小説/長編

Written by えむ


 アサルトセル。それは、地球の衛星軌道上に浮かぶ無数の迎撃兵器。かつての国家解体戦争勃発前から設置され、時と共に数は増加。気がつけば、人類の宇宙への道は閉ざされてしまっていた。
 その後、リンクス戦争などを経て、大地はコジマ汚染にさらされ、人類は空へと生活の場を映さざるを得なくなった。
 それから月日は流れ、その事態を解決しようとORCAはクローズ・プランを起こす。クレイドルと言う犠牲の元、宇宙への道を開こうとしたものの、公式記録ではラインアークがそれを阻止したことになっている。
 それをきっかけとして、人類――各企業は再び宇宙への道を開くべく、一つとなってあるプロジェクトへと取り掛かっていた。
 目には目を。歯には歯を。自律兵器には自律兵器を。と言うわけで、対アサルトセル排除を主軸に置いた自律兵器を宇宙へと打ち上げて、それらを排除することにしたのだ。
 そして、その自律兵器こそが。見るものが全てが「あの変態がっ!!」と称したソルディオス・オービットそれであった。
 これは、対アサルトセルを主軸に置いた、(泣く泣く)各企業の総力をあげて作り上げた。超ソルディオス・オービットの開発秘話である。






 まず始めに問題となったのは、火力であった。現在、トーラスが設計しているソルディオス・オービットでも攻撃力は充分ではあった。アサルトセルは指向性レーダーとそれに連動したレーザー砲。あとはネクストにも使用されている半永久可動可能なジェネレーターのみの簡単なつくりであり、防御は想定された設計ではないのだ。
 だが数だけは多いため、今のソルディオスオービットの火力では、衛星軌道上全域を排除するにはとてもではないが時間がかかりすぎてしまう。数でカバーしようにも、大量生産は逆に効率が悪くなるほどだ。
 そこで考えられたのが火力の強化であった。と言っても威力ではない。射程と攻撃範囲、そして攻撃持続力に重きを置くことにしたのだ。
 この点に置いて主導となったのがコジマ技術に長けるトーラスとオーメルであった。互いにライバル関係ではあったが、それによって競い合うことが今回はプラスとなった。片方が完成すれば、それを越えたものを―――と言った具合に開発競争が始まり、最終的に両者の作ったコジマ兵器が採用されることになった。
 一つは、トーラスが開発した照射式大型アサルトキャノンであり、一定時間チャージを行った後、約20秒間コジマキャノンをレーザー状に放射するというものである。元々は別の用途で作られた技術がベースとなっていたのだが、巨大化することで照射砲として使えることが明らかになった結果、生まれたものである。
 もう一つはオーメルがコジマブレードに利用されたコジマ爆発機構を元に開発した、コジマ粒子榴弾砲なるもので、後者は圧縮したコジマ粒子を撃ち出し、着弾もしくは一定時間経過と共にコジマ爆発によって周囲を吹き飛ばす。いわゆるコジマグレネードと言っても良い代物であった。コジマグレネードなるものの存在が公開された際、有澤隆文は複雑な表情を浮かべていたとの話もあるが、それは今は関係のない話なので割愛しよう。
 こうして火力に関しては、トーラスの照射式大型アサルトキャノン1門とコジマグレネードを計32基全方位に均等に装備することで、撃破効率が大幅に上がることが確実となったのである。

 次に問題にあがったのが防御力であった。ソルディオス・オービットには厚いPAがあるものの、アサルトセルの攻撃方法はレーザー兵器であり、効果が薄くなってしまう。さらに一発の威力こそ高くはないものの無数のレーザー雨にさらされるため、生半可な防御力では突破すら不可能なのだ。
 ならば、どうするか。地を硬くするしかない。そして、そのために白羽の矢が立ったのは装甲技術に定評のある有澤重工及び高いEN防御技術を持つアルブレヒト・ドライス、そしてGWにならぶ強固さを誇るAFカブラカンを保有するアルゼブラであった。
 こちらはお互い職人的技巧を売りとした企業である部分で共感でもしたのか、足並みをそろえた技術開発により、実弾・EN共に高い耐性を持つ新型装甲を開発。重量こそ重くなってしまったものの、その高い耐久性はPA未展開状態でありながら、PA展開中のアルギュロスに匹敵することが試験により実証、採用されることとなった。
 余談として、それらの装甲を使ったタンク型ネクストを共同で開発する契約が密かに結ばれたとの話もあるが、真相は定かではない。

 機体管制システムはMSACインターナショナルとASミサイル等の自動制御システムを持つインテリオル・ユニオンが主体となって開発を進め、全ては順調に進んだ。
 だがここに来て、最後の問題が持ち上がった。あまりの装甲強化や武装増加に伴う大幅な重量増加に伴い、衛星軌道上まで通常のブースターでは打ち上げられなくなったのだ。一度重力圏から出ることが出来れば、あとは関係ないのだが、それが出来なければ何の意味もない。
 だが、ここで颯爽と名乗りを上げたのがテクノクラートであった。ネクスト用のコジマ系ロケット技術でクーガーにすら遅れを見せていたが、宇宙ロケット用のブースター技術に関しては、クーガーを越える物を持っていたのだ。恐らく、それは世界初の宇宙ロケットを打ち上げた国の企業としてのプライドもあったのだろう。
 実際、その技術は確かなもので、テクノクラートはネクスト用に作り上げていた特殊ロケットブースターを元に、クーガーからの協力を得つつ、開発を進行。ついに超大型ソルディオス・オービットを宇宙へと上げるためのロケットブースターを完成させるに至った。さらに宇宙空間における機動に置いても一役買うこととなり、その出力は超大型ソルディオスをクイックターンさせる程のものとなったのは言うまでもない。

 それから1年近い月日を費やし、ついに対アサルトセル殲滅用自律兵器は完成となった。通常のソルディオスの5倍近いサイズとなったそれは、ソルディオス・プラネットと呼ばれ、GAが提供した地上エリアに建造された打ち上げ施設から、宇宙へと上げられることになった。さらに2号機から6号機も順次ロールアウトされることになっており、ようやく宇宙への道が本格的に開かれることとなったのである。
 トーラスの一存で、第二のアサルトセルとならないように自爆装置をしっかり組み込まれた上で。






 余談であるが。
 非公式にネクストとの交戦がシミュレーター上で行われたとの記録が残されている。
 その結果は明らかにされていないが、交戦したリンクスの言葉が一つ残されている。

「しばらくは、丸いもの全部が怖くなって大変だった」

The End……


now:12
today:1
yesterday:0
total:2738


移設元コメント


☆作者の一言コーナー☆
 えむです。
 企業が力をあわせてソルディオスを強化したら、こうなった…の巻。
 VOW最終話の時点でスペックは考えていたので、この際と思って書いてみた。
 毎度ながらやりすぎた感はするが後悔はしてない。
 ちなみにアサルトアーマーはついてません。PA厚くて、近づくだけでAP削られちゃうけど(マテ

 それでは、今回はこの辺までで。
 お付き合いいただきありがとうございましたっ。


コメント



小説へ戻る