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#setlinebreak Written by 独鴉 ---- ---- エイ=プールとの戦い サベージビーストのカニスは先の戦闘から帰還する途中、所属不明ネクストの襲撃を受け現在治療中のためカラードマッチはキャンセル、 そのままカミソリ・ジョニーとのマッチ許可が下りたが彼との戦いも行われることはなかった、 オーメルグループから特別な実験武装まで貸し与えられているリンクス兼アーキテクトのカミソリ・ジョニー、 リンクスとしての実力はそれほど高くはないが、各パーツの特性を知り尽くした天才の紙一重とよばれているらしい。 「私はアーキテクトであってリンクスではない。ランクが欲しいのなら好きにしてくれ。 それに君のSSLベースの機体などデータ収集する価値などないのだよ」 彼はいとも簡単にエイ=プールへの挑戦権を明け渡した。 彼にとって研究が全てであり、目新しいデータの手に入らないと思われる戦いは興味の範疇外のようだ。 カラード公式マッチ用格納庫・・・・・ 戦闘開始まで残り15分を切ったとき、セレン・ヘイズはヴェーロノークの格納庫でエイ=プールと話しをしていた。 「ひとつ頼みがある」 「なんですか?」 エイは先輩からの珍しい言葉に疑問符が浮かんでいたが、よほどのことではない限り断る事など出来ない。 「リンクスを挑発して冷静さを失わせてくれ」 「それは構いませんがなぜわざわざそんなことを?」 「少々調べておきたいことがあるのでな」 そういうと考え込んでいるエイをそのままにセレンは格納庫を出て行った。 戦闘開始と同時にOBを使用した近接から発射されたASミサイルの歓迎。 垂直フレアで追尾から引き剥がし、BFFのスタンダードライフルを構えながら前進していく。 遮蔽物の無いエリア シミュレーターAでは動き続けるしか回避の方法が無い。 「なんでセレンさんは相手に有利なこのエリアを選んだんだ」 空中に舞うヴェーロノークからは両背に詰まれているASミサイルが発射され、フレアを射出するとBFFライフルの火力をヴェーロノークへと向ける。 連続して撃ち出される弾丸をヴェーロノークは左右へのブーストで回避するとSQBで射線軸から外れるとまたASミサイルを射出する。 それからは回避と攻撃の単調な攻防が続けられたが、フレアもASミサイルもそれほど搭載量が多いわけではない。 「・・・フレアが切れたか」 単純なASミサイルの射出とフェイクの組み合わせ、 その全てにフレアで反応してしまった為もう弾が切れてしまった。 空になった垂直フレアをパージ。 「実戦経験がまだまだ不足ね。鴉のなり損ねさん」 リンクス戦争から生き残っている彼女にとって、目の前の存在は未熟過ぎた。 「行きますよ?」 MQBとSQBを連続で使用しストレイドの右側面に回りこみ両背のミサイルユニットを開く。 目の前のストレイドはBQBで後ろに下がりながら両腕のライフルをこちらに向けた。 ヴェーラノークの細かい挙動にまで反応し、その全てに対して対応した行動を取ってしまっている。 (無駄だらけね。セレンさんらしくも無い事を教えてるなんてどういうこと?) 必要不必要のまだ判断が出来ていないのだ。それ故に簡単なフェイクに騙され無駄にフレアを消費してしまったのだから。 1分後・・・・ 「俺が・・・遊ばれている?」 そう気付いたのはまだ弾薬切れを起こしていないにもかかわらず背後を取りながらASミサイルを発射しない事が分かったことだ。 「俺が・・・戦場で・・・」 戦場で倒されるのも殺されるのも覚悟はしている。 カラードマッチでさえ擬似的に殺し合いをする場所だ。そしてこちらの覚悟を踏み躙られた事が何よりも許せなかった。 「ふっざけるなぁぁぁぁ!」 ライフルをその場に投げ捨てると格納してあったGAハンドガンを両手に取りOBで距離を取っている最中のヴェーロノークへとOBを使用して一直線に突撃していく。 「冷静さを欠いたら駄目って教わらなかったの?」 ヴェーロノークはOBをカットしQBTで機体を180度旋回させる。 両腕・肩・左背のミサイルユニットが開かれ、ストレイド目掛けて自己意思を持った群れが解き放たれた。 冷静な判断が出来ていないのかストレイドはGAハンドガンをヴェーロノークに向けて乱射、 いくつかのASミサイルは爆発するが弾幕の厚みが圧倒的に違った。 リロードで銃を下げたストレイドに無数のミサイルが襲い掛かり爆発の中に姿が消える。 今までの戦闘をセレンは静かにモニターしていたが、不安定になり始めた脳波とAMS数値を見て全データの記録スイッチを入れた。 「さぁ、あの時は何が起きたか見せてもらおうか」 バッカニアとの戦闘中、頭部に激しいダメージを負ったときに見せたあの動きの原因がこれでわかるはずだった。 そのためにわざわざエイにリンクスを挑発させ、冷静さを欠かせたところでAMSの高負荷を掛けるように仕向けたのだ。 ASミサイルの大群に襲われたストレイドの損傷は著しく、 部位を問わず襲い掛かったミサイルの爆発はPAを消滅させAMS負荷の数値は並みのリンクスなら気絶するだろう数値をたたき出している。 脳波のグラフが激しく揺らぎ、AMS数値はどんどん減少していきAMS稼動限界点を下回ってしまう。 だが数値の低下は止まらず、0に到達したところで統合制御体の機体制御補助システムが停止、AMS負荷が急激に上昇し脳波がさらに乱れていく。 「タ・・ス・・」 「ん?」 リンクスが何か言ったような気がしたが、そのすぐ後には乱れていた脳波が安定し機体の稼働率が標準値まで引きあがっていく。 しかし、AMS負荷は逆に増していく中、ヴェーロノークは再装填の終わった左背のASミサイルをストレイドの斜め前上空から発射。 ミサイルはPAを失ったストレイドの装甲に接触しようとしたとき、BQBと振り上げた右腕のハンドガンから撃ち出された弾丸がASミサイルを撃ち落した。 「始まったか」 ストレイドはQBTで踵を返すと先ほど投げ捨てたBFFライフルへと向けてMQBを点火、ヴェーロノークは両肩のASミサイルを発射。 ストレイドはQTで機体を旋回させ両腕のハンドガンを乱射、ばら撒かれた弾丸はASミサイルを9割がた撃墜、 自重で振り回される機体を全身のブーストの微調整で停止させるとBQBを点火しながらハンドガンを投棄、 後方に滑るようにブーストで移動しながら機体を屈ませると先ほど投げ捨てたBFFライフルを掴む。 「負荷を気にせず機体を自らの体のように扱うか」 セレンの見ているモニターには機体の制動だけではなく各部の細かい変動まで表示されていた。 リンクスのAMS数値は平均値程度だが、AMS負荷は通常よりも遥かに高い数値を表示、統合制御体の介入を拒否した直接制御で動かしているのだろう。 右腕のライフルも振り上げるとヴェーロノークの肩に装着しているASミサイルに向けて乱射、 発射されたばかりのミサイルの爆発によってヴェーロノークのPAは急激に減衰、そのまま射線軸をずらしライフル弾はヴェーロノークの右腕に集弾、 恐らく腕を破壊することで内部のミサイルを誘爆させようとしているのだろう。 「ほぼ無傷のヴェーロノークとの差をひっくり返すのに考えたのでしょう?けれど甘い考えですね」 ストレイドの考えを理解したヴェーロノークは両背と肩のASミサイルをパージ、 機動性を高めると射線軸から右SQBで外れるとASミサイルを発射、ミサイルは大きく右に旋回しながらストレイドの右サイドへと向かっていく。 ストレイドは前方にブーストで移動しながら両背のDEARBORN02近接信管ミサイルを担ぐとMQBで機体を加速させ、 ASミサイルはストレイドの後方をすり抜けていった。しかし回避したはずのミサイルは大きく進行方向を変え今度はストレイドの正面に迫っていく。 その時霧散していたPAが再チャージを終え、形成されたコジマ粒子のシールドに接触したミサイルが爆発、 まだ形成されたばかりで不安定だったPAは再度霧散してしまうがネクストそのものに大きなダメージは無い。 「運がいいんですね。それとも計算してかわした?」 同時に発射された近接信管ミサイルは他のミサイルに比べて多少速度が劣るものの、 フレアやミサイルそのものを迎撃するための武装をもたないヴェーロノークにとっては回避するしか手段のない厄介な武器だった。 MQBとOBの併用でヴェーロノークは緊急離脱、追尾を続けるミサイルを振り切る。 だが、エリア隅近くまで移動したヴェーロノークのすぐ背後にはOBで追撃を行っていたストレイドが迫り2射目のミサイルが発射された。 「ちょっと・・・!」 ミサイルはヴェーロノークのPAに接触すると連続して爆発、撒き散らされる爆炎と衝撃波がPAを激しく揺らめかせネクスト本体へと損害を与えていく。 背部のミサイルをバージしライフルを乱射しながら空中へとストレイドは跳躍、ブースターを微調整しながらOBでヴェーロノークへと向かっていく。 「さすがにセレン先輩が見出しただけのことあるけど、私だって!」 先ほどのミサイルの爆発でPAを消費した上にかなりのダメージを負っているが、 いまだヴェーロノークのほうがダメージは低く、 OBで無理に追撃を掛けてきたストレイドよりも有利な状態だ。 残っていたエネルギーを使用し、2段MQBで再度ヴェーロノークを加速させるとストレイドとの距離を大きく開ける。 エネルギーが尽きたのかストレイドのOBユニットは光を失い、一瞬300まで迫った距離がどんどん離れていく。 「これまでね」 だが、エリア隅まで移動していたヴェーロノークのすぐ目の前には光点によって擬似的に表現されたエリア限界が立ちはだかった。 エリア限界と接触、ヴェーロノークの動きが停止したときストレイドはMQBを点火し再度射程距離に到達、ライフルの掃射がヴェーロノークに襲い掛かった。 近接信管ミサイルの影響で減衰していたPAをライフル弾は貫きヴェーロノークへと襲い掛かる。 「追い詰めたつもりだろうけどまだ!」 ヴェーロノークは左SQBを点火、しかしすでにエネルギーの尽きかけていた状態では通常の半分程度の出力しか期待は反応せず、 射線軸から外れるには余りにも推進力が不足していた。 その間にも機体を停止させたストレイドの放つBFFライフルから次々と撃ち出される弾丸はどんどん集弾性を増していきコア一点へと喰らい付いていく。 「SSLの腕でよくこれだけ・・・・」 コアのみに集約された弾丸は半分近く残っていたAPを容赦なく抉りとっていく。 QBを使用するだけのENがチャージされたとしてもすでに勝ち目がないと考えたエイ=プールは戦闘を中止、 ストレイドの勝利が表示されシミュレーターエリアAとのリンクが切断される。 「ストレイドの機能の外部停止急げ!AMSもいますぐ切断しろ!」 整備場に置かれているストレイドは厳重にハンガーとロックされているが、 統合制御体とシミュレーターとの切断が終了し通常モードへと切り替わった以上、 また前回のようなことが起こる可能性があった。セレンはストレイドとの通信を繋げるとマイクに向けて怒なる用に叫ぶ。 「命令だ!機体から今すぐ降りて戦闘報告をしに私の元に来い!」 ストレイドからはなんの返答も帰っては来ない。 「聞こえていないのか!命令を実行しろ!!」 「了解」 ゆっくりとストレイドのコックピットが開かれリンクスが機体から降りる。普段なら戦闘終了後吐き気と頭痛でその表情は苦痛に歪んでいるのだがまったくない。 それどころか人としての表情さえも読み取れない。ゆっくりとした足取りで指揮室に入ってきたリンクスを椅子に座らせる。 「お前は誰だ」 普段とは違う雰囲気から何かセレンはそう尋ねた。 「・・・」 「命令だ。答えろ」 「Type―S―0573―I141」 抑揚さえ掛けた平坦な声から発せられたのは機械的な番号だった。 「それは識別番号だな?所属を答えろ」 「・・・」 「私の質問に答えないつもりか?」 「・・・ピースシティ ムラクモ・ミレニアム社 ウェンディズ機関所属実験体NO.S―0573―I141」 「ピースシティだと?あんな廃都に企業があるなど聞いたこと無いが」 「・・・・」 リンクスは膝を折るように倒れるとそのまま意識を失ってしまった。 ---- now:&online; today:&counter(today); yesterday:&counter(yesterday); total:&counter(total); ---- **移植元コメント [#u7718ffa] - かなり更新が遅くなったり変更漏れでコメアウトになったり申し訳ありませんm(_ _)m -- [[独鴉]] &new{2009-12-29 (火) 23:14:18}; **コメント [#u7a1f664] #comment(below) ---- RIGHT:[[小説へ戻る>小説/長編]]
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#setlinebreak Written by 独鴉 ---- ---- エイ=プールとの戦い サベージビーストのカニスは先の戦闘から帰還する途中、所属不明ネクストの襲撃を受け現在治療中のためカラードマッチはキャンセル、 そのままカミソリ・ジョニーとのマッチ許可が下りたが彼との戦いも行われることはなかった、 オーメルグループから特別な実験武装まで貸し与えられているリンクス兼アーキテクトのカミソリ・ジョニー、 リンクスとしての実力はそれほど高くはないが、各パーツの特性を知り尽くした天才の紙一重とよばれているらしい。 「私はアーキテクトであってリンクスではない。ランクが欲しいのなら好きにしてくれ。 それに君のSSLベースの機体などデータ収集する価値などないのだよ」 彼はいとも簡単にエイ=プールへの挑戦権を明け渡した。 彼にとって研究が全てであり、目新しいデータの手に入らないと思われる戦いは興味の範疇外のようだ。 カラード公式マッチ用格納庫・・・・・ 戦闘開始まで残り15分を切ったとき、セレン・ヘイズはヴェーロノークの格納庫でエイ=プールと話しをしていた。 「ひとつ頼みがある」 「なんですか?」 エイは先輩からの珍しい言葉に疑問符が浮かんでいたが、よほどのことではない限り断る事など出来ない。 「リンクスを挑発して冷静さを失わせてくれ」 「それは構いませんがなぜわざわざそんなことを?」 「少々調べておきたいことがあるのでな」 そういうと考え込んでいるエイをそのままにセレンは格納庫を出て行った。 戦闘開始と同時にOBを使用した近接から発射されたASミサイルの歓迎。 垂直フレアで追尾から引き剥がし、BFFのスタンダードライフルを構えながら前進していく。 遮蔽物の無いエリア シミュレーターAでは動き続けるしか回避の方法が無い。 「なんでセレンさんは相手に有利なこのエリアを選んだんだ」 空中に舞うヴェーロノークからは両背に詰まれているASミサイルが発射され、フレアを射出するとBFFライフルの火力をヴェーロノークへと向ける。 連続して撃ち出される弾丸をヴェーロノークは左右へのブーストで回避するとSQBで射線軸から外れるとまたASミサイルを射出する。 それからは回避と攻撃の単調な攻防が続けられたが、フレアもASミサイルもそれほど搭載量が多いわけではない。 「・・・フレアが切れたか」 単純なASミサイルの射出とフェイクの組み合わせ、 その全てにフレアで反応してしまった為もう弾が切れてしまった。 空になった垂直フレアをパージ。 「実戦経験がまだまだ不足ね。鴉のなり損ねさん」 リンクス戦争から生き残っている彼女にとって、目の前の存在は未熟過ぎた。 「行きますよ?」 MQBとSQBを連続で使用しストレイドの右側面に回りこみ両背のミサイルユニットを開く。 目の前のストレイドはBQBで後ろに下がりながら両腕のライフルをこちらに向けた。 ヴェーラノークの細かい挙動にまで反応し、その全てに対して対応した行動を取ってしまっている。 (無駄だらけね。セレンさんらしくも無い事を教えてるなんてどういうこと?) 必要不必要のまだ判断が出来ていないのだ。それ故に簡単なフェイクに騙され無駄にフレアを消費してしまったのだから。 1分後・・・・ 「俺が・・・遊ばれている?」 そう気付いたのはまだ弾薬切れを起こしていないにもかかわらず背後を取りながらASミサイルを発射しない事が分かったことだ。 「俺が・・・戦場で・・・」 戦場で倒されるのも殺されるのも覚悟はしている。 カラードマッチでさえ擬似的に殺し合いをする場所だ。そしてこちらの覚悟を踏み躙られた事が何よりも許せなかった。 「ふっざけるなぁぁぁぁ!」 ライフルをその場に投げ捨てると格納してあったGAハンドガンを両手に取りOBで距離を取っている最中のヴェーロノークへとOBを使用して一直線に突撃していく。 「冷静さを欠いたら駄目って教わらなかったの?」 ヴェーロノークはOBをカットしQBTで機体を180度旋回させる。 両腕・肩・左背のミサイルユニットが開かれ、ストレイド目掛けて自己意思を持った群れが解き放たれた。 冷静な判断が出来ていないのかストレイドはGAハンドガンをヴェーロノークに向けて乱射、 いくつかのASミサイルは爆発するが弾幕の厚みが圧倒的に違った。 リロードで銃を下げたストレイドに無数のミサイルが襲い掛かり爆発の中に姿が消える。 今までの戦闘をセレンは静かにモニターしていたが、不安定になり始めた脳波とAMS数値を見て全データの記録スイッチを入れた。 「さぁ、あの時は何が起きたか見せてもらおうか」 バッカニアとの戦闘中、頭部に激しいダメージを負ったときに見せたあの動きの原因がこれでわかるはずだった。 そのためにわざわざエイにリンクスを挑発させ、冷静さを欠かせたところでAMSの高負荷を掛けるように仕向けたのだ。 ASミサイルの大群に襲われたストレイドの損傷は著しく、 部位を問わず襲い掛かったミサイルの爆発はPAを消滅させAMS負荷の数値は並みのリンクスなら気絶するだろう数値をたたき出している。 脳波のグラフが激しく揺らぎ、AMS数値はどんどん減少していきAMS稼動限界点を下回ってしまう。 だが数値の低下は止まらず、0に到達したところで統合制御体の機体制御補助システムが停止、AMS負荷が急激に上昇し脳波がさらに乱れていく。 「タ・・ス・・」 「ん?」 リンクスが何か言ったような気がしたが、そのすぐ後には乱れていた脳波が安定し機体の稼働率が標準値まで引きあがっていく。 しかし、AMS負荷は逆に増していく中、ヴェーロノークは再装填の終わった左背のASミサイルをストレイドの斜め前上空から発射。 ミサイルはPAを失ったストレイドの装甲に接触しようとしたとき、BQBと振り上げた右腕のハンドガンから撃ち出された弾丸がASミサイルを撃ち落した。 「始まったか」 ストレイドはQBTで踵を返すと先ほど投げ捨てたBFFライフルへと向けてMQBを点火、ヴェーロノークは両肩のASミサイルを発射。 ストレイドはQTで機体を旋回させ両腕のハンドガンを乱射、ばら撒かれた弾丸はASミサイルを9割がた撃墜、 自重で振り回される機体を全身のブーストの微調整で停止させるとBQBを点火しながらハンドガンを投棄、 後方に滑るようにブーストで移動しながら機体を屈ませると先ほど投げ捨てたBFFライフルを掴む。 「負荷を気にせず機体を自らの体のように扱うか」 セレンの見ているモニターには機体の制動だけではなく各部の細かい変動まで表示されていた。 リンクスのAMS数値は平均値程度だが、AMS負荷は通常よりも遥かに高い数値を表示、統合制御体の介入を拒否した直接制御で動かしているのだろう。 右腕のライフルも振り上げるとヴェーロノークの肩に装着しているASミサイルに向けて乱射、 発射されたばかりのミサイルの爆発によってヴェーロノークのPAは急激に減衰、そのまま射線軸をずらしライフル弾はヴェーロノークの右腕に集弾、 恐らく腕を破壊することで内部のミサイルを誘爆させようとしているのだろう。 「ほぼ無傷のヴェーロノークとの差をひっくり返すのに考えたのでしょう?けれど甘い考えですね」 ストレイドの考えを理解したヴェーロノークは両背と肩のASミサイルをパージ、 機動性を高めると射線軸から右SQBで外れるとASミサイルを発射、ミサイルは大きく右に旋回しながらストレイドの右サイドへと向かっていく。 ストレイドは前方にブーストで移動しながら両背のDEARBORN02近接信管ミサイルを担ぐとMQBで機体を加速させ、 ASミサイルはストレイドの後方をすり抜けていった。しかし回避したはずのミサイルは大きく進行方向を変え今度はストレイドの正面に迫っていく。 その時霧散していたPAが再チャージを終え、形成されたコジマ粒子のシールドに接触したミサイルが爆発、 まだ形成されたばかりで不安定だったPAは再度霧散してしまうがネクストそのものに大きなダメージは無い。 「運がいいんですね。それとも計算してかわした?」 同時に発射された近接信管ミサイルは他のミサイルに比べて多少速度が劣るものの、 フレアやミサイルそのものを迎撃するための武装をもたないヴェーロノークにとっては回避するしか手段のない厄介な武器だった。 MQBとOBの併用でヴェーロノークは緊急離脱、追尾を続けるミサイルを振り切る。 だが、エリア隅近くまで移動したヴェーロノークのすぐ背後にはOBで追撃を行っていたストレイドが迫り2射目のミサイルが発射された。 「ちょっと・・・!」 ミサイルはヴェーロノークのPAに接触すると連続して爆発、撒き散らされる爆炎と衝撃波がPAを激しく揺らめかせネクスト本体へと損害を与えていく。 背部のミサイルをバージしライフルを乱射しながら空中へとストレイドは跳躍、ブースターを微調整しながらOBでヴェーロノークへと向かっていく。 「さすがにセレン先輩が見出しただけのことあるけど、私だって!」 先ほどのミサイルの爆発でPAを消費した上にかなりのダメージを負っているが、 いまだヴェーロノークのほうがダメージは低く、 OBで無理に追撃を掛けてきたストレイドよりも有利な状態だ。 残っていたエネルギーを使用し、2段MQBで再度ヴェーロノークを加速させるとストレイドとの距離を大きく開ける。 エネルギーが尽きたのかストレイドのOBユニットは光を失い、一瞬300まで迫った距離がどんどん離れていく。 「これまでね」 だが、エリア隅まで移動していたヴェーロノークのすぐ目の前には光点によって擬似的に表現されたエリア限界が立ちはだかった。 エリア限界と接触、ヴェーロノークの動きが停止したときストレイドはMQBを点火し再度射程距離に到達、ライフルの掃射がヴェーロノークに襲い掛かった。 近接信管ミサイルの影響で減衰していたPAをライフル弾は貫きヴェーロノークへと襲い掛かる。 「追い詰めたつもりだろうけどまだ!」 ヴェーロノークは左SQBを点火、しかしすでにエネルギーの尽きかけていた状態では通常の半分程度の出力しか期待は反応せず、 射線軸から外れるには余りにも推進力が不足していた。 その間にも機体を停止させたストレイドの放つBFFライフルから次々と撃ち出される弾丸はどんどん集弾性を増していきコア一点へと喰らい付いていく。 「SSLの腕でよくこれだけ・・・・」 コアのみに集約された弾丸は半分近く残っていたAPを容赦なく抉りとっていく。 QBを使用するだけのENがチャージされたとしてもすでに勝ち目がないと考えたエイ=プールは戦闘を中止、 ストレイドの勝利が表示されシミュレーターエリアAとのリンクが切断される。 「ストレイドの機能の外部停止急げ!AMSもいますぐ切断しろ!」 整備場に置かれているストレイドは厳重にハンガーとロックされているが、 統合制御体とシミュレーターとの切断が終了し通常モードへと切り替わった以上、 また前回のようなことが起こる可能性があった。セレンはストレイドとの通信を繋げるとマイクに向けて怒なる用に叫ぶ。 「命令だ!機体から今すぐ降りて戦闘報告をしに私の元に来い!」 ストレイドからはなんの返答も帰っては来ない。 「聞こえていないのか!命令を実行しろ!!」 「了解」 ゆっくりとストレイドのコックピットが開かれリンクスが機体から降りる。普段なら戦闘終了後吐き気と頭痛でその表情は苦痛に歪んでいるのだがまったくない。 それどころか人としての表情さえも読み取れない。ゆっくりとした足取りで指揮室に入ってきたリンクスを椅子に座らせる。 「お前は誰だ」 普段とは違う雰囲気から何かセレンはそう尋ねた。 「・・・」 「命令だ。答えろ」 「Type―S―0573―I141」 抑揚さえ掛けた平坦な声から発せられたのは機械的な番号だった。 「それは識別番号だな?所属を答えろ」 「・・・」 「私の質問に答えないつもりか?」 「・・・ピースシティ ムラクモ・ミレニアム社 ウェンディズ機関所属実験体NO.S―0573―I141」 「ピースシティだと?あんな廃都に企業があるなど聞いたこと無いが」 「・・・・」 リンクスは膝を折るように倒れるとそのまま意識を失ってしまった。 ---- now:&online; today:&counter(today); yesterday:&counter(yesterday); total:&counter(total); ---- **移植元コメント [#u7718ffa] - かなり更新が遅くなったり変更漏れでコメアウトになったり申し訳ありませんm(_ _)m -- [[独鴉]] &new{2009-12-29 (火) 23:14:18}; **コメント [#u7a1f664] #comment(below) ---- RIGHT:[[小説へ戻る>小説/長編]]
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