小説/長編

Written by 独鴉


初投稿です。粗製+勝手が良く分からないので変な形になっていたら申し訳ありません。


エアキャリアーに乗せられ1機のネクストがラインアークへと向けて運ばれていた。先鋭的なデザインの高速突撃型レイレナード社製アーリヤ、
すでに企業は壊滅し旧式化しつつあるが、オーメル・サイエンス・テクノロジーによってライセンス生産され、
細々としたマイナーチェンジによっていまだ第一線で戦える代物と仕上がっている。
オペレーターのセレンさんがリンクス訓練施設で何種類かのベース機体を操縦した時に調達してくれた。
自分の戦い方から推測してくれたが、まだテスト以外では操縦したことはない。

「ラインアークまであと2分だ。そろそろ機体を起動させアクセスしておけ」

「わかりました」

待機状態にあったAMSとリンクすると鈍い頭痛と吐き気が襲ってくるが、
戦闘が開始されれば特に感じることはないだろうと割り切っている。
ジェネレーターのコジマ粒子が圧縮され、機体各部が静かな音を立てて駆動を始める。

(結局俺も死神か・・・)

俺の家は代々レイヴンの家系だ。大して強くもないが過去の歴史を変える戦争にレイヴンとして参加しながらも運よく生き残り続けてきた。
もちろん大きな戦果も上げたことはないが、足手まといにはならなかったと爺さんが先代達のことを言っていたのを覚えている。
世界を大きく変えた国家解体戦争でもレイヴンとして参戦していた爺さんと両親も運よく生き残り、
まだガキだった俺も所属部隊に預けられていて生き残った。
実力は無いが運だけはいい家系だと爺さんも親父も自負していたが、親父のレイヴン仲間はそんな事は無いと言っていた。
リンクス戦争間際、親父の所属している独立傭兵部隊のレイヴンに俺はなった。
初めて乗ったACは爺さんからもらった数世代前、
いまでは生産企業名も残っていないクレスト社とミラージュ社とかいう旧式ACだった。
そいつで数ヶ月朝から晩まで操縦訓練を行い、やっとレイヴンとして戦場に出る許可が下り頃、
独立傭兵部隊はレイレナード社と契約中だった。
表ではまだ企業同士は争ってはいなかったが、裏では小競り合いを繰り返し、
GA製のSOLARWINDやローゼンタール製TYPE‐DULAKEなどを含める小規模部隊を何度と無く送り込んできていた。
それを表立ってはまだ争うつもりの無いレイレナード社の代わりに撃破するのが部隊の役割だった。
国家解体戦争も生き残り、雇い先を手に入れられる独立傭兵部隊にとっては軽い依頼であり、俺も何度か目の出撃ですでに心にも余裕が出来ていた。
だが、リンクス戦争で全てが終わった。
対ノーマルAC部隊として雇われていた部隊は専属部隊として契約を切り替えられ親父たち主力部隊は本社護衛を。
俺の様に新米や主力外は他のMT部隊と共に周辺警護を行っていたが、
本社を強襲してきたネクストに手も足も出ず護衛部隊は壊滅し本社ビルは倒壊した。
俺はとっさにかばった左腕シールドとクレスト社製のコアが良かったのかどうかは分からないが、
実シールドを貫き直撃した銃弾はコア装甲版で止まっていた。
襲撃してきたネクストはおそらくノーマルACやMTで構成されていた寄せ集めの混合護衛部隊の相手をするつもりがなかったのだろう。
生き残った者は散り散りになり、その時親父達が言っていた訳がようやく分かった。

「ネクストは死神だ。ノーマルで勝てる訳がない」

「ネクストを見かけたら撤退か降伏しかないわ」

「ワシらが束になっても勝てやしないわい」

国家解体戦争で爺さんも両親もネクストを見かけながら生き残った理由は戦わなかったこと。
レイヴンを基礎とした独立傭兵は基本的契約に縛られても自由は縛られない。やばくなれば撤退か降伏をする。
だが、専属となれば話は別だ。給料と補給の確実性、そして最新AC譲渡の代わりに自由を失うことになる。
それでも親父たちは戦いたかったのかもしれない、悪魔・死神と呼ばれる最強のACと。

そして俺はぼろぼろのACと共にレイレナード社から離れた。
メンテナンスもろくに行えず、中破したAC一機で移動できる距離などたかが知れているがコジマ粒子の危険性はある程度聞いている。
ネクストとの戦闘が行われた地域からは出来る限りはなれた方が良いに違いは無い。
右肩の武装をパージし軽くなった機体と共にエネルギーが残り20%を切るまで歩き続け、
エネルギーが20%をきりかけたときすでにレイレナード社は影も形も見えず、周囲には廃墟となった元ビルが立ち並んでいた。
生体レーダー・ECMキャンセラー・ステルスセンサーにも反応はないことから完全な廃墟なのだろう。
比較的崩れ方がマシなアーケードの中に機体を入れるとひざをつかせ機能を停止させる。
何かあった時のためにほんの僅かでも動ける程度のエネルギーが必要だからだ。
コックピットの隅に押し込めてあったサバイバルバッグを取り出すと機体から飛び降りた。
数日分の水と食料はあるが、いずれ無くなり餓死するだろう。
それまでにどこかの企業軍の捕虜になるか、生き残りと合流するか以外生き残る道はない。

翌日、レイレナード社から脱出してきた別の傭兵部隊と遭遇した。
同じレイヴンとして何度か話したことのある部隊長だったことが幸いし、空きの出ていたランドキャリアに便乗させてもらうことになった。
それからは傭兵部隊と共に各コロニーや伝のある企業を回り、どうにかメリエス系企業の末端工場の警護として雇われることになった。
今までの扱いとはうって変わり、格安の給料とボロボロの整備施設を与えられ工場の外郭で野営。だがこのご時勢では文句は言えない。
ネクストが現れ仕事にあぶれたレイヴンは沢山いる。
テロ屋になった奴、自殺した奴、レイヴンを辞めた奴も居る。
まともな企業に正式に雇われ、真っ当な食事と整備が行え、まだレイヴンとしていられるのは幸運なほうだった。
それからは格安で流してもらったパーツでACを直し、
部隊の後衛でスナイパーライフルとミサイルによって前衛部隊の援護射撃を行う地味だが安全な仕事を請負ながら無意味に時間を浪費した。
襲ってくるのはレイヴンからテロ屋に成り果てた者から他企業の尖兵となったACやMT部隊。
戦場を支配した鴉はいまやただの価値の低い使い捨ての駒に過ぎない。
そして自分もそんな価値しかないのが悔しかったが、他のモノになる方法など見当も付かなかった。

それから6年後、時代は少数の天才によるネクストと大多数の一般人によって扱われるAF(アームズ・フォート)による戦争へと変わりつつあったが、
AFを主に生産していたGAとは違い他企業は少々生産が遅れていた。
他企業は統合や条約によって結束を固め、メリエスはレオーネ・メカニカと統合しインテリオル・ユニオンとなった。
統合された雇い先は鹵獲したGA製AFランドクラブのノーマルAC部隊に組み込まれるか解雇されるかを選べと言ってきた。
もはやノーマルAC乗り単独には存在意義などないという宣告だ。独立傭兵部隊の奴らには家族が居る者もいる。
部隊は組み込まれることを了承したが俺は解雇を望んだ。

リンクス戦争の英雄『アナトリアの傭兵』、細かい情報は知らないが伝説的レイヴンでありながらネクストにも搭乗し、
リンクス戦争ではレイヴンと近い活動を行っていたらしい。レイヴンは企業に属さず、国に属さず、ただ自らの自由意思にのみ従う。
そんなレイヴンは爺さんたちの世代でほとんど消えうせ、爺さんの影響を受けた親父達くらいと思っていた。
だが、伝説のレイヴンはネクストACに乗り換えてもレイヴンとしてあり続けていた。
アナトリアの傭兵が戦っていた理由など知らない。知る必要もない。
レイヴンが依頼を遂行する理由など他人が解るわけがない。
ただレイヴンであると言う事だけで十分だった。
今となってはくだらない上に無価値のレイヴンとしてのプライドだけが、旧式ACと僅かな金と共に古びた改造ランドキャリアで工場を離れる理由を作った。

その頃インテリオル専属だった霞スミカはリンクス戦争によって荒廃した世界を見て回っていた。
十代中頃からリンクスとしてレオーネ・メカニカに所属し、国家解体戦争・リンクス戦争と参戦し、
高いAMS適正と冷静な判断力から新機体や武装の開発を主に携わっていた。
実質レオーネ・メカニカからインテリオル・ユニオンの最高戦力であり、もっとも重要な作戦以外には出撃していない。
最近後輩だったウィン・D・ファンションが頭角を現してきたのと体調不良を理由にネクストを降り、
カラードを利用して地上をインテリオルの護衛部隊と共に回っていた。
護衛部隊が付く名目は新たなリンクスを探しの補助と護衛だが、リンクス適性を持った者が他企業にいかない為の監視だ。
いくつかクレイドル体制に移行中のコロニー・食糧生産地区・資源採掘基地などを回ったがGAなら拾うだろう程度のAMS適正を持つものしかいなかった。

遠くから聞こえる爆発音に気付きサバイバルバックから薄汚れたスコープを掴むランドキャリアの屋根によじ登り音がする方向に目を凝らした。
遠くでACの戦闘と思われる爆発音と光が発せられている。

「敵か?」

古びたスコープ越しに見える戦場は懐かしい風景だった。
ネクストのいないACとMT部隊の戦闘、『力だけが全て』の世界だ。

(劣勢なのはインテリオルか。救援に行って運よく生き残れば謝礼はもらえる・・・な)

ランドキャリアの屋根から降りると格納庫の機体の下に立った。
旧式ACに乗るたった一人のレイヴンを雇うような物好きな企業やコロニーはなく、
蓄えた金でほそぼそとランドキャリアで地上をうろついていたが、もはや貯蓄も残り少なくなっていた。
ここらで金を稼がなければ強盗でもしなければならない。
まぁ、強盗するくらいなら頭を銃で撃ち抜くが。
クレスト社製コアと脚部、ミラージュ製腕部と頭部の中量級2脚AC、これが昔の時代ならそれなりに見栄えがしたのだろうが既に旧式、
武装も古びた対AC実弾ライフル・レーザーブレード・肩にグレネードランチャーとレーダーにエクステンションのステルス。

「これが最後か始まりか。行くぞ相棒」

コックピットに乗ると機体を起動させ操縦桿を握りフットペダルを踏んだ。

予想外の戦力、ただそれだけのためにインテリオルの護衛部隊は襲撃部隊相手に押されていた。
アルドラ製のGOPPERT‐G3が複数機護衛に当たっていたが、襲撃してきた部隊はACとMTの混合ながら中規模の部隊だ。
おそらくテログループか何かだろうが、この規模から考えてどこかの企業が支援しているのだろう。
そんなことをスミカが考えているとグレネードが突如横から敵部隊に襲い掛かり、敵の攻撃に乱れが生じ明らかに混乱していることが簡単に見て取れる。
識別反応も何もなく、攻撃方向に目をやるとノーマルACが敵部隊にグレネードとライフルで攻撃をしかけていた。
インテリオルの護衛部隊にとっても敵部隊にとっても同じことだが、突如として現れたノーマルACがインテリオルに協力するなど考えられやしない。
近くのインテリオル部隊とカラードの救援部隊到着までにはまだ時間がある。その上救援だったとしてもノーマルAC一機なわけが無い。
ノーマルACの動きは良い方であり、グレネードとライフルのフェイントを交互織り交ぜ敵の包囲網の一部を打ち破ってみせる。
おそらく十分な訓練と指導を受けているのだろう。
しかし、物量が違う。道具を使った戦争とは第一に物量 第二に性能 第三に使い手による。
例えパイロットが優秀な分類でも、第一が圧倒的に劣る以上勝てる訳がない。一時的に混乱したものの、
すぐに冷静さを取り戻した敵部隊はノーマルACにAC1機とMT2機をあてがい、残りはこちらの攻撃に切り替えている。

「この現状では打つ手が無いな」

それが元リンクスとしてある程度の戦術眼を持っている霞スミカの答えだ。
現に目の前には防御陣形を突破し自分の乗る護送車に接近してくる敵機影が見えた。

囲みを突破し護送車へと向かっていくMTとACが1機視界に入った。AC部隊に護衛される護送車、重要人物が乗っているのは明白。
ここで撃破されてしまえば救援が台無しになってしまう。

「くっ!」

弾切れのグレネードランチャーをパージするとレーザーブレードを発生させOBで突撃。
旧式AC時代には詰まれていた緊急離脱用ブースター、
最近の普及型ノーマルACに詰まれていないため対処が遅れたMTを一機斬り倒し、
そのままの勢いでこちらに気付きシールドを向けていたTYPE‐DULAKEに機体をぶち当て、コアをレーザーブレードでコアを貫いた。
だが、OBもここまで。護衛部隊はほとんどが散り散りの状態にされ、護送車の近くには俺がいるだけだった。

(俺には幸運の女神は微笑まないのかよ)

左肩には初めてレイヴンに乗った先祖からずっと使われているエンブレムが描かれている。
古めかしい服を着てミサイルに乗った女性と「May I Help You?」の言葉。かなり文面は間違っているが『あなたを助けてもよいですか?』だ。
最初の乗り手が英語の苦手な東洋系だったらしいが、訂正せずに幸運の女神という事で使い続けている。
だが、女神の幸運も終わりらしい。肩のグレネードランチャーはパージ済み、残るは対ACライフルの2マガジンとレーザーブレードのみ。
敵は軽く見てもAC7機に10機近いMT、こちらは自分を含めて残存数3機程度。ジリ貧どころか簡単にひねり潰せる戦力差だ。


now:22
today:2
yesterday:3
total:1773


移植元コメント

コメント



小説へ戻る