Written by 独鴉
オリジナル・・・
・・・オリジナル任務 レイレナードの亡霊・・・
長期の休暇を終えてセレンの元に集まった整備士達は重量2脚型ネクスト サックスの整備を行っていた。
「各部の状況報告を終えたら武装のチェックを行うんだよ!何時依頼が来るかわからないからね!」
『了解』
長期休みの感覚が抜けていないのか整備士同士の雑談や無駄口によって予定されていたペースよりも作業が遅れていた。
その様子を見てレインがイライラし始めていたとき、2ヶ月ぶりにリンクスが整備場へと現れた。服装や歩き方に変化は無いのだが、
微細な変化を読み取ったのかレインは自機を見上げるために自分の横にたったリンクスに声をかけた。
「何かあったのか?」
ネクストを見上げていたリンクスはレインの方を向く。リンクスの表情には明らかに以前にはなかった決意らしきものを見て取れた。
「思い出したんですよ。例えネクストに乗っても自分がレイヴンに変わりないことを」
レインはリンクスと初めて会った時、自らを鴉だと名乗り旧式ACを愛機だと誇らしげに話していたのを思い出した。
その時はまだ何も知らない未熟なレイヴンの戯言だったが、難易度が高い依頼をこなしてきた今その言葉は戯言ではない。
「レイヴン…ねぇ」
国家解体戦争、そしてリンクス戦争を越えて今もなおレイヴンとして活動している傭兵団は数えるほどしかない。
いずれレイヴンという言葉さえ失われるだろう。
「まぁ、がんばんな。レイヴン」
レインはリンクスの肩を叩くと自分の作業に戻っていった。
エアキャリアー内オペレートルーム・・・
オーメル・サイエンス・テクノロジーからの依頼として攻撃を受けている戦略拠点の救援に向かうことなのだが、
高い報酬を約束されていても当初セレンは依頼を断ろうかと思っていた。しかし久し振りに会ったリンクスから休暇前よりも
どこか逞しさを感じたリンクスを見て実戦で試そうと依頼を受けた。
エアキャリアーの格納庫では整備の終わった後リペイントも行われ、コジマ粒子や実弾によって剥げていた塗装も
綺麗に直されたサックスが待機していた。戦闘エリア到着時間が近づきリンクスはオペレータとの通信を再度確認、
統合制御体やAMSの状態に異常が無いことを確認するとAMS起動スイッチを入れた。
「AMSとの接続を開始します」
オペレートルームで待機しているセレンにAMS起動を知らせると共にオペレートルームでは情報の記録が開始される。
[AMS接続完了 システム 戦闘モードを起動します]
コックピット内に響く懐かしい声、それはACのシステムモードを切り替えた時に伝えられるものだった。
突然の懐かしいCOMの音声にリンクスは驚いたが、それと同時に懐かしさと集中力が増していく気がしていた。
「少しは気が引き締まったか?」
「えぇ、目が覚めた感じです」
レインからこのことを伝えられていたセレンはリンクスに声をかけると予想内の言葉が返ってきた。
奴にとってネクストを駆るリンクスであろうと、自らはレイヴンであるという決意、それだけが休暇前との違いなのだろうか。
「そうか。任務が終わったらレインに礼を言うのだな」
どうであれ変わったのが内面だけなのか、それとも技量面までも変化が起きたのかセレンは知りたかった。
薬物投与によって抑えたまま高いスペックを出せるといっても、そんなものに頼る必要がなくなるに越したことはないのだ。
戦闘エリアまで残り一分の場所に到着すると格納庫ハッチが開かれサックスは地上へと降下、エアキャリアは180度旋回し
安全圏まで後退していく。リンクスはレーダーからエアキャリアが消えた事を確認するとサックスを前進させ戦闘エリアに侵入
した。ネクストの襲撃を受けたことで廃墟と化したオーメルの研究施設中央では、まるで何かを待っているかのように静かに不明ネクストは佇んでいた。
「何かを待っている…のか?」
そうリンクスが疑問に思ったとき、不明ネクストの消えていたカメラアイが光りを放ちリンクスのほうへと向けられる。
「敵性物体ヲ確認、戦闘システム起動 標的排除」
QBTで向きを変えると不明ネクストはOGOTOを担ぎ二門の砲口がストレイドへと向けられる。サックスは右斜め後方に
跳躍しながら左に保持しているSAKUNAMIの照準を不明ネクストに合わせトリガーを引いた。不明ネクストはPAを展開し
ているにもかかわらず接触するぎりぎりラインを見切りSQBで回避、サックスはグレネードが一発PAに接触し爆炎に飲み込
まれてしまった。GA製故に脆弱なPAのままであったならばそれなりの損傷は覚悟しなければならないが、PAを強化する
アクアビット制EUPHORIAを装着し調整を受けたサックスの周囲を対流するコジマ粒子は急速に安定状態を取り戻し、
僅かに装甲を焼かれただけでそれ以上の損傷負う事はなかった。
「良い機体ですね。相手も」
「レインか。戦闘中に来るとは重要な件だな?」
セレンは振り返らずに誰か言い当てる。レインも応えるつもりがないのかセレンの横に立つと戦闘映像を表示している画面を見ていた。
「相手はレイレナードの亡霊、ターゲットはオーメルの〔何か〕、そう気付いたんだろ?」
「今までの戦闘は全てデータ収集、GA・アルドラ、全て攻撃をしているが一度限りだ。だがオーメルは繰り返し攻撃を受けている。そんなこと明白だろう」
GAの軍需工場、アルドラの整備工場、ローゼンタールの生産施設、ローゼンタールが襲撃されてからはオーメル陣営
の通常施設が散発的に襲撃されている。恐らく襲撃時にハッキングも並行して行ったのだろう。
「…動きに無駄が多い。見当違いだったか?」
サックスの動きを見てセレンがそう呟くとレインが口を開いた。
「あのネクストに旧式に積まれていたシステムを二つ積んだ。ひとつはCOM音声、ひとつは一部操作をマニュアルに変更」
「ネクストにマニュアルだと?」
セレンは戦闘画面から目を離さなかったが、レインの言葉に耳だけを傾ける。
「無意識下で組まれているタイムラグ折り込みの反応、それを意思的に再度修正したりシステムでセーブしたり
するなら最初からマニュアルの方が良いとおもってね」
レインとて同じように視線は画面からはなれることはない。機体の微調整を行うレインにとっても戦闘映像は機体調整を行う上で大事な情報なのだ。
「システム操作や情報取得は既存、既存操作は一部マニュアル化した程度の言うなればセミオート状態というところね」
戦闘映像と情報端末を確認すると確かに今までよりAMS負荷が軽減されているが、マニュアル操作ゆえの予備動作等の
無駄な動きが増えている。それでも全体的な反応速度は以前より速く、跳躍とブーストのON/OFFそして端的なSQBを
織り交ぜている。その結果サックスが重量級だというのにMRAVEの銃撃を2割弱を回避、一部マニュアル化した効果は確実に現れていた。
「やはり得意とするのはレイヴンとしての技術ということか」
セレンはそう呟くと横に座ったレインと共に状況を見守った。
サックスは背部ガトリングとBFFライフルを連射しながらの後退、射撃角を広げ自らにとって優位な距離を取る。
自らよりも射程距離の短い不明ネクストは左右へのQBで回避と射撃を繰り返すが、弾幕を張りつつPAを削るガトリングと
的確に装甲に食らい付くライフルの射撃は厄介なのだろう、そして元々破壊された基地は決して広くなく戦略的価値が
高いものではない。防御隔壁も無く建物だった残骸の高さは楯にすることも機体を隠すことも不可能な高さしかないため
射線軸を邪魔するものは無い。十数秒後には自らの不利を悟ったのか積極的な接近戦を止めライフルを投棄、脚部に格納
されていたEB―0600レーザーブレードを装着した。
「来るか」
リンクスは不明ネクストの武装変更を確認すると接近戦の覚悟を決めた。レーザーブレードのカテゴリー内で
最低出力といっても効率よく使用すれば重量級ネクストを撃破することも不可能ではない。高出力ブースタを積んでいる
不明ネクストの瞬間的な突進力は充分ブレード範囲内に入れる性能を持っている。一方サックスは突進してくる敵ネクストに
対して制止効果が期待できるものは左腕に持つ連射力の低いSAKUNAMIのみ。SAKUNAMIで相手の突撃を止めら
れなければ武装を破壊された後、切り刻まれ撃破されてしまうだろう。
サックスは後退しながらガトリングと051ANを連射するが、不明ネクストはMBを使用して蛇行と単発的にQBを使用する
ことで徐々に間合いを詰めていく。機体の反応速度と相対速度から大よその限界距離は約400、それ以上接近すればガトリングが
不明ネクストのPAを貫き装甲を充分抉りとるのだが、決してこの距離を割ろうとせず切りかかるタイミングを計っていた。
「まずいな」
弾薬を使用する以上この膠着状態が長引けばリンクスに勝ち目など無い。オペレーターのセレンや元レイヴンのレインから見てもそれは明らかだった。
「セレンならどうする?」
「私なら最初からこんな状態に持込などしない。遠距離から撃ち抜き、失敗すれば離脱するだけだ」
「…打開策はなさそうね。私もないけど」
打開策をセレンに尋ねたレインとて何か策が有るわけではない。
「元々戦闘スタイルが奴と私達とは違う。打開策も何もないだろう」
「確かにね」
セレンは遠距離、レインにいたっては旧式ACでバンカーを使った白兵距離を得意とした。近距離での差し合いに関して適切な策など
思いつくはずもなく、例え得意な距離だったとしても戦闘中に適切な戦術を組み上げ正確に実行できるものなどアナトリアの傭兵くらいなものだろう。
不明ネクストがSQBを使用した直後、リンクスは移動先を予測した場所にSAKUNAMIを撃った。この攻撃は
相手に損傷を与えることが目的ではなく、弾薬が充分にある内に敵に接近戦を挑ませる。そこを迎撃するしかリンクスに手はなかった。
不明ネクストは建物の残骸を利用して急速減速しMQBを点火、400あった距離は一気に200を割ると左腕のレーザーブレードを
発生させブレード用QBを点火、SAKUNAMIの砲身を切り飛ばし再びSQBとMQBを連続点火、サックスの左後方をすり抜け
離脱しようとする。アサルトアーマーの有無の確認もあったため一旦距離を取ったのだろうが、先のタイミングでアサルトアーマーを
使用しなかったことからサックスはアサルトアーマーを未搭載か、もしくは先のタイミングを覚えるために使用しなかったと
不明ネクストは考えるだろう。次の攻撃はある程度のリスクを負ってでも仕留めに掛かってくる。そうセレン達は考えたが
不明ネクストの反応は余りにも早かった。
離脱に使用したと思われたMQBを利用してQT、地面と接する面が火花を散らしながら180度機体を回転させ、先ほど使用して
いなかった右腕レーザーブレードをコア側部目掛け横なぎに切り払う。コア側面装甲を焼き切りながらサックスの背後に回るとBQBで
距離を取った。サックスの左コア側面にはレーザーブレードによって刻まれた後が残っており装甲厚の2割弱まで溶解していた。
リンクスは流れ出る冷や汗を感じながら期待QBTで旋回させ、距離を取った不明ネクストにBFFライフルとガトリングの銃口を向けた。
連続QBからQT中に攻撃しさらにBQBを利用して離脱、連続QBを使用すればAMS負荷が非常に高くなり高Gによる
身体的負荷も大きい。それ故に高いAMS適性を持つだけではなく機体の対G性能やリンクスの身体的な強度も要求されるのだが、
白兵戦に秀でるものはその訓練に徹した者であり射撃戦は苦手とする。そのまた逆である射撃戦に長ける者は白兵戦を苦手とするの
だが、一部の天才と呼ばれる者は白兵戦から射撃戦まで高いレベルで完成している。そうウィン・D・ファンションやジェラルド・ジェンドリンの
ようなカラード上位のリンクスのみ、だが高度な射撃戦と白兵機動から不明ネクストはカラード一桁に近い実力を持っていることがわかる。
つまりリンクスにとってまだホワイトグリント以外知らぬ領域の相手だった。
不明ネクストは再び離れた距離からOBを起動、発動時瞬間推力を生かし制止武装を失ったサックスに正面から襲い掛かっていく。
「セレンさんバックアップ願います。アサルトアーマーを展開!」
メリゲートとほぼ同じアセンブルを持つサックスはクーガー製のアサルトアーマー搭載型OBを積んでいた。サックスのPAが収束し
始めたとき、不明ネクストのPAも同じように収束を始めた。二つのアサルトアーマーはお互いに干渉し合いながら爆発し、強烈な光に
二機は覆われた。だが光によって視界がホワイトアウトしたリンクスも不明ネクストの行動が完全に読めなかったわけではなく、セレンも
なんの対策を立てず望遠カメラで戦況を見ていたわけでは無かった。望遠カメラはいくつものフィルターを通しているため、AAを展開したのち
サックスの背後に回りこんでいる不明ネクストの姿ははっきりと見えていた。
「右に180度旋回してコア狙いのブレードを受け止めろ!」
セレンの命令にリンクスは即座に反応しQBで機体を180度旋回させ、不明ネクストの右腕を受け止めるよう右腕を振り切った。
QBTによる遠心力を乗せたサックスの右腕部と不明ネクストの腕部が激突。
ユディトの軽量腕部とGAが誇る重装甲腕部、強度・出力共に比較にならないほど差がある。接触した場所から不明ネクストの
腕は引き千切れ、バランスを崩しながらBQBで距離を取った。一方リンクスの駆るサックスもバランスを崩し腕の装甲板が拉げては
いたが、敵ネクストにライフルを向けていることから内部駆動に損傷はないようだ。
不明ネクストは戦闘の不利を悟ったのかきびすを
返すとOBを起動させ戦闘エリアを離脱していく。
「どうした!何故追わん!」
背を向けて離脱していく不明ネクストに対して銃口を向けたまま何も行動をとらないリンクスに怒鳴ったが、
緊張と急旋回のGによって乱れた声が返ってきた。
「…カメラアイをやられました。ネクストとの戦闘は不可能です」
腕同士が接触したとき、再チャージの終わった左レーザーブレードをサックスの頭部目掛け振り下ろしていた。アサルトアーマーの
爆発によって視界が断たれていたリンクスと角度的に状況が見えなかったセレンには注意の言葉をかける暇も無かった。
「なんだと!」
セレンはサックスから送られてくる情報を確認する。統合制御体から送られてくる情報には確かにメインカメラ及び
サブカメラが全壊していた。これでは視界情報はまったくなくレーダー以外周囲の状態を知る術がない。
「回収部隊をそちらに向かわせる。それまでは現状で待機していろ」
「了解しました」
それから数分間沈黙と時折通信機からリンクスの苦痛に呻く声が届くだけだった。
「目に痛みはあるか?」
我ながらぎこちないと言葉だ。そうセレンは思いながら目の様子を聞いたが、ぎこちなさよりも初めて聞いた労わりの
言葉にリンクスのほうが驚き戸惑ってしまった。
「いえ、AMSによる痛み以外ありません。知っているとは思いますが大丈夫です。心配は要りませんよ」
戦闘前にリンクスが服用している薬には強力な痛み止めも含まれており、AMSによる避け様も無い痛み以外感じることはない。
「…そうだったな。いまはAMSを切って…いや、敵の増援だ」
状態を確認していたセレンの長距離レーダーには通常軍と思われる機影がいくつも表示され、破壊されたオーメル拠点に向かっている
ことが解った。恐らく戦力を失ったオーメルの戦略基地を奪取するよい機会として他企業が通常軍を送ったのだろう。
「今オーメルに情報を要求しているが契約外だ。お前は回収部隊が到着次第共に退け」
チャンピン・チャンプス「オリジナル任務」・・・
旧式GAランドクルーザーの中では新しいドーザーブレードを装着したキルドーザーが待機していた。SOM戦時、MUDANとの
正面からぶつかり合ったため右腕のドーザーブレードは粉々に粉砕されていた。だがMUDANの鋼鉄製の杭も拉げてしまい、
SOM破壊には参加せずに退却。この事からGAでドーザーブレードの有効性か見直され、製造が打ち切られていたドーザーブレードは
再生産されると共に僅かな軽量化と更なる強度増加の調整が行われた後、製造元の下請け企業からキルドーザーへと
新品のドーザーブレードが贈られた。
チャンプスは格納庫で新しく装着されたドーザーを見上げて苦笑した。生産停止となったドーザーが同じくロートルの自らの戦果に
よって再生産され、また自らの拳となって戻る。皮肉としか言いようが無かった。
ほんの数ヶ月前まで零細独立傭兵部隊だったが、
ストレイドとの専属僚機契約によってバックアップながら頻繁に出撃する機会や訓練教官としての報酬が増え、僅かながら予算にも余裕が
生まれた為新人ながら専属のオペレーターまで雇えるほどになっていた。
「依頼が来ました!視界を失ったストレイドの回収と包囲しているノーマル部隊の排除です!」
真新しいカラードのスーツを身に付けた新人オペレーターは初仕事のため若干興奮気味だった。オペレーターは冷静に戦況情報を解析し、
その情報を戦場に居るリンクスに伝えなければならない。そのため興奮するなど持ってもほかなのだが、新人の上さらに安い雇用料金と
なればこれくらいの事は我慢しなければならないだろう。
「ノーマル部隊にはランドキャリアと共に行軍するよう伝えてくれ。ストレイドの回収が最優先だ」
「了解しました!」
オペレータは元気よく応えると通信室へと走っていった。カラードのオペレータ訓練施設を出たばかりの新人、まだ初々しさの
残る姿を見ていると自らは老いたと感じてしまった。チャンプスの反射神経や筋力など身体のピークはとっくに過ぎており、日課にしている
トレーニングも歳を追うごとにきつくなっていた。
「さて、リングに向かうとするか」
チャンプスは階段を上りネクストのコックピットを開いた。
オーメル研究所跡戦闘エリア・・・
マニュアル操作で戦闘エリアに到着すると最新情報をオペレータに問い合わせるべくチャンプスは通信を繋げた。
「状況を教えてくれ」
「ストレイドはカメラアイを失っている上に高濃度ECMによって完全に視界を奪われています。ECM発生源を速やかに
破壊し、可能ならばノーマル部隊も排除して下さい」
カメラアイの損傷、AMS接続状態で受けた損傷ならば最悪失明の危険があるが、突貫し救出を急げと連絡がない以上その心配は余りないだろう。
「了解した。ストレイド側のオペレータとリンクを繋いでおいてくれ。こちらの情報を逐一送って欲しい」
「了解しました!」
以前はストレイドのオペレータの片手間に指示を受けていたが、今回からは迷惑をかけずに済む。リンクス一人のメンタル
チェックから機体の状態、そして戦闘中の情報サポートから戦闘後の提出書類、それだけでも大変なのにチャンプスの分まで
となると膨大となるだろう。そんな状況ではチャンプスも心苦しかったが、今後はオペレータが着いたことで向こうも楽になるだろう。
「こちらキルドーザーのオペレータです。戦闘エリアに到着、これより作戦を開始します。最新情報がありましたら転送をお願いします」
「情報はすでにそちらに転送済みのはずだ」
慌ててキルドーザーのオペレーターは情報を調べ始め、状況を理解したストレイドのオペレータが吐いたのだろうため息がチャンプスの耳にも届いた。
「新人を雇うのはいいが、こちらに迷惑の掛からないように頼む」
ストレイドのオペレータは相変わらずきつい事を言う。そうチャンプスは思うがストレイドが危険な依頼をいくつもクリアしてきた
ことを考えると厳しい物言いも仕方ないと納得も出来た。トレーニングコーチとしてストレイドのリンクスとオペレータを見てきたが、
リンクスにも自らにも厳しいオペレータの指示や作戦の組立ては確かなものだった。
「AMSを起動させる。新しい情報は逐次伝えてくれ。以上で戦闘が終わるまでこちらからの通信を終わる」
AMSと接続すれば会話することでさえ激しい苦痛を伴うチャンプスにとって、戦闘中は作戦命令に従って行動するだけで精一杯
だった。それ故に戦闘中の情報は整理された上で必要な情報を適切なタイミングで知る必要が有った。
その頃、重厚な装甲をもつサックスだが視界がない状態では空中を飛ぶ事も危険なため、セレンの指示通り比較的大きい
倉庫をサックスの背にし、ほとんどその場から動かず救援を待っていた。
「損傷状態は軽微だ。そのまま倉庫で篭城を続けろ。時期にキルドーザーがECM発生源を破壊するだろう」
「了解」
視界がほとんど失われた状態とはいえ、PAを持った重装甲ネクストを撃破するのはノーマルACとて簡単な事ではない。
元々攻撃目標でないため、注意こそされてはいるが攻撃はほとんどされていなかった。
「どりゃぁぁ!」
気合と共に叩き込まれたドーザーブレードは分厚い装甲を撃ち砕くだけではなく、腕部出力と機体を固定した打撃を打ち込まれた
対象は激しい振動を伴う。装甲を伝って伝版した振動は駆動部を破壊しGAEM―QUASARは地面へと崩れ落ちる。
2打目、砕けた装甲を貫き内部へと貫通したドーザーブレードは駆動部を完全に破壊しGAEM―QUASARは爆発四散した。
「残り1機です!ECM濃度分布から北西へ2分の位置に居ると思われます!」
残る1機を撃破すればストレイドは自力で包囲している部隊を殲滅し離脱できる。だが、3分を超えるAMSとの接続
はチャンプスにかなりの苦痛となっていた。
視界が揺らぎ、自らの体となっているキルドーザーの四肢が重い。フルラウンド戦っているかのように体の反応が鈍く、一歩一歩
動くことさえ苦しい。こういうときチャンプスは自らのAMS適性の低さが嫌になるが嘆いて変わるものではない。OBを起動させると
残る一機のGAEM―QUASARが居ると思われる方角へと機体を走らせた。
だが、GAEM―QUASARはキルドーザーが到着する前にECM濃度の低下からレーダーの機能を取り戻したサックスと
回収部隊の攻撃を受け破壊されていた。当初は2機のECM発生器による複合パターン故に解析困難だったが、チャンプスが
1機撃破したことで単調となったECMパターンを記録、オペレータがその情報を元にECMパターンを解析し無効化していた。
「サックス側が残る一機を撃破。任務完了です」
AMS接続が解除されこれ以上頭痛と吐き気が悪化することはなくなったが、現状での痛みを堪えるだけでも精一杯だった。
マニュアル操作で機体をランドクルーザーのほうに向ける。
インテリオル系カラード施設・・・
「視力を失っただと?」
ネクストから降りた後カラードの治療施設で検査を受けていた時、リンクスの左目が見えていないことが解った。
「推測ですが、ホワイトアウトした時に掛かっていた制御値を超える光源をカメラアイが受けた為、そのまま光度がフィードバックされてしまったと思われます」
頭部や腕を破壊されても視力を失ったり肉体的損傷を負わない様に設定されているが、今回はその設定値を超えてしまった為影響が出てしまったようだ。
「右目も物体の輪郭は見えていますが、視力はかなり落ちています」
視力が低下したとしてもAMSと接続すれば問題はないが、今後のトレーニングや出撃前ミーティングに影響が出てしまう。
「徐々に治って行くとは思いますが、右目が見えるようになるには数ヶ月を要すると思います。左目については年単位で掛かるかと」
どうしたものかとセレンは考え込んでしまったが、当のリンクスは衝撃を受けた様子も無く静かに検査結果を聞いているだけだった。
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>- 夢と言う形で、旧ACでの戦闘をやるとは。この発想はなかった・・・・ -- 2011-11-15 (火) 11:47:10
もはや夢という形でしか出来ないのが悲しい所です。旧ACの戦闘を沢山書きたいのですが…
>- まさかのフォグ兄ぃ登場GJ!そして続き投稿乙!<(_ _)> -- 北陸の鴉? 2011-11-25 (金) 13:51:08。
霧影先生だと気付かれましたか。よかったよかった・・・