Written by ケルクク
注意!登場人物の一部が大量殺人やチョットHな行為等一部全年齢に相応しくない行為を行っております
俺の名前はロイ。ロイ・ザーランドだ。
つっても、これは本名じゃない。カラードに登録しているリンクスとしての名前だ。
あー、リンクスってのは山猫の事………ではなく超兵器ネクストを駆る事ができるついていない人間の事だ。
そうそう、カラードってのはこの世界を支配していると自称している企業が共同で出資しているリンクスを管理している団体だ。
んで、全てのリンクスはカラードに登録されていることに、ついこの間ORCAが反乱を起こすまではなっていた。
まぁ、昔から首輪付きって言葉が存在していた時点でイレギュラーがいるのは確実だったんだがね。
ところで、首輪付きって響きがエロイよな?知り合いの女共につけてみたい。でもなぁ、スティレットやエイプールやスミカの姐さんに頼んだら命が幾つあっても足りないからなぁ。
くそ、リリウムやメイみたいな首輪が似合う新人がいるGAが羨ましいぜ!
いっそ、ウィンディーに頼んでみるか。そうだな、あいつなら上手く頼めばつけてくれるかも。よし、今度頼んでみよう。
って、脱線したな。確かカラードの話だったよな。
とにかく、イレギュラーがいるとしてもカラードがリンクスを束ねる最大の団体であることは間違いない。
何しろ、反企業団体に所属するリンクスだって形だけとはいえ登録していたんだからな。
そして、カラードに所属するリンクスの上位三十名にはナンバーが与えられる。
これは、全リンクスの中で最精鋭を意味しているのだ!!
………ってカラードは謳ってるがどうなのかね?俺としてはカラードにいるリンクスは三十人しないんだと思ってる。
じゃなきゃ、ノーマルに負けかねないアメリカンヒーローやそもそも戦闘要員じゃない解体屋が登録されてるっておかしいだろ?
それに順位もおかしいんだよなぁ。上位はどう考えても実力じゃなくて政治力で決まってるとしか思えないし、下位は下位でオリジナルが下から二番目にいるんだよなぁ。
だがそんな実力より政治力がモノをいうカラードの中で俺は企業に属さない独立傭兵として5位につけている。
これは俺が企業のバックアップ無しに純粋に実力で勝ち取ったことを意味する。
これは、そんな地上最強の傭兵、ロイ・qbhh0いqhtj「おあえwdvかb
「呼び出しにも応じず何を遊んどるんじゃ!!この、馬鹿もんが!」
怒声と共に激痛が頭に走り、ついで顔面がキーボードに突っ込む。
「痛~。貴重なリンクスの頭をスパナでどつくなよ、爺さん。折角の名文を忘れちまったじゃねぇか」
顔を起こしながら加害者であるうちの整備長(53歳 既婚 将来有望な孫あり)に文句言う。
「何じゃ珍しく言われる前に報告書を書いっとったのか。見せてみぃ」
俺の文句を無視して爺さんが珍しく感心した顔でモニターを覗き込む。
まだ、完成してないのにな。照れるぜ。
「って、何じゃこりゃぁ!!!」
爺さんが顔を真っ赤にしながら怒鳴りつけてくる。
「いや、あまりに暇なんで自伝でも書いて見ようか痛て!」
今度は拳骨が俺の頭に炸裂する。
「そんな暇があるなら報告書でも書いとれぃ!ええぃ!珍しく感心すればお前というやつは!!!くぅぅ!とにかく説教は後じゃ!皆待っておる。会議室に行くぞい!」
「へいへい、そんなに怒るなよ爺さん血圧上がるぞ?」
「誰のせいだと思っとるんじゃ!!」
****
「では、本日の報告会を行います。各部署の代表は報告をお願いします」
「整備部から報告じゃ。異常なし。出撃しとらんから当然じゃがの。それと、明日は引き続きB・C・D班が休暇でおらん。早く三日たたんかのう」
「確か、お孫さんの誕生日でしたっけ?おめでとうございます。では、事務も異常なし。インテリオルからの振込みも異常なし。
ちなみに明日から一週間私も休暇です。代わりにエマが出るのでこき使ってくださいね。いいですね、エマ?」
「はいぃ!よろしくお願いします!」
「元気があって可愛いね。では、作戦部から。インテリオルから明日のミッションに関する指示書がきました。内容は待機。
ただし、緊急の出撃があるかもしれないのでネクストを二時間以内に出撃できるようにしておいてほしいそうです。
ま、要は今までと同じって事です。因みに僕はこれが終わったら午後休です。休みの間に買ってきたゲームを消化しないといけないのでね」
「リンクスから。退屈で死にそうだ。俺も休みが欲しい。後、昨日も言ったけどこの会議毎日やる必要ないだろ!」
「作戦部から。昨日も言いましたがインテリオルからのミッション指示に毎日の活動報告会の開催と議事録の提出があるので駄目です。
後、町に出られると二時間以内に帰ってこれないのでインテリオルからの指示内容を満たせないのでこれも駄目です。
では、もう無いようなので今日の会議は終わります。明日は十時から開催するので遅れないように。
それでは皆様よい休暇を!」
「「「「よい休暇を」」」」
「よい休暇をって嫌味かよ!」
****
「あ~くそ。来る日も来る日も待機待機待機!命の危険がないのはありがたいがこうも退屈だとどうにかなっちまいそうだぜ。くそが!」
いつもの退屈な会議が終わった後、自室に戻りソファーに座り、付いて来た爺さんに愚痴る。
「喚くな喚くな坊主。仕方なかろう?時期が時期じゃし立場が立場じゃ。むしろ、監禁されずに金まで出してもらえるだけましじゃろ?ほれ」
爺さんが俺を宥めながら、勝手に棚から引っ張り出したウィスキーを一杯呷ると放る。
まぁ、確かに今は時期が悪い。
現在はORCA旅団と名乗るテロ組織――ネクストを十機以上運用できる組織をただのテロ組織と言えるかどうかは疑問だがね――がアルテリアに同時襲撃を敢行し企業連と派手に喧嘩をしている最中だ。
さらにその騒乱にここぞとばかりに同調した武装組織や反企業組織が一斉に活動を活発化し現在企業はその対応に追われている。
これだけならむしろ傭兵たる俺にとっては飯の種が増えそうなものなのだが、間が悪いことに俺達独立傭兵からORCAについた奴が三人ほど現れたのだ。
まぁ、最初の一人は何も知らずに雇われていただけで、しかもミッション中に雇い主がやられるやいなや見事な投降をかまし、
その後のカラードの取り調べも素直に受けているために特に問題にならなかったのだが、残り二人のうち一人が大問題だった。
なにせそいつは、カーパルスに現れ防衛部隊を壊滅させおまけにジェラルドとダリオを撃破しローゼンタールの戦力を壊滅させてしまったのだ。
その戦禍に企業の連中はリンクス戦争の悪夢を思い出したか、そこまでいかなくても後に続かれたら堪らないと思ったのか、ともかく残りの独立傭兵を軟禁したのだった。
特に俺は問題の傭兵と仲がよかった上に、元から企業の覚えがよくない事もあり拷問まがいの尋問を受けそうになった。
「そいつぁ、わかってるよ。ウィンディーには随分迷惑掛けちまったからな。………うぷ。ほい」
ウィスキーを呷るが量が多かったのかはたまた強すぎるのか、危うく咽そうになるのを根性で堪え爺さんに投げ返す。
まぁ、それはギッリッギッリでウィンディーが助けに来てくれて何とかなったんだけどな。
まったく、あいつは本当にいい女だよ。
………ヒロインとヒーローが逆な気がするのは気にしない。
「本当にお前みたいな坊主には勿体無いわい。わしが後二十年若ければ口説くんだがのう。かかっかか。ほれ」
「るせーよ、エロ爺。孫にチクるぞ?あ~、孫といえば二番目の引き出しに誕生日プレゼントが入ってるから、渡してやってくれ。…くそ、もういい」
「情けないのうこの程度で。どれどれ?」
机に向かう爺さんに酒を飲まずに投げ返し「ついでに煙草を頼む」と声を掛ける。
「ほれ、ふむ。これか。相変わらずこういうことにはマメじゃのう。一体何を送るんじゃ?」
「水着と下着。そろそろ、水着は学校指定のじゃ恥ずかしいんだと。下着は親が買ってくる子供っぽいんじゃなくて大人っぽいのが欲しいんだとよ。
いや、最近のガキはマセってうお!」
慌ててソファーに体を沈める。その直後頭上数十センチをスパナが横切る。
「何でお前がそんなこと知っとるんじゃ!!まさか、孫にまで手を出したんかぁ!」
「いや、流石に中学ならともかく小学生は食べねぇよ。つーか、俺はウィンディー一筋だ!単に半年前に爺さんのプレゼントを買うときからちょくちょく連絡取ってるだけだぜ?
下着は親に言うのがハズイんだろ?思春期特有って奴だよ、いや大人ぶって可愛いねぇ。でも、メールの内容はお祖父ちゃん元気ですか?とかなんだぜ?
愛されてんなぁお祖父ちゃん♪」
真っ赤な顔で怒鳴っていた爺の顔が違う意味で赤くなる。きも!
「うるさいわい!何が自伝じゃ!何が実力で勝ち取ったじゃ!一位と五位がいなくなったから繰り上がっただけじゃろ!そもそも、地上最強の傭兵はWGがスミカのところの小倅じゃろうが!」
「いや、WGはラインアーク所属でしかも撃破されてるし。坊主もORCAにいったんならノーカウントだろ?だったら、最強の傭兵はこの俺だ。
………自分で言ってって情けなくなるけどな。つか爺さん。照れ隠しにしろ話飛び過ぎじゃね?」
「うるさいわ!それに何が嬢ちゃん一筋じゃ!一昨日は三人も呼んで楽しんどったくせに!!………ふむ、そうじゃな。嬢ちゃんが知ったらどんな顔をするかのう?」
すっかり冷静になった爺さんが好色な笑みを浮かべる。
反対に真っ青になり慌てる俺。
「うお!何で知ってるんだ爺さん!それは、ほら、えーと、あれだ!
そう!俺はフランス料理が好きなんだけど何日も絶食して腹が減っているときに目の前に上手そうなイタリア料理があったらつい食っちまうだろ?
でも、それはフランス料理が嫌いになったわけでもないしイタリア料理が一番好きになったわけでもない!
そう、ちょっと魔が差しただけなんだよ?爺さんも男ならわかるだろ。つーか、お願いだから黙っていてください」
最後には爺さんに向かって土下座までしていた。
頭を下げる俺に爺さんは邪悪な笑みを浮かべる。
「わかっとる。わしも男じゃ、十分わかるぞ。つい魔がさして三人も呼んで挙句にその領収書をインテリオルにつけたんじゃよな。
だが、わしがわかっても嬢ちゃんがわかるかは別問題じゃな。
そんな顔をするな安心せい。最近物忘れが激しくてな、すぐに忘れるわい。
しかし、いやぁこの酒は旨いのう。こんな旨い酒を土産に持って息子と呑めれば二度と思い出せんくらいに忘れるんじゃが、わしの稼ぎじゃとても無理だのう」
「この爺!いや、わかった、明日注文するから好きなだけ持って行ってくれ。くそ、リンクスを脅すとは相変わらずとんでもない爺さんだぜ」
「いやぁ、何か催促したみたいで悪いのぅ。安心せい。少し早いがすっかり忘れたわい。そうじゃ!これはお願いなんじゃが、」
ここでわざとらしく声を潜める爺さん。
「何だよ?」
俺は半分質問を予想しながら耳を近づける。
「嬢ちゃんに首輪をつけたらわしに見せてくれんかのう?」
「やっぱりか!このエロ爺!自重しろ………って、レッドアラート!?」
爺に向かって怒鳴った瞬間、突然視界が真っ赤に染まり耳障りなサイレンが鳴り響く。
「オレンジもイエローもすっ飛ばしていきなりレッドとは穏やかじゃないのう」
『未確認のネクストがホームに接近中!各員は速やかに迎撃体制に移行して下さぁい!
繰り返します!未確認ネクストがホームに接近中!各員は速やかに迎撃体制に移行して下さぁい!
ロイさん!早くネクストに乗ってくださぁい!私達の戦力はマイブリス以外は整備用のMTぐらいしかないんですよぅ!
このままじゃ、後十分で来ちゃいますよう!!ああ!後、九分にぃ~!ロイさあ痛!何す』
放送に俺は笑いながら走り出し、爺さんは頭を抱える。
「全く、あんな素人を見境無しに拾いおって!まぁ、いいわい!インテリオルの連中がつけたシールは外してあるから5分ででれるぞい!」
「相変わらずいい仕事だよ爺さん!でも、インテリオルの連中が来たときは付け直しておいてくれよ!」
「わーとるわぃ!さっさと、いかんか!」
「あいよ!」
****
「悪い遅れた!どうだ?」
整備エリアに到着した俺は着ていた服を脱ぎながらサイレンに負けないように整備員に向かい怒鳴る。
「ばっちりっす!後はロイさんが乗るだけっすよ!」
安心と信頼のトーラス製の耐コジマスーツを着た整備員が笑いながらパイロットスーツを放ってくる。
「上出来だ!」
パイロットスーツを着込み、タラップを駆け上がりジェルに満たされたコックピットに潜り込んだ瞬間真っ赤だった視界が元の色に戻りサイレンが止む。
『緊急放送。レッドアラームは解除します。すみません、こちらの新人がお騒がせしました。
接近していたネクストはインテリオル所属のレイテルパラッシュであることが確認できました。
識別信号は味方、さらにこちらの勧告に従い射程外でPAを切って待機したので敵勢力の偽装の可能性は無いと作戦部は判断したそうです。
ただ、戦闘後らしくまた、通信機能に何らかの障害を受けたのか通信が送られてきません。
ですので、万が一の事を考えてマイブリスはレイテルパラッシュの元に出向き用件を聞いてきてください」
「マイブリス了解。これよりお姫様のエスコートに向かう」
機体を通常稼動させながら返答する。
にしてもだ、一体何が起こった?インテリオルの補給基地によらずにこっちに来たって事は要は補給基地に何らかの問題があったってことだよな?
ウィンディーが出撃中に落とされた?あるいはウィンディーが防衛に失敗したのか?
もし、後者だとしたらただ事じゃねぇぞ。生存者がウィンディー以外誰もいないって事だもんな。
つーことは、坊主かもしくはスミカの姐さんでもでたのか?だとしたら、不味いな。戦力的にもそうだが戦いづらい。
「これは、あれじゃな。一昨日の事を嬢ちゃんが知って坊主を潰しに来たんじゃな。通信が無いのは怒りに我を忘れているからじゃ!!」
「なわけあるか!幾らなんでもバレるのが早すぎだ!」
整備班からの通信に怒鳴り返す。
………早すぎだよな?幾らなんでもまだバレナイヨネ?
でも、よく考えるとウィンディーもインテリオル所属なんだよな。もしかするともしかするかも。
いやいや、仮にばれてもまさかネクストで飛び出してくるほど怒るなんてこたぁ幾らなんでも………ないはずだ。
待てよ?拷問されかけた恋人を苦労して助けてそのせいで立場を悪くして、その後も恋人が抜けた分を必死に働いて埋めている最中に恋人が女を連れ込んだらどうだろう?
しかも、自分(インテリオル)の金で。
………いかん。俺今日死ぬかも。
****
あれこれ言い訳を考えているうちに気がつくとウィンディーの前まで来ていた。
しかし、レイテルパラッシュの外見は確かに傷ついてはいるもののとてもネクスト戦をしたようには見えない。
………まさかね?
震えないように注意しながら声を出す。
「よう!ウィンディー!急にどうしたんだ?デートなら大かんげ……うぉ!」
声を掛けた瞬間レイテルパラッシュがQBを吹かし猛烈な勢いで突っ込んでくる。
「すまん、ウィンディー。でも、信じてくれ。俺はお前が一ウボァー!」
そのまま、レイテルパラッシュは減速せずにマイブリスに激突する。
幾ら重量級と軽量級の差があるとはいえ不意を付かれた事とPAを張っていなかった事もありマイブリスは転倒する。
「あが!」
痛ってー!後頭部に痛み。倒れた際にマイブリスの後頭部を地面にしこたまぶつけそれをAMSが無駄にフィードバックしたせいだ。
そして、見上げるマイブリスと見下ろすレイテルパラッシュ。これが、人生最後の光景かもしれん。
なんとなく今までの人生を振り返っているとレイテルパラッシュのコックピットが開き中からウィンディーが飛び出してくる。
なにやらこちらに向かって鬼気迫る表情で何事かを叫ぶウィンディー。
通常稼動ではリンクスに負担を掛けないために外部音声までは拾ってこないためAMSが一時的に負担を上げて拾ってくるか聞いてくる。
つーか、先ほどの行為を敵対行動とみなし戦闘稼動を推奨している。
戦闘稼動にはNOと答える。
音声は聞き取らねばいけない。でも待って欲しい。もし、ウィンディーが今叫んでいる内容が抹殺宣言や絶縁宣言だったりしたらどうしよう。俺泣いちゃうかも。
そんなわけで覚悟が決まらずAMSにWAITを告げてまごまごしていると、唐突にウィンディーがダイブする。
一瞬の上昇の後、地面に向かって自由落下を始めるウィンディー。
「な!馬鹿野郎!何してんだ!」
慌ててマイブリスを戦闘稼動させウィンディーを受け止める。
その時俺はやっと自分の間抜けさに気付く。
ウィンディーは先ほどからずっと叫び続けていたのだ。
「助けてくれ!ロイ!」と
****
「クレイドル03が襲撃されるだぁ!?」
あの後、慌ててレイテルパラッシュをホームまで運び、ネクストから降りた後シャワーも浴びずに作戦室に直行し口を開いたウィンディーからとんでもない事実が告げられたのだ。
おかげで、俺もウィンディーもジェルまみれで不快極まりないが教えられた事実はそんな感情を吹き飛ばした。
だが、
「お前が嘘をついているとは思わねぇが本当かよ?ORCAの連中の目的はアルテリアの奪取だろ?」
「そうじゃな。それにそもそもどうやってクレイドルまで行くんじゃ?たとえネクストでもそんな高度までは飛べんし、
クレイドルへのターミナルはそれこそアルテリア以上に企業ががっちりと抑えておるぞい?
特にクレイドル03はGAの本拠地じゃ。仮にORCAの全戦力を集中させても落とせるとは思えのじゃが?」
「………いえ、そうとは限りません。ORCAにはかつてクレイドルを占拠したリリアナを率いたオールド・キングがいます。
一度出来た事なら恐らく二度目も出来るでしょう。しかし、可能だからと言ってそれを行うとは限りません。
しかし、万が一実行されれば大惨事です。直ぐに、カラード、いえ企業連に連絡を。エマ!」
「はぃぃ!た、ただいま!」
立ち上がって通信室に駆け出そうとするエマにウィンディーが声を掛ける。
「無駄だぞ?とっくにカラードにも企業連にも連絡した。だが!企業連もカラードいや王小龍も、どいつもこいつも権力のために見捨てる気だ!」
「ひぃぃ!すっすいません」
最後は殺気すら滲ませたウィンディーに怒鳴られてエマが崩れ落ちる。
「落ち着くんじゃ、嬢ちゃん。どういうことじゃ?一体嬢ちゃんはどこでこの情報を手にいれたんじゃ?」
「すまない。熱くなった。きっかけはスミカさんからのメールなんだ」
****
ウィンディーの元にそのメールが来たのは四日前。
スミカの姐さんらしく偽装はおろか偽名すら使わずに堂々とセレン・ヘイズの名ので送られてきたらしい。
メールの内容はいたってシンプル。
『クレイドル03に襲撃計画あり。私達はクレイドルが落ちようがどうでもいいがお前は老人達はともかく家畜共は助けたいだろう
現在わかっている情報を添付する。助ける気があるなら頑張ることだな』
添付された情報にはリザを主力とする元リリアナのメンバーが一週間後にクレイドル03を襲撃すると書いてあったらしい。
ウィンディーも最初は本人かどうか、本人だとしても罠ではないか疑ったらしいが、事が事だけに差出人がスミカの姐さん本人とわかった時点でインテリオル及びカラードに報告したらしい。
その後直ぐに、ORCAの特殊破壊兵器の任務が入り出発。
二日後に予定より早くミッションを終わらせ帰還し、対策を尋ねたところ何の対策も取っていないことが判明したらしい。
****
「冗談だろ?仮にもクレイドルが襲撃されるって情報だぜ?なのに何もしないって事は」
「ソースが信用されなかったのでは?敵からの密告を敵企業から教えられたのです。それに、どのような手段でクレイドル空域まで上昇するのでしょう?」
「レイレナードの遺産を使うらしい。それに、確かにそれらは理由のひとつだろう!だが違うんだ!あいつらは市民の命より権力闘争のほうが大事なんだ!」
****
問い合わせに対するインテリオル及びカラードからの返答はGAに報告し対応を一任したと。
ならばと、GAにカラード経由で対策を尋ねたところ部外者にはお教えできないと素気無く断られたらしい。
そこで、今度はGAリンクス達に情報を確認したところ驚くべきことに襲撃が行われるという情報すら降りてきていなかった。
驚き、慌ててカラードのお偉方を締め上げこの件の担当者を聞き出したところ王小龍だという返事を得た。
そして、王の爺に問い詰めたところ彼は笑いながらこう答えたらしい。
情報の精度が不確かな事と他に優先すべきミッションがあるためリンクスを回す余裕は無いため知らせなかったと。
つまり、
リリウムは、第一次衛星破壊砲基地攻略作戦において未帰還。
ローディーは第二次衛星破壊砲基地攻略作戦に参加するため参加不可能。
王小龍及び有澤は企業の代表としての活動が忙しいためリンクス活動は自粛
メイは、残ったアルテリアの防衛があるためやはり参加不可能。
ドンは、貴様も知っての通り不明ネクストに撃破され死亡。
ダンは、独立傭兵のため謹慎中。
また、GAは飛行型のAFを持っていない。
従って、ノーマルを増強する事で対処するとの事だった。
***
「おいおい、大丈夫か?王の爺、ついに惚けたか?ノーマルを幾ら集めたってネクストに勝てるわけ無いだろ?」
つーか、リリウム死んだのか。育てば美人になっただろに勿体無い。
にしても、何で王みたいな爺が生き残ってリリウムみたいな子が死ぬかね?
「ああそうだ。なら、私がクレイドルの護衛に回るか、あるいはメイ・グリンフィールドのかわりにアルテリアの防衛を請負っても言いと言った」
「また、無茶なことを言いましたね、ウィン・D・ファンション。いくら今が休戦中とはいえ敵対会社のリンクスを自社の本拠地の守りにつかせるわけが無いでしょう。
しかし、スマイリー防備に当てないのはおかしいですね。アルテリアが無事でもクレイドルが落ちては意味は無いというのに。
情報の精度が問題にされた?いえ、それでも万一の備えを怠るなどと」
「クィーンズランスじゃろ?」
「そうだ」
苦りきった顔をした爺さんがウィンディーに確認する。
にしても女王様の槍?………なんか卑猥だな。
「あのぅ、くぃーんずらんすって何ですか?」
「リンクス戦争のときのうアナトリアの傭兵がBFFの本社がある大艦隊を襲撃したんじゃ。その結果、BFF本社であるクィーンズランスは沈没しBFFは壊滅したんじゃ」
「?何か変なことあるのか?そりゃ、確かに壊滅した割にはあっさり復興した上にAFまで作ってるが、そりゃGAの援助があったからだろ?」
「いえ、確かにそれも原因の一つですがBFFの戦後の急速な復興にはもう一つの大きな理由があるのです。
実は襲撃の直前に本社機能の一部が他の場所に移されていたのです。しかも、移ったのは王小龍の派閥です。
一応名目上は女王を失ったことに関する左遷となっていますが、あまりに時期が合いすぎています。まるで、襲撃があることを事前に知っていたかのようにね。
さらに、襲撃の不審な点といえば本社が襲撃されるという緊急事態でありながらリンクスを迎撃に当てなかったのです。
ヘリックスI・Ⅱ及びレッドキャップはミッションで現地を離れていましたが、イアッコス及び王小龍は十分到達可能な場所にいました。
彼ら二人が艦隊と連携を取れば結果は変わったかもしれません。
この事と戦後のBFFの急速な復興と王小龍の絶対的な支配体制の構築から当時から今に至るまである”噂”が囁かれる事になります。
すなわち、王小龍はアナトリアの傭兵を利用してBFFの首脳部を排除して実権を握ったのではないかというね」
「いや、そりゃどう考えても黒だろ。んで、今度はそれがGAで行われるわけね」
しかし、聞いてるだけで胸糞悪くなる話だな。そこまで、やるか普通?
「そうなるの。BFFの本社は07じゃし、首脳部が潰れれば生き残るのは職人集団ばかりじゃ。王にしてみれば赤子の手を捻るより簡単じゃろうよ。
うちにしろ、オーメルにしろGAが混乱するのは大歓迎じゃからとめる理由は無いしの。いや、あるいは既に根回し済みなのかも知れんの」
「そんなことはどうでもいい!権力闘争がしたいのなら老人達で勝手にやればいい!だが、そんなことのために一億もの犠牲を出すのは許さん!」
ウィンディーが机に手を叩きつけ怒鳴る。
「それは、そうですが、現実的に私達に打てる手はありません。クレイドル区域にあがる手段はありませんし、オールド・キングを今から見つけるのも現実的ではありません
「手はある。ポイントK228にクーガから有澤に運ばれるVOBがある。それを奪取し「ウィンディー、ちょっと待ってくれ」
ウィンディーの話を遮り目を見る。
「何でお前がそんな事知ってるんだ?それに最初に聞けばよかったんだがレイテルパラッシュの傷、誰にやられた?
いや、それ以前に王の爺の陰謀をお前一人で見破れる分けないよな?VOBの事といいお前に余計な事を吹き込んだ奴は誰だ?」
ウィンディーと一瞬目があう。だが、彼女は直ぐに目を逸らす。
「それは、言えない。その、これ以上お前達に迷惑を掛けるわけには行かないし、彼女をこれ以上危険に晒すわけにもいかない」
「あのな、ウィンディー。ここまで巻き込んどいて用が済んだらぽい!はないだろ?それに俺達がお前の秘密を喋るわけ無いだろ?いいから、話せよウィンディー」
「そうじゃな」「つれないです」「続きが気になりますね」「そうですよぉ!」
口々に言い立てる俺達の顔を見回し、溜息を吐くウィンディー。
「お前達には敵わないな。だが、皆内密に頼む。情報提供者はメイと有澤だ。とはいってもメイには有澤への繋ぎを頼んだだけだが。陰謀もVOBの情報も全て有澤から聞いた」
ウィンディーを除く全員の視線が交差する。言わなきゃいけないことがあるが言いづらいのでお前が言え!と視線だけで押し付けあう。
しばらく、押し付けあった結果爺さんが溜息をつきながら口を開いた。
「嬢ちゃん、こんな事いいたかないんじゃが、あんた有澤とBFFの政争に利用されとるぞ?よく考えてみぃ。そんだけ情報もっとるんなら、有澤なりメイが行けばいいじゃろ?
それなのに何故嬢ちゃんに行かせようとする?」
「違う、いや確かにそうかもしれないが。
少なくともメイはこの話を聞いた直後に出撃しようとしたんだ。しかし、ネクストに乗り込もうとしたところで謎の敵勢力に狙撃された。
しかも、額と心臓を狙われてな。運よく転ばなければそして有澤が直ぐに部下を出して確保しなければ死んでいただろう。
私も、ネクストに乗り込むまで何度も襲撃を受けた。有澤が陽動してくれなかったら乗り込むことすら出来なかっただろう。
そして止めは追撃部隊だ。相手はBFFやテロリストではない、何も知らないインテリオルの部隊だった。
まさか、彼等を撃破するわけにいかず巻くのに時間がかかった上何故か、通信機が故障していてな。
おかげで、まっすぐK228に行く事ができなかった」
そこまでやるか。王の爺ガチだな。
「それに、私は有澤に利用されてもかまわない。少なくともメイ・グリンフィールドはクレイドルを救うために動いた。
彼女03に家族がいるそうだ。彼女は撃たれても血を流しながらネクストに向かって進もうとしたんだ。
お姉ちゃんが助けないとと呟きながらな。そして、私が助けると誓った時の涙とありがとうの言葉。
そうだ、私は誓ったんだ。彼女の代わりに家族を助けると。クレイドルを救うと。
だから、私が有澤に利用されることでクレイドルが救えるのならそれでいい。私は喜んで道化になろう」
「例え、反逆者扱いされてもか?」
また、悪い癖が出やがったと思いながらウィンディーに確認する。
「ああ。ただ、ロイ。お前達はこんな馬鹿な事に付き合う必要はない。いや、頼っておいて勝手なことを言っているのはわかっている。
ただ、整備が終われば私は出て行く。お前達は私に騙されたか脅されたと答えてくれ」
まったく、この馬鹿は何でこんなにいい女なのかね?
全員の顔を見回す。どいつもこいつも笑いながら頷く。
んで、お前らも馬鹿だな。最高だ!
「よし!今から俺達はK228に向かいVOBを奪取する!」
立ち上がり号令を掛ける。
「なっ何を言っている!お前達までこ「了解!ここからなら全速力でとばせば四時間ってところですね」い!おい!お前ら聞「では、三時間後にリンクスは出撃させます。整備部レイテルパラッシュの整備はそれまでに終わりますか?」視するな!わかっ「おう!一時間もかからんぞい。だが、VOBの取り付けの事を考えると今いる人数では辛いのう」ロイ!何とか「………では、寄り道になりますがダブリンへ。里帰りしている者以外は殆どそこにいますからね。エマ、三十分後に北ゲートに集まるように連絡を。集合できないの者には例の場所で待つように連絡を」お「はぃぃ!」貴様ら!「では、先のプランを四時間後にネクスト出撃。五時間後に到着に修正します。他に何かありますか?」だから、あると言っているだろう!!「あ~、そうだ。インテリオルにはウィンディーと共にカラードからの極秘任務を行う。緊急のため詳細は王小龍にって言っとけ」!!何を勝手な「了解です!それなら少しは時間を稼げますね。では、他に無いようですので解散!」ロイィィィィィィイィィ!!!」
真っ赤になって怒鳴るウィンディーを無視して全員が部屋から出て行く。
そして、唯一部屋に残った俺にウィンディーが詰め寄る。
「ロイ!どういうつもりだ!!私はレイテルパラッシュの整備さえしてくれればそれでフガ!」
ウィンディーの可愛い鼻を摘む。
「はいはい。落ち着けよウィンディー。折角の美人が台無しだぜ?」
手を払いどけられ怒鳴られる。
「ふざけるな!ロイ!私は真面目に「あのなぁ、一人で行って占拠した後にどうやってVOBを使うんだ?」!!そっそれは、整備員を脅すとか」
「おいおい、そんなんでまともに飛べるのか?坊主みたいに不良品を掴まされるぞ?大体、航路設定はどうするんだよ?きちんとしないと宇宙に飛び出しちまうぞ?」
黙り込むウィンディー。そんな彼女に笑いかける。
「だから俺達に「でも、それでも私の我儘にお前達を巻き込むわけには行かない。それに、頼っておいてなんだがこんなお前の好意につけこむようなまねは嫌だ!」
たく、相変わらずお堅いね。まぁ、そこがいいんだけどな。
「気にすんなよ。お前のためだけってわけじゃないさ。美人の涙が最優先さ」
ウィンディーが自分の目元に手を伸ばす。
「?私は泣いてなどいないが?」
怪訝な顔をするウィンディーに笑いかける。
「メイだよ。彼女泣いたんだろ?クレイドルが落ちたらもっと泣くよな?あんな美人の泣き顔なんて見たかないんでね。な?俺も、いや俺達も我儘でお前に付き合うんだから気にすんな。
そうだな、どうしても気になるって言うんなら依頼料10Cで受けてやるよ」
「すまな、いやありがとうロイ。嬉しかったよ」
少し赤くなって笑い返してくれるウィンディー。うんうん。やっぱり美人にゃ笑顔が似合うね。
「よし!じゃぁ、シャワーでも浴びてミッションまで一眠りすっか!いつものところ使ってくれ。んじゃ、三時間後に………ってなんだよ?」
「いや、一緒に浴びようと思ってな」
「また、ストレートなこって。でもいいのか?俺は望むところだがお前は疲れん」
唇が塞がれる。何か忘れている気がしたがいつもの癖で舌を絡め、唾液を交換したところで口の中に猛烈な苦味を感じて慌てて唇を離す。
反射的に苦味の元を吐き出そうとしてそれがウィンディーの物であった事を思い出し根性で飲み干す。
見ると、ウィンディーも似たようなことをしたのか目を白黒させていた。
苦笑しあう。
「にがぁ、そういやお互いジェル塗れだったな?」
「口直しはシャワー室でだな」
「部屋にしようぜ?誰か入ってきたらどうするんだよ?」
「見せ付けてやればいい」
「だから、何でお前そんなに男前なんだよ?」
工場の制圧は何の問題もなく終わった。
まぁ、ネクストが二機も出張れば当然だがね。
そして、
「ええか?VOBの装着に四時間はかかるからの。二人はその間、休んでおれ。
ええか、休むんじゃぞ?シュミレーションでわかったると思うがVOBは途轍もなく体力と精神力を使うんじゃからな!
さっきみたいに、出撃の直前まで盛っとるなよ?絶っっっっっ対にじゃぞ?
お前らの様子を見に行ったエマは真っ赤になってね寝込んだんじゃからな?」
爺さんからありがたいお説教を聞いた後、うんざりした気分でシャワーを浴び工場の仮眠室のベットに潜り込む。
そして目を瞑り眠りに着こうとしたところでノックに妨害される。
悪態をつきながら扉を開けると、枕を持ったインナー姿のウィンディーが立っていた。
「………」
「………」
「………その、一緒に寝ようと思ってな。寝るだけだ!何もしない!」
溜息が出る。
「それだけで済むわけねぇじゃねぇか。あのなぁ、ウィンディー、爺さんに散々言われたろ?寝ないと不味いぜ?それにたっぷりしただろ?」
これ以上やると白じゃなくて赤いのが出ちまうぜ?とは、流石に口にださない:
「いや、だが、そのあのな」
真っ赤になってもごもごと口ごもるウィンディー。その姿は可愛く色っぽく、枯れ果てたはずの息子がまだやれると立ち上がり、
危うく襲い掛かりそうになるが流石に寝ないと不味いので心の中で血涙を流しながら踵を返す。
「じゃぁ、お休みウィン「だって、しばらく会えなかったじゃないか!」
意外な言葉に驚き振り返ると、真っ赤になった上、若干涙目なウィンディーが服の裾を掴んで上目遣いで見ていた。
………すまん。爺さん。ヒャハァアッァー!
「VOB発射まで残り二分。作業員の退避完了。リンクス各位、異常ありますか?」
「ウィン・D・ファンション問題ない」「ロイ・ザーラントいつでもいけるぜ」
「了解。最終シーケン「いや、余裕じゃのう。流石寝ろといったわしの忠告を聞かずに盛っていただけの事はあるのう」
「爺さん、悪かったって」「すまない。私が誘ったんだ。余りロイを責めないでやってくれ」
「ふう、もうええわい。役得もあったしの。それで、合流場所は例の所でええんじゃな?」
「ああ、よろしく頼む。あそこなら企業の連中の目もしばらく届かないだろうしな」
「………」
「………」
「後、一分です。ゲートオープン」
「ロイ、VOBは初めてか?」
「ああ」
「そっそうか。………まあ、何れ避けられんのだ。初体験といこうじゃないか」
「………」
「………」
「30、29、28、27」
「スッスミカ先輩の真似をしたんだが似ていなかったか。すっすまない」
「20、19、18」
「あ~、そういえば先程セキュリティールームを調べてんじゃが、どうも仮眠室にも監視カメラがあったらしくての。ばっちり映っとたぞい?」
「んな?爺さん!?」
「え?」
「いや、まさか本当に首輪を付けるとはのう。年甲斐もなく興奮したわい。いい土産が出来たのう」
「ちょっと、待って!」
「爺!殺すぞ!」
「1、0、発射」
「帰ってこんかったら全世界に公表す「通信圏外です」
あががっがが死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!
意識が意識が飛ぶ飛ぶ!トンジャウ!
くそったれ、シュミレーションと全然違うじゃねえか!
ロケットの先端に括り付けられて飛ばされているような無茶苦茶なGに細かい起動修正を行うためのAMS負荷。
二重の負荷に俺は落ちる寸前だった。
よく坊主はこんなもんに何回も乗る気になったなぁ。何が慣れれば意外と楽しいですよだ!慣れる前に死ぬっつーの!
「ロイ!返事をしろ!ロイ!高度が上がってきているぞ!高度を下げろロイ!」
いや、そういえば最初は坊主も気絶して地面に叩き付けられた衝撃で目を覚ましたっつてたな。
「聞こえているのかロイ!このままだと!くそ!ロイ!」
やっぱりじいさんのいうとうりにねとけばよかったなぁ。でも、ウィンディーがエロかったからしょうがないね。はんせいはするけどこうかいはしない!!
「ああ、ウィンディー愛しているぜ。そしてエロいぜ!」
「何を言っている!ロイ!ああ!危険高度に!」
ああウィンディーのこえとレッドアラートがきこえるいちまんいじょうのてきをかんちてきからレーザーのはっしゃをかくにん
すごいなさいきんのしにがみはれーざーをそうびしているのかでもちょっとかずがおおすぎだろう
「って一万発以上のレーザァ?マジかよ避けられねぇ!?」
突如覚醒した頭が目の前の絶望的な状況を理解する。
「ロイ!気付いたか!高度を下げろ!」
ウィンディーの言葉に従い慌てて高度を下げる。
同時に最初のレーザーが着弾。次いで豪雨のように降り注ぐレーザーに肝を冷やすが幸いな事に減衰されたお陰で被害は出ていない。
10秒ほどでレーザーの雨がやむ。
安堵し一息つきながらログを漁る。
うげ、リンクスの覚醒のため覚醒剤を投与しましただと!?うわ、危険度が上から二つ目じゃねぇか。後で薬抜きしないとなぁ~。
「ロイ!無事か?」
「ああ、悪いなウィンディー。気持ちが良くて寝ちまったみたいだ。ちょっと、寝ぼけている以外は異常なし」
「そうか。ならいいんだが。だが、本当に大丈夫なんだろうな?気付けに妙な薬の強制投与等は行われていないな?」
相変わらず鋭いね、この子は。
「実は爺さんの話が原因で勃っちまってな。だから鎮静剤を少々「ロイ!」へいへい、悪かったよ。にしてもさっきのはびびったな。一体なんだありゃ?」
「それは、その忘れ、いや見てしまったのなら同じか。あれはアサルトセルだ」
話題を逸らすつもりの軽口だったのだが返ってきたウィンディーの言葉は予想以上に硬い。
「あ~、もしかして知ったらやばいことか?なら、無理して話さなくてもいいんだぜ?大方インテリオルの新兵器かなんかだろ?」
「それならまだましなんだがな。ロイ、これが終わったらインテリオルに戻れ。反対勢力は私が抑える」
苦りきった声でずっと前に終わった話を蒸し返すか。おいおい、ただ事じゃないな。
「あ~、何だよ藪から棒に。あんな事した俺が戻れるわけないだろ?それに、そもそも俺には会社勤めは向いてねぇよ。
俺には気楽な「ロイ!お願いだから言うことを聞いてくれ。私はお前を失いたくないんだ!」
珍しいというか、ベットの上以外じゃ初めて聞いたウィンディーの懇願するような声。
「あのアサルトセルは、今回のORCA事変のいや、リンクス戦争から続く争いの原因なんだ」
「?どういうことだよ?ORCAの連中の目的はクレイドル体制の破壊だろ。だから、アルテリアを占拠してエネルギー供給を絶って、それでも墜ちないやつはエーレンベルクで打ち落と………ってまさか!?」
「そうだ!ORCAの目的はクレイドルを墜とす事ではない!それは副産物にすぎないんだ。真の目的はアルテリアのエネルギーをエーレンベルクに注ぎ込みアサルトセルを排除することなんだ」
「ちょっと待てよウィンディー、確かにあれは脅威だが何も排除するのにそんな無茶な事をしなくても。展開してない所からフェルミなりイクリプスなり打ち上げて掃除させれば………ってまじかよ!?」
くそ、もしかしてあれは地球全てを覆ってやがるのか。
「ご想像のとおりだよロイ。何故クレイドルがこんな低空を飛んでいるんだと思う?これ以上飛ぶと打ち落とされるからさ」
おいおい、チラッと見ただけだがありゃとんでもない数だったぞ?それが地球全土を!?そんな無茶な事一体誰が!?いや、まさか
「ばら撒いたのは企業の連中なのか?」
「そうだ。元は国家解体戦争時国家側の核ミサイルを防ぐ為のものであったらしいし戦争終結後速やかに撤去されるはずだったのだが、
戦争終了直前に宇宙にある制御ユニットが全て何者かに破壊されたらしい。以来、私達は地上に閉じ込められたというわけだ」
「まじかよ。んで、ORCAの連中の目的はそれの排除か。おいおい、だとしたら、悪役は俺達のほうなんじゃないか?」
「かもしれないな。少なくとも先輩達はそう判断したからORCAに付いたのだろう。それでお前はどうするロイ?お前もORCAに付くのか?」
ウィンディーではなく、ウィン・Dとしての戦士の声。AMSが隣の僚機が不自然な戦闘態勢に入ったと警告してくる。
だが、俺はそれに気付かぬ振りをして軽口を返す。
「しっかし、あれだな?お前よくそんなこと知ってたな。俺もインテリオルにいたのに全然知らなかったぜ?あ~あ、やっぱインテリオルは女性に甘いっつ~か、野郎に厳しすぎだよな?」
「私も知ったのはつい最近、先輩がORCAに付く前日に飲んだ時に教えてもらったんだ。それに当事者を除けば知る者は殆どいない。先輩はべルリオーズから聞いたと言っていたよ。
つまり、この戦争もリンクス戦争もアサルトセルを護る者と破壊しようとする者の争いなのさ。それで、ロイ。お前はどうする?」
たく、答えなんざとっくにわかってるだろうに。どうしても言葉で聞きたいのかい。全く真面目なこった。
「逆に聞くけどよ?お前は何でここにいるんだ?お前の性格なら真っ先にORCAにいきそうだけどよ?」
「そうだな。リンクス戦争の時に知ったのならば私は向こうに付いただろう。でも、今は違う。
確かに奴等の言っている事は正しい。だが、その正しさを実行すると多くの人が死ぬ。
しかも、私やお前、あるいはORCAのように全てを知って死ぬ覚悟を決めた強者から死ぬんじゃない。何も知らない弱者から死んでいくんだ。
「「私にはそれが許せない。私の矜持がそれを許さない」」
お!上手く被ったな。
「………ふん、分かっているなら聞くな」
悔しくて嬉しそうなウィンディーの声。
AMSが僚機が戦闘状態を解除しましたと報告してくる。
「お前もな。ついでに続きはならば私は弱い者を護る為に間違おうだな。
そうだ!ウィンディー。なら、俺の返答はわかるか?」
「む?少し待て」
う~ん、いいな。そんな事態じゃないってのは分かってるけどわくわくするな。
でも、アサルトセルか。俺も覚悟をきめにゃいかんかね。
「よし!いくぞ!
確かに納得できない部分もあるな。だが、クレイドルには美人と元美人とこれから美人になる子が一杯いるからな。そいつらを犠牲にするのはもっと嫌だね。
だから、俺も護ってやるさ。ついでだから男もな。
どっどうだ?」
おお!流石ウィンディー!俺の事をよく分かってるな。
でも、
「残念80点だな。後ろに何より惚れた女が望んだ事だから男なら叶えてやらないとなが付けば満点だ。
インテリオルに戻るのも了解だ。面倒だが惚れた女の頼みだからな」
「なっ、あ、その、あのありがとう。嬉しい。けど、随分とあっさり受けてくれたな本当にいいのか?」
相変わらず不意打ちに弱いね。やっぱりからかうと楽しいなぁ。
「言ったろ?惚れた女の頼みは聞くって。さて、後五分でクレイドル03に到着だ。まずはGAの防衛部隊を説得しないとな。ウィンディー交渉は俺がやるから黙っててくれよ?」
「ああ、分かった。いや、ちょっと待て!どういう意味だ!?それに不意打ちはずるいぞ!」
「お前は交渉ごとが苦手だからな。それと苦情は戦闘後にな」
「くっ。分かった。そうだ、ロイ」
「なんだよ?」
「結婚しよう」
「はぁ!?いきなり何を言い出すんだ!?」
「ふん。苦情は戦闘後なのだろう? レイテルパラッシュは以後目標空域まで通信封鎖を行う」
「おい!ウィンディー!くそ!本当に切りやがった!」
視界に芥子粒のような点が見えたと同時に限界を迎えたVOBがパージされる。運悪く下を歩いていた人にぶつかったりしませんように。
そのまま、スピードを殺さずに見えた点――クレイドル03――に向かう。
直ぐ上を飛ぶレイテルパラッシュに問い合わせたいところなのだが、先程から公用チャンネルで通信が入っている。
「お早い対応で。ってまぁ、当然か」
だが、通信機をONにしたときに聞こえたのは
「I'm thinker」
鼻歌?なんだぁ?民間のチャンネルでも拾っちまったのか?
にしても、おいおいこれだけ接近してもノーマルのお出迎えはおろか通信もないたぁ、何が警備を増強しただ。緩みきってるじゃ
「二千万!」
鼻歌が突然歓声に変わり同時に一番奥のクレイドルが火を吹き落下していく。
まさか、もう襲撃が始まってんのか!?」
「レイテルパラッシュ先行する!マイブリスは援護を!」
レイテルパラッシュがOBを起動し飛び去っていく。
「おい!落ち着けよ!ウィンディー!PAが切れたまま戦う気かよ!」
慌てて、OBを起動させ後を追うが悲しいかな、重量級と軽量級の差でどんどん離されていく。
見えた。報告にあったようにネクストはリザだけ………ってまじかよ、自律型ネクストがいるじゃねぇか!
「お客さんか。突っ込んできた奴は俺がやる。002-Bは重量機の牽制。他の奴らは続行だ!所謂大量殺人だ!刺激的にいこうぜ!」
って、あいつら公用チャンネルで通信してんのか!?軽口といいいかれてんな。出来れば係わり合いになりたくないんだが。
「よう、首輪付き。お前達も墜としにきたのか?悪いが俺達のが先約なんでな。だが、折角来たんだ。一つ位分けてやろうか?」
「悪いが、こっちは止めに来た側でね。一つといわず全部いただくよ」
「くくく。お前らも選んで殺す戦争屋かね?俺と同じ血塗れの癖に上等なこった」
あ~くそ、寒気が止まらん。こいつは本当に俺と同じ人間なのか?
「ふざけるな!」
ウィンディーがKAPTEYNを発射しELTANINで斬りにいく。
「気をつけろウィンディー!そいつはやばい!あ~、こちらはカラードランク一位レイテルパラッシュ及び四位のマイブリスだ。救援に来た。
ネクストはこっちで引き受けるから防衛部隊はノーマルの相手を頼む」
くそ!熱くなりすぎだっての!
最低限の通信を済まし援護に向かおうとする俺の前に002-Bが五体も立ち塞がってくる。
おいおい、冗談だろ?
****
「くそ、寄るんじゃねぇよ!」
QBを吹かしコジマブレードを展開しながら突っ込んでくる002-Bから間一髪の所で身をかわす。
うげげ。掠っただけなのにPAをごっそり持っていかれた。
「くそ!」
手近にいた一匹にBECRUXを叩き込む。
AMSから警告。ENが危険域だと!?WGPを乱射しついでにVERMILLIONを先程BECRUXを当てた奴に発射しながらクレイドルに降りる。
直後降り注ぐコジマ砲をQBで回避し、同時にBELTCREEKを起動させDEARBORNを発射。これでようやく先程BECRUXが当たった奴が墜ちる。
残り四匹でAPは七割強。単純計算だと残り一、二匹のところで俺は死ぬ。
それに自分が先程いた場所を見る。コジマ砲に抉られて火を噴いている。
くそ。どうしても機動力に何のある重量級ゆえにQBを吹かしまくる事になり、さらにメインのBECRUXがENを馬鹿食いすることもあり何度かクレイドルに着陸してENを回復するはめになり
その結果、護るべきクレイドルを傷つける自体に陥っていた。
どちらかというとこいつらの相手はウィンディーのが得意なんだが。
002-Bの動きに注意しながら俺は上方で展開される空中戦の様子を伺った。
****
「あああああ!」
「残念だったな、ほら」
何十回目かのウィンディーの突撃がいなされ同時にショットガンが放たれる。
直ぐにQBが吹かされ直撃は回避するが、散弾ゆえ完全にはかわせずPAの大部分と装甲を僅かに削り取る。
追撃のチェーンガンとミサイルへの回避運動に入るが無茶な突撃で不足していたENがついに切れ、ミサイルの直撃をうけ少なくない損害をレイテルパラッシュに与える。
仕方なく悪態をつきながら距離をとろうとするウィンディーだが
「いいのか、俺を自由にして?なら、続けさせてもらおうか」
リザがクレイドルのブースターを打ち抜く。
「止めろ!」
叫び距離をとるのを止め再度無謀な突撃を敢行するウィンディー。
「クククク。」
そして、前回までの例に漏れずかわされたGEMMAの弾が
「しまった!」
「礼を言うぜ、首輪付き。手伝ってくれてよ。四千万!」
訂正、これまでとは違いかわされたGEMMAの弾がリザの後方にあったクレイドルのブースターに直撃し破壊する。
その結果、推力の限界を迎えたクレイドルが墜ちていく。
「貴様ぁ!」
「そんなに怒るなよ相棒?同じ大量殺人者同士、仲良くやろうぜ?」
戦闘は圧倒的にオールド・キングが優勢。
ウィンディーは直撃こそ受けていないがおそらく、はじめて直撃を受けたときが墜ちる時だろう。
いや、仮に受けなくてもいずれ削り殺されるか。
やれやれ、こちらの事情と性格と地形を利用されて見事に機体の相性差を覆されてるな。
本来なら元からOB後の為にPAとENに余裕が無かった点を考えてもレイテルパラッシュをリザの相性は悪くない。
リザは近距離仕様。しかも、相手が突っ込んできたところをいなし、じわじわと削っていくタイプだ。
対してレイテルパラッシュは中距離高火力型。軽量級としては若干鈍いがそれでも一般的な中量級よりは高機動な点を生かし中距離から高火力武器を叩き込む。
つまり、本来ならば二人の戦いは中距離を維持しようとするレイテルパラッシュをリザが追うという形になるはずだ。
その形ならば、OB後という点と地形が空中の為武器がEN消費するもののみで固められているためEN回復が厳しいという点を除いても最悪五分五分の互角以上の戦闘が出来たはずだ。
だが、実際はレイテルパラッシュは得意の中距離を捨てて奴に近距離戦を挑んでいる。
これは、こちらがクレイドルを護りに来たということが原因だ。奴は余裕があるとさっきみたいにクレイドルに攻撃をしかける。
おかげでウィンディーは得意の中距離戦はおろか録にEN回復すら出来ずに無謀な近距離戦を仕掛け続けることを強要されている。
ウィンディーも本当は分かっているはずだ。ある程度クレイドルに被害が出る事を許容しなければ奴を倒す事は出来ないと。
だが、オールド・キングは一々挑発を繰り返しウィンディーにその冷静な判断をする決断力を奪っている。
もっとも、仮にウィンディーが冷静でもその判断を出来たかどうかは微妙だがね。何せ、そんな賢い判断ができるならそもそもあいつはこんなところに来てはいない。
さぁ、どうするロイ・ザーランド?
何か手を考えないとこのままじゃ二人とも死んじまうぞ?
とにかくおれとウィンディーの相手を取り替えないとどうにもならん。
最悪、俺が奴と刺し違えれば残りはウィンディー一人で何とかなるんだが出来れば俺も死にたくないんだよなぁ。
死にたくは無い。死にたくは無いが………ウィンディーが死ぬよかましか。それに多分ここで生き残っても………
「ええい!覚悟を決めるか」
頭を振って未来の事を追い出す。明日死ぬためには今日生き残らなきゃいけないからな。
AMS経由でマシーンに作戦のシュミレーションをさせる。
結果は、作戦の成功率83%、生存率36%という微妙な結果だった。
まぁ、無人の002-Bはともかく有人機のリザのシュミレーションは無理だからな。気休めみたいなもんか。
とにかく、これしか手を思いつかないんだからどんなに無謀でもやるしかない!
***
「おらぁぁぁぁぁぁっぁあ!」
叫び声を上げながらWGPを乱射しながら上空に浮遊する002-B目掛け上昇する。
相手が回避行動の結果、目的の場所に行くように誘導しながら時には虎の子のBECRUXすら発射する。
人間相手なら即座にばれるような荒い誘導だが幸いな事に相手は無人機なため割と簡単に誘導に引っ掛かる。
「くぅ!あと少し………ついた!」
それでも、二割程度のAPを失ったが誘導の完了と同時に目的の場所に辿り着く。
それは002-Bを対角線で結んだ場合の交差点。
002-Bが一瞬、動きが止まった後に全機一斉にブレードを展開するのを確認しOBを起動させる。
「やっぱり、無人機は駄目だな。ほら、ついて来い!」
人間が乗っていればそのままの位置で射撃をして対象が攻撃を回避した場合味方に当たる場合、
少し移動して撃つか、あるいは敵の撃破を最優先にして多少の被害を覚悟してそのまま撃つだろう。
だが、頭が固く応用が利かないマシーンはそんな事をしない。必中の距離で囲んでいる為自ら動いてその有利な状況を崩す事など考えないし、
余程特殊な設定をしない限りフレンドリーファイアを許すなんて設定は出来ない。
結果として、全員がブレードを展開するなんていうアホな行動に出るわけだ。
しかも、本来俺がOBで離脱等という行動をとった場合は、離脱を阻止するためにクレイドルに攻撃するか、最低でも射撃で出鼻を挫くという選択肢を選ばなければいけない。
しかし、こいつらには一度展開したブレードをキャンセルするという思考ルーチンは無いらしい。
ならばせめてクレイドルを狙えばいいものをクレイドルはブレードの射程外なため標的外。
結果として、OBで逃げる俺の後ろをカルガモの子供のように付いてくるという間抜けな姿を晒す事になるわけだ。
さて、ここまではシュミレーションど~り。ダメージも許容範囲内。
さあ、ここからが本番だ。
****
「ちっ」
「な!ロイ!?」
「ぐっ。ウィンディー!スイッチだ!お前はお人形の相手を頼む!」
OBで二人の間に強引に割り込む。
結果的にショットガンからレイテルパラッシュを庇う形になる。
「だが!「いいから行け!熱くなっているお前じゃ勝てねぇ!人形壊してる間に冷静になれ!んで、早く片付けて俺を助けに来てくれよ!」
「すまない!」
「いかせる「させねぇよ!」ちっ」
レイテルパラッシュに向かったミサイルをWGPで叩き落す。
全弾打ち落とした後そのままリザを狙い、さらに連動付きのVERMILLIONをプレゼントする。
「ちっ、首輪付きが!調子に乗るな!」
リザがレイテルパラッシュへの追撃を諦めこちらに向き直る。
同時にライフルとチェーンガンでこちらのミサイルを次々に打ち落としていく。
「まだま…くそ!」
追撃のBECRUXを放とうとしたところでリザがクレイドルを背にし、体勢を立て直したので攻撃をやめる。
ウィンディーは?………問題ないみたいだな。少々熱くなってるし焦ってるけど問題ない。いつものあいつだ。早く倒してくれよ。
「どうした、首輪付き?チャンスだぞ?攻撃「しないわけねーだろ!!」」
嘲るオールド・キングに対してQBで前進しWGPを乱射。「くくく。惜しかったちっ!」QBで回避されるが予想していた俺は同時にVERMILLIONを叩き込む。WGPの弾で痛めつけられ、止めにリザに当て損ねたミサイルが当たったクレイドルのブースターが火を噴くが構わない。WGPでさらに追撃。同時に右武器切り替え。「舐めるな!」視界からリザが消える。右から衝撃。散弾。「くそ!だが!」PAに分厚い装甲のおかげでたいしたダメージにはならない。左武器切り替え。「おおおおお!」左後方に移動しながら右に旋回し視界にリザが入った瞬間にBECRUXを発射。双発のハイレーザー。片方が避けられるが片方は当たる。「止め「まだだ!」んな!?」DEARBORN03のロックが完了する瞬間リザが発光するのを見て慌てて距離をとる。閃光。衝撃。轟音。視界とレーダと聴覚が一時的にイカレル。
「くそぉぉぉぉ!」WGPをでたらめに乱射しながらさらに後退する。視界とレーダが回復した瞬間目の前に四発のミサイル。AMSが悲鳴を上げる。「あぁぁぁぁっぁぁぁぁ!」何とか一発避け、一発を叩き落したがそれでも二発直撃しPAの守りがない剥き出しの装甲を削り取る。APが危険域のため離脱を推奨と喚きたてるAMSを黙らせる。リザは………いた!正面。距離600。推定ダメージは六割強ってところか。重量級と軽量級の差を考えるとお互い残りAPはおんなじぐらいか?
さぁ、どうする?仕掛けるか?それとも、PA回復まで待つか?
「やるじゃないか首輪付き。だがいいのか?あんまり派手にやるとクレイドルが墜ちちまうぞ?」
ふーん、そっちは待ちを選ぶのか。いいぜ、付き合ってやるよ。ウィンディーが来るかもしれねぇしな。
「お前をやらなきゃどっちにしろ全部墜ちちまうじゃねぇか。なら、一機落ちるだけでお前を倒せるんなら安いもんだろ?それに、俺はあいつを助けに来たんでね。
そのためだったら、最悪クレイドルが全部墜ちても構わないんだよ」
「くくくく。そうかい。だがいいのか?インテリオルは手を出さないって聞いたんだがな?そもそもお前らは何しに来たんだ?まさか、戦争屋風情が正義の味方の真似事か?」
ピンポーン、とは悔しいから言いたくないな。
「おいおい、しっかり話を聞いていろよおじさん。言ったろ、俺はウィンディーを助けにきただけだってね。ウィンディーはとある人物からの依頼だな」
うん、嘘はついてないよな、嘘は。
「ちっ、企業連は手を出さないはずだったろうに。陰謀屋の癖に陰謀も満足に出来ないのか。間抜けが、話にもならんな」
「その間抜けは王の爺の事か?」
「そうだよ、首輪付き。もっとも依頼主でなくて協力者だがね。目を掛けていた奴に振られてな。戦力不足に悩んでいたら戦力と情報を提供してくれたんだよ」
あんの爺、利用どころか思いっきり主犯じゃねぇか。何考えてやがる!
「いいのかよ?べらべら喋って?きられちまうぞ?」
「構わないぜ首輪付き。元からこれが終わればこちらから裏切るつもりだったからな。クレイドルは全て落す。選んで殺すつもりは無いからな。
もっともあの陰謀屋はそうは思っていないだろうが。そうだな、次は07でも襲ってやるか」
あ、ちょっと手伝いたいかも。じゃなくて、何考えてんだ爺!思いっきりこいつの狂気の量を見誤ってんじゃねぇか!
「お前も答えろ。お前達の依頼人は誰だ?」
「とある美女。依頼料は美人の涙。と、一応10Cもかな?まぁ、簡単に言うとお前が最初に言った正義の味方が正解だよ。ガラじゃねぇけどな」
「………なんだ、結局はお前も選んで殺す戦争屋かね?上品ぶりやがって」
リザが武装を構える。俺も、マイブリスに武装を構えさせながら答える。
「おいおい、勘違いするなよ、おじさん。俺がそんないい奴に見えるか?俺はウィンディーが護りたいって言うから来たんだよ。
もし、ウィンディーがこないんなら流石に情報知っても見捨てたぜ?
つーか、選ぶのは当たり前だろ?人間知らない一億人の生死じゃ動かないが、惚れた一人の女の為には死ねる。そんなもんだろ。それともあんたは違うのか?」
「昔はな。だが、今は違う!」
リザがOBで突っ込んでくる。同時にお互いがミサイルを発射。「そうかい!安心したよ!」ミサイルがWGPとチェーンガンで打ち落とされる。爆炎の中リザがQBの光と共に視界から消える。左。だが何度目のQB後に攻撃に入る?一度で左から?それとも二度で後ろから?「って下からかよ!?」レーダはミサイルが左から下に移動しながら発射されていると表示。
通常ブーストを切り、QBで右後ろに下がりながら左に旋回しミサイル発射店をロックし打ち抜く「しまっ!?」だが、打ち抜いたのはリザの背武器だけ。衝撃左後方上部。リザか。くそ、デコイに釣られてる間に回り込まれたか。しかも、わざわざミサイルと一緒に動いてこっちのレーダをごまかして!二度目の衝撃。慌てて前QBを連弾で使用し引き離そうとするが………できない!?さらに追撃。削られていく装甲。「くそぉぉぉおおぉ!」WGPを後ろに向けて適当に乱射してみるが牽制にもならない。「あがぁ!」左足に激痛。AMSが装甲貫通リンクスに被弾とご丁寧に報告してくる。このまま出血が続くと10分で死ぬがそれより先に機体が終わる。PAはダウンしておりAPは10%以下。通信機はさっきいかれ修理中と表示されたままフリーズし、最優先に設定すべき生命維持機能すら切ってAMS接続にまわしているがそれでも視界にはノイズが走っている。そして、それほどまで延命しても次の一撃で終わる。くそ、ウィンディーすまねぇ!最後の悪足掻きに撃墜覚悟で向き直り発射したBECRUXが回避され虚しく空を抉ったところで諦め目を瞑る。
衝撃。
GAMEOVERか。墜落するか爆死するか。くそ、ろくな終わり方じゃねぇな。……………………………あれ?何もおこらない?もしかしたもうあの世?
恐る恐る目を開くと目の前には腰の部分で二つに切られたリザと、ボロボロのマイブリスを支えるレイテルパラッシュの姿があった。
そっか、ギリギリ間に合ったのか。機体の制御を切り通信の回復と生命維持に最優先にリソースを割り当てる。
「ロイ!無事か!無事なら返事をしろ!ロイ!」「ああ、無事だ。すまねぇ寝てた」「なんとも、何ともないんだな?」「ああ、そっちはどうだ?」「私も大丈夫だ」
「そうか、良か「ち、手間取りすぎたか、早すぎるが、まあ仕方ない、がまだだ!」ウィンディー!」
死に体となったリザの上半身がOBを起動する。
「くそ!悪足掻きを!」ウィンディーがGEMMAを乱射するがリザはこちらに向かわず全身を発光させながら上方に向かう。
「不味い、ウィンディー!クレイドルだ!」「六千万!」「やめろぉぉぉぉおおぉ!」
リザがクレイドルに突き刺さるのと同時にアサルトアーマーが発動する。
「あ…あ…」
そして、炎上し落下を始めるクレイドル。
「止めろ!どこ行くつもりだ!もう間にあわねぇ!お前が行っても巻き込まれて死体が一つ増えるだけだ!」
飛び出そうとするウィンディーを牽制する。
「殺してるんだ、殺されもするさ…、I'm thinker トゥートゥトゥートゥトゥ、I'm thinker トゥートゥトゥートゥトゥ」
オールド・キングは他人の命と同じように自分の命が終わるのを無感動に受け止めていた。きっと、あいつからみれば全ての命が等しく無価値なのだろう。
狂人の歌声と共に二千万と一つの命が墜ちていく。
俺にはその歌声が古の王が六千万の捕虜を引きつれ地獄に帰還する凱歌のように聞こえた。
「くそ!私は一体何のためにここに!ロイ?おいロイ?返事をしろ!ロイ!」
俺はその光景に旋律と感動を覚えたのを最後に、出血と安堵感から意識を失ったのだった。
夢を見た。何でもない夢だ。
ある男がリザという美人ではないが気立てのいい奥さんとの間にリリアナという子供を授かる。
そして、親子三人で豊かではないが仲良く幸せに平凡に暮らす。
そんなありふれた酷く悲しい夢を見た
頬を濡らす不快な感覚に目を覚ます。ん?俺は泣いてるのか?
「痛!」同時に走る激痛に顔を歪ませる。
そりゃ、この痛みなら泣くわな。激痛に耐えながら原因を見る。
良かった、まだ付いてる。ついでに痛みに耐えながら足の指を順番に動かしていく。
………良かった。問題は無いな。
そして、改めて周りを見やる。
窓から見える景色は地平線の無い真っ青な空のみ。
どうもクレイドルの病院みてぇーだな。
ベットの脇の椅子はつい先程まで誰かが座っていたのであろう痕跡が残っていた。
まぁ、誰が座っていたのかは考えるまでもないのでもう一つの疑問を考える。
「てっきり独房や監獄、下手すりゃあの世かと思ったんだがどういうことだ?」
俺の考えすぎか?それとも………
「目が覚めたようだな。お前は三日も寝ていたんだぞ。寝ぼすけめ」
考え込んでいると病室の扉が開き姿を現したウィンディーが声を掛けてくる。
そのまま、手に持った果物セットを入り口脇の机の上におく。
「林檎食べるか?リッチランド産の高級品だぞ?」
「お前な、こういうときは『無事だったのねロイ!』とかいいながら抱きついてくるもんだぜ?」
「果物を持っていたからな。抱きついたら落してしまう。だから、手ぶらになった今やるんだ」
「わぷ」
顔が慣れ親しんだ柔らかさに包まれる。
「嘘吐き。何が大丈夫だ。危なかったんだぞ。一時は心臓が止まったんだ。その後も三日も起きなかったし。本当に良かった」
「………すまねぇな」
***
その後、ウィンディーの豊かではないが柔らかい胸に包まれながら事の顛末を聞いた。
あの後、直ぐにクレイドルの病院に無理を言って運ばせた事。
結局GAの本社は最初のクレイドルにあったため、本社はほぼ壊滅したこと。
だが、メイの家族は助かった事。
俺達の命令違反もろもろはクレイドルを壊滅から救った事で相殺になりそうな事。
全てを話し終わった後、頭に回されたウィンディーの手が僅かに震える。
「なあ、ロイ?結局私達のした事はなんだったんだろうな?最初の二千万人はともかく、残りの四千万人は上手くやれば助けられたはずだったんだ。
いや、最初の二千万人だってそうだ!もっと早く私達が到着すれば助けられたんだ!そうだ!犠牲になった六千万人は私達が殺したも同然だ。
私は英雄なんかじゃない。私は、私は、あいつと同じ大量殺人者だ」
震える手に力が篭る。そして、首筋に熱い雫がポツポツと垂れる。耳には噛殺された嗚咽と罪の意識のまま自らを傷つけていく呪いが聞こえる。
俺は、溜息をつきウィンディーの腰にまわしていた左手を撫で回すように下にやる。反応なし。相変わらずウィンディーは自らを攻め続けている。仕方ないな。
珍しくスカートだったのでこれ幸いと潜り込み人差し指で最後の守りをずらし、穴に左指を一気に根元まで突っ込む。
「ひゃん!」
可愛らしい声を上げてウィンディーの背筋が伸びる。相変わらず後ろは弱いな。
俺は中指を引き抜きながら正面にあるウィンディーの目を見る。
「いいか、ウィンディー。俺達が助けに行かなけりゃあいつらは全員死んでいたんだぜ?んで、俺達にはあいつらを助けにいく義理も義務も無かった。
でも、俺達は行った。だとしたら俺達は四千万を助けた感謝はともかく六千万の死に対する責任を負う必要は無い。
そもそも、殺したのはオールド・キングで助ける義務があったのはGAの連中だ。俺達が殺したわけでも見捨てたわけでもない」
「だが!私達が、いや、私があそこで熱くならなければ、いや私が話を聞いて直ぐにお前達のところに向かっていたらメイも傷つかなかったし六千万人も助かったんだ!
義務とか権利なんか関係ない!救えるべき人を救えなかったのであれば私も老人達と同ひゃん!」
「だ~か~ら~、思いつめるなって。お前が幾ら思いつめても死んだ人間が生き返るわけじゃないんだぞ?
本来一億死ぬところを六千万で済ませた。六千万助けられ無かったんじゃなくて四千万救ったって思えよ?」
「違う、一億全員救えたんだ!私のミスで六ひゃん!ロイ!ひゃん、あ!いい加減に!ひゃん!だめ!しろひゃん!、出る!ひゃん」
余りに、分からずやなウィンディーに怒りを覚え、中指を高速で出し入れする。
いや、怒りを覚えているのはウィンディーを説得しきれない俺自身にか。
議論は一向に平行線。まぁ、当然といえば当然だ。人数の問題でもないだろうがそれでも六千万という数は助けられなかったで済ますには大きすぎる数だ。
ウィンディーが自責に苛まれるのも分かる。
でも、だからこそウィンディーにはそんな物を背負って欲しくなかった。
惚れた女が六千万人もの人間を殺した罪の意識を背負って生きていくなんて嫌だ。
それを回避するためには俺は卑怯者にでもなろう。
高速ピストンを止め、ウィンディーにキスをする。
舌も絡ませない。ただの唇を触れ合わせるだけの簡単なもの。これからする卑怯な行為を貫くための力を貰うお呪い。
唇を離し覚悟を決め口を開く。
「なぁ、よく考えろよ、ウィンディー。助けたお前がそんな調子だと助かった奴等も罪の意識を背負わなきゃなんねぇ。
死んだ奴等を犠牲にして自分達は生き残ったっていうどう足掻いても償いようの無い罪をな。
そりゃ、俺達はいいぜ?俺達は強い。俺達は殺す覚悟も殺される覚悟も、罪を背負う覚悟もある。だからきっと耐えられるしあるいはどこかで償えるかもしれねぇ。
でも、助かった奴等は違う。お前言ってたよな?あいつ等は弱いって、そうだよ。弱いんだ。だからきっと償えるチャンスも無いし耐えられない。
なのに、お前はそんな弱い奴等に罪の意識を背負わすのか?知り合いの六割が死んじまって唯でさえ辛いのにさらに重荷を背負わせるのか?
生き残った幸運を喜ばせずにこれからの人生を罪の意識に囚われさせて過ごさせるのか?」
「それは、だが、でも」
やっぱり、効果ありか。迷うウィンディーに自己嫌悪を押し殺し畳み掛ける。
「だから、誇れよウィンディー。四千万人を救った事を。そうすればあいつ等はきっと笑える。生き残った幸運を喜び、死んじまった奴らの分まで幸せに生きれる。
これがお前の考え方に会わない事は分かってる。でも、自分の為じゃなく弱いやつらがこれからも笑って生きるために誇れよ。
………その、一人じゃ辛いっていうなら俺が支えてやるからさ?」
「………」
沈黙するウィンディー。葛藤してるんだろうな~。
そりゃそうだ。色々言ってるが要は死んだ奴らのことは忘れるって言っているんだから。
にしても、自分の為じゃなく弱者の為って脅迫した挙句に最後は護れない約束か。
卑怯だね。でも、惚れた女が罪の意思に苛まれて修羅道歩くよりもずっといい。
それに死人は死んだ瞬間にマイブリス――天国――に行く。
だからマイブリス。至福を追い求めるのは生者の特権だ。生きている奴等は生きている限り幸福を追い求める義務がある。
だから、死者への供養も復讐も忘却も全て生者の為の行いだ。生者が死者を過去の思い出にし、未来を歩むためな儀式だ。
もし、それを生者のためではなく死者のために行う者がいるとしたらそれはもはや人ではない。
俺達と同じ形をした全く違う思考と価値観を持った何かだろう。
あの狂人や姐さんに拾われたばかりの坊主のように。
「………分かった。誇ろう。ただ、ロイ。私一人では多分無理だ。支えてくれるか?」
生まれて初めて聞いたウィンディーの弱く儚げな声で縋られる。
「ああ、俺がくたばるかそっちがもういいって言うまでな」
くそ、俺も半端だね。ここで保険を打つか。
「そうか、では、長生きしてくれ」
微笑んだウィンディーの顔は今まで見た中で一番美しかった。
そして俺達はもう一度キスをする。
でも、悪いな、ウィンディー。多分それ無理だわ。
その後、しばらくしてウィンディーは名残惜しそうにもう出なければならないと告げた。
何でも、無理を言って俺が目覚めるまでは一切取り調べその他に応じず看病してくれたらしい。
成る程。だからか。
「多分、そのまま仕事だな。ORCAの本拠地を見つけたらしい。次に会えるのはそれが終わったらだな。
その時にはインテリオルへの入社手続書と婚姻届を持ってくる」
「ああ、よろしく頼む。そうだ、ウィンディー。地上に行くならあいつらに事情を説明してお前が雇っておいてくれ。
多分お前が直で行かないと姿を晦ましちまうだろうから面倒かもしれんが頼む。ポイントLI738だ」
「何で、そんな僻地に。まあいい。分かった。じゃあ、行ってくるよ」
「さよなら、ウィンディー。愛してるよ」
「私もだロイ」
****
ウィンディーを見送った後遣り残した事を考える。
多分大丈夫だ。
あいつ等の事はウィンディーが上手く守ってくれるだろうし、ウィンディーはあいつ等が上手く宥めてくれるだろう。
よし、と一息つき煙草を探す。当然無い。
「あ~、くそ。そりゃ、病院だもんな。なぁ、あんた?煙草もっていないか?」
いつの間にか部屋の入り口にいて物騒な黒光りするものを構えた黒服に声を掛ける。
返事は六発の鉛玉だった。
「あが」
灼熱間と共に肺から溢れたきた血を吐き出す。
心臓と左右の肺に二発ずつ叩き込まれた弾は文句無く致命傷。
てっきり額を撃ち抜いてあっさり殺してくれると思ったが甘かった。苦しみながら死ねってか。王の爺も随分とお怒りだな。
黒服は俺の傷を確認し確かに致命傷であることを確認すると煙草を取り出し自ら咥える。
嫌味な奴だな。お前はこの後幾らでも吸えるんだから俺に寄越せ。
一言言ってやろうと口を開くが出てくるのは血ばかり。
血を吐き出しながら咳き込む俺を見ながら黒服は煙草に火をつけ一口吸った後、俺の口に咥えさせる。
優しい所あるじゃねぇか。礼を言おうとして口を開いても恐らく血を吐き出し折角の煙草を消してしまう事になるので目礼する。
通じたのか通じなかったのか分からないが、男が去っていくのを見送りながら咽ないように慎重に息を吸い込む。
旨い。あいつ、良い煙草吸ってんなぁ~。
でも、やっぱりこうなったか。
自分に刃向かった奴を生かしておいたら王の面子も立たないし、
インテリオルもインテリオルでクレイドルを救うためとはいえ結果的に自社のネクストが
敵対会社のクレイドルに無断に接近した挙句戦闘までしたんなら落とし前を付けなきゃいけないよなぁ。
だとしたら、俺の命で手打ちになるならお互い上等だ。
それに、俺は王の爺が黒幕だって聞いちまったしアサルトセルの事も知っちまった。俺は信用が無いからな。
生かしておいて不安の種を残しとくよりもこの際黙らせておいたほうが良いしな。
だから、俺がここで殺されるのは仕方ない。
俺は覚悟していた。そしてその上で、自分よりウィンディーが生き残る事を選んだんだ。
だから、後悔はしない。
でも、ウィンディーすまん。やっぱり約束は守れなかった。
大量の血を吐きながら紫煙を吐き出す。
もう一度、吸う事はできなかった。
後書き
某所からの移送です。良かったら見てください
「ま、悪くない人生だったな」
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