《ウォーニング!!》
この作品は異性間に於ける性交を主軸とした小説です。
Written by 仕事人
【ケモノのスミカ レギュ08 《贈り物》】
「さて、今年も残す所、後僅かとなりました。ここに居る一同の苦労によって、我々は今年一年を無事に、そして大いに収穫を得て、過ごす事が出来――」
ラメの入ったビニールで覆われ、星型などが散りばめられている三角帽子を被っているミゲさんがマイクを片手に――十数名を前にしているのだが、室内はスピーカーを使わなければならないほど広くは無いので、あくまで格好だけである――同じようにパーティーと云った風体の格好をしている人々を前に演説をしている。
しかし最初こそ歯切れ良く、ぺらぺらと舌が動いていたのだが、グラスを持っている皆のもどかしさのような物を感じ始め、また段々と自分自身でも面倒になってきたのか、話の腰を折るようにして――
「そんな訳で――乾杯ッ!」
突然に乾杯コールをぶちあげた。
そのような唐突なタイミングであったのだが、聞かされていた連中は待ち構えていたので、
――かんぱァァァァァいッ!
それぞれのテンションにやや差はあれど、十数名の内、誰一人遅れる事なく鬨の声を上げていた。
部屋の壁を揺らすような怒号に当てられたのか、コールに続いて更にミゲさんが叫ぶ。
「メルルゥィイイイーーッ・クルルルゥイイスマァァァァスッ!」
――メリィィィーー・クリスマァァァアアアスッ!
「ちゅーわけで……レッツ・パァァァァルルルゥゥィィィィッ!」
――レッツ・パアアアァァァリイイイィィィィッ!
そして、続いて皆も宴の開幕を高らかに上げるのだった。
アジトのある土地の気候柄で雪は降ってはいないのが残念であるが、本日は12月24日のクリスマス・イヴの夜中で、あと数時間もすれば12月25日――クリスマスになる。
しかし本日の本来の意味を知っている者は兎も角として、真面目に考えるような者は、此の下品且つ粗暴で野卑極まる――と云うと過言であるが――面子の中には誰一人として居ない。
本日を待ち望んでいたのも、カレンダーの枠を花丸で囲った中にXデーと記述されている理由もたった一つのシンプルな理由―――大義名分の旗の下に騒ぎ、そして大いに酒をかっくらえる日だからである。
さて、企業支配体制下である現在だが、法律もどこであろうと殆ど一律下されており、大体世界中で未成年者の飲酒、喫煙は違法となっている。しかし、其れがどうした、屁の河童と言わんばかりに――。
「――ぷはぁぁっ!」
「ノアちゃん、イイ呑みっぷりィッ!」
「きゃーん! おじさん、惚れちゃいそうっ!」
「そこに痺れる、憧れるゥッ!」
未成年者筆頭であるノアが腰に手を遣って、椅子に片足を乗せた格好で男らしい一気飲みをしてのけると、他の整備士達がやんや、やんやと囃し立てる。
ちなみに最初に彼らが手にしているのは、グラスと述べたがパーティーと云う言葉の雰囲気に合わせただけで――実際はジョッキである。
なので、これからは酒宴と言い直す事にする。クリスマスパーティーではなく忘年会である。
話は戻して、うら若き乙女のそんな行動を見たら親御さんが嘆き悲しむ姿が思われる――だが彼女の実家はインテリオルのクレイドルで酒屋を営んでいるので、特にそんな事は無いかもしれない。寧ろ推奨されているかもしれない。
そんな大喧騒の中、巨漢のヒロミが異常に似合わないエプロン姿で作った料理と、アストナージ特製サラダを皆が摘む。
ある者達は飲み比べで勝負を行い、そして賭けをし――ある者達は絡み、絡まれ――またある者達は粛々と酒を遣る。職務の責任上か、酔う事を忌避しているような者達もいるが。
さて、そんな酒宴の隅ではノアに続いて明らかに未成年者――の隣でワインの入ったグラスが一瞬で空になった。
「……スミカさん、ペース早くないですか?」
「今日ぐらい思いっきり飲んでおかないと損だろうが」
スミカを心配そうに見守る少年は飲んだ回数も量もそもそも数える程しか無いので、酒への耐性に関しては未知数と云ったところである。一応ミゲさんに無理矢理渡された――少しは手加減してくれたのか、ジョッキではなく――コップの中のビールをちびちびと飲んでいるが、口を鳥の嘴のようにして一口啜る度に、顔を顰めている。
やっとコップの中身を半分にした頃には、スミカの前には瓶が何本も並んでいる。
其の向こうでは断末魔のような奇声を上げながら踊り始めたミゲさんの前を、ボーイのように料理を運ぶ事で逃げていたヒロミちゃんが通ってしまった。
「ヒロミちゃあん。全然飲んでないじゃなぁ~い」
「いや、あの僕は……」
「あ~? オォレの酒が飲めねえってかァ?!」
管を巻いて絡んできた酔っ払いをなだめようとするのだが、ホラー映画のゾンビのように群がってきた連中に、
「ほぉら、飲まないと駄目じゃぁん」
「ちょ……ちょ、まっ……」
背後から羽交い絞めにされて、ぐいぐいと口にジョッキを押し付けられ――ビールを流し込まれる。
ヒロミの力ならば振り切る事は容易であろうが弱気であるから、そうする事も出来ず、諾々と喉を通っていく。
(平気、なのかなぁ……)
無体な有様を矢張り心配そうに見守る少年に対し、離れた所ではおやっさんとウッディが静かに佇んでいる。
おやっさんの方は酒の味を――此の日の為に態々有澤から買い付けた日本酒を――噛み締めるように飲んでおり、ウッディは何かを思い出すように。もしかしたら目尻の端には水滴があったやもしれぬ。
――無礼講である。
――正に無法。
――大航海時代の港町の酒場の様相である。
酒と云う魔に魅入られた者達の感情が織り交ざって混沌と化す。
混沌はやがて摂取し過ぎた水分と共に排泄されるが、直ぐに充填されていく。
酒宴も大分進み、それなりに皆落ち着いてきたようだ――一様に顔は真っ赤をしながらも、まだ飲んでいるから、何かを切欠にして再びビッグバンが起こりかねないが。
身体に、と云うよりは頭にアルコールが沁み込んでくる時間帯になると、可哀想なのは目下の者達である。
日頃の鬱憤が酒によって爆発するから、さぞヒロミちゃん辺りなんかは虐められそうである――かと思いきや、今は既に酔い潰れているとはいえ、先程までミゲさんにねちっこく絡んでいた。
更にミゲさんはノアにも絡まれていたために、何故か先程の定義とは真逆の立場である。
そして暫くしてヒロミちゃんが潰れ、ノアが絡むのを止めて酒を飲むのに専念し出した頃を見計らうように、ミゲさんは頭を上に突き出すようしながら、声を出した。
「おぉ~~い、尻尾ぉ~~!」
「あ、はぁ~い。何ですかぁ」
「お酌してちょうだぁい」
勿論、そんなのは建前で一応目下に当たる二人から少年にターゲットを代える気である。
しかし、そんな事に気付かない彼は立ち上がり、気分良さげにうつらうつらとしているスミカを一瞥してから、立ち上がろうとすると
「……どこ、行くんだ?」
寝惚けているような顔で寝惚けているような声のスミカに服の端を掴まれた。
彼女の様子に本当に寝惚けているのかなと思いながら、少年が振り返って「ミゲさんにお酌しに言って来ます」と言葉を掛ける。すると彼には予想外の言葉が返ってきた。
「……だめっ。お前はここ」
ソレを聞いて殆どがぼんやりとしていた整備士達が――そして少年も――顔を上げて、驚愕の視線を寄越すが、スミカはお構い無しに少年の服を引っ張って無理矢理椅子に戻してから彼の肩に頭を預ける。
酔っている事は明白で、其の様子を可愛らしいと少年は思いつつも、周りの眼が恥ずかしくてどうしたものとかと落ち着かなさそうに視線を泳がしていると、
「あぁ~、スミカさん。ずる~いぃ。尻尾君独り占めしてるぅ~」
ノアがえへらえへらと笑いながら、そう言った。
表情や声色から察するに本気で言っているわけではなく、皮肉なのだろう――つまり絡んでいるわけだ。
それに同調するように周りも「お熱いねぇ」とか囃し立てながら、くすくすと笑う。
するとスミカはそんな彼らをぐるりと見渡して、微笑を浮かべた。
「何だぁ、それの何が悪いんだぁ?こいつは私のなんだからぁ……」
挑むようにそう云うと、驚いて視線を寄越してきた少年の首に腕を回して――
「ん~~~」
「んーーんーーっ?!」
皆が見ている前で愉しげに喉を鳴らしながら、突然キスをし出した。
少年も逃れるように身体を退いたのだが、スミカに追われて最後には圧し掛かられるような格好になった。
向きのせいで背もたれに身体を預ける事が出来ず、後ろに倒れないように二人分の体重を支えているせいで動けない彼を言い事に長々と唇を押し付けて。
整備士達が口を半開きにして呆気に囚われていると――眼の前で行なわれている行動に、そして其れを”あの”スミカが行なっている事、そしてヒロミちゃんが寝息を立てていると――大きな咳払いが立った。
しわがれながらも、威厳が溢れている其れを立てたのは、勿論おやっさんである。
はっと気付いたように整備士達がおやっさんの方を見ると――やっぱりヒロミちゃんは寝ている――キスを中断したスミカと、体重を支えている手をぷるぷると震わせている少年も其方を見た。
しかし、おやっさんはつい先日に二人の事を寛大に見守ってやろうと言い出したばかりであり、更に仕事以外で小言を垂れるのは甚だ不本意だと言いたげな表情を浮かべて口を開こうとしたのだが、スミカが其れに先んじた。
「んん? おやっさん、キスぐらいで硬い事を言うな」
一応云っておくが、そもそもおやっさんはまだ何も言っていない。
それと、ちなみにスミカがおやっさんの事をおやっさんと呼んだのは此れが始めてである。
「キスなんかまだ可愛い方だ。コイツなんかな――そうだ、つい、この間。皆で此処で食事した時だ――久しぶりに全員揃って食事している時にだぞ。皆が居るっていうのにな……テーブルの下で隠れて私の太腿を――おまけにもっと奥を撫でたんだ」
少年がすかさず、恥じ入っていると云った感じの表情を作った傍らで、オムルが「え?」と云った。
「まだ昼頃だったのに、おまけに皆もガレージじゃなくてこっちに居たのに急に私の手を引っ張っていって部屋に連れていって――そんな事もあった」
やめてくれと言いたげな表情をしている少年が顔を紅潮させると、アストナージが「ん?」と云った。
「それに、この前の買出しの時。コイツは出掛ける前に突然私にキスをしてからな――ちゃんと”アレ”買ってきますから、帰ったら――なんて言ったんだぞ。全く、後の事を考えて私は少し心配になったよ」
飲酒量は最も少ないのだが、これ以上無いくらい顔を真っ赤にした少年が俯いているとウッディが「あれ?」と云った。
――それって、この前、
――僕が、
――俺が、
――私が、
――あんたらの事を微笑ましく思っていた時じゃねえのかよ。
「な?それに比べればキスなんて軽い物だろ?ちなみにまだあるぞ――」
スミカは饒舌に今まで少年が彼女に対して隠れて行なってきたセクハラの数々を告発し始めた。
セクハラといっても一応は同意になるので定義に矛盾があるかもしれない、また告発といっても其の口調は
少年の冒険心を――下心と云うか、何と云うか――褒めるような色合いであったのだが。
そして現実から逃避するように酒を呑んでいる少年の顔が羞恥とアルコールで真っ赤になっていく――。
「じゃ、お開きにしましょか……」
隅ではスミカが少年に甘えるようにもたれかかっていて其処から甘い雰囲気が漏れ出ているのだが、周囲では「ケッ」と言いたげで、若しくは「やってられっかよ」と言いたげな顔をしている整備士達が頬杖と悪態と愚痴を突いて―― 一人は思ひ出にひたって――どんよりとした淀んだ空気の中で酒を呑んでおり、流石に限界と感じたのか、ミゲさんがそう言った。
酔っている所為もあるだろうが、たっぷりと惚気話を聞かされたからか、大勢がだらだらと力無い足取りで部屋から出て行くと、残されたのは二人だけとなった。
「……スミカさん、部屋戻りましょうよ」
「う~ん? そんなにしたいのか? ホントにお前はやらしい奴だなぁ、もうっ」
――なんでもいいです、もう。
尚も揶揄われる中、深く溜息を吐いて立ち上がる。
先程出て行った整備士達に倣うように、少年の足取りも重々しい。
しかし、数歩歩き出した途端に
「――ぅぐぇっ?!」
本当の意味で短い後ろ髪を引かれて蛙が潰れたような声を上げながら盛大に仰け反った。
急な前後運動には慣れている身体とはいえ――勿論、ネクストの操縦に伴う動きという意味で、である。――頭が揺さ振られるのは、酒が入っているのもあって気分がよい物ではない。
引いたのは誰か分かりきっているので、「どうしたんですか?」と非難めいた言葉と共に振り返って、背後に視線を向ける。
「……つれてけ」
――あなたは何かのお化けですか。
ミゲさん辺りに貰った日本の妖怪辞典でそんなのを読んだ事がある気がしたので、そんな感想が出てきた。
しかし眼の前で膨れっ面をしているのは魑魅魍魎の類ではなくスミカであるから、伸ばされている腕を取ってから、彼女の体重を自身の肩に乗せようとする。
しかし、スミカは其処で二三度、かぶりをふった。
「……おんぶしろ」
――ねえ、ホントにどうしたんですか。
呆れたと云った風に鼻から長く息を吹きながら――本音では可愛いと思いつつ――スミカの前で少年は背中を見せて跪く。
少し間を置いてから、背中全体にどさりと体重が圧し掛かってきた。まるで疲れた人間がベッドにそのまま凭れ掛るように。
衝撃で肺から空気が僅かに吐き出されたが、少年はスミカの太腿に手を遣って支えると、膝を上げて歩き出す。
「はぁ……つ、つかれた……」
スミカは其処まで重くはなかったが、流石に三階分、人を背負ったまま上ったとなると苦労も一入だった。
それに途中でスミカの身体を持ち直そうとした際に不可抗力で臀部に触れてしまったり、始終二つの柔らかい膨らみが背中に触れていて、おまけに擦れているのか、揺れる度にスミカの悩ましげな声で耳を擽られるなど色々あって途中から非常に歩き難かったのもある。
「スミカさん、下ろしますよ」
「う……ん」
ベッドにスミカと一緒に腰を下ろすようにして、太腿の手を離す。
だが身体の前面に回されている腕はそのままで体重も預けたままだから、スミカは少年に引っ付いている格好のままである。
少年は仕様が無いから無理矢理引き剥がそうかと思って腕に手を掛けると、其の瞬間。
「わあっ!」
後ろに向かって投げ飛ばされるようにして、視界が吹き飛んだ。
放り投げられた体重がベッドのスプリングに受け止められて、細い身体が一度撥ねる。
「……もうっ、スミカさん!何を――」
背中にベッドがあるからスミカに横へと投げられたと云う事だと分かると、尚も身体を掴んでいる腕の方に顔を向けて、強くではないが悪戯を詰問しようかと思っていた少年が其処で言葉を止めたのは、眼の前に濡れた瞳でこちらを見詰めるスミカの紅潮した顔があったからだ。
妖しげにこちらを見詰める彼女の様子に鼓動が一つ高鳴っていると、火照った頬と自身の腕に、手が添えるように差し出される。
そして目蓋を閉じたスミカがゆっくりと顔を近づけてきた。
「ん……」
吐息と共に僅かに開かれた唇が触れ合うと、口腔を通って少年の鼻腔をつんとアルコールの甘さが刺激した。
濡れた柔らかな肉で唇を咀嚼され、同じ事をし返すと唾液で淫靡な粘音が二人の口許から立った。
互いが互いの唇を愛撫している中、少年は今も自分がそうされているように左手でスミカの頬を撫でて、同時に指の腹で以って自分の右腕を擦っている彼女の左手に右手を触れさせると指同士が合間を縫うように絡み合う。
そして手が貝のように組み合わさると、境界が混じった二人の口吻の間で舌が触れ合った。
水気を孕んだ肉を舐り合う、性器同士を擦れさせているような性感に二人の目蓋は閉じる力も失って、心地よさげに僅かに開かれると、互いの蕩けた眼が劣情の眼光を浴びた。
身体の大部分の力も、思考さえも甘く弛緩しているというのに二人の舌の動きは尚も一層激しさを増す。
「ふぅん……ンく……ンン……」
先端が縦横無尽に絡み合い、互いに根元の辺りを擦りあったり、かと思うとぴったりと触れ合いながら捩れる二枚の舌が螺旋を描く。
掻き混ぜられてダマになった唾液がぬらぬらと舌を淫らに輝かせながらも、ダマ同士を銀色の糸が紡いでシーツの上に落ちて沁みを作っていく。
しかし二人の視線は其れを見る事は無く、只相手の眼を見詰めている。
「あむぅっ!はぁっ、はぁっ……!」
どちらだか判別付かないが、快い感触に身を捩らせた時だった。
曲げられている少年の膝の先にスミカの股座が触れて、後ずさるように身体が跳ねると手は繋ぎ合ったまま二人のキスが其処で中断された。
「スミカさん、どうしたんですか?今日は――」
そうは言いながらも宴会の時と違って真正面からキスを受け止めていた――寧ろ自分からも求めていた節のあった――少年が心配こそしていないが多少怪訝そうに尋ねようとしたのだが、スミカは俯いて彼の胸に顔を埋めた。
「今日は……」
「今日は?」
「お前に、その……だな……えっと……」
スミカが口篭りながら握り合っていた手を離すと、抱きつくように少年の背中に腕を回して、自分の方に引き寄せるようにした。
其の所作で彼女が何を求めているか少年はすぐに理解した。
何せ誰あろう自分自身がした事がある上に、また予想が正しければ先程のスミカの戸惑いも裏付けをするものだったからだ。
少年は片手でスミカの背中に腕を回して身体を抱き、彼女の黒々とした艶やかな髪に覆われている肌触りのいい頭に添える。
「――今日は僕に甘えたいんですね?」
そう言うと、スミカは腕の中で顔を見なくてもそうだと分かる、気恥ずかしさを感じている風な様子で頷いた。
おそらく顔は真っ赤になっているのだろう。
「いいですよ。いっぱい、いっぱい甘えて下さい。僕も――嬉しいですから」
普段は自分が甘えてしまっているスミカにこんな風に甘えられると、同時に頼られているような気がして少年は嬉しかったし、彼女の事がとても愛らしく思えた。
掌で頭を撫でると熱が伝わってくる。そして其の度にスミカはぎゅっと彼のシャツの胸元を握る。
そんな風に暫く、泣いている子供をあやすような時間が続いた。
ずっとそのままなので、寝てしまったのかなと少年が思っていると、顔を彼の胸に埋めているままの格好でスミカがくぐもった声を出した。
「……お前の部屋に、行かないか?」
「僕の部屋ですか?いいですけど」
スミカのベッドで就寝を共にするようになってからは、少年の自室は日々のトレーニングをするのと個人の物が置いてあるだけの部屋になっており、そして前まで寝ていたベッドは後は事務仕事をしているスミカの邪魔をしないように昼寝をする為だけになっていた。
だから使えない訳では無いが、何故態々其方に移動するのだろうかと考える。
しかし別に不都合な点は無いので身体を起き上がらせ立ち上がると、スミカも遅れて上体を起こした。
そうして歩き出そうとしたのだが、服の端を掴まれて静止された――されるだろうと予想はしていたが。
「今度は?」
「つれてってくれ……でも、前にしてくれた方ので……」
そう言われたものの心当たりが無かったので少年は考えるように首を捻り、何か思い出す事があるかもしれないと思い、彼女をじっと見詰めてみる。
スミカは身体をベッドの上で横向きに投げ出しながら昂奮と酔いで紅潮させた顔で見上げている、小動物のような弱々しさを持ちながらも、それでいて性欲を煽られる媚態。
少年の本音としては、自分の部屋に連れ込むなんて事はせずに今すぐにも――覆い被さって――服を剥ぎ取り――露になった身体の隅々までをしゃぶり尽くしたい――そんな衝動に駆られているぐらいだ。
欲情を表すように視線だけではなく、ズボンの中で反り立っているモノが更に強い自己主張をしていて、見せ付けられているスミカも時折ちらちらと其方にも眼を遣っている。
思い出すための思索の筈が魔性に当てられたのか、何時の間にかに少年は肉欲を昂らせているだけになっていたが、頭頂から爪先まで舐めるように見ていると、ふと何となしに過去の情景が思い出された――正に劣”情”の光”景”を。
そして一歩スミカに歩み寄ると、撫で回したくなる、すらりと柔らかい線が伸びながらも肉々しい脚の下と、シャツの上からでも肉が締まっていて触り心地のよい背中に腕を回して持ち上げた。
アルコールの混じった甘美な香りと共に撫でるように腕を擽る黒髪がふわりと舞う。
「これで、いいですか?」
少年が肩口に顔を預けるスミカにそう尋ねると、こくんと頷いた。
横抱き――所謂お姫様だっこの格好である。
腕を首の後ろに回せば、もう少し安定しそうだが、スミカの手は彼のシャツの胸元を握り締めている。
以前にもスミカは此の運び方によって、そして少年の手で性交の場へと誘われた事があるが、どうやら気に入ったらしいのは――太腿や背中を撫でられているのもあろうが――昂りが高まっているのを示すように呼吸が荒くなっているのからも分かる。
そして熱く甘い香りのする息が吐かれる度に、服が握り締められている事で露出している胸元の辺りから首筋までを擽られて、其処から背筋を通って腰の辺りにぞくぞくと性感が奔る感触に少年は精を放出した直後のように、ぶるりと身体を震わせる。
またスミカは吸気の度に少年の胸元から、自らが発散させているのと同じアルコールの香りと滲む汗が醸している牡の臭いを肺一杯に取り入れている。
やがて二人は部屋の前に着いた。
スミカが僅かな時間にも関わらず、名残惜しそうにシャツから手を離してノブを捻って扉を押す。
照明の灯っていない部屋の入り口の床の暗闇が切り抜かれ、二人の影が混ざった影法師が浮かび上がっている。
「どうします? 電気、点けますか?」
部屋の扉の枠の所で少年はスミカに尋ねた。
しかし単純に室内が見え辛いから聞いたのではなく、全く違う意図があった。
――光の下であなたの全てを曝け出してやりたい。
突き付けられた扇動は言外の物であったが、確りと伝わっていたようで、スミカは逡巡を見せたが、少年の眼を見詰めてから頷いた。
しかし彼の手は塞がれているのだから、壁にスイッチを押すのはスミカの役割となるので、先程の提示された言葉を新たにするように――期待しながら――壁に手を遣った。
ぱっと部屋が明るくなると、少年は足早に一直線に進み、スミカの身体を祭壇の供物のようにベッドの上に厳かに捧げる。
昂奮が高まっていて力が入らないのか、肉感的な胴体を中心に直前まで撫でられていたり、縋るようにシャツを握っていた四肢はベッドの面積を存分に使うように投げ出されていて、シーツをキャンバスとした絵画のようである。
少年は偶然にも出来た絵を眺めて、塊のような生唾を飲み込むと――其れを肴にして自慰に耽りたくなった。
そういった趣向の絵や写真にしては露出している部分は極めて少なく、また下着の類も僅かたりとも覘けてはいないのだが、こちらに扇情的な視線を送りながら隅々までを見せるようにして身体を横たえているスミカの妖艶さは並大抵の物ではなかった。
ズボンを突き破りそうな程に怒張している股間に気を遣りながらキャンバスの上に乗り込もうとすると、少年は芸術品を穢すような背徳感が包んで、
――どうせなら真っ白に染め上げてやりたい。
殆ど決断めいた心持ちでそうすることを決めたのと同時に、僅かに漏れ出た腺液がトランクスを汚す。
#br
少年が膝を乗せると、ベッドがぎしりと軋んだ。
熱に浮かされて視界毎、ぼやける思考の下に媚びるような眼で見詰めて来るスミカの衣類に手を遣る。
性交を行なうのが初めてでもなければ、相手が幾度も、幾度も其の身体を蹂躙してきたスミカにも関わらず、シャツのボタンを外す手が震えるので――初めての時のように――服を引き裂き、ボタンを引き千切りたいぐらいだった。
「……何度されても、脱がされるのは緊張するな」
彼女を何度も脱がしてきた少年であったが、其れは初めて聞くものであった。しかし、驚きよりも同じ想いを抱いている共有感が嬉しくて「僕も緊張、してます」と返し、服を破りたい衝動を抑え、もどかしさと闘いながらもボタンを全て外しにかかる。
途中、態と手の甲で突き出た白い陵丘を押してみて、其の柔らかさと淫声を堪能してみたりもしたり、敢えてボタンを空けた場所を拡げずに服を閉じたままにしていた。縁が重なっている布を最後に扉を開くように、拓く事で引き裂くのに近い開放感と破壊感を得ようと思っていたからだ。
そして少年はボタンを全て外し終えると、シャツを音がする程の勢いで開け放って――驚いた。
「あ……」
視線をスミカの顔の方に遣ると、一方の肩に頭を傾けており、視線を合わせるのを拒否している。
もう一度、胸部に視線を戻すと、スミカが震えそうな声を出した。
「やっぱり、へ、変か……?」
少年が見たのは、まるで此処では絶対に見る事が叶わないと思っていた――雪景色だった。
普段のスミカが着けている下着の色は黒が多いのだが――というより少年は其れ以外の色を見た事が無い。それでも大人の女性らしい妖艶さが好ましいのに変わりは無い。だが、今日は穢れなき、正に降り積もった雪のような――純白であった。
「スミカさん、かわいい……」
惚けたような声色で少年はそう呟いていた。勝手に口が開いたと云った風に。
今の年齢でそんな事を言われるとは思っていなかったのだろう、スミカは殊更に顔を赤くして、憎まれ口の一つでも叩こうとしたのか、口を開いて下着と同じように白い歯が覘けたが、思い直したように真一文字に唇を結んだ。
「あ……っ」
そして更に何か言おうとしたのだが、其の前にスカートの方にも手を出した少年によって阻まれた。
少年に先程の緊張の色は無く、流石に手馴れた手付きでファスナーを下ろしてホックに手を掛ける。
黒いストッキングに覆われているのも相俟って、頬ずりをしたくなるような滑らかな触感に包まれている両脚を持ち上げて留めを失った大人の女性らしさを存分に醸し出す――少年にとっては、ある種スミカへの憧れの一因でもある黒のタイトスカートを引き抜くと、其処には矢張り純白があって少年は魅入られたように黙ってしまった。
「ど、どうだ……似合ってるか?」
余りにじろじろと見詰められてしまっている上に無言と云うのも相俟って、恥ずかしさが頂点になったスミカが上体を起こして恐る恐ると云った風に尋ねると、目線は同じ高さになったのに視線は身体の方に釘付けになっている少年が矢張り惚けた声で返した。
「かわいいです、すごく……」
「そう、か……もっと……もっと、言って、くれ……」
そう乞われて、漸く少年はスミカと眼を合わした。
スミカが自分に似合わない事をすると特に恥ずかしがる性格だと知っている彼は、其れを押し殺してまでも、自分に見せてくれた彼女のいじらしさを想うと胸が張り裂けそうになり、
「わっ」
「かわいいです、スミカさん、かわいい……大好き、大好きです……大好き……」
唐突に自分の身体に押し込めるように力強く抱き締めながら、何度も耳元でそう囁いた。
其れを聞いているスミカは愛おしそうに少年の身体を抱き返しながら、満ち足りた溜息をほうと漏らした。
「ンっ」
「苦しいだろう、脱がしてやるからな……」
突き出た股間がスミカの身体に触れて少年が喉を鳴らすと、スミカは身体を離して其処に熱い視線を送ってから、シャツに手を掛けてボタンを順繰りに外していく、先程とは反対の立場になっている。
但し、違うのは座って向かい合っているのと、少年が只脱がしていただけなのに対し、
「あ……く……はぁぅ……っ」
「ン……ンン……」
スミカはボタンを外して服が開けていく度に、覘ける素肌に音を立てるように口付けを落としている事だ。
柔い唇が肌に触れて、僅かに吸われる度に身体がぴくりと跳ねる。
少年が仰け反りつつも、一心に、脇目も振らずに自分の身体中を唇で愛でているスミカの頭を褒めるように撫でると、潤んだ瞳による上目遣いで見返され鼓動が高鳴った。
また臍の縁を舌でなぞられた時などは甘い喘ぎが漏れてしまった。
「立って」
「はい」
ボタンを全て外して胴から顔を離したスミカは態々シャツの袖までも抜くと、立つように促した。
其の口調から少年は矢張り普段と違うなと感じていた。いつもの彼女なら、そういうのはもっと強い口調ないし語調であるからだ。しかしスミカに命令されるのも結構気に入っているとはいえ、こんな風なのも悪くないとも思った。
ベッドの上で立ち上がると、ぎしりとスプリングの軋む音が鳴って丁度スミカの目線の高さにテントのように張り詰めている股間が位置する。
具に様子を観察していた少年は、其の瞬間にスミカが物欲しげな眼をしたのを見逃さなかった。
呼吸の為か、それとも別の為にか、僅かに開かれた口に自分のモノを捩じ込むか、若しくは蕩け切った牝顔に擦り付けたかったのだが、甘えてもいいと言った手前、そうは出来ないのが残念な所だっただろう。
そうして少し間を置いてから、バックルと留め具が触れ合う金属音が鳴り出す。
やがてベルトが抜けられ、スミカの手によってファスナーがじりじりと下ろされていき、抑えの無くなったズボンがするりと落ちていく。
そして抑制を一枚失う瞬間、少年もスミカも、殆ど無意識に前に体重を置いていた。
「ふぅ……っ!」
「あ……はぁ……」
薄布一枚越しにペニスと唇が触れ合って、少年が声を、スミカが溜息を漏らした。
唾液と腺液でトランクスの沁みが広がる。
「すごい……おち○ち○……もう、こんなになって……?」
スミカは舌舐めずりでも行い出しそうな、嬉しげな感嘆の言葉を呟きながら形が浮かび上がっているトランクスのスリットに手を入れようとしたが、少年に腕を止められて顔を上げた。
「今日は僕がスミカさんを、気持ち良くさせてあげたいです」
「でも、いいのか? ……苦しそうだけど」
そう言いながらスミカは浮かされたような眼でちらりとスリットの隙間から僅かに覘けている肉棒を盗み見ている。
其の仕草に少年は殊更に欲情を煽られた。
前述したがスミカの指で己のモノを触れて貰いたいし、スミカの舌に舐めて貰いたいと云うのが彼の本音である。だが同時に今直ぐに彼女の身体を堪能したいのも偽らざる本音なのだ。
とはいえ此のままでは跪いているスミカの口に捩じ込んでしまいそうなので、膝に引っ掛かっているズボンを自分で脚からさっと抜いてからベッドに膝を突いた――少し背伸びするようにして。
自然にスミカの目線の位置が戻りながらも少しだけ見下ろす格好になる。そして片方の手を露出している彼女の細い肩に手を遣りながらも、グラスを掲げるかのように片方の手を顎に遣って彼女を見上げるようにさせると、赤い瞳の美麗さは真実カクテルのようでいて、また穢れの無い純粋な輝きはルビーのようだとも思えた。
しかし、その様に美しさを讃える様々な形容が出来るであろうが、宝石などには終ぞ縁が無い少年にはそんな言葉は思い付かなかった――と云うよりも形容する必要、比喩する必要が無かった。
何故なら、彼はスミカの瞳以上に美しい赤を知らないのだから。
そして情欲の炎が滾っているような、宝石にも優る瞳を見詰めながら、少年は覆い被さるようにそっとキスをする。
「ンン……」
唇が触れた瞬間、スミカの肩の力がふっと抜けたのを少年は感じた。其の先にある腕も力無く垂れ下がっているのも分かる。と云うよりは身体全体が弛緩してしまっていて顎から手を離したり、キスをやめれば首の据わっていない赤子のように、だらりと後ろに行ってしまうのではないかと思えた。
だから少年は首を支えるように肩から後頭部へと手を移す。そこで支えているのだからと考え、更に顔を押し込んでスミカの首の角度を更に上げた。こうなると天井を仰ぎ見ているような状態である。
「ン……ンく……」
そうなると少年の口腔から唾液が重力のままに下へと向かい出し――勿論、少年が意図的にやっていると云うのもあるが――スミカは彼の唾液を諾々と飲まされる格好になる。
「ふぅ……」
暫くしてから態と音を立てるようにして少年が唇を離すと、スミカとの唇の間に唾液の糸が結ばれた。
やがて、ぷつりと切れると全てが口腔に飛び込んでいく様と、見上げながら口を半開きにして喘いでいるスミカの口許から顎を伝って流れていく唾液と、目尻に湛えられている瞳が照明に反射して輝いている様は、一層に扇情的だった。
「抱いて……」
見上げながらスミカはそう懇願した。
快感に蕩けた顔での弱々しげな声色の言葉に、彼女の痴態を幾度も見てきている少年であったが殊更にどきりと胸が高鳴った。しかし、其れはときめいたと云うのもあるが,血が一箇所で更に熱くなったからだ。
愛でてくれと云う意味合いだったのだろう。言われなくても彼は其のつもりであったのだが、そう言われてしまうと逆に苛めたくなってしまい、膝を突きながら脚を伸ばしていた姿勢からベッドに尻を落ち着けるとスミカと同じ目線になってから、そっと囁く。
「……犯さなくていいんですか? いつもみたいに」
スミカが性交に関してお強請りをする時は大概が激しさを求めてくるのが多いので、普段の事を思い出させるように揶揄う声色を出すと、彼女は羞恥で顔を真っ赤にした。
「……そんな事、言うな」
「じゃあ、どうされたいですか?」
「……優しく」
スミカは顔を背けながらそう言うと、少年は頬に手を遣って視線を戻させた。
「でも、さっきのでスミカさんの事、少し苛めたくなっちゃいました」
「もう、分かったから……お前の好きにしていいから……」
「好きにしていいから?」
頭を左右に弱く振って視線から逃れようとするスミカを抑えて、少年はじっと力強く眼を合わせる。
抵抗をしなくなり、まるで吸い込まれるように見返しているスミカが小さく言った。
「早く……抱いて……」
最近は色々あって殆ど主導権を握られていた少年は屈服させた事に強い征服感と嗜虐感を抱いた満足げな笑みを――それでもスミカから見れば春風のような微笑を――浮かべてからスミカの両肩を掴む。
押し倒されると思ったのだろう、途端に硬直した身体は宙を舞う羽毛のように、ふわりと緩やかに背中がシーツに皺を作りながらベッドに沈み、遅れて黒く長い髪も矢張り羽毛のように優雅に落ちていくと、隣では白い羽毛が彼女にぴったりと寄り添いながら連れ立って行った。
「ン……」
全てを任せるように全くの無抵抗のスミカに添い寝をしつつ、支えるように背中に左腕を回している少年が伸ばした右手の細い人差し指が、彼女の腹にそっと触れる。
無駄な脂肪は殆ど無く、筋肉質と云う程では無いが充分に締まっていながらも柔らかい肉は、指の形に合わせて僅かに陥没し、触り心地の良いきめ細かな肌が指先を柔く覆う。腹部の上をゆっくりと蛇がのたうつよう這わせても柔く包まれるのは、愛撫をしている側の彼にとっても指をしゃぶられているようで心地良い。
最初は一本だったのを、二本、三本――と次々と増やして指達に極上の肌触りを堪能させた後は掌全体でスミカの左脇腹辺りを包む。
「あ、ン……」
昂奮で火照っている手との温度差に依って、存分に”触れられている”事を知覚させられて、スミカは小さく声を漏らした。肌という器官を愛でるように撫でられる――正しく愛撫されて身体が弱く波打つ。
スミカは眠るように目蓋を瞑った。劣情の視線が発する熱を目蓋の中で篭らせて。
其れも仕方無いであろう。眠るのを見守られるように腕に抱かれて添い寝をされながら撫でられているのだから。但し、撫でられているのは頭ではなく身体で――そもそも意識は覚醒しているどころか、視線をひしひしと感じる程に鋭敏になっているが。
「ひゃう……やぁ……」
脱がされた際の身体へキスされたお返しと云う風にスミカの臍の縁をなぞり、其の円の下から続く線を真っ直ぐに辿ってショーツのレースに触れて、手を其のまま布の中に潜り込む――ように思わせておいて、少年はショーツの縁を辿っていって側面に手を落ち着かせる。
括れた腰の稜線から上へとゆっくり手を波打たせてスミカが擽ったそうに感触に身体を捩らせたが、
「ふぅ……はぁ……っ」
其れが心地良いのだろう。
時に身体の前面に戻るように、時に背中の方へ進むように暫く蛇行させていくと、じっとりと肌に汗が滲み出していて、首筋に顔を近づけると芳香が漂ってくる。暗闇の中、だらしなく半開きになっている口から吐息を漏らして愉しんでいるスミカの眼を盗んで少年が純白に包まれている彼女の乳房に眼を遣ると布地が丘のようになっていて、また股間の方をそっと覗き込むと積もった雪原を踏み荒らしたような”跡”があった。
「はンっ……はぅ……」
少年は先ず、丘の方から文字通り着手した。
スミカの左胸をブラジャー越しに下から上へと押し上げるように揉みしだくと、さらさらとしたレースの質感の向こうにある肉の柔らかさ、張りの良さで押し返される感触、そして掌をつんと突き上げてくる固さが同時に襲い掛かって来る。
「あっ、あぁっ! ン……あンっ!」
緩急を付けながらブラジャー越しにだけではなく、カップが隠しきれていない白い乳房を指先で撫で回したり、力を加減して布地がずれるようにしてレースの紋様に乳頭を擦り付けるようにしつつ、充血している乳輪を僅かに覗いたりしてスミカの胸を堪能している。
すると少年は彼女に「スミカさん、腕上げて……」と言った。スミカは意味を考えずに――快感で思考が碌に働かないのもあるが――乞われたままに腕を上げると、少年は曝け出された脇に、まるでフェロモンに誘われる蛾のように顔を近付けていって、
「ひゃっ! こら……そんな、ところをぉ……っ」
「スミカさんの汗、美味しい……」
脇から上腕の裏を舌でべろりと舐め上げて滲んだ汗を口の中に収めた。
其処を舐めたのは始めてだから、確り処理していて産毛の一本も生えていない、つるりとした感触に新鮮味を覚えつつ、少年は舌が触れた瞬間のスミカの反応にも興味を覚えながら、一旦、胸から手を離した――かと思いきやブラジャーのカップの中に手を潜り込ませ、捏ね回すように乳房を弄びながら――
「うぅンっ、あぅっ! ……なめ、るなぁ……あぁンっ!」
「ン……気持ちいいですか?」
ちろちろと蛇がそうするように舌を小刻みに動かして脇の窪みを刺激しながら尋ねる。喘ぎ声になって答えこそ聞けないが、成熟しながらも初々しい身体が魚のように瑞々しく跳ね上がったので聞くまでもないだろう。気分が乗ってきている少年は重ねて問うた。
「ここ、感じますか?」
だがスミカは其処を初めて舐められたのが恥ずかしいのか、顔を背けて答えなかったので、
「やぁんっ! だめぇ……!」
「――感じてますよね?」
少年は充分に屹立している乳首を捻り上げて甲高く喘がせる事で、口を開きやすいようにしてやった。目尻の端に水滴を光らせるスミカの眼にじっと視線を合わせながら「スミカさん?」と名前だけに省略した問いを続ける。
「……か……感じて、る……」
「こんな所……っん、舐められてるのに?」
「だってぇ……お前の、きもち……くぅっ! ……いい、からぁ……!」
――抱かれる腕の中で――摘んでいる指の先で――振動する舌の先で告白するスミカの身体が跳ねる。
其れを聞いて満足した少年は眼に喜悦の色を灯らせると、褒美をやると言いたげな風に、
「きゃっ!」
ブラジャーのカップ同士を繋ぐベルトを掴むと、剥ぎ取るようにして擦り下げて、僅かに紅色に染まる白い乳房を露出させた。其の拍子に昂奮で血が巡って張っていながらも弾力によって上下に波打たれ、宙に桃色の薄い軌跡を描いた。
揺さ振るように劣情を煽る躍動が自然に落ち着くまで眺めていた少年は今はトランクスの中に収まっていながらも滾って布越しにスミカの太腿に寄り添っている自分のモノと同じように、痛々しげに勃っている突起を気遣う。
「あっ! そ、そこぉ……っ!」
右のを指先で摘んで撫でるように優しく上下に扱き、左のには優しく口付けをしてやると、スミカは嬉しそうに声を漏らした。だから少年は「スミカさん」と呼ぶ事で自分に注意を向けさせると、背中に左腕を回したまま少し身体の位置を変えて向かい合うようにする。
そして獲物を喰らおうとするかのように口を開いて、乳房にゆっくりと顔を近付けていく――見下ろしている彼女に、今から行なう事を見せ付けるように視線を合わせながら。其の期待を秘めた眼を見詰めていると、どくどくと高鳴っているであろう鼓動まで聞こえてくるようだった。
「――はぁっ、ンっ!」
そうして少年は柔肉に齧り付き、訪れた生暖く包まれる感触にスミカは高らかに声を上げた。
半分も口の中に収まらない乳房は僅かに触れるだけながらも擦れて引っ掻いてくる歯の硬質さに驚いたように震え、逆に柔らかいながらも乱暴に這いずり回る舌を圧し返す。
表面を包んでいた汗と甘く香る体臭に味付けされていた肉の芳ばしさ、そして舌触りをもっともっと感じたく、少年は口中を真空にするようにして更に乳房を口の中に入れようとし、また其れをし易いように身体をじわりじわりと摺り寄せると、スミカの太腿を二枚の布越しに肉棒の先が何度も小突いた。
彼自身も自覚している性癖に、女性に肉体に自身のモノを擦り付けて射精すると云うのが挙げられるが、今正に其の状況が整っているスミカの太腿で其れをしたかったのだが――、
「あぅぅっ!もっと、もっとぉ!」
快感に耐えかねてシーツなどを握り締める代わりに、髪の毛を掻き乱すようにしながら――スミカにとっては愛撫は勿論、さらさらと逆に腕を撫で返してくるような真っ白な髪の触り心地も快かった――乳房に押し付けるように自分の頭を抱いてくるスミカの媚態を受けていては、其れよりも愛撫を優先せざるを得なかった。また其れをするだけの甲斐もあったのだ――
「あふっ! あぁン! あンっ!」
――熱烈なキスをするように顔を左右に振るように動かして、自らの口許を頬まで自らの唾液で汚しながら全体を舌先で弾き――
「はぁ! あはっ! ンっ、ンっ!」
一旦口から解放して乳房を震わせると、また一気に肉全てを吸い上げるようにしながら喰らい付くのを繰り返し――
「やっ! 吸われ、て……やぁぁっ!」
――窄めた口吻で挟んで乳首を吸引しながら――また隙間に舌を挿し込むようにして、つんつんと先端を突きながら――抱き付いてくる腕を振り解くようにして頭を持ち上げながら先ほどからの嬲りで肌が赤らんでいる乳房も引っ張り挙げられていく。
また其のようにしつつも、指紋を焼き付けられてしまうと思える程に、もう一方の乳房の突起を只管に摘み、扱き上げている――。
出来る限り手を替え、品を替える度にスミカが如実に悦んでくれる事、そして蕩けた嬌声が聞こえる度で少年も悦びで心を震わせていたのだ。
「はぁぁ……だめぇ……きもちいい……」
抱いていた頭が離れていってしまったからか、スミカが片手は頭の傍のシーツを、もう一方は自身の乳頭を弄る手を掴んで縋っている中、少年が引き摺り出すように吸い上げているものを口吻の隙間から僅かに口中に引き入れて前歯で優しく噛んだ時だった。
「――っくぅぅぅぅ……!」
搾り出すように声を上げながら俄かにスミカが身体を跳ね上げたと思ったら、波打たせるように痙動し続け、手跡が付くほどに腕を握り締められた。また震えているとはいえ、掴んでいるシーツと同じように背筋がぴんと張り詰めてもいた。
そして其の時は彼女も少年も気付かなかったが、また雪景色に酷い”跡”を刻みながら――。
「はっ、はっ、はっ……はぁ……はあっ!」
目蓋を瞑って、緩んだ口許から息も絶え絶えと云った風にスミカが喘いでいると、少年が顔を覗き込んだ。
心配そうに、と云えばそうも見えるだろうが、其の意図は寧ろ全く逆である。
しかしそれでも――、
「スミカさん、どうしたんですか?」
息苦しそうにしている人間には正に相応しい言葉を掛けた――但し、顔には微笑を張り付かせて。
勿論、幾度と無くスミカを抱いてきた――また、同時に何度も抱かれてきた――少年には答えを聞くまでも無く、そもそも質問する必要すら皆無であったのだが、スミカは目蓋を開けると室内だと云うのに僅かに白んでいる吐息を吐き出しながら、
「……イッた……」
自分の心身に知らしめるように、そして見下ろしている少年に知って貰うために静かながらも、媚びた声色でそう言った。
其の淫らな言葉に、ベッドの上で脱力している様子に、またもぞくぞくと背筋を奔る物を感じながら少年は確認するように口を開いた。
「おっぱいだけで、イッちゃったんですか」
そう言った途端、頬が勝手に吊り上がって、無意識であるが自身でも分かるぐらいに、邪悪か、若しくは獰猛な笑みを浮かべているのを知覚していると、スミカが脆弱な声で「……うん」と応えてから、
「……気持ち、よかった」
殆ど少女のような其の言葉を聞いて少年は改めて思った。
スミカは虐められて悦んでいるのだと。
と、同時に言い訳ではなく、雰囲気やアルコールのせいであると断言できるが、自分も調子に乗れている事が空恐ろしく思えた。普段ならこんな事言えないだろうなと。
そしてまだまだ此の役を降りるつもりが自分の細い髪や――尻尾の毛先程もない事に。
「ここが――」
「やっ! だめぇ……っ」
「――ここが、気持ち良くてイッたんですよね」
「敏感になってるからぁ……触るなぁ……ぁあぅっ!」
絶頂を迎えたばかりなのに痛い程に鋭敏な、唾液に塗れた方の突起を摘まむと、スミカは嫌々と言いたげにかぶりを振る。しかし、まだ余韻による放心に囚われているせいで拒否出来ずにいるのを良い事に――それにしたって抵抗の気配が弱いが――感度よく反応してしまう身体の様子を少年は鑑賞している。
撫でれば甘く鳴いて緩やかに悶え。摘めば切なさそうに泣いて激しく慄く。何度聞いても見ても飽きそうに無い素晴らしい声と肢体――自分だけの淫らな玩具を。
身体から手を引き離そうとしているか、それとももっと押し付けようとしているのかも判別付かない程の脆弱さで腕を握られ、少年は案外聞き分けよく、季節外れに紅葉している陵丘から手を離す――但し、乳を搾り出すかのように一際強く扱き上げながら。
堪え切れない刺激が途切れた事で――その瞬間に彼を見詰める眼に何処か物寂しげな色を灯していながらも――安堵の溜息を吐いて、スミカが一息呼吸を整えようとする。
しかし、其れも束の間だった。離れた手は真っ直ぐに下に向かっていって――、
「はぁぅっ!」
雫を上に飛び散らせながら、スミカが弓を引くように背筋を仰け反らせた。刹那、宙に放り出された水滴が跳ねながら肌の上に微細に散りながら戻っていく。
しかし跳ね上がった背中はベッドに沈む事なく、そのまま宙に浮いていた――細いながらも、締まっていて男の香りを発散するように汗ばんでいる腕に抱かれたまま。
「スミカさん」
「はぁ……ンっ……な、に?」
「スミカさんって、下着の上から触られるの好きですよね」
喘いで揺れる身体を上から下まで掌中に収めている少年が、一回達した事で疼いているであろう秘所を――と云うよりはショーツに広がる楕円の沁みだけを柔く撫でると、指先がぬるりとした滑り気に覆われた。
「……そ、そんな事」
「そうですか? さっき皆に話してましたよね。前に皆と食事中に僕がスミカさんの此処を触った事。その時ですけど――ここ、すごく濡れてましたよ」
最後の部分を顔を寄せて鼓膜を直接震わせるようにして、そう言うとスミカは拗ねたように、ぷいと顔を背けてしまった。矢張り反応が楽しくて少年は思い出噺のように語り出す。
「あの時のスミカさん……可愛かったな。声を出すの必死に我慢していたり、触る度に身体がぴくんってしたりして……でも声はちょっと漏れちゃってましたね。それに――フォークを咥えながら溜息を出したのは、とても可愛かった」
「あっ……やぁ……」
少年は語る事で、そして語りながら其の時と同じようにショーツの上から秘唇を撫でる事でスミカに追体験をさせると、触っている所為もあるであろうが、効果ははっきりと現れた。
乳房や腹を撫でていた時と同じように身体が震わせながら――それでも比べると頻度は多く、揺れ幅は強い――抑制した嬌声が漏れると、指先に感じる湿気がどんどんと強くなって、卑猥な音が聞こえ始めた。
「あの時も感じていたんですよね?」
「違ぁ……」
抱きかかえている所為で背けている顔を正面から見る事は出来ないが、其の分だけ耳朶まで真っ赤になっている耳は差し出されている様を呈しているので囁くには好都合だった。少年は否定されたので純白の下にあるラビアの隙間に沿って愛液に塗れた指を沁みを拡げるように、つつと滑らせていき――
「嘘は駄目です」
「――ひぃぁあああっ!」
ショーツを押し上げながらツンと反り立っている突起物を布ごと摘んで捻り上げた。
其れまでは柔く訪れてはさっと引いていくようであった小波が一気に高波と化して神経を駆け巡る。
突如として刺されたような強い刺激にスミカは大きく口と目蓋を開きながら驚いたような嬌声を高らかに上げて、再び背を仰け反りながら跳ねた――今度は少年の腕の中で、何処にも行けないように抱き締められながら。
陰核を摘んでいる少年の人差し指の爪が繊維を貫いて噴出した淫液にコーティングされていく――。
「はー……っ、はぁー……っ、あ……あン……」
無意識の内に更に高い位置まで跳ね上がったスミカの身体を少年がその場に保持している格好は、背中を支えるために回されている腕はそのままで、尻がベッドに着いているのと、脹脛の下で支えていた腕の指が違う位置にあるだけで彼女を此処まで運んできた横抱きと殆ど同じである。
過ぎた快感に襲われた事、そして今も尚続いている事を、少年は重々承知しているので、痛んでいる箇所にするように秘所を撫でていて――其れの所為で余韻が中々収まらないのも理解している――赤子のように身体を丸めたスミカが吐いている喘ぎが混じる熱い吐息に胸を擽られながら、水が掛けられたように水分を含んでいるショーツから手を離した。
「スミカさん」
「……はぅ……何だ……?」
「あの時も感じてたんですよね?」
そしてスミカが二回目の絶頂を迎える前にした質問をもう一度した――と、同時に既に二回達している事で彼女も相当に気分が盛り上がっているのだなと考えた。
「……感じ……てた」
「どうしてですか?」
「皆の前で、触られていると思ったら……すごい……興奮して……」
途切れ途切れであったが媚びるように上目遣いをして素直に問いに答えた事を褒めるように頭を抱き寄せて黒い前髪の上から、そっと額に口付けを落とす。
「ン」
スミカが嬉しそうに喉を鳴らしたのを聞いて少年はまるで仔猫のように思え、額から頬へと同じ場所に何度か触れながらやがて口にも触れた。開かれている眼に何度も吐息が掛かってルージュを塗ったように湿り気を帯びている艶かしい唇が映る。応えるように下顎と共に突き出されている唇を割って舌を挿し込み、肉そのもののような内側を撫でると擽ったかったのか、スミカは喉声を漏らしながら身体を捩ったがキスを止めて欲しくないらしく頭だけは動かさなかった。
「ふぁ……ンむ……」
その内にされるがままだったスミカも、唇の内を舐めている舌に盛りの付いた牝猫のように擦り付いて来た。
しかし少年は敢えて無視して口腔の中を舐めるのだけに注力している。だが諦め切れないのか、尚も絡み付こうとしてくるものの無理にしてくる事はなく、あくまで強請っているような低く弱い姿勢である。だが少年からすると舌をつんつんと触れるだけの感触も心地良い。
ふと視線を感じ、唾液に濡れて更に淫靡さを纏った唇からスミカの眼の方へと視線を上げると、先程まではうっとりと甘受するように瞑られていた目蓋が開かれて、矢張り強請る眼をしていたのが眼に入った。
しかし今、完全に主導権を握っている状態を愉しみたい彼は、其れも無視して下の裏側を曝け出すようにしてスミカの上唇の内を舐める。
二つの懇願を無視された訳だが、それでもおずおずと彼女は舌同士を触れさせると、
「ン」
少年が喉を鳴らす。
しかし何によって感じたのか分からなかったので、スミカは伺うように彼の眼を見詰めると頷きが返って来た。
――そのまま、しろ。
其れはそう云う意味だと理解し、上に向かっている舌の裏側を舐めると正解だったようで少年は更に声を漏らした。
「ふぅ……っ」
スミカが自分の意図した通りに取った行動による性感で少年は気持ち良さげに溜息を漏らす。彼が何をさせたかったかと云うと聳え立つモノを舐めさせる事――つまりペニスの代わりに舌を見立てた口淫である。
スミカは普段している通りに――普段の少年ならば”してくれる”と表現する――裏筋をちろちろと舌先で擽っている。
我乍ら良く出来た見立てだと少年は思った。口淫で特に感じる場所として亀頭と包皮を繋いでいる裏筋が挙げられるが、舌と口蓋を繋いでいる筋が其れにそっくりなのだ。それに陰茎にしても舌にしても裏側は刺激が少ない場所だから敏感なのも似ている。
スミカも其の意図を理解したらしく、したかった熱烈なフレンチ・キスの代わりと云わんばかりに、少年の背中に腕を回して自ら抱き付きながら普段のフェラチオ通りに舌の動きに徐々に熱を入れ始めた。
上を向いたままで動かぬ舌の根元から舐め上げたり――中間の広がっている所を覆うようにしたり――側面を撫でながら表側に回っていくようにしたり――先端を突いたりしている。
「はぁ……」
唾液の量が増して、ぬちゃぬちゃと淫靡な音が口蓋に染み渡っていくのを感じながら、唾液の甘みを味蕾で味わいながら少年は満足げに声を漏らしてスミカの頭を撫でる。褒められて嬉しいのか、掌が髪の上を往復する度に奉仕に力が入っていくようで、其の都度、性感が増していく。
しかし浮遊しているような心持ちの彼の心に対し、最初から彼女の口の中に挿いりたがっていたが舌に其処を占領されてしまっているペニスは不満を訴えるようにトランクスの中で――それでも頭蓋から背筋を通ってくる快感の波に攫われて先端から惚けて涎を垂らすように汁を垂らしながら――跳ね回っている。
すると少年はされっ放しである事に気付いた。
奉仕をさせている格好であるとはいえ、何処か悔しいので持て余している右手でそっと腹に手を置くが、口淫に夢中なスミカは意に介さない。反応を期待していた訳ではないが、二三度さらさらと撫でて(じゃあ、ここならどうだ)と考えて――
「うぅぅんっ!」
純白のショーツの中に手を突っ込んだ。唇を塞いだままでスミカがびくりと身体を硬直させた。
熱と汗と愛液で不快なのではないかと思える程に中は蒸し暑く、ショーツがたっぷりと吸い込んだ滑り気が手の甲を多い、下腹部の肌を撫でた際に、そして湿気でしな垂れた繁みを掻き分けた際に触れた水分が指先を濡らし――坩堝の如く熱が灯っている秘裂が情熱的に指を受け容れた。
「ふぁっ、やンっ!」
濡れたラビアにしゃぶらせるように浅く挿し込んだ指先を小刻みに動かす。淫液が攪拌される音が立って、じわじわと迫る性感に耐え切れないと云った風にスミカが口を離すと、少年が今も弄っている秘唇と同じように粘ついた体液が糸を紡いだ。
ショーツの中で聞こえるかどうか分からないぐらいの小さな淫音を立てながら、少年はしがみ付きながら、身体を震わせながら自分の胸に頭を預ける彼女に弄っている場所の事を教えてやる。
「――おまん○、びしょびしょですよ。指がふやけちゃいそう」
羞恥を感じたのか、抱き締めてくる腕の力を強くしながらスミカは更に顔を埋めた。血流の巡りが良くなっている上に昂っている全身は火照っているのにも関わらず、胸板に触れている頬の熱さが伝わってきて、熱い吐息が乳首を擽っているのも分かる。
「エッチな音がしてるの、聞こえません? ほら」
「知らない……聞こえない……っ!」
態と音を立てるように指の抽迭を早くしながら確信犯的に尋ねると、スミカは拗ねたように唸りながら抱き締めると云うよりは身体を腕で締め付け、聞こえない、分からないと何度も主張した。勿論、攪拌音は彼女の身体から発せられている訳だから関節の鳴る音や心臓の鼓動同様に――皮膚を――肉を――骨を――細胞を通して聞こえているのだから、フリである事は考えるまでも無いが、少年は其の言葉を信じる事にした。
――分からないなら教えてあげないと。
自分でも意地悪いと思いながら、そう考えて、スミカの耳元に口を寄せて――
「こんな感じの音ですよ」
「ひゃぅ……っ!やぁ、やめぇ……ぁン……っ」
火で熱せられたような耳朶を冷やすように一舐めしてから、たっぷりと舌に唾液を塗してから耳穴に挿し込んで抜き差しを繰り返すと、唾液が塗り付けられた耳道が往き来する肉厚の舌と擦れる度に下から鳴っているのに似た粘音が立つ。
幾ら聞こえないフリをしたとしても眼と違って耳を閉じる事は出来ない。
だからスミカは音から逃れる事は出来ず、逃げようとしたが快感で身体が硬直した天を仰ぎ見るように仰け反っている体勢で一つは耳から遠い場所で、一つは鼓膜に直接届くように――音に強姦されている。
「あ……あぁ……っ!」
スミカが身体を捩っている内に少年は熱い蜜壷に二本目の指を挿入した――すんなりと挿った事は挿れられた本人も自覚していて。
だが其の割には嬌声が薄かったのは、音の方に意識が回っていたために外観の反応が小さくなっていたのだろう。証拠に液体で既に充満していた上に異物を挿れられた所為で、少年の指の付け根から掌や甲にまで垂れて手を汚した程に蜜は溢れかえっていた。
「あ、あ、あ、あぁ……イク……イク、イク、イク、イクっ……あっ、あぁん……っ」
耳道を嬲る舌が立てて脳髄を犯す音で。そして態と――ではなくヴァギナを弄る序でに更に強くなった愛液の淫音と膣壁を掻き回される直接の快感が入り混じっている所為か。スミカは絶頂間近でがくがくと全身を震わせているのにも関わらず、まるで放心しているような力無い声で喘いでいる。
そして少年は舌も、指も抽迭を止める事無く、寧ろ激しくしながら、快感の大動脈となっているスミカの背筋を流れている物の勢いを促すように、指先でつぅっと撫でた瞬間――
「――イっ、クぅぅぅ……っ」
声だけでそうとは知れないような声量を上げ――それでもスミカは全身を隅々まで電流が奔ったように痙攣させて秘所から音が立つ程に派手に淫液をぶち撒けながら――意識を彼方に浮遊させた。
力が抜けて凭れ掛かってきたスミカを少年は震える子供を安心させるように力強く抱き止める。彼女は腕の中で幾度も強弱を付けるように跳ねて、その度に下腹部を包んでいる純白のショーツと白い掌に熱湯を何度も何度も吐き出すのだった――。
「はぁー、はぁー……はぁ……」
スミカが絶頂の強い波が通り過ぎて夢心地のような余韻に浸っていると、少年はショーツの中から液体が滴る手を抜き取って顔の前に運んでいく。其の最中に何滴も雫が垂れてシーツに沁みの跡を点々と残した。
そして照明が反射して輝いている指先を口に含む。
「ン……」
先ずは口腔を通った甘く強い牝の芳香が鼻腔を擽った。次いで舌が舐め取った潮は先程舐めた汗のように塩気があったが、其れがスミカの陰部から出されたのだと思うと、また違った物に感じられた。
指を口から出すと、次は滑り気を帯びながら、てらてらと輝いて線を引いている掌や甲に舌を這わす。粘り気のある愛液は舌に絡み付いてくるようで、スミカとのディープ・キスの感触が思い出され、唇に貪り付いて来る彼女の顔も浮かび上がった。
ぜいぜいと喘ぐスミカを胸に抱きながら少年は彼女の淫液をたっぷりと堪能しながら名を呼ぶと、惚けた顔で見上げてきた。
「な、に……?」
「はぁ、スミカさんの……美味しいです」
するとスミカはまた恥ずかしげに顔を唸りながら俯くと「……馬鹿、野郎」と怒りながら弱々しく胸板を何度か拳の底で叩く。しかし少年が其れをも受け止めるように抱き直すと、やがてスミカは握っていた拳を開いて掌を胸にそっと添わせた。
「汚れちゃったでしょう?脱ぎましょうか」
「あ……ああ、そうだな……」
ひしと身体を寄せているスミカに少年がそう言って役に立ってはいないけど、身体にくっ付いているままのブラジャーのホックを外してやると、彼女はころんとベッドに転がる。其の拍子に露になっている双陵が跳ねたのが彼には魅力的だった。
少年はベッドの上を膝立ちで歩いてスミカの足の先に移動すると、視られるのが恥ずかしいのか、少し立てられている膝が内向きに寄せられている所為で、丁度”其処”は視界から遮られる。
しかし彼は自ら手に掛ける事はせず――
「スミカさん。脚、開いて」
語調は柔らかいながらもはっきりと命令すると、スミカは「あ、あぁ……」と殊勝な様子で従って、おずおずと膝を伸ばした。そうすると当然、先程まで手を突っ込んでいたショーツが少年の視界の中に現れた。
其れがどんな状態になっているのかは履いている本人も充分に分かっているのだろう、肩に頭を預けるようにして顔を背けている。
「こんなに――なっちゃってたんですね」
驚いているように言いながら、そうさせた本人が水分を吸い込んで色の変わってしまったショーツの股布をじっくりと眺めていると、怒ったようにスミカは声を上げた。
「分かったからぁ……!早く……」
「早く?」
「……脱がせ、ろ」
「一人じゃ脱げないなんて、赤ちゃんみたいですね」
まんまと乗せられたスミカは悔しげに、微笑んでいる少年から紅潮している顔を逸らした。しかし可愛いと言われたのは嬉しかった――のだろうなと少年は予想する。
そしてやっと脱がす気になってショーツの腰紐の縁に手を掛けようとして、ある事に気付いた。
「わ……すごい」
「ん……? あ……これは……お前が気に入ってくれるかな、と思って」
ずっと前面から見ていなかったので気付かなかったのだが、スミカは下着を履いているのにも関わらず――臀部が極端に露出していたのだ。所謂Tバックと云う種類である。
殆ど全てが露になっている尻肉を横に引っ張れば覗けてしまいそうな程に、肛門を隠している部分も紐のように細い。
少年が下半身をまじまじと見詰めていると、伏し目がちになったスミカが尋ねた。
「こう云うのは……あまり好きじゃないか?」
「え?い、いえっ! とんでもない、大好きです!」
そう言ったが見惚れていて慌てて答えたので多少誇張されていた、言葉の綾と云う奴だったのだが――勿論、好みであるのは事実だが――スミカはそのまま受け取ったらしい。
「大好きって……こんなの何処で見たんだ?」
「え? それは……」
当然、メディアを問わずに”そう云う”のが載っていた物であるため少年は口篭った。流石に恋人の前で口述するのはどうかと思ったし、単純に恥ずかしかったからだ。
するとスミカは「ふぅん」と何か含んだ声を上げる。
「お前が何を見たとしても構わんがな」
「ち、違います! ――違わないのかな――あ、そうじゃなくて」
たどたどしく弁解したのだが、一回目、二回目は羞恥のためだったが、今度は不機嫌によってスミカは顔を逸らしてしまった。だから少年は臭いかなと思いつつも、ベッドを軋ませながら頭の横に手を突くようにして覆い被さった。
「スミカさんが僕の為に履いてくれているから大好きだって言ったんです」
「本当か?」
「当たり前です」
盗み見るような横目だけで視線を送ってくるスミカに対して、少年の方は眼に力を籠めてそう言う。
するとスミカは一拍間を置いてから肩を震わせて――
「……っぷ、くくく……あははは!」
実に愉しげに笑い出した。呆然とした風に少年が其の様子を見守る。
「くっくく……ムキになって。可愛い奴だな、お前は……分かっているさ、そんな事、言われなくたって」
揶揄うような言葉、そして眼で見られて謀られたのだと知った少年は、僅かに紅潮した顔を寄せて唇を奪う。
「――今の分も虐めますからね」
「……ああ、いいぞ……私を、虐めてくれ」
スミカが直ぐに眼に媚びるような色を戻しながらも誘うような冷艶さを滲ませているのを見て、少年は躍らされている気がしたが、それはそれでいいと思った。例え此の先、今のような恥を晒すとしても腹の底で燃え上がっている情欲の黒い炎に包まれる、ぞくぞくとするような満足感に比べれば、そんな物は安い対価だと思ったからだ。
「腰、浮かせて」
少年が腰紐の部分を取りながらそう言うと、スミカは言われたままに足を支えにしながら腰を浮かして、ショーツを取り易いようにした。其の時、ちらりと見えた僅かな面積だけに覆われている股座の部分が垣間見えて、期待が募る。
黒に包まれている脚を純白が辿っていく。光沢が掛かっている麗しい線をなぞる様に。黒越しにはっきりと見える桃色の爪の上を通って、少年の手中に其れは収められた。水分を、そして彼の期待をじっとりと吸い込んだショーツは布切れだと云うのに、重さすら感じる程だ。
ショーツを脱がせたが視線は後の為に其れしか視ていなかった少年は、万感の期待を込めた視線で今しがた辿ってきた脚を逆行していき、やがて其処に視線を停留させると、早速と言わんばかりに無遠慮に手を伸ばした。
遠慮をする必要も無かった。
何故なら其処はスミカのモノでもあり――彼のモノである。
「はう……っ!」
濡れて萎びれている性毛を冠り、撒き散らした潮と垂れ流した愛液でぬらぬらと輝く秘所に触れると、スミカは身体を反らせた。先程の嘲りも何処かに消え失せたように成りを潜めて、其処には嬲られるのを待つだけの牝が横たわっていた。そう考えるだけで少年は虐めたいと思うどころか、壊したいとさえ思った。
揃えられていた脚に手を遣って中心が良く見えるように股を開かせると、ぬちゃりと淫音を立てて三本の指に絡み付いた液体を見ながら、喜悦を表すように頬を吊り上げる。
「こんなに糸、引いてます」
「やだ……見せるなぁ……」
粘つきの具合を確かめるように揃えた指をラビアに押し込むように触れて愛液を染み出させて、ゆっくりと離していくと糸が紡がれていく。頭には手が届かないから無理に見せている訳ではないのに自身の股座に視線を送っているスミカに見せ付けるように何度か同じ所作を繰り返していくと、指と秘所の間に太細様々な何本もの筋が出来た。
「見て下さい。水飴みたいですね」
例えを出して茶化すようにそう言うと羞恥心が極まったと云う風にスミカは腕で顔を覆ってしまった。
だが視界を自ら遮った事は寧ろ更に羞恥を駆り立てる結果を招く事になった。
「……あぁっ!いやぁっ!」
「見えないフリしたって駄目ですよ、これだけ音がするんだから」
自らの身体が奏でている不可抗力の音が晒される。
少年が秘唇を小刻みに柔く、早く叩いているのだが、其の所為で猫が水を飲んでいるような、ぴちゃぴちゃと水が跳ねる音が断続的に立っているのだ。
疼きに疼いている身体の中でも最も敏感な場所への責めであるが、其の細微な刺激は余りに物足りない、それでも性感が募っている事を少年は分かっている。理解しながらもスミカに声を掛ける。
「ここ、気持ちいいんでしょう?」
「何、を……」
「気持ちいいなら、そう言って下さい。良くないなら――止めますから」
「そん……んぁっ!はぁ……っ!」
音の頻度を多くするように指を打ち付ける速度を速めると、スミカは悶えるように腰をくねらせる。小魚の群れが水面で跳ねるような音が響く中で、やがてもっと強い物を求めるように彼女が腰を浮かせそうとした時、実に残念そうな声で少年は言った。
「言わないって事は良くないんですね?じゃあ――」
「ま、待ってぇ……!……いい、から……気持ち、いいからぁ」
「気持ちいいから?どうして欲しいんです?」
「止めないで……もっ、と……もっと、おまん○、お前に触って欲しい……」
スミカが腕で顔を覆ったまま発した淫らな言葉による懇願を聞き、そして腰を遣い出したのを視て、少年は頬が引き攣るのを止められなかった。
「……でも、ごめんなさい。スミカさん」
彼が口惜しげな声で謝ったのを聞いてスミカは「え……?」と反射的に聞き返す声を漏らした。
「もっとしてあげたいんですけど、さっきからずっとスミカさんを触ってたから手が疲れちゃって」
少年は言外に何回も彼女だけ果てた事を言及すると、スミカは意図に気付いたらしく、顔をさっと赤らめたものの、気を取り直したかのように「そ、そんな……」と非難めいた言葉を上げたようとするのを彼が遮る。
「だから、手じゃなくて……」
少年は開かれていて垂れ流れた愛液でシーツに沁みが滲んでいる股の間で、もぞもぞと動いてから中腰になると、スミカは熱い視線を投げ掛けながら甘い溜息を漏らした。
「”こっち”でいいですか?」
腰をぐっと突き出して、解放される事を今か今かと待ち望んでいた肉棒を見せ付ける。
我慢に我慢を重ねていた性器の先端から其れを証左するような腺液が糸を紡ぎながらスミカの下腹部の上にぽたりと落ちる。恍惚とした表情からの殆ど羨望に近いような視線を熱く反り返ったモノに注がれるのを感じ、少年はスミカの手を取る。
「これ、欲しいですか?」
熱く滾ったペニスを握らせて尋ねながら、彼女の掌に腺液を塗すように上下に扱き上げると皮膚と擦れて、ぐちゅりと音が立つと彼の背後で嬉しそうに尻尾が左右に揺れた。
しかしスミカは質問した彼に眼を合わせる事は無く、尚も熱に浮かされたような眼で握らされているモノを見詰めている。
「うん……欲しい……おち○ち○、欲しい……」
寝言のような芯の入っていない声でそう囁きながら、スミカは自ずから先端までもを包むように肉棒を扱いている。其処から奔る性感を待ち望んでいたからか、そのままスミカの手を道具にして果てたくもあったが、少年は腰を引いた――名残惜しそうに細い指が追うように伸ばされた。
「じゃあ、いきますよ」
「んんっ……挿れて、くれ」
秘唇に陰茎を扱かせて全体に万遍無く潤滑液を塗してから、膣口と鈴口をキスさせたまま止めた少年が顔を上げるとスミカは性器同士が触れ合う感触に嬌声を漏らしながら、期待を募らせた声で応えた。
そして少年はそのまま前に体重を乗せ――ようとしたが何かを思い付いたように、何時でも挿入出来る状態を保ったまま股の間に居たのからスミカに覆い被さると、力強く眼を合わせた。
期待による興奮もあろうが突然にそんな事をされてスミカはどぎまぎしている。
「スミカさん」
「な、なんだ?」
そうして長いような、短いような。暫く視線を絡ませる一拍の間の後、少年は一言だけ言った――。
―――愛してます。
「え――― っくぅああぁぁああっ?!」
脳髄を溶かすような甘い言葉と同時に、駆け抜けるように膣口を潜り抜け、肉襞を蹂躙し、奥底に少年の情欲で沸騰する血液が充填していて、どくどくと心臓のように脈動している肉棒を叩き付けられてスミカは絶叫しながら――果てた。
「あぁぁっ! うあっ! あ、あ、あ! あーーっ!」
絶頂を迎えてから暫く経つが、少年が圧し掛かっている身体の下でスミカの全身の筋肉がぴんと筋張るように張り詰めて、びくびくと痙攣して彼の身体を押し上げている。
みっちりと隙間無く満たされている蜜壷は充分に蜜が溢れているのにも関わらず、ぎちぎちと締め付けられる感触に少年は痛みさえ覚えるのに加えて、快感に耐えようとしているスミカが背中を掻き毟るように爪を立てている。
甲高い声とはいえ、彼女は獣のように咆哮しているが、汗に塗れた喉を曝け出して叫ぶ姿は少年には美しさすら伺え、喉にそっと舌を這わせて舐め上げるとスミカは更に一際鳴き声を上げた。
「はぁーー、はぁーー、あぅ……」
漸く落ち着きを取り戻したのか――嬌声も静まって耳を擽る心地良い微風へと――身体を揺さ振っていた震動も呼吸のリズムによる揺籠へ――突き立てられていた爪の苦痛も柔い腕の抱擁へと――それぞれ柔く変わっていった。
押し潰されている乳房越しに伝播している鼓動と自身の物が混じって、真実、一つになっているのだと云う実感が齎す感激の中で、発作のような絶頂を迎えたスミカが心配になって、上体を僅かに起こして少年はそっと声を掛けた。
「――大丈夫ですか、スミカさん?」
すると先程までは牝の鳴き声を上げていたスミカの口から――
「……くっ、うっ、うぁっ……」
「ス、スミカさん? 泣いてるんですか?」
嗚咽が漏れていたので、少年は驚いて彼女の顔を覗こうとしたのだが、胸に頭を埋めて見えなくなってしまったと思ったら、くぐもった鼻声がした。
「泣いてる訳……ないだろう……ふ、うぅっ……」
「な、泣いてるじゃないですか……」
「うるさい……うるさい……っ」
「痛かったですか? それとも嫌だったですか? だったら……」
「嫌なものか……ばかぁ……」
「はぁ。じゃあ、どうして――?」
痛かった訳でもなく、嫌だった訳でもなく、更に絶頂を迎えていたのは事実のようだ。それなのに泣いていて、しかも罵られてもいる理由が分からないので少年は困ったように理由を尋ねる。
「……」
「え?あの、ごめんなさい。聞こえませんでした。もう一回……」
「嬉しい」
もう一度少年が「え?」と聞き返す声を上げると、スミカは俯いていた顔を上げて、涙をたっぷりと溢れさせて僅かに充血した眼で彼と視線を合わせた。
「嬉しく、かった……愛してる、なんて、言われたの、初めてだったから、嬉しかった――それにあんな事、言われながらされたら、感じない訳ないだろう……ずるい、ずるいぞ……ばか……」
涙声でそう言うとスミカは呆然として言葉を無くしている少年の身体にひしと抱き付いて、耳元でしゃくりあげながら同じ言葉を繰り返した――恥ずかしいのか、ずっと馬鹿とだけ。
その嗚咽を聞きながら少年は今更ながらに(そういえば、そうだった)と思い返していた。日常の中であろうと、身体を重ねている最中であろうと、今までスミカに告げた想いを伝える言葉は好きや大好きと云った言葉だけであったと。
首筋の辺りをすぅっと水滴に撫でられたのを感じて、少年はスミカを抱き返す。
「ごめんなさい、スミカさん。言うのが遅かったですね。待っていてくれたんですよね」
「ああ、待ってた、ずっと待ってたんだぞ――この馬鹿野郎」
「愛してます、スミカさん」
「――うん。私もだ。私も……愛してる」
ぎゅっと身体を抱き締められ、そして肉棒も膣に優しく求めるように包み込まれて、少年は先程まで燃え上がっていた猛々しい炎が静まっていき、腹の奥に心地良い暖かさが燈っていくのを感じた。
一糸纏わぬ裸体ながらも冬の寂しさを感じさせない程の暖かさを――。
「スミカさん」
「ん?」
「愛してます」
「もう、これで何回目だ? 私も……愛してるよ」
暫くの間、繋がったままで横向きの向かい合う体勢になった二人は互いにキスを交わすだけの時間を続けた。どんな酒よりも強く、そして甘く酔わせるには十二分な言葉を熱い視線を交わして囁きながら。
それ以外にも頬を撫でたり、首筋を擽ったり、手を絡み合わせたりしながらも――勿論、合間合間に愛の言葉を挟みながら――二人は結合している性器を擦れ合わせる事はしなかった。
だが何かの拍子でどちらかが身体を捩った時だった、
「あン……」
スミカが目蓋を瞑りながら嬌声を漏らした。
それを聞いて少年は結合部に眼を遣ると、思い出したように言った。
「……そういえば挿ったままでしたね」
「ん、そうだな。すっかり――忘れてた」
「スミカさんと見詰め合ってたら、どうでもよくなっちゃいました」
「そんな事言っても何もやらないぞ?」
「お世辞なんかじゃないですよ」
「本当か?」
「はい、本当です」
「……ふふ、嬉しいぞ」
そうしてから主張するように性感を奔らせた互いに滾ったままの性器を無視して、二人は同じ事をするのに戻った。ちゅっちゅっと、文字として書き上げるのも憚れるような甘い音を上げながら。
途中の間を抜いた前後の甘い時間が、普段二人が身体を重ねる際に必要な時間に迫る程に――挿入だけではなく、前戯やピロートークをも含めた――続けた辺りで、スミカが、ふと眼を伏せたのに少年が気付く。
「どうしました?」
「なぁ、本当に……本当に私の事、愛してくれているか?」
「さっきから何度も言ってるじゃないですか」
スミカの口調は疑っていると云うよりは、不安な感じである。
「だって……お前と私は歳が少しどころか、かなり離れているだろう?」
「年齢なんて関係ありませんよ」
「……お前は可愛いのに、私は無愛想だ」
「スミカさんは綺麗だし、優しいです」
可愛いと言われた事を否定すべきだろうかと少年は悩んだが、話の腰を折るのも面倒なので取敢えず置いて置く事にした。すると其れに引っ掛かった訳ではないのだろうが、スミカは少し口篭る。
「それに……」
「それに?」
数十分前の盛大な絶頂から、それなりに赤みが引いていたスミカの頬にさっと紅色が掛かる。
「私、さっき、凄いイキ方したろう。やらしい女だと――思わなかったか?」
それを聞いて少年は、とくんとくんと鼓動が脈打つような音を聞いた。自分の心音だったのか、スミカの心音だったのか、それとも繋がっている場所が高鳴ったのか。
「別にいいじゃないですか」
「――否定しないのか」
「だって僕は優しいスミカさんも、エッチなスミカさんも大好きですから」
「もしかしたら、私はもっとやらしい女なのかもしれないぞ?」
「それでもいいです。もっとエッチなスミカさん、見たい――愛したい」
そう言いながら少年はスミカの左の頬を包むように手を添える。
スミカはそっと其の手に自分のを重ねる。
「――だったら証明してくれ。私がどんな女でも愛してくれると」
少年は頬から手を離して、触れられているスミカの手を上からぐっと握り返した。
「はい、分かりました。どうすれば、いいですか?」
「私な、今日は――今日は、なんというか、その――凄く、乱れたい、気分なんだ」
質問とは多少ずれた返答であったが、少年は意図している事を察すると苦笑した。
「いつもエッチじゃないですか」
しかし、それを聞いたスミカは二三度かぶりを振ってから答える。眼には幾分かの恐れがあった。
「違う、いつもよりもだ。普段よりも、ずっと。酷いぐらい、淫らになりたい。それをお前に――見て欲しい。そして――愛して欲しい」
「大丈夫です。絶対、絶対に愛してるって言います」
眼に宿らせていた恐れを取り去ってあげるように少年は手を握る力を強くしながら力強くそう言うと、嬉しそうにスミカは溜息を漏らしながら、握っている手を引き寄せて頬ずりした。
「じゃあ、一旦抜いて」
そう請われて、少年は無言で身体を起き上がらせると、ゆっくりペニスが引き抜かれていく。さっと抜く事も出来たのだが普段よりも長い挿入時間の所為か、外温と差もあるが、まるで本当に一つに混じり合ったような心持ちがしていて、結合が解かれる事が寂しかったのだ。其れは請うたスミカも同じらしく、少しの間は引き抜かれていく肉棒を追う様に腰を浮かせていた。
「やぅ……」
最後に返しの雁首も抜けて弾かれるように跳ね上がって、空気が入るような音がした瞬間、スミカは名残惜しい声を上げる。長時間の結合によって大量の淫液に塗れていたペニスが上下に揺れ、シーツに雫をぱたぱたと飛び散らせる音を立てて、沁みを作った。
スミカは呼吸を整えるように一度、嘆息を漏らしてから身体を起こして中腰になっている少年に向かうように四つん這いになった――其の瞬間、下に向けられた、しとどに濡れた秘所から、とろりと愛液が糸を引きながら垂れた。
「立って」
耳道から鼓膜までを撫で回すような、ぞくりとするほどに艶かしい声にそう言われて、少年は返事をする事も出来ずに矢張り言われたままベッドの上で立ち上がる。スプリングが軋む音と共に胸の辺りにあったスミカの頭が徐々に下へ下へと遠ざかっていく。
膝を、脚を伸ばして立ち上がった時には、ベッドに尻を突いて座る格好になったスミカの眼の前には、腺液と愛液と潮に塗れ、照明の光を浴びて、てかりを帯びて、臍にくっ付く程に反り返ったペニスが彼女にアピールをしている。
「はぁ……すごい……熱い……それに臭いも……」
「あ……」
蕩けた瞳でスミカが感嘆している風にいいながら、両手でそっと怒張を握ると少年がか細く声を漏らした。そうして彼女は強い脈動を確かめるように握ったままでディティールを確かめるように眺めていて、また小鼻をひくつかせて香りも堪能している。握られているだけだが、吐息に擽られている事と、じっと見詰められている事に昂奮して、先端から腺液が溢れ出す。
「あぅ……くぅっ」
「……やらしい音」
スミカが潤滑剤に塗れた陰茎をゆっくりと両手で扱き上げると、柔い手の感触から来る性感に少年が抑え気味の声で喘ぎ、にちゅっにちゅっと淫音が鳴る。其れを愉しんでいる様子でスミカは鑑賞している。
少年が目蓋を瞑って快感に耐えていると、スミカが顔を上げて言った。
「……声、我慢しないで、もっと聞かせてくれ。お前が感じてる顔を見ると私、昂奮するから……もっと、してあげたくなるから」
「はい、分かりました――ぁあっ! はぁっ!」
言われた事はよく分かるから、自分もそうであるから、少年は喉を抑える物を取り払い、嬉しそうに甘く鳴いた。するとそれに呼応するかのように手の中でペニスが跳ねたのを感じて、スミカは眼に浮かぶ喜悦の色を強くしながら片手は竿全体を扱きながら雁首を弾いて、もう一方の手で亀頭を撫で回すように手を縦横無尽に這わせる。
「スミカさ、んっ! それっ……ダメっ! 気持ち良すぎるぅっ!」
長時間放って置かれた上、一度は膣に挿れたのにも関わらず結局は果てる事が出来なかったのが重なって、少年は直ぐに音を上げてしまった。しかし、スミカの方は待ち望んでいたと云わんばかりに、
「このまま、手で、イクか? それとも――」
「そのままっ! そのまま……スミカさんのっ、手でっ! イキたいっ!」
冷静に、それでも浮かされているような声色で尋ねようとしたが、最後まで聞く事無く手淫の性感に溺れるように嬌声を高く上げながら空腰を遣い出した少年の期待に応えるように、其の動きに合わせるように、肉棒を眼の前に仰々しく掲げて穂先を自身に向けたまま、熱い吐息で撫でながら更に手の動きを速める。
「イっ……くっ! イキ、そう……!」
「いいぞ……出して……私の顔に、お前の、かけて……っ!」
少年が目蓋を力強く瞑る苦悶の表情で呻き声を上げると、対照的に眼に期待と喜悦を爛々と輝かせながら見上げているスミカに熱い嘆願の言葉を力瘤を作るように血管が張り詰めている陰茎に吹き掛けられた瞬間――。
「うあぁっ! あぁっ……ああ……っ!」
「はぁ……ン……っ」
少年は人間の生存の原動力である心臓にすら負担を掛ける肉棒に心臓そのものに成り代わらせたような、強い劣情の脈動を何度も波打たせた。
スミカは眼を瞑り、口角の上がった口を開いた顔に降り掛かってくる熱を、そして殊更に強く握った掌に伝播してくる鼓動を感じている。
太い血管に装飾される筋肉が収縮して脈打つ度、狭い出口から切れた動脈から噴出す血のように凝り固まった大量の粘液が吐き出され、純白を剥ぎ取られたスミカの髪を、漆黒の艶やかな髪を、穢らわしい濁った白が疎らな雪のように覆っていく――。
「はぁ――……っ」
寝入るように眼を瞑った満足げな表情で張り詰めた四肢を弛緩させながら少年が嘆息を漏らしながら息を整えると、つんと青臭い臭いが鼻腔を突いた。半眼にした眼で臭いがする方を見る。彼の下腹部の前には空を仰ぎ見ているスミカがいる。
「あぁ、ン……濃いのが、たくさん……すごい……」
彼女の顔には臭いの元の白濁が額や頬といわず、髪といわず、あちこちに撒き散らされており、口の中の歯や舌の上にもへばり付いている。しかしスミカは其れを嫌がる素振りは見せていない所か、寧ろ受け容れていて、紅潮した肌や黒い髪の上を伝い、喉の奥に流れていくのも構わず、放出した本人に痴態を見せ付けるように――見て貰うように――尚も精を受け切った格好のままだ。
其の表情、特に悦んでいる風に口角の上がっているのを見て、荒々しかった呼吸の所為で粘ついて固まった生唾を少年がごくりと喉を動かして飲み込むと、若いと云うもあるだろうが、多少萎えかけていたペニスがスミカの眼前に差し出された。そのものから香っている芳香に気付いたのか、スミカが漸く眼を開けると、
「ん……あれだけ出したのに、まだこんなに……」
まるで植物が成長した事を喜ぶような、それでいて愛でるような、優しくも淫靡な眼で、生長したように聳え立つ肉樹に手を添えながら真っ赤に充血した先端を見詰めている。また慈しむように「私だけイってばかりいたものな……」と語り掛けるスミカの恍惚とした顔を見ながら少年は、肌の上から視線を感じる事はあるけども肉そのものにも視線を感じるのだなと思った。
するとスミカは尚も愉しげに僅かに口角を上げたままの人目で其れと分かるお強請りの眼で少年の顔を見上げた。
「なぁ……」
「は、い……何ですか?」
「これ……舐めても、いいか……?」
瞬間、スミカの親指と人差し指の間で”これ”と名指しされたモノが持ち主が答える前よりも早く嬉しげに頷くように跳ねた。是非、そうしてくれと云わんばかりに。
対して持ち主の方は今までさせた事やしてもらった事、若しくはされた事はあるものの、懇願された事は無かったので、其の媚態から醸し出される淫猥さに当てられたみたいに頭に血が昇って眩暈がしそうであった。
動揺で喉が詰まった少年にスミカは尚も小動物が餌を求めるように半眼の媚びる眼を向けている――寧ろ小悪魔と云った方がいいかもしれない。と云うのも殊勝にも無言で答えを待っている風に見えるが、打算的にも強請りを断られないように弱々しくペニスを扱いているのだから。とはいえ、少年に断る理由などある訳もなく――。
「いいですよ、スミカさんの好きにして」
心証の小動物の方を採用して、髪の毛の穢されていない箇所を撫でながら許しを与えると、甲斐甲斐しく一度頷いた。其の様子を見て少年は普段責められている時の自分はこんな感じなのだろうなと改めて思うと恥ずかしくなったが、其れと同時に(癖になりそう)と思った。だが今日のような特別な場合だからで、普段はしてくれないだろうなと考えて、少し残念に思った。
そんな風に少年が物思いに耽っていると、スミカはつるつるとして鈍い光沢のある表面や、鈴口の狭い淵に僅かに精液の残滓がこびり付いている亀頭と真正面から向かい合い、ゆっくりと顔を近付けていって――、
「ンっ」
少年に胸の先端にされたのと似た、赤く腫れ上がっている肉を気遣うような優しい口付けを短く落とした。但し、彼のと違って何度も何度も、まるで雨のように降らしていった。その度に少年も、口付けされている肉棒も嬉しそうに震える。
やがてスミカが口紅を引いていたのなら亀頭の表面全体が違う赤で染まってしまいそうになる頃、陰茎の滾りは最高潮の具合になって、期待を秘めるように先端から腺液を垂らし始める。そうさせるのが目的だったのか、スミカが顔を離すと、支えるように根元を握ったまま少年の方に視線を遣る。
「身長もだが、少し大きくなったんじゃないか?……んぁ」
スミカが言っているのは勃起したと云う意味ではなく、ペニスその物が大きくなったと云う意味である。しかし普段から肌身に付いている分、変化がわからない少年は、
「そう、ですか?でも自分じゃ……ぁんっ……分からない、です」
鈴口から溢れて落ちそうになった腺液の雫を吸引されて嬌声を上げながら、男としては喜ばしいのだが実感が無い事を述べると、スミカは舌先で包皮と亀頭の繋ぎ目や割れた雁首をなぞりながら、
「元から大きかったのに……ンン……もっと大きくなるなんて……ふぅ……困る、な……」
言葉通りに不安気な、困惑しているような憂う口調でそう言いながらも彼手は何かを期待しているように受け容れる場所に手を遣って弄り始めたので、少年が彼女の頭を撫でながら言う。
「じゃあ……スミカさんのおまん○、僕のに、ピッタリになるようにします」
――その度に、丁度いい具合に押し拡げてやる。
彼が言っているのは、つまりは、そう云う事だ。
スミカは其れを想像するように自らの指で花弁を開いた。淵に溜まっていた愛液が垂れて、中腰の彼女の股座の真下に広がるシーツの沁みに同化していく光景が其処を伺うように上体を反らしている少年の眼にも見えた。
だが指遣いに熱中する素振りは無く、あくまで開かれている陰唇の淵をなぞっているだけで、口淫も溜まった腺液に舌を触れさせてから離して、引かれる糸を伸ばすのを繰り返しているのは、彼もだが自身を焦らしているのだろう。互いに其れが分かっている為に何も言わないが、やがて唾液が混じって粘つきが弱くなった腺液の糸が切れるとスミカは待っていたと云う風に――意を決したように少年を仰ぎ見る。
「おち○ち○……しゃぶらせて……」
理性が喉を抑え付けるのを本能で押し切ったように掠れて発された嘆願に対し、少年は求められたモノに力を入れて跳ね上げさせながら、無言で無造作に腰ごと、
――今すぐにしろ。
とでも言いたげに、ぐいと突き出して見上げるスミカの唇に腺液と唾液に塗れた灼けた砲弾を押し付ける。
香る牡臭と柔肉の向こうの剛直の触感を感じさせられたスミカは我慢も限界を超えたと云わんばかりに、丁度先端の直径に合う程に口を開いて――
「あ、むっ……!」
「うぁあっ!」
唇の淵を表面に擦りつけながら、正に言葉通りの呈でペニスにむしゃぶりついた。
火照ってはいるが冷えた身体と対照的に熱い程に温度を持つ口腔に咥え込まれる温度差から来る性感に少年は喘ぎながらスミカの頭に手を遣りながら前屈みになる。身体の神経が一瞬困惑する程の怒涛といえる程の性急な勢いであったが、流石に慣れているからか、堅い歯が触れる事は無かった。しかし其の代わりに――
「ふぅンっ……むうっ!」
「はあっ! いいっ……いいっ!」
肉食獣が獲物の肉を噛み千切るようにスミカが頭を右へ左へと反転させる中で、舌で男根を執拗に舐り回されている。張り詰めた血管を弾くように通り過ぎるように滑らかな肉が竿に蔓のように纏わり付いてきたり、雁首の段差を広げるように荒々しく引っ掻いてくる。かと思えばじゅぽじゅぽと形容し難い音を立てながら頭を前後させて、餌を溜め込んで頬を膨らませた、げっ歯類のように柔くつるつるとした粘膜に包まれて滑る頬肉に亀頭が擦り付けられて腺液が噴き出て潤滑が増していく。
そしてスミカは時折、酸素の補給がてらに口を離して、ぬめぬめと粘液が滴る奉仕しているモノを根元から上下に扱き上げながら少年の眼を見詰める。
「ふぅ……きもち、いい?」
跪いた格好で見上げながら股間に顔を突っ伏したり、手で丁寧に刺激を与えてくるスミカの様と、普段とは違う優しげな口調の言葉が、奉仕させていると云う実感を齎して少年は言い知れない快感を抱く。
「はいっ……口、きもちいいですよ……ぅくっ……スミカさんは、どうですか?」
「私も、すごい、興奮してる……おち○ち○、おいしい……」
少年が甘く喘ぎながら応え、感想を聞き返すと、スミカは確りと握っているペニスの幹をぺろりと舐め上げるのを挟みながら本人の言う所の、やらしい言葉を浮ついたように呟いて、彼に媚態を見せ付けている。
次から次へと唾液を注ぎ足されるようにされて、数分と立たずに肉棒は濡れそぼった膣に入れた程に湿り気に包まれている上に、尚も舌が絡んでくる事で卑猥な水音が鳴る。股間から性感の波と音が伝わり、また耳に淫語が入ってきて、少年は腰が抜けてしまったように前屈みでスミカの頭に僅かに体重を預けていると、
「ぷぁ……お前からも動かして、いいぞ」
口許を腺液交じりの唾液で濡らしている彼女が、矢張り混合液でぬめぬめと光るペニスを扱きながらそう言った。だが余りに熱烈な口の奉仕の快感に浸っていて半ば惚けていた少年は直ぐに応える事が出来なかったのだが、スミカは其れを逡巡していると思ったようだ。手淫を強め出し、そして虐めて貰う為に劣情を煽る言葉を紡ぐ。
「今日は私を――」
――玩具にしていいから。
夢現で聞いていた所為で現実感が損なわれていたが、逆に心地よい音楽のようにするりとスミカの懇願は少年の耳に流れ込んでいた。だから玩具になどしていいのかな、などと考える事も無く、黒々とした側頭部に手を遣る。其れを返事と取ったのだろう、スミカは髪を掻き揚げながら序に少年の手に触れつつ、怒張を咥え直すと誘うように裏側を舌先で弄る。
しかしスミカは準備が出来ていると言わんばかりだと云うのを示したのに対し、少年は一言も発する事無く――
「はぁ……っ!」
「――ンン、ぶぅっ?!」
裏筋を撫でる舌を引っ繰り返しそうな勢いで、彼女の頭を引き寄せながら肉の杭を喉奥に打ち込んだ。
喉を広げられてスミカは潰れた苦悶の声を上げたが、仰け反ったように背を弓反らせて、尚も腰を押し込んでいる少年は快感の嘆息を漏らしながら、ぶるぶると身体を震わせている。
「んんっ、んーっ!」
喉を詰まらされているスミカが次第に息苦しさを感じ始めて呻き声を上げると――それでも僅かに動く舌先で、口腔を侵犯した熱い侵入者を愛でながら――喉奥の粘ついた唾液の線を宙に引きながら、ずるりと抜けていって――
「むぐっ!」
再び奥まで口内を蹂躙される。
そしてまた、引いていった――と思ったら犯され――抜けていった――と思ったら犯される。
がっちりと掴まれた頭を揺さ振られて視界が短い距離の間で急激に前後し、喉を突き上げられてくぐもった嗚咽が漏れる。遠慮の無い粗暴な抽迭が何度も口腔に叩きつけられて、処し難い性感によって滲んでいた涙が、肉体的な苦しみによって涙腺から溢れて出して頬を伝う。
しかし蹂躙者は流れる水滴に気を掛ける事なく、
「あぁー……、いいっ、いい……っ、スミカさんの口……すご、い……っ!」
「ふぶっ! むぅー……っ、うぅんっ……ン、ンンっ!」
膣に対して行なうように腰を前後に――ゆっくり――深く――深く――遣って、肉棒を押し込んでいる。喉の奥で先を締め付けられる感触に、まるで責められているような心地良さそうな嬌声を漏らしながら。
すると拒絶しようとしているのだろうか、もごもごと何言かを発しようとしている震動が咥えさせているモノから伝ってくるが、当然口を塞いでいるから少年に聞こえる訳も無い。また拒絶されているからと云って止める気も無かった。抗弁らしき物をすればするほど唇が戦慄いて密着している竿が、舌が蠢いて触れている肉傘が擽られて、こそばゆさを感じるのだ。
それに玩具なのだから、気に掛ける必要性すら無いと言いたげに――
「ンン……っ、んっぐぅっ!」
「くあぁ……あっ、ああっ!」
――側頭部を掴んでいた手を後頭部に遣ると、腰を力強く突き出す。鼻っ面に下腹部を、延髄に男根を叩き付ける反動で頭を後ろに飛ばして、下がったのを手で押さえ込むのを繰り返す。頭を突き飛ばす度に口吻の隙間から泡立つ唾液と、目尻から飛んだ涙を宙に舞わせたり――
「ふぅぅ……ンン……」
「はぁぁ……僕のをぉ……咥えてる顔……感じます……っ!」
――上体を反らして腰を下から抉り込むようにして、上向きにした暖かく包んでいる口腔に精を放ちたいとうずうずしていると云った風に涎を垂らしている肉茸で堅い口蓋や、腰を捩るようにして頬肉に腺液を眼一杯擦りつけながら、甲斐甲斐しく唇を窄めながらも非難めいた眼をしている顔を見遣ったりと――少年は粗暴で傲慢な抽迭を繰り返す。
「うぶっ……!ふぅっ、ぅンンっ!」
「あっ、出そう……っ! 出そうです、スミカさんっ!」
腰の辺りの神経が爆ぜるような感覚に襲われて少年が高らかな甘い声で呼び掛ける――無論、スミカの事などこれっぽちも考慮しておらず、頭を掴みながら小刻みに舌の絨毯の上で淫根を擦り合わせながら。激しい揺さ振りで何度も絹のような手触りの髪の上を手が上滑りしていくが、その度に押さえ付けて、まるで髪を掻き回しているようである。
「うっ、くっ……!」
身体の奥から何かが昇って来るような後一歩と云う性感を甘受しようと目蓋が勝手に閉じられそうになるが、抗って半眼にしてスミカの顔を見る。咽喉を幾度も蹂躙されている所為で、酸素が足りない感じに活力が無い身体は彼の太腿に腕を回し、尻を掴んで縋り付いている。抗弁も消え、為されるがままに肉杭を只管に打ち込まれている。それでも其の眼には状況に酔っているような、
――どうにでもして。
と言いたげな被虐を享受する色が、力無い虚ろな瞳の奥で赤々と燃え上がっている。
「――あぁぁあっ! 出るっ、出しますっ! スミカさんの口の中にっ! 全部っ……全部っ!」
「ンっ、んんっ! んっ、ンっ、んーっ!」
誘っているような、望まれているような瞳を見て、少年の性感が爆ぜるように昂って宣言すると、潰れた声ながらもスミカが応える。
最早、頭ではなく頭蓋骨を掌と指先で掌握し、吸引していて更に狭まった口吻の淵から、口蓋垂が垂れ下がる咽頭まで長いストロークで、痙攣しているように速いピストンの抽迭を繰り返していって――
「――出、るっ……うぅぅぅ……っ!」
「んんっ、んぐううっ! ンっ、ンン、ンンーーっ……!」
喉の向こうの道に向けて白濁の迸りを放った――幾度も、幾度も。
二三回撃った後、僅かに引いて柔らかな布団に横たわって占領するように舌の上に寝そべりながら、残りを放つ。味蕾の上に濁をべっとりと付着させて。
抑え込もうとしている唇と、残滓の流出を促すようにちろちろと蠢く舌の間で跳ね回りながら、スミカの口腔に牡臭が充満していく――。
「はあ……はあ……よかった……あっ、と……」
ぜいぜいと喘ぎながら、満足気に少年は、最後に刺激された言でまだ充分に芯の入っているペニスを引き抜くと、身体を激しく動かし、射精で筋肉が戦慄いた所為か、膝が崩れそうになった。だが眼の前にはスミカが居るので何とか持ちこたえると――彼女の顔に様々な液で濡れた滾りをべちゃりと乗せてしまった
そして余韻で未だに奥でどくんどくんと脈打つモノを顔に寄り掛かられたスミカはと云うと、
「ん、く……ン。ン、ン……はぁぁ、ン……濃いのぉ……おいしぃ……」
頬から目蓋を覆うようなソレを意に介する事なく、うっとりとした、虚空を視ている恍惚の表情で放出された白濁をゆっくり嚥下しながら甘い嘆息を漏らしていた。
妖艶な表情と、淫語交じりの温かな溜息に包まれて、少年が剛直に芯が入れ直すと――勿論、無意識にだが――スミカは何処も見ていなかった眼で、今気付いたようにソレを見た。
「私、お前のものにされてるぅ……」
そう言われて初めて少年は気付いたが、確かに此の光景は刺激的であった。
あちこちにこびり付いた精液が乾き始めた白い線が引かれている顔に、てらてらとした自身のモノをさも当たり前のように乗せている。しかも座っている彼女は身分の高い者を仰ぎ見るようにしているから、ソレに頬を愛おしそうに摺り寄せているようでもあるのだ。
少年は征服感を感じずにはいられず、そしてスミカの方も征服されている事を悦んでいる。
そんな風に劣情のベクトルが同じ方向を向いている事を共感して、二人は嬉しくもあり、また昂っていく――。
「ほら……次はどうする?」
自分の呼吸を整えながら、少年の余韻が通り過ぎるのを待って――其の間も、ペニスにキスを落としていた――スミカが尋ねる。誘うと云うよりは寧ろ早くと急かすように。
しか問われたものの、二度の射精で頭がぼやけているような感じの少年は直ぐにしたい事が思い浮かばないから「えーと……」などと逡巡を見せる――いや、何も無い訳ではない。寧ろ候補が幾つかあるために困っているのだ。
その様に少年がどれにしようかと悩んでいると、スミカは我慢が出来ないと云った風に、僅かに腰を上げると肉棒を双陵で押し込むように下半身に抱き付くと、甘えるように少しばかり顔を傾けて、囁く。
「お前の好きなように、私の身体の何処でも……おまん○に、していいんだぞ?」
「―――ッ」
そう言われた瞬間、少年の背筋をぞくぞくと電流が奔った。
今までスミカの濡れていて肉付きのよい唇から、細い喉の向こうにある声帯から発せられた淫らな言葉は何度も聞いてきたが、今のが最も劣情を煽った。乳房に押し潰されている男根の先から、ぷくりと風船のように膨らんだ雫が亀頭の表面を伝って流れ落ちる。
もし、ある程度責められていたのなら、其の言葉を引き金に果てていたかもしれないと予想して、少年は驚愕さえ感じた程に。
しかし驚愕も次の瞬間には、さっと消え去って、後に残るは激しい肉欲の炎だけだった。
「きゃ……」
炎に身体を任せて動いた身体がスミカを突き飛ばした。少女のような小さな悲鳴を、ぼふんと跳ねたマットレスが受け止めて肢体が投げ出される。其の腹の上に少年は馬乗りになると、衝撃で球のように跳ねた後、ふるふると揺れている二つの柔らかな膨らみを確りと掴んで寄せると、谷間の入り口に怒張を近付ける。
「胸で……おち○ち○、扱くの?」
「はい」
「眼が、怖い……」
「そうでしょうね」
スミカはそうは言ったものの実際に恐怖を感じている訳ではない。寧ろ先の口淫同様に彼が本気で犯しに掛かっている事に期待を寄せているのだ。
また彼女がそう考えている事は少年にも伝わっているから、茶化すように返した。
「あと……腹、くすぐったい」
言われて背後を見遣ると、ふるふると左右に揺れている自分の尻尾がスミカの腹を埃取りのように撫でているのが見えた。だが生理反応であるから、止められないので「我慢して下さい」と苦笑しながら言うと、「気持ちいいから……いい」と返って来た。
そんな遣り取りをした後、少年はツンと澄ましているように背筋良く屹立している桃色の蛇苺越しにスミカの真紅を見ながら――
「はぁぁ……あぁぁ……」
「あ、ン……熱い……」
双陵の隙間にペニスをゆっくり挿し込んでいき、敏感な器官が柔く暖かい肉にすっぽりと包まれる快い刺激に身体中が鳥肌を立たせて喝采を上げる。股間から腰へ伝わり、そして頭頂、足の先までと水紋が広がるように。
肉欲、そして想いで沸騰する血がドクドクと脈打ち、乳房の谷間から、肉へ、そして昂奮で高鳴る心臓へと伝播すると、促されるようにスミカの鼓動がトクントクンと更に一段階ギアを上げて脈動を肉棒へと返しいく。
そのように滾った血同士のリズムが会話を続けていると、少年は其れを途切れさせるように、
「うあぁぁ……やっぱり、スミカさんのおっぱい……柔らかくてぇ……きもちいい……」
挟んでいるモノを肉房に擦れさせながら、ゆっくりと噛み締めるように進ませる。口淫で纏った潤滑剤と、愛撫や絶頂で滲んだ汗の為に、行為自体は実にスムーズである。
やがて釣鐘型の均整の取れた肉を下から押し込んで歪曲させながら、這い出た先端の赤肉が挨拶をするように飛び出ると、表面に広がって輝く我慢の証と、放出した迸りの芳香を漂わせて主張をする。
――お前の身体が堪らないから、こんなになっているんだ。
そんな風にぱくりと開いて暗闇の尿道を見せている精の口に囁かれたような気のしたスミカは、乳肉を刺激される感触に「んっ」と鋭い喉声を鳴らしながら褒められた返礼として少年とソレに向かって呟いた。
「私も、いい……気持ちいい……」
「僕のに……っ、されて……イイんですか……?」
「うん……感じてる……胸、おち○ち○で擦られるの、感じるぅ……」
胸の中に引っ込めていた淫茎が突き出されて露になった同時にスミカの嬌声が掛けられて、少年が身体を跳ねさせる。大した愛撫をしている訳では無いが、感じていると言われれば男として嬉しかったので――また自分も更に愉しむ為に――柔肉を両側から押さえ付けていただけだった掌を蠢かせる。
「やンっ、あっ、はぁっ……!」
「ンぁっ! あっ、こ、これ……すごいっ、オナニーしてるみたい……!」
乳房を弄り回されてスミカが喘ぐと、同時に少年も歪ませた肉に一物を刺激されて嬌声を上げた。
ふにふにとした柔軟さを持ちながら、内の方も外の方にも吸い付いてくるような其れの触感を堪能するように、少年が腰遣いのピッチを上げながら肉の房を揉みしだいていると、スミカがか細い声で促してきた。
「もっと、胸……激しく、使っていいぞ……」
「いいん……っ、ですか? 僕、多分、スミカさんのおっぱい……滅茶苦茶にしちゃいます」
「お前がそうしたいなら……されたい」
喘ぎを噛み殺している苦しげな声で少年が「わかり、ましたっ」と言うと、雁首が露になるか、ならないかぐらいまで淫茎を引き抜いて――
「はうっ!」
宣告した通りに胸乳を荒々しく捏ね繰り回しながら、其の間を一気に貫く。胸部の下辺りで圧し掛かって、ベッドに膝を突いている細身の身体に電流を奔らせたように背筋を反らせて、汗が滲む喉首が晒された。
そして仰け反った格好のまま、流石に身体の上に居るから所謂”本番”のようにするには少し憚られるものの、手の中で釣鐘状の原型を無くす程に弄ばれながらも張りの良い弾力でぷるぷると震える柔肉を、より一層に激しさを増した腰をかくかくと前後させるピストンで蹂躙する。
――見られてる。
少年は肉棒への直接の性感は勿論だが、血の巡りが良くなっているからか、鋭敏さを極めている露になった肌に、ちりちりと灼け付くような、スミカの視線を感じて法悦を享受している――彼女の女性としての象徴を犯している姿を見られている事に。眼は安らかな暗闇を見ながらも天を仰ぎ見るように顎を高くしている所為で曝されている、力みで筋立つ首筋に特に刺すような熱を感じていると、
「あぁぁっ……くぅ……っ!」
突然に抽迭させているペニスの先端を柔い物で小突かれ、声を上げながら仰け反っていた身体を硬直させながら腹の中の胎児のように背を丸める。しかも抽迭を止めるや、突かれた先を今度は小刻みに撫で回されたので、もう一段喘いだ。強烈な眠気に襲われるように閉じてしまった目蓋を開けて、掴んでいる物の辺りを見る。
「ふあ……っ! スミカさん、それぇっ、それ……いいっ!」
其処には必死な様子で首を自分の腹の方に向かって目一杯伸ばして、突き向けられている赤黒い穂先を舌先で――表面に弧を描くように撫で回したり――縫い目と穴を結ぶ線を往復しながら辿らせていたり――尿道を犯すように差し込んだりして――刺激しているスミカの姿があった。御機嫌を伺うような上目遣いの濡れた眼で、じっと見てきているのだから少年としては堪らないと云った具合である。
「はぅンっ……ン、ン、ン……」
おまけに尖りを抓るなどして刺激を加えてやると、其の都度、喉を鳴らしながら目蓋を瞑るのだが、直ぐに眼を開いて上目遣いを保とうとしているのが大層いじらしい。閉じられる度に涙が広がり、瞳の輝きを増していくのが其れをより煽り立てる。
色々な意味で想像を超えてくるスミカの奉仕を悦ぶ少年は遊ぶように、白い乳房の上にインクを落とした沁みのように円形に広がっている桃色の乳輪の辺りを――乳房に対して広すぎず、狭すぎない丁度良い面積が生み出す婀娜っぽさを少年はいたく気に入っている――摘み上げて同色の突起を内側に寄せると、エラを張っている段差に引っ掛けて、ぴんと弾いたり、乳輪に擦り付けたりしてスミカの反応を愉しみながら――悩んでいた。
(擦らせると舌が届かなくなるし、でも舐められたいし――どうしようかな)
眼下に男なら誰もが奮い立つようなプロポーションと美貌を持つ美女を組み伏せて、今この瞬間も喘がせている艶の宴の真っ最中に少年は、まるで夕食の献立でも考えるような場違いな冷静さを見せていた。勿論、神経をぴりぴりと甘い電流が奔っていて、犬のように呼吸は荒いのだが。
そうして暫く、ぺちゃぺちゃと水打つ音を聞きながら少年は願望をどちらも叶える遣り方を思い付いた。
「ン――んむっ?! ……ふぁ……あmむ……」
「はあ……ぁ、はあ……っほんとに……ほんとにぃっ! おまん○みたいっ!」
乳房の間を根元までペニスを滑らせて亀頭の半分程を待ち構えているようなスミカの口腔に捩じ込むように突き立てると、蜜壷の敏感な弱所を責め立てるような、かなり短い間隔で前後させる、ぐっぐっと押し込むように抽迭しながら、柔和な肉を左右に捻るようにして埋もれた竿を扱いていると、
「もう……もうっ、ダメっ!」
「ふー……ふー……ンぁ、ン……ンン?」
「――イっ、イクっ、イク……っ! スミカさんの、おっぱいで! イクっ!」
更に穂先を窄められる唇で擦っている隙間で縦横無尽に暖かく厚い肉が走り、とろとろと溢れる腺液をストローで飲むジュースのように啜られるように性感を与えられて肉棒が快感に打ち震えるように痙攣を始める。すると限界間近である事を悟ったスミカが口を塞がれながらも媚びるように見遣ってくる眼で尋ねられて、また其の仕草も煽情するには充分であり、少年が叩き付けるような返事に一歩遅らせて――
「イッ……クぅぅ……っ!」
「――ぷぁっ! あっ、や、やン……」
「――うぁぁぁ……あーー……あーー……あぁーー……っ」
「あ、つい……熱いぃ……」
限界の寸前にスミカの昂奮から肉の矛先を引き抜き、たわわな乳房で淫茎を押し潰すように揉みくちゃにすると、勢いを増すように促された精水が鈴口から熱いシャワーとなってスミカの顔や口の中を穢した。
そして全てを顔に出し尽くす前に肉の扉を閉めて、柔筒の中に射精の脈動と熱を叩き付けるのだった――。
「三回目なのに……精液、こんなに……」
顔中を白濁の弾痕に彩られ、片方の目蓋の淵にジェルが引っ掛かっていてウィンクしているような表情で、咽る様な青臭い牡臭に包まれているスミカは少年の精力の強さは誰よりも重々承知している筈だが、改めて身体に刻み付けるように惚けながら呟いて、顔のあちこちに手を遣って熱を確かめている。視線は少年は嘆息と共に手を離した胸に注がれていて、所々にダマがぶらついている何筋もの白い糸が揺れているのを見詰めている。
「ふぅ……っ、すごかったです……」
「そんなに私の胸、よかったか?」
「はい。スミカさんのおっぱい……最高です」
スミカの頭を撫でながら腹の上からベッドに移った少年はそう答えたが、自分の吐き出した劣情の権化と臭いを纏っている淫靡な姿も最高だ、と付け加えたかった。
嬉しそうに撫でられるのを甘受したスミカは身体を起こして四つん這いになると、眼に挑みかかるような色を灯らせて、酸素が足りないと言いたげに、精液の臭いが仄かに漂う吐息を浅く喘ぎながら責めている立場の少年よりも乗り気な様子で懇願した。
「そうか、嬉しいぞ……もっと、もっとだ。もっと私を――お前の玩具に――お前だけのモノにしてくれ」
「――こんな所で、するなんて……っ、ほんとにお前は……」
「腕、ぷにぷにしてて、気持ちよさそうだったから……あぁう……っ」
座らせられたスミカの背後に立っている少年が、体温計を挟むように閉められた脇が齎す――二の腕の肌に張った柔らさ――脇腹の骨ばった硬さ――そして肉茸を擦らせながら押し込むと鞠のように窪みながらも押し返してくる肉房の柔軟さと、感触の三重奏をペニスで一偏に堪能している。
スミカは背後で嬌声を聞かされ、自分の脇から突き出ている性器に自分の乳房をぐりぐりと刺激されているのを恥じ入った顔で見ながら、行なわれている事の偏屈さに愚痴を零している。
すると、やおらに両肩を掴まれ――
「あっ……あぁっ、あぁっ……あぁぁーー……っ」
「や……出されてるぅ……あ! い、やぁ、ン……」
肉棒を頬に熱烈なキスをするように柔肉の側面へと、ぐぅっと押し込まれたままドクンドクンと脈動を始めると、腕を持ち上げられて曝された窪みにも射精された。
熱い凝固を幾度も打ち込まれて撃たれた場所に、じわりと熱が広がっていき、ぬるりと肌を伝う液体が脹脛や踝の辺りに垂れていく――。
「――そこ……だめっ! だめぇっ!」
「どうしてっ、ですか?」
「だってぇ、おまん○、擦られて……それにク、クリにぃ……」
「クリ? クリって何ですか?」
「……ク、クリトリスぅ……っ」
「それで、クリトリスが……っ、どうしたんですかっ?」
「クリトリスにぃ……おち○ち○がぁ……おち○ち○が当たってるのぉっ!」
少年は顔までを覆うような百輪の花束を抱えるように、横たわるスミカの揃えられたまま上げられている両の脚を仰々しく抱き締め、脹脛辺りに顔を寄せながら、むっちりとしていて隙間の無い太腿の間に熱棒を突き刺して、腰をくいくいと振っている。
とろりとした花蜜を滲ませる赤い薔薇の花弁を拓き、ふさふさとして撫でてくる細長く黒い草を掻き分け、種のように硬く凝る真っ赤に晴れ上がった性感の核を、蜜蜂のように、焼け爛れた穂先を持つ、焦げた太い針で小突きながら擦り上げると、其の度にスミカが声を張り上げる。かぶりを振る動作も言葉も嫌がる風であるが、あくまで身体は任せ切りのままで。
其の場所を責め立て、感じている場所を言わせて追い立てている少年であるが、彼の方も辛抱堪らなかった。スミカの身体に性感の電流が奔ると、力んで乳房に劣らない程の柔らかな二つの肉でペニスが強く締め上げてくる。其れで彼の方も力んで抽迭が上滑りをしたようになって、より一層強く責める結果になり、更に締め付けてくるという循環の中に囚われているのだ。
そして肉同士の隙間から染み出た愛液が下腹部を打ち付ける少年の陰嚢までを汚し始めた頃――
「だめ……もうだめっ! 私っ、イクっ!」
「ぼ、僕も……っ!」
「イッちゃぁ……あぁぁ……っ」
「――っクぅぅぅ……っ!」
絶頂を迎えて焼ける肢体が身体を縮ませるように力んだスミカに挟んでいるモノを潰されそうになりながら少年が一際ソレを思い切り奔らせ、ひくひくとした肉波を感じながら彼女の下腹部目掛けて、しゃくり上げるように淫茎を跳ねさせて熱水を小刻みにぶち撒けると、其の度に通路の丁度真下に位置している淫核の存在が想われた。
踝や踵を喘ぎの吐息で擽られているスミカの腹の陥没に、少年がどろりと白く澱んだカルデラ湖を作りながら、寒さで身体が震えるように痙攣している二つの性愛の依り代がぴったりと寄り添っている――。
上半身に聳える双陵の間と片方の横っ面、下半身の中央や脚の所々、果ては顔までと云う風に身体の前面を臭いのきつい白粉で雪化粧されているスミカであるが、
「――あぁーーっ……すごい……すごい……っ」
「や……何か変な、感じ……」
肘から先と膝を支点にした四つん這いにさせられていて、背後で腰を下ろしている少年が其れだけではまだ足りないと言わんばかりに、臀部に下腹部を擦り付けられている――組み伏すような格好でないのは、シーツに精液を付着させないためだ。勿論、布を汚さない為ではなく、化粧を落とさない為に。
少年は胸乳にしたように、彼女のボディーラインを際立てる豊かな焼き立てのパンのようなふっくらとした肉を中心に寄せ、男根を挟んで扱き上げて快感を貪りながらも掴んだ手で円を描くと、窄まった口吻のように皺に覆われている穴と、唾液を垂らしている口が覘けた。すると臀部を弄られ、熱いモノが触れている所為か、スミカは戸惑ったような声を上げながらも快感を求めるように腰を文字通り上下させている。
「あん……おち○ち○、おっきぃ……」
湯上りのように逆上せた顔でスミカのあられもない言葉を聞きながら――勿論、腰も遣いながら――少年は考えていた。
ずっとスミカは過度な程に”ソレ”の名や、責められている場所を口走っているのは口にする事で自分を煽っているのだろうかと。また自分も似たようなものであるから、そうなのだろうと。
そして予想もしていた。
だったら、もっと敏感な場所になったら、二人して”ソレ”や”ソコ”の名を連呼するのだろうかと。
そんな風に少年が夢想を広げると、頭の中に浮かんだ更に淫らなスミカの姿が引き金になったように、また想像力を讃えるようにペニスが突然にぶるりと震えると――
「あっ……出ちゃ……あっ……ああっ……あ……」
「え? ……あ、熱……っ」
スプリンクラーのようにから突き出て、小山のようななだらかな白い臀部と、青々しい芝生が敷かれているような背中と、殆どは其の上からはみ出ているが、一部は庭木が作った影のように僅かに掛けられている黒い髪に散水を始め、濡らしていく。
殆ど予兆無しの射精で心構えが出来なかったからだろう、スミカは熱い白精を掛けられて、驚いて身体を仰け反らせて、犬が遠吠えをするような格好になった――。
「はっ……はっ……はっ……」
上体を戻してから、矢張り犬のように全身で呼吸をしているスミカの姿を見ながら少年は彫刻や絵画を完成させたような、一種の感動を得ていた。というのも四つん這いの彼女の身体のあちこち、身体を区分した場合の全ての場所に自分の性欲の権化が確りと刻まれているのだ。
スミカは照明の下に曝け出されている背面や後ろ髪を、今しがた自分が出したばかりの凝固した汁と発汗した汗で妖しく輝かせ、また腹這いの前面からはどろりと穢らわしい線を引きながらシーツに沁みを広げて、己が体臭のように栗の花の臭いを纏っているのだ。
芸術品を創った者の才能や創作欲の証だとするなら、今の彼女は少年にとって、自分のモノである事を示す証拠その物である。
そんな風に観られている事を意識しているのだろうか、スミカは其の格好のままで居る。
視線を一心に浴びる為に美術品と同時に彼の玩具として――眼を満足させるだけなら芸術も、観賞用の玩具にも然して変わりは無いのだ。
じっくりと自分のモノを眺めていた少年であるが、やがて其の視線は一つの帰結として、当然の如く或る場所に向けられると、幾度も精を迸らせた事で疲労したように萎れていた海綿体にたちどころに血が充填された。
肉の陰に入りながらも、ほんの僅かに照明が当たって宝石のように、雫がきらりと十字の光を作っている。
ポンプで何度も空気を入れるようにペニスを独りでに上下に揺らしながら少年は生唾を飲み込み、膝立ちで一歩にじり寄ってからスミカの尻を掴む。そして心臓から送られた後、今の彼の憤っているような喘ぎの如く、酸素をあっという間に使い果たして、どす黒くなる血のように、それ以上に漆黒に情欲を燃え上がらせていると、
「ま、待って……」
スミカが首を動かして背後の彼を見遣りながら、そう言った。
しかし少年はそんな言葉だけで留まるつもりは無かった――のだが彼女の切羽詰ったような、訴えるような眼に何かを感じて、取敢えず話を聞く事にする。
「あ……その、な……実は……」
聞くつもりになったが、余りにスミカが口篭っているので、少年は追い詰めるように秘唇に自分のモノを触れさせる。
「早く、して……僕、もう……」
「あン……わ、分かったから……まだ、いれないで……」
一体、何を言おうとしているのだろうかと少年が訝しんでいると、スミカは踏ん切りを付けるように俯きながら一度、長く息を吐いて彼の方を見て、声を震わせながらも力を籠めるようにして言った。
「お前に、あげたい物があるんだ」
「何を、ですか?」
きょとんとして首を傾げる少年を他所に、スミカは上体をベッドに預けて、ゆっくりと自分の背後に手を回していく。
亀の歩みのような、そろそろと躊躇いがちの遅さで。
苦しそうな体勢ながらも、其の間もずっと、とろんとした眼で少年を見ながら。
そして自分の臀部を掴むように手を遣ると、見せ付けるように隠れている物の口を僅かに開かせた。
「貰って欲しいんだ……私の――」
――”初めて”を
「え? そこって……」
突然、そんな事を言われて少年は驚愕の表情のままに声を上げたが、スミカは其れを聞いても、見る事は無かっただろう。言った直後には羞恥に襲われたように首筋までを紅潮させて眼を瞑ってしまったのだ。
其れも無理からぬ事だろう。
散々、身体中を弄ばれてきたとはいえ、今の状態を見ても分かるとおり、其処を少年に曝しているのだけでも相当な恥を感じている筈であるのに、彼女は排泄の場所に挿入を懇願しているのだから。
性欲のままに行動しようとしていた少年も困惑して呆気に取られていると、スミカは羞恥が極まったのか、ぽろぽろと涙を流し始めた。
「や、やっぱり……嫌、か……?」
「そっ、そんな事ないです! でも、どうして?」
「だって、お前は私が初めてだったのに……私はお前にあげられなかったから……」
少年はそう言われて、正に初めて彼女の口惜しさや、悔しさ、もしかしたら申し訳ないとさえ想っているかもしれない気持ちを知った。
スミカが全くの初めての女性であった上に幾つも年上だったから気にも掛けていなかったのだが――もしかしたら無意識に気に掛けないようにしていたのかもしれないが――彼女の方は自分に貞操を捧げられなかった事をずっと思い悩んでいたのだろうかと。ずっと心に秘めていたのだろうかと。
其れが今、涙となってスミカの眼から溢れていると思うと
――気にしなくていいのに。
――何で気付いてあげなかったんだ。
と云ったように少年の心は様々な感情が入り混じった。
そしてそんな風に考えてくれていたと云う事は、其れだけ自分の事を想ってくれているのだなと思い、胸中に沸き立つ物を感じ、眼を瞑ったまま泣いているスミカに、もう一歩近付いて――
「ひゃあんっ!」
自ずから肉を押し退けて、花弁のように皺だっている穴に口付けをした。
視界を塞いでいたからか、彼がそうするのが見えなかったスミカが驚愕で涙も止まった眼を見開きながら身体を跳ね上げさせ、手を伸ばして制しようとするも届かず、声を上げる。
「まっ、待ってっ! あ、洗ったけどっ……汚い、からぁっ!」
「そんな事ないです……スミカさんのここ、可愛くて、綺麗です」
「やっ、やぁっ!」
少年は其処に関してはあまり知識が無かったが、スミカの不安を取り除くように其処を愛でる事を、慈しむ事だけを念頭に置いた。啄ばむように何度もキスをしながら、皺の一つ一つの線を、そして穴の淵をなぞるようにすると、かぶりを振って嫌がっているが、伸ばした手も宙で震えながら、やがてベッドに沈んだ。
スミカが恥じている通り、確かに其処は排泄の器官ではあるが、しかし自分はスミカの為なら、そんな所に舌を這わせられる事に驚くと同時に自分もそれだけ彼女を愛している証拠なのだなと考える、そんな大切な人と想いが通じている事に感動を覚えた程だった。
「いやっ!いや……いやっ……あ……あぁ……ん……っ」
恐らく其れはスミカの方も同じなのだろう、艶やかな声色でありながらも感じているのを否定するような風だったのだが、気付いたら甘えるような嬌声へと摩り替わっている。
感動を覚えたと言ったが、少年はまた面白さのような感情を抱いていた。其処は唇や舌の先で刺激を加えると、其れこそ自分達の性器のように、ひくひくと戦慄いたり、引っ込んだと思えば窄めた唇のように突き出てきたりと、寧ろ動きは雄弁ですらあった。
そして其れを見ていると弄る度に物欲しそうに蠢く秘肉の様子を思い出し――
「――うぁぁっ?! やっ!なに?! うそ! うそ、うそ、うそぉっ?!」
申し訳程度に暗がりを見せている口に舌を根元まで挿し込むと、スミカは戸惑ったような声を上げた。
只、矢張り受け容れる事が機能としての前提の膣と違い、追い出そうとする場所である事はまざまざと思い知らされた。収縮の過程で引き込もうとするような動きもあるのだが、圧倒的に外へ外へと云う力が働いている力の方が舌先に感じられるのだ。引き千切られそうだと思えるぐらいに。
だが少年は同時に期待を感じずにはいられなかった。
舌程度の小さな突起で此れなのだ。もし、もっと大きな物なら更に力は強くなるだろうと。侵入される事は想定されていないのだろうから困惑するように暴れ回るだろうと。
「やだっ、やだぁ……っ、挿ってる、挿ってる! 挿ってるぅっ!」
まるで駄々を捏ねる子供染みた声を上げながら、少年は菊門を拡げるように舌を大きく回して腸壁を愛撫していると、やがて舌先に苦味を、そしてぬるりとした滑りが感じ始められた。まるで直ぐ真下にあって、今も涎を垂らしている膣が受け容れる準備を始めたようで――実際は全く反対の排泄し易くするための分泌液なのだが、そんな知識は無く、先程も嬲っていた秘所と照らし合わせて、そう考えた――彼は潤滑を感じながら舌を引き抜くと、
「やあぁぁ……あぁっ!」
スミカは一際甲高い喘ぎを漏らして脚の筋を張り詰めさせたのが、太腿の裏側からに位置している少年には良く見えていた。また腸液と唾液でしとどに濡れて拓かれた陰門が、普段ならきゅっと窄まっている形へと戻ろうとしているのだが、ふやけている所為か、徐々に緩慢に暗がりを閉じていくのを見届けてもいた。
開きっ放しにしていた口許から唾液を諾々と垂れ流していた上に、汗の滲む尻肉に挟まれてもいて、また結合部から漏れ出した粘液などが付着している少年が顔を腕で拭っていると、尻を高々と掲げたままの格好でベッドに顔を突っ伏しているスミカがくぐもった泣き声を発しているのが聞こえた。
「こんな、こんな……見られるだけでも、恥ずかし……のにぃ……もう、もう嫌ぁ……」
泣いているのは、本日これで二度目である。
貰って欲しいと言ったのは彼女からであるが、まさか舌を這わせられるとは想像もしていなかったらしい。そんな嗚咽を聞いている少年は、平素は豪胆な振る舞いをするスミカと云えども、其処を見られて恥ずかしがったりするのは、矢張り女性なのだなと苦笑交じりに感慨深そうに思ったのだが、慰めるように震えている肩を取る。
「スミカさん、泣かないで。僕、全然嫌じゃないですよ」
「嘘、嘘……絶対、嘘だ」
「本当ですよ。嬉しいんです――プレゼントみたいで」
其の言葉に反応したスミカがシーツから僅かに顔をずらして、眼が腫れぼったくなっている所為か、恨めしそうにも見える仕草の――勿論、彼女にそんなつもりは無いだろうが――上目遣いで少年を見る。
「――本当、か?」
すると問い質された彼は言葉で説明するのが面倒だと云わんばかりに無言でスミカの手を取って引き寄せると、股間で我慢も限界だと訴えている肉棒に触れさせて、しゃくり上げている少女のものから途端に獣性を宿した女のものへと変貌を遂げた彼女の眼に訴えかけるように真正面から見据える。
――さっきから、こんなになっているんです。
勃起している事を嬉しげに感嘆していたスミカが口走ったように。
するとスミカは大事な物のように、二三度握っているペニスを丁重に扱いてから、「ちょっと……」と言い残して四つん這いで何処かに向かい始めた。少年が言われた通りに、ぷるぷると震える桃を見守っていると、彼女はマットレスの淵から身体を投げ出すように下に手を遣り出して、直ぐにベッドの下の隙間から何かを取り出して、戻ってきた。
手に握られているのは中に液体を満杯に湛えているらしいペットボトルのようなプレスチックの容器で、一体何なのだろうかと正座のような姿勢で座っている少年が不思議そうに見ている。そして彼の正面でスミカはおもむろに蓋を開けて――
「え、ちょ、ちょっと――ふわっ!」
大きく開かれている容器の口から、ぬらぬらと宙に線を引いている、どろりとした液体を垂らして、聳え立っているモノに浴びせ始めた。凝縮した愛液を掛けられたような触感で、少年は驚きが入り混じった嬌声を上げる。
料理用の油のような強い粘度を持つ此の液体は所謂ローションと云うもので、摩擦を減らす道具だ。
「スミカさん、これっ、なに……あ……っ!」
「ア、アナルでする時は……これを使わないと、その……切れてしまうそうだ」
これから責められる場所もあって、たどたどしくスミカが説明すると、少年は「そうなんですか」と言葉の合間に油を垂らされる感触に震えながら応えた。しかし彼には疑問があった。
「これ、何時の間にベッドの下に――」
「パーティーの時にトイレに行く振りをして……ついでに洗った」
其れを聞いて少年は道理でスミカが此の部屋に連れていけと言ったのかを、そして肛門に顔を寄せた時に”洗った”と言っていたが、何時洗ったのかを理解した。
「なるほど。じゃあ、今日の為に用意してたんですか」
「ああ……それと、一週間ぐらい前からずっと――」
「ずっと?」
「慣らす為、というか――お、お前のを受け容れる為に――少しだけだぞ、少しだけだが――」
容器の半分程の潤滑油をペニスに塗した後、馴染ませるように手で扱いているスミカがゆっくりと、どうにでもなれと云う風に惚けた顔を上げて言った。
「――”ここ”で……オナニー、して、た……」
「―――っ」
其れを聞かされた瞬間に感受性豊かな年頃の少年の脳裏に、まるで自分の眼で見たかのような情景が、まざまざと浮かび上がった。
――独りベッドの上に仰向けで転がるスミカが恐る恐ると云う風に”其処”に震える手を擦らせ。
――或いはうつ伏せになって、細く美しい指を自ら穢すように”其処”に抽迭させて。
――いつか”其処”を犯されるのを夢見ながら、戸惑いがちな声で喘いでいる。
「あ……」
光が瞬くような一瞬で幾つもの妄想に囚われた少年は、辛抱堪らないと云ったように盛った動物の如く鼻息荒々しく、ひったくるようにローションを奪うと、自分に向かって四つん這いになっているスミカの肩を掴んで横に倒す。そして為すがままに体重を流された彼女を仰向けにさせ、空いている手で細く締まった細い足首を掴み、広げるように持ち上げた。
「きゃあっ!」
股座を広げられ、二箇所の恥部を暴かれたスミカが初心な少女のような、甲高い恥じらいの声を上げる。
しかし蜜に塗れた秘唇は既に牡の味を、そして快感の味を知っている。何度も弄られ、絶頂すらも訪れた花肉は娼婦が引くルージュのように毒々しく真っ赤に充血している。
そして陽の目にすら当たる筈の無く、況してや触れる事すら無いであろう小さな窄まりは、なるほど開拓の地均しが済んでいるようで、脚を広げられるのと共に僅かに口を開いている。
そして少女は見られて羞恥の声を上げた筈なのに自由な手で隠そうともしないのだ。
今まで其処で性交を行なう事など彼女に提案した事も、引いては考えた事すら無い少年であったが、眼の前に肉を吊るされたように其れに躍り懸からんとしているように眼をぎらぎらとさせている。
「スミカさんっ! いいんですよねっ?!」
「う、うん……でも初めてだから――優しくだぞ。優しく――して、くれ」
そう吼えながら牙のような八重歯を唇から覗かせた少年にスミカは恐怖めいた物を覚えたようで、おどおどと正に未通女のような口上を並べるも、矢張り既に男を知っている立派な女である。緊張ではなく、期待による昂奮で息を荒くしているのだ。
「ひゃ……あぁんっ!」
許可を得た少年は手に持っているローションの容器を引っ繰り返して残っていた半分を其処目掛けてぶち撒けると容器を掘り投げた。そして空いた手でスミカが肉棒にそうしたように、潤滑剤を乱暴な手付きで塗していく。
ぐちゃりぐちゃりとスミカ自身の愛液も相俟った今まで彼が聞いた中でも最大の淫音が立っている。
そしてぬめぬめとした線を宙に引きながら少年がスミカの下腹部を厭らしく、淫らに、そして妖しく輝く滑りに装飾させると、同じようにてかりに覆われているペニスに手を添えて、其処に近付けさせていき、念を押して脅しかけるように言葉を繰り返す。
「――挿れます、挿れますっ……スミカさんのお尻に、挿れますっ!」
「うん……来て」
自身の”初めて”を捧げる事に悦びを感じている――同時に地均しの時点で知った快楽の予感を胸に秘めている――スミカが既に恐怖など微塵も窺えない様子で懇願すると、槍を敵に向けて構えるように茎中から腺液を垂らすように潤滑油を流している淫茎を確りと支えながら少年は更に近付いていく――。
「く、来る、来る……! あっ! あっ、あぁっ!」
向けられる穂先から一時も眼を離さないでいたスミカが浮ついたように呟いていると、周囲が黒ずんでいる窄まりと鈴口同士が口付けを交わす。
一週間に渡る前準備と先程の舌奉仕、そしてローションとお膳立ては揃っているが、押すだけで入りそうにも無いと思った少年は「力、抜いて下さい……!」と呼び掛けながら先端を回すように捩じ込んでいく。
「は、入る……っ!入っちゃう、入っちゃう!入って、きてるのっ!」
穂先の二辺が徐々に飲み込まれていく中で、馴らしの段階では在り得なかったであろう太さの異物が侵入してくる感触にスミカは困惑しながらも迎え入れているとも分かる甘い声色を上げる。
少年の方は既に膣とは違う肉襞にさわさわと撫でられる新鮮さに期待が募っていくようだ。
その時だった。
「あぅぅっ!」
一気に進みたい欲望を抑制しながら腰を押し出していた少年であったが、何かの拍子にスミカが力んでしまった事で接合部が締め付けられた際に身体が仰け反って――
「――く……はぁぁ……っ!」
反り立っている雁首の段差、棒の半分程までもを熱い腸内に呑み込ませるように奔らせてしまった。
”挿った"と云う実感を抱く暇も無い程に、一気に菊門と腸を拡げられてしまったスミカは身体的なショックで肺から空気を吐き出しながら背骨と背筋をぎりぎりと軋ませるほどに仰け反った。
そして唐突な刺激と突然出現した異物の存在を感知したアヌスが役目を果たそうとして括約筋が唸りを上げると当然のように其の異物はうねり始めた肉筒に扱き回され、出口に締め上げられる形になれば、少年にはもどうする事も出来なかった。
「――あおぉッ?!……待ってぇ、お願い……待ってぇ……はおううっ!」
「スミカさん、ごめんなさ……止められないんです……腰っ、止まらないっ、よぉっ!」
臀部を打ち据えられながら更に侵入されて、そして引き抜かれる抽迭をされて、快くも余りに過度な排泄感の快感に襲われてスミカが獣の咆哮のような嬌声を上げながら制しようとするも、少年は涙声で彼女に謝りながらも神経の回路を焼き尽くすような電流の所為で、本能と腰が直接に繋がってしまったように勝手に下半身を前後させてしまっている。食い千切られるような痛い程な締め付けであっても。
「壊、れる……!わたしっ、壊される……こわされてるぅっ……!」
「うあぁーっ! うあ! あ! あ!」
下腹部と尻肉が弾き合う音と、速く異物を排撃しようとしている腸の分泌している腸液、苦痛か性感かも本人は判別付いていないが其れでも伸縮と収縮を繰り返している菊門の上から、とろとろと流れてくる愛液と、傷口を拡げるように侵入と脱出を繰り返している肉棒の先から湧き出している腺液と云った天然の物に、多量の人口の潤滑剤が入り混じって、地面に雨のようにジェルが降り注いでいるような凄まじい程の攪拌音と、殆ど悲鳴に近い少年とスミカの嬌声が、二人の焼き切れたような脳内を犯している。
「ごめん、なさい……ごめんなさぁい……っ」
少年は無体な責めをしてしまっている事で申し訳ない気持ちで胸が張り裂けそうになりながら自らの抽迭で、芯の入っていない声を漏らして、只がくがくと揺さ振られているスミカに謝罪を繰り返していると、虚無に包まれたような眼が彼を見ると、ぱくぱくと力無く開く口から搾り出したような声が発せられた。
「いい、いいから……私を壊しても、いいから……」
身体に力が入らず、意識も疎らであるから、どうしようも無いのはスミカも同じで、それなら少年に全てを委ねてしまおうと考えたのだ――”初めて”を捧げる目的も既に達成されているのだから。
「――スミカさんっ!スミカさん! スミカさん! スミカさぁんっ!」
自身を情けなく思っているように、そしてスミカの事が大事で堪らないと云った風に少年は彼女の名を何度も呼ぶ。
――こんなに酷い事をしているのに。それなのに彼女は受け容れてくれる。
そう思うだけで彼は胸が一杯になる。
しかし、それでも矢張りまだ彼女に苦痛はあるのだろう。嬌声の中に時折、嫌な咳のような音が混じっているのが聞こえ、せめて少しだけでもいいから楽に出来ないかと考え――
「あおっ、ん、おぅ……はっ、ぐっ !……ふうぁぁっ!」
勝手に動く腰で直腸を責めながらも、湧水のように蜜を垂らしている秘所に指を挿し入れると、熱い入り口が情熱的にしゃぶってくる。すると苦しそうに眉間に皺を寄らせてもいたスミカの顔の筋肉がたちまちに弛緩した。
更に少年は此の何処か恐ろしい快感を早々に断ち切ろうと思ったのか、手を動かし易いように上体を僅かに反らせると――同時に角度の上がった淫茎が直腸の天井を突く形になって――膣の床を擦り始めた。
まるで肉越しに自分のモノを扱くように。
「だ……めっ! だめ! それだめっ! ヘンなっ、ヘンな感じっ、なのぉっ!」
其れは膣肉越しに腸壁を押し付ける事になるからか、スミカの方にも強い刺激となったようで、少年は蜜壷に入れる指を増やして更に早く引っ掻くようにした時だった。
途端にペニスを包んでいる肉筒全体がうねり上げると襞が無数の指のようにさわさわと撫でてきて、殊更に根元を締め上げられて――
「――うあぁぁぁ……っ!」
「――ふっ、あ、お、おぁ……おち○ち○っ……びくびくっ、ふるえてるぅ……」
堪え切れなくなった肉棒が白旗を上げるように、そして肉襞の隙間に染み込ませるように白濁を撒き散らした。
根元を強く締められているせいか、一気に放出する事が出来ずに、小刻みに何度も何度もスミカの言葉に促されるようにしながら熱の凝固を吐き出していく。
快いが絶頂の最中では苦痛に近いと感じられる、粘膜に包まれながら。
「くぁっ」
「は、お、はお、ンうぅぅ……」
漸く射精を終えて少年が菊門から肉棒をゆっくり引き抜くと、スミカが声を漏らした。
すると、ぽっかりと空いた穴から空気の入るような汚らしい音と共に白濁がどろりと流れて、様々な液体の沁みが広がるシーツに垂れていった――。
「スミカさん、お風呂行きましょう」
「んん……分かった」
仰向けで横たわっているスミカに少年がそう呼び掛ける。
性交の後はそのままの姿で就寝する事も珍しくない二人であるが、流石に今回は汚れが目立つ。
最後のアナルセックスでスミカが果てたかは定かではないが、其れ以外による疲労から来る虚無感に近い疲労感を抱きながらも二人は浴室に向かう。脚の付け根辺りに違和感があるのだろう、肩を支えるように少年がスミカに寄り添いながら。
二人共、裸体のままなので湯を浴びる上では楽と云えば楽である。
浴室に入るなりバスタブに湯が入れられていなかったので蛇口を全開に捻ると、滝のように流れ出た湯によって二人はあっという間に室内に濛々と立ち込めた白い湯煙に包まれた。
少年がノズルを取って、率先してスミカの身体にシャワーを浴びせているのは、矢張り彼女の方が汚れが多いからだろう。身体中にこびり付いていた彼の吐き出した精液や、ローションが剥れるように落ちていく。
そうして充分に湯を浴びたスミカが椅子に座ってシャンプーを手に取ろうとしたのだが、少年はある提案をした。
「僕が洗ってもいいですか?」
「――ん? 別に構わんぞ?」
始めて、そんな事を言われてスミカは理由が分からなかったのだが、髪を洗われるのも面白いどうかと思って彼に任せてみる事にした。とはいえ彼女にとって、長く艶やかな髪は自慢でもあるので、強く擦るななどと注意をしてもおかしくないのだが、しなかったのは矢張り信頼しているからだろう。
そして少年は信頼通りにシャンプーを泡立たせた手を実に丁重で優しげに撫でるような手付きで動かしながら、
「つやつやで、綺麗ですね」
そんな事を言うのだからスミカにしてみれば及第点どころか、合格であったろう。じっくりと時間を掛けて毛先まで慈しむようにされ、そしてシャワーで泡を流される時に眼を瞑ったままで髪を撫でられると、眼を瞑っていながらも確かに背後に彼の気配を感じる安心感を抱いてスミカはご機嫌であった。自分でするより洗髪後の髪艶が普段よりも良い気がしたものである。
「――うん、ありがとうな。今度は私がするよ」
「はい、お願いします」
わしゃわしゃと頭髪だけではなく、頭皮まで洗われる感触に少年は流れた泡が眼に入るのを防ぐ為だけではなく、真実心地良く、其れを甘受する為に目蓋を下ろしている。すると真っ暗の中でも背後の気配が感じられて、まるで見守られているような安心感に包まれ、スミカもそうだったのだろうかと考えた――そして見事に正解である。
「さらさら、だなぁ」
また相手の髪に触れる心地良さも同じかもしれないと思った――言うまでも無いだろうが、これも正解である。
「今度から、こうしましょうね」
「ん、そうだな」
流石に今日の状態で互いの身体を洗ったら時間が掛かるので、二人は並んだ椅子に座って性交の痕を落とした。
牡と牝の臭いが取れて、二人の身体からスミカの嗜好で購入されたボディソープの、桜の香りがほんのりと漂う。
上から下まで洗い終わった頃には――実際には身体を洗い始めた時には既に――二人は白いバスタブの両端に向かい合うように座るようにして全身を湯に浸からせると、
「ふぅ……」
どちらも似たような溜息を漏らして水面に緩やかな波紋を広げた。
矢張りスミカの趣味で――二人が今の関係になる前に購入された物だが――それなりに広めのバスタブであるが、それでも膝を突き合わせて、脚を絡み合わせるようにしていると、少年が湯に沈んでいるスミカの黒い髪を掬い上げて、ばらけた毛を手繰り寄せて一本の束にして手の上に乗せると、其れを親指で撫でながら言った。
「僕、スミカさんの髪、好きです」
そう言われたスミカは何を言うでもなく、背中を預けてた湯船の壁から上体を投げ出して少年の白い髪の毛に触れて、束ねた数をくるくると回すように摘みながら呟いた。
「私もお前の髪、好きだぞ」
そうして少年は髪の束を辿るように上へ上へ撫でていきと、スミカは濡れた短髪を均すように下へ下へと撫でていくと、自然に相手の顔へと手、そして視線が寄せられて、最後には頬に添えるようにして眼をばちりと合わせると――
「ン」
少しだけ身体を前に出すようにして、丁度バスタブの中央で喉を鳴らしながら唇同士を触れ合わせたのだった。
「ねえ、スミカさん」
「んー?」
キスを終えて照れ隠しで二人がはにかんでから少年が、バスタブの淵に肘を置いて心地良さそうに頬杖を付いているスミカに呼び掛けると、彼女は水面から立ち昇っている湯煙のように気の抜けた返事を返した。
すると少年は曲げながらも投げ出している彼女の脚の太腿辺りを自分も前に出るようにしながら引き寄せると、バランスを崩して湯に顔を突っ込ませそうになった彼女の顔を、先程キスした時のように頬に手を遣って支えて、至近距離で自分と見詰め合わさせた。
「急に何だ」
「もう一回したいです」
スミカが「え?」と聞き返す前に少年は既に浮力を手助けに彼女の身体を抱え上げて、曲げた膝と身体の間で挟むようにしていた。浮き上がらせた瞬間、俄かに荒れた水面を突き破って白い乳房が現れていた。
そうしてスミカを見上げるような格好で彼は言った。
「僕、スミカさんの初めてを貰って、凄く嬉しかったです」
「そ、そうか。そう言ってくれると私も嬉しい」
「それに凄く気持ちよかったです」
「うん……少し苦しかったけど、私も良かったよ」
先程の事を思い出したのか、スミカは湯に浸かって紅潮している頬を更に赤らめた。
「でも。僕、やっぱり――」
「やっぱり?」
「――”ここ”でしたいです」
少年が示唆するようにそう言うと、浴槽の中で湯を掻き分けながら聳え立ったモノが、真下からスミカの秘所に触れた。
「ねぇ、いいでしょう? 最後に、スミカさんの、おまん○を――玩具に、したいです」
「もう、本当にしょうがない奴だな」
少年のお強請りにスミカは呆れるような、やれやれとでも言いたげな口調で言ったが、その実、眼には喜悦を滲ませていた――結局、此の二人はどちらも寂しがり屋だったり、どちらも甘えん坊だったりと、そして殊に性欲に関して似た者同士なのである。
「――いいぞ、こっちも、お前のモノにしてくれ」
「はいっ、ありがとうございます! あ。それとですね――」
「ん?」
「今日の中で、一番エッチな、スミカさんを――見たいです」
何か未知の物に期待を籠めるような色を眼に爛々と輝かせながら少年がお願いをすると、スミカは挑戦的な光を眼に宿らせた。
「ああ――分かった」
「――あぁんっ! すごい! すごい、のっ! おまん○ぉ! おま○こぉっ! 気持ちいい、気持ちいいっ、気持ちいいのぉおっ!」
「あぁー……すごい、スミカさん、すごいよぉ……」
バスタブの中央で上下に重なり合っている二人が、水面を揺らして、ばしゃあと高波を立てながら、湯を浴室のタイルに覆われた床にぶち撒けている。
首の裏辺りで腕を交差させるようにして縋り付きながらも、蜜壷の天井に肉棒を擦り付けるようにして上体を反らしているスミカが後ろに行かないように抱き締めながら、少年が下から突き上げると、彼女は其れは愉しそうに、そして悦ぶようにはしたなく声を張り上げている。
僅か数分に満たないような結合の中で、自身の性器を口から発した数は両手の指では数えるのに足りないぐらいだ。そして其れだけではなく、
「だめ、だめぇっ! おち○ち○! 熱くてぇ……太い! おち○ち○、奥まで来てるうっ!」
男性器のを事を、更に褒め讃えるような言葉も幾度も口走っている。
そして少年は湯に浸かっている肉体的な、そして精神的な浮遊感を抱いて、最高の愉悦の雲の中を漂っている。
どんなフルコースや肥えた七面鳥よりも豊満で芳醇な肉が踊っている上に、どれだけむしゃぶりついたっていいと来ている。塩気の利いた味や、甘い香りだけではなく、所々柔らかかったり、こりこりと固く凝っていたりしていて舌触りも良い。
「私ぃ、おち○ち○、好きなのぉ……お前も、お前のおち○ち○もっ、好きっ! 大好きぃっ!」
世界の何処かでは今日を讃えるコンサートも広いホールなどで開かれているのだろうが、彼だけの為に、しかも其の耳元で美しい媚声による歌声が高らかに響いているのだ。
誰しもに訪れる日などではなく、彼だけを讃えるために。
汗や涎、そして浴びた水が飛んで、輝く宝石のような雫に彩られる彼女は、装飾や彩られただけの木など比類にならないぐらいの美麗さを誇っていて、数百万個の電球が生み出すイルミネーションでも到達出来ない情景を作り出している。
「やぁっ! あぁぁンっ! あっ、だめ……私、もう、もうっ、イッちゃう……っ!」
「僕もイキそ……うぅっ!」
「あぁううぅっ!」
恍惚とした眼で見詰め合いながら二人は相手に囁くと、少年はスミカと繋がったままで、そして抱えたままバスタブの壁に彼女の背中を押し付けた。
「――きゃぁぁんっ! やっ、やんっ! 激しっ……激しっ、すぎるぅっ!」
そうして固定したスミカに向かって滅多矢鱈に腰を遣い出すと、まるで浴槽の中に棒を突っ込んで掻き回すように水が立って、二人の身体を波が打つ。
押し込められながらもスミカは男根を咥え込んでいる秘唇で扱き上げると、少年が蜜壷を肉棒で突き上げて、二つの波が立つが、丁度ぶつかり合った水紋のように交じり合っていく。
「スミカさんっ! イこうっ、一緒に、一緒に! 一緒にっ、イこうっ!」
「あっ、あっ、あっ、あぁンっ! うんっ……イクっ! お前と! 一緒に! イクうっ!」
命を掛ける契りのように、そう結んだ二人が相手の身体をきつく抱き締める。
少年はスミカの身体が軋む程に。
スミカは力の不足分を吸引する膣を締め上げる事で。
そして、このまま一つになってしまうのでは無いかと思える程に隙間無く密着した二人の鼓動がどくどくと高鳴りながら重なり合うように共鳴した瞬間――
「――あああああああーー……っ!」
嬌声の叫声の通り、二人は同時に殆ど同じ鬨の声を張り上げ、同時に天を仰ぎ見るように仰け反って、同時に恍惚の頂に昇り詰めた。
一回一回が長く、そしてまるで爆発のように強く脈動する男根が包んでいる物の中を全て満たすかのように瀑布のように熱水を奔出させると、挿っている物を押し潰さんばかりに収縮する膣は奥底へと引き摺り込むように膣壁、其の肉襞一つ一つを戦慄かせる。
絶頂が絶頂を誘うような快楽の中で、二人は声にもならない嬌声を漏らし、視界をちかちかと明滅させながら、覚束無い意識を留めるように互いの身体に縋り付くのだった――。
気付いたら三分の一は湯が亡くなっていた浴槽の中で二人して失神しそうになるのを何とか堪えた少年とスミカは風呂場を出ると、ぐしょぐしょになったシーツを取っ払って、新たに引いたスペアのシーツの上で向かい合って寄り添いながら寝転がっている。
「私の身体……隅々まで、ふふ……お前のものに、なってしまったな」
「ええ……そうです。スミカさんの身体は、僕だけの、ものです」
どちらが言い出した訳でもなく、冬だと云うのに裸のままで布団を被る事無く、お互いの身体で相手を暖めていて、昂奮覚めやらないのか、そんな事を囁き合いながら。
そうしているとスミカがもじもじと恥ずかしげにしながら口を開いた。
「それと、さっきの約束だけど――覚えてるか?」
「はい。スミカさん――愛してます」
「うん、ありがとう」
何の約束かを聞くことも無く少年が答えたのを聞いて、スミカはとても嬉しそうに微笑むと、彼の胸に顔を寄せた。
「あはは、どうしたんですか?」
「――甘えたいって言っただろう? ほら、こういう時はどうするんだ?」
そう問われて、少年は自分の胸元で上目遣いで見遣ってくるスミカの身体を抱き締めると、心地良さそうな溜息に胸板を擽られた。そしてスミカは猫が甘えるように頬を摺り寄せるなどをしていたのだが、暫くして其れも止んで無口になったと思ったら、
「……スミカさん? 寝ちゃったのかな」
安らかに眼を瞑って、寝息を立てている。
その緩慢な鼻息を擽ったく感じながら少年は、自分がこんな風に眠るのはしょっちゅうだが、彼女の方がこうなのは初めてかもしれないと思い返して、眠りながらもしがみ付いているスミカに言った。
「……普段だって、もっと甘えてもいいんですよ」
そして肌触りの良い黒い髪の毛を撫でながら、身体をうんと伸ばすと、ベッドの傍のサイドテーブルの引き出しの中から何かを取り出した。
そしてスミカの手を握ると、寝息を子守唄にして彼も眠ったのだった――。
翌朝、少年の部屋ではスミカが大騒ぎをしていた。
「こ、これ……これっ……!」
其の声に起された少年が眠たい眼を擦りながら身体を起して「おはようございます」と挨拶をしたのだが、スミカには聞こえていなかったらしく、まだ動転しているような素振りを見せている。
「どうしたんですか?」
「これ、これは……」
そう起きた少年にスミカは自分の右手の人差し指を見せると、其処には窓から差込む太陽の光できらりと光る金属がある。
「指輪です」
「そ、其れは分かってる! そうじゃなくて……何で、私の指に?!」
「――僕からのスミカさんへのクリスマスプレゼントです」
「そ、そうか、ありがとう……いや、いつ着けたんだ? 起きたら既に」
「昨日は渡すチャンスがなかったので、夕べスミカさんが眠ってから、こっそりと」
それを聞いてスミカは突然、枕に顔を埋めてしまった。
「スミカさん?」
「お前は、こんな良い物をくれたのに……わ、私は……!」
勿論、用意してなかった訳ではない。既に昨晩の内に彼は其れを貰っている。
其の内容を思い返して、枕に突っ伏したままスミカは脚をばたばたさせている。思い出して余程恥ずかしくなったのだろう。
「僕はスミカさんのプレゼント嬉しかったですよ」
「でも……」
「可愛かったですしね」
「う、うるさい!」
揶揄われて拗ねたように、ぷいと顔を背けてしまったスミカだが、それから暫くの間は指輪を眺めては微笑むと云った風にとてもご機嫌な日々が続いた。少年も其の様子を見る度に、喜んでくれていると分かって、とても嬉しかった。
だが同時進行で二人に、ある問題が立ち上がっていた。
と云うのも前述の件で明らかにスミカも浮かれていたために、二人はアジト内でもよく隠れて手を繋いだり、キスをしようとすると何処からともなく、”ピー”とホイッスルの音が鳴ったと思ったら、ばたばたと足音がして――
「こらーっ! 其処の二人、近過ぎです! 離れなさーい!」
注意勧告を受けるようになった。
今回は並んで歩いていた所を徐々に手を握ろうとしたのをノアに見付かってしまったケースである。
この理由は言うまでも無く、パーティーの際のスミカの惚気話が原因である。
比較的寛容であった、おやっさんの命令によって不順異性交遊禁止条例なるものが制定されてしまったのだ。
風紀に関わる問題と云うのが建前であり――おやっさんとしては本音もであるのだが――他の整備士や警備の連中からすれば遊びである分、余計に目ざとい。
しかし浮かれ気分であったスミカは彼らに対して、かなり挑戦的であり、少年よりも隠れて何かをしようと云う冒険心を楽しんでいたため、監視員たちが飽きるようになるまでアジト内で暫くの間は、
「これ、そこ! ヘイ、そこ! オイ、そこ! 男女は30cm以内の距離に接近しなぁい!」
まるで全寮制の名門私立高のような光景が繰り広げられるのだった――。
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