Written by 独鴉


AFグレイト・ウォール・・・
全長7キロにも達するGA社の象徴AFグレイト・ウォール、敵体企業は旧式や古臭い考えというが私も設計思想に関しては賛同しよう。
巨大な城壁を移動できるようにしたものだが、象徴とするだけの価値がある性能を十分に持っている。
堅牢・堅実に作られたGWには目立った弱点や欠陥は無く、防衛・占領するには十分な移動速度・火力・積載量を持ち、
さらに唯一の弱点を突くにも正攻法で重砲撃とミサイルの波状攻撃を突破した上に機関部までACやMTが出撃待機している内部を強行突破するしかない。
力押しで外壁ごと破壊するとなるとSOMクラスの大口径主砲でも使わなければ外壁を破壊することは出来ないだろう。
だが、あんなものはBFFとGAの工業力の二つがあってこそ作れるものだ。それは今まで古臭いと罵りながらも他企業では破壊できずにいた証拠でもある。
故に他企業は自社製AFを叩きつけても確実な勝利を得られないからこそ、使い捨ての出来る独立傭兵に依頼をした。
データや対策はあっても手出しが出来ない。そして自社専属の大事なリンクスを使う気も無いということだ。
いままさにインテリオル・ユニオンから雇われたストレイドがGWに挑んでいる。

「社長、ストレイドが想定ラインを突破いたしました」

「…準備は出来ているな?」

「ご指示通り機関部全AC・MT共に退避させました。ですが宜しいのですか?」

「ネクスト同士の戦闘は激しい戦いになる。他の者を巻き込むわけにはいかんだろう。それに」

有澤隆文は機体を起動させAMSとのリンクを開始した。

「雷電の火力圏内に味方が居ては攻撃が出来ん」

鋼鉄の塊は鉄を削る異音を鳴り響かせながら機関部と車両部を繋ぐ隔壁前へと向かった。

下部ブースターが重装甲を誇るタンク型ネクストをゆっくりと持ち上げ、隔壁前に到着したとき激しい振動がGWを襲った。

「ストレイド最終武装車両に進入、機関部を切り離しました」

「開放回線に繋ぐ、これからのオペレートは不要だ」

後部車両を切り離したことによって視界は開けると同時に車両が徐々に離れていく。

「ネズミが紛れ込んだか、困ったものだな」

突然RAIDEN‐Wが火を吹き、隔壁を粉々に吹き飛ばした。崩れ落ちていく瓦礫の先にはPAを展開したストレイドが静かに佇んでいる。

「今データを送る。少々待て」

セレンさんからストレイドへとデータが送信され、統合制御体からリンクスへと直接情報が流れ込んでいく。
GAグループ傘下 アジア極東の有力企業 有澤重工製ネクストAC 雷電 カラードランクの情報でみる限り、
量産AFクラスと同等以上の制圧火力と装甲を持っているらしい。
評価などは大抵過剰評価されるものだが、目の前の状況を見れば一切否定は出来ない。
武器腕の巨大なグレネードキャノン、AFでも何発も直撃すればただで済むわけがない。
そして背中に担いでいる馬鹿でかい予備弾装のような物体。有澤重工と言えば優良榴弾系兵器メーカー、
考えたくは無いが、あれがグレネードキャノンだとしたらどれだけの威力を持っているか想像も付かない。

タンク型ACの恐ろしさは過去のノーマルAC時代から知られている。
いくら弾丸やミサイルをぶち込んでもタンク型にしか積めない鬼のような大火力武器を、まぐれでも数発ぶち込まれれば終わりだ。
リンクス戦争では何機かのタンクタイプネクストが出撃しているが、有澤専属と旧メリエス専属を除いて全て破壊されたらしい。
それは機体が悪いのではなく、敵との相性と乗り手が悪かったのだろう。
これほど雷電にとって有利な立地条件は無い。
狭い通路の入り口を陣取っている以上撃破しないかぎり機関部破壊は不可能、
そして重装甲・重火力のタンク型を遠距離から仕留めるのは骨が折れるどころではない。
ストレイドの突撃ライフルと強化マシンガンの高機動機体では不可能に近い。
運悪く背中の武装もエネルギー系ではなくローゼンタール社製チェーンガン、
GA製・有澤製パーツは対実弾性能が高く立地条件も武装もストレイドは不利だ。

ストレイドは両背中のチェーンガンを担ぐと射程距離ぎりぎりで掃射しつつ距離をとるが、
ほとんど動こうとしない雷電のPAを貫き、重厚な装甲板を弾丸が叩き続け火花が散っている。
だが、直撃する弾丸に構わず雷電の二門のグレネード砲はストレイドを狙っている。
稀にPAに接触したグレネードの爆風と爆炎が装甲板を削るが、レイレナード社のアーリヤはそれ相応にPA制波性能がある。
揺らいだPAはすぐに修正され安定状態を取り戻していく。
接近し過ぎればRAIDENのグレネードにストレイドは吹き飛ばされ、離れていれば回避できるが十分にダメージを与えることは出来ない。
そんなやりとりを両肩のチェーンガンが弾切れになる頃にはさすがの雷電もダメージを負ったのか機体の所々で火花が散り、
GW内へとネクストを後退させていく。ストレイドはチェーンガンをバージするとMARVEとMOTORCOBRAを構えてGW内に進入。
ストレイドが接近し始めたとき、ゆっくりと雷電の背中の物体が動きその本当の姿を現し始めた。
三つ折り式の巨大グレネードキャノン OIGAMI、
強烈なマズル・フラッシュと共に発射された大口径榴弾をストレイドはSQBで回避するとすぐ真横の壁にぶち当たった。
次の瞬間予想以上の爆発範囲にストレイドが炎と衝撃の渦に飲み込まれる。

「なっ!?」

強烈な閃光と同時に凄まじい爆炎と衝撃がグレイト・ウォール内を駆け巡る。
全てが収まったとき周囲の状況を確認して冷や汗が流れ落ちた。

「…冗談だろ」

たった一発の榴弾が直撃しただけでグレイト・ウォールの壁にひびが入り、爆炎と爆風だけでPAが根こそぎ奪われ消滅している。
いや、それだけではない。GW車両内部に搭載されていたノーマルACや自立兵器まで根こそぎ吹き飛び瓦礫と化してしまっている。
あんなものPAがない状態で直撃したらネクストと言え消し炭、例えPAが有っても直撃すればただでは済まないだろう。
大艦巨砲は愚の骨頂と言うが、ここまでの領域に達すれば関係無い。
そしてこの段階まで到達するのは簡単ではなかったはずだ。
さらに相手が接近するまで攻撃に耐えられるという自社製の機体と一撃で仕留める武装を信じきれる相手の有澤隆文は十分尊敬できる。

「この距離で外したか。中々やってくれるものだ」

有澤隆文はそう呟くとゆっくりと機体を機関部と繋がる最終隔壁前まで後退させる。OIGAMIは確かに凄まじい。
我が社最高…、いやネクスト武装としても最高クラスと私は自負できる。
だがその代償として発射の衝撃と暴発を防ぐための頑丈なフレームと分厚い装甲の油圧構造の為、
大重量だけではなく再装填に非常に時間がかかってしまう。
だが、それを悟られれば相手は再装填までに勝負をつけようとするだろう。悟られてはならない。
まだリロードの終わらないOIGAMIを折りたたまず狙いをつける動作を続ける。
空薬莢が排出されれば装填に時間がかかることは否が応でも知られるが、
次の一撃で沈めればなんら問題はない。
ストレイドは一旦PAを回復させるつもりなのか切り離されたグレイト・ウォールの外へと下がっていく。
この閉所でもGA製の重量ネクスト型ならOIGAMIの一撃に耐えつつバズーカとミサイルの火力でこちらを押し潰すだろう。
だが高速機動型のストレイドなら直撃と同時に仕留められる。
例えQBでサイドに避けても巻き起こる爆風で動きが止まったところを両腕のグレネードキャノンで仕留めればいい。
それまで耐えればこちらの勝ちだ。だが一つだけこちらを潰す方法がある。
それが装填後だったとしても、OBで一気に距離を詰めれば良い。
一歩間違えれば消し炭となるが。

(確かストレイドとか言ったな。お前にこの 有澤重工雷電 を潰せるか?)

「これ以上時間がかかれば増援がくる。撤退しろ」

最善の策だ。無駄に死ぬこともない。クライアントも撃破を期待してなどいないのだ。
詳細な内部データがあればランク6辺りの独立傭兵ロイ・ザーランドにでも依頼すればいいと思っていることをセレンは知っていた。

「いえ、なんとかしてみせます」

開口部からQBでストレイドはグレイト・ウォールの長い床に着地すると最終隔壁前に陣取る雷電にブーストで突撃していく。
待っていたかのようにOIGAMIが咆哮を上げる。だがストレイドはその直前にBQBで急停止し後方に跳躍していた。
ストレイドを追って砲口は上方に移動。砲弾はグレイト・ウォール開口部へと突き抜けていった。

「よく外させた!だが甘い!」

ゆっくりと折り畳まれていくOIGAMIをそのままに、
OBの光を放ち始めたストレイドに向けて両腕のグレネードキャノンが二回立て続けに咆哮を上げた。
確かにストレイドはOBとMQBで急加速した。
だが、目標はRAIDENではなくすぐ左前の壁だ。激突する寸前でPAが衝撃を和らげ、
左腕の装甲とGW内壁とが接触し激しい火花を上げながら正面に無理やり推力方向を捻じ曲げ接近してくる。
壁に激突した衝撃で左肩が火花を上げて歪んでいるが、構わずMQBを点火し一気に接近、
雷電のすぐ目の前まで迫っている。RAIDEN‐AWの装填は間に合わない、有澤隆文は覚悟を決めた。
いくら雷電と言えど、今の状態で至近距離からMARVEの凶悪な速射を集中的に受ければコアに風穴くらいは開いてしまうだろう。
だが、ストレイドのMARVEは雷電のすぐ後ろの隔壁を破壊し、動力炉を撃ち抜くと誘爆の始まったグレイト・ウォール内部からOBで離脱していった。

「私を見逃した…のか?」

疑問に思いながら有澤は誘爆の始まったGW内から雷電を脱出させる。

「砲撃を避けた動き、あれは訓練されたものだな?」

元レオーネ・メカニカ最高戦力は伊達ではない。まぐれで回避したわけではないと気付いている。

「…親父達に教わったノーマルACの戦術」

使い古されたレイヴンの回避技術、大口径砲の僅かな挙動から発射タイミングを読み取り直前に跳躍し回避する。
集中して相手から眼を離さなければ脚部パーツとグレネードの弾速次第では出来ないことではない。
脚力の強い逆間接機体では当たり前のように行われていたことだ。
そしてACに緊急離脱用ブースターが装備されるようになった時に産まれた回避及び接敵手段。
緊急離脱用ブースターの推力を正面ではなく斜め正面に振り分け急加速で回避しながら接近する。
普及型ノーマルACが出回る前のレイヴン達が生き残るために普通に使っていたものだ。
レイヴンの時代はとっくに終わった。
ノーマルACの回避技術も接敵技術もほとんど残されておらず、国家解体戦争でそのほとんどが失われた。
リンクスは親達の訓練を受けた程度で実戦には使ったことがほとんどない。
伝説のレイヴン アナトリアの傭兵なら、恐らく全てを使いこなし、リンクスの親達も知らない戦術も知っているはず。
リンクスは会って見たいと思う反面、戦場で敵として絶対に出会いたくない相手だった。レイヴンとしての回避技術も接敵技術も相手は知っている。
今の自らの技術は通用しない。それが必然的に導き出された答えだ。



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