Written by 雨晴
「私ではやはりこの程度か」
後は任せるぞ、恥をかかせるな。言うと、リリウムが肯定する。戦域離脱。
あの娘は最悪死ぬかもしれんが、GAからの追加戦力に期待しよう。恐らくローディーが来る。問題ないだろう。
相手のネクスト、トーラスの新兵器を背負っていた。どういう繋がりがあるのか。
攻撃部隊の第一陣をいとも簡単に突破し、イクリプスは数秒で沈んだ。まあ、あの兵器は欠陥だらけではあるが。
レーダーに反応、距離5000。友軍か、思いの外早いな。だが、GAのものではない。通信。
『大丈夫ですか?王大人』
聞いた事のある声だ。・・・ああ。
「貴様か。ハイン・アマジーグ」
ローディーはどうした?その問いに、調子が優れないようで、との返答。
『私では不足ですか?』
「敵ネクストとエーレンベルクを落とせぬのならな」
コンソールを叩きつつ、ストレイドの状況を確認する。やはり作戦後か。APは、半分にも満たない。
だが、通信からはその状況を窺わせない声が聞こえる。
『では、戦力足り得ますね』
「ふん」
どこから来る自信か。だがまあ、この男であればやるかもしれん。リリウムも居ることだ。
「・・・敵ネクストが、トーラスの新型兵器を使用していた。戦闘データを送ってやる。接敵前に確認しておけ」
『有難う御座います。・・・アサルトキャノン?物騒な代物ですね』
相手がそう言い切ると、視界が黒点を捉えた。一瞬で交差する。
『引き継ぎます、王大人。どうか無事の帰還を』
通信が途切れる。甘い事だ。
その甘さは、戦場においては必要なものではないというのに。
『児戯だのう、お前さん。まるでよちよち歩きだ』
エーレンベルクを囲む防衛機能からの攻撃と、敵ネクストからの攻撃。正直、避けるので精一杯の部分もある。
だが、大人に恥をかかせるわけにはいかない。必死でアサルトライフルの射程内に踏み込む。
相手の重武装は、中距離戦に特化している。こちらも中距離志向だが、この火力の差では分が悪い。
と、踏み込んだところでアサルトキャノンの稼働を捉える。まずい、そう思い、右側へ機体を弾く。
薄い緑の一線がすぐ横を通り過ぎ、プライマルアーマーを削り取られた。一瞬後、冷や汗。
『・・・何だ、増援か?』
相手の言葉に、レーダーを確認する。所属企業反応無し。オーバードブーストの光が見えた。
敵機がハイレーザーライフルを上空に向ける。
隙に、プライマルアーマーの充填を兼ねて一気に距離を置く。途端、いつかシミュレーターで見た機体が目前にあった。
クイックターンで背を向けられる。
『リリウム。無事なようで安心しました』
戦場で聞く初めての声は、普段通り。
「ハイン様・・・別の任務に就かれていたのでは?」
『ええ』
簡単に肯定する彼。良く見れば、ストレイドの被弾箇所は多い。AP確認、45%?
「帰還してくださいハイン様、危険です!」
『お前さんが、ストレイドのリンクス?』
敵機から通信。
『はい』
彼の返事は、簡潔な物だった。こちらに回線が繋がる。
『防衛戦力は私が引き受けます。あなたは、エーレンベルクを』
「ですから危険です、ハイン様!」
彼の背に、コジマ粒子が注がれる。オーバードブースト。
「ハイン様!」
『追うな、リリウム・ウォルコット』
追おうとして、止められた。女性の声。
『ストレイドオペレーター、セレン・ヘイズだ。王小龍の居ない今、お前一人であのネクストは倒しきれんだろう』
「ですが!」
叫んだところで、冷静になれと釘を刺される。
『お前の今の役割は、さっさとエーレンベルクを破壊してあの男を援護することだ』
わかるな?その言葉に、無意識に歯を食いしばった。
『エーレンベルクの破壊がこの作戦の最大目標。敵機はストレイドが陽動するから、その間に叩け』
ブースターを吹かす。行き先は、エーレンベルク。
「ハイン様」
『はい』
「どうか、ご無事で」
簡潔な答えが返ってくる。
『勿論です』
先のアームズフォート部隊、王小龍、リリウム・ウォルコット。最後には、この男か。
「メルツェルの小僧めが、きつい仕事を押し付ける」
アサルトキャノン、起動。
ジュリアスはこの男に落とされた。裏切ったオールドキングの始末も、この男がつけたらしい。
テルミドールは、この男をORCAへ招くことが出来ずに悔やんでいた。
敵機接近、確認。
「手負いとは。それで挑むなど、笑わせてくれる」
一撃。敵機回避。だが、プライマルアーマーは削り取られる。ノーマル部隊のミサイルとライフル弾。凄まじい量が注ぐ。
全弾回避。
ほう、と感嘆がこぼれた。バックブースターで距離を調整しつつ、ハイレーザーライフルとプラズマライフル。
回避。
・・・む。
サイティングには自信がある。これまで培ってきた勘も含めて。近距離戦闘を臨んでくる敵に、応戦。
プラズマライフルが敵機の数メートル隣を掠める。ハイレーザーライフルは上方を。
この距離で、この弾速を以って当たらないとしたら。
「なるほど、リンクスだ」
マシンガンを被弾する。
「テルミドールが気にする訳だな」
だがそんなもの、月輪の大した障害にはならない。一歩引き、アサルトキャノン。敵機回避、しかし多少の距離が開く。
近距離と言える距離で腕部兵装。ハイレーザーライフル命中、敵機よりミサイル。当たらんよ、そんなものは。
意識がそちらに集中した一瞬で、グレネードの砲身が視界を包んだ。
ミサイルを囮にし、不意を付いてグレネードのゼロ距離射撃。爆風でこちらも被害を被るが、まだ行ける。
潜り込んだ。あとは、至近距離戦闘。こちらの間合い。
アサルトキャノン。逆に考えれば、こちらにもメリットはある。アサルトアーマーが全方位攻撃なのに対し、一方のみ。
裏を取りさえすれば。
そう思ったところで、エーレンベルクが一基崩れ落ちた。私も気張らなくては。
クイックブースターで敵機をパスし、そこで仕留められそうになるがサイドクイックブースターの全力噴射で回避する。
同時に旋回、ドリフトターン。グレネード射出、命中。被害予測が立たないが、まだまだ健在だろう。重量機は硬い。
だとしても、狩るまで。
マシンガン起動、プライマルアーマーを弾く。硬い。流石はトーラス。
マーヴ起動、プライマルアーマー上からも削っていく。
重量機は旋回が遅い。だがこのリンクスは、クイックターンとドリフトターンを巧く使い分けてくる。素早い旋回。
サイティングも申し分ない。恐ろしく近接適正の低い腕部兵装ふたつを、軽々と振り回す。
正直、先の被弾は舐めていた節があった。だが、もうそれも無い。
AP35%、問題ない。各兵装の残弾数良し。行くぞ。
そう思ったところで、レーダーが敵の反応を捉えた。
1秒でも早く、ハイン様の援護に。最大推力のオーバードブーストで、次の目標へと向かう。
と、レーダーに敵性反応。このタイミングで?そう思ったところに、セレン様が問いに答えた。
『これは・・・プロトタイプネクスト?』
最悪の遺物、その言葉に思い出す。全てのネクストの源流、圧倒的な火力、機動性。
こちらにくるか、と気を引き締めたところで、レーダーの敵反応が減速を示した。
目標は、ハイン様。愕然とする。
『どうやらお前を御指名のようだな。行けるか?』
カチカチと歯を鳴らす音。肯定の合図。
「ハイン様!」
機を向けようとしたところで、また制されて思わず唇を噛む。前進。
ならばせめてとハイン様の戦闘状況をモニタする。彼の機のカメラとリアルタイムで繋がり、そこには巨大な姿があった。
『気を付けろ。あれの動きは尋常ではないぞ』
言い終わるよりも早く、5連装ガトリングから恐ろしい弾幕が放たれる。彼が、そこに飛び込んでいく。
今の私には、祈ることしか出来ない。次の破壊砲までは、まだ距離があった。
最悪の遺物とやらが縦横無尽に大地を蹴り上げ、おびただしい弾幕を張ってくる。
後方には重量機。さて、どうするか。
考えている隙に、アサルトキャノン。サイドブースターで回避。そこには弾幕、バックブースター。
敵重量機の射程内。オーバードブースト、すぐ隣をプラズマ弾が過ぎ去って行った。
二機から距離を取り、一時充填。エーレンベルク破壊担当のリリウムの方へ行かなくて、本当に良かった。
それだけ私を買ってくれていると言う事か。
一息。敵が距離を詰めてくる。
さて、戦略は?そう考え、軽い笑みがこぼれた。
近距離戦闘。
それしか、わたしには能が無いのだから。
まずは重量機だ。ガトリングガンによる弾幕、クイックブースト連続使用で敵の未来予測を外し、同時に重量機の懐へ。
敵機プラズマライフル起動確認、回避。ハイレーザーライフル回避。発射間隔の長さも、その武装の欠点だ。
食らいつく。プライマルアーマー干渉、グレネードの使用は避けろ、これ以上無駄なダメージは負えない。
プロトタイプネクストの弾幕が濃い。丘陵を盾とする。クイックブースト、クイックターン、背後獲得。
斉射、敵機回頭、ハイレーザーライフルサイティング、外せ。垂直推力解放、弾幕確認、グレネード射出、視界を遮る。
一瞬、弾幕が止む。同時、アサルトキャノン。反応が遅れ、しかしプライマルアーマーが剥がれるだけで済んだ。
ミサイル射出、3。マシンガン起動、アサルトライフル起動。再び斉射、硬い。
グレネード展開、射出。命中。プラズマライフル被弾、AP警告。
アサルトライフルリロード、準備良し。
突撃。
弾幕接近、右方へ退避。被弾、プロトタイプネクストへミサイル牽制。
重量機射程内、マシンガン射撃、プライマルアーマーは先の攻撃で剥がれている。ここだ。
クイックターンで側方へ、相手がこちらを正視する前にメインクイックブースター、ドリフトターン。
距離30、全力掃射。プライマルアーマーは無い。直接叩き込む。
まだ落ちないか。敵機回頭、ハイレーザーライフルの砲身。戦慄。
まずい。思うと同時、半ば無意識でマーヴをパージしていた。
ほんのわずか軽くなった機体が、ほんのわずか早いクイックブーストで回避させる。
ドリフトターン。格納兵装、レーザーブレードスタンバイ。
相手の側面に対して、思い切り斬り付けた。
『敵ネクスト、撃破』
セレン様の通信。信じられない。抱いた感想は、そんなもの。
リアルタイムの映像は、彼の機動を伝えてくる。早いだとか、そんなものではない。
普段の彼からは想像できないような、そんな戦闘だった。
だが、まだ油断できない。まだプロトタイプネクストがいる。
あと1基。あと1基で彼の援護へ向かえる。
『AP80%減少。いつもなら撤退を命じるところだが、お前はやるんだろう?』
カチカチと、再び肯定。80%、分が悪いにも程がある。
だから早く、私が彼の元に辿り着かなければ。
最後の1基が、遠い。
オーバードブーストで距離を離し、状況確認。エーレンベルク残り1基。
AP20%、左腕アサルトライフルはパージ、レーザーブレードに。右腕マシンガン残弾500、グレネード8、ミサイル18。
さすがにこの短時間で複数回の出撃となると、精神負荷が酷い。だが、こんなもの。息を吐いて、目を開く。
あとは、あの化け物だ。ガトリングガンと、もう片手はコジマキャノン?その重装備であの機動か、恐ろしい。
いずれにしても、私にあるのはこの機体と兵装だけだ。あとは、いかに近距離を維持するか。
敵機接近。
行くぞ。グレネード展開、モーターコブラリロード確認、オーバードブースト。
先に仕掛けられる。弾幕を展開しつつ、接近してくる。意図は丸判りだ。追いたて、コジマキャノン。
オーバードブースト継続、交差する瞬間、グレネード。効果確認、防がれた。
プライマルアーマーも規格外か。マシンガン射出、当たらなくて良い、気を引け。
一度飛び越え、相手を伺う。旋回が遅い。クイックターンは使えないのか?
がら空きになった背へ飛び込み、恐ろしいスピードで逃げ回る白を追い立てる。グレネード命中、レーザーブレードは空振るが。
だが、突破口は掴めた。ガトリングガンが来るが、上空へ避退。再び追い越す。
高出力のクイックブーストによる相手の離脱を、オーバードブーストと未来予測、クイックブーストで押さえ込む。射撃、命中。
サイドクイックブースター、グレネード展開、射出、命中。敵機がよろめく。ブレード展開、踏み込み、命中。
背を向けたところに、コジマキャノン。弾速は遅い。一旦距離を取り、エネルギー充填。ミサイルにて牽制。
いまいち効果があったか判別し辛いが、先のふらつきを見ると一応のダメージは与えているか。
その思考の後、離れた距離を詰めるために接近。クイックブースト、敵は見失わない。
瞬間、コジマ粒子が収束していく。アサルトアーマー。
大丈夫だ、回避は間に合う。ロックを解除し、そのままの速力でパスする。
しようとした。
―――広い!
通常のアサルトアーマーの数倍はあるだろう効果範囲。離脱しきれず、機体が包み込まれる。
AP減少、戦域外離脱を推奨、AMSリンクに致命的エラー。
コンソール上に表示されているもの各々に、ネガティブな警報が列挙される。
頭が割れるように痛む。高濃度のコジマ粒子を瞬間的に浴びて生じた過負荷が、AMSを通して脳を掻き乱していく。
これまでのしわ寄せだ。
吐き出しそうになるのを堪え、目の焦点を合わせようと努力する。敵機接近、回避。
バックブースターは最大噴射。どこか遅く感じる。時間の流れが遅い気がする。
残りAP、3%。運が良いな。セレンが何か叫んでいるが、理解出来ない。
巨大な白が接近してくる。落ち着かない思考で、マシンガンを乱射する。後退。
ガトリングガンの弾幕が来る。後退、後退。プライマルアーマー再展開。
衝撃。クイックブースターによる回避。それらは、自分の意思によるものとは思えない。
自分ではない誰かが居るような、そんな感覚。
意識の混濁、以前どこかで似たような感覚を得た気がする。
あれは、どこだ?
無意識のミサイル射出、後退。
頭は割れるように痛んで、そうだあの時も、何も出来ずに呆然としていた。意識の混濁。
目前で倒れる鉄塔も、ひしゃけたテントも、その中に居たウィルの事でさえも、あの時はどうすることも出来ないで。
『ハイン様!』
けれど今は、なぜかリリウムの声だけは、とても鮮明に聞こえてくる。
あのときには、ウィルの声は聞こえなかったけれど。
距離にして450、中距離。アサルトライフルの最大射程と、レーザーライフルを以って敵機の意識を彼から逸らす。
当たらない。まるで瞬間移動のようなクイックブースト。
ハイン様は、あれについて行くんだ。改めて、彼の"近距離戦志向"の凄まじさを感じる。
だが、それはあくまで頭の隅。ハイン様の支援、それが今の私の役割。
「ハイン様、離脱してください!」
レーザーライフルの残弾が心許ない。確実に当てられるようなタイミングでしか扱わない。
先のハイン様を倣って、プロトタイプネクストの背後につく。旋回が遅いのが弱点だと、彼が教えてくれた。
レーザーライフル命中、アサルトライフル3発命中。
敵機より反撃、被弾、よろめき。
「―――ッ!」
踏みとどまり、アサルトライフル。ミサイル射出。再び被弾、プライマルアーマーが消失する。
バッククイックブーストとサイドブースターを絡めた離脱。間に合わず、更に被弾する。
「く、ぅ」
衝撃。一瞬閉じていた目を開くと、そこには巨大な脚部があった。
いつの間にか、アンビエントが座り込んでしまっている。恐怖を口に出す暇なんて無かった。
スローモーションで流れる時間の中、ゆっくりコジマキャノンが向けられる。
同時、光が見えた。
ひとつは、オーバードブースト。
ひとつは、レーザーブレード。
黒が、速力を維持したままプロトタイプネクストに突っ込んだ。吹き飛ぶ。
体当たりの衝撃まで計算されていたかのような立て直しで、ストレイドが巨大な白を追っていく。
これまで見た機動よりも、獰猛に思えた。
『ハイン様、離脱してください!』
リリウムの声が聞こえて、よく目を凝らせば巨大な白の相手はアンビエントへと移り変わっている。
全く、見苦しい。あの子を助けたいとか、守りたいとか、一緒に居たいとか。良くも言えたものだ。
『―――ッ!』
アンビエントがよろめく。助けてもらっているのは私の方ではないか。
アサルトライフルの射撃、再び被弾。
今の戦闘もそうだ。ホワイトグリントとの戦いの時も、王小龍の時も、答えを迷っていたときも、見出したときも。
その彼女が、今、巨大な白に押し潰されようとしている。
光景が重なる。ミサイル、鉄塔。
『く、ぅ』
あの時は、何も出来なかったけれど。
助けたかった人も、守りたかった人も、一緒に居たかった人も、居なくなってしまったけれど。
でも、今なら。
AP減少、戦域外離脱を推奨、AMSリンクの致命的エラー、回復。
今なら、まだ間に合うじゃないか。
レーザーブレード展開。
どんなに見苦しかろうと、私はもう、喪いたくないんだ。
オーバードブースト点火、最大加速。
だから、突き刺す。そのまま巨大な白へと体を当て込み、機体制御。衝撃で揺さぶられるが、躊躇わず前進した。
相手が銃口を向ける。射撃、連続クイックブーストで回避、ドリフトターンで後ろを取る。
切り込み、距離を維持して弾丸を叩き込んだ。敵機クイックブースト。3連のクイックブーストで追い付ける。距離200、グレネード。
ミサイル射出、ガトリングガン確認、上方回避、コジマキャノン射出、下方回避、クイックブースト。
被弾、突撃。左腕破損警告、グレネード残弾無し。グレネードパージ、突撃続行。
後方より援護射撃、精確だ。潜り込み、振りかぶれなくなったブレードを叩き込む。そのままパージ。
ドリフトターン、バッククイックブースト。予測位置に敵機が来る。射撃。残弾120、ミサイル残弾3、ミサイルパージ。
垂直推力全開、敵機の直上から射撃。押さえつけつつ、援護射撃を待つ。
来た。レーザーを確認、ライフル弾を確認、ミサイル接近、全弾命中。足が止まる。
自由落下。運動エネルギーを以って、敵機の頭部へとモーターコブラを突き刺す。振り落とされるものか。全力斉射。
残弾ゼロ、パージ。頭部を失ってもなお、ふらふらと立ち上がる。
だが、これで最後だ。
右腕格納兵装、スタンバイ。もう一本のレーザーブレードで、コアを突き刺す。
コジマ粒子反応増大、右腕ごとパージし、全力で退避する。爆発が起きた。
敵反応消滅を確認。
意思とは無関係に、ストレイドが膝をついた。良くもってくれたと思う。
吐血。
過負荷警告、ジェネレーター、脚部間接、メイン、サイドブースター。損傷報告、左腕。右腕放棄。
全交換か。そんな事を考えながら、意識は遠のいていく。
視覚がアンビエントの接近を捉えて、聴覚がリリウムの声を拾う。慌てているようにも聞こえるが、それさえどこか心地良い。
妹の声も聞こえた気がした。それは、あの子の口癖だ。私は、誇れる兄と成り得ているだろうか。
そんな場違いな思考を最後に、意識が途切れた。
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