Written by えむ
「これは…まずい…」
ミッションの報酬額を見て、レックスとセレンは二人して唖然とした。
それが今回のレッドバレー突破支援ミッションの報酬額であった。
「どうしてこうなったんだ…」
「お前が、この程度のミッションに、コジマミサイルなんか持っていくからだろうがっ!!」
「ごふぅっ!?」
セレンの左コークスクリューがレックスに炸裂した。そのままもんどりうって椅子ごと倒れるレックス。
事の経過は、こうだ。
まずミッション前半。進路上にはノーマルやMT部隊が配置されていたが、愛用の有澤グレネード&コジマミサイルBISMUTHによる大火力により一方的とも言える状況だった。攻撃のメインをグレネードに置いていたのもあって、コジマミサイルはさほど撃ちもせずにすんだのが―――
最後の最後に罠があった。クエーサーが2機、レッドバレーの出口に配置されていたのである。
予想外の強敵に、レックスは弾の残っていたコジマミサイルを使用することを決断する。だがクエーサーは硬かった。結果として、レックスはコジマミサイルの9割を撃ち切ってしまい――
弾薬費がめっちゃかかったのである。
まぁ運良く赤字にはならなかっただけでも僥倖だろう。報酬額は10000crだったが。
「まぁ、いい。幸か不幸か、インテリオルからもう一つのミッションが来ているからな」
そう告げて、端末を机の上に置く。
「私は少し用事があるから出かけてくる。ミッションの打ち合わせは、レックス。お前がやっておくんだ」
「わ、わかった」
半分涙目で立ち上がるレックス。セレンの一撃はすっごく痛かったのである。彼のネクストはガチタンだが、彼自身は軽量二脚。打たれ強くはない。
とりあえずセレンを見送ってから、レックスは机の上の端末を手に取る。
「ネクスト相手のミッション…?。あぁ、でも…協働相手選べるのか。んー、ここは出費抑えたいからなぁ…。よし―――」
協働相手のリストを見て、レックスは即断で選んだ。
つまり報酬額で。
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そしてミッション当日。出撃前の格納庫内にて。
「ヴェーロノーク…だと…」
フォートネクストの隣に佇むもう一機のネクストの姿を見たセレンは思わず表情を引きつらせた。
「知ってるのか…?」
「そんなことより、大変なことをしてくれたな。しかも、どうしてそれを持ってきた!?」
青筋を浮かべ、フォートネクストを指差す。その背中には、大型ミサイルBIGSIOUXが2つしっかりと搭載されている。
「僕がネクスト戦苦手なの知っているだろう。倒すためには、どうしても大火力に頼るしかないんだ」
「だからと言って、どうしてそれなんだ…っ。ただでさえピンチなんだぞ!?」
「うわっ!?ちょっと待ってくれセレン。く、首っ。首が絞まる!?」
鬼気迫る表情でレックスの襟首をつかみ、がくがくと揺さぶるセレン。抵抗しようも、パワーの差が違いすぎる。
あの二人、何をやってるんだろう…と周辺の整備員は遠巻きに眺めているが、その判断は間違ってはいない。
と、そこでヴェーロノークの方へとやってきた一人の若い女性が、その騒ぎに気がついて振り返った。一体何だろう程度のものだったのだが、なぜかレベルアップしてレックスにチョークスリーパーを極めているセレンの姿に、驚いたような表情を浮かべる。
「スミカさん…?」
「む…?」
かつて呼ばれていた名。それで呼びかけられ、ふと我に返るセレン。と同時に、腕の力が緩んだか、どさりと床の上にレックスが崩れ落ちたのは言うまでもない。
「エイ・プールか。よく私だとわかったな。久しぶりだ」
「それは、もちろんわかりますよ。お久しぶりです。…って、そうじゃなくて。今までどうしてたんですか?急にいなくなっちゃうから、心配したんですよ?」
「まぁ、色々あったんだ。事情については、後日にでも話す。あと、私はスミカじゃない。セレン・ヘイズと言う、フォートネクストのオペレーターだ」
「あ……」
自分の立場と、今の名前を告げる。ただ、それだけのことだったが、何か思うところでもあったのだろう。それだけで、エイ・プールと呼ばれた彼女は察したようだった。
「わかりました。でも後で必ず話してくださいね。ウィンディーも、心配していたんですから」
「む…。わかった。約束しよう」
「あと…もう一つ。そこで倒れている人、大丈夫なんですか?」
「…気にするな。じきに目を覚ます」
心配そうに床で伸びているレックスへと視線を向けるエイ・プールに、セレンは心配のかけらもない様子で素っ気なく答える。
やがて、それから1分もたたないうちに、レックスは目を覚ました。
「はっ!? ゆ、夢か。……なんだったんだろう、あの緑色に輝く天使は…」
「…どんな夢だ、それは」
わけのわからないことを呟くレックスに、あきれた表情を浮かべるセレン。
「そんなことより、僚機になるヴェーロノークのリンクスが来ているぞ」
「ん? あ、初めまして。フォートネクストのリンクス、レックス・アールグレイです」
「こちらこそ初めまして。ヴェーロノークのリンクス、エイ・プールです」
お互いに礼儀正しく挨拶をかわす二人。さしあたって、互いに握手を交わす。
「それにしても、タンク型のネクストを使うって珍しいですね」
「よく言われるよ。腕はいまいちなままだけどさ」
「そうなんですか? でも大丈夫ですよ。スミカ――じゃなくて、セレンさんが師なら、きっと上達しますよ」
「だと良いけど、ぶっちゃけ僕は粗製だからなぁ。…まぁ、ベストを尽くすよ。それと今回は、よろしく頼む。ネクスト相手の実戦は初めてなんだ」
「私も全力で援護しますから。だからがんばってください」
そう告げて、にこりと微笑むエイ・プール。そんな彼女に、レックスは思わずポカンと動きを止める。
「…? どうかしましたか?」
「いや、な…なんでもない。さ、さてとそれじゃあ最終調整があるから、僕はこれで」
「はい。じゃあ、私も失礼しますね。セレンさんも、また」
「あぁ…」
エイ・プールが自分のネクスト。ヴェーロノークの方へと歩いていくのを見送り、レックスはセレンのほうへと振り返った。
「セレン、知り合いなのか?」
「そんなところだ。場所が場所だから声を大にしては言えんが…。私は、元々インテリオルのリンクスでな…」
「え、リンクス…?」
初めて聞かされた話に驚くレックス。こう言ってはなんだが、レックスはセレンの過去などについてはほとんど知らない。セレンもレックスの過去はほとんど知らないが、お互いに過去の詮索は一切しなかったのである。自分から話すことがあれば別として。
「昔の話だよ。それより、そろそろ時間だぞ?」
「そうだな。よし、行って来る」
時計を見れば、そろそろ出撃の時間が近づいていた。
すぐにフォートネクストのコクピットへと乗り込むレックス。どういうわけかレックスは、AMSへの接続に、普通のリンクスの倍は時間がかかるのだ。
「ん…?」
レックスが乗り込んだのを確認したところで、ふと彼女の脳裏に少しばかりの疑問が浮かんだ。はて、何か重要なことを忘れているような気がするのだが。
思い出そうとしてみるが、思い出せない。まぁ、それなら大したことじゃないだろうと、あっさり割り切る。
「さて、私も準備せねばな」
そうして、セレンはその場を離れてオペレータールームへと歩き出すのであった。
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旧ピースシティ・エリア。そこに一機のネクストが静かに佇んでいた。
その周囲には、破壊された輸送トラックが何台も転がっている。
「これで罠のつもりか? だったらなっちゃいないぜインテリオル…。本当の罠ってのは、どういうものか教えてやらないとなぁ」
ネクストが片手をあげる。それと同時に、廃墟となったビルの陰から6機ものノーマルが姿を現した。
To Be Countinue……
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☆作者の一言コーナー☆
またしてもHARDフラグを立ててしまった、えむです。
一話で終わらせるはずだったのに、尺の都合で前後編となりました(爆
と言うわけで次回は、ついに初のネクスト実戦。
ワンダフルボティ撃破(HARD)となります。お楽しみにっ
そしてレックス達の報酬額もお楽しみにw=あの装備でクリア宣言