Written by ケルクク


ふふ。この話は女性陣が過激な性行為や拷問などを行っているわ。18歳以下は素敵な風穴を開けられたくなければ戻りなさい




空に浮かぶは上弦の月。
霧に隠され朧に浮かぶ月は昔見上げた時のままじゃ。
たとえ十年の歳月が流れようと、街が汚染され人が消え雪に埋もれようと、空をクレイドルが飛ぶようになろうと、見上げるわしがいくら変わろうと月は変わらず空におる。
ならば今だけは昔と同じように空を見上げ昔と同じ酒を飲もう。
「旨いのう」
ウオッカを呷り呟く。いつもの酒だが普段の何倍も旨い。いや、
「酒の味は昔と同じじゃ。酒も月も変わらん。変わったのはわしかあるいは故郷じゃな」
グラスを上げ変わらぬ月と酒を見た後、視線を落とし年をとった自分と人が消え雪に埋もれた街を見る。「ふん」首を振り変わらぬ月を見上げもう一度ウオッカを呷る。
熱い塊が胃に落ち全身に広がる。おかげで氷点下10度の中上半身裸でいるにも関わらず寒くない。
さらにもう一度呷る。
「本当に旨いのう」
ビルの上で独り思い出と月を肴に酒を飲む。
何という無意味で至福な時間だろう。
そのせいか先程までの宴で飲んでいるにもかかわらず普段の何倍ものペースで酒が進む。
そうして、一本目のウオッカを空け、二本目も三分の一ほど飲んだ時、後ろから声をかけられる。
「相変わらず強いのね?下でも散々飲んだでしょうに?」
「シャミアか。帰れ。今お前と話す気分じゃないんじゃ」
振り向かずに返す。今は酒と月と思い出だけを傍らに置きたかったしそうでなくとも喋りたい相手ではなかった。
「ご挨拶ね。折角共闘するリンクス同士挨拶でもと来たのに」
シャミアが笑いながらこちらに歩いてくる。
「何が挨拶じゃ。それなら朝にすんだじゃろ。そもそもこれでお前と組むのは八度目じゃ。今さら挨拶もクソもなかろう。もう一度だけ言うぞシャミア。去れ」
怒気と共に言葉を叩き付ける。
だがそれでもシャミアの歩みは止まらん。
「これが最後じゃ、シャミア。消えろ。さもないと「どうするの?殺すの?」そうじゃ」
嘲る様な問い掛けに腹が立ち殺意を出す。
だが、それでもシャミアの足は止まらない。
「ゆうたはずじゃぞ?」
立ち上がると同時に振り返りシャミアの首を掴み持ち上げる。頸動脈を極めて落とすのではなく気管を圧迫し呼吸を困難にする。
リンクスとはいえ肉弾戦の訓練を受け取らんシャミアはロクな抵抗もいや、全く抵抗もせずに受けいれる。
手は首にかけたわしの腕を外そうとするでもなく腰に下げた銃をとるでもなく体の横に垂らし口元には喜悦の笑みを浮かべている。
殺されんとタカくくっとるのか?ならその甘さを悔いや。腕の位置を変える。シャミアの体重が首に集中する。
シャミアの頸骨が悲鳴を上げる。さらに目が裏返り唇は紫に染まり舌と泡を吐き出し、下腹からでた液体が足を通り雪を溶かす。
だがそれでも喜悦の笑みは口に張り付いたまま。
「ふん」シャミアの首が折れ涅槃に旅立つ寸前シャミアの首を離す。
その場に崩れ落ち自らの尿の上で咳き込むシャミア。そのまま嘔吐し夕食を撒き散らす。
踵を返す。ケチがついたの。仕方ない。他の場所で飲みなおそうとしたところでシャミアにズボンの端を掴まれる。
「なんじゃ?まだ絞められたりんのか?」
仕方なく振り返ると、左手でわしのズボンの裾を掴み右手で銃を構えこちらに向けるシャミアの姿があった。
機体と同じ色をした髪の毛は乱れ、目は真っ赤に充血し、涙と鼻水と涎を垂れ流し、口から溢れ出た吐瀉物は形の良い胸をつたい臍の辺りまで汚し、ローライズのジーンズは股から足首まで汚れている。
だが、涎と吐瀉物と荒い息を吐き出す口元には変わらない笑みが張り付いている。
呼吸をする度に揺れる銃口を一瞥しシャミアに告げる。
「なんで裸なんじゃ?」
「あなただってトップレスじゃない?」
「わしは男じゃ。お前は女じゃろ?」
「あら、今時男女差別?女は戦場にでるなといい相変わらず古いわね」
「ほっとけ。わしの流儀じゃ。変えるつもりはない」
「ならこれも私の流儀よ。放っておいてちょうだい」
相変わらず口が立つの。じゃけん女は好かん。
「それでどうするんじゃ?撃ちたいなら好きにせい」
「あら?勘違いしないでよね?引き金を引くのはあなたよ?あなたは私を殺すといって私はまだ生きているもの?男ならちゃんと逝かせてよ」
銃口をわしから離し月に向け引き金を引く。乾いた音と共に銃弾が月に向かい飛び出す。
そのまま熱い銃口を口に咥え愛しい男のモノのように舌で愛撫を始め同時に左手でわしの手を銃へと導く。
「ほうじゃな」
返事をし引き金に指を掛ける。
「ええ、素敵な風穴をあけてね」
微笑み右手を胸に左手をジーンズの中に潜り込ませるシャミア。
指に力を込める。
シャミアの瞳は濡れ、舌は情熱的に動き官能的な音を立てる。
乱暴に弄られる乳首は固く屹立し両手は激しく動く。昂ったシャミアが達する瞬間引き金を引く。
銃声と共に崩れ落ちるシャミア。
「まだ、生きてるわ」
左頬にできた傷から出る血を舐め荒い息を吐きと共にシャミアが嗤う。
「わしの負けじゃ、好きにせい」
死にたがり屋の狂人が。最後の言葉は口に出さずシャミアから少し離れたところに腰かけウオッカを呷る。
ええ月じゃ。月は先ほどと変わらずその姿を朧に見せていた。
「じゃぁ、好きにさせて貰うわ」
シャミアが雪を入れた鍋をコンロにかけその中に肉とラム酒を放りこむ。
その後わしの後ろに回り
「相変わらず素敵な蜘蛛」
熱い吐息と共に背中に抱きつき唇を這わす。
ウオッカと殺意で火照った体にシャミアの冷えた体が少し心地よい。
もう一度ウオッカを呷り月を見る。
背中を熱く濡れた舌が這いまわる感触に目を細める。
「あなたは気に食わないけど背中の蜘蛛は素敵だわ。確か王にも蛇がいたけどあなたのほうが素敵。確か入墨だっけ?」
甘噛みしながら囁くシャミア。器用な奴じゃな。
「刺青じゃ。それと王のは蛇じゃなくて龍じゃ。わしのが女郎蜘蛛であって蜘蛛ではないようにの」
「蜘蛛は蜘蛛でしょ?でも竜?竜はトカゲの親玉じゃないの?」
背中に無数に彫られた子蜘蛛一匹一匹に丁寧に愛撫が行われる。
「西洋でわな。東洋では違うんじゃ。そして刺青は東洋の業じゃ」
中央の巨大な女郎蜘蛛に入念な愛撫を加えた後シャミアが一度離れラム酒と肉を引き抜き戻ってくる。
「そう。まぁどうでもいいわ。ふふふ。赤く染まった蜘蛛素敵。ねぇ、私も背中に蜘蛛を飼いたいの。紹介してくれない?」
背中を熱い液体が流れる感覚と同時にそれを啜る音が聞こえてくる。
「残念じゃがこれを彫る技術を持った者は犯罪者かそれに近しい者だけでの。おかげでクレイドルには誰も上がれず絶えてしまった業じゃ。
 わしにこれを彫った男もすでにこの世におらん」
この街で死んだからの。最後の一言は胸にしまう。
「残念ね。ならいいわ。かわりに目の前の蜘蛛を愛すから」
ラム酒が背中一面にぶちまけられ同時にシャミアの身体が押し付けられる。
熱い身体、熱い息、熱い液体、熱い舌。
押し付けられた乳房と呼気はシャミアが興奮していることを伝えてくる。
「月見でなければその気になったんだがの」
苦笑し、酒を呷り月を見上げる。朧に浮かぶ月の下、新雪を汚してことに及ぶのはどう考えても無粋が過ぎた。
背中にシャミアとは違う熱い肉の感触。そして響く咀嚼音。
「よくつまみもなしに飲めるわね?」
囁きの後耳をしゃぶられ舌で徹底的に耳の穴を蹂躙される。
「肴ならあるぞ?空を見てみぃ」
「空?何?雪でも食べるの?」
首を振る。
「おしいが違うの。わしは風花雪月より花鳥風月のが好きなんじゃ。花の薫りに、鳥の鳴き声。風を感じ、月を見る。肴はそれで充分じゃろ?雪の儚さもそれはそれでいいがの」
もっとも地上ではコジマ汚染のせいで花鳥を楽しむのは不可能になってしまったがの。
「あら悔しい。美人はないのね」
耳を噛まれ引っ張られる。
「花と風ならそれもいいんだがのう。だが、ことに及べは鳥は驚き鳴くのをやめ、女に抱かれれば月は見れん。雪の白さを汚すことにもなるしの。それに今は思い出という肴もあるしの」
背中から溜息と布ずれの音が聞こえてくる。
「詰らない男ね。いいわ、勝手に盛り上がるから。でも故郷?」
熱い息と拗ねた声。そして背中を本気で噛まれた痛みに眉をひそめる。しかし余計なことを言ったかの。まぁええか。減るもんじゃないしの。
「ここは、わしの故郷なんじゃ。コジマ汚染と雪で見る影も無くなってしまったがの」
「………そう。ふん、だからあなたもあなたの部隊の奴等も変にはしゃいでいたのね。ふん、押し倒してやろと思ったけど気が変ったわ。いいわ、私一人で盛り上がらせてもらうわ。
 そのかわり、あなたの昔の話をしてちょうだい」
「なんでわしがそんなことを話さんといかんのじゃ」
首を振りウオッカを呷ったところで強引に振り向かされ唇を奪われ、ウオッカを吸い出される。だが、直ぐに唾液と共に送り返される。
「強い酒。私がそれを肴にスルからよ?それとも押し倒されたいの?」
送り返されたシャミアとラム酒の味がするウオッカに溜息をつき、口直しにもう一度呷る。
「仕方ないのう。詰らなくても文句をいうでないぞ?」
「ええ、お願いね」
後ろで本格的に始めたシャミアに溜息をつき空を見上げ口を開く。
「わしが生まれたのはこの街じゃ。それから十五の年までは、まぁ普通に暮らしとった。
 十五の年に理由は覚えとらんが家を出て愚連隊に入ったんじゃ。
 そこからは喧嘩、喧嘩、喧嘩じゃよ。生きとるのが不思議なくらい無茶をした。
 何度も死にかけたが奇跡的に生き延びたワシは二十歳になる頃にはここいら一帯を統べとった。
 墨を入れたのもこの時期じゃの。女郎蜘蛛にしたのはうちの代紋が蜘蛛じゃったからじゃ」
「あぁぁぁ、そう。ぅう、な…ら、それ………に感謝、あっ!…しないと……ね。ねぇ、いぃ………昔か…ら古かった…の?んっ!」
「硬派といわんか。まぁ、そうじゃな。女子供はいれんし、薬も認めとらんかったし、素人衆を食い物にするのも禁じとったから古いといわれても否定はせんがの。
 今も昔も家族ができたら引退じゃしな。おかげで今では若い衆も半分になってしもうた」
「ああ!……あな…たが引退し…いい!もうすぐ!……てないって…ことは。クル!あぁあ!…もしか……してあな……たまだ女とした事ないつぅうぅぅ!…の?それ…ダメ!?ともアッチの趣…味?
 もうダメ!?イク!クル!きちゃうの!?」
獣のような声を上げ痙攣するシャミア。同時に腰に熱い液体が降りかかる。そしてわしの汗まみれの身体を背中にもたれかけ荒い息を吐く。
溜息を吐き月を見る。聞いてはおらんじゃろうが言葉を紡ぐ。
「阿呆。一通りの女遊びもしたし恋愛の真似事もしたわ。ただ、組より大事な女が見つからんかっただけじゃ。
 わし等は不器用じゃからな。女と組両方守る様な器用なことはできん。じゃけん、組以外に大事なものが出来た奴は引退じゃ。
 それに、いざって時にはわしや組のために死んでもらわねばならんからの
 ………起きとるかシャミア?寝たら死ぬぞ」
「………起きてるわ。それで?」
気だるいシャミアの声。まだ起き上がるには時間がかかりそうじゃが汗をかいたままで裸ははまずいの。
溜息をつき腰に巻いていた上着をシャミアにかける。
「それでってこれで終わりじゃ。その後クレイドル計画が始まり、わし等はクレイドルに上がる権利を素人衆に譲って地上に残ったんじゃ。
 そして偶々受けた検査でリンクス適性がわしにあることが解っての。一家全員引き取るという条件でテクノクラートに入ったんじゃよ。
 後は話さんでええな」
シャミアが溜息と共に身を起こす。
「期待してなかったけど本当に詰らない話ね。まぁいいわ。暇つぶしにはなったクッシュ!クッシュ」
「ほれみぃ。飲んだ後あんなに汗をかくからじゃ。凍死しないうちにとっとと戻れ」
連続でくしゃみをするシャミアに声をかけウオッカを呷ろうとしたところで瓶を引っ手繰られ
「嫌よ」
シャミアが三分の一程残っていた中身を一気に呷る。
「阿呆!!それはそういう飲み方をする酒じゃ!」
慌てて取り返すも既に遅く、シャミアが蹲りむせ始める。
「阿呆が。ほれ、吐け吐け」
蹲るシャミアの髪を掴み強引に顔を上げさせ喉に指を突っ込み吐かせる。
シャミアがもどしている横で空き瓶に鍋からお湯を汲む。
「ほれ」
吐くものが無くなりえづいているシャミアの口に瓶を突っ込み強引に飲ませる。一部逆流し鼻から出ているがどうせもどすのだから気にせん。
お湯が無くなったので瓶を話すと途端に猛烈な勢いでもどし始めるシャミア。その間にまたお湯を汲む。
そんな事を酒を呷りながら幾度か繰り返し、三本目のウオッカが三分の一程無くなった頃ようやくシャミアが落ち着いたので声をかける。
「ほれ見たことか。今ので体力を使ったじゃろうしとっとと戻れ」
「嫌だっていってるでしょ!!」
鍋のお湯で顔を洗い、口を濯いだお湯と共に言葉を吐き出す。阿呆が。そんな事をすると顔面が凍りつくぞ。
にしても、今にも倒れそうなくらい息も絶え絶えなくせに意地だけはたっぷりあるの。このままじゃ凍死するまでここにいるじゃのうな。たっく、これだから女は。
仕方ないの。まさか女子供を見捨てるわけにはいかんしの。
「なら汗を拭け。そのままじゃと凍死じゃ。拭くものは」
辺りを見回す。なにもないのう。仕方ない。下に行ってタオルでも取ってくるか。
何度目かわからない溜息をつき立ち上がり下に向かおうと「わかったわ」
「わかったって、拭くものなんかないじゃ、………お前阿呆じゃろ」
「あら、月の下一面の銀世界に裸の美女っていうのも絵になるんじゃなくて?なんなら、ブーツも脱ぐ?」
シャミアは事もあろうに、唯一身に着けていたジーンズを脱ぎそれで体を拭いていた。
確かに尿やら汗やら潮やら吐瀉物で汚れとったがまったく。
「凍傷で足の指をのうしたくないならやめとけ。それより空き瓶をよこせ」
「ふふふ。鍋で煮て二人で食べるのも楽しそうだけど止めときましょうか。はい」
渡された空き瓶に三分の一程ウオッカを入れ残りをお湯で満たし数回振る。
「こんなもんじゃろ。わしが飲んだらお前も一口ずつ飲め」
お湯割りをシャミアに放り腰を下ろす。
「上着を来たらわしの腰でも足でもどこでもかまわんから座れ」
「あら、したくなっちゃった?仕方ないわねぇ。相手をしてあげる」
「阿呆!雪の上に直に座る気か!死にたいんかおのれ!」
「な~んだ、じゃぁ、失礼して」
「………おい、なんで向かい合っとるんじゃ?」
「興奮した?………してるわね。ふふふ固い。どうする?抜いとく?………冗談よ。怒った?仕方ないわね、殺しきゃ!」
御託を抜かすシャミアを180°回転させる。
「素肌に雪が触れんようにしろ。後黙れ。これ以上喋るならわしが消えるで?」
「はいはい、お尻に当たる固くて熱いモノには気が付かないであげる。でも、いい月ね。一生に一回ぐらいならこんなふうに月を見る夜があってもいいかもね」
「じゃな。しかし、一生に一回とたぁ風情がない女じゃのう」
「いいじゃない。でも、本当に星が綺麗。こんなに星を見たのは子供の時以来よ!」
はしゃぐシャミアが落ちないように右手で抱きかかえる。まったく、今夜は独り思い出と月と酒だけを傍らに静かに過ごしたかったんじゃがのう。
じゃが、腕の中子供のように目を輝かせるシャミアを見てこれもよいかと諦める。
「じゃな、いい月じゃ」

空に浮かぶ月はやはりわし等の事など気に掛けず変わらぬ姿で輝いていた。

****

結局奇妙な月見は月が地平に沈むまで続けられた。
「私たちが下に降りたのはなぜか月見が終わってから二時間後なんだけどね?」
「言うな。わしも男じゃ」




「親父!獲物が来やしたぜ!数は三機。しかもコジマ反応を確認。ヒュー!こいつはネクストだ!!大分派手にやりやしたからね。どうしやす?ふけますか?」
狩場で獲物を待ち受けていると若い衆から通信が入る。獲物というには大物すぎる相手じゃの。
「相手は解るか?ランク外か?それとも………」
「ちょいとお待ちを。………きやした!!全員ヒットです!!雷電!スマイリー!セレブリティ・アッシュ!!全員ランカーっす!」
こりゃまずいの。ヘタレはともかく雷電とスマイリーだけでこちらと互角じゃ。他に部隊がおらんちゅうことは完全にうちらを狙い撃ちやしな。
特にスマイリーはまずいの。あの娘が絡むとシャミアが完全に出来上がるからの。
それによく考えれば互角ならヘタレ、いやセレブリティ・アッシュも無視はできんな。あんなんでも一応ネクストじゃし。仕方ないの。
「そりゃまずいの。シャミア聞いたな?ここは引くぞ。無理をする必要はない。狩りは場所を移せばよい」
「駄目よ!羊がわざわざ狼の前に出てきてくれたのよ!全員美味しく頂くわ!!ふふふふ!待っていたわよ!さぁ!可愛がってあげる!!」
興奮したシャミアの声。くそ!案の定出来上がっとる。
「阿呆!ネクストの上ランカーが三機じゃぞ!?どう考えても羊じゃのうて狼じゃ!!」
「問題ないわ!!セレブリティ・アッシュはノーマル部隊だけで十分対処可能よ!!二対二なら機体の相性差と地形でこちらの勝ちよ!!
 なによりメイが来ているのよ!!ふふふ。今日こそあの笑顔を歪まして啼かせてあげる!!
 逃げたいならあなた一人で逃げなさい!!私一人で十分よ!!さあ!あんた達行くわよ!!」
偽装を解き獲物に向かうシャミア。あの阿呆が!!二人なら勝てると言った舌の根が乾かんうちに逃げていいじゃと!
くそ!だから女を戦場に出すのはすかんのじゃ!!
「行っちまいましたね。どうします兄貴?」
副隊長の弟分から連絡が入る。声の調子から暗に見捨てろと言っているが溜息を吐き首を振る。
「仕方ない。女子供を見捨てるわけにはいかんからの。お前等は引け。わしは征く!!」
「兄貴!俺たちに親を置いて逃げろっていうんですか!?そりゃ格好つけすぎですよ!俺達でも弾避けにはなりますよ!」
「阿呆!子供を弾避けにする親がどこにおる!いいからお前は若いもんを纏めて基地まで帰れ!!命令をきかんと破門じゃ!!」
「………わかりました。ただ、もし兄貴が死んであの女が生き残ったりしたらいくら女でも俺は殺しますよ」
「親を脅すな。たく、好きにせい。安心せい。故郷で死ぬなんて真似はワシには出来すぎじゃ。んじゃ、頼んだぞ!」
「ご武運を!!」

****

「あら?来たのね。来なくてもよかったのに」
「阿呆が。女子供を見捨ててわしだけケツ捲れるか!しかし、今回ばかりは許さんぞシャミア。終わったら覚えておれよ」
「ふふふ。拷問なり輪姦すなり殺すなりご自由に。そうね、あの子の隣で悲鳴を上げてあの子といっしょに犯されるのも悪くないわ!
 ああ!!あの子の泣き叫ぶ顔を想像すると興奮してきちゃう!!そうよ!あの子は私の獲物よ?手を出したら許さない!」
「好きにせい。わしは女は殺さん。雷電を殺る。」
「あははは!今度こそあの子の身体に素敵な風穴を一杯あけてあげるの!!口にお臍にアソコ!!それから、両腕に両足!あははっは!体中に穴をあけたら今度はそこを優しく愛してあげるの!!!
 あははっははは!!どんな声で啼くのかしら!どんな顔を見せてくれるのかしら!!楽しみだわ!」
今朝に匹敵する官能的で興奮した声。むぅ、わしの声など耳に全く届いとらんな。
しかし、不味いのう。いつにもまして感情的じゃ。これが最悪の事態を起さんといいが。

シャミアは奇抜な外見や言動に反してまず戦略的な勝利を得てから戦闘を始めるタイプじゃ。
自分に有利で相手に不利な状況を作り出しその上で戦闘を始める。ゆえに大抵の相手は戦闘が始まると逃げる事すらできずに一方的に嬲り殺される。
幾度かシャミアとは組んでおるが扱い辛いわしのKIKUを最大限生かせる状況(今回ならば霧とECMで相手の目を殺し乱立するビルが接近と奇襲を容易にしておる)を常に作り上ておる点で一流の戦略眼をもっておるじゃろう。
これはネクストという絶大な力を操るリンクスにはかなり珍しいタイプじゃ。ネクストは大抵の不利など力ずくで引っ繰り返せるから大抵のリンクスは戦略など考えずゴリ押すからのう。
そのためシャミアはランク不相応な戦果を上げておる。今回の狩りも既に幾度かの出撃でAF五機にランク外のネクスト二機と大量のノーマル部隊を狩っておる。
シャミアは出撃のたびにこのような多大な戦果を上げておる。企業の政治力を抜きに戦果だけで考えるならランク5位以内に入っておってもおかしくない。
にもかかわらず、シャミアがランク15位等という低位におるのは二つの理由がある。

一つはランクマッチと単純に相性が悪いこと。
カラードのランクは戦果と何より企業の政治力で決まるといっても、いやだからこそ建前としてオーダーマッチで一定の成果を出すことが要求される。
分不相応の地位におるBFFの小娘も下位のリンクス相手にはランクマッチでは勝ち越しておる。
そのランクマッチでシャミアの戦績は悪い。
当然じゃ。自己に有利な状況でしか戦えないシャミアが五分五分の状況で始まるランクマッチでまともに戦えるわけがない。
まぁ、それ以前に相手を嬲る事も死の快感を得る事も出来ないランクマッチをシャミアが真面目にやっとらん事もあるんじゃが。
じゃが、これは決定的な理由ではない。
最大の理由は折角苦労して築き上げた戦略上の優勢を無駄にしかねないシャミアの性癖じゃ。
シャミアは相手を嬲ることに夢中になりすぎる。そのため目標を達成できない事すらあった。
リンクスは相手を嬲らん。AMS負荷やコジマ汚染を避けるため可能な限り迅速に敵を撃破し目標を達成する。精々行儀の悪いもんが戦闘後に相手を嘲るぐらいじゃの。
じゃが、シャミアは違う。猫が鼠をいたぶるように、逃げる相手を向ってくる相手を命乞いをする相手を徹底的に嬲り尽す。
特にノーマルやネクスト等人型の敵にはその傾向が強い。さらに、パイロットをシャミアが気にいると惨の一文字では表せんほど惨い事になる。
一度など数時間にわたって嬲った挙句最後にはコックピットから引き摺り出しさらに一時間玩弄した事もある。
達磨にされた揚句下半身を踏み潰され最後にショットガンで吹き飛ばされた死体を見た時は流石にシャミアを半殺しにしてしもうた。
そんなシャミアの依頼ではなく自己の楽しみを優先させる性格と、なにより残忍な気性が恐れられシャミアはランクが上がらないのじゃ。

そして今回は不味い事にシャミアが最も気に入っておるメイ・グリンフィールドが敵におる。
あの娘は以前の狩りでBFFの小娘と一緒に生け捕りにした事がおる。
本社がBFFやGAと交渉している間わしとシャミアで見張りをしていたんじゃが、わしが眼を離した隙にシャミアが悪戯をしたんじゃ。
少し可愛がっただけで泣き叫び意識を失った小娘とは違い、メイは小娘を庇い泣き言一つ言わずむしろ気丈にもシャミアを罵り返したらしい。
その態度をいたく気に入ったシャミアが本格的に愛し始めようとしたところでGAの奪還部隊の襲撃がありその騒ぎで逆にシャミアはそれに乗じたメイにやり返され逃がしてしまったらしいのじゃ。
もっとも、わしにシャミアを責める権利はない。
何せ迎撃に出るためにスタルカで出撃したわしは偶然血塗れのリリウムを担いだ血塗れの半裸のメイを見つけてそれを捕まえるでも殺すでもなくローディーに返してしまったからの。
まぁ、女子供を殺すわけにもいかんしシャミアの借りを返さんといかんかったからの。
おかげで本社からはエライ睨まれたしシャミアから恨まれたが仕方ないの。唯一、ウィン・D・ファンションからはやたらと褒められたが何の足しにもならん。BFFからの感状は………嫌がらせじゃろうな。
話はそれたがともかく、それ以後元から気に入っていた事に加え、愛せなかった事と返り討ちにされた屈辱が絡み合いメイはシャミアが一番のお気に入りになったのじゃ。
それこそ、メイが絡むと正気を失うくらいにの。
まったく、これだから女は度し難いのじゃ!!!

****

「いやな霧・・・シャミアには相応しいわね・・・。派手にやる。いぶりだすわ」
挑発のつもりじゃろうか?暗号すらかかっとらん通信を傍受する。
「はっは。小細工をする相手ほど実際は大したことないもんさ。メイさんは俺の後ろに「殊勝な羊達ね。わざわざ狼の餌場にでてくるのだから。ふふ、戻れないわよ、あなた達」ひっひぃ!」
挑発にあっさりと乗りシャミアが通信を入れる。阿呆が!折角の奇襲のチャンスを無駄にしおって!こいつらは獲物じゃないんじゃぞ!
「さぁ!あの時の続きをしてあげる!泣き叫びなさい!スマイリー!!」
こちらに何の合図も無くシャミアが仕掛ける。
「やってみなさいよ!蜘蛛女!」
「阿呆が!!お前等、足止めは頼んだで!!あんなんでもネクストや倒そうと思うな!足止めだけでええ!!」
ノーマル部隊に通信を入れシャミアに一歩遅れ戦場に突撃する。
霧と乱立するビルに紛れ慎重にだが素早く雷電に接近する。
見えたで!!雷電は自らの象徴ともいえるOIGAMIを展開し対四脚のセオリーに従いゆっくりと上昇を始めていた。
「させるかい!!」
スタルカに強く大地を蹴らし、同時にRACHELを最大稼働させ一気に上昇する。
「えぐらせてもらうで、GA!」
「甘い!!」
叫びと共にKIKUを突き出すが雷電が寸での処でQBを吹かしたので掠るだけにとどまる。
それでも、並みのネクストなら腕の一本も持っていくのだが、雷電相手には文字通り掠り傷にしかなっていない。
むしろ、KIKUのパイル部分が曲がっている。「くそ、化けもんがぁ!」毒吐き壊れた杭を捨てて二本目を装填。
そのまま牽制のためVANDAとCP-51を乱射しながら遠ざかりビルの陰に身を隠す。
「あはははははははは!!ほらほらどうしたの?そんなんじゃ駄目よ?もっと抵抗しなさい!それか泣き叫びなさい!あはははははは!!」
「くぅ!いい気にならないでよね!最後に泣くのはあの時みたいにあなたのほうなんだから!!」
通信からは絶好調なシャミアの声が聞こえてくる。
まあええ。今は雷電じゃ。あのグレネードは脅威じゃからな。当分は今みたいな接近と離脱を繰り返!?
突然背後から来た衝撃にPAが半分ほど消し飛びスタルカが軋む。
「なんじゃぁぁぁぁ!!」
確認するとビル二つ目の区画を中心にクレーターが出来ていた。霧が爆風で吹き飛び一時的にクリアーになった視界にクレーターの向こうで次弾を装填する雷電が映る。
不味い!!慌てて手近なビルに隠れる。
「無駄だ。吹き飛べ」
同時にOIGAMIが発射され隠れたビルに突き刺さる。
「うぉぉぉぉおおおぉ!!」
直撃でもないに関わらず熱と衝撃でPAが吹き飛びスタルカに少なくない損傷を与える。
くそがぁぁあ!距離をとるのはいかん!今みたいに削り殺される!!
「ええじゃろ!張り付いたるわ!!このうすのろが!!」
MP-O200を目眩ましに放ち、横QBを織り交ぜながら一気に距離を詰める。前QB一回でKIKUが当たる間合いまで接近後は旋回に切り替え隙を窺う。
「匹夫め。この雷電に削り合いを挑むか」
「何がヒップじゃ!ホモ野郎!!お望み通りにカマを掘クソ!!」
VANDAとCP-51が作り出す爆炎に包まれた雷電が腕グレを発射する。
ギリギリのところでかわした二発の弾が後方のビルに突き刺さりクレータを作る。これだけ離れているにも関わらず爆炎がスタルカを炙り僅かに傷つける。
くそがぁ!一発の威力は低いようじゃが二発撃てばOIGAMIと威力は変わらんちゅうことか!!しかも、いずれは張り付いとっても削り殺されるちゅうことやな。
「じゃが!その隙貰ったで!!」
発射後の僅かな硬直を活かし背後に回り前QB。同時にKIKUを振りかぶる。殺ったで!!
「甘いな」
だが、KIKUが突き刺さる寸前に雷電が自らの足元に腕グレを放つ。
「このクソだぼがぁ!」
相手の意図を悟り慌てて後QBを吹かした瞬間雷電を中心とした大爆発に呑み込まれる。
「がぁぁぁぁぁぁああああ!」
AMSから送られてくる熱、痛み、エラーに翻弄されながら雷電を見失わないように睨みつける。
雷電が予想通りの行動をとっている事を確認し。損傷個所のリカバリーより先に横QBの実行を優先させる。
スタルカが損傷を省みず左に飛んだ瞬間、スタルカのいた場所をOIGAMIが通り過ぎる。
「小兵が!!」
「甘いんじゃボケェ!」
背後からの爆炎に炙られながら今だクレーターの中心で自らの爆炎に炙られる雷電にむかいMP-O200とCP-51を叩きこむ。
「どうや!………くそ、この化けもんが!」
だが、エラーが収まった視界に映るのは幾分傷ついてはいるもののまだピンシャンしている雷電だった。
くそ!もう並みのネクストならスクラップに出来る量をブチ込んどるし、さっきのかて自分のほうがダメージはでかいはずや!
なのになんであんなに元気なんじゃ!!いくら頑丈かて限度ちゅうもんがあるやろ!!
とにかく、KIKUはあんな返しがあるなら使えん。次に喰らったら終わりや。かといって張り付きも効果が薄いちゅーか削り合いは不利じゃ。でも距離をとっても炙りだされるだけ。
八方塞じゃ!どうする?一度距離をとるか?いや、ここまで来てケツ捲るなんて恥ずかしくて出来ん。なら、手は一つや!
「ええやろ!削り合いに付き合ったるわ!!お前が頑丈ゆうならぶっ壊れるまで弾をブチ込んだるわ!!人のシマ穴だらけにしくさりおって!絶対に落とし前をつけたるからな!!」
「匹夫が!!消し飛ばしてくれる!!」

****

有澤隆文は驚いていた。
スタルカが自分を狙ってきたのも、距離を取ると燻し出されると接近戦を挑んできたのも、隙を見てKIKUを使ってくるのも想定の範囲内だった。
ゆえに少々強引だが対抗策も考えていた。そしてその対抗策が避けられるのも余り当たって欲しくはないが想定していた。
しかし、その後は想定外だった。
予想では打つ手が無くなったスタルカは戦意を喪失して後退しシャミアと合流をはかるとふんでいた。しかし、実際は、
「当たるかぁ!ボケェ!!クゥ!いい加減に倒れんかい!!」
旺盛な戦意をみせ張り付きを続けている。しかも、幾度か隙をみせKIKUを誘っているのだが乗らずミサイルとマシンガンとロケットで執拗に攻撃を続けていた。
恐るべき事だ。確かに軽量級が重量級を相手にする場合接近しての張り付きが有効だ。そこだけ考えれば不思議ではない。
だが、張り付いている相手は並みの重量級ではない雷電なのだ。
破壊力に特化したグレネードは直撃すれば一撃でスタルカを消し飛ばし、仮に避けても爆風がダメージを蓄積させていく。
それに、スタルカの武器はEN兵器ではなく実弾なのだ。これでは全ネクストの中で最硬を誇る雷電相手には効果は見込めない。
サドンデスの恐怖と徐々に削り殺されるという焦燥、さらに効果の見えない攻撃を続ける徒労。これらは強烈に奴の精神を蝕んでいるはずだ。
にもかかわらず、奴は決まれば一撃で終わるKIKUを使おうともしない。確かにまともに考えれば決まる可能性は低い。手痛い反撃を受ける可能性は高いだろう。
だが、それでも決まれば一撃で終わるのだ。そしてその誘惑を重圧の中耐えられるものだろうか?
にもかかわらず奴は誘惑に屈せず、集中力も切らさずに張り付きを続けている。
恐るべき男いや、漢だ。低ランクの相手と見下して良い相手ではない。同格以上と見るべきだ。
だとすれば、このまま当初の作戦である各個撃破を続けるべきだろうか?確かにここまで削れば後はOIGAMIか腕グレどちらでもいい、直撃すれば終わる。
そして、常識的に考えてこの重圧の中ミスをしないわけがない。その隙をつけば終わりだ。
「まさかな」いや、それはない。自らの甘い考えを否定する。
絶望的な状況に諦めず今尚旺盛な戦意を見せるこの漢がそんな隙を見せるはずがない。この漢は倒れるその瞬間までミスをせずに張り付きを続けるだろう。
むしろ、そんな緩みを持てば斃されるのは自分だ。忘れるな。相手を一撃で屠る牙をもっているのは自分だけではないのだ。
誘いではなく本当の隙を見せた時この漢は容赦なく私の喉元に牙を突き立てるだろう。
だが、それでも敢えて一撃死を覚悟したうえでこの状況を続けるか?このまま順調に推移すれば勝つのは私だ。
いや、それではメイが持たない。今でこそ嬲られ命を繋いでいるが気紛れな蜘蛛女がいつその気を変えるかはわからないのだ。
見事だ。この場は私が有利だが戦場全体でみれば奴等が有利か。
「だが最後に勝つのは私達だ」
そう、こちらにも意地となによりまだ打つ手がある。




「きゃあ!このぉ!」
右後方からのショットガンでの攻撃に慌てて向き直りWRを乱射する。
「あはっははははあ!可愛い声ね?でも駄目よ!もっともっと!聞かせてちょうだい!!」
だが、WBはおろかWRのロックが完了する前に赤い影と嘲笑だけを残し霧の中に消える。
「っくそう!」最初からずっとこの調子。私はシャミアをまともに補足する事さえ出来ず一方的に嬲られている。
シャミアがその気なら私はとっくにあの世行きだ。にもかかわら「何を呆けているの?私はここよ?」
背中に固い物が押し付けられた感覚。これはスラッグ?
慌ててQBを使い前に逃れようとしたところで地面が眼前に迫る。
「きゃぁ!」何が起こったのか分からないままスマイリーの顔面と胸を地面に強打しAMSからそれを伝えられ一瞬息が詰まり堪えていた涙が零れる。
そうか!QBの瞬間に足を引っ掛けられたのね!!
「攻撃もしないなんてぐっ!」
立ち上がろうとしたところでシャミアに上に乗られ身動きを封じられる。
そして、右脇腹に押し付けられるアサルトライフルの銃口。
「ふふふ。今度はこぉこよ。ちゃあんと、覚えておくのよ?後で自分の身体にも同じ順番で綺麗な風穴を開けてあげるんだから?」
「やっやめ、あぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
衝撃と共に右脇腹に激痛。同時にAMSから大量のエラー。
「あははははああははぁぁあ!いい声だよ!でも駄目だ!もっとだ!もっと私に可愛い泣き声を聞かせて!もっと私に可愛がらせて!」
痛みにのたうつ私の上からシャミアが退く。その際にスマイリーの顔に浴びせられたQBが伝えられ髪の毛を焼かれる不快感を与える。
でも、そんな事より痛い!痛い!痛い!お腹が痛いの!ダメ!痛みでパニックになる寸前、急速に痛みが引き怒りが沸き起こる。
「あぁああぁ!今ので殺さなかった事を後悔させてあげるわ!!」
雄叫びを上げ立ち上がりシャミアにWRとWBを乱射する。
「そうよ!その調子よ!あははあははああ!いつまで持つかしら?」
「逃すか!」
嘲笑と共に霧の奥へ消えようとするシャミアを追う。
口から溢れそうになる嗚咽を唇を噛みきるほど強く噛むことで殺し、溢れる涙を乱暴に手で拭う。
何時まで持つかですって?もうとっくに限界に決まってるじゃない!!相手があんたじゃなかったらとっくに土下座でも何でもしてるわよ!!
でも、降参したらもっと酷い目に合うって解っていたら!死んだほうがマシな目に合うって解っていたら死ぬ気で抵抗するしかないじゃない!!
「くたばれ!蜘蛛女!!!」
シャミアが霧の向こうに消える寸前、何とかロックが完了したWHEELING03をMUSKINGUM02とセットで発射する。
ミサイルが次々と霧の向こうに消えていき次いで連続した爆発音が聞こえる。当たったかどうかはわからない。
油断せずビルを背にし辺りを見回す。
シャミアはどこ?さっきので死んだ?いや違う!!霧の向こうから視線を感じる。あいつは私を見ている!どこから?わからない!でも確かにみているんだ!
自分の荒い息が気持ち悪い。じっとしているとシャミアに傷つけられた左足と右肩そして右脇腹が酷く痛む。
ううん違う。痛いのは乳首と右耳だ。思わず胸に手をやるが耐Gスーツに阻まれ確認が出来ない。今すぐスーツを脱ぎ確認したい衝動を抑え耳に手をやる。大丈夫。血は出ていないしちゃんと聞こえる。
本当に?怖い。耐Gジェルに包まれて解らないだけじゃなくて?怖い。AMS接続をしているから聞こえた気になっているだけじゃなくて?怖い。怖い。怖い。だって、こんなに痛くて疼いてるんだよ?
怖い。怖い。痛い。痛い。怖い。きっとあの時みたいに血がドクドク流れてるんだよ。視界が揺れる。怖い。怖い。痛い。痛い。怖い。地震?痛い。怖い。違う!私が揺れているんだ!
「あああぁあぁぁぁぁぁあっぁあぁぁぁぁ!!」絶叫しながらここから逃げたいという衝動に恐怖と痛み、さらにこの場に蹲りたいという願いを押さえつける。
駄目だ!これがシャミアの作戦って事はわかってる。シャミアはこんなふうに傷ついた私がパニックを起こすのを待っているんだ!!でも、駄目!もう耐えられない!!!
AMSに恐怖を鎮める鎮静剤と萎えた戦意を奮い立たせる興奮剤の投与を指示する。先の脇腹の際の投与を含めて連続投与は副作用の危険や命に関わるという警告を無視し一番きついのを投与する。
パニックと恐怖が消えていくのを感じる。薬物の効果で冷静に興奮するという理想の精神状態に戻れた。
変わりに体中の毛細血管が破裂しちゃったし、鼓動も不規則だし、漏らすしちゃったけど安いもんだよね。
そのおかげで、ほらこうして副作用のフラッシュバックが起こってるけど全然平気だもの。私は付近を注意深く警戒をしつつ笑いながら過去の悪夢を追体験する。




楽な任務だと思っていた。
付近に敵ネクストの活動報告も無く重要な物資を運ぶでもない単純な護衛任務。
しかもお姫様であるリリウムが任務に当たるという事もありBFFは通常はトラックで済ませる輸送手段にランドクラブを用意していた。
さらに、護衛に旧型の大型兵器やノーマルを山ほど付けておりどう考えも私いらなくない?状態であったがどうも私はお姫様の戦績稼ぎのお供と道中の話し相手に雇われたらしい。

カラードのミッションの戦績の評価項目には拘束時間(長ければ高評価)の他に規模(動員した戦力が多ければ高評価)がある。
そして規模や危険度や報酬の割に拘束時間だけは長い護衛任務に本来不必要なAFや大部隊を動員すればたちまち安全で高評価ミッションが出来上がる。
もちろん本来はこんな不経済な事はしない。大規模な部隊を動員すればそれだけで費用がかかるし何より依頼料も上がる。今回だって前金だけで通常のミッションの5倍以上が払われた。
でもやらないわけで出来ないわけじゃない。企業のTOPがその気になればもちろん可能だ。そしてBFFのTOPは王小龍。あの腹黒爺ならお姫様のためにここまでやってもおかしくない。
もちろんいつもは王小龍がお供に付くのだろうけどおそらくぎりぎりで何か急な用事でも入ったのだろう。だから仕方なくGA陣営唯一の女性リンクスである私を代打にあてたのだろう。
にしても、歴戦のローディーさんを差し置いてリリウムが上位にいる理由が解ったわ。ま、そのおかげでいい目を見れてるんだから文句は言わないでおこう。ローディさんも気にしてないし。
それに道中は楽しかった。当然この戦力に喧嘩を吹っ掛ける命知らずな武装組織もおらずリリウムも話してみると世間知らずだがいい子で私達はすぐ仲良くなった。
ま、この年になってパジャマパーティーをするとは思わなかったけど。キラキラ光る眼で憧れてたんですと言われたら流石に断れないわ。
そんな小さなハプニングがある程度で道中は何の問題も無かった。
だから楽な任務だと思っていたのだ。襲撃を受けるその瞬間まで。

ランドクラブの貴賓室に備え付けのプールと間違えかねないお風呂にリリウムと一緒に入っていると突然大地震が起こった。
とっさにリリウムを抱き寄せ近くの物に捕まると今度は浮遊感。そして落ちていると思う間もなく壁に叩きつけられた。
痛みに耐えながら立ち上がるとちょっと前まで入っていたお風呂が壁にかかっていた。いや違う。私達が壁に立っていた。
「ランドクラブが横転したの!?」
幸運にも地面に合った通信機に何が起きているか尋ねるがまともな返事が返ってこない。
でも、途切れ途切れに敵襲やネクストといった単語が出てくれば何が起きているかは明らかだ。
未だに目を回しているリリウムを起しバスルームから飛び降りグチャグチャになった部屋から靴を発掘する。靴を履き部屋の外に飛び出そうとしたところでリリウムが裸では外に出れないとグズりだす。
緊急事態でそんな事を言っている場合ではないと説得してもしまいには頭にきて張り倒しても意見を変えなかったので仕方なくバスローブを発掘し身に纏い今度こそ部屋から飛び出す。
私も運動神経がいいほうでもないがリリウムが輪をかけてさらにドンクサかったので移動に苦労したが何とか格納庫に辿り着きネクストを起動させる。
だが、外に飛び出した瞬間、
「やっとかい。待たせおって。じゃが女で命拾いしたの」
後ろからの声と衝撃に意識を失った。

****

そして気が付くと私達は素っ裸の上後ろ手で縛られて転がされていたのだ。何とか顔を起し目の前の男女を見上げる。
男はともかく女は知っていた。確かアルゼブラのシャミアだ。
じゃあ、目の前の男もリンクスだろうか?それともアルゼブラの兵士?がっしりとした体格と頬に走った傷がなんとなくローディーさんを連想させる。
じっと見ている私に気が付いたのか男が私に視線を向ける。うう、怖い。って待って!私裸じゃない!手が使えないので少しでも隠そうと丸まっていると、
以外にも私以上に怯えて縮こまっていると思ったリリウムが身を起し目の前の二人に向かい声を上げる。
「私はBernard and Felix Foundation所属のリリウム・ウォルコット、こちらはGlobal Armaments所属のメイ・グリンフィールドです。
 アルゼブラ所属のシャミア・ラヴィラヴィさん、テクノクラート所属のド・スさん。
 このような非人道徳的な扱いは戦闘後に捕虜になったリンクスの扱いを定めたカラードの規則に違反します。
 即刻拘束を解き、カラードの規則に則った扱いをする事を要求いたします。
 さもなくば、後日貴方方に然るべきペナルティーが与えられるでしょう」
ド・スが私からリリウムに視線を移す。だがリリウムは私のように恥ずかしがる事なく堂々とド・スを睨みつける。
でも、私は気付いた。後ろで縛られた手が汗ばみ震えている事に。
しっかりしろメイ!こんな可愛い子が頑張ってるんだぞ!
床を這い進み身体を起しリリウムに寄り添いド・スを睨みつける。ド・スの口元が少し緩むが直ぐに眉が顰められる。
「あら、ごめんなさいね。私も本当はこんな使いはしたくないのだけれど。でも、スーツを脱がせたら二人とも裸だったんですもの?
 流石にどんな仕掛けがあるかわからないスーツを着せておくわけにもいかず、かといってBFFの女王様にお着せ出来る服などここにはありませんから仕方なく。
 それにしてもインナーも着けないなんて、GAの女性リンクスは皆露出狂のなのですか?」
丁寧に一礼しこちらを馬鹿にした笑みを浮かべるシャミア。リリウムはこの手の挑発に慣れていないのかあっさりと真っ赤になり反論する。
「侮辱は許しません!!ちゃんと、バスローブと靴は履いていました!!」
「あら?やっぱり露出狂なのね。それとも、清楚なのは見かけだけで男を誘っているのかしら?そういえば、後ろの子と比べてちっとも隠さないわね?
 ねぇ、ド・ス。BFFの女王様が抱いてほしいそうよ?」
「な!違います!」顔どころか全身を真っ赤にして叫ぶリリウム。そんなリリウムの様子を見てますますシャミアは笑みを浮かべる。
「そんなわけないでしょ!!偶々一緒にお風呂に入っていただけよ!!自分が淫乱だからって他人もそうだと思わないことね!!」
「二人でお風呂に?ああ!なるほどBFFの女王様はそちらの趣味がお有りなのね。だからリリウムというのね。いやだ、どうしましょうド・ス?私狙われちゃってるわ!」
わざとらしく震え、ド・スに抱きつくシャミア。だが、ド・スはそんなシャミアを煩わしそうに振り払う。
「んなわけないでしょ!!仮にそっちの趣味があってもあんたなんかお断りよ!!とにかく、この際縛るのはしょうがないとしてもせめてド・スはどっかいきなさいよ!
 何よさっきからリリウムちゃんの事じろじろ見て!!このロリコン!!」
あ!やばい。シャミアの言葉にかっときてつい暴言を吐いてしまった。
ド・スの視線がこちらに向く。いや、これは見るというより睨みつけるだ。
正直怖くて謝りたいのだが寄り添うリリウムの暖かさに後押しされやけくそで言葉を続ける。
「何よ!今度は私!そうね、リリウムちゃんより成長してるから見応えがあるでしょうね!でもね!あんたなんかお断りよ!!
 縛って無抵抗な女にしか興奮しない変態にどうこうされるくらいなら死んだほうがマシよ!!男らしいのは外見だけなの!それでもついてるのか!この変態!!」
言い終わった瞬間に後悔する。バカバカ私!怒らせてどうすんのよ!
恐る恐るド・スの様子を窺う。うわ!凄い睨んでる!!やば!目が離せない!!うう恐怖のあまり目が離せないよう!誰か助けて!!
身を寄せ合っているリリウムに不安を伝えないよう震えるのだけは我慢する。結果として睨みあう形になる。駄目、恐怖で意識飛びそう!うわ!笑った。肉食獣の笑みだ。私食べられちゃうの?
「もうええじゃろシャミア?小娘の見張りなんて詰らん。わしは煙草を吸ってくる。見張りたければお前一人でやれ」
言い捨て踵を返すド・ス。あれ?本当にどっか行ってくれるのもしかしてこの人いい人?
だが、歩き始めたド・スの腕をシャミアが掴む。
「なんじゃい」
「あら?持ち場を放棄しちゃだめよ?か弱い私が一人で見張りなんて出来るわけないじゃない?」
「何がか弱いよ!私達縛られてるんだから何も出来ないわよ!!」
シャミアがこちらに振り向く。
「あら?そんな事ないわよ?だって、私達スーツを脱がせただけで身体検査を一切していないもの」
「なにもあるわけないじゃない!!そんなの見ればわかるでしょ!!」
「あら?それは解らないわよ?外にはないようだけど中は解らないじゃない?唯でさえ女には男より一つ隠すところが多いのに。でもそうね」
シャミアが私の元に近づき胸を蹴りあげる。突然の衝撃に息が詰り次いで倒れた衝撃で後頭部を地面に強打する。
「メイお姉様!!何て事を!!これは明確「煩いわよ」きゃあ!」
殴打音と倒れる音。
「何すガッ」
身を起こそうとしたところで下腹にシャミア足が振り下ろされる。内臓にまで達する痛みに視界が白くなり吐き気が込み上げる。
「シャミア!!」
「煩いわねぇド・ス。検査よ、検査。あなたがいなくなって私一人で見張りが出来るように中を確認しないとね。
 さ、ド・ス。私が押さえているからこの子の上のお口と下の前と後ろのお口を覗いて中を確認して?」
「何言ってんのよ!!そんな事駄目に決まってるでしょ!!」
「あら?あなたが言ったんじゃない?ド・スに出て行って欲しいって。良かったわね。これで何もなかったら出て行って貰うわ。
 あ!でもこれじゃ胃や腸に入っているか解らないわね。よし、じゃぁこれが終わったら胃洗浄とお浣腸をしましょう。ビールしかないけどそれでいいわよね?
 安心していいわよ?ちゃあんと映像に残してあげるから」
「シャミア」
「あなたが嫌なら向こうの奴らを呼んできてやらせるわ」
シャミアの言葉にド・スが溜息を吐くとこちらに歩き始める。
「嫌!ちょっと!ねぇ!冗談でしょ!!「まさか?本気よ?」嫌!!離して!!!」
何とか抜け出そうと足掻くがシャミアに踏まれどうにもならない。そうこうしているうちにド・スが近づいてくる。恐怖に目の前が真っ白になり泣き叫ぶ寸前、
「おやめなさい。それ以上続けるようなら私は舌を噛みます」
リリウムの毅然とした声で我に返る。
「あらあら?他人なのに舌を噛むの?やっぱり出来ているのかしら?でも、BFFの女王様にはたして「やめい!シャミア!その小娘は本気じゃ!」
シャミアの茶化すような声をド・スが遮る。だがシャミアは一瞬眉を顰めたが直ぐに笑顔に戻る。
「あら凄い!でも残念ね。ねぇ、なんで舌を噛んだら死ぬか知ってる?噛み切られた舌は収縮して喉の奥に潜り込むの。それで呼吸困難で死んじゃうのね。
 だからね、舌を噛んだら喉にボールペンでも刺して呼吸を確保してやればそれで呼吸困難は防げるのよ。だから、喋れなくなるだけで無駄よ?」
「ですが、BFFに私が変換された時に舌と喉の傷は残ります。それは虐待が行われたという動かない証拠になるはずです」
「あら?生きて帰れる気でいたの?」
「ええ、私達がまだ生かされているのが証拠です。今もBFFとアルゼブラで交渉の最中でしょう?」
「正解よ。でも、多少の傷があってもどうとでも言い逃れができるわよ?」
「そうでしょうね。先程からの私達に対する不当な扱いも暴力も逃亡の危険性や暴れたので鎮圧したと言えば問題にはならないでしょう。
 局部の観察や胃洗浄や浣腸も身体検査と言い張れるかもしれません。私達は虐待を主張しますが水掛け論になりますし、リンクスの精神的苦痛は軽視される傾向がありますし所詮は癒える傷です。
 大したペナルティーは科せられないかもしれません」
「解っているじゃない」
「ですが、舌を失えば別です。これは癒えませんし言い訳が出来ませんよ?」
「あなたが勝手に噛むのよ?こちらの知った事ではないわ」
「貴方方が私が舌を噛むまで追い詰めたのでしょう?これは虐待があったという何よりの証拠です。
 それに、先程から貴方が言っているようにこの身はBFFの女王です。その舌を奪ったとなればBFFひいてはGAは貴方を絶対に「ガタガタ煩いのよ!!」
シャミアが怒鳴りリリウムを蹴り倒す。
「………口で勝てないとなったら今度は暴力ですか?程度が知れますね?」
「黙れっていってるでしょ!!」
冷笑するリリウムをシャミアが殴りつける。だが、口元から血を流しながらそれでもリリウムは冷笑をやめない。
ちょっと!あの子完全に出来上がってない!?シャミアも頭に血が昇ってるし不味いわよ!
「落ち着きなさい!!リリウムちゃん!!挑発「お姉様は黙っていて下さい!!これは私の問題です!!」
リリウムが私を見ずに一喝する。駄目!完全に出来あがっちゃってる!どうしよう。このままだとこの子死ぬまで止まらないわ。でも、どうしよう!
「それでどうするのですか?私を標的にしても変わりませんよ?」
「だったら、噛めないように歯を全部へし「お前の負けじゃシャミア」
リリウムの口を蹴り砕こうと足を振り上げたシャミアの後ろに回り込んだド・スが首筋に手刀を下ろす。
「あ?」「え?」
何が起きたのか理解できずに呆然とする私達をよそに崩れ落ちたシャミアの身体からカードキーを抜き出し握り潰すド・ス。
そして私達の方へ向き直ると上着を脱ぎ出す。
「ちょっと!あんたまさか!!」「近寄らないでください!!それ以上寄ったら舌を噛みます!!」
悲鳴を上げる私達に「あほんだら」の声と共に上着を投げつける。
「え?」ド・スはあまりの事態の急変に戸惑う私達を無視しシャミアを担ぎあげ出口に向かう。あ!背中に蜘蛛のペイント。
「んじゃ、わし等はいくで?安心せい。シャミアのもっとるカードは砕いたからもう入ってこれん」
もしかして、私達助かった?
「あの!ありがとうございます!!」
ド・スが部屋から出る寸前リリウムが声をかける。
ド・スが振り返り私達に笑いかける。うう、笑い顔も怖い。
「阿呆。わしは敵やぞ。それとな小娘。命知らずも結構やが程々にせえよ?次噴き上がったら殺すで?
 後な、姉ちゃん。今回は許したるけど次舐めた口きいたら潰すで?」
「………」
「………」
「わかったな?」
「「はい!!」」
「ならええ」そう言ってド・スは今度こそ部屋から出て行った。

****

「助かったの?」
「そうみたいですね。あ」
リリウムがふらつき倒れる。
「ちょっと!!大丈夫!!」
慌てて這い寄るとリリウムが笑顔で身を起す。
「すいません。少々気が抜けてってあれ?」
言葉の途中で突然瞳に涙が溜まり、溢れだす。
「え?え?あれ?」
「リリウムちゃん泣いてって、あら?」
気が付くと私もボロボロ泣いていた。
そして、安堵と共に堪え様のない嗚咽の衝動が沸き起こり慌てて、
「ごめん、リリウムちゃん。あたしちょっと今から大泣きするけどきにしないでね」
「すいません、私もです。その、恥ずかしいので胸を貸していただいてよろしいですか?」
「いいよ。その代わり髪の毛貸してね。後、これは二人だけの秘密だよ」
「はい。構いません。では失礼して」「うん、汚したらごめんね」
リリウムが私の胸に顔を埋め、私は目の前にあるリリウムの髪の毛に顔を埋める。
「じゃあ、せーので」「はい」
「「せーの!」」

そして私達は子供のように泣きじゃくったのだった。

****

三十分大泣きした後顔を上げ、お互いに真っ赤に充血した眼を笑いあう。
ひとしきり笑い合った後絶対に無事に帰ろうと誓い合いド・スの投げた上着を着ようとする。
「って!よく考えたら縛られてるんだから着れないじゃない!!」
袖に手を通す事も出来ないし、胸のせいで上のボタンを留める事も出来ない!!お腹から下は隠れているがそれが余計に胸を強調して、自分の事ながらいやらしすぎる。
「それに、タバコ臭いです。その、メイお姉様は胸が綺麗だから大丈夫ですよ」
シャツから頭を出したリリウムが眉を顰めた後私を見て慰める。まぁ、こちらは胸は隠れているが微妙に長さが足りていない。股上5センチといった所か。
それが恥ずかしいのかシャツの前の裾を強引に太腿で挟み引っ張っているため、後ろの部分が上がってしまい可愛いお尻が丸出しになっている。
「それ慰めになってないわよリリウムちゃん。まあいいわ、リリウムちゃんの可愛いお尻が見れる事だしね。そうだ、リリウムちゃん、あーんして」
「からかわないでください。もうあーん」真っ赤になって拗ねながらも素直に大きく口を開くリリウム。いい子だ。口の中を確認する。うん、大丈夫だ。
「怪我は大した事ないみたいね。それにしても、女の子の顔を殴るなんて酷い女よね。あ!虫歯みっけ!」
「え!ほこふぇふふぁ?」
「なーんて、嘘」
「もう!からかわないでください!今度は私がメイお姉様を見てあげます!!」
そう言ってリリウムが、私の服を臍まで捲り上げシャミアに蹴られた下腹部をじっと見る。
「ちょっと!リリウムちゃん!?流石にそれは」
いくら同性同士とはいえ流石に恥ずかしく逃れようとするが手が使えず、まさかリリウムを蹴り飛ばすわけにもいかないので腰をくねらせる事しかできない。
「大変です!!蹴られたところが痣になっています!!」
そんな無駄な抵抗を続けているとリリウムが叫ぶ。そして、その部分を確認すると確かに3センチ程の痣が出来ていた。
「ほんとだ。どうりでジクジクすると思った。まっ、この大きさならやばい事にはひゃぁん!」
突如下腹を走った慣れない感触に思わず奇声を上げる。
視線を再度下に落とすとリリウムが赤い舌を可愛く出して痣をペロペロと舐めていた。まるで子犬みたい。舐めるたびにお尻がフリフリするからなおさらそう見るわね。
「じゃなくて!リリウムちゃん何を!!」
「消毒です。私にはこれしか出来ませんから」顔を上げて微笑んだ後また、チロチロと一心不乱に舐め始める。
………不味いわ。私そんなケは無いはずなのに今のリリウムをみると、そのムラムラきちゃうわ。
生唾を飲み込む。舐められている下腹部が痛みではなく熱い。どうしよう濡れているのがばれちゃう。ばれたら嫌われちゃうかな?それとも、私もって笑ってくれるかな?
………って駄目よ!メイ!落ち着きなさい!!私はレズじゃないはずよ!!そう、私のタイプは首輪付き君やローディさんやロイさんのはずよ!
だから、これは緊急避難なの。そう仕方ないの。閉じ込められた私達が慰めじゃなかった励まし合うのはしかたないのよ。リリウムちゃんはタイプじゃないんだからやましい気持があるわけないもの。うん。
「ありがとう、リリウムちゃん。じゃあ、お礼に私もリリウムちゃんのを「何をやっとるんじゃお前等?やっぱりそのケがあるんか?」
「きゃぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!何よ!何なのよ!!何いきなり入ってきてるのよ!!ノックぐらいしなさいよ!!」
決定的な一言が無粋な乱入者の一言で妨害される。くそ!もう少しだったのに、じゃなかった助かったわ。
「なんで捕虜の部屋に入るのに気ぃ使わないかんのじゃ。まあええ、飯じゃ食え」
部屋に入ってきたド・スがトレイを下ろす。
ご飯と言われるとお腹が空いている事を自覚する。外の様子も解らないし時計も無いので時間の経過が解らないけど少なくとも三時のおやつの後お腹が空く程度にはたっているって事ね。まっ、そんなことよりご飯ご飯。
「って、スルメに魚の干物にピーナッツにとにかく乾きものとスナック菓子だけ!?しかも飲み物がウオッカとビールってどういうことよ!!リリウムは未成年なのよ!」
「仕方なかろう。食料はシャミアが管理しとるから取り出せんかったからわしの部屋と仮眠室に合った食いもんがこれしかなかったんじゃ」
「あの蜘蛛女!!ねぇ、せめて飲み物はなんとかならないの?」
「作戦中はわしはウオッカしか飲まんし若いもんもウオッカかビールしか飲まんからのう。後は水しか「水でいいわよ!!」
「たっく、我儘な奴じゃ。じゃけん女はすかん」
ド・スが溜息を付き立ち上がり部屋から出ていく。私が我儘じゃなくてあんたが非常識なのよ。口には出さずかわりに舌を出す。
「落ち着いてください。メイお姉様。その、下品です。ご飯を頂きませんか?でも、どうやって食べましょうか?」
「どうやってって。犬食いしかないでしょ?縛られてるんだから」
「犬食い?」
「あ~、知らないか。えーと、こうやって」
「そっそんなはしたない食べ方できません!!!」
「でも、食べないと持たないわよ?何日閉じ込められるか解らないんだから食べないと」
「嫌です!!そのような下品な食べ方をするくらいなら飢え死にした方がマシです」
「はぁ、じゃあいいわ。好きにしなさい。私は食べるわ。あ~おいしい」
そっぽを向いて拗ねるリリウムを無視して食べ始める。まぁ、そのうちお腹が空いて素直になるでしょ。
「水じゃ。なんじゃお前食わんのか?」
「ええ、このような下品な食べ方をするのなら飢え死にします」
「放っておいていいわ。意地張ってるだけだから」
「好きにせぇ。交渉が纏まるまで一週間はかかるが頑張れよ」
なんだかんだいってこちらに友好的なド・スの機嫌を損ねないように媚びた後持ってこられたやかんに目をやる。
ストローを刺しただけという粗野さに溜息を吐きたくなるが我慢してストローを咥え吸う。
冷たい。てっきり常温かと思ったのに。先程大泣きして水分を消費した事もあり夢中で水を飲む。
そして喉も潤ったので食事を再開しようとしたところでクゥ~~~と可愛い音が辺りに響く。
「………」
「………」
「………」
「………えーと、そういえばなんで私達の監視をあんた達がしてるわけ?貴重なリンクスにこんな雑務をやるってもったいなくない?」
何とも言えない沈黙の中真っ赤になって震えるリリウムが哀れになりド・スに話しかける。
「BFFからの要求じゃ。小娘の監視にはリンクスを当てる事。もしこれが守れない場合は総力をあげてアルゼブラとうちを滅ぼすってな」
「当然の要求です。カラードの規則はリンクスにしか適応されませんから」
「それと出来れば小娘の世話には女性をちゅうのもあったからな。今回はわしの組が主役やから女はシャミアしかおらんしな。
 むぃとらんがまあぁ仕方ないわな」
「その仕方ないで私は舌を噛みかけたのですが」
「あぁ?輪姦されるよりましやろ?あんま調子に「そっそういえばどうやって私達を倒したの?あの大部隊をいきなり壊滅させるなんて」
リリウム!お願いだから自分が捕虜だっていう自覚をして!!
リリウムと立ち上がりかけたド・スの間に這い進みド・スに笑いかける。仕方ない。ローディさんと首輪付き君にしか見せないスペシャルスマイルだ。
スマイルが効いたのかそれとも胸が効いたのかド・スが腰を落とす。ついでにリリウムを軽く蹴っておく。
「ふん。核地雷や。それを砂漠の地下深くに埋めてお前等が上にいるときに一斉に爆発させたんや。計画ではそのあと混乱しとる所にもう一発核ブチ込んで全員消し飛ばすはずやったんだが、その不発でな。
 おかげで予定外の捕虜がぎょうさん取れてうちは大迷惑じゃ」
「では、皆無事なのですね?」
「ああ、ここから離れたところで若い衆が見張っとる。お前等が駄目ならあいつらいうて向おうとしたシャミアもベットに繋いだから安全のはずや」
「そうですか。よかった」
リリウムが胸をなでおろす。うんいい子だ。またなったお腹は気にしないで上げよう。
「つーか、喋りすぎやな。用事がないならわしはいくで?」
ド・スが立ち上がる。
えーと、水と食べ物は確保したし何時解放されるかも大体わかった。後は、外の様子を知らないといけないな。よし!!
「ちょっと、待って!!そのオトイレに」
「あぁ?んなもんその辺でするか我慢せい」
「何言ってんのよ!!一日や二日なら我慢するけどさっき一週間って言ったじゃない!そんなに我慢できるわけないでしょ!!それにこの部屋のどこにトイレがあるのよ!!!」
「せやから、端っこの方で「出来るわけないでしょ!!!その、小さい方はともかく大きい方はどうするのよ!!」
「あ~!本当にうっさいのう!ええわ!そんなにいうんなら連れってたるわ!ただ、流石に個室に一人っきりにはできんからわしも一緒にはいるで?」
「人権侵害です!!!そのような仕打ち「嫌なら舌でも何でも噛むか隅でせい。小娘、こっちが優しいからってあんま調子こくな」
怒鳴ったリリウムをド・スが一睨みで黙らせる。だがリリウムも一瞬気圧されたように黙るが直ぐに口を開く。
「貴方こ「解った。それでいいわ。連れてって」メイお姉様!?」
傷ついた表情で黙りこむリリウム。ごめんね。でも外の様子を知りたいの。事が起こってからだと遅いからね。
「んじゃ、立ちや。一人で立てるか?」
「無理ね。手をきゃ!ありがと。その、他の人に見られたりは」
「ここにはわしとシャミアしかおらん」
「そう、安心したわ。リリウムちゃんも来る?」
「結構です」

****

ドアを開けて部屋の外に出る。
「右曲がってしばらく歩きや」
後ろにいるド・スの声に従いながら周りを不自然に思われない程度に観察する。
よし!一般的なホーム(格納庫及び居住区敷設型トレーラー)ね。てことは、出口はあっちで非常口はそっち。それで格納庫はこの先ね。
あ!時計だ!ラッキー!!えーと、四時半か。最後に時刻を確認したのが三時のお茶会でその後にリリウムとお風呂に入ったんだから大体攫われてから十時間ぐらいかな?
「そこや」
トイレに辿り着く。うん、大体予想どおりの位置ね。あ!女性トイレのマークが男性に書き換えられてる。
とりあえず元女子トイレに入り思いのほか綺麗でほっとする。一番手前の個室に入る。良かった洋式だ。社長のところみたいに変なの形式だったらどうしようかと思ったよ。
確認したい事は全て確認したからもう戻ってもいいんだけどやっぱりしないと怪しまれるよね。
う~~~~、仕方ない。
覚悟を決め後ろを振り返り一緒に個室に入ってドアにもたれかかるド・スを睨みつける。
「なんや?はよせい」
「ドアを閉めろとは言わないからせめて外に行って後ろを向いてなさいよ!それと、出来れば耳を塞いで口で息をして!」
どこまで聞いてくれるか解らないけどとりあえず怒らないと予想出来る範囲で我儘をいってみる。怒らないよね?怒ったら謝ろう。
溜息を付きド・スが後ろに下がる。
「まぁ、ええやろ。スカの趣味はないしな。ただし、妙な事したらわかっとるな?」
私が頷くと手を耳にやり口で息を始める。うう、後ろは向かないか。監視は緩めないわけね。
特に胸やアソコを注視されているわけではないしやらしい言動も無いのだがそれでも人に見られているとつらい。
こんなこと早く終わらせたいのだが焦ると中々出ない。
うう、これは検査。そう検査なのよ。ここは病院のトイレで今は尿検査の最中。前にいるのはちょっとガラの悪いお医者さん。あるいは看護師さんなのよ!だから全然恥ずかしくない!恥ずかしくないの!!
いい加減な自己暗示が効いたのかそれとも直前の水分補給が効いたのかは解らないがようやく出すことに成功する。
出たら出たで極力音をたてないように注意し出し終え、縛られているため拭けない事に気づき絶望し、よく考えたらこいつのだから構わないと上着で拭き、後ろ手で苦労して水を流す。
その後手とついでに顔を洗う。といっても洗面台に水を溜めてそこに浸しただけだが大分楽になった。
「タオルじゃ。拭いたるから大人しくしぃ。んじゃ、帰るで」
乱暴に手と顔を拭われた後来た道を戻り部屋の前まで辿り着く。
ド・スは「用があったら叫びや。気が付いたら来る」と何とも微妙な言葉と共に私を部屋に入れ立ち去った。
右ね。格納庫に行った?それとも部屋がそっちにあるの?とりあえず覚えておこう。
そして部屋の中を改めて見てみると食事も水も減っていない。強情な子ね。一人になったら食べると思ったのに。
リリウムの隣に腰掛ける。
「リリウムちゃん、ごめんね。大丈夫だった?」
口に代わってお腹が返事をする。元気なようね。
「ええ。メイさんが遅かったおかげで独り優雅に過ごせました。ありがとうございます。ド・スさんと何をしていたかは存じませんがさぞお疲れでしょう。私は結構ですので食事をどうぞ」
お腹が減ってるからかは解らないけどまた不機嫌になってるわね。これはちょっと不味いわね。ご飯を食べないのもそうだけどこんな風に拗ねられちゃいざって時に困るわ。
仕方ない。お姫様の機嫌を取りましょうか。
「あのねリリウムちゃん。さっきも言ったけど今日明日ならともかく一週間はあるんだよ。食べないといざって時に動けないわ。見られるのが恥ずかしいなら見ないから食べなさい。嫌ならせめて水だけでものみなさい」
「一週間は敵から伝えられた情報です。信用できません」
「そうね。だったら明日にでも来る可能性もあるし一週間後かもしれないし一ヶ月後かもしれないね。でも、リリウムちゃん。人間は水をまないと一日で動けなくなって三日後には死んじゃうんだよ?
 それに何が起こるかもわからないし。もしかしたらインテリオルやラインアークが横取りを狙って襲ってくるかもしれないしね。だからその時に逃げるだけの体力は残しておかないと」
「それはそうかもしれませんが。ですが、嫌なものは嫌なのです」
「我儘言わないの!!じゃあ、私が食べさせてあげようか?」
「え!?じゃっじゃあ、いっいえ!食べたら出さないといけませんからやっぱり嫌です!私には誰かに見られながらなんて無理です!!特に男性に見られるくらいなら死んだ方がましです!!!」
真っ赤になりながら叫ぶリリウム。あ~、なるほど。確かに思春期の女の子には辛いわねぇ。
「でも一週間もあるならいつかは絶対に。そうだ!!お医者さんと思ってみるのは?」
「お抱えの医者は全員女性です」
BFF凄!!
「じゃぁ、私見ないようにするから端っこでするとか」
「嫌です!!見てない証拠はないじゃないですか!!」
「はぁ、じゃあ、一緒にしてあげる」
「えぇぇええ!!なら………いっいえ、そのような問題ではなく人前でそんな事をするのが問題なのです!!」
「人前なんて今さらそんな他人行儀な事言わないで。ねえ、リリウムちゃん。私達はもう裸のお付き合いをして全部見せてるわよね?
 だったら、今さらおトイレぐらい平気よね?それとも、リリウムちゃん私がおトイレするところを見て嫌いになる?」
「それはなりませんがそういう問題ではないような」
「そういう問題よ。友達なら他人に見せない汚ないところも見せても友情に罅が入ったりはしないわ。
 私はリリウムちゃんが好きだからリリウムちゃんの悪いところを見ても平気。リリウムちゃんは私の事嫌い?」
「いえ、好きですが」
「じゃあ、見ても大丈夫よね?」
「はい。………い、いえ、そのそうだ!もしそうなら何故先程私を置いてトイレに行ったのですか。やっぱり駄目です!!」
むぅ、意外に頑固ね。ペテンには引っかからないか。ふふふ。でも、お姉さんの手はまだまだあるわよ?
「さっきのは例外よ。私もあんな奴に見せるくらいなら死んだ方がマシよ!!でもねそれでも行かなくちゃいおけなかったの」
「死ぬより嫌な事をする理由がどこにあるのですか?」
半眼でじと目のリリウムの目を見つめる。
「あなたのためよ。もしここが襲われたりして脱出できた時に外の様子が解らないと致命的だもの。それで私が死ぬんならいいけどリリウムちゃんが死んだら後悔してもしきれないもの。
 だから、ううん。こんなの言い訳にならないよね。ごめんねこんな恥知らずな女で」
目を伏せ俯き涙を流す。
もちろん嘘泣きだ。涙は女の必須事項よ。それにもし一人でも行ったし。やっぱり出来る事はしておかなきゃ。死にたくないし。
「お姉様!!申し訳ございません!!お顔を上げて下さい!!私が軽率でした!!愚かな私のためにお姉様がそこまでして下さるなんて!!無礼な口を許して下さい!」
あっさり引っかかり感極まって泣きながら頭を下げるリリウム。う~ん、本当に素直でいい子ね。ちょっと、胸が痛むわ。
「ありがとう。わかってくれて嬉しいわ。じゃあ、ご飯食べてくれる?」
「はい!お姉様の恥辱に比べればこの程度の恥!!あの、それでお姉様。おトイレはその」
「はいはい。一緒にしてあげるわよ。それとも、私がしてるところみたいの?」
「いっいえ!!その、頂きます!!」
真っ赤になって食事を始めるリリウム。一生懸命食べようとする姿が可愛らしい。ふふふ。顔をそんなに汚して、よっぽどお腹がへっていたのね。
それにしても、お尻をこんなにフリフリ振って。子犬みたい。
そうやってリリウムが食事している所を和みながら見ているとリリウムが顔を上げ珍しく年相応の笑顔を見せる。
「お姉様。あーんです」
「いきなり、何?」
「いいから、あーんしてください」
「はいはい、あーん」
口を開けるとリリウムがスナック菓子を咥え私の口に移す。
移す際に触れた唇と舌の暖かさにドギマギする。
「今度はお姉様の番です。あーん」
「あのね、リリウムちゃ「あーん」・・・はいはい。解ったわ。………ひふわきゃ、ん~~~~~!!!」
諦めてスナック菓子を口に咥え顔を上げたところでリリウムに唇を奪われる。
吸い出され奪われるスナック菓子。そしてそのまま顔を犬のようにペロペロ舐め回され、最後に唇をもう一度奪われ砕かれ唾に溶かされた元お菓子を返される。
ねぇ!誘ってるの!!誘ってるんでしょ!?やっぱりそのケがあるんでしょ?いいわよね。お姉さん本気になっちゃって!
………いや、「半分お返しです」っていいながら邪気のない笑顔を見せられるとただジャレただけのスキンシップっていうのは解るんだけどね。私はリリウム程綺麗じゃないのよ。
とにかく、生きて帰ったら王にお姫様の教育方針について一言言ってやろう!

その後私達は食べ物が無くなるまで鳥のように互いに食べさせ啄み合った(最後は水まで飲ませあったのよ?これはどう考えてもNGよね?)
その後、ひとしきりお喋りをし、最後に二人一緒におトイレをすませ肩を寄せ合い眠りについたのだった。

隣で私の右胸の頂上をしゃぶりながら寝ているリリウムを見ながら私は生まれて初めて神に祈った。
どうか神様、この監禁生活が一日も早く終わりますように。
じゃないと、私の理性が持ちません!!!

****

その僅かな銃声で目を覚ます事が出来たのは神様に祈りが聞き届けられたからだろうか?
まさか!もう救出部隊が来た!?
「リリウムちゃん!起きて!!」
もう一度銃声が聞こえドアのロックが破壊される。
やっぱり来てくれたんだ。よかった。明日理性が持つかは微妙なラインだったからね。
自動ドアが手動で開かれていくのを見て笑顔がこぼれる。
「起してしまってごめんなさいね?」
「シャミア!?」
だが、その笑顔は最悪の人物が入ってきた事により凍りつく。
「何故貴方がこッグ「リリウムちゃん!?シャミア!あんたいきなりな「黙りなさい!!」
入ってきたシャミアが突然こちらに駆け寄りリリウムの口に何かをいれ、ついでに怒鳴った私を蹴り倒す。
「ふふふ。似合ってるわよリリウムちゃん?これで舌を噛み切るなんて出来ないでしょ?」
「ふぅ~~!!グググ」
「リリウムちゃん!?」
リリウムの口元が真っ赤に染まっているのを見て血の気が引く。まさか!歯を!!
だが、直ぐにシャミアの手から垂れた血が顔についただけと解り安堵する。シャミアの手から?
「シャミア?あんたその手………」
シャミアの左手は親指の根元が抉れ血が噴き出していた。そして、右手には血塗れの手錠がぶら下がっている。
「ああこれ?ド・スったら酷いのよ?大人しくしとれとかいって私をベットに繋いでさ。おかげで親指千切れそうになっちゃった」
まさかこいつ、手錠を外す為だけに肉を抉ったわけ!正気じゃないわ!
「でも、そのおかげでアドレナリン出まくりよ!ふふふ、覚悟なさいな」
シャミアが凄絶な笑いを浮かべながらリリウムの顔に手を伸ばす。手から垂れた血がびちゃびちゃと顔に降りかかり汚していく。
「ぐぐ!ふぃぃー!!ふぁぃふぃふぁぁふぃ、ふぁふぁふぁふぃぃ!!」
口に穴の開いたゴルフボールのようなものを突っ込まれたリリウムが叫びと共に涎を垂れ流す。
「あははははははっははあはあ!!ほらぁ舌を噛んでみなさいよ!!出来るものならね!あははあははははあああ!!
 でも、安心していいわよ?別にいじめるために付けたんじゃないからね。きっと、感謝する事になるわよ?」
シャミアが笑いながらベルトから直径一センチくらいの鉄串を抜き出し先端を愛おしそうに舐めた後ライターで炙り始める。
「ちょと!あんたまさか!」
「ピンポーン!!実はさっきのお詫びにピアスの穴を開けて上げに来たのよ。そうね、正解したんだからあなたからやってあげっる!!」
シャミアが私を蹴り倒し胸の上に足を乗せ私の動きを封じる。
「ふふふ、動いてもいいわよ?違うところに穴が開いちゃうかもしれないけどね?リリウムちゃんも止めたければ私にぶつかるといいわ?弾みで目とかにいくかもしれないけどね。
 そうそう、気をつけなさいよ?あなたはギャグが無いんだから痛さのあまり舌を噛まないようにね?それと、叫んでもいいわよ?ド・スは今外出中だから聞かれる心配はないわ」
そういって、熱せられた先端を私の左耳に合わせた後振り上げるシャミア。
「ふぅう!ふぃふぃあふぃあふぁ!」
「大丈夫よリリウムちゃ「行くわよ!」
~~っっつう!!大丈夫やっぱり大して痛くない。精々ちくっと来る程度だ。むしろ、シャミアの顔と迫りくる針の方が怖い。
「ふぃあふぃあふぁっふぁ!ふぃあふぃあふぁっふぁ!」
泣き叫ぶリリウムを安心させるように声をかける。
「大丈夫よリリウムちゃん。耳に痛覚はないからね。むしろ今度開けようと思っていたから都合がいいくらいよ」
「なぁーんだ、知ってたんだ。じゃあ、こっちは二つ開けてあげる」
再度振り下ろされる鉄串。本当は目を瞑りたいが手元を狂わされたらたまらないので頑張って開けたままにする。
「ふふふ。いい風穴よ。あなた。じゃあ、次はリリウムちゃんね?」
シャミアが私の上からどきリリウムを蹴り倒し押さえつける。
「胸がないから押さえつけやすくていいわね」
無言のまま、シャミアを睨みつけるリリウム。
「さぁ、泣き叫びなさい!!」
「!!!」
両耳に穴が開けられてもまったく動じずにシャミアを睨みつけるリリウム。
「あはははははははあ!!いい目ね!そうよね!そうよね!!こんなんじゃ物足りないわよね!!さぁ、次にいくわよ!!」
嗤いながら血のついた鉄串でリリウムのTシャツを捲り上げお腹に足を振り下ろすシャミア。
「ふぃぃいぁぐぁ!」
衝撃に身をくの字に折り曲げ大量の唾を撒き散らすリリウム。リリウムの苦しむ様子を見て喜悦の笑みを浮かべるシャミア。
そして、あらわになったリリウムの胸を鉄串でつつく。
「ちょっと!あんた!まさか!!「今度はこぉこ!あら、可愛いお子様乳首ね。出てきなさぁ~い。いいもの付けてあげるから」
「シャミア!あんたいい加減に!!「いいの邪魔して?手元が狂って心臓にプスッ!!とかなったらあんた責任とれるの?」
「ふぃあふぃあ」
焦るあたしの方を向いて安心してくださいとばかりに顔を振ったあと、再度シャミアを睨みつけるリリウム。
「本当にいい目ね」そんなリリウムを嗤いながらリリウムの胸を愛撫するシャミア。
「ふざけるな!!シャミア!!そんなこと許されると思ってんの!!」
「ええ、だってこれは友好の証ですもの。あはは、出てきた出てきた。じゃあ、いくわよ?ちょっと、痛いけどがまんしてね」
そういって、リリウムの左胸を捩り上げるシャミア。
「フィィィ」だがリリウムは相当の痛みがあるに関わらず僅かに呻き声を洩らしただけでシャミアを睨み続ける。
「これは耐えられるかしら?じゃ?いくわよ」
「ふぁふぁぃあいぃああいぁいぁぃあいぁいあいああいぁぃあいぁいいぁぃあ!!!」
「あはぁあはははははあ!!いい声ね!!でも、いいのそんなに暴れて?もげちゃうわよ?」
流石に耐えきれなかったのか涙を流し絶叫するリリウム。嗤うシャミア。
だが貫通した鉄串の先がゆっくりと出てくるとリリウムは声を上げるのをやめシャミアを睨みつける。
「あらあら、まだそんな元気があるんだ。えい」
「………!!!」
鉄串を揺らすシャミア。だがリリウムはそれでも声を上げずにシャミアを睨みつけている。
とはいえ、顔は真っ青だし目の焦点もあってないし呼吸も荒い。肉体的に限界なのね。
無理もないか。BFFの女王として暮らしてきたリリウムが痛みに強いとは思えない。
AMS適性も高いから接続の時も痛みは無縁だっただろうしね。むしろ泣き叫んでいない事が不思議よね。
「そろそろ抜いてあげるわ、えい!」
「ぁああふぁふぃふぁぁあぁ!」
鉄串が引き抜かれ真っ赤に染まった先端をシャミアが舐め上げる。
「ふふふ。片方じゃバランス悪いわよね?どうしようかしら?」
「いい加減にしなさいよシャミア!!」
「ねぇ、リリウムちゃん。どうしてほしい?お願いするんなら考えてあげてもいいわよ?」
馬鹿にするように尋ねるシャミアをリリウムが睨みつける。ああもう!何であなたはもう!!
「止めなさいシャミア!!もういいでしょ!!謝るなら私が謝るから!!もう止めて!お願い!!」
「やーよ。リリウムちゃんは続けてほしいんだもんね!!」
「ふぃあぁあぁ…………………」
不意打ちでシャミアが右乳首を貫くと同時にリリウムが意識を失う。
「あら?もう落ちちゃったの?情けないわね。まあいいわ。お目目の一つもくり抜いてあげたら起きるでしょ。見つめ合う♪瞳と瞳♪」
シャミアが鉄串を引き抜き火で炙り始める。
リリウムの目を!?駄目!!そんなこと絶対にさせない!!
「いい加減にしなさいよ!!!さっきから抵抗出来ない私達に好き勝手して!!この卑怯者!!最低!!屑!下種!!
 そんなに私達が怖いなら殺しなさいよ!!できないんでしょ?そうよね、いくら強がってもカラードは怖いもんね。所詮あんたは強がってるだけの弱虫なのよ!!臆病者!!
 あんたみたいな変態が生きてるのは酸素の無駄だから今すぐ首をくくって死ね!この馬鹿!!」
思いつく限りの悪口をシャミアにぶつける。あ~、一息で言ったから酸素が足りないわ。でも、ちょっとすっきりしたわね。
「元気がいいわねぇ。私としてはリリウムを可愛がれればそれで良かったのに。戻れないわよ、あなた」
作戦成功。シャミアの注意が私に向いたわ。これでリリウムは無事ね。私はどうなるか考えたくないけど。でも、もうここまできたら覚悟を決めるしかないか。
「だから、喋るなっていってるでしょ!!息が臭いのよ!あんた!」
「それは悪かったわね!!」
シャミアが私を蹴り倒し、お腹に乗って左胸を捻り上げる。
「触るな変態!!変態が移る!!」
「元気ね。直ぐにそんな口を聞けないようにしてあげる!!」
焼けた鉄串が乳首に押し付けられゆっくりと前進していく。
熱さと痛みが左胸を中心に広がっていき、次いで身体に異物が侵入する感覚に怖気が走る。
口から出そうになる悲鳴と懇願をなんとか噛み殺しシャミアを睨みつける。
「泣いてもいいのよ?」
「誰が?あんたなら聞こえないところでやってよね。耳障りだから!!」
血を流しジンジン疼く胸を無視し挫けそうな心をシャミアへの憎しみで無理やり奮い立たせて言い返す。
「泣いているくせに元気ね。次行くわよ?」
シャミアが嘲る。
「沁みたからね。好きにいぃぃい!!」
不意打ちで一気に右乳首を貫かれ悲鳴が漏れる。激痛に身を捩りたくなるが何とか耐えてシャミアを睨みつける。
「ふふふ。隣の根性無しよりは楽しめるみたいね?次はどこにしたい?お豆ちゃん?それとも、舌や目にする?あるいは、一気に子宮にいって女を辞めて見る?」
体中を鉄串か這いまわる。その感触に負けないように声を張り上げる。
「好きにすればいいでしょ!!それよりさっきから言ってるけど喋るの止めてくれない!!息は臭くて鼻が曲がりそうだし、ガラスを引っ掻いた音より耳障りなのよ!!もお!いいから早く死んでよ!!」
痛みと恐怖でともすれば泣き叫びそうな声をなんとか罵声に変える。
「あはあっはっはあ!!いいわ!すごくいい。そうねじゃあ、あたしの声を聞きたくないならいいわ。こうしてあげる」
左手で頭を押さえつけられ左耳に鉄串を入れられる。敏感な耳の穴を蹂躙される痛みと不快感と恐怖に涙が出る。
「動くと、死ぬわよ?ふふふ。鼓膜み~~っけ!」
そして、ついに耳の最奥に達した鉄串が鼓膜を刺激する。それでも悲鳴と懇願だけは出さないようにと唇を噛み締め、逃げだそうとする身体を抑える。
「じゃぁ、二回目の処女膜貫通といきましょうか?」
ブツリと何か致命的な物が破れた音。そして、一切の音が右耳から消えた。
「あああぅああつあつぁぁぁあぁあつあぅぁあぁぁぁぁぅぁぁぁあぁあぁあぁぁぁぁぁあ!!」
そして、鉄串が引き抜かれると同時に解放され聞こえないはずの耳鳴りと激痛に悲鳴を上げ床を転げまわる。
「あははあぁはっぁっはぁはぁはぁはぁはぁははぁはははぁはぁはぁ!!!!!!!あらあら、始めてだったの?そんなに血を流して?大丈夫よ?いずれ気持ち良くなるから?あははは!!!」
転げまわるあたしを嘲笑うシャミア。その半分だけになった笑い声に恐怖よりも怒りが先に立ち転げまわるのを止めて睨みつける。
「あら?どうしたの?そんなに縋る様な眼で見て?うふふふ。謝る気になった?」
嗤うシャミアに向かって唾を吐きかける。ざまぁみろ!!当たったわ!!!
「だから喋るなって言ってるでしょ!!臭いんだよ!!あぁあもう!耐えられないから早く死んでよね!!これ以上人間様に迷惑かけないように死ね蜘蛛女!!害虫!!
 あ!でも、鼓膜破いてくれた事だけは褒めてあげるわ!!あんたのゴキブリの羽音以下の声を半分聞かずに済むようになったからね!蛆虫以下の存在の割には気が利いてるわよね!!
 寄生虫にランクアップさせて上げる。さあ、次の毛虫レベルになるために自殺なさい!!!」
もうどうにでもなれと開き直って悪態を吐く。
「いいわいいわ!いいわよ貴方!!!最高よ!!!あははぁははぁ!!たぁっぷりと可愛がって上げる!!!」
シャミアが唾を拭い手に持った鉄串を捨てると、新たな鉄串をベルトから取り出す。
太い。今度のは直径5センチはあるわ。
それを炙らずに私の全身を這い回させる。
「わかるかしら?今度はあなたの身体に素敵な風穴を一杯開けてあげる。最初は右足から腰までいったら、次に左腕。これも肩までいったら次は左足、右腕ね。
 それでまだ生きていたら、体よ?安心して。私上手いから内臓は傷つけないように刺してあげるから。
 ふふふ、死ぬか降参したらリリウムちゃんの番だから頑張るのよ?」
「上等よ!!好きにすればいいじゃない!!でも覚えていなさいよ!!毎晩枕元に立ってあげるんだからね!!!」
ああ、もうダメだ。あたしはここで死ぬ。こいつに嬲り殺される。
だったらせめて死ぬ瞬間にはこいつを嗤って死んでやろう。
きっと、酷い目に一杯あうのだろう。痛い目にたくさんあうのだろう。
私はきっと泣き叫ぶだろうし命乞いもするだろう。漏らしたり錯乱したり恥ずかしい真似を一杯するだろう。
それは仕方ない。嫌だけどしょうがない。
でも、最後は、死ぬ瞬間はこいつを嗤って死んでやる。出来たら悪口を一杯言ってやる。そうすれば私の勝ちだ。とうとう、私を屈服させられなかったとシャミアに思い知らせてやる!!
「そうしたら、毎晩あなたを壊してあげるわよ。じゃあ!いくわよ!まずは一つ目!!!」
シャミアが鉄串を振り上げる。
覚悟を決めシャミアを睨みつけ、きっと無駄だろうが悲鳴を上げないように唇を噛み切るほど噛み締める。
「そぉきゃああぁあああ!!!」
だが、シャミアが鉄串を振り下ろす寸前昨日に続き大地震が私達を襲ったのだった。

****

「何!?何が起こっきゃあぁああ!!」
チャンス!!突然の地震で混乱するシャミアに向って足払いを掛ける。
「ぎゃぁぁぁあぁああぁぁあぁ!!!!」
シャミアが獣みたいな絶叫を上げる。見ると転んだ際に持っていた鉄串が左足と右足を貫通している。ザマァミロ!!!日頃の行いよ!!!
冷静になり様子を確認すると断続的な地震と共に砲撃音が聞こえてくる。襲撃ね。GAが助けが来た?それとも別件?
ううん、そんなことより今は逃げないと!!
足を丸めて後ろ手に縛られた手を前に持ってくる。ふぅ、美容のためにやっていたヨガがこんなところで役に立つなんて。
「くそ!ああぁぁあああ!!!」
シャミアの叫びに振り向くと貫通した鉄串を引き抜こうとしているのが目に入った。
「させないわよ!!!」
咄嗟に落ちていた鉄串を拾い上げシャミアの右腕に突き立てる。気持ち悪い感覚を無視して力を込め鉄串が右腕に完全に埋もれ左手に縫い付けた所で手を離す。
「あぁあああぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!貴様ぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあああ!!!!」
「仕返しよ!!」
シャミアの絶叫に気圧されながら吐き捨て気絶したリリウム元に駆け寄る。
苦労して肩に担ぎあげ部屋から出たところで後ろからシャミアの狂ったような哄笑が響く。
「ひああはいあはいあやいいあっひあはやいいあいああ!!いいね!!あんたいいよ!!最高だ!!あたしが愛して最後まで逝かせられなかったのはあんたが初めてだ!!
 次よ!次に会ったら今回の分も含めて死ぬまで!!いや、死んでも愛してあげるからね!!楽しみにしていろ!!はははおあおああはおあほおあおはほ!!」

****

それから私は予め見当をつけていた非常口から外に出た。
そして、予想通り襲撃してきた部隊にソーラーウインドの姿がある事にに安堵し合流しようとしたところで、スタルカに見つかってしまった。
だがスタルカは諦め膝を着いた私を握りつぶすでも踏み潰すでもなく、PAを切り優しく摘みあげると敵ノーマルと交戦中だったローディさんの所に向かい、あっさりと私達をローディさんに引き渡した。
その後二機のネクストはしばらく睨み合った後、ローディさんは踵を返しそのままエリアから離脱したのだった。

その後入院した時に聞いた話だと、私の体内にあった発信機(BFFとの契約内容。経口接種後胃に張り付く。BFF製らしく精度は抜群で実はランドクラブにいる間はトイレだろうが何だろうがプライバシー関係なく把握されていた。
死ぬほど嫌だったのだが、報酬が三倍上積みされたのとBFFからの遠回しな家族への脅迫を受けあえなくOKすることとなったのだ。
まぁ、リンクス養成施設では発信機どころが24時間モニターで監視されていたし、何よりそれのおかげで助かったのだからよしとすべきだろう。うん)から場所を割り出したGA及びBFFの救出部隊は付近に部隊を展開。
ここまでは良かったのだがその後、運悪く敵の偵察部隊に見つかり強襲となったらしい。さらに、スタルカに連れられた私達を見た時は最悪の事態を覚悟したらしいがド・スはあっさりと私達を解放。
そしてド・スは呆然とする救出部隊に対し用が済んだらさっさと帰れと言い放ったらしい。
救出部隊は最大の目標を達した事とフィードバックが私達を守るためにPAを張れない事もあり他の捕虜の救出を諦め退いたらしい。

検査の結果は幸いにして傷は大した事も無く、またBFFが最高の医療チームを用意してくれたおかげで傷一つ残らず完治した。
そして何故かミッションは失敗したにもかかわらずBFFから成功報酬以上の金額の見舞金が払われ、カラードの評価も下がることはなかった。
ただ、シャミアとド・スに関する処罰もなかった。どのような交渉があったかわからないが最終的にシャミア(とド・ス)の拷問は、GA側の強襲とド・スが私達を無償で解放した事と何故かウィン・Dさんの強烈なド・スへの擁護によりチャラになったらしい。

つまり結果だけを見ればあのミッションはなかった事になったのだ。
唯一つ、私とリリウムの心に恐怖と共にシャミアという名が刻まれた事以外は。




そうだ。あれから何度あの日の続きを夢に見て魘され夜中に跳ね起きただろう。起きてすぐ汗まみれのパジャマを破り胸を確認し、叫び両耳が聞こえる事を確認しただろう。
もし、今回負ければ悪夢の続きが始まるんだ!!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!!それなら死んだ方がマシだ!!!
舌を口から出し強く噛み締める。痛い。だが痛みに耐えさらに強く噛み締める。痛い!痛い!痛い!さらに強く噛み締め痛い!!!!
無理だ!!あごの力を緩める。無理だ!!無理だ!無理だ!!痛いのは嫌だ!!死ぬのはもっと嫌だ!!死にたくない!!どんな事をしても生きていたい!!
なら、シャミアを倒すしかないんだ!!倒すしかない!!シャミアを倒して殺してあたしは生きて帰る!!

興奮剤の力を借りて悪夢を振り払い状況を確認する。
あたしは絶望的。自力での状況の打破は不可能でシャミアの気が変った瞬間に殺されてもおかしくない。
ダンは、詳しい状況は解らないけど時折聞こえてくる通信からはノーマルに翻弄されている事が予想できる。あの口先だけの役立たず!!
そうは言っても元々あいつの役割はシャミアとド・ス以外を引き付ける囮というか弾避けのつもりで連れてきたので役目を果たしていると言えば十分果たしているのだけど。でも、それでももう少し何とかならないわけ!?
もし、今颯爽と現れてシャミアを撃破してあたしを助けてくれたら惚れちゃうかもしれないのに。
「ひぃぃ!無理だ!!むっ無理だ!!避けられねぇ~~!」
………まぁ、そんな格好いい役はローディさんか首輪付き君に任せよう。あのへたれは当初の予定通り無視しよう。
社長はこれも分からない。ただ、時折響くグレネードの轟音が社長の存在と敵の健在を知らせてくれていた。早くやっつけて助けに来て下さい!!社長!!
「つまり、どうしようもないって嘘!?合図!?」
泣き言の最中に上空でOIGAMIの大爆発が起こった。社長からの合図だ!!
半分冗談で決めた万が一の手段。一度きりの博打をしなければいけないらしい。
これがドラマや映画なら手に汗握る展開なのだが実行するのが自分たちでしかも賭けるのが自分の命なのだから堪らない。
くそ!社長!?何であんな低ランク相手に手古摺っているのよ!!油断しすぎよ!!普段偉そうにしてるんだからもう少し役に立ちなさいよ!!
しかし、実行しなければ命は無い。私は涙を流しこの世の全てを呪いながらスマイリーに準備をさせ発射元に移動を始めるのだった。

****

「動きが変ったのう。勝負に出たか?」
雷電の動きが明らかに変わっていた。先程のOIGAMIを空に向かて発射後、ビルを背にし最低限の回避運動すら放棄してこちらに照準を合わせる事に専念していた。
「ふん。持久戦をしとったら相方が死ぬ事に気付いて一気に勝負を決める気かい」
だが、何でOIGAMIや?腕グレの方が弾が残っとるし当てやすいやろ?それに、さっきの一発はなんじゃい?唯でさえ少ない弾を無駄撃ちしくさりおって。おかげでOIGAMIの弾は………そういう事かい。
「なるほど。気持ちいいやっちゃなあ」
相手の狙いがわかり感嘆の声が出る。無駄弾を撃ったのは最後の一発にするため。自分を後のない所まで追い込んで集中力を高めて、最後は自分の一番信用出来る牙でわしを喰い殺そうちゅうわけやな?
「ええわ!たのしゅうなってきたで!!」
さぁ!こうなったら張り付きは危険やな。いくらマシンガンやらロケットやらで雷電の肉を削ったところで無駄やろ?骨ごと爆砕されてしまいや!
「そんな格好悪い事出来へんよなぁ!!」
雄叫びをあげKIKUを構えVANDAを乱射しながら横QBを連射しながら慎重に接近する。
雷電はもはや射程内にもかかわらず被弾に構わずこちらに標準を合わせたまま微動だにしない。ええな。お前。あれやろ?必中の距離にわしが入るまで待つ気やろ?でも、それはわしの距離でもある。
堪らんなぁ~~!!つまりあれやろ?お前の牙が早いか俺の牙が早いかちゅう話やろ?ええやろ!負けんで!!
「くるなぁあぁぁあぁああ!!」
「あら危ない。AAなんて出来たのね。でも当たらないわ。ふふふ。左腕貰うわよ?」
「あぁあぁぁぁぁあああ!!」
雑音を無視しマシンガンのロックを雷電から外しビルに向け乱射する。蜂の巣にされ崩壊を始めるビル。構わずこちらに標準をつけ続ける雷電。崩れたビルの一部がわしと雷電の間に入る。勝機!!
「ハラショウ!!」
叫び突貫する。殺気!!感じた瞬間にはスタルカを右に倒していた。弾が頭の左を通過していく。間一髪。三十センチもない!!
「けど外れは外れや!!抉「きゃぁぁああぁあぁぁぁあぁああ「今よ!!くたばれ蜘蛛女!!」んな!?「かわせ雷電!!!」
通信機から聞こえたあってはならない悲鳴に一瞬KIKUを突き出すのが遅れる。その僅かな隙に雷電が強引に身を捩る。衝撃。装甲を抉り撃ち貫く感触。駄目や!!致命傷やない!!
杭を雷電に突き刺したまま離脱する。そして振り返ると右脇腹にドでかい風穴を開けながら未だに動きを止めない雷電と、左腕をうしないボロボロのスマイリー。そして、
「嘘よ。私のレッドラム」
焼け焦げたレッドラムの姿があった。

****

「ふふふ。そうよ!悲鳴を上げなさい!!ほら!ほら!ほら!!」
シャミアが嗤いながらあたしを追いたてる。
体中に浴びせられるアサルトライフルに本当にパニックになりそうになりながら私はパニックを装い移動し目的地に辿り着く。
着いた!!見ていなさいよ!!シャミア!!
意地と負けん気を総動員して自らを鼓舞し、失敗したら終わりという恐怖を抑えつけ機を窺う。
そして、視界にシャミアが映った瞬間半分以上本心の叫びを上げAAを発動する。
「くるなぁあぁぁあぁああ!!」
絶叫と共に周囲をコジマ粒子が荒れ狂う。充満する霧を消し飛ばし局所的なコジマ汚染が視界とレーダーを潰す。
「あら危ない。AAなんて出来たのね。でも当たらないわ。ふふふ。左腕貰うわよ?」
そして、クリアになった視界に最初に映ったのは無傷のレッドラムがスマイリーの左手にショットガンを押し付ける姿だった、
「あぁあぁぁぁぁあああ!!」
千切れ飛ぶ左腕。痛み。エラー。恐怖。涙。そして、勝利。
「あはぁはぁぁははぁぁああああぁぁぁあ!そうよ!その調子よ!!次は右腕でも頂こうかしら?」
絶叫する私から遠ざかるレッドラム。そして、その向こうにぼんやりと見える雷電とスタルカの姿に私は勝利を確信する。

そして、OIGAMIはシャミアに突き刺さる。

「きゃぁぁああぁあぁぁぁあぁああ「今よ!!くたばれ蜘蛛女!!」
全くの想定外の方向からグレネードを喰らい吹き飛ぶシャミアに全弾叩きこむ。
グレネードの爆風が収まる中にさらに新たな爆炎に包まれるシャミア。
「死ね!消えろ!死ね死ね死ね!!ここで死ねぇぇえぇえええぇ!!!」
炎の中で融解するレッドラムにさらにWRを叩きこむ。
「嘘よ、私のレッドラム」
マガジンを一つ撃ち尽くすと同時に融解し穴だらけになたレッドラムがシャミアの呟きと共に沈黙する。
安堵の息を吐きシャミアに別れの言葉を告げる。
「ほらね?やっぱり最後に泣くのはあんただったでしょ?」

****

「逝ったかシャミア。じゃけん、女が戦場にでるのはすかんのじゃ」
いい女でもなかったし悪人じゃったが可愛そうな奴じゃったな。
安心せい。手向けにけじめだけはつけといたるわ。
と、その前に他の奴をこんな馬鹿な事に付き合わせるわけにはいかんな。
ノーマル部隊に通信を入れる。
「お前等状況はわかっとるな?作戦は失敗じゃ。引け」
「………ド・ス殿はどうなさるので?」
「わしか?わしもケジメをつけたら退くわ」
「そうですか。わかりました。聞いたな?作戦は失敗した。撤退しろ!!ただし命令違反で命と職を捨てたい馬鹿共は残って攻撃を続行!!」
溜息を吐く。なんで、わしの周りはこんな馬鹿が多いんや。
「あのなぁ、お前等「残念ですが命令は聞けません。そもそもテクノクラート所属のド・ス殿に我々への命令権はないですよ?
 それに私達もあの方が好きだったのです。少なくとも勝ち目のある敵討ちに付き合う程度はね。それとも、犬死する気ですか?」
「アホンダラ。誰があんな三下どもにやられるかい。まぁええ、そういうことならお前等にネクストもどきは譲ったるわ。わしは雷電とスマイリーを殺る」
「了解しました。ですが急いだ方がよろしいですよ?でないとスマイリーは頂いてしまいますから」
「ぬかせ。それとお前等。もし生き残ってクビになったらうちに来い。全員面倒みたる」
「テクノアラートにですか?ぞっとする未来ですが仕方ありませんね。その時はお世話になります」
「阿呆。うちの会社市場独占率百パーセントやぞ?こんな会社他にないで?」
「ロケットでなければね。では、そろそろ仕掛けます!!」
「おう!!頼んだで!!」
通信を切り雷電と向かい合う。まぁ、こっちもダラダラ長引かせる気はない。いくら両方とも瀕死ちゅうても二対一じゃ勝ち目は薄い。
だが、幸いスマイリーと雷電の距離はまだある。やけん、合流前に叩く。一直線や!真っすぐ行って命ぁとったる!!
「行くでぇぇえ!!」
「まだ来るか!!だが、させん!!」
突っ込もうとしたところで機先を制され腕グレを撃たれる。
横QBで余裕で回避可能。だが、そうすればその隙に雷電とスマイリーは合流するじゃろうな。
「なら!こうや!!」
一歩踏み出し二つの榴弾に向けCP-51を発射する。発射された五発のうち一発が当たり爆炎が大輪の花を形作る。だが、その花を突き破り残りの一発が迫る。回避できへん!!
とっさの判断で手に持ったVANDAを投げつける。目の前に咲くもう一輪の爆炎の花。
「おぉおおぉおおおぉおおおぉおおおお!!!」
雄叫びをあげそのまま爆炎で彩られた花に飛び込む。PAが消し飛び機体が悲鳴を上げる。そして、機体が融解する寸前花を喰い破る。
雷電まで後QB一つ!殺ったで!!
緩慢な動きで後ずさる雷電に向かいQBを吹かす。吹かす。吹かす。
「くそがぁああぁ!!肝心な時に故障やとぉ!!」
通常ブーストで前進する。スマイリーは雷電が邪魔になり射角がとれず移動を始める。
雷電の腕グレに次弾が装填される。くそ!万事休すか!?いや、違う!これが最後のチャンスなんや。行くしかない!
スマイリーからロックされる。雷電のロックが終わり砲身の奥で爆発が起こる。スタルカを地面に倒すと同時に肩武器を両方ともパージ。グレネードが発射される。
かわせぇ!スタルカァ!!………よっしゃぁ!!でも、まだやぁ!頭上を二発の榴弾が通り過ぎると同時に通常ブーストを吹かし同時に両腕と両足を大地に叩きつける。
ブーストの助けもありスタルカの身体が大地から浮き上がった所で背後でこの戦闘で最大の爆発が起こる。
元の榴弾に加えロケットとミサイルの残弾が誘爆したすさまじい爆炎にスタルカが煽られる。直撃でないというだけでほぼ爆心地にいたため容赦なく爆炎と爆風で機体を融解しひしゃげさせる。
AMSを凄まじい量のエラーが駆け巡り統合制御体が発狂しリンクスの保護を放棄する。
一際大きな衝撃と腹に異常な熱。視線を僅かに下ろすとコックピットが破損し腹を突き破ってた。人体の決定的な部分が破壊された事を感じる。だが無視。あと、少し動けばええ!!!
爆風に吹き飛ばされたスタルカが鳥のように空を舞う。向かう先は雷電。通常ブーストによる加速に加え爆風の後押しを受けたスタルカはQBに匹敵する速度をだし雷電へ躍りかかる。
「馬鹿な!?「ハラショウ!!」
自壊しながら強引に右腕を振り上げ振り抜き雷電にKIKUを突き刺す。今度こそ文句なしに致命傷。雷電の分厚い装甲をブチ抜きコックピットを直撃する。
「この雷電を削りきるか。見事だ。だが、私を倒しても有澤は滅びん。私は隆文の影武ガッ」
だがそれでも雷電の装甲は紙一重の所で操縦者を即死から救っていた。ちゅーても、潰れたコックピットが右半身をズタズタに引き裂いており時間の問題や。
放っておいてもええが、こん寒さん中放っとくのも惨い話か。
「寒いか?安心せい。これで終わりや」
KIKUを引く抜き次弾を装填しコクピットに合わせる。
っと、その前にこれだけは言うておかんと。
「あのな、わしはお前が有澤やから殺るんじゃない。シャミアの仇やからや。それで、名前はなんちゅうんや?」
「名前だと?」
「そや。影武者って事は有澤は本名じゃないんやろ?なら本名教えい。あんたみたいにいい男が名前も知られずに死ぬのは惜しいで?」
「ワカだ。かつてはそう呼ばれて「よくも社長を!!!」
スタルカに何発かのライフル弾が突き刺さる。ちっ。折角の名乗りを。じゃから女は好かんのじゃ。
「すまんな。悪い娘ではないのだが」
「お前が謝ることじゃないやろ。まぁええ。変な邪魔も入ったがじゃあなワカ。アンタええ男やったで」
「ああ、さらばだ。生涯最後の相手がお前のような漢であった事を誇りに思う」
「買い被り過ぎじゃ」
苦笑しKIKUをコックピットに打ち込む。

「さて、後はお前を始末すれば終わりじゃな?」

****

「さて、後はお前を始末すれば終わりじゃな?」
社長に止めを刺したスタルカがゆっくりと振り向く。
その姿はあちこちが融解し爆装し変形し、早い話がボロボロで何で動いているのか不思議なくらいだ。
「なのに何で倒れないのよ!!!」
手に持ったWRを乱射する。その全てが命中するが無頓着にスタルカは前進する。
歩くのと殆ど変わらないスピードでゆっくりと近づいてくるスタルカ。
ゾンビのようなスタルカの姿に恐怖を覚えいつしかWRを乱射しながら後退していた。
「来るな!来るな!来るなぁぁあああ~~~~~!!!!!」
演技ではなく泣き叫びWHEELING03を発射する。
スタルカは避けようともせず全弾命中し爆炎に包まれる。
AMSが敵ネクストの沈黙を告げる。
「やったの?よかっ、え!?………いやぁぁあぁぁぁああぁぁ!!!」
爆炎の中から何事も無かったかのようにスタルカが現れる。
何で生きてるのよ!!何で何で!何で!!おかしいでしょ!?AMSはあいつが死んだっていってるの!だったら死になさいよ!!何で何で!何で!とにかく距離をとらなと!!
だが、スマイリーは私の意志に反しその場で足踏みを続ける。どうして動かないのよ!!どうして!!動いてよ!!動きなさいよ!!!動かないと!あいつがあいつがあいつがあいつがあいつがあいつが来ちゃう!!
「動きなさいスマイリー!!動け動け動け動け!!!!!逃げないとあいつが来ちゃうでしょ!!くそ、うごけっつってんだよ!!このポンコツ!!」
「手間とらせおって。やっと捕まえたで?」
気が付くと目の前で満身創痍のスタルカがKIKUを振り上げていた。
「あああぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!」絶叫しAAを発動させる。
視界とレーダが真っ白に染まる。
「お願い。これで死んで死んでしんでしんでしんでお願いおねがいおねがいよしんでしんでしんで!!」

祈るように奴の死を願った私への返答は衝撃と撃ち貫かれたスマイリーの装甲の向こうに見えるスタルカの姿だった。

****

機能を停止し背後のビルにもたれかかる様に倒れたスマイリーに突き刺さったKIKUを引き抜く。
ちっ。メイは無事か。GA製は丈夫じゃの。
「すまんな。もう少し気張ったてやスタルカ。終わったら休ませたるからな」
自分と同じように満身創痍というか致命傷を負いながらまだ動いてくれているスタルカに声をかけ、体中を軋ませながらKIKUをメイに合わせる。
だが、機体が拾った泣きながら支離滅裂な命乞いと死にたくないと絶叫、そしてダンと社長と狂ったように叫び続ける様を見ていられずに視線を外す。
「見苦しいのう。じゃけん女は好かんのじゃ。まあええ、シャミアの仇じゃ。逝きや」
KIKUの引き金を引く。引く。引く。
「ちっ。最後の最後で故障かい。まぁ、雷電に何発もブチ込んだんやから仕方ないの。しゃーない、流儀じゃないんじゃが」
開いた隙間に手を突っ込みメイを引き摺りだす。
「叩き潰すよりは握りつぶされた方が苦しまずに逝けるやろ?覚悟しぃ」
そのまま、スタルカの腕に力を力を力を
「いやあぁぁぁあ!!止めて!助けてお願い!社長!社長!ダン!何してるの!!なんでもするから!止めて!!お願い!首輪付き君!首輪付き君!!ローディさん!お母さん!!父さん!!いやあぁぁぁぁあぁぁl!!」
込める事は出来なかった。溜息を吐く。
「やっぱり女は殺せんか。すまんのうシャミア。詫びは地獄できっちりいれるからの」
自分の甘さに呆れた所でAMSが敵の接近を告げる。
「あん?」OBで接近してきたのは左腕が吹き飛び頭が半分欠けたセレブリティ・アッシュだった。ふん、あいつらええ仕事するやないけ。どうする?一応仇やし殺っとくか?
「やっやっやめろろろっろろ!!メメメイイイさんをををはっ離せ!!」
だが、通信機から聞こえてきたのは男の泣き声だった。鼻を啜る音まで聞こえてくる。
それは戦士でもなければ兵士ですらない、クレイドルが飛ぶようになってからは久しく聞かない素人衆の声だった。
メイに萎えさせられた戦意が完全に霧散するのを感じる。なんやわし、弱いものいじめしてカッコ悪。
「坊主、受け取れ」
メイを投げ渡す。
「あわわわわぁあ!!ふぅ、何とか捕まえたぜ。俺じゃなかったら落としていたな。ありがとなおっさん。でももう少し丁寧に扱えよな!女の子なんだぞ!!」
「それは、済まんかったな。坊主、用は済んだんやろ?なら、行けや。それとも、わしと一戦交えるか?」
「いっいや、それは遠慮します!!その、そうだ!メイさんを連れて帰らないといけないからな!!………なぁ、おっさん。あんたも酷い怪我してるんだろ?
 その、あの、近くに俺のホームがあるから良かったら手当でも」
「余計な御世話じゃ!!さっさと行かんかい!!ぶっ殺すぞわりゃ!!」
「ひっひぃぃぃいい!!すっすいませんでした!!失礼します!!」
セレブリティ・アッシュが無警戒に背を向けOBを吹かそうとし、「やべ!メイさんがいるじゃん!!」と叫びPAを切り通常ブーストで撤退を始める。
その余りに隙だらけな動きに苦笑する。きっと、背を向けた瞬間襲われる事や、逆に人質を取り返した後にこちらを襲う事など思いつきもしないに違いない。
先程の敵であるわしに対する気遣いといい完璧なまでに普通の善人だった。
「坊主!!」
「はっはぃぃいぃいい!なっ何かご用でしょうか!」
「お前この仕事辞めい。善人過ぎてむいとらん!」
「なんで、そんな事をあんたに「わこうたか!!」
「はい!!帰ったらそうさせていただきます!!!」
気が付くと消え行く坊主に怒鳴っていた。わしもお人好しじゃのう

****

坊主が消えたのを確認し自分の様子を確かめる。
後、十分ってとこやな。ここから基地まで機体が万全でも三十分はかかるし、今の状態やとどんだけかかるかわからん。
まぁ、ええか。きっちりカタもつけたし、故郷で終わるのも悪うない。
そうやな、最後はあそこにするか。
っと、その前にシャミアに最後の別れでもって、あれは!?
「まさか!?シャミアかい!!」
融解したレッドラムの上に動くものを確認し慌ててレッドラムの元に向かう。
「遅かったわね」
コックピットから這いだした所で力尽き倒れていたシャミアが顔を上げる。
「お前よくそれで生きとるな。しぶとい女じゃ」
腰から下が無くなり、上半身も左半分が炭化し残った右半身も焼け爛れたシャミアをみて嘆息する。傷口が炭化したのと寒さで出血が抑えられたんじゃな。
「痛みには慣れてるからね。仇を取ってくれたのね。ありがと」
苦しげに呻きながら言葉を紡ぐシャミア。
「気にするな。好きでやった事じゃ。それより、楽にしたろか?それとも最後にやりたいことがあるか?」
「そうね。………いえ、どっちもいいわ。私はここで星を見ているから放ってあなたは戻りなさいな」
空を見上げる。霧と雲に覆われて何も見えん。いや、仮に空が見えても星が見えるわけは無い。今は十四時半や。
じゃが、シャミアが見えるというのならわしには見えんだけできっと星はるんじゃろ。
「気にするな。わしもこの出血じゃ十分も持たん。死に場所探しとった所じゃ」
シャミアが焼け爛れ崩れ落ちた血塗れの顔で笑う。
「そう。ならお言葉に甘えるわ。一人は寂しかった所なのよ。それと、昨日のあの場所に連れて行って。あそこは星が綺麗に見えたから」
「わこうた。一緒にそこで死んだる。だからそれまで逝くなよシャミア」

****

「ついたでシャミア。生きとるか?」
「………ええ、ああ、ここは本当に空が綺麗ね」
昨日に比べ半分程度の重さになったシャミアを担ぎ、スタルカの手をつたい昨日と同じ場所に降りる。
その瞬間役目を終えたかのようにスタルカが崩れ落ち崩壊する。
「あんがとな、スタルカ。たっぷり休みや」
無理を強いてきた愛機に礼を言い昨日と同じようにシャミアを抱き空を見る。あ~つかれた、もう動けんで。
新雪を赤く汚してしまう事だけが気に障るがこれはもう諦めるしか無いやろ。なに、直ぐに雪が積もって汚れもわしらも覆い隠してくれるやろ。
「ねぇ、最後にあと二つお願いしてもいい?」
「ああ、二つと言わず幾らでもするがええ」
「ありがと。じゃあ、私が死ぬまで手を握っていて。あと、私の事はラヴィってよんで。ほんとの名前なの」
「わこうた。ラヴィ。これでええか?」
焼け爛れ死人のように冷たいシャミアの手を握る。握った時に炭化した小指がもげるが構わず強く握りしめる。
「ありがと」
シャミアが子供のような笑顔を浮かべる。なんや結構可愛いやないけ。
「お礼に星座を教えてあげるね。まず、あの一番強く輝く星が………」
虚ろな瞳で星を見上げ、燃え尽きた腕で存在しない星を指差し、咳き込み掠れた弱弱しい声で途切れ途切れにシャミアが星座を説明していく。
わしは星に詳しくないからシャミアがでたらめ言っとるのそれとも正しいのかわからんが話の合間合間に頷きラヴィと呼びかける。
どれくらいそんな事を続けたやろうか?一時間かもしれんし一日かもしれんしあるいは一分も経っとらんかもしれん。
弱弱しく星座の説明をしていたシャミアが強く咳き込み吐血する。
血を吐き終わったシャミアは弱弱しく微笑えみ、
「ごめんねお父さん。もっと一杯お話したかったんだけどもう眠い。それいとっても寒いの」
「そか、なら眠り。したら父さんが抱いて暖かい所に連れってたる。一眠りしたら母さんのボルシチでも食べよ?」
「うん、お休みお父さん。………あと、ありがとド・ス」
涅槃へと逝った。
「なんじゃい、気付いとったんかい。まぁ、ええゆっくり休み。直ぐに地獄で会うと思うけどな」
瞼を閉じてやった後、仰向けに寝転がる。もう限界や。
空を見る。星空ではなく暗鬱な霧に包まれて何も見えん。
「やっぱり、何も見えんか。最後に月が見たかったの」
嘆息し目を閉じる。すると意識が遠くなる。あ~~、これがわしの最後かい。
「………………」
「なんじゃ?」
だが、意識が落ちる寸前、風と共に誰かに呼ばれたような気がして目を開けた。たった、それだけの行為にかなりの力が必要じゃったがそれに見合う価値はあった。
「これは」
目の前の光景に絶句し嘆息する。
空には満天の星空があった。
これは本当の星空なのか?それとも幻なのか?いや、そんなことはどうでもええか。
ただ、わしの前に満天の星空がありそして、まんまるい月が浮かんどる。それでええ。それだけでええ。
「しっかし、これならシャミアの言う事をちゃんと聞いとけばよかったの」
苦笑する。その拍子に口から血を吐きだすがそれも心地よかった。
視界が急速に暗くなる。今度こそ本当に終わりらしい。
最後に月を目に焼き付ける。まんまるでええ月や。これが最後の光景なら悪くない。
「本当にええ月じゃのう」





































後書き
某所からの移送です。良かったら見てください



「この街が終わりとはのう わしらしいの、つくづく…」


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「ワシお前の事嫌いじゃなかったで」
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