Written by 独鴉


オリジナルミッション・・・過去の幻影・・・


インテリオル系カラード施設・・・

 自立不可能なほどの損傷を負ったストレイドは寝かされた状態のままカラードの整備工場に運び込まれ、
対コジマ粒子防護服を着用したレインたち数十人の整備士の手によってコジマ粒子除去措置とコックピット解放を急がれていた。

「AMSのリンク状態を急いで確認するんだよ! 可能なら手動で解除しな!」

 特殊薬剤洗浄等によって装甲に付着したコジマ粒子を固着させ、空中に舞い上がることを防ぎつつ除去する処置が進められている。

「いまヘッドパーツの外部操作ハッチを開こうとしているんですが開放装置が壊れていて!」

 AMSを外部から強制解除するには頭部パーツ装甲ハッチを開いて制御装置に直接ケーブルを繋ぐしかないのだが、
頭部パーツもひどい損傷を負っており通常整備に使われる開放装置も破損しその上非常時に緊急開放するための装置も壊れ、
AMSシステムを緊急停止させる装置を手動で操作することも不可能だった。
 整備士達は数人掛りでハッチに手をかけて開こうとしているが、ミサイルの爆発によって歪んだ装甲ハッチはひらく気配は無い。
状況がわかるとレインは整備場端に置いてあった大型の工業用破砕機を担ぐとヘッドパーツまでよじ登る。

「一秒でも早くAMSを停止させるんだよ! 手段を選んでるんじゃない!」

 整備士達を下がらせると装甲ハッチの間に破砕機を突き刺し、機械の押さえを肩に当て機械を起動させると鈍い音を立ててハッチが開かれていく。

「コードをよこしな!」

 人一人が入れるほどの穴をこじ開けるとレインは破砕機を足元に置き穴の中に体をねじ込む。元々整備用とは言え
狭い空間内は破損によって歪んでおり、ケーブルを繋ぐコネクターまで手を伸ばしても防護服を着たままでは届かなかった。
何を思ったのかコジマ粒子の除去が完全ではないにも拘らずレインは防護服の腕の部分を破るとコネクターまで手を伸ばした。

「接続した! AMS解除急ぎな!」

 AMS担当班はコードが接続されたのを確認すると急いで機能停止に取り掛かった。

「2分でAMSを安全停止させます!」

 レインはゆっくりと整備口から這い出すと防護服の腕が破れている事に整備士達は驚き、慌ててレインを服に付着した
コジマ粒子を落す除去室に連れて行った。数分から除去室でコジマ粒子を落した後、新しい防護服に着替えレインは再び
整備場に戻り整備士達に指示を出し始める。

「AMS停止したらコックピットをこじ開けるよ! 全員すぐにでも掛かれるように準備急ぎな!」

 生きている可能性はほとんどない。そんなことはセレンにもレインにも解っていた。撃破された旧型ネクストACから
生還した者は極僅か、例え生還したとしても過度のAMS負荷によって廃人となるか二度とネクストに乗れることはない。
最新型ネクストともなれば安全装置などによって一定以上のAMS負荷を防ぐ事ができるが、旧型であるためその様な機能は
搭載されておらず出撃までの時間的余裕も含め追加してもいなかった。

「AMS停止しました!」

 AMSの停止作業に時間は掛からないように思えるだろうが、搭乗者の状態を加味しつつ安全にAMSを停止させると
なると時間はどうしても多く必要としてしまう。統合制御体との接続を解除し、違和感を与えないように意識をネクストから
元の体に戻す。手順は二つだけだがAMSという特殊システム故に慎重な作業を有してしまう。

「コックピット開くよ! 医療班は急ぎな!」

 解除を確認するとレインの合図で待機していた整備用アームがコックピットハッチを閉じていたロックを壊し、
歪んだフレームを掴みゆっくりとハッチがこじ開けられていく。レインは開放作業中の為まだ危険だというのにコクピットまで
よじ登ると中を覗き込む。

「・・・」

 コックピット内は飛び散った血によって朱に染められ、砕けた機器によって中央のシートに固定された形でリンクスが座っていた。
ひどい損傷を負いながらも高速戦闘を行ったため、フレームの歪みからコックピット周囲の機材が砕け、倒れた衝撃で
コックピット内に貫通してしまったのだろう。レインは手持ちの破断機でリンクスの体に突き刺さったフレームや機材を切断し、
医療班と共に機体から折り降ろした直後はリンクスを二目と見られたものではなかった。内臓こそ飛び出してはなったが
左胸には機材が深く突き刺さり、無事な箇所などどこにもなくパイロットヘルムさえも砕け顔は朱に染まっていた。
医療班によって生存が確認されると簡易治療機器によって最低限の止血と輸血が行われ、ベッドに乗せたあとリンクスは
治療室へと運ばれていった。しかし処置を開始してすぐにほとんどの臓器が精巧に作られた人工強化物であることがわかり、
止血及び自己治癒能力を高めるナノマシンの投与以外できることはなかった。

インテリオル系カラード集中治療室・・・・・・
 ソルディオスキャノンの直撃を受けたストレイドの装甲は完全に侵食崩壊を起し、駆動系まで侵食していたコジマ粒子は
ストレイドを自立させる事さえ不可能なほどダメージを与え、コックピット近くまでコジマ粒子の侵食を受けていた。
レイレナード純正故にコジマ粒子に対する耐性は高いことが幸いし、コックピット内のコジマ粒子の浸透率は非常に低く、
AMSを介した負荷と衝撃による体へのダメージだけで済んでいた。

「……まさか治療不可能とはな」

 集中治療室の中ではリンクスが体を維持する為の薬物や治療用ナノマシン注入ケーブルに繋がれていた。その様子を
ガラス越しに見ていたセレンとレインの表情は曇っており、リンクスの状態が良くない事は誰の目にも明らかだった。

「移植が出来ない以上自然治癒に任せるしかない。臓器がやられているから何時になるか」

 高価な治療用ナノマシンを投与し続けても臓器そのものを治すのは時間がかかり、人工的に強化された物となれば
治療そのものが終わらない可能性もある。

(奴を治療するには方法は一つ、レイヤードとかいう場所に行くしかないか)


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コメント返し

>- 主人公初めて?の怒りとその理由 ボロボロになっていく主人公 続きが読みたいです -- 2012-01-01 (日) 17:42:31
続きは出来る限りはやく仕上げていきます。
>- 初代知らんけど⑨の台詞があるような・・・ -- 2012-01-02 (月) 02:49:56


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