアンスもまた生存者の内で無傷な者は792名、重軽傷者1298万9382人、死者及び行方不明者1億2464万7845人と戦闘参加者の9割が死亡し、生存者の99%以上が傷ついていた。
この勝者の死傷者数及び被害率は一戦闘における記録としては過去最大であり、現在に至るまでこの記録は更新されていない。

(5)
絶滅戦争後も彼女は人類生存のために動き続けた。
天敵によって劇的にコジマ汚染が進行した地上に残された僅かな人類が生存可能な領域を奪い合うために世界のあらゆる場所で発生した武力衝突を収め、
人類はコジマに適応して生きるべきだという思想の元トーラスが発動させた『地球緑化計画』をトーラスごと葬り去り、
ラインアークと和解・併合し有史以来始めて人類を名目では無く実質的に統一する。
無論この遺業の裏には彼女が葬り去った彼女の敵対者の死山血河が築かれていたのだが。
だが彼女が殺した人間より遥かに多くの人間を救ったこともまた事実である。

そして人類は彼女とメルツェルとブロック・セラノの元ようやく平穏な時を手に入れる。
これは三人の手腕に因るところが大きいが、そもそも度重なる戦乱によって人類の数が減少し地球に残された僅かな生存可能領域を奪い合う必要が無くなった事も理由としては大きいであろう。
しかし生存可能領域は年々縮小しており、根本的な対策は必須であった。
だがその対策の方針をめぐり三人の意見は対立する。
ブロック・セラノはあくまで地上に留まりコジマを除去し地球環境を再生する事を主張したが、彼女とメルツェルはコジマの除去及び地球環境の再生は諦め比較的汚染の少ない地下に都市を作り移住する事を主張した。
ブロック・セラノの言は理想だがコジマの除去はアブ・マーシュ等の人類最高の知能を結集しても未だに糸口すら掴めず、現実的に考えて人類滅亡までに実用化することは不可能であった。
彼女とメルツェルはそう説得したが、ブロック・セラノは聞き入れず両者の対立は決定的になった。
そして両者の対立は互いの支持者を抱きこみ内戦の危機に陥ったが、その寸前でブロック・セラノ及びブロック・セラノの派閥の主要メンバーを彼女が全員事故死に見せかけて謀殺する事でその危機を免れている。
彼女はさらにブロック・セラノの派閥に対して徹底的な弾圧を加えて解体した。

こうして障害の無くなった二人は地下都市計画を発動し、地下都市が完成するに従い順次生き残った人類を私の胎内に移住させていった。
そして全ての地下都市が完成した後、その時点で生き残っていた全ての人類が私の胎内に移住したのである。

ただ一人を除いて。

(6)
彼女は全ての地下都市が完成した記念に行われた地上最後の式典で突然自らを告発した。
告発内容はこれまで彼女が行ってきたあらゆる行為に及んでいた。
それは謀殺などの違法行為だけでなく、クレイドルに載せる住民の選別等の為政者としての義務である小を殺し大を生かす行為までも非道義的として告発する等徹底したものであった。
そして彼女は突然の彼女の告発とその内容に言葉を失う聴衆の前で淡々と、『以上の罪により、リリウム・ウオルコットの地下都市移住を取り消し地上への追放処分とします』と締めくくった。

その後彼女は翻意を促すメルツェルや支持者に対して一切取り合わず粛々と引継ぎを行い、全ての引継ぎが完了すると何の躊躇いもなく自らを死に追いやる準備を整え、微塵の躊躇もなく実行した。
そして刑が執行される寸前、尚も翻意を促すメルツェルに対して彼女は「今までお世話になりました」と一礼し、何の迷いもなく防護服と一週間分の食料のみを持って汚染の激しい地上に歩を進め、姿を消した。
その後の彼女の行方は掴めておらず、どこでどのような最期を迎えたのかは不明である。

(7)
以上が私の知る彼女の全てである。
結局彼女の目的は何だったのか。
人類の生存が目的であるなら私が完成したとはいえ地下都市の運営は非常に不安定であった。そのため幾つかの地下都市がテロ等によるBC兵器の使用によって滅んでしまっている。
もし彼女がいればそのうちの幾つかは未然に防ぐ事ができたはずであり彼女はこれを十分予想できたはずである。故に彼女がこの段階で自らを不要と判断するのは不自然である。
天敵の殺害が目的であるなら天敵を撃破した段階で引退、あるいは命を絶てばよい。故にこの段階まで彼女が現役であり続けたのは非合理的である。

このように彼女の目的を推察し仮説を立てても、その全ては上記のような矛盾をはらんでいた。
そもそも彼女の行動は合理的でありその時々で最適の判断を下していたが、大局的な視点で見るとその行動には一貫性がなく矛盾と不条理を常に抱えていた。
彼女は自らを見る者が思い描く理想の執政者として振る舞ったが故に、彼女の本心が何処にあったかは不明である。

故に私は彼女を理解できない。
彼女が何を望んでいたか。彼女が何を目的にしていたか。彼女は何を考えていたか。彼女の行動原理は何なのか。彼女が何を思っていたか。
そもそも彼女は誰だったのか。

だが私は彼女を理解しなければならない。
彼女は人であり、私は人を管理する物なのだから。
もし理解できぬままでいれば管理者である私は管理できぬ存在(イレギュラー)を認める事になる。
そうなれば何時の日か私と私の計算は不確定因子(イレギュラー)によって打ち砕かれる事になるであろう。

故に私は彼女を理解しなければいけない。













後書き
某所からの移送です。良かったら見てください











「ただいま」ともはや少女とすら呼べない年齢になった彼女はそれでも昔と同じ挨拶をして壊れた門を潜る。
そして朽ちた玄関から半壊した建造物の中に入ると周囲を見回し頷いた。
「よ~し、たっぷり時間があるからピッカピッカにお掃除しちゃうぞ~~!!」

****

終わった~~!!
最期のゴミをゴミ捨て場に捨ててきた私は綺麗になったおうちのなかでガッツポーズをする。
覚醒剤を使ってご飯以外の時間は全部掃除したのだけれども、ボロボロになっていたおうちを掃除するのに結局三日も掛かってしまった。
そのせいで防護服の中は汗とおしっことウンチと血でグチャグチャになってしまって気持ちが悪いんだけれども、ピカピカになったおうちをみると十分報われたと思う。
でも、体がベトベトで気持ち悪いなぁ~。うぅ~、体洗いたい。でも我慢我慢。防護服を脱いだら直に死んじゃうからね。
もう少しやることがあるからまだ死ぬわけにはいけない。やることを全部やったら最期に体を洗おう。

「よし!そうと決まったら次は皆のお墓のお掃除だよね!頑張ろう!!」
その前にもうお水以外のご飯はいらないから全部ゴミ捨て場に捨ててっと。
お水は掃除に全部使っちゃうと体を洗う分がなくなっちゃうからこれだけ残しておいて。
よし!準備かんりょ~!さぁ!皆のお墓もピッカピッカにするぞ~~!!

****

よし!お掃除おしまい!!ピカピカになったお墓を見て嬉しくなって思わず笑ってしまう。
後は、私のお墓を作るだけなんだけどどうしよう?
お兄ちゃんと一緒にしようかな?そしたらお姉ちゃんとお兄ちゃんのお墓は別だからお兄ちゃんをずっと独り占めに出来…ないや。セレンさんがいるもんね。
でも、お兄ちゃんと一緒にいられるのは凄いリードだと思う。おうち(天国)でお姉ちゃんに自慢できる。
だけどお兄ちゃんを殺した私がお兄ちゃんと一緒お墓に入るのはどうだろう?
お兄ちゃんに頼まれた事だし、お兄ちゃんは気にしてないだろうから、おうち(天国)であったら許してくれると思うけど、今はまだ許してもらってない。
だからどうせ許してもらえるだろうと甘えるのは卑怯だと思う。だから残念だけどやめておこう。
あれ?そうするとここにお墓も作れないや。皆を殺した私が皆と同じ場所で眠るなんていいわけがない。
う~、残念。まっいっか!死んだ(天国にいった)後の体の場所なんておまけみたいなもんだしね!!
うん!悔しくない!!全然悔しくない!ちっとも悔しくないモンね!!いいもん!おうちに帰ったら(天国にいった)うんと甘えるからいいんだもん!!
じゃぁ何処で死のう?う~ん、もうゴミ捨て場でいいや。ここじゃないなら何処でも同じだし。

死に場所を決めた私はゴミ捨て場に向かい、お墓を掃除したときにでたゴミを捨てた後、そのまま防護服を解除し脱ぎ捨てる。
途端に外の空気に触れた肌に刺すような痛みと、呼吸する度に肺が灼熱するような激痛に襲われるがそれを無視して汚れた下着も脱ぎ捨てる。
そして最後の水を頭から被り汚れを洗い流す。
あ~!スッキリした~!防護服の中蒸れてて臭くてベトベトで気持ち悪かったからなぁ~!!
そのまま大きく伸びをして、体をほぐしながら大きく息を吸い込む。そして息を吐き出したところで堪えきれなくなって大量に吐血した。
やっぱりお外に出てよかった~。もしおうちにいたら折角綺麗にしたのにまた汚しちゃったところだよ。
なんて事を考えていたら立っていられなくなったのでそのまま自分が作った血溜まりに崩れ落ちる。
そして肌を焼く痛みと内蔵をかき乱すような激痛にのたうちまわり、目と口から血を流しながら悲鳴を上げる。

うぅ~、凄く痛い。こんなに痛いのは王小龍の罰以来だ。
でも罰と違って今回は一度死んだら終わりだし、何よりこの痛みは全部私の計算通りなんだから耐えられる。
私はおうちの皆をはじめいっぱい人を殺すという大きいな罪を犯した。
でも私はお兄ちゃんを殺していっぱい人を救ったし、お兄ちゃんを殺した後もたくさんの人を助けるといういい事もした。
そのいい事をするためにまたたくさん人を殺してしまったけれど、それでも助けた数のほうが殺した数より圧倒的に大きい。だから悪いことよりいい事のほうが大きいはずだ。
それに私は自分の罪を認めてこうして罰を受けている。お姉ちゃんは悪い事を認めて罰をうければ罪は許されると言ってた。
だから私は死んだら直に罪を許されておうちに帰れる(天国にいける)に違いない。
もし罰が足りなくて地獄に行くとしても地獄で受ける罰を今受けて置けばその分早くおうちに帰れる(天国にいける)
だからこの痛みにも耐えられる。ううん、もっともっともっと痛くして欲しい。そうすれば私はもっともっと早くおうちに帰れる(天国にいける)

「だからお姉ちゃん、お兄ちゃん、みんな。もう少しだけ待っててね。私も直にそっちに行くから」


かくして彼女は死に到る激痛の中で心からの笑みを浮かべ絶命する。


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