Written by 独鴉


・・・オリジナル任務・・・レイレナードの残党


「レイレナードの生き残りだと?」

 国家解体戦争中、ランク23とランク29の2名がレイレナード陣営から消えた。
その後に起きたリンクス戦争中にもその2名は現れることはなく、
レイレナードが瓦解した今では信頼性のあるデータは何も残されていない。

「GA整備工場で最終データ収集に当っていたランク33 GA高速突撃型が迎撃にあたっていますが劣勢です。至急救援をお願いします」

 時間が無いために直接オペレーターから送られてきた数秒前の戦闘映像が映し出されている。

「以上が状態だ。追い払うだけだが報酬は破格だぜ?撃破できればGAも追加報酬も出すって言っているんだが、まぁ仮にもGA専属断りはしないだろ?」

 アルディーにとっては専属状態に切り替えられてから5回目の任務なのだが、
ネクストとの戦闘はシミュレーター内でのメリーゲート及び雷電以外との戦闘経験は無い。
 だが平均報酬の2倍となればリスクを差し引いてもやる価値はある。
それに指定された報酬額が入れば地上緑化研究へと予算を充分に回せるほどなのだ。

「受けますよ。VOBさえ用意してもらえるならすぐにでも」

「VOBの用意はすでに出来ているぜ?あんたが搭乗すればすぐにでも戦場に飛んでもらいたいからな」

 仲介人の男はアルディーが依頼を必ず受けるだろうと先んじて用意していた。
それだけ状態が悪いのだ。アルディーは軽くうなずくとミーティングルームを出ていった。
 早足で急いだ整備場では出撃準備の整ったチャリオットのコックピットが開かれており、いつでも搭乗と出撃が可能な状態で待機していた。
アルディーは移動式階段からコックピットに乗り込が、コジマAMIDAは相変わらずアルディーの頭にひっついたままだ。

「さて、いくぞAMIDA」

 コックピットハッチが閉じられ、暗闇の中AMSとの接続が開始されると眼前のディスプレイに映像が映し出される。
本来はAMSから直接視界が得られるのだが、AMIDAにも映像を見せるため、レーダー・音・視界情報はマニュアルモードと同じにしていた。
コジマAMIDAはコックピットの壁に設置してある専用のイスにしっかりとつかまり、QBやOBの衝撃にも耐えられるように自らを固定した。

オーメル陣営…元レイレナード技術部門…

「それで奴は向かったのだろうな?」

「はい、GA側にとっても放置は出来ないでしょう。しかし、鹵獲された場合不味いのでは?」

 部下と思われる男は手元の資料を纏め、今では手に入りにくい天然のウッドデスクの向こう側に座っている男に資料を差し出す。

「ローディーやリリウム・ウォルコットならその可能性は有るだろうが、
二人とも別作戦ですぐには動けん。他の者では鹵獲も撃破も不能だろう」

「例の男がそれほどと?そんな情報は有りませんが」

 大きなシートに腰掛けている男はデスクに片肘を付くと受け取った資料に目を通し始める。

「旧リンクスナンバー29、実力においてはマロースに匹敵するだろう。
アレが味方に付けば奴も動き易いだろうが、あれの制御はいまさらきくものではない」

 男は資料を読む手を止めると深くため息をつくとイスにもたれかかる。

「おしいものだ。アレが居ればオーメル内で我々のさらなる発言力が持てたというものを」

GAネクスト試験場・・・
 到着したチャリオットの視界に映ったのは破壊され、煙を上げる施設郡とコアを破壊され各座したGA高速突撃型ネクスト、そしてこちらを待ち構える不明ネクストだった。

「データ照合を開始する。油断はするな」

「了解、だが急いでくれ」

 GA専属のオペレーターから指示が飛ぶ。アルディーはいつでも戦闘が可能な体制を取りつつ、
遮蔽物にいつでも身を伏せれる位置に自らのネクスト チャリオットを移動させる。
NSSのカメラアイには微動だにしない敵ネクストが映し出され、既存のデータバンクから機体のアセンブルが表示されていく。
アーリヤと同じ黒いカラーリングを施されたネクスト、
アーリヤのヘッド・アルゼブラ旧式コア・オーメル旧式腕部・ローゼンタール旧式脚部・2挺のMARVE・2門のOGOTO・MSACの旧式フレア、
現行でも通用するパーツだろうが、何よりも他のネクストと相違点があった。

「想定外ノ敵戦力増加ヲ確認」

 ランク33 弱小な新参者ながらGA高速突撃型は損傷を負いながらも相手に突撃していく戦闘スタイルを持つ故、
敵対する相手は少なからず損傷を負ってしまうはずなのだが、敵ネクストに損傷を受けた様子が全く無い。
 ただ修理された痕だらけの装甲板が独特の威圧感を出している。

「…ロストナンバー23か29のオリジナルか」

 冷や汗と共に恐怖を感じていたが重量級に属するチャリオットを駆る以上逃げ切れるはずもなく、生き残るには目の前の機体を倒すしかなかった。

「ネクストAC チャリオット確認 データ収集開始」

 開放回線から流れ込んできたのは、フィルターを通したような一切の変化を消した声だった。
その直後ロックオン警報がけたたましく鳴り響き、一瞬の間を置いて二連続の爆風がチャリオットのPAを蹂躙し装甲を焼き払う。
 チャリオットが炎に焼かれている中、不明ネクストの有澤重工OGOTOの砲門は硝煙を吐き出しながら地面にパージされ、
MARVEの二つの銃口がチャリオットへと向けられる。

「くそが!やりやがったな!」

 アルディーは罵声を吐きながら恐怖を押し殺し、右方向へとチャリオットを走らせながら両手のバズーカ連射。
旧式ネクストは後方へとバックブーストで下がりながら左右への通常ブーストで回避し、冷静にチャリオットの攻撃を回避していく。
バズーカの有効射程へと接近したいアルディーはOBを起動させ、MBと同時に使用し上昇しながら一気に敵ネクストへと迫る。

「セーフティー機能解除、戦闘データ収集開始」

 旧式ネクストはMQBを点火すると空中に舞っているチャリオットの下を通り抜け背後に回りこみQT。
振り上げられたMARVEの銃弾は正確にアルディーのPAを貫き機体を抉っていく。

「っっ!」

 アルディーはSQBとBQBを点火し後方へと逃れながらバズーカの照準を合わせようとするが、先ほど銃撃のあった場所にはすでに敵ネクストの姿は無い。

「GAのセンサーが役に立たないのかよ!」

 チャリオットのセンサーには背後や横を高速で動き周る敵機が映し出されている。
不明ネクストは通常ブーストで移動しているはずなのだが、本当に中量級か疑いたくなるほどの高速で移動していた。

「何か改造でもしているのか!このくそがぁ!」

 DEARBORN03を右肩の担ぐとQBTで敵ネクストを正面に捕らえ、MSAC製のミサイル適性高いFCSは瞬時に多重ロック。

「当たりやがれ!」

 ロック完了と同時に撃ち出された近接信管ミサイルは敵にネクストに襲い掛かる。
並みのリンクスであるならば回避の難しいこのミサイルの爆風に少なからず当てられるだろう。
徐々に加速していくミサイルは高速移動状態の敵ネクストの斜め正面から向かっていくが、
MARAVEの連射によって直撃ラインのみ迎撃され、
残りのミサイルは直撃まであとわずかというところでMQBによって回避されさらにチャリオットとの距離をつめていく。
瞬間火力と装甲重視の上に力押しの傾向があるチャリオットに対して、
不明ネクストは機動力と瞬間火力を生かしながら相手の動きを制している以上相性はあまりよくなかった。
 威嚇を含めた射撃によって相手を自らの望む範囲内へと誘導し、
旧時代のACと同じく機体の旋回を駆使しているだけなのだが、
それに気付かないほどアルディーは焦っていた。

「最終チェック開始」

 高速状態のままOBを起動させ、旧式ネクストはMARVEを捨てる。
脚部装甲が開くとサブアームが伸び両腕部にEB‐0600レーザーブレードを装着、
白兵戦を行う体制を取る。
OB状態になった旧ネクストを視界から見失い、アルディーがレーダーへと視線を移した。
だがその時には旧ネクストはチャリオットの左側面からレーザーを発生させながら急接近していた。

「キシャァァ!」

 コックピット内に居たコジマAMIDAはアルディーの左腕に噛み付き、アルディーは痛みからとっさに腕を上げてしまう。
その直後左側面から接近していた敵ネクストのブレードが左腕を切り裂くが、
振り上げられた手によって阻まれ、コアまで届くことは無く敵ネクストは離れていく。

「データ収集完了、戦闘モード終了 帰還開始」

 敵ネクストはきびすを返すとMARVEを掴み戦闘領域からOBで離脱していった。
後を追う事が出来ず、その姿をただアルディーのチャリオットは見ていることしか出来なかった。

有澤重工本社・・・社長室
 社長室としては質素といえる作りの部屋にはウッドデスクとロッカー、そして秘書用の机以外何も置かれていなかった。
その部屋には有澤隆文と秘書官、そして直属の部下が天井から照射されている3D表示を見ていた。

「それでいつ製造されたものかわかったのか?」

 不明ネクストが残していった有澤重工製OGOTO、そこからGAは敵ネクストを要している組織を特定しようとしていた。
むろんその作業は有澤重工によって行われ、社長たる有澤隆文直属の部下がその作業に当たっていた。

「製造の刻印のほとんどが削られていましたが、メインバレルに刻印の一部が残っていました」

 中央の立体表示にはOGOTOのバレルが表示され、刻印がされている箇所がズームアップされていく。
拡大された刻印を見て隆文は頭を抱えてしまった。

「リンクス戦争以前の刻印とは、問題だな」

 リンクス戦争以前に生産されたパーツはどの企業も一貫して管理が正確ではない。
これは企業同士の初の戦争によって情報管理工作や攻撃によって破損及び改ざんされた為なのだが、
紙媒体として保存していないものは有澤重工もその例からは逃れられてはいない。

「情報を調べ上げるのに何日掛かるか算出してあるな?」

「生産開始時からリンクス戦争までと限定しても1月以上掛かるかと思われます」

 GAからは唯一の手がかりであるOGOTOから襲撃企業をなんとか割り出したかった。
その為OGOTOの生産企業である有澤重工は再三情報を求められている。

「急いでやってくれたまえ。GAから早急に情報を求められているのでな」

「全力を尽くします」

 部下は丁寧に頭を下げると立体表示が消え静かに退室して行った。
その様子を秘書は見届けると新たな資料を持ってデスクの前に立った。

「社長、お疲れと思いますが、背部炸薬砲技術部門の方から連絡が入っております」

「すぐに向かうと伝えてくれ」

 有澤隆文はイスから立ち上がるとロッカーを開き、スーツの上着とネクタイを脱ぐと作業着を着用。
その時ロッカーに止めてあった古い写真が滑り落ちる。

「おっと」

 有澤はしゃがんで写真を掴むとそこに映されている国家解体戦争前、
初めて有澤製ネクスト武装の外部売買契約を行ったレイレナード社員の姿が映っていた。
その写真を見て有澤隆文の頭を一瞬ある機体とそのパイロットの姿が過ぎる。

「もしや、あの機体はあの時の…」

 国家解体戦争前、レイレナードからのネクスト技術の交流で有澤重工と一時懇意にしていたレイレナードのリンクスが一人居た。
彼を通して国家解体戦争の英雄ベルリオーズのネクスト シュープリスへとOGOTOが複数渡っている。
修理するための予備パーツを含めれば10から12くらいは組み上げられるだけの量はあるだろう。

「すぐに彼を呼び戻せ。早急にだ!」


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お礼**

2010年のんびりとした更新でありながら毎回お読み頂き有難う御座います。
2011年も何卒宜しくお願いします。


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