小説/長編

Written by えむ


『こちらホワイトグリント。救援に向かう、持ちこたえてくれ』

 最初は何かの冗談かと思った。それはその場にいる誰もがそう思ったことだ。だが、それが冗談ではないことは、現実が教えてくれていた。
 翼のように見えるオーバーブーストの光を輝かせ、白い装甲に覆われたネクストが、確かにそこにあった。ネクストに乗る者なら、知らない者などいないと言っても過言ではない、生きた伝説。いやこの場合は、蘇った伝説とでも言った方がいいだろうか。
 いずれにしても、その姿は敵にとっては衝撃であり、味方にとっても衝撃の瞬間であった。敵からすれば二度と現れないと思っていた存在がいたから。味方からすれば助けに来るとは思ってもいなかったから。「ネクストで戦うのは無理」と、そう言ったのは紛れもない『彼』本人なのだ。
 戦闘中にも関わらず、その場で呆然と足を止めるフォートネクスト。だが月輪もクラースナヤも、そんなフォートネクストを狙う余裕はない。二機の注意は、完全にホワイトグリントへと向けられているからだ。

『何を突っ立てるレックス!!まだ戦闘中だぞ!?』
「…ま、待ってくれ。なんで『彼』が―――」

 棒立ちするフォートネクストの様子に、セレンが怒鳴る。だがレックスはいまだ混乱から立ち直れず、状況説明を求めようとする。
 それに対し、落ち着いた声が答える。

『事情は後で話す。まずはORCAのネクストを排除するのが先だ。違うか?』
「……っ」

その一言で我に返る。『彼』の言うとおりだ。事情など後で聞いても遅くはない。

『どうしたらいい?』

 そして続けざまに、指示を尋ねる声が届いた。戦場に先にいたのはこちらだ。状況を把握していると言う意味で、その判断は間違っていない。
 大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。そして改めて状況判断。
 状況としては2対2。フォートネクストのAPは50%前後。月輪も、それなりには削っている。だがクラースナヤに対しては、ほとんどダメージはあたえてない。
 状況としては、1対1で各個撃破が一番無難だろう。問題は、どっちがどっちを相手するかだ。
 普通に考えれば、機動力のあるクラースナヤを『彼』に任せ、月輪を自分が相手するのが得策だろう。しかし―――

「クラースナヤは、こっちで引き受けるから。アルギュロスベースの奴を頼む」
『わかった』

 ホワイトグリントがブーストを吹かし、月輪の方へと向かっていく。そしてレックスは、フォートネクストの状態をチェックしてから、クラースナヤの方へと向き直る。

『どういうつもりだ?』

 セレンからしても、レックスの選択は疑問だったのだろう。

「勝機が高い相手を選んだだけだ。クラースナヤについては、カラードのデータベースで知ってる」

 レールガンでクラースナヤを狙う。発砲、だが当たらない。しかし注意を引くことには成功した。

「勝負には勝てないだろうけど、戦には勝てる可能性があるのは、あっちだ」
『…なるほど、そういうことか』

 レックスの言葉に、セレンが納得したように呟いた。

『確かに、向こうを相手するより勝機はあるな』
「だろう?」

 そう答え、クラースナヤへ通信を入れる。

「それじゃあ第二ラウンドと行こうか。今度は一対一で」
『はっ。一対一ならなんとかなるとか思ってるのかよ。あんた、さっき俺の動きに全然付いて来れなかっただろうが』
「だな。だけど勝ち目はある。時間限定の天才相手ならではのな」
『………』

 その一言で、ハリはレックスの狙いに気づいたようだった。
 制限時間はあるが、オッツダルヴァにも匹敵する天才といえる実力を持っている。だが逆に制限時間を過ぎれば、そこで戦うことはできなってしまう。さらに…すでに戦闘開始から、幾らかの時間も経過しているとなれば、残り時間も長くはない。

『はっ、おもしれぇ。だったら、その時間内お前を倒すだけだ!!』
「やってみろよ。守りに徹したタンクのしぶとさ、思い知らせてやるから」

 売り言葉に買い言葉。そして、フォートネクストもクラースナヤとの交戦へと入った。






 白い機体が横へと跳ねる。脚部によるジャンプからのクイックブースト。そのすぐ傍らを月輪のハイレーザーがすり抜けていく。
 回避しながらも、その両手に持ったライフルの攻撃はやまない。確実に攻撃を浴びせ、同時に月輪の攻撃をかわしていく。

「……このような伏兵がおったとはな。…してやられたわ」

 この展開は予想外にも程があった。しかも、相手が悪すぎる。
 プラズマライフルとハイレーザーで応戦するも、連射も利かない攻撃では掠りもしない。だが、この状況で切り札であるアサルトキャノンを使うこともできない。この状況でPAを失えば、さらに状況は不利になってしまうからだ。狙うなら、必中のチャンスを待つしかない。
 動きを読み、ハイレーザーとプラズマライフルの時間差射撃を放つ。クイックブーストで回避する瞬間を狙い、移動先へ二発目を叩き込む。予想通り、ホワイトグリントが斜線上へと飛び込む。だが飛び込んだ瞬間、ホワイトグリントが後ろへと一瞬にして下がった。

「……二段クイックか……」

 リンクスの中でも片手で数えるほどしか出来ないと言う高等テクニック。それでもって時間差射撃を回避し、次の瞬間にオーバードブーストを展開。月輪目掛けて一気に距離を詰めてくる。どういうつもりか、馬鹿正直に正面から突っ込んでくる。

「どういうつもりだ、お前さん。誘っておるのか?」

 返事はない。だがこれは月輪からすれば絶好のチャンスでもあった。アサルトキャノンを展開。PAを収束させ、正面へと放つ。タイミングからすれば、これは必中となるはずだった。オーバードブーストによる急加速中ならば、相対速度的に弾速は上がるため、回避はさらに困難となる…はずだった。
 だが、ホワイトグリントはそれを予想外の動きで回避した。アサルトキャノンの発射と同時にオーバードブーストをカット。勢いに乗ったまま、地面へと着地し、そのままさらに体勢を低くする。低くすると言うよりも、もはや寝そべると言っていいような体勢――人間で言えばスライディングと言ったところか。
 アサルトキャノンの砲撃の下を潜り抜けつつ、両手のライフルを放つ。PAを失った月輪の装甲をライフルの弾丸が次々と撃ちこまれていく。それにも構わず、左手のプラズマライフルで追い討ちをかける。
 ホワイトグリントが上へと跳ねた。スライディング体勢から、前へとクイックブーストをふかしたのだ。ホワイトグリントの背中をプラズマ弾が掠めていく。距離が、さらに詰まる。
 ハイレーザーライフルを向ける。ホワイトグリントがライフルを向けた。同時に発砲し、互いに被弾する。距離が詰まる。近距離―――
 直後、その場一帯が閃光に包まれた。それがアサルトアーマーだと気づくのは、一瞬遅れてから。直撃をもらったと思ったのも束の間。ダメージはほとんどないことに気づく。
 アサルトキャノンの下をくぐった際、ホワイトグリントのPAも吹き飛んでいたため、威力が大幅に低下したのだ。PAが全開だったら、危ないところだっただろうがPAが少ないほどアサルトアーマーは威力が低下する。それが仇となったか。
 そう思ったのは束の間。
 至近距離のアサルトアーマーによる閃光の影響から、メインカメラが立ち直る。そこに写ったのは、画面いっぱいに広がっているのは、ライフルの銃口だった。
 すでにゼロ距離。PAもない現状で、この一撃は―――






 同じ頃。クラースナヤのハリも、レックス相手に苦戦を強いられていた。苦戦…と言っても反撃をされて手こずっているわけではない。
 ハリに限界が来るまで耐え切れば、こちら勝ち。そう考えたレックスは、攻撃を完全に放棄。ひたすら回避と逃げに徹していたのである。しかもエーレンベルクの根元へと逃げ込み、エーレンベルク本体や、砲台などが配備されている土台などを盾にし、完全に時間稼ぎに走っているのである。

『くそっ、タンクの癖にちょろちょろとっ!!』

 レックスは今、腕部制御やFCS関連のAMSを全てカットし、ブースト制御だけにAMSを集中させていた。あとは細かいことは考えず、クイックブーストを適当に滅茶苦茶吹かしまくって逃げ回る。
 それでも被弾は避けられない部分もあるのだが、そこは仮にもタンク。厚いPAと装甲に阻まれ、止めを刺すには至らない。

『無駄に硬いアセンにしやがって…!!』
「当たり前だ!!それが取り得なんだからなっ!!」

 ハリの言葉に、わざわざ通信で答えるレックス。
 だが、こうしている間にも、時間は無駄に過ぎていく。そして、限界時間は刻一刻と迫っていた。 モニターの端に表示されたタイマーが残り30秒を切る。
 ――このままではまずい。
 そう考えたハリは、最後の勝負に出た。OGOTOと両手のライフルをパージ。そして格納からレーザーブレードを両手に取り出す。
 そして連続クイックを使って一気にフォートネクストに近づき、ドリフトターンも使って左側へと回り込み、フォートネクストの横腹を狙う。いくら頑丈なタンクとは言え、レーザーブレードの斬撃には何度も耐えられない。
 案の定、連続クイックからのドリフトターンには動きがついていけなかったらしく、フォートネクストは回避する様子は見られない。
 
『もらったっ!!』

 一気に斬りかかる。このタイミングなら、迎撃も間に合わないはず。仮に迎撃されたとしても相手の左手はNUKABIRA。あれなら至近距離で撃たれても回避できる自信はある。
 距離が一瞬にして詰まる。

「……!?」

 真横からレーザーブレードを両手に迫るクラースナヤに、レックスの表情に僅かに焦燥の色が浮かんだ。レーダーのおかげで位置は特定できている。だがAPは30%少し。今レーザーブレードで斬りかかられれば、さすがに耐え切れる自信はない。
 クイックターンで向きを変える余裕はあるが、そこからさらに攻撃をする暇、もはやない。せいぜい取れる行動は一回分。
 動きを止めるには反撃するしかない。だが撃つことは出来ても、向きを変えて狙う暇はない。レールガンでは到底無理、使えそうなのは左手のNUKABIRAのみ。だがこの状況で撃つとしても、上か下か前に撃つくらいしかない。
 空に撃っても意味はない。正面に敵がいるわけではない。地面に撃っても―――と、ここで閃いた。正確には思い出した。
 レイヴン時代、対ブレード用の裏技として密かに一部で知られていた荒業の中の荒業。自爆覚悟のカウンター攻撃。APは30%ある。一発くらい自爆しても、まぁ落ちることはないだろう。グレネードの威力は頭にしっかり入ってる。

「経験が生きるって、こういう事を言うんだろうな」

 クラースナヤが目前に迫る。それにあわせ、レックスは地面目掛けてNUKABIRAをぶっ放した。
 至近距離で爆風を受け、クラースナヤがその場で動きを止める。その一瞬の隙を付いて、クイックターンをかけ、右手のレールガンを向ける。すかさず発射するも、硬直から立ち直ったクラースナヤが、その場からクイックブーストで退避する。

「この距離でレールガンかわすのか…」

 時間限定とはいえ、やはり天才と言われるだけはある。驚異的な反応速度に、思わず舌を巻くレックス。
 一方いったん距離をあけたクラースナヤだったが、距離をあけたところで不意に動きが止まった。そしておもむろに片膝をつく。

『…く、くそっ。もう少しだったのに…』

 通信機越しに苦しそうな声が響く。その声でレックスは、勝負がついたことを確認する。

「僕の勝ちだな」
『……こ、姑息な手使いやがって』。

 戦闘をせず、徹底して逃げ回って時間を稼ぐ。戦い方としては姑息以外の何物でもない。だがそんなハリの非難めいた言葉を、レックスは済まし顔で答える。

「まともに戦ったら勝てないんだ。しょうがないじゃないか。それより――もう撤退しろ。そのくらいは出来るだろう?」
『…なんだよ、それ。俺を…見逃すってのか?』
「まぁ、そうなるな。それに戦えない相手にトドメさすほど、擦れちゃいないんでな。見逃されるの不満だったら、リベンジに来たっていいぞ。ただし―――その時も徹底的に逃げまくるけどな」

 そう告げて、レックスはその場を後にし、ホワイトグリントと月輪が戦っている場へとフォートネクストを向かわる。

『……なんだよ、それ…』

 ハリは立ち去るフォートネクストを眺め、小さな声で毒づく。それからオートモードへとシステムを切り替え、クラースナヤをそこから離脱させるのであった。






「……さすがにかなわんか」

 APが尽き、完全に動かなくなった月輪の中で、ネオニダスは一人呟いた。頭部のメインカメラを破壊された後。サブカメラに切り替えて応戦したものの、やはりホワイトグリントは桁外れなまでに強かった。
 それでもいくらかダメージを与えたのは僥倖と言えよう。
 状況は芳しくない。エーレンベルクを破壊されることは、メルツェルの立てたプランでは想定内の事だったが、破壊されずに奪取される可能性は考えられていなかった。そして、それはそれで非常にまずい。
 だが、さすがにこれ以上戦うことも出来ない。それでもなんとかして、阻止しなければ。最後の力を振り絞って通信を開く。

「……切り札を出せ。ここの秘密に気づかれてはまずい…からの」

 一言。そして、シートの背もたれに身体を預ける。自分が出来ることはここまでだ。出来る物なら、クローズ・プランの成就をこの目で見たかったのだが。

「――――遂げろよ…メルツェル。テルミドール…」

 小さく呟く。それがネオニダスの最後だった。






『ネクストの撃破を確認。これで終わりだな』

 ホワイトグリントの元へと移動中に、月輪が落ちたことをセレンが知らせてきた。どうやら向こうの方も決着がついていたらしい。
 やがて向こうからホワイトグリントがこちらへと飛んできて、そこで一度合流する。後は防衛戦力と砲台だが、まぁ…この戦力だ。なんとかなるだろう。
 そう思いかけていた矢先。セレンが新たな敵の接近を知らせてきた。

『待て。新たな敵増援を確認。これは―――プロトタイプネクストだと?』
「…は?」
『………あんなものまで所有しているのか』

 それに大きく反応したのは、『彼』の方だった。搾り出すような苦しげな声。何かを思い出しているかのような、そんな感じだった。
 同時に、レックスの表情にも焦りの色が浮かぶ。幾らなんでも、今の状態でプロトタイプネクストを相手にすることなど不可能。まともにやりあえば、数秒と持たないだろう。
 詳細は知らないが、プロトタイプ――と言うネーミングだけで想像はつく。大抵、プロトタイプと言うのは、コスト度外視で製作されハイスペックであることが多い。ネクスト以上の化け物なのは確かだろう。

「――そちらは勝てそうか?」
『…難しいな。AMSの負担は軽減されたとは言え、こちらも多少無理をしている。火力があれば話は別だが、こいつの装備では―――』
「……こっちは火力はあるけど、今のAPであんなの相手にしたら絶対落ちる。…援護も難しいな。狙われたら最後だ。出来れば、ここは抑えておきたいんだが」
『そうしたければ、アレを退けるしかないだろう。何か方法を思いつけるはずだ、お前なら』
「いや、そうは言われても…」

 そう呟いて、ふとエーレンベルクを見上げた。空にそびえる巨大な塔のような姿がそこにあった。

「………」
『レックス?』
「…あーうん。とんでもない手が一つ浮かんだ」
『どんな手だ?』
「…じゃあ聞いてくれ。と言っても、そちらの負担がかなり大きくなるけど」
『……ここまで来たんだ。やるだけのことはやってみよう』

 そうしてレックスが一発逆転を賭けたプランを説明する。それは、なんというか例によってめちゃくちゃにもほどがあるものだった。だがダメージソースとしては、これ以上がないのも事実。成功すればプロトタイプネクストとは言え、一たまりもないのは確かだった

『話には聞いていたが、本当にとんでもないことを考えつくな…』
「……結果オーライってことで」
『それに現状で、他に手があるわけでもない』
『確かに。それじゃあ手はずどおりに行こう』

 ホワイトグリントが一足先に、プロトタイプネクストの方へと飛んでいく。一方、フォートネクストはホワイトグリントとは反対側へ移動を開始した。
 再び行動を開始してから、約10数秒。ホワイトグリントがプロトタイプネクストと接敵した。放たれるガトリングの弾幕を潜り抜け、クイックブーストも交えながらライフルを撃ちかける。

「…有人機ではないのか」

 数回の撃ち合いを経て、『彼』は対峙している相手が無人機だと見抜く。的確に攻撃をしてくるが、逆に動きが正確すぎるがゆえに気づいた。火力も機動性もやはり桁外れだが、有人機だったあの時と比べれば、その強さは全然違う。
 
『こっちは持ち場についた』
「わかった。予定の場所まで上手く引きつける」

 右手のライフルの弾が切れる。それをプロトタイプネクストに投げつけ、おもむろにオーバードブーストでエーレンベルクの方へと向かう。それを追って、プロトタイプネクストもまたオーバードブーストで追撃を仕掛ける。
 やがて、正面に見えるエーレンベルクの一部が大きな爆発に飲み込まれた。大きな爆音と共に、エーレンベルクがゆっくりと倒れ始める。
 レックスが立てたプラン。それはエーレンベルクの一つを倒し、それでプロトタイプネクストを押しつぶすと言う物だった。
 破壊する箇所を上手く考えれば倒す方向はある程度制御できる。あとはタイミングの勝負。だが半分以上が運の絡むだけに成功するかは微妙なところだ。
 
「……まずいな…」

 エーレンベルクの倒れる速さが少しばかり遅い。このままではホワイトグリントはともかく、落ちる前にプロトタイプネクストも下をくぐれてしまうだろう。
 背後からは、なおもプロトタイプネクストが追いすがる。少しでも時間稼ぎにと両肩のミサイルをパージする。爆発音と共に少しばかり、プロトタイプネクストの距離が開いた。だが足りない。
 そこでフォートネクストが一つの座標が送られてきた。進路をそちらへと修正し、さらに急ぐ。

『そのまま真っ直ぐで。ただし柔軟に対処する方向で』
「……そういうことか。わかった」

 フォートネクストと自分、それにプロトタイプネクストの位置を見て、レックスの考えを見抜く。そして、そのまま前と。エーレンベルクが倒れるであろうその場所を目指す。
 プロトタイプネクストに積まれているAIは、冷静に状況を判断していた。エーレンベルクが倒れていく。その方向へと向かっていくホワイトグリント。倒れるエーレンベルクに巻き込まれる可能性は非常に低い。このままの速度で行けば、倒れる前にくぐることは可能。
 地面に倒れる間際のエーレンベルクの下をホワイトグリントがくぐり抜ける。そこで外部マイクが砲撃音を捉える。センサーが周囲をチェックするも、攻撃らしい攻撃は確認出来ない。少し遅れて、エーレンベルクの下にさしかかる。
 そこで不意に正面のホワイトグリントが横へとクイックブーストで動いた。それをAIが感知した瞬間、大口径のグレネード弾が直撃する。相対速度も加わり、受けた衝撃は相当なもの。さすがのプロトタイプネクストも、これには怯まずにはいられない。そして、それが仇となった。
 余裕があったはずのタイミングを完全に逃し、正面に巨大な瓦礫が現れる。それに激突し、さらに速度が落ちたとこで、エーレンベルクが上から圧し掛かってくる。だが、すでにそれを回避する術はなかった。

『よかった、上手くいった』
「……一時はどうなるかとも思ったが」

 ホワイトグリントで正面に立つOIGAMIを構えるフォートネクストを隠し、グレネードをギリギリにひきつけて回避し、背後のプロトタイプネクストに当てる。
 倒れるエーレンベルクの下をくぐるにしろ、オーバードブースト中に正面からのOIGAMIをギリギリで避けるにしろ、本当にどうなるかと思うような策だった。最も後半のOIGAMIはタイミングずれていることに気づいたフォローでもあったのだが。
 いずれにしても、なんとかなったのは事実。残るは通常戦力のみだが、そのくらいなら今の状態でもなんとかはなるだろう。

『…とりあえず、救援ありがとう。来てくれなかったら、正直やばかった』
 
 おもむろにレックスがお礼を告げる。あの時、『彼』がホワイトグリントで現れなかったら、確実に撃破されていたところだったのだから。

「事情はどうあれ、ラインアークのために動いてくれているのも事実。それなら、少しでも礼をしたいと思うのは、こちらも同じだ」
『…そっか。で、改めて聞くけど。なんでネクストに乗れてるんだ?』
「君のやり方を参考にさせてもらったんだ。最も、そちらと違ってAMSを偏らせてるわけではないが」
『……えっと…つまり?』
「基本はマニュアル制御で、それを40%に抑えたAMSで補う感じだ」

 AMSとマニュアル制御の複合操作。レックスの場合は切り替えて利用しているが、彼の場合は最初から4:6の状態で機体を動かしているとのことだった。
 そして、後日。ホワイトグリントの戦闘記録を見たレックスは、マニュアル操作と40%のAMSでの機動の凄まじさっぷりに度肝を抜かされることになるのだが、それはまた別の話である。
 
 その後。
 フォートネクストとホワイトグリントはエーレンベルクの通常戦力と砲台を、無事に沈黙。ラインアークから技術者をその場に迎え、調査を行った。そして…その結果、驚愕の事実が明らかになった。
 ここのエーレンベルク全ては、何も発射することはできない、ただの「はりぼて」だったのである。
 
To Be Countinue……


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移設元コメント


☆作者の一言コーナー☆
 ACE:Rちまちまやりつつ、結局いつものペースで書いちゃった、えむです。
 これでエーレンベルクを巡る一連の戦いは終了。アレサ撃破とか、ハリに対するレックスの立ち回りとか、いつもより突っ込みどころが多そうな予感もしますが、いつものごとく思いつきで書きましたが、後悔はしてません。

 では、前回のコメントレスを…。

>キタキタキタッー!!ついにアナトリアの傭兵が登場!彼はどんな方法でネクストを操っているのか気になる。もしかして機体制御の大部分をAMSじゃなくてマニュアルでやってるとか?
 当たりです。6割マニュアル。。
 
>アサルトキャノン発射直後の月輪のPAを削るがあるのはおかしくないだろうか。いや、揚げ足だけど。そして次回は白栗か……、あれ? アレサは?
 言われて見れば確かに(汗 アレサは今回登場しました。…妙なやられ方で終わりましたが…。

>・・・てっきりバッカニアの散布ミサかとばかり。ここで来るか、ホワイトグリント!
 気がつけば、ホワイトグリントを出していた。何が起こっt(ry

> 企業のリンクスがアサルトセルの存在を知っている小説は今までなかった気がする。でもそうするとウィンDがORCAと戦う理由が急に企業の保身みたいに聞こえてしまうから、う~ん、難しい。
 ウィンDさんは、企業とかに縛られない人だと思うので大丈夫!!

>そーいやクラースナヤってグレ積んでたっけ?アーリヤにOGOTO・・・まるでシュープリスだけど・・・。
 背武装はミッションにあわせて変えるとあったので、適当にOGOTOに。
 言われてみれば、シュープリスですね確かにw

>なんだかジョシュアのかほりが漂うお声でやってくるなオイ
 狙ったかどうかは、本人の溝が知る。

>ま、まさかアレに乗ってるのは・・・!
 これでジョシュアだった!!ってオチだったら。一体どんな反応があるんでしょうかw 
>ここでまさかのジョシュアグリント登場!とかはさすがにないでしょうが、上でも言われてるけどレックスの真似して本当に白栗をマニュアル操縦してたりして。やはり、ドミナントは伊達ではないか。
 レックスよりレベルが上でした。伝説は伊達じゃなかった。

>相変わらず駆け引き上手いなレックス君。リンクス引退しても充分そっちでやっていけそ。
 間違いなくやっていけると思います。

>うわああああああ、その一言はまた……、こうグッときますなぁ……。もはや伝統ですらある一言。リンクスも、そのへん意識したんでしょうかねぇ
 意識したかはわかりませんが…。でも安心できるのは確かw

>な、なんという燃える展開!! ハリも大活躍、そしてレックスの策士ぶりも素晴らしい・・・! ところで、俺は以前「女だったら惚れる」発言をした者なんだが、なんだ、レックス君すでに想い人いたのか。まぁ、女だったらって仮定で俺は男だから安心したまえ。代わりに、ガチタンについて語り合いながら一緒に一杯や ら な い か?
 お酒苦手ですが、それでよければ!! 飲む場所は、バーギコでどうでしょう?(マテ

>アサルトキャノンのあれ青白いというよりコジマ色な気がするのですが
 青白くはないですね、確かに(汗 気をつけますorz

>BNW設定だったかだけど、ハリはミッションに応じて武装を変えてくるからそれでない?それはともかく、後編期待してますぞ!
 期待に添えられたものになっているか、凄く不安ですが見てやってくださいorz

>かっこいいなレックス君!しかしこの流れだとアレサに乗るのはいったい誰なのか・・・まさかのノーマル基準? 最後に、ネリスヒロイン化、諦めたらそこでry
 AI制御でした。ネリスヒロイン化についは、一応秘策が浮かんだのでそれで。

>王がまだ企んでいそうで怖いな。
 何を企んでいるかは、作者も現状ではわかりません…(ぇ

>リザイアさんが…まあ台詞あっただけでもマシか…。どうしてあんなにかっこいいのに出番がないんだ…
 なんで…でしょうねぇ(汗

>前編のラストで"OGOTOを背負ったフォートネクスト"ってあるけど、今回背負っているのは"OIGAMI"・・・あれれ?あと、ロケットパージして右手レールガン、左手NUKABIRAだと思うんだけど何時パージしたかの描写も無し。ありゃ?
 訂正しました><

 さて次回は、再びオリジナル展開。そしてついに、あの人の出番が!!
 と言うわけで、今回はここまで。お付き合いいただきありがとうございました~(・▽・)ノシ


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