小説/長編

Written by えむ


 インテリオルに所属しているリンクス。エイ・プール。彼女は色々な意味で有名なリンクスである。
 代表的なものをあげれば彼女の駆るネクスト、ヴェーロノークからしてそうだ。
 ヴェーロノークの主兵装ASミサイル。自動追尾型のミサイルであるそれは、FCSを介さなくとも相手を自動で補足し飛んでいく代物だ。ミサイルなどにも反応してしまうと言う欠点はあるが、それを差し引いても強力な武器だ。とりあえず撃っとけば相手に飛んでいくのだから。
 そして火力は凄まじいの一言に限る。武器腕を使用していることもあって下手に近づこうならば、絨毯爆撃かと思われる弾幕に襲われることになる。
 しかしながら、自動追尾型と言う特殊なミサイルであるために一発一発の弾薬費が凄まじいという問題がある。そして、彼女はそれを湯水のごとくばら撒くのだ。
 ミッションにもよるが、大抵の場合、彼女の弾薬費は凄まじい結果に終わる。企業専属のリンクスであることから、ある程度の援助はあるとは言え…限度もある。
 だから生活費的な意味で、彼女の生活水準は、予想外の収入があった時以外は大抵ギリギリだったりする。
 そういう意味でも、エイ・プールは有名人であった。主に貧乏と言う方向に置いて。そして、それはインテリオルでは当然周知の事実であり、カラード内でも有名な話だったりする。
 しかし、そんな環境においても。彼女は荒んだりすることもなく、人当たりの良い温厚な性格である。さらに色々大変らしいと言われながら、それを億尾にも出さない。
 そもそも―――人間と言うのはたくましい物である。極限状態にあっても、その中で生き抜くための術を掴み、生き抜くものだ。

 そして、エイ・プールもまた然り。生活に困るレベルでお金がないと言う状況ながらも、彼女はたくましく生きているのである。
 今回は、そんな彼女の生存術と言うか、サバイバル術と言うか…。生きるための工夫。そういうものをダイジェストで見ていきたいと思う。

 まず、食生活。
 食事するにも困ることが多いと言う割りに、エイ・プール本人は至って健康的である。理由は簡単だ。食べてないようで、実は意外としっかり食べているのである。
 有名な話が、家庭菜園を作っている話。インテリオルの敷地内の一角を借り、そこで野菜を各種育てているのだが、実は何気に――その野菜が美味しいことで有名で、食堂スタッフが稀に買い取ることもあるほど。密かに希少品として重宝されているのはここだけの話である。
 味も良く、栄養価も高いその野菜。その秘密は、エイ・プール本人が古い本を読んでいて見つけたと言う独特の方法にあった。
 有機農業。農薬や合成肥料をを一切使わない、遠い過去に行われていた特殊な育て方。肥料も食堂の残り物などを再利用して使っているため、余計な出費は一切ない。
 ミッションや何もない時に、よくその家庭菜園で作業しているエイ・プールの姿が見られるのはインテリオルでも有名な話だ。
 もちろん野菜だけでは、栄養面で多少の不安もある。肉や魚も、時には必要だからだ。これに関しても彼女は対策を持っている。食堂を手伝うのだ。そして、そのお礼として肉や魚を分けてもらおう…と言うわけである。しかし食堂の手伝いをするには、もう一つ隠された理由がある。
 レシピである。
 普通に頼めばそれなりの値段がする料理も、自分で作ってしまえば必要なのは材料費だけとなる。覚えたレシピでご馳走を作っても、それは同じ事。人件費が削減されるだけで、料理の値段と言うのはかなり違うのだ。
 そんなわけでエイ・プールは、基本的に自分の部屋で料理を作って食べることで、食費をかなり抑えているのである。ただ何気に食堂を手伝う頻度も高いため、レパートリーは多い。さらに料理の腕も、今では食堂のチーフに劣らないほどだ。

 次に着る物。基本的にインテリオルで支給されている制服姿でいることが多いと言うのが、もうすべてを物語っている。
 だが、こんなエピソードもある。
 ある時、インテリオルにてパーティが開かれた。所属リンクスはもちろん、企業の重役等も参加するそのパーティは、それなりの服装が求められるものであった。そのパーティの席にて、エイ・プールはちゃんとしたパーティドレス姿で現れ、一部の人間を驚かせたのである。見た目に、それなりの値段のしそうなドレスに、同僚でもあったスティレットが「それはどうやって調達したんだ?」と尋ねたところ。

「あ、はい。自分で作ったんです。間に合って本当に良かったですよ」

 と穏やかな笑顔で答えたと言う。さらに話を聞くとと、暇な時間を見つけてチョコチョコと縫っていたとのこと。全て手縫いで。ちなみに、その出来は売り物しても十分なレベルだったばかりか、下手なドレスより高そうに見えたのだとか。

 冷暖房関連に関しても、徹底している。
 よくある万が一に備え、少しでも生活費を節約したいエイ・プールは、冷暖房を一切使用しない。そのため夏の暑い時や、寒い時はよく休憩室や公共のスペースにてその姿が確認されている。
 どうしても部屋で過ごさなければいけない時は、ネクストに乗る時に着るパイロットスーツを持ち出している。ネクストに乗る際に使用されるそれは、実に高性能なスーツであり、貴重なリンクスの生存率を高めるために多くの工夫がほどこされている。防弾性能や対衝撃能力もさることながら、砂漠や極寒地でネクストが損傷し投げ出された場合のことも考え、保温効果などにも非常に優れているのだ。
 エイ・プール本人に言わせれば、これ一つあれば、余裕で凌げますよ♪とのことであった。しかも汚れもつきにくいので、至れり尽くせりなんだとか。

 以上が、大まかではあるがエイ・プールの日常に置いての生き抜く工夫である。
 もちろんミッションにて出費を抑えることに成功し、報酬をいくらかもらえた時には、生活水準もそれなりに上昇する。だが、それでも他の人間に比べたら、日ごろから節約しているのは言うまでもない。いつ弾薬費が凄まじいことになるわからない以上、常日頃から備えているのだ。
 
 ただ、ここ最近は弾薬費関連に置いて。インテリオルはいくらか寛大になったらしく、彼女の生活水準は全体的に向上していたりする。
 なんでもあるミッションにて、一人の独立傭兵がたたき出した弾薬費を見て。エイ・プールの弾薬費は全然マシな方だ…と戦慄を覚えたのがきっかけなんだとか。 
 だが、生活水準が上がっても。やっぱり家庭菜園の世話や、日ごろからの節約は欠かさないエイ・プールであった。
 そんながんばり屋である彼女のファンは、意外と多い。
 

The End……


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移設元コメント


☆作者の一言コーナー☆
 息抜きの番外編。うちのエイ・プールさんはこんな感じですよ、と言う話。
 …なんかリンクスじゃなくても、やっていけそうな気がしてきたのはここだけの話(=▽=;)

 今回のコメントはこれだけです。
 と言うわけで、お付き合いいただきありがとうございましたm(__)m


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